FFDQバトルロワイアル3rd資料編@wiki 387話


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第387話:異なった二人


「…気分はどうだ?」
目が覚めるや否や、マント姿の男にそう聞かれた。
どうやらここは森の中のようだ。
一瞬、記憶が混乱する。
…確か、あのセフィロスのクソ野郎と戦って、肩を撃たれて、それからいきなり眠くなって…
そこから先が、ぼんやりしていてよく判らない。
「あまりよくないようだな。
まあ無理もない。おまえはもう少しで殺されていたのだからな」
「…誰だ?」
あまり回らない舌で短く問うと、目の前の男は、こう答えた。
「私はウィーグラフだ。ウィーグラフ・フォルズ」

「そうか…俺はジタン・トライバルだ。あんたが助けてくれたのか?」
「まあそうなるな」
ウィーグラフと名乗った男は軽くそう言うと、「動けるか?」と聞いてきた。
言われるがままに体を動かそうと試みる。
が、全身が痺れたようになっていて、あまり言う事を聞かない。左手でゆっくり地面をまさぐるが、指先の感覚がない。
次に右腕を動かしてみると、肩が激しい鈍痛に襲われた。
「痛っ!!」
その痛みに、思わず呻く。
「…ああ、肩の損傷が思ったより酷いな。それなら少しじっとしてろ。治してやる」
思うように動けないジタンを見下ろしながら、ウィーグラフは彼に歩み寄った。

「…なあ、一つ聞いていいか?」
あいかわらず地面に寝そべりながら、ジタンがウィーグラフに目を向ける。
ウィーグラフは顔だけを彼に向けた。
「あんた、ゲームには乗ってないよな?」
ジタンはわかりきった質問のつもりだったが、その答えは少し意外だった。
「どうかな…乗っているとも言えるし、乗っていないとも言える」
「………?」
「まあ、その事については後で話そう。それよりもほら、治療してやるからじっとしていろ」

「清らかなる生命の風よ 天空に舞い 邪悪なる傷を癒せ ケアルラ」
何度目かの静かな詠唱の後、傷に添えられた手に青い癒しの光が宿る。
同時に、銃で撃たれた傷が塞がり、その苦痛が大きく和らいだ。
「…っと、ありがとうな」
起き上がりながら、礼を言うジタン。
「危ないところを助けてくれたし、肩は治してもらったし、何て言ったら…」
「いいさ。私は突然奴が憎らしくなっただけだから」
ウィーグラフはジタンの言葉を遮ると、木に寄りかかって腕を組んだ。
どうやら、回復魔法を何度も使ったせいで少し疲れたらしい。
…エリクサ―を使えば簡単に治療できたが、残念ながら彼はそこまでお人好しではない。

「…ところでさ」
しばらくしてから、またジタン。
「あんた、さっきゲームに乗ってるとも乗ってないともいえるって言ってたけど、どういうことだ?」
「…すまないが、先に私の質問に答えてくれないか」
閉じていた目を開け、自分と同じように木に寄りかかっていたジタンを見据えながら、ウィーグラフ。
「お前、どうしてあの男に戦いを挑んだ?」
ジタンは少し面食らった。
「実力差からして勝てない事は戦う前からわかっていたろう。なのにどうして逃げもせずに奴に挑んだ?」
解せないとばかり、ウィーグラフは言う。
だがジタンにとっては、先程と同じようなわかりきった質問のように思えた。
「どうしてって…あいつは何人も人を殺してるんだ。俺が知ってるだけでももう6人も。そんな奴を」
「野放しにするわけには行かなかった、か」
間を置いてから話し始めたジタンの言葉の先を読んで、ウィーグラフ。
「奴は兄弟がどうとか言っていたが?」
聞きたい部分を挙げる彼に、ジタンは少し目を細めた。
「兄弟、か…あいつ…クジャと俺が兄弟だってのはつい最近知った事だし、
 本当にそういうことになるのか俺にはよくわからないんだ」
そこで少し区切ってジタンは首を横に振る。
「でも、確かにあれはクジャの仇討ちでもあった。
 ああ。俺の目の前で死んだあいつは、俺の兄貴だっていまなら言えるぜ」

「………」
語り終えたジタンを、ウィーグラフは黙って見据えていた。
話から察するに、自分とジタンは似ても似つかなかった。
彼はウィーグラフのように復讐に狂っていたわけではなく、どちらかと言えばマーダーを止めようという、
おそらくこのゲームにおいてありがちであろう意思でセフィロスに挑んだのだ。
むしろラムザに似る物があった。
自分の抱く意思こそが正しいと信じて疑わない、そんな奴だ。
ため息が出る。
目の前の男の内面を少し知り、彼に対する興味は突然薄れた。
あの時突然こみ上げてきた怒りや、妙な満足感すら嘘のように思える。
「…なあ」
ふと、ジタンが口を開いた。
「これで一応俺の方は話したし、今度はあんたが話す番だぜ」
今となっては、ジタンと話しているのがひどく時間の無駄のように思える。
が、それでもウィーグラフは話し始めた。

「…ある参加者を追っている。かつて私から全てを奪った男だ」
「…全てを?」
「そうだ。奴への憎しみを除いた、全てをだ」
怪訝そうに口を挟むジタンに、ウィーグラフが吐き捨てるように付け加える。
「お前によく似た男だ。”正義”というモノを信じきっている」
また首をかしげるジタンに構わず、続ける。
「私も一時期はソレを信じて戦っていた。奴…ラムザと出会ったのもちょうどその頃だ。
といっても私達はその頃から既に敵同士だった。
なぜならその時の奴にとっての正義は私を殺す事で、その時の私にとっての正義は奴を殺す事だったからだ」
「なんで…」
「”正義”とは結局そんな物だという事だ。
 人や立場によって簡単に変えられてしまう幻惑なのだよ、ジタン・トライバル」
ウィーグラフはそこまで言い、「まあ、そんなことはこの際どうでもいい」と、
何か言い返そうとするジタンに釘を刺した。

「その戦いで20年以上ずっと共に生きてきた妹が死に、仲間を一人残らず失い、
 私の描いた理想はその全てが消えてなくなった…あの時に悟った。
 正義や理想など、力が無ければただの幻想でしかないとな」
しばらく間を置いて、ウィーグラフ。
「そしてその後、私は奴への復讐の機会を狙いつづけた。
 悪魔に魂を売ることすら躊躇わず、堕ちるところまで堕ちた。
 しかし…それでも奴には勝てなかった。その時、私自身も奴の剣に倒れ、死んだ」
まあ手短に話すとこんなところだ、と、ウィーグラフは語り終えた。

「それで…」
理解できないといった表情で、ジタン。
「それで、このゲームでまたそいつに復讐する気なのか?」
「ああ。それが乗っているとも乗っていないとも言える、ということだ」
当然だとばかり、ウィーグラフが返す。
「そんな…それじゃあんたはそれだけの為に生きてるのかよ!?
そのラムザってのがどんな奴かはよくわからねえけど!それじゃ「黙れ」
ウィーグラフがジタンの言葉を遮った。
その声は先程までの落ちついた口調とはうってかわって、重い脅すような響きがあった。
「…知った風な口を聞くな。お前ごときに何がわかる」
言い、刺すような目でジタンを睨みつける。そのまま、またも長く重い沈黙がおりた。

結局、2人は全く違う意思の持ち主だった。
ウィーグラフがジタンに自分の姿を重ねていた事はもはや言うまでも無い。
ジタンもまた、セフィロスから命を救われた事で、
彼もまた自分と同じように、ゲームに乗ろうとしていない参加者の一人だと思いこんでいた。
が、そのどちらも違った。
かたや魔女に反抗しようとしている青年。
かたや復讐にその力の全てを傾ける騎士。
どちらも、決して相容れる存在ではなかったのだ。


「…さて」
一分にも一時間にも感じられた沈黙を破ったのはウィーグラフだった。
「長話をしすぎたようだな。私はそろそろ行く」
「お、おい」
荷物をまとめてさっさと歩き去っていくウィーグラフを、ジタンが静止しようとする。
「…セフィロスといったな」
そんなジタンを、肩越しにウィーグラフが見やる。
「あの黒服の男は森の奥へ逃げて行ったぞ。重傷を負ってな。 止めを刺すなら、今だ」
「…あんたはどうすんだ?」
「参加者は日が暮てから村や町に集まる可能性が高い。それまでは別の所を探す」
「………」
背後からのジタンの問いを淡々と受け流しながら、彼は森の外の方へと消えていった。
ジタンもその場を離れたのは、ずっと後のことだ。

こうして異なった二人は出会い、別れた。
二人が再び会うことは、もう二度とないかもしれない。

【ウィーグラフ (MP消費)
 所持品:暗闇の弓矢、プレデターエッジ、エリクサー×10、ブロードソード、レーザーウエポン、
 首輪×2、研究メモ、フラタニティ、不思議なタンバリン、スコールのカードデッキ(コンプリート済み)、
 黒マテリア、グリンガムの鞭、攻略本、ブラスターガン、毒針弾、神経弾 
 第一行動方針:ラムザを探す
 第二行動方針:生き延びる、手段は選ばない
 基本行動方針:ラムザとその仲間を殺す(ラムザが最優先)】
【現在地 カズス北西の森→東へ】
【ジタン(左肩軽傷)
 所持品:英雄の薬 厚手の鎧 般若の面 釘バット(FF7)  グラディウス
 第一行動方針:不明
 基本行動方針:仲間と合流+首輪解除手段を探す 最終行動方針:ゲーム脱出】
【現在地 カズス北西の森】