439話

第439話:Just before dark


「見えた!あれがカナーンね!」
「あっ、おい!」
アルガスの声も気にせず、アリーナは駆け出す。
もう一人の自分は、どこで何をしているのか。
取り返しのつかないことになっていないといいが。
彼女は彼女なりに、もう一人の自分について責任を感じていた。
どんな子であろうと、確かに彼女はアリーナが生んだのだ。
「早くこないと、おいて行っちゃうからねー!」
後ろへ声を張り上げ、足に力をこめる。
もし、悪いことを続けているなら、自分が止めなくてはならない。できるだけ早く。
夕焼けに赤く照らされながら、アリーナは駆ける。心は急いている。



あの人はきっと無事だと、ロザリーは信じていた。
大事なのは、放送で自分の無事をあの人に伝えることができるということ。
放送で呼ばれる人や、その仲間の人のことを考えると胸が痛んだが、
その一点において、日暮れは辛いものではなかった。
あの人はきっと呼ばれないから。きっと。



ブオーンは歩いている。
夕暮れや放送のことは、もう気にしていない。



カインがきてから、フリオニールはカインと話しこんでいる。
カインに対する不信感はぬぐえないし、スコールとマッシュは行ってしまった。
ルカとハッサンはまだ帰ってこない。
サックスは一人、フルートのことを考える。
命の恩人。優しくて勇ましかった。一生忘れない。
その、彼女の名前がもうすぐ放送で呼ばれるのだ。
誤解をしたまま別れてしまった、ゼル達はどう思うのだろう。
自分は、どうすればいいのだろう。
サックスは一人、座り込んでため息をついた。



「みんなが帰ってくるのは、日が暮れてからかな」
ぐつぐつと煮え滾っている鍋にふたをし、手を止める。
調理場の窓からは位置が悪くて夕日が見えないが、空気でもうすぐだな、と感じる。
そして目をつぶって、あのときのことを思う。
魔女の城、広間で次々に呼ばれ、いなくなっていく人たち―――
最後に残ったのは、僕とワルぼうだった。
あのときワルぼうと一緒に魔女に立ち向かっていたら、何か変わっていたかな。
……首輪を爆発されて、終わりだったかな。
自分にもできないことがあることなど、とっくの昔から知っていた。
それを、嘆くことは、傲慢なのだろうか。
廊下から、二つの足音が聞こえて、目を開ける。振り返る。
「おはよう!よく眠れた?僕の名前はわたぼう。よろしくね。
 それと、僕の作ったスープはどうだった―――?」
後ろで鍋が爆発。次いで悲鳴。



「…いいよ。火はいい」
「いまさら何いってんだよ。
風邪っぽいってもんじゃないだろ。そんな高熱でぶっ倒れて」
「だって、危険かもしれない。
火は、獣を寄せ付けないけど、人を引き寄せてしまうよ」
「お前水に濡れたんだろ?日が暮れたらもっと寒くなるぞ」
「確かに倒れたけど、高熱ってほどでもないよ。風邪っぽいんだ。
ちょっと頭がボーっとして、ちょっと鼻水が出て、ちょっとのどが痛くて、ちょっと寒気がするだけだよ」
「それが立派な風邪なんだよ!」
「うん。濡れたけど結構乾いたし、大丈夫大丈夫」
「……………」
「…立派だなんて、照れるなぁ」
「……………………」
「…?どうしたの、ジタン?」
ジタンは盛大にため息をついて、集めた枯れ枝や枯葉をばら撒いた。
どこかズレてるとは聞いたが、会話がずれるとまでは聞いてないぞ。
サスーン城まであと少し、と思っていたが、病人を連れての道中は長いと思い知った。
フィンは木にもたれて座り、寒いのだろう、自分の腕をこすっている。
どっかと腰を下ろし、ザックをあさる。
移動ができないのなら、寝るか、ものを食べるかしかない。
と、いきなりフィンが笑い出す。少し怖い。
「…面白いね。ジタンの尻尾」
「え?あ?」
食料であるパンをかじっているため、変な声が出る。
「さっきからぜんぜん落ち着いてない。動きっぱなし」
ジタンは頭をかきむしった。尻尾の先を捕まえて動かないように固定。
「…火、おこすぞ。おまえ、やっぱり風邪治したほうがいい」
「駄目だよ。誰がこの火を見るか、わからない。
 お願いだから、せめて火か死か選ばないといけなくなるまでは」
そういったフィンの目は、まっすぐだった。高熱があるとは思えない程。

不思議な奴。
キーファはボケた奴だといっていたが、その実、彼を信頼しているのはわかっていた。
パンを噛み千切る。飲み込む。
「じゃあ、もう寝てろよ。俺、見張りやるからさ」
「…うん、ありがとう。
あと、目が覚めたらさ、ジタンが隠してる肩の傷、少しは楽にしてあげれると思うよ」
そういって、フィンは目をつぶる。
ばれてたか。
ウィーグラフに回復してもらったものの、やはり完全に治ってはいないのだ。
セフィロスに撃ち抜かれた肩の傷。
―――痛む。
「いやー、左だからあんまり困らないと思ったんだけどなぁ。
 というか、いつわかったんだ?」
返答はない。
ジタンはフィンの前で手を振る。反応なし。
寝るの早すぎだろ!
心の中でそう突っ込み、ジタンはするすると器用に木に登る。
人の気配がなければ、火をおこすつもりだった。
南西に見えるは、夕闇に照らされたサスーン城。


思い出す。
リンドブルムで、たくさんの人を、その悲鳴ごと暗闇へ吸い込んだ後、跡形もなく消えた召喚獣。
召喚獣同士の戦闘の末、インビンシブルを呼び、崩壊していったアレクサンドリア城。
あのときはうまくいった。俺のお姫様と、小さなレディを格好良く救い出せた。
今はもう、二人ともいない。
アリアハン城下町に降ったメテオ、アルテマ。迎え撃つグランドリーサル。跡に残るは瓦礫。
―――嫌な予感がする。城はいつも戦いの場所ではなかったか?
ジタンはかぶりをふってその考えを頭から追い払う。
今はフィンの風邪を治すのが先だ。
木を下り、ジタンは火をおこした。もう、闇が迫っている。

【アリーナ 所持品:プロテクトリング、インパスの指輪
 第一行動方針:アリーナ2を探して下山、カナーンへ
 第二行動方針:アリーナ2を止める(殺す)】
【現在位置:ジェノラ山山頂→カナーン】

【ロザリー 所持品:世界結界全集、守りのルビー、力のルビー、破壊の鏡、クラン・スピネル
 第一行動方針:しばらくは休息
 基本行動方針:ピサロを探す 最終行動方針:ゲームからの脱出

【ブオーン(左目失明、重度の全身火傷、)
 所持品:くじけぬこころ ザックその他無し
 第一行動方針:生き延びるために全参加者の皆殺し
 基本行動方針:頑張って生き延びる】
【現在位置:湖南の森→南へと移動(速度は遅い)】

【わたぼう 所持品:星降る腕輪 アンブレラ
 第一行動方針:料理を作っている
 第二行動方針:アリーナの仲間を探し、アリーナ2のことを伝える
 基本行動方針:テリーとリュックの仲間(ユウナ優先)を探す  最終行動方針:アルティミシアを倒す】
【現在地:ウルの村 宿屋調理場】

【サックス (負傷、軽度の毒状態 左肩負傷)
 所持品:水鏡の盾、スノーマフラー
 第一行動方針:休憩 最終行動方針:ゲームを破壊する。アルティミシアを倒す】
【現在地:カズスの村入り口】

【ジタン(左肩軽傷)
 所持品:英雄の薬 厚手の鎧 般若の面 釘バット(FF7)  グラディウス
 第一行動方針: フィンの風邪を治す
 第二行動方針: サスーンに向かい、真相を確かめる
 第三基本方針:協力者を集め、セフィロスを倒す
基本行動方針:仲間と合流+首輪解除手段を探す 最終行動方針:ゲーム脱出】
【フィン(風邪) 所持品:陸奥守 魔石ミドガルズオルム(召還不可)、マダレムジエン、ボムのたましい
 第一行動方針:休息  第二行動方針:ギルダーを探し、止める
 基本行動方針:仲間を探す】
【現在位置:カズス北西の森・北東部】

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最終更新:2008年02月16日 23:39
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