112話

第112話:銃声


「お姉ちゃん…」
放送を聞いたあと、ビビは空を見上げた。
「知り合いがいたのか」
ピサロは、全く口調を変えることなく、言った。
…ロザリーの名は無かったか。
それだけが未だ、彼を保っていた。
ブライやトルネコの死を聞いても、なんとも思わないか。
軽く自分を嘲笑う。
さすがに表情に出すことは無かったが。

「うん…さっき言ったよね…?ガーネットって人…」
ビビの声は、悲痛だった。
「あぁ」
ピサロはそれだけ言った。
身近なものを失う辛さなら、わかる。
それも、他の者に奪われて、だ。
そして、これに関してはビビも知らないだろうが、それが愛する者ならば尚更だ、と。

ビビが何やら泣く様な仕草をしている。
作られた存在でありながら、涙を流すことは出来るのか。
そういえばロザリーもよく泣いていた。
自分が人間に攻撃を加えたことを知ると、いつも…

――そう思っていたとき、何かの音が、森に響いた。
続いて、少女の悲鳴が。

「ね、ねぇ!今の聞いた!?」
ビビが、興奮したように喚く。
「当たり前だ。聞こえないほうがおかしい」
「誰か襲われているんだと思う…助けに行かなくちゃ…」
ピサロの視線と、ビビの視線が合わさった。
「行くのなら勝手に行け。私は動けぬし、人間を助ける義理など無い」
素っ気無いその声にも、ビビは嬉しそうに返事をした。
「うん、助けに行くよ。あの悲鳴、絶対に悪い人のじゃないと思うから…。それで、一つだけ約束して欲しいの」
「何だ?」
「もし人が逃げて来ても、殺したりしないでね。それはきっと、ボクが守った人だから…」
「…いいだろう」
「元々は人を殺すために作られたボクだけど…人を助けることも出来るんだって…ジタンやガーネットが教えてくれたから…」
ビビの声は、純真だった。
「それにジタンなら、女の人が襲われてるのを黙って見てるなんて出来ないと思うから…」
ビビは、それが笑ったというのなら…目を細めて…笑った。
「じゃぁ行ってくるから…約束忘れないでね」
最後には声を掛けることも出来なかった。
ビビの尖がり帽子が森の奥に消え行くのを。ピサロは最後まで見送った。
――どうしてあんなに穢れなくいられるのか。
自分も柄にも無いことを考えるようになった、と再び嘲笑した。

【ピサロ 所持品:スプラッシャー、魔石バハムート(召喚可)、爆弾(爆発後消滅)
 行動方針:ある程度回復するまで待機】
【ビビ 所持品:不明
 行動方針:銃声のした方へ様子を見に行く】
【現在位置:レーベ東の森中央付近】

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:

このサイトはreCAPTCHAによって保護されており、Googleの プライバシーポリシー利用規約 が適用されます。

最終更新:2008年02月17日 21:45
ツールボックス

下から選んでください:

新しいページを作成する
ヘルプ / FAQ もご覧ください。