134話

第134話:血濡れの魔王


「…息の根を止めて来い」
ピサロの言葉に、ビビは耳を疑った。
「えっ…?」
「殺せと言っている」
ピサロの声は、いつもの通り冷たくて。

自分の放った魔法が女性の顔を醜いものとしてしまったことを、話した。
その女は死んだのかというピサロの問いに、ビビはわからないと答えた。
その次のピサロの言葉が、「息の根を止めて来い」と…

「どうして…?」
「言うまでも無いだろう。その女は、やがてお前やこの小娘を殺しに来る」
ピサロの前に並んで座ったビビとターニアに向けて言い放つ。
「そうなる前に殺すのが妥当というものだ」
全身が影になっているピサロの表情は、二人には読み取れなかった。
だが、口調に変化は無く、殺すことに躊躇いが無いのだろうと思わせた。

「でも…」
ビビは、なんとなくピサロの方から目を逸らし、隣のターニアを見た。
ターニアの表情もまた、ビビからは影となっていて読み取ることは出来なかったが。
「その女は不思議な武器を持っていると聞いた。轟音を立て瞬時にして人体を貫く武器をな。そうだな?」
「…はい」
ターニアは震えた声でそう答えた。
エアリスが殺された時の事は、既に話してあった。
「そのような武器は見たことが無い。防ぎ方も知らん。そんな武器を持った女を放置しておく訳にはいかぬだろう」

「じゃあ武器だけを…」
言いかけたビビは、また口を噤まなければならなかった。
「その女はこれまで何人殺したか知らん。放置すればお前の仲間も犠牲になるかも知らん。それでもよいのだな?」
ピサロの声は、有無を言わせぬ響きがあって。
「…うん…わかったよ…」
ビビは、呟くように言った。

「その女が目を覚ましていたら躊躇わず魔法で攻撃するのだ。そうでなければ殺されるからな。
目を覚ましていなければその女の持ち物を奪ってそれで息の根を止めろ。使い方が分からなければ手持ちの武器でも構わない」
ピサロは語勢を変える事無く言い切り、ターニアにその目を向けた。
「小娘、ついて行きたいか。仲間の仇を討つのを見たいか」
ターニアは、俯いて、目を伏せて、首を横に振る。
「…そうか。…ビビ、行って来い」
「……」
ビビは、一言も喋らずに、ランプをかざして、森の奥へ消えた。
先程とは違う。誰かを守るのではなく、誰かの命を奪うために、少年は歩き出した。

「どうしてあなたは行かないの…?」
ランプが遠ざかって見えなくなると、ターニアはピサロに聞いた。
「…ビビから聞いてないのか。とても身体を動かせる状態ではない」
忌々しげに、吐き捨てるように言った。
「多少は回復はしたが、未だ動くには十分ではない」
「…血は?」
ターニアの声が震えていた。
「血か。一先ず止まったようだが…。小娘、血が怖いか」
コクリと頷くターニア。
「血を見ると…頭が混乱して…」
「…成る程。ならば…」
唐突に、ピサロはターニアの額に右手の人差し指を向けた。
「暫く寝ている事だな」

カクリと糸が切れたように地面に上半身を倒したターニアを一瞥し、ピサロは目を閉じた。

――正直、ビビが私の言うとおりに動く可能性など、半分くらいだと思っている。
殺さないとしたら、女を逃がすのだろう。
未だ、人間の正義を信じているのか。
…それでも今、私は待つしかないのか。
どちらにしても。

――問題はこの小娘だ。
血を見ると混乱するか…厄介なものを背負い込んだ。
私の血は止まったがこの辺は血塗れだ。
人間の眼は闇の中では利かぬからまだいいが、朝になれば何れ血を見てしまう。
一先ずは眠らせておくのがいい筈だ。
何にしろ私が動けるようになるまではどうしようもないのだからな。

そこで、思考の中で苦笑する。
――フン、この身体が治らぬ限り、何も出来ぬか。
ならば先ずは回復を優先する他あるまい…

ピサロは、久々に自分を襲った睡眠欲に身体を委ねる事にした。

【ピサロ(睡眠) 所持品:スプラッシャー、魔石バハムート(召喚可)、爆弾(爆発後消滅)
 行動方針:ビビの帰りを待つ、ある程度回復するまで待機】
【ターニア(睡眠) 所持品:微笑みの杖
 行動方針:?】

【ビビ 所持品:不明
 行動方針:ティファの息の根を止めるorティファを逃がす。ティファがいなくなったのを知ったら…?】

【現在位置:レーベ東の森中央付近】

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最終更新:2008年02月17日 21:45
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