第166話:殺人嫌悪
「うっ、がぁっ、ゲホゲホッ」
胸の中が熱い。胃の中の物が込み上げる。
思わず中のモノを吐き出す。誰かに見られていては出来ないことだが。
――冗談じゃない。アレは…何だと言うのだ!
自分にあるのは生き残りへの願望だ。
それは正しい。人間である者に平等に与えられた欲望だ。
――だが、アレは何だと言うのだ!
生き残るために手段を選ばないのなら、分かる。
――だが、アレは何だと言うのだ!
見た目は貴族風だったと思う。
否、寧ろ王族のようだった。
それが、何をした?
生き残るために誰かを殺したのではない。
己の本能、欲望、そして…快楽。
そのために人を殺したか。
――アレは何だと言うのだッ!
認めるか。
確実に、このゲームは、人の心を蝕んでいるのだと。
そして、狂気に満ちたあの『怪物』の存在を。
自分の見た映像が心から早く消え去ることを祈った。
知らずの間に己に芽生えた殺人に対する嫌悪感などに、気がつくはずも無く。
「未だ、様子を見る必要があるか」
未だ拭えない吐き気を抑えながら、再び大地に目を向けた。
【アルガス(視覚聴覚向上) 所持品:無し
行動方針:偵察し、使えそうな人物をこのステージの間に捜す 第二行動方針:多くのアイテムを集めておく
最終行動方針:どんな手を使ってでも生き残る。但し、本人は気づいていないが殺人に対して嫌悪感アリ】
【現在位置:ナジミの塔最上階】
最終更新:2008年02月17日 22:13