第74話:そして伝説の後
殺し合いというには似合わない風景がそこにあった。
そよ風が髪を揺らす。花の香がかすかに漂う地。
そこに、彼はいた。
黒い髪。正義に満ちた瞳。何故彼が「勇者」と呼ばれるのか、それを体現する姿。
彼の名はアルス。かつて闇に囚われた世界を救った勇者である。
彼はすぐに支給品を確認した後、真っ直ぐ西へと歩いていた。
彼の支給品は番傘とダーツがいくつか、そしてドラゴンテイル。
自衛への転用にとしては非常に使える物が一つあったことが、彼を安心させた。
だが、彼には当初から考えていたことがあった。
「やっぱり僕は、人を殺したくは無い」
―――――当然だった。
人の命を自ら絶ちに行くなどと、自分が出来るはずも無かった。
出来たとしても、その相手は最高に悪事を働いた相手にのみだろう。
殺し合いをゲームなどと称するあの魔女に、アルスは憤慨していた。
怒りを覚えた足は速い。
怒りを覚えた意思は固い。
正義の旗を振りかざそうとする足は速い。
正義の旗を振りかざそうとする意思は固い。
「まずは信用できる人間を探して…それから方法を探ろう。
かつての仲間と戦わずに済む方法…。そして仲間と共に殺し合いを止められる方法を…」
人を悲しませないため、
人を苦しませないため、
人が人の証を棄てる道を潰すため、
勇者の戦いが始まった。
【アルス(DQ3勇者) 所持品: ドラゴンテイル 番傘 ダーツの矢(いくつか)
行動方針:信頼できる人間を探す(まずは西へ真っ直ぐ進む)】
【現在位置:アリアハン西平原】
最終更新:2008年02月17日 22:23