FFDQバトルロワイアル3rd資料編@wiki 479話


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第479話:Persuasion and Compromise


「マス…、プサンがこの城にいるって?」
「ええ。ティーダ君と一緒だったらしいですよ。今エドガーと二人で迎えに行っているところです」

タバサの眠る部屋に入りながら、セージはとりあえず言い易い方の情報だけをリュカに話した。
問題はこの後。
仲間のマーダー化情報など言い難いだけではなくリュカだって聞きたくないだろう。
だが、言わないなら言わないで問題を先送りにするだけだし、事実を認識していないことはこの世界では命取りになる。
いや、だが、しかし、やはりここはタイミングというものが……。

「何か、言い難い情報があったんですか?」
「え、いや、特に何も」

咄嗟に否定の言葉が出てしまい、セージはそれとなく視線を外す。
明らかに怪しい動きではあるが、実際、この「目」に見つめられてしまえば嘘も誤魔化しも効かないのだ。

「あー、すみません。ホントはとっても言い難い情報があるんです」

耐えかねたセージは深く、それこそ床に額が付くくらい、頭を下げた。
リュカならこの行動に素早く反応して「そんな、謝らないで下さい」と言いそうなものだが、何故かこのときは反応が無い。
不信に思ったセージがチラと視線を上げると、リュカはじっと、何か真剣そうに部屋の扉を見つめていた。

「どうかしました?」
「聞こえるかい?」

リュカは視線を扉から移さずに問う。
セージはリュカに倣い、少し難しい顔をして扉を睨み、聞き耳を立てた。
何か足音のようなリズムの、だが足音よりずっと平和的な音が微かに聞こえる。
擬音語にするなら「ぷよんぷよん」とか「ぽよんぽよん」とかいう音だ。

不意にリュカが扉へと向かう。
慌ててセージは止めようとしたが、リュカは「大丈夫」と言って微笑んだ。
その微笑があまりに嬉しそうだったものだから、ついセージはその場で固まってしまった。

何の警戒も持たずにリュカは扉を開ける。
そして、ちょうどこの扉の前にいた彼に向かって、彼の名を呼んだ。



調べるのは東塔。
探すは主君。
塔自体は本城に比べ随分と小さいが、それでもワンフロアに幾つかの部屋が存在する。
なるべく早く、先ほどの四人が戻ってくる前にリュカ様を御探し申し上げなければならない。
何かを成すには時間は少なく、己の状態も万全ではない。
さらに言うならこの城にいる「敵」の数が思ったより多そうだということ。
先ほどの四人に加え二人。これは確実。
それにアリーナの言っていた黒服と貫頭衣。不確定ながらラムザ=ベオルブという男。
黒服と貫頭衣は先ほど森で突然現れた二人組のことのようにも思えるが。
今の自分に全員を相手することは出来ない。
だが何は無くとも、このマントだけはお渡ししなければならない。

ピエールは焦っていた。
塔の下の階から探し、主君は見つからない。時間は無い。
自然と早足になる。気配を絶つことへ十分な集中力をまわせない。スライムが揺れる。
ピエールは幾番目かの扉の前に立つ。
そこで僅かに人の気配を感じ、扉ではなくスネークソードに手が伸びる。
扉の開く音がする。

ピエールはその名を、彼に呼ばれた。


「ピエール」

その名前自体に電撃の性質があるかのような衝撃に、セージは見舞われた。
リュカは今なんと言った?
先ほどの音はどんな音だった?
今開かれた扉の向こうにいるのは何者だ?

「よかった、無事で。本当によかった」

リュカはピエールの騎士の手を取る。
ピエールは動けずにいる。余りに突然のことで、体全体が硬直している。
先に動いたのは、セージの方だった。

「リュカさん。彼から離れるんだ!!」

敵単体を確実に狙い打てる炎の呪文をセージが紡げば、
ピエールはリュカの手を振り払いスネークソードでセージを狙う。

「メラゾ…」
「ピエール、やめるんだ!!!」

凛とした声がピエールとセージの一連の行動を停止させた。
ピエールはスネークソードを収めると、リュカに向き直り騎士の礼を取る。

「御無礼を致しました」
「彼は僕の仲間なんだ。タバサをずっと守ってくれた。敵じゃないよ」
「御意」

リュカはスーッと息を吐くと、今度は固くこの忠臣を抱きしめた。


セージは何がなんだか分からずにいた。
自分に向けられたピエールの殺意は明らかで、それだけで彼がマーダーだという裏づけになる。
しかしリュカに向けられるその態度は、どんな王宮でも通用する騎士のもの。
さらに彼は無防備に背中を自分に晒し、リュカに弱点であるスライムの頭を下げた。
けれど己の体液のほかに明らかに他者の、もっと言えば人間のものである血を浴びたその姿は、
彼が今まで何をしていたのかを物語るのに十分であるはずなのだが。

「セージ君。彼がピエールだよ。ようやく会えた」
「リュカさん。言い難いんだけど彼は…」
「ピエール!? やっぱり、ピエールね!!」

意を決して搾り出した言葉はタバサの声に被る。
どうも騒ぎすぎたのか、目が覚めてしまったようだ。
タバサもまた、ピエールの元へ駆け寄った。

「よかった。ピエールなら大丈夫だって思ってたけど、よかった、本当に」
「……」
「無事、だけど、怪我いっぱいしてるんだね。
 お兄さん。ピエールの怪我、治してくれますか?」

「な~にいってるんだよ。当然じゃないか。
 あ、どうせだから回復呪文の勉強も兼ねてやってみるかい? 大丈夫、僕がついていてあげるから」
そんな応えを、タバサは期待していた。
けれどセージは難しい顔をしてピエールを睨んだまま。

「二人とも、悪いけど、ピエールの傍から離れてくれないかい?」

タバサは不安な表情を見せる。
リュカは気付いたようにピエールの姿を見て、セージに視線を戻し、そしても一度ピエールへと移す。
ピエールは軽く頷き、リュカはタバサの手を引いてピエールと少し距離を取った。


「あのね、彼は、エドガーの仲間を殺しているんだ」

つい先ほど聞いた話である。
だからセージは慎重に言葉を選び、事実だけを、少なくともエドガーの話を信じるとした場合の事実だけを伝える。
タバサは口元に手をあて目を大きく見開いた。
リュカは微かに眉をひそめた。

「そうなのかい。ピエール」
「ここに来るまでの間に幾人かの敵を殺したのは事実です」

リュカの瞳が悲しみに沈み、セージが一歩前に出る。
だがタバサは、そのセージとピエールの間に割り込みセージに向かって両手を広げた。

「違う、何かの間違いだよ。ピエールは魔物だもの。誤解されることだってある。
 ピエールが、ピエールに限って自分が生き残るためにゲームに乗るなんて、そんなことありえないよ。そうだよね」

タバサは振り返り、ピエールの目を見つめる。
ピエールは頷き、臆することなくタバサの目を見つめ返し、そしてリュカへと視線を移す。
その目は、偽りの曇りなど微塵もなく輝いていた。

「その目を見れば、本質が見える。ピエールの目には狂気も、邪気も、悪意も感じません。
 僕の知っているピエールそのものです。それでも危険だと、信用できないというなら、僕が彼を連れてここから出ます。
 でもタバサは……」
「私も一緒に行く。お兄さんにはお世話になったけど、でも、ピエールは大切な仲間なの」

セージは頭を抱えた。
自分に相手を見てその本質を言い当てる能力などありはしないのだけれど、リュカに対する忠誠心が偽りであるとは思えない。

「わかった。わかりましたよ。とにかくエドガーが戻るまでは様子を見ましょう。
 実際襲われたのは彼だし、リュカさんも詳しく事情を聞きたいでしょう?」

ただし、とセージは付け加えると、ピエールに向かってマホトーンを唱えた。

「それと武器も差し出してくれ。と・り・あ・え・ず・ね」

満面の笑みとウインクをしてみる。
セージにしてみれば、少しおどけて敵愾心を解きほぐそうと思ったのだろうが、ピエールの無反応に空気が重くなる。
そんなことはお構いなしに、ピエールはスネークソードをセージにではなくリュカに差し出す。
そして、同時にザックの中にあった王者のマントを取り出した。

「これは…、王者のマントじゃないか」
「このマントをお渡しするために、私は参ったのです」
「そうか、わざわざありがとう」
「そのような、当然のことをしたまでです。リュカ様こそ、御無事で何よりでした」
「でも、本当にひどい傷だ。ねえ、セージ君…」
「回復も、エドガーが戻るまで待っていてもらえませんか?」
「いえ、この身のことなどリュカ様のお手を煩わすことではございません。それでは私はあちらにて」

ピエールは選んで下座に座る。
下座といってもすぐに逃げ出せるほど扉に近いわけではなく、セージの監視の目を十分に受けることのできる位置である。
その位置に関しては、セージには文句の付け所がなかった。


考えろ、考えろ、考えろ。
武器はなく、呪文も封じられている。
だがそんなことより、今この場でこの二人を手にかけてはいけない。
リュカ様の目の前で、少なくとも今はリュカ様の仲間と称するものたちを殺してはいけない。
それは、リュカ様を傷つけることになる。
体ではなく心を、リュカ様の心を傷つけることになる。
そのようなことは絶対にあってはならない。
あの方の心を汚してはならない。
考えろ。
すぐにあの四人とそれに加え二人がここに戻ってくるだろう。
自分は或いは殺されるかもしれない。
リュカ様はかばってくださるだろう。
だがそのために、リュカ様が傷つくようなことはあってはならない。
考えろ。
リュカ様を安全な場所に保護し、かつ敵を屠るためにはどうすればよいか。
そしてアリーナ。
あの女が来る前にリュカ様をなんとしてでも避難させなければ。


スライムナイトは思考に沈む。
その目は、いつかの輝きと同じ忠義の色。
しかし、リュカは気づいているのだろうか。
その目にかつてあった豊かな感情が、深い闇に沈んでいることを。
その目にかつてあった主の娘に向ける忠義の印が、今は掻き消えてしまっていることを。

【セージ(HP2/3程度 怪我はほぼ回復 魔力1/2程度)
 所持品:ハリセン、ナイフ、ギルダーの形見の帽子、イエローメガホン
 第一行動方針:ピエールを見張る
 基本行動方針:タバサに呪文を教授する(=賢者に覚醒させる)】
【リュカ(MP1/2 左腕不随)
 所持品:お鍋の蓋、ポケットティッシュ×4、アポカリプス(大剣)+マテリア(かいふく)、ビアンカのリボン、ブラッドソード、
 スネークソード、王者のマント
 第一行動方針:待機
 基本行動方針:家族、及び仲間になってくれそうな人を探し、守る】
【タバサ(HP2/3程度 怪我はほぼ回復)
 所持品:E:普通の服、E:雷の指輪、ストロスの杖、キノコ図鑑、悟りの書、服数着、ファイアビュート
 基本行動方針:呪文を覚える努力をする】

【ピエール(マホトーン、HP1/5、MP1/4)(感情封印)
 所持品:毛布、魔封じの杖、死者の指輪、ひきよせの杖[1]、ようじゅつしの杖[0]、レッドキャップ
 第一行動方針:リュカを無事に逃がす方法を考える
 基本行動方針:リュカ以外の参加者を倒す】

【現在位置:サスーン城 東棟の一室】