84話

第84話:ひらめきとすれ違い


二人のアリーナは、相変わらず壺の中でにっちもさっちもいかなかった。
「狭ーい!」
「声が響くから怒鳴らないでよ!」
まさか壺の中に人が入っているとは思うまいから、誰かに襲われる心配は
いらないが、このままでは、壺から出ることはおろか、腕一本自由に動かせない。
「このままじゃ移動もできないわね…そうだ!」
言うなりアリーナは、狭い壺の中で、精一杯反動をつけて体を揺さぶった。
「ちょっと、狭いったらー!」
ごとっ。壺がゆれる。
ごとごとごとっ、ごとん!壺は倒れた。そのまま勢いよく転がりだす。
「やったぁ!これで少なくとも、移動だけはできるわ!」
「すごーい!さすが私ね!で、どうやって方向転換したり、止まったりするの?」
次の瞬間、アリーナの笑顔が凍りついた。
「考えてなかったぁぁぁぁぁ!」
「ばかぁぁぁぁぁっ!」
二人のアリーナは、同時に絶叫した。

「?」
ライアンは、ふと前方に見知った人間の声がした気がして耳を澄ませた。
彼もまた、この血生臭いゲームから、一人でも多くの人を救おうと思っていた。
そのためには-ゲームに乗り、非道を冒そうとする者を斬るのは勿論のこと、
主催者-あの魔女-を倒さねばならないと考えていた。
だが、前者はともかく、後者についてはどうしたらよいのか彼にも
見当もつかない。
「ソロ殿かミネア殿なら、なにかよい方策を考えてくれるだろうか」
そう考え、仲間を求めて黙々と歩く彼の耳に、なにか重い物を転がすような
音が聞こえてくる。
「…?」
立ち止まった彼の前を横切ったものは、凄まじい勢いで転がってゆく、壺だった。
「!」
思わず飛びのいたライアンは、ただ呆然と、転がってゆく壺を見送った。そして一言、
「変わった世界だ」
と呟いて、再び歩き始めた…
…導かれし者たちは、ここでは出会うことはなかったのである。

【アリーナ(分裂状態) 所持品:分裂の壺
 行動方針:とにかく止まる】
【現在位置:レーべ南東の山岳地帯近くの平原→南東へ】

【ライアン 所持品:不明 
 第一行動方針:仲間を探す 第二行動方針:マーダ-を減らす 
 最終行動方針:アルティミシアを倒す】
【現在位置:レーべ南東の山岳地帯近くの平原→東へ】

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最終更新:2008年02月17日 22:55
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