第279話:騎士の面前
マティウスは気づいていなかった。
彼の存在に、彼のその眼光に。
それは幸いだったのか、それとも不運だったのか。
マティウス達が扉を発見する直前、
ライアンは彼らの存在にいち早く気づき、そして何故か木の上に上った。
今冷静に考えれば馬鹿なことをしたと、ライアンも思う。
だが、今更に冷静になるとその理由はわかった。
それはマティウスの覇気。
ただならぬ、御稜威をも射していると思えるその覇気。
彼から感じたそれが、ライアンを遠ざけたのだ。
だがそれだけではない。
マティウスから、更に感じ取ったものがあったのだ。
それは、闇。
かつて、マティウスのいる世界を暗黒に染めようとした者がいた。
その者がまさにマティウス張本人だった。まぁライアンがそれを知る由も無いのだが。
だがライアンはその二面性に無意識に気が付いたのだ。
何かがおかしい。何かに違和感を感じる。
そう、それは自分のかつての敵であるピサロに似ている。
今はまだそう易々と近づくべきではないのだと体が言った気がした。
だが、すぐに光へと消えていった彼には仲間がいた。
それに「魔女討伐」という単語も聞き取った。彼は正義側の人間だろう。
色々勘繰っている間に去られたのは惜しいが、仕方が無い。また誰かを待とう。
ライアンは木から飛び降り、辺りを眺め、そして呟いた。
「臆病になったものでござるな……拙者も」
【ライアン 所持品:レイピア 命のリング
第一行動方針:扉前で待機し、仲間を探す&マーダーを減らす
最終行動方針:アルティミシアを倒す】
【現在位置:レーベ南の森中央】
最終更新:2008年02月17日 22:57