吉田


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「吉田さんは何か趣味を見つけた方がいいですよ」
 食堂で昼食を食べていると、後輩の和田にそう言われた。
 確かに今の私には趣味というものがこれといってなく、ただ漠然と仕事をして暮らす日々を送っている。
私もこの状況はよくないと思っているのだが、四十を超えた年でなにか新しいことを始めるのも億劫だし、
ウォーキングなども私には楽しめそうもない。そもそも私がしている仕事は残業や休日出勤が多く、
まともな趣味は持てるかというといささか疑問である。そう和田に伝えると、
「それならゲームなんてどうです。楽器みたいに練習する必要も、ウォーキングみたいに毎日続けなければいけないというわけでもありませんよ。
前までゲームは悪だと言われていましたが、DSやこの前でたwiiで印象は随分とよくなりましたし。私もよくゲームをやりますが、
最近のゲームは凄いですよ。それに吉田さんは前DSに興味を示していたじゃないですか」

確かに脳を鍛えるというものは少し興味があった。結局買わずに月日は流れたのだけれども。
「まぁゲームにしろなんにしろ趣味は持っていて損は絶対にありませんから、息抜きにもなりますし」
 和田はそう言うと食べ終わった食器を載せたお盆を持って、その場から離れた。
 趣味にゲームね……。
 少し考え事をしながら、私は食べかけの焼き魚を突いた。

残業のせいで、時計の針は九時をとっくにすぎていた。仕事帰りの一杯でほろ酔い状態のサラリーマンをちらほらと見かける。
 いつも私は会社から直接家に帰るのだが、今日は少しヨドバシカメラに寄ってみることにした。
 ヨドバシカメラの中は、暗い外とは違い、眩しいぐらいに明るい。そういえばこんな時間にヨドバシカメラに来るのは初めての事だった。
閉店時間は十時とのことだったので、足早に玩具コーナーへと向かった。
 時間帯が時間帯だけに客はあまりいない。スーツ姿の親父がこんなところにいるのは、さぞかし目立つだろうと、
私はすぐに用事を終わらせて帰ろうと思った。しかし、初めてくるこのコーナーには私が理解できるものは殆どなかった。
どうせ買うなら最新機種を買おうと思ったのだが、どれが最新機種なのか全く分からない。どうすれば手っ取り早く目的を果たせるか。
やはり店員に聞くのが一番だろう。少し気恥ずかしさはあったが。

「あの……すみません」
「何かお求めでしょうか」
「新しいゲーム機が欲しいのですが」
「機種名などは分かりますか」
 ここで私はしまったと思った。和田が何か機種名を言っていたが、もう頭の中から消えていた。
買い物に来る前に調べとくのだったと後悔した。
「すみません。機種名は忘れました。取り敢えず最新機種をと」
「そうですね。最新機種というとwii、PS3、XBOX360がありますが、wiiとPS3は申し訳ございませんが、今は売り切れです」
 今はあるのはXBOX360という物だけか。私はその機種のことを全く知らない。私は少々迷ったが、
ここで買わないとDSの二の舞になってしまうと思い、私は決断した。
「XBOX360をください」


「和田君、君が言ったとおり私もゲーム機を買ってみたよ」
 昼休みの昼食の時間、私はそう和田に報告した。
「吉田さんは意外と行動が早いんですね。でもよく買えましたね。Wiiを。いまどこも品薄で大変らしいじゃないですか」
「いいやwiiは買えなかったよ」
 私は首を横に振った。
「じゃPS3を」
 また首を振る。
「XBOX360というのを買ったよ」
 そう言うと箸を持つ和田の手が一瞬止まった。
「へぇ意外ですね。まさかXBOX360を買うとは思いませんでしたよ」
 本当に驚いたように和田は言う。しかしどことなく嬉しそうだ。
「ソフトは何を買われたんですか」
「実は……」

ここで私は昨日、本体だけ買ってソフトを買わなかったことを話した。ソフトがないとできないと気づいたのは、家についた後だ。
「それは面白いですね。本当に吉田さんらしい」
 和田は笑いながら言葉を続けた。
「じゃあ私がお勧めのソフトを貸しますよ。今日もしよかったらうちに取りにきてください」
「君の家にか」
「勿論です」
「私が君の家に行って問題はないのかね」
「何が問題になるのでしょうか。ただソフトを貸すだけですよ」
 それはそうだが……。
「会社でゲームの貸し借りをする方が駄目なきがしません。なんとなくですけど」
 その言葉で私は和田の家に行くことに決めた。