開かずのZOO

あかずのZOO【登録タグ:2013年 ふなむし 初音ミク

作詞:ふなむし
作曲:ふなむし
編曲:ふなむし
唄:初音ミク

曲紹介

――小ちゃくなりたいよう!
――小ちゃくなりたいよう!
(吉原幸子「喪失」より)

歌詞

ふなむしのブロマガより転載)


寄木の匣 斂める眼
雨衣の薄い胸には
お乳を欲しがる指が
寿墓を建てている
雨音に脳を流した

おかあさんを啖べている
きりんさんの首を
滑り降りたら夜の底
冷たい便器に
灌がれる天使の血清

門の前でいやいやしてる
……鳴声だけの獣と交尾する

ちいさなお葬式
かぷかぷ笑う顔は
歯形の死化粧

折鶴を妊る
赤い赤いお月さま

赤いレンズ雲の下……
曇った壜を透かして見る遠景
赤や緑の崩れたゼリーが流れ落ちる
顕微鏡の世界
プレパラートの埃のように
わたしは小さくなって蹲り
口の中で注意深くトローチを溶かしながら
閉園を告げる放送を待っている

ブレザーのワッペンを剥がされて
代わりに貰った骨牌
それを使ってわたしは
動物たちから
欠けた黒蝶貝の釦や
なつかしい亜麻のタオルケットを取り上げなければならない
賭けられた脳
蝿が浮かんだミルクのカップをわざと落として
歪んだ檻の間を逃げ出した

赤いレンズ雲の下……
妊娠した時計の埋却地を覆い隠す
清潔なガーゼの天幕をいくつも通り越す
異星の刑具のように暗い空に貼り付く
霊柩観覧車の夥しい花序の影が砂丘を犯している
点綴する食虫花に蜜蟻が規則正しく飛び込む音を数えながら
注意深くトローチを小さくしていく
そうすると
わたしも小さくなっていく

鳴き声だけが檻ごとついて来る禽獣園
息遣いだけが檻ごとついて来る禽獣園
匂いだけが檻ごとついて来る禽獣園
曇った壜を流れ落ちる奇妙な影絵に織り込まれて逃げる
赤や緑の崩れたゼリーと崩れながら流れ落ちる
わたしは足跡だけになる

痩せた伝書鳩が言葉のない大陸へ墜ちていく
差し伸べる氷橋の両腕が風に切り落とされる
ポケットの中 
死ごもりの楽器になり擬-擬死に泥む中止卵

ざわめくZOO
夜明けの晩の地平線から滑落する骨の器
空笑い
しゃぼんの脳が壊れたら
鏡を残してなにもいなくなる

わたしがんばった!

みんなを殺すためにあつめたどうぶつたちが
やさしくするから
わたしは餌をあげすぎてしまう
だめなのに
だめなのに
だめなのに

こわいZOO
こわいこわいZOO
捕食の牙が脳に触れるまでの
こわいこわいZOO
索餌の舌に舌で触れる

こわい
こわいこわいZOO
うさぎの血で化粧した唇
こわい
こわいこわいZOO
索餌の舌が脳に触れる

こわい
こわいこわいZOO
ゾエトロープの灯を吹き消す
こわい
こわいこわいZOO
匣の中 眼だけが覚めてる

こわい

死籠りの月から垂れる氷柱のように
宙吊りになって
そこだけ明るむ刑典の星
その燭涙を舐めに来る影戯の一群
トロンプルイユの歪んだ檻に持ち去られ
暴かれ続ける艶のない臓器

もう誰も捜さない手袋を埋却するためだけに
雪催いの空はギロチンをくぐり抜けて来る
しかし
刑具だけが描かれない処刑場の絵
獣だけが描かれない獣園の絵
バロックの卵蛋の内側に自切の手足を散らかして
小さくなろうと身を捩る胚
緘黙する一ツ眼の時計群
振り子と交わる鏡像の膣から流れる血で洗滌う
骨の器

噤んだまま
内向きに食べたがる墓
裏返しに勃起して
発情する墓
疫癘のはやさで実る眼を
繭掻きの舌が撫でていく
刑屍のない刑戮
柔らかな鏡の穽

開かずの

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最終更新:2023年12月12日 09:12