カグヤの灯篭

かぐやのとうろう【登録タグ:2017年 v flower コウ 殿堂入り
作詞:コウ
作曲:コウ
編曲:コウ
唄:v flower

曲紹介

——絶望接種——


第二章「カグヤの灯篭」

歌詞

(配布歌詞より転載)


 カグヤが針を刺すと、その民の顔色はみるみる良くなった。
 「姫様、何時も有難う御座います。」
 民は深々と頭を下げ、去っていった。
 「ところで姫、その道具は何と云う物なのでしょうか。」
 臣下のナツオリが尋ねた。
 「これはな、人の病める生気を取り除くことができる、絶望"摂取"じゃ。」

 「昔私が傷をつくった時のことを思い出しますね。」
 ナツオリは姫に笑顔を向けた。


緩り緩り色付く紅葉の
紅が頰に映る季節は
未だ知らない遊びをす
世の振れも今は無いと誤魔化した

鬼さん此方 魔の在り処
手の鳴る方へ 逝かないで
鬼さん此方 其の温もりよ
夏を引かないで

 「戦がもたらすのは絶望だけだ。」 

共に携えた醒の鍵
永遠に其の罪も寄り添って
此の世の誰より弱い手を握る

愛した光を失った
人が冀う夢灯篭
幾夜血で流せば戦は終るか


 「姫、直にこの城にも火矢が降るでしょう。」
 ナツオリは険しい顔で姫を見つめた。
 「民を捨て逃げます。」


緩り緩り流るる喜の刻
二人影法師を匿う手
けど未だ未だ答えは無い
問い掛けをそっくり放り追い掛けた

鬼さん此方 魔の在り処
手の鳴る方へ 逝かないで
鬼さん此方 其の輝きで
堕ちた花弁

 「もう少し、これで民を救いたい。」

共に駆け抜けた蒼穹天下
人を憂うのは”優”しいと
 「姫様はお優しいのですよ。」
此の世の誰より強い手で握る
 「私が時間を稼ぎます。その間に民を。」

カゾクを射抜いた魔の手で
願いを託した夢灯篭
何時も変わらない其方だけを映して


 「姫様、限界です。ここを離れます。」
 ナツオリはカグヤの手を引いて駆け出した。
 堀の内部まで炎が燃え盛り、二人を飲み込もうとしている。
 「絶望を食らい過ぎたのかもしれん。」
 見ると、注射器を持ったカグヤの手が赤く爛れていた。
 「そういえばあの時、母もこのような手をしていた。」


鬼さん此方 死の在り処
手の鳴る方へ 逝かないで
鬼さん此方 暴露(ばれ)ずに済めば
冬よ追わないで

鬼さん此方 死の在り処
手の鳴る方へ 逝かないで
鬼さん此方 瞳を差し出せば
闇を買えるか

 唯一の退路であった裏門も、無数の兵の火が灯篭の様に揺らめいていた。
 そして降りかかる矢が何本も、姫を庇ったナツオリの躰を貫いた。

壊れた世界に壊れた音が
鳴り響いては消えて失せてく
 「姫様、私を置いてお逃げください。」
塗り潰してく太陽
其れに抗う月よ
 「これは未来を創るための道具じゃ。」
 姫様はそう云って、
今其の灯を守れるなら
 首に針を刺した。
この身呉れようぞ
 「これが絶望"接種"じゃ。」

其れを脅かす千の敵は
火を灯した此の億の愛で
唯一を守る化物と為りて
 ナツオリアイシテル

共に綴り合った日々は
灯篭の灯る月夜に
 カグヤが鎌を振るうと瞬く間に辺りは血の海となった。
再び其方に届けよう 恋も

此処なら良いか
置いて逝くには
鬼の雫が輝いた

 絶望の力を使い果たしたカグヤは、元の姿に戻った。
 「人は思い出の中では死なぬよ、ナツオリ。」
 そう言い残すと、月の光に混じって溶けていった。

涙に射し込む優しい影が
夏折を照らして

 ナツオリは足元に残された絶望接種を手に取った。
 「今の私の最大限の絶望を。」
 そう独り言ちて腕の静脈を刺し、青黒い液体を採取すると
 すぐさまそれを自らの首に押し当てた。
 「貴女を取り戻しますよ、必ず。」
 そうしてナツオリは幻遊世界の旅人となった。


コメント

  • うぽつです! -- 名無しさん (2017-07-17 19:06:02)
  • 冀う=こいねがう -- 名無しさん (2017-07-18 21:01:53)
  • 歌ってるのはミクなの? -- 名無しさん (2017-07-20 12:44:26)
  • ↑「flower」が歌ってる -- 名無しさん (2017-07-20 17:33:13)
  • 仕事早い。流石 -- 名無しさん (2017-07-26 13:58:08)
  • 暴露ずはなんて読むんですか? -- 名無しさん (2017-07-30 15:29:50)
  • ↑ばれず -- 名無しさん (2017-07-31 08:10:33)
  • 夏折(ナツオリ)って、ナツキって読んだりしないよね...? -- アイ (2017-09-16 18:09:48)
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最終更新:2023年12月12日 13:25