ガンダムF フィナーレⅡ

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[[もどる>ガンダムF フィナーレ]] #contents() 「なんだ、カーネリアの妹か」  という失望が、エウリュノメ・ソレルにとってエターナ・フレイルの全てであった。 彼女がその姉と共に出奔する際に、犯した罪を問うほどの関心はないのだが、 武を司るギィ・ギンガナムなどはこれを看過すべきではないと強く主張するのである。  それをアグリッパ・メンテナーにまで交渉の道具として使えると後押しされれば、 この交渉の席で口にせざるを得ないのが女王たるエウリュノメの立場なのだ。 「貴公らの言うところのターンXな。あれは我がソレル・ブリゲードのものでな?」  民主的に選ばれたという地球連邦政府の長の、その皺の多い顔を覗き込み、 王となるべくして生まれた種の女がどこか威圧的な笑みを浮かべる。 所詮、下々の顔色を窺ってきた王というのはこんなものなのかな、という感触。 この老人に覇気を感じられないのは、それだけ地球が疲弊しているのだと想像した。  であれば、異邦人に対する貴重な戦力として、Xを返すという選択肢はあるまい。 MS一機と引き換えにどれだけの土地を確保できたものか――。 卓上に広げられた地球の地図を見下ろし、エウリュノメはコツコツとテーブルを叩く。 ***「サンベルトをいただければXについては不問とするが、どうか?」 「北米は我々の要衝であります、女王陛下。それを寄越せとおっしゃる」 「フン……? Xにはそれだけの価値があると思うがな、キャンベル中将殿」  獅子の鬣のようなキャンベル中将の金髪を見やり、くつくつとエウリュノメが笑う。 獣が吠えるのは劣勢である証であろうと呟き、地球側の代表者たちを挑発した。 長旅を終え疲弊している今、武力衝突に至ればこちらとて痛手を被るとは思えど、 火遊びは危険であればある程に愉快なものだと心弾むのがエウリュノメという女だ。  そういう気質を、かつての親衛隊長の妹がどこまで理解しているものだろうか。 引っ込み思案で目立たない娘であったなとエターナの能面のような顔を見詰め、 地球側に折れるよう説得する器量があるものかとアグリッパ・メンテナーは嘆息した。 「あは。これ、サイズぴったりですね。測ったみたい」  パイロットスーツを着用し、鏡の前でくるりと回転してレイチェル・ランサムが笑う。 ∀ガンダムに専用のスーツが用意されている事自体は、そうそう不思議な事ではない。 あの異常なまでの機動性を思い返せば、それ相応のものが必要だろうとは思うのだが。 「明らかにガキんちょが操縦するのを想定してるのがムカつくんだ」  と、ノーラン・ミリガン元少尉は年下の友人を見やってから頭をガリガリと掻く。 あの華奢な少女でなければ、せいぜい細身の少年しか着られないだろう専用スーツが、 民間人をまたも戦場に送ろうという意思を明確に物語っているのが不愉快なのだ。 「彼女の能力が誰よりも優れているのは事実ですから、戦術的には妥当な判断ですね」 「……アンタは本当にクールだね。でもさ、ニキ。それ、軍人としては失格だからな」 「アナタは民間人ですよ、ミリガン」  まだ軍人の視点で物事を見る癖が抜けないのですかと呟き、ノーランの朋友たる、 ニキ・テイラー元少尉がお茶受けのクッキーを片手に軽く溜め息をついた。 「確かに大人のやることではないとは思いますが」  ニキにもノーランにも、そしてルナ・シーン元少尉にもレイチェルほどの資質はない。 地球の運命を背負うには力不足だと自覚しているからこそ、そうせざるを得ないのだと。 あきらめ、妥協するのもまた大人の処世術ではあろう、が。 「レイチェル・ランサムはアナタが思うほどに子供ではないでしょう。  子女に三日会わずばこれを剋目して見るべしと黒歴史時代の諺にも言います」  あれから一年ですよと呟いて、ニキがクッキーを口に運ぶ。舌に広がる塩味に唸り、 その切れ長の瞳がレイチェルの隣で無表情にたたずむルナ・シーン元少尉へと泳いだ。 過去にキリシマが作ったニホンクッキーは米で作っていたかなと記憶をたどり、 それを模倣したかのような粗悪品の製造者を思わず責めるような目で凝視する。 「……外見と中身が異なる、ということは十分にあり得ると思います。  レイチェルとシーンさんの……いえ。我々人類の想い、魂が込められた、  二つの不死鳥を取りこんで修復した∀-99であればそれは……」  それはレイチェル・ランサムを守るのではないでしょうかと言い掛けて、 もっさりとした食感のクッキーを喉に詰まらせ、ニキは紅茶を口に流しこんだ。 #amazon2(600x520)
[[もどる>ガンダムF フィナーレ]] #contents() 「なんだ、カーネリアの妹か」  という失望が、エウリュノメ・ソレルにとってエターナ・フレイルの全てであった。 彼女がその姉と共に出奔する際に、犯した罪を問うほどの関心はないのだが、 武を司るギィ・ギンガナムなどはこれを看過すべきではないと強く主張するのである。  それをアグリッパ・メンテナーにまで交渉の道具として使えると後押しされれば、 この交渉の席で口にせざるを得ないのが女王たるエウリュノメの立場なのだ。 「貴公らの言うところのターンXな。あれは我がソレル・ブリゲードのものでな?」  民主的に選ばれたという地球連邦政府の長の、その皺の多い顔を覗き込み、 王となるべくして生まれた種の女がどこか威圧的な笑みを浮かべる。 所詮、下々の顔色を窺ってきた王というのはこんなものなのかな、という感触。 この老人に覇気を感じられないのは、それだけ地球が疲弊しているのだと想像した。  であれば、異邦人に対する貴重な戦力として、Xを返すという選択肢はあるまい。 MS一機と引き換えにどれだけの土地を確保できたものか――。 卓上に広げられた地球の地図を見下ろし、エウリュノメはコツコツとテーブルを叩く。 ***「サンベルトをいただければXについては不問とするが、どうか?」 「北米は我々の要衝であります、女王陛下。それを寄越せとおっしゃる」 「フン……? Xにはそれだけの価値があると思うがな、キャンベル中将殿」  獅子の鬣のようなキャンベル中将の金髪を見やり、くつくつとエウリュノメが笑う。 獣が吠えるのは劣勢である証であろうと呟き、地球側の代表者たちを挑発した。 長旅を終え疲弊している今、武力衝突に至ればこちらとて痛手を被るとは思えど、 火遊びは危険であればある程に愉快なものだと心弾むのがエウリュノメという女だ。  そういう気質を、かつての親衛隊長の妹がどこまで理解しているものだろうか。 引っ込み思案で目立たない娘であったなとエターナの能面のような顔を見詰め、 地球側に折れるよう説得する器量があるものかとアグリッパ・メンテナーは嘆息した。 「あは。これ、サイズぴったりですね。測ったみたい」  パイロットスーツを着用し、鏡の前でくるりと回転してレイチェル・ランサムが笑う。 ∀ガンダムに専用のスーツが用意されている事自体は、そうそう不思議な事ではない。 あの異常なまでの機動性を思い返せば、それ相応のものが必要だろうとは思うのだが。 「明らかにガキんちょが操縦するのを想定してるのがムカつくんだ」  と、ノーラン・ミリガン元少尉は年下の友人を見やってから頭をガリガリと掻く。 あの華奢な少女でなければ、せいぜい細身の少年しか着られないだろう専用スーツが、 民間人をまたも戦場に送ろうという意思を明確に物語っているのが不愉快なのだ。 「彼女の能力が誰よりも優れているのは事実ですから、戦術的には妥当な判断ですね」 「……アンタは本当にクールだね。でもさ、ニキ。それ、軍人としては失格だからな」 ***「アナタは民間人ですよ、ミリガン」  まだ軍人の視点で物事を見る癖が抜けないのですかと呟き、ノーランの朋友たる、 ニキ・テイラー元少尉がお茶受けのクッキーを片手に軽く溜め息をついた。 「確かに大人のやることではないとは思いますが」  ニキにもノーランにも、そしてルナ・シーン元少尉にもレイチェルほどの資質はない。 地球の運命を背負うには力不足だと自覚しているからこそ、そうせざるを得ないのだと。 あきらめ、妥協するのもまた大人の処世術ではあろう、が。 「レイチェル・ランサムはアナタが思うほどに子供ではないでしょう。  子女に三日会わずばこれを剋目して見るべしと黒歴史時代の諺にも言います」  あれから一年ですよと呟いて、ニキがクッキーを口に運ぶ。舌に広がる塩味に唸り、 その切れ長の瞳がレイチェルの隣で無表情にたたずむルナ・シーン元少尉へと泳いだ。 過去にキリシマが作ったニホンクッキーは米で作っていたかなと記憶をたどり、 それを模倣したかのような粗悪品の製造者を思わず責めるような目で凝視する。 「……外見と中身が異なる、ということは十分にあり得ると思います。  レイチェルとシーンさんの……いえ。我々人類の想い、魂が込められた、  二つの不死鳥を取りこんで修復した∀-99であればそれは……」  それはレイチェル・ランサムを守るのではないでしょうかと言い掛けて、 もっさりとした食感のクッキーを喉に詰まらせ、ニキは紅茶を口に流しこんだ。 「遅れているぞトニー・ジーン、なんという醜態かッ!」 『バンディットがオレに合わないんですよエイブラム中佐殿」 「甘えるな、准尉。真の戦士というものは武器を選ばず戦えるものなのだ!」 『それを言われちまったら……オレって適性ないのかな?」 「お前には優れた戦士になる素質がある、まずは基本を身体に叩きこめィ!」  トニー・ジーンが反政府運動出身の若者であれば、正規の訓練を受けていないことは、 百も承知のつもりではあったのだが……。基礎ができていないから応用が効かない。 モニター上で新型MSの編隊飛行を見つつ、エイブラム・ラムザット中佐は顎を撫でる。 #amazon2(600x520)

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