謀攻篇

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*謀攻篇  主に戦闘行為に訴える前に政治外交、謀略などで敵を下すべきだということについて書かれている。 ***篇名の「謀攻」とは? 「攻むるを謀る」(攻撃する計画を立てる)でも、「謀りて攻むる」(計画を立てて攻める)でもなく、「謀をもて攻む」、つまり謀計によって攻撃する、ということである。 作戦篇でも見た通り、武力行使には多大な損害が付きまとう。よって、武力を使わず、謀計によって勝つことが出来れば、自国の損傷は避けられる。しかも敵国にも敵国の部隊にも損傷は出ないので、事後の占領・統治の上でも負担が少なく恨みの情が残ることも少ない。 「戦わずして勝つ」ことができれば、それに越したことはないのである。 **戦争の目的 &bold(){“国を全うするを上と為し、国を破るは之に次ぐ。”} (敵国を損傷せずに降伏させるのが上策で、敵国を破滅させて降伏させるのは上策ではない。) 戦争の目的が敵国を降伏させることにあるなら、必ずしも武力行使によって敵国を破滅させる必要は無い。政治・外交によって降伏に追い込むことも可能である。 **戦わずして勝つ &bold(){“百戦百勝は善の善なる者に非ざるなり。”} (百たび戦って百たび勝つのは、最善とはいえない。) &bold(){“戦わずして人の兵を屈するは、善の善なる者なり。”} (武力を用いずに敵の軍隊を屈服させることこそ、最善の戦いである。) 戦争には金がかかり、兵士の命を奪う。いかに巧みに戦ったところで損傷は免れない。よって、百戦百勝するよりも、より損傷の少ない手段を選ぶべきである。 &bold(){“人の兵を屈するも戦うに非ず。”} (敵の軍隊を屈服させるのだが、戦闘によるものではない。) ***孫武は非戦論者? 謀攻篇の中で、政治や外交の力によって敵国を降伏させる重要性を説いてはいるが、決して非戦論者でも無抵抗主義者でもない。また非武装論とも無縁であり、確固たる軍備は自明のこととしている。これは計篇を見ても明らかであり、あくまでも合理的に国家の安全保障を考えた結果、消耗の少ない手段を採るべきだと主張しているに過ぎない。政治・外交が効力を発揮するのも軍備あればこそだとしている。 **武力行使は選択肢の一つに過ぎない &bold(){“上兵は謀を伐つ、其の次は交を伐つ、其の次は兵を伐つ、その下は城を攻む。”} (最上の戦のあり方は敵の策謀を未然に打ち破ることであり、その次は敵国とその同盟国の友好関係を断ち切ることであり、その次は敵の軍隊を打ち破ることであり、最も下策は敵の城を攻め破ることである。) 戦争は武力行使と必ずしも同義ではない。 敵国の策謀をいち早く察知し、その策謀を実行不能にすることができれば、自軍に損傷を出すことなく、実戦での勝利と同じ結果を得られる。 敵国の策謀が同盟国との連携を前提にしたものであれば、その同盟関係を解体させることでその策謀を実行不能にさせることができ、国益にも繋がる。 **戦力の認識と戦法 &bold(){“小勢の堅は大敵の擒なり。”} (小勢なのに強気で挑むのは、大敵の擒になるのが落ちだ。) 多数の敵に対して味方が少数では勝ち目が無い。戦いの大原則である。 敵軍との兵力比較に応じた戦法の原則には次のようなものがある。 ・十倍の兵力ならば、包囲して料理する。 ・五倍の兵力ならば、正面から押し出す。 ・二倍の兵力ならば、挟み撃ちにする。 ・互角の兵力ならば、奮戦する。 ・劣勢の兵力ならば、防御に徹する。 ・極小の兵力ならば、衝突を回避する。 味方が小勢であればなおのこと、「謀攻」が必要となってくる。無闇に武力を振るうことは、自国を窮地に追い込むことになる。 **君主は口出しすべからず &bold(){“軍を乱して勝ちを引く。”} (軍隊を混乱させて勝利を逃す。) 軍隊を混乱させて勝利を捨て去る状況を生む要因の一つは、君主の要らぬ口出しである。 ・軍隊の置かれた状況を知らずに進退を命ずる。 ・軍隊の内情を知らずに軍隊に対して口を出す。 ・軍隊の応変の措置を知らずに指揮に口を出す。 このように君主が介入してくれば、指揮命令系統が不統一となり、兵士は困惑し、軍隊は混乱する。 “&bold(){夫れ将は国の輔なり。輔、周ならば則ち国強く、輔、隙あれば則ち国必ず弱し。”} (国家の補佐役である将軍が、君主と親密であれば国は強くなる。一方疎遠であれば、国家は弱くなる。) 君主と将軍の親密さは、軍隊の指揮系統の一貫性をもたらし、結果的に軍と国家は強くなる。 **彼我の戦力を知れ &bold(){“彼を知り己を知れば、百戦殆からず。彼を知らず己を知れば、一勝一負す。彼を知らず、己を知らざれば、戦う毎に殆し。”} (敵の戦力を知り、味方の戦力を知っていれば、百戦しても危険が無い。敵の戦力を知らずに味方の戦力だけ知っていれば、勝ったり負けたりである。敵の戦力も味方の戦力も知らなければ、戦いの度に危険が伴う。) 彼我の戦力の把握は戦術決定の基本的情報であり、戦闘以前に入手すべき必須事項である。また、単純に戦力についての情報を得るばかりではなく、敵軍の背景となる政情・経済についての情報を得ることが出来れば、謀攻はより容易に行うことが出来る。

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