作戦篇


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作戦篇

 戦争を行うにあたって必要となる戦費のことを中心に、戦争における経済感覚等の重要性について書かれている。

篇名の「作戦」とは?

戦いのやり方や戦法を指す、いわゆる「作戦」ではなく、「戦を作(な)すもの」、つまり戦を始める背景となるものを示す言葉である。

戦争の経済的負担

“日に千金を費やして、然る後に十万の師挙がる。”
(日々千金もの莫大な資金を費やして、やっと十万の兵士の軍隊を動員できる。)

戦争をする為に必要なのは、武器や戦車などの軍備だけではなく、武器補修の為の資材、食料、輸送の為の手段やルートの確保の為の費用などである。まして戦争が長引けば、国を傾ける状況が次々と出てくる。徴兵、増税、食糧難、物資の高騰、金品の拠出など等、これらが総合的に絡み合い、国民の生活は窮乏し、国家の財政は破綻する。兵士は疲弊し、戦力は落ち込み、回復の見込みもなくなる。

経費を考えない戦争の行く末

“諸侯その弊に乗じて起たん。智者ありと雖も、その後を善くすること能わず。”
(疲弊につけこんで第三国が蜂起してくる。智謀の人がいても、打つ手は無い。)

疲弊の末の勝利では、かえって国家滅亡の要因となる。戦争は、その経済的な見通しがなくてはやってはいけないのである。

戦争の損得

“兵を用うるの害を知り尽くさざる者は、則ち兵を用うるの利を知り尽くす能わざるなり。”
(戦争をすることの損害を充分知らなければ、戦争の有効性も充分知ることは出来ない。)

戦争の弊害を全て差し引いた上で、戦争の有効性を考えるということである。戦争は不可避なものであり、その認識の中で戦争の意義を模索する必要がある。

戦争は速戦即決が基本

“兵は拙速を聞くも、未だ巧久を賭(み)ざるなり。”
(戦争は拙くとも素早くやるということを聞いているが、巧みで長引くということを見たことが無い。)

勝利の条件が完全には整わなくても、好機と見れば一気にやる。そしてその速さが波及的に好条件を生んでいく。
一方、雌雄が決せずとも好機を掴んで即刻収束をはかる。この速さが戦力の消耗を防ぎ、ひいては国家の疲弊を防ぐ。
長期戦の経済的負担は、国家の安全保障にとって重大な危機をもたらす。

糧食の現地確保

“智将は務めて敵に食む。”
(賢い将軍は、できるだけ敵国で食料を調達する。)

前線で戦う兵士食料が必要なことは言うべくもなく、後方から食料を搬送する者がいなくてはいけない。これがいわゆる輜重隊(輸送隊)で、この部隊員にも食料は不可欠であり、搬送の役目を負う牛馬にも食料は必要である。輜重隊が消費する食料が前線と後方との往復の間にも必須であり、食料などを貯蔵する兵站基地から前線へのルート(兵站線)の確保を担う守備隊にも、食料は欠かせない。
しかし、敵地深くに侵入した際の兵站線は襲撃されて寸断されやすく、これの確保には困難と経済的負担が大きい。よって、食料は敵地で調達すべきである。

“敵の一鍾を食むは、吾が二十鍾に当り、…”
(敵地で調達した一鍾の食料は、本国から搬送した食料の二十鍾分の効果に相当し…)

上述の理由から、敵地調達した食料は、自国から搬送する場合と比べて二十倍の効果がある。

戦時における消耗と増強

“敵に勝ちて強を増す。”
(敵に勝って自軍を増強する。)

戦争の多くは基本的に消耗戦である。一般的に敵に対していかに損害を与えたかに目がいきがちであるが、これまで述べたような食料を始めとした物資の消耗の他、兵の死傷といった味方の損害があることを忘れてはならない。
このような認識を持った上で、その回復を図り、さらには戦力増強を行う為には以下のような具体策をとるべきである。
1:兵車に代表される敵の武器捕獲の奨励
2:武器の捕獲者に対する恩賞制度の確立
3:捕獲武器の活用
4:捕虜の厚遇
特に捕虜については、帰順させて敵軍の情報を入手し、さらに自軍に編入することを意図している。  

長期戦は回避せよ

“兵は勝ちを貴ぶも、久しきを貴ばず。”
(戦争は勝つことが大事であるが、長期戦で勝つのは宜しくない。)

戦争は何としても負けてはならない。負ければ国民の生死と国家の存亡は、敵の手に委ねられる。あらゆる戦法を用いて勝つことを心がけなくてはならない。しかし、長期戦の末勝つことだけは、避けるべきである。

“兵久しくして、而して国に利するものは、未だ之あらざるなり。”
(戦争が長引いて国家に利益があった例は無い。)

長期戦の末に勝ったところで、戦力は消耗して経済は逼迫し、負けたのと大差ない状況になるからである。第三国に漁夫の利を得させる要因を作ることは回避すべきである。

将軍の責務

“兵を知るの将は生民の司令、国家安危の主なり。”
(戦争のことをよく心得ている将軍こそ国民の命運の担い手であり、国家安危の支配者である。)

国家・国民の命運、安危の担い手は本来君主であるが、戦争という非常事態においては、君主から全権を委譲されて戦う将軍がその責務を負う。このことを自覚し、全うする責任感こそ、将軍に不可欠の要件である。