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ファミレスにて

説明は省かせていただくが、俺たちSOS団員は、
集合がかけられる度に訪れるファミレスで、空腹を訴えている胃袋をブレイクしている。
まぁ言ってしまえばブレイクファーストの昼バージョンがわからないだけなのだが、今はそんな感じである。
誰の財布がこんな浪費を許すのだろうか。無論、俺だ。
俺の財布がそんな惰性を貪っているわけではない。
本人曰く、総理大臣と一市民と同じくらい違う、団長と雑用団員の権力差だそうだ。
なんて傲慢な。俺の基本的人権は全くと言っていいほど尊重されていない。
日本国憲法。俺を救済してくれ。
「今日は中途半端な時間だったから、みんなお昼ごはん食べてきてないでしょ?」
「ええ。僕は約束をわすれていまして、急いで来たものですから…」
古泉が言った。忘れてたんならせめて俺より遅く来い。
「うんうん。昼食よりも団長命令を尊重するとは、古泉君は正に団員の鏡よ!」
「お褒めに預かり光栄です」
古泉は他人行儀の笑みで頭を下げた。そして、その絶対権力を持つ団長殿は、例の如く
「全く…キョンも古泉君を見習いなさいよ!」
というとばっちりの一撃を喰らうのだった。朝日奈さんも長門も、昼食は食べていない、という。
待て待て。俺は飲み物くらいか、とか思ってたからほとんど金を持ってきていないぞ?
「え~?…いくら持ってきたの?」
俺は無言で、財布の中身をハルヒに突き出した。
「なんだ、2人ぶんくらいなら払える金額じゃないの」
無理難題を当たり前のように言うんじゃありません。
お前は俺の全てを税金として搾り取る気か?
「全員分は要らないって言ってんだから、感謝して欲しいくらいよ」
ハルヒは口を尖がらせて不機嫌そうに呟いた。
おそらくコイツの脳内データベースは、俺の払った金額など記録されていないだろう。
「積もる話もそこまでにして、そろそろなんか頼みましょう。あたしお腹すいてたのよね」
決して積もる話ではないが、空腹のあたりには賛同しよう。とても腹が減った。
古泉は一度頷いた後、呼び出しボタンを押した。
湯沸かし器が熱湯を吐き出すまでの時間くらいで、店員が駆けつけてきた。
ご注文は?との問いかけに、各々が希望の品を口にする。
俺は…そうだな、早くできるものがいい。チャーハンひとつ。
「かしこまりました。」
と言って、手元のタッチ式の注文表に記入を始めた。
「調理のほうが終了するまで、少々時間がかかりますので」
そういって、店員は俺たちが座る席を後にした。
「こういうのって、毎回毎回、品によって完成時間が違うのよね~、なんで同じ時間に届かないのかしら?」
それは完成した物をそのまま取っておいたら、温度が下がってしまうだろ?
「そうだけど、それじゃ届いてない人がなんか居づらい状況になるじゃない?」
それはそうだ。だが、今のテクノロジーじゃ出来ないんじゃないのか?
「レトルトに完成時間の差異なんてそんなにないじゃないの」
レトルトと手作り品が混入しているかもしれないだろうが。
「それはアンタの主観でしょ?」
お前のレトルトという考えも主観だろ?
う……と言葉を詰まらせるハルヒ。
勝った。と、思う間もなく、ビミョーに非日常ニヤケスマイルが
「いやぁ、仲がよろしいですねぇ」
はぁ!?と声を合わせてしまった。
どうしてそう見える!?
「どどどどのあたりが!?」
「どうにもこうにも、ねぇ?」
顔を向けた先の2人も、
「えぇ、そうですね。ふふふ」
「……。(こくん)」
「そんな下らない問題を真面目に話し合うという事は、大きな出来事など、2人で共有しすぎて、新鮮味が無い、という事の表れです。
 つまり、暗にどのくらい長い時間を共に過ごしているか、という事を示しています。」
ペラペラと、潤滑油でも流し込んだかと思うくらい、スムーズに喋り始めた。
「こんな小さな問題に、真剣に話す。これは、相手と自分の考えを少しでも知っておきたい。こういった無意識の心理です」
……。
「……。」
「ですから…おっと、料理が届いたようですね」
古泉は半ば強引に、解説を中断した。
俺の脳内回路はさっきの話を覆す情報を模索していた。結論が出そうになったところで、
「チャーハンのお客様?」
あ、あぁ、俺です。
コト、とテーブルに置く。
しかし、それは通路側にいる、さっきの古泉博士の述解を忘れたらしいハルヒに横領されてしまう。
「キョン、箸取って」
おう、ちょっと待ってろ…ってそれは俺のだ。返せ。
「いいじゃないの、すこしくらい頂戴よ。」
いや。だからさっきも言ったろ。お前のが届くまでには俺のが冷めるだろうが。
「そうしたら、私が暇じゃないの」
お前が食べるなら、俺が暇になる。返せ。
「そんなの、アンタの思想じゃない」
それもお前の思想だろ。
そういい切る前に、ハルヒは空中で留めておいた箸を奪った。
「いただきまーす」
……!!
怒る前に、俺は視線に気づいた。
ニヤニヤとした、いやらしい視線と、
気抜けした炭酸みたいなエンジェルスマイルと、
絶対零度の…少なくとも笑顔ではない視線。…私怨?
「あ、キョン。これ結構おいしいわよ」
いいから返しなさい!
俺はハルヒが口に運んでいたチャーハンを取り上げた。
元は俺のなのに、なんでこんな罪悪感を感じなければならんのだろう。
その頃には、全員分の料理がテーブルに運ばれていた。
「キョン、箸取って」
あぁ、ほい。
「ありがと。いただきまーす」
ふう、ようやく俺も飯にありつけるか。と、また視線に気づいた。
今度は、箸を止めるくらいの興味を引いたものがあったのか、料理も食べずに、何かを注視していた。
ハルヒは我関せず、といった感じで、ガツガツと箸を進めている。
…。俺も食べよう。
既に半分以上が姿を消したチャーハンに視線を戻し、箸を取り、食事を開始した。
「おや」「まあ」「…ぁ」
小さな感動を秘めた囁きが、前方の座席で上がった。
なんか変わったことでもあったのか?
そこで、俺はようやく、今日自分で箸を割っていない事に気がついた。
……まぁ、いいか。
俺は食事を開始した。
その後、みんなして妙に生暖かい視線を送ってきた。
俺、なんかしたのか?


愛とは時に罪となる

「ねぇ、キョン」
今は、帰りのHRが終わってすぐの一番眠いタイミングであり、また、俺の本能はコイツがなにか
危険かつぶっ飛んだ事を言い出す前に逃げ出したいオーラに満ちている。
「一応聞いといてやる。なんだ。」
何か一瞬悩んだような間をおいた後
「佐々木さんとはどこまで行ったのよ?」
ガタン!と、教室中にドリフを髣髴とさせるどこか古めかしい効果音が響いた。
国木田と谷口はそれはもうすさまじい勢いで…っておい。なんだって?
「だから、この間会った佐々木さん。中学生の同級生だっけ?その人とはどこまで行ったのってきいてるの。」
言っておくがな、俺と佐々木はそんなやましい関係を築いていたわけでは無いのだ。
たまたま同じ中学校で、たまたま同じ塾に通っていた。その理由でできた友人。そんなところさ。
「でもさ、そこまで親密な男女が何かしでかさないわけないじゃない。」
…どうしたんだ俺。何か言え。なんつーか嫌に冷たい視線が俺に突き刺さる。
い、いや、本当に何にもしていない。俺は硬派かつ純情な中学生だった。
傍目から視ても見苦しい言い訳のように聞こええる説明をしていたら、ハルヒは
「同じ中学校にいた国木田さん。本当ですか?」
ここぞとばかりにクラスメイトとの親睦を深めるな。タイミングが悪いぞ。
「まさか、あの彼があんな事をするとは思っていませんでした。…普段は物静かな子でしたから…」
いや、マジで頼むから悪ノリするのはやめてくれ。俺は少年犯罪をしでかした覚えはない。
俺の頭の中でそんな考えが渦巻いた。遠くで携帯電話の電子音が聞こえたのは気のせいだろう。
「冗談だよ、キョン。キョンはそういうことには興味ないみたいだったよ?」
だろ?俺はまともに生きてきたさ。
「…ふぅん。男ってのはいつでも狼だと思ってたけどね。中学校から変わって無さそうな馬鹿もいるし」
谷口がプイとあさっての方向を向いたのはなんでだろうか。
「じゃあ、キョン。」
ハルヒからのご指名である。なんだ。
「過去に後ろ暗い事が他にもあったら、全てあたしに報告しなさい!」
…どうせ拒否権はないんだろ?考えておくさ。
「駄目よ、全部、今、包み隠さずに告白しなさい!」
他のクラスメイトは自信を察知した小鳥たちのように早々と退散していった。
しゃあねぇなぁ…っても、俺には思い当たる節がない。
国木田、俺はなんかしたっけか?
「僕の記憶の中では居眠り学習の常習犯って事しか残ってないね。」
だそうだぞ?俺はまっとうに生きてんだよ。
じゃ、僕は塾があるから、と帰っていった。谷口もな。
「なんだ、おんもしろくなーい!」
オモチャ売り場で駄々をこねる少年のように、不機嫌さをあらわにするハルヒ。
――そうだ、一つ、[後ろ暗く]て、[告白]してなかった事は一つあった。
「なぁに?あたしは寛大な心の持ち主だから、何いっても許してあげるわよん♪」
そうか、と短く区切る。俺がこんな事を言った理由は、アセアセしたハルヒがみたかったからだ、きっと。

「好きだ。」

は?え?と目を白黒させて驚きを隠せない様子の神を見るのはまたとない機会だ。
「お前の事が好きだ。今までいえなかった事が、俺の人生最大の汚点だった。
 これを言い忘れたら俺は死ぬに死ねないくらいの後悔を引きずっていったことだろう。」
「ま、待ちなさいよキョン!告白は告白でも、罪の告白よ!?」
耳を真っ赤にしながら何か喚いているが、うつむき加減なので聞こえにくい。聞こえないったら聞こえない!
「お前を初めて見た時は、運命の神様なんてまるで信じていなかった俺だが、
 こればっかりは信じるしかなかったんだよ。お前は俺の前に降りてきた神様だった。」
「やめなさい!や、やめろってばぁ!」
声がだんだん弱弱しくなっていく。この時の表情は俺の頭のハードディスクに永久保存する。
続けて、俺は叫ぶ。

「とりあえず、これだけは言わせてくれ!大好きだ!ハルヒ!」

ボン!と中身が膨張して破裂するような音が聞こえた気がする。
夏も近くなってきたようで、俺の顔は皮膚が特殊な発熱器官を得たかのように熱い。
「あ、あんたねぇ…」
怒りを感じさせるような言い方だが、なぜだろう、今は可愛さ100%に見えるよ。
「いいぃいぃいちいちうるさいわよ!ほほほら、ささささっさとSOS団に行くわよ!」
動揺しすぎだ。目に見えて分かるぞ。
「あ、あたしはいつも通りよ!?」
とりあえず、教室に残ってようぜ?俺、今日の数学わかんなかったし。
「そ、そうね。学力の低下は、士気にかかわるから!」
だいぶ的外れだ歩兵には学力は必要ないぞ。とりあえず落ち着け。まずはここを教えてくれよハル「私も、大好き。」

……。
は?え?俺は、目を白黒させて、続くハルヒの熱弁を聞いた。俺は相当恥ずかしい言葉を連呼していたようだった。
俺の過去の汚点が、さっき消えたのにまたできてしまった。顔の熱は増すばかり。
明日からは地球温暖化問題にもっと関心を寄せよう。俺の顔中でヒートアイランド現象が併発しまくっている。

その後の部室での古泉の一言は忘れもしない。何がおめでとうございますだ。
帰りに熱さまシートを買っていったのは、俺の思い出の1ページに深々と刻まれた。


Photo Graphy

コーヒーが5つ、と今やミクロン単位に薄くなってもおかしくない財布が俺の手に。
まぁ、例の通り、罰金制度である。
今なら王政復古を迫られた将軍の気持ちが痛いほどに理解できてしまう俺である。
俺の財布の重量が上がると共に『集合』と言われるので、財力グラフは上り下りを往復している。
大暴落も無ければ急成長も無い折れ線グラフなんて、見ていて退屈なだけであるのだが。
今日はなんか、良い事が起こりそうな予感がするのだ。
今朝のあいうえお占いでは、(禁則事項)が頭文字の型、ラッキーです。
そして念のために見ておいた星座占いでも、(禁則事項)座のあなた、ラッキーです。
なんという出来レースだろうか。しかも、ラッキーアイテムは【缶コーヒー】。
5本買ったから効力が5倍になるとか、そういう都合のいいことはないだろうがね。
まぁ、俺が「金欠だから、そんなに高いもんは食わせてやれん。せいぜい飲み物くらいだ」
と自己申告したところ、それはもうニコニコ笑顔で。
(こめかみのあたりはどうなっていたかおぼろげなのだが)
「この甲斐性なし。」
と言われた。結婚もしてないのに甲斐性なしとは。
なんだ、俺にはお前を養わないといけないような情報がDNAマップに記されているのか。
それはそれで置いといて、到着。
この暑いビル街でも、長時間『つめた~い』と表記されているものは着々と俺の体温を奪って行った。
くそっ。腕の感覚がもうほとんど無いぞ。
「遅いわよ。これからもう一段階の罰金があってもおかしくないくらい待たされたわ」
そんなにか。俺の体感時間ではまだ5分と経っていないのだが。
「あたしは時は金なりの精神を持っているのよ。」
やれやれ、といわんばかりのジェスチャー。
だがハルヒはどこか、世話のかかる子ねぇ、みたいなオーラを纏っているように見えた。
「さて!」
おぉ、活力が戻った。
コイツは体内に【元気のかたまり】でも忍ばせているのだろうか?
そうだったら戦争が起きようが何をしようが体力満タン、異常無しで復活する事だろう。
まぁ、次のセリフは、お決まりの…
「グループ分け!」
やれやれ。


今、俺の隣には、今朝の時点ではさんさんと輝いていた超運気が
涙を流して逃げ去っていくような現象が起きていた。こんな事、想定外デース。
いや、正確に言うと現象ではなく、人物なのだが。いや、こいつは相対性理論を
笑顔で蹴破るような奴なので、【現象】と称してもなんら問題は無さそうである。
いや、しかし。なぜ?どうして?なんで?は?あれ?
今俺の頭の中ではシナプス回路が総動員してクエスチョンをあげる事に一生懸命である。
文法どころか例えすらも的外れな感じが否めない。
「何をうつむき加減でブツブツ言っているのですか?」
あぁ。うむ。なんでもない。


本来ならこっちの方が良かったんだが。
おっと、『こっち』の前に『まだ』という修飾語を忘れないでおいて頂きたい。
本当にこれは超常現象だ。頑張れ俺のニューロン。踏ん張れMyシナプス。
「えぇと、あれ?なんで?」
それはこっちのセリフだ。当の本人も、頬を人差し指でポリポリと引っかいているので
コイツとしても予想外なのだろう。
「あたしは絶対にみくるちゃんとなる気がしてたような気が気でなかったというか」
もっとシャンとしてくれ。団長がそんなんでどうするんだ。
「いや、ちょっと、落ち着くまでの時間が欲しいんだけど…」
そうか。しかし今日は生憎と金がないから喫茶店も入れない。
ハルヒの顔が真っ赤なのはヒートアイランド現象が進んできたからだろう。
「涼しいトコならどこでもいいから…公園にでも行きましょう」
了解。
公園が涼しいところかどうかは聞かない。とてもじゃないが、突っ込める空気ではない。


今俺らは一つのベンチを占領している。独占欲とは言わないだろう、この場合。
本来ベンチは3人用なのだが、神様が2人分のスペースで我慢してくれているだけで御の字だろう。
ハルヒはというと、俺が買ってやったコーヒーを額、頬と順番に冷やしいる。
なんだ?日焼けか?ヒリヒリするのか?
「いや、違うけど…あんまコッチ見ないでよ!」
逆切れかよ!現代っ子の現状を見た気がする。
俺の子供が出来たときはしつけは厳しくしよう。そう心に決めた瞬間だった。
「アツいねぇ!この気温に負けず劣らず、とてもアツい!」
謎の男、登場。こういうタイミングで出てくるのはアホの谷口か、もしくは酔ったオッサンくらいだろう。
敵意を込めた眼で睨みつける。こういうのは男の役目だろう。
「おっと、冷やかしに来たわけではないんだ。そんな眼せんでくれ」
いや、怪しい。五月蝿い。鬱陶しいの3拍子揃った男に説得力は皆無だぞ。
ナンパでもしていたらどうだ?言いはしないが
「今日はカップルを写真に収めるキャンペーンを、都で行っているんだ」
ふうん。それで?
「つまるところ、君たちを写真で撮らせてくれと、そういうことさ」
ふうん。
わかった、と話の流れで言いそうになってしまったが、俺の一存で話は決められないので、
寛大なる団長様に意見を仰ごうと思ったら、こっちはこっちで生態電流がプッツリ切れているような
表情をしていた。おいおい、しっかりしてくれ。
「まぁ、面倒くさい事は抜きにして、はい、チーズ」
こんな呆けているハルヒを写されては困る。こいつはもっと綺麗な奴なんだからもっといい状況で、
などと反論する時間は無かったので、俺はハルヒを隠そうと、腕の中に押し込んだ。
しかし、思考回路が復活したのか
「むぐぐ…!なにすんのよキョン!」
今顔出すな!という間もなく、『カシャ』とファインダーが反応する音。
液晶がついているカメラだったので、撮った写真を見せてくる謎のカメラマン。
「こんな感じで撮れました。しっかし、今日の中で最高にいい一枚です」
カメラマンは気恥ずかしいような顔で言った。
その画面には、女を抱き寄せる男と、顔が真っ赤な、初々しい美少女が写っていた。
うわぁ。ヤバイって、なんとか言え、ハル…
ヒまで言い切れず、俺はまた絶句した。ポカンとした表情、再来。
「明日の朝刊を、お楽しみに」
ニヤリと笑って、謎の男は帰っていった。俺は何も言えなかった。
そしてハルヒは、30分後に無事再起動した。
『あ、あれはSOS団の広報のために写ってあげたんだから!あたしがあんたなんかと、か、か…!』
だとか。それを俺に言っても、なんの解決にもならんて。
しかし、太陽が憎い。今日中に、俺の、そしてハルヒの
日焼けで生じたであろう顔の赤みが引けている事を願う。切に。


翌日の朝刊には、3面記事のあたりだろうか。
【太陽にも負けない、アツアツカップル!】
といった見出しで、俺がのっていた。投稿者の名前を見ると、『成功率0%ナンパマン』とあったので
俺の心には、旧敵を討つための非情かつ残酷な感情が完成しつつあった。
教室に着くと、
「来たぜ今年の太陽さん」
「よっ、女殺し!」
「ジューダス勝ち組め」
「おめでとうなのね!」
「赤飯じゃなくて悪いけどおでんをあげる」
「昨晩はお楽しみでしたね」
「ようやくくっついたか!」
などなど、嫉妬、応援、あることないこと。
いろんな言葉で、数少ない記憶容量が順調に埋められていった。
さよなら、俺の倦怠ライフ。
ハルヒはというと、机で死んだように突っ伏していた。
……やれやれ。


昔話

「ねえキョン」
なんだ。
「思ったんだけど、昔話って結構都合がいいわよね?」
・・・とこんな感じで、ハルヒと俺の昔話論が始まった。
古泉はテスtに向けて担任が帰してくれないらしく、朝日奈さんはお茶の買出しに。長門はここにいるが。
「だって、考えてもみなさいよ。まず、傘地蔵からいきましょうか。」
ふむ。アレの何がおかしいというのだ。地蔵に情けをかけるお爺さんの心温まるお話ではないか。
「それはわかるわ。でもさ、お爺さんは同じ道を往復してる。」
それがどうした。
「本当に情けがあるお爺さんなら、行きの道で既に傘を地蔵にあげているはずよね?」
・・・うかつ。そういえばそうだ。
「にもかかわらず、地蔵さんたちはお礼にと、沢山の食料を持ってきた。」
う~む。いままで目もくれない爺さんの一度限りの思いやりには惜しい量だったな。
「さ・ら・に。」
まだあるのかよ。
「その地蔵も、畑を耕したりする事はできないでしょ?」
・・・・まさか!
やめろ、ハルヒ。それ以上言ったらおれの純白、夢見る男の子思想が
「アレは絶対に他の人が汗水垂らした結晶である米俵類を盗ってきているわ。」
・・・なんだろ、このサンタの正体を始めて見たような気持ちは。
「傘地蔵は、いろいろと裏のありそうな事よね。まだ探せばあるかも!」
もうやめてくれ。俺のガラスの心がもたん。
それと以外には、なんで地蔵が動くの?とか言わないお前に驚いた。
「・・・・その可能性を忘れていたわ!!」
失言。たきぎをくべてしまった。スマン全人類よ。
この辺にお寺は無かったかしら!とかわめいてるハルヒを眺めていると、
「・・・何よその目は。ニヤニヤしちゃって。」
ん?あぁ、スマン。(なんか成長する娘を眺めるお父さんみたいな気持ちになったのは内緒だ)
「怪しいわねぇ・・・。他に変な昔話ないかしら・・・」
俺も幼少時代の頃の記憶を紐解いているときに、わが団の文学少女が。
「・・・ももたろう。」
ももたろうか。なつかしいなぁ。
「そういえばそうね。桃に人間が入ってるなんて、不思議すぎよねえ」
うむ。あれこそ人間の想像力の賜物であろう。
「じゃあ、キョン。高校卒業したら、一緒に暮らしましょう!」
な・・・・・・!?
「だ、だって、桃は一緒に暮らしていたお爺さん、お婆さんが
 それぞれの仕事をしている時に流れてきたんでしょう?
 それなら、同じ条件化で、同じ暮らしをしていたら出会う確立もなきにしもあらずよ!」
確立でいうなら不可能は一個も無いとどこかで聞いたが、その理論は無い!絶対にない!
「なんでよ!あるかもしれないでしょ!」
ハルヒの顔が赤い。まぁ、そんなにむきになるなよ。でも俺も顔が火照ってるかも。大人気ないな。
「・・・その説は間違っている。」
救世主登場。有難う長門。
「桃に人間が入るわけない。」
そうだぞハルヒ。そんな間違いが起こるはずが無い。
「その桃には現存するどの成分にも負けない若返り効果のある物質が含まれていた。
 そして、それを知らない爺、婆が何の気なしに食し、若返って子作りに励んだため、ももたろうが産まれた。」
・・・女子高生が言わない言葉ベスト3を言って、長門はゆっくりコチラを見る。
「・・・頑張って。」
え?あのーちょっと、長門さん?
「・・・ふぁいと。」
俺の首がグルンと向きを変えた。人為的な力で。
「キョン!いいこと聞いたわ!ありがとう有希!さーて、桃探しに行くわよ!」
待ってくれハルヒ!俺はまだ老けてないし、この歳で・・・
「い、いいからついてきなさいよ!あたしにかかればなんだって見つかるんだから!」
そういう心配してるんじゃないんだけどなぁ・・・。
俺の襟元をつかんでいる、女の子らしい小さい手は、俺を解放してくれないらしい。


キャッチボール

「暇ねぇ・・・」
そう呟くのは一般の人々が考えることもないような団を立ち上げたトンデモガール。
こいつの活動は毎回予測も出来ない。猫喋らすし、モノクロワールドも立ち上げる。
俺らが言う神様に当たる存在だ、と古泉は言うが・・・
「ねぇ、何か面白い事ないかしら?」
俺の目の前にはAAクラスの女子。普通の可愛らしげな女の子だ。
そんな女の子が神様だという事が、俺は充分面白い事だと思うよ。
ついでにハルヒよ。今はまだ授業中だぞ。声がでかい。
「何よその言い草は!」
いやだから今は授業中だって言ってんだろうがアァァァ!
そんなこんなで、妙に長く感じた4校時までが終わり、俺は昼飯を取ろうとしたのだが・・・
「キョン!あたし昨日面白いテレビ見たのよ!」
ほう。お前が面白いって言うくらいの作品ならば題名に[奇妙な]とか、[不思議な]
ってのがつくんだろうな。
「よくわかったわね。」
・・・あたってんのかよ。昨日やってたテレビで、奇妙がついてたヤツって・・
「世にも奇妙な物語ってのを見たのよ。」
なるほど。合点がいった。
「それでね、キャッチボールをしてたら、未来が見えた・・・ってお話があってね。
 その人はその運命を変えようと必死に頑張るってストーリーだったんだけど・・・」
どうあがいても変えられなかった。そういうわけか。
「今日のキョンは物分りがいいわね!じゃあ、早速行動よ!」
・・・さて、俺は結局昼食を取っていないのだが。
「そんなモン後回し!善は急げって、よく言うでしょ!」
お前の行動に善があった時は一度もないと思ったがね。
「ブツブツうるさいわねえ!さて、野球部の備品でもいいからグローブとボール、借りてきましょう!」
この間、野球大会で振り回された事を奴らが覚えていなければいいんだがな。

・・・結果?それをわざわざ聞くのは野暮ってモンだろう。
この万年台風少女に歯向かえる木偶なんていない。口答えしたところで
無残に吹き飛ばされる事なんて、みんなわかっているのさ。
・・・というわけで、今俺とハルヒは、分校の裏庭でキャッチボール中である。
「なんで・・・こんなに・・・投げにくいのかしら!」
パシ。俺のグローブに吸い込まれるように、ボールが飛んできた。
そりゃあな。お前どっちが利き手だ?
「右。」
じゃあ何故にアナタは右手にグローブをはめているのでしょうか?
「・・・あ。これって利き手に着けるもんじゃなかったの?」
付け替えながら言う。まぁ俺も初めては右手につけてたけど。お前らもあるだろ?
「えい!」
ビュバン!と、おれのグローブがなる音が変わった。
さて、不思議だ。俺はアイツが投げたモーションに入ったところまでしか見てなかった。
正確には見えなかったというべきか・・・?何キロ出てるんだろうとか、適当な事を考えていたら
「見えた・・・?」
何が?とは言わなかった。まぁ、それはそんなに詰めたミニスカート穿いてスポーツすれば嫌でも
ヒラヒラするんだろうし、それが気になるならトレパンにでも着替えてくればよかっ・・・
「そっちじゃないわよこのエロキョン!未来よ、未来!」
顔を赤くしながら絶叫した。素で間違えた。スマン。
・・・でも見てないぞ。太ももが非常にきわどい所まで見えるのだが、そこからは神様が許してくれないらしい。
「アンタは何を見てるのよ・・・」
首を横に振りながら、心底呆れたように言った。
未来?俺はそんなもん興味無いぞ。未来ってのは、自分がどれだけ一生懸命頑張れたかによって、
常に変動していくものなのさ。だから、今現在の自分をよく知るバロメーターにもなる。
今、ここで、何をするか。そんなもんは、その場の自分に任せる。
自分の未来を作るのは、自分自身であって、それを受け止めるのもまた、自分自身さ。
だから、俺は後悔しない人生を送れるならそれでいいのさ。
「・・あんたってツマラナイ人間ね・・・」
なんだこの野郎。俺の力説を一言で済ませやがって。
でも俺は、嘘言ってないぞ。高校始まって、それからお前に話しかけたことも、
この団に入ったのも、毎回毎回お前の奇天烈さに呆れる事も。その時の俺には、むしろ賞賛の言葉を送りたいね。
コイツとの腐れ縁を繋ぎ止めちゃってくれてありがとうってな。
「・・・・・・・ふうん。」
というか、昼休みも後10分を切ったのだが。
俺の胃の中は空っぽであり、肝臓が養分送れこのクソバカとうるさいのだが。
「駄目よ!あたしはこれで未来を見るまでやめないんだから!」
そうかい。しかし、だんだんスピードがあがってきてんのは気のせいかね?

「あたしだって・・・」

それから下の言葉は俺のグローブを震わす一個の白球によって、打ち消された。


タミフルって怖いよね

「おーす、キョン。」
後ろから走る足音が聞こえる。
「谷口か。」
「なんだよ、やっぱお前朝に弱いな。」
まぁな。[朝]のつく苗字のヤツには特に。2人いるが、各自のご想像にお任せする。
「どうも最近、疲れが取れなくってな。」
「そりゃあそうだろ。休みの無い部活・・もとい。団活なんてそうそう無いぞ?」
確かに。そういえば、開設当初から休みという休みは無かった気がする。
「そんな切羽詰ってちゃ、いつかぶっ倒れるぞ?高校生のうちから苦労するもんじゃないと思うね。」
・・・お前はオッサンか。人生に疲れましたとか行ってビルから飛んだりはしないから安心しな。
「最近はそんなのを促進される薬も出たからな。」
バカ。あれはあくまで医薬品だぞ。確か・・・タミh(ry
「そんなのはどうでもいいっての。」
お前が振ったんだぞこの話。
「小さい事は水に流せ。それで、言いたい事ってのはだな・・・」
遠慮しないで述べたまえ。谷口君。
「たまにゃぁ男友達だけでナンパにでも行かないかってことなんだ。」
・・・つまり、俺1人だけだと釣果が0になりそうだからついてきてくれ親友君、というわけか?
「・・・大分誇張されてる気がするけどまぁ大体そんな感じだ。」
んじゃ、メンバー集めはお前にに任せるから。
引き受けた。とやり取りをしていると、校門が見えてきた。
そういえば、今日はあの[夢]を見てからちょうど一年か・・・

―――――
「おい、ハルヒ。」
朝からこのただっぴろい校庭を頬杖突いて眺めながら不機嫌な顔をしている団長殿話しかける。
「・・・何よ。」
人と喋るときはちゃんと目を見なさい。とは言わなかった。なんか、言い出せない雰囲気なんだよ。
「今日の活動を欠席したいのだが。」
頭を支えていた右手がずれて机に額をぶつけた。
「・・・大丈夫か?」
「え、えぇ。大丈夫だけど・・・いきなり欠席とは何よ。事前連絡くらいはちゃんとしておきなさい。」
急用なんだよ。
う~ん、と考え込んでいるハルヒ。今日って特別な事するとか言ってたか?
「――まぁいいわ。アンタだって毎回暇なわけじゃないもんね。」
この返答には俺が驚いた。ハルヒが人の都合を考えられる人間になっている。
「すごく馬鹿にされた感じがするんだけど・・・まぁ、いいわ。でも」
でも?でもってなんだでもって。
「7時までには家にいる事。これが条件!」
前言撤回。やっぱ考えられてなかった。にしても、7時?
「い、いいから従いなさいよ!」
へいへい、生返事をして、前を向きなおす。ハンドボール馬鹿こと担任岡部が登場だ。
休むという旨も伝えたし、あとはこの気だるい授業時間を潰していくだけである。
校舎に機械的な鐘の音が響き渡る。

―――――
そして、放課後。
「じゃあ、お先。」
本日始終不機嫌だったハルヒにそう言い残し、教室から去った。
「キョン。こっちだ、こっち。」
呼ばれる方向に顔を向けると、谷口他何名かを発見。
「着替えは面倒だから別にいいよな?」
そうだな。
「よぅし。まずはゲームセンターだ!」
ぞろぞろと向かう。今思ったけど、これって結構迷惑なんじゃないかね。
      • 中略---
「ここに6時集合だぞ!」
おう!と、柔道部さながらの気合の入れよう。
どうやら各自での行動らしい。まぁ構わんが。
「そういや、キョンが自分から女に言い寄るところ、見たこと無いなぁ」
谷口が歩きながら言う。まぁ、俺はそういうのやり方わからんし。
「硬派なのに、何でお前の周りには無駄にいい女ばかりが集まるんだ。神様、どうか俺にもコイツ並みのもて力を!」
お前は神様に呆れられてるからなぁ。・・・中学時代に。
谷口が次々に口説きに入る。俺はそれを遠くから眺める。
今のところ、7戦7敗である。うーむ。流れるように誘い文句がでてるのにな。
「だぁ、くそ!何でみんな俺の魅力に気づかない!」
自分で言うところが駄目なんじゃないか?へたに自信をもっていくから駄目なんだよ。
初心に帰れ。
「・・・なんか余裕な発言で腹立つな。お前も初心に帰ってとっととくっついちま」
俺は何かに気づいた。今はもう、7時10分である。
・・・うわ、ヤベェ!
ゲームセンターから抜け出し、すぐに家に戻る。
後ろで、おいキョン!という叫び声が聞こえたが、無視する。スマン。
今は・・・急いだ甲斐あって、20分である。安堵していると、ポストに張り紙があった。
『北校校庭にて待つ。』
筆跡隠しのためか、定規で書かれている。なんか白々しい。
もう限界の足に、自転車をこがせる。頑張れ俺の脚。
途中谷口から電話。
『おい、キョン!いきなり帰りやがって!連絡くらいしろよ!』
すまん。それは謝る。
『ったく。用事があったんなら 事 前 連 絡 くらいしておけよ。』
なぜだか、そこを強調して、谷口が言った。・・・まさかお前!
『おっとばれたか。朝の会話を盗み聞いてたよ。・・・というか、お前らは会話の声が大きいんだよ。』
なるほど、俺らの会話は筒抜けだったと。
『そういうわけだ。・・・キョン!』
なんだ。

『明日は、どんな大きさの魚が釣れたか、教えてくれよ!』

どういう意味だそれは。
『深く考えんな!ごゆっくりぃ!!』
一方的に電話が切れた。
俺は謎の呼び出しで自転車を漕いでいるというのに、何であいつの声には自信が満ち溢れていたんだろうか。
名前の書いてない呼び出しに、俺は少々動悸がしている。
嫌な思い出。首をかしげるような思い出。多々ある[呼び出し]。
柵を乗り越え、最初に見えたその姿は・・・

「おっそい!何してたのよキョン!すっかり冷え切っちゃったじゃない!」

見慣れたクラスメイト。俺の後ろの席に陣取るハルヒだった。
「なんで、お前が?」
「な、なんでとは何よ。わたしはちゃんと7時には家に居るように言ったでしょ。」
なるほど、あの命令にはそういう思惑があったのか。
「アホの谷口の携帯に電話しても、ずっと『ツーツー』いってるし。」
いや、そのなんだ。スマン。・・・ってなんて言った?谷口に電話しただと?
「そうよ?昨日の夜に電話が来て、『キョン誘って明日の7時に学校でHA☆NA☆BIしよう!』って妙なテンションで言ってきたわ」
なんだ。俺はそんな話聞いてないぞ。
「あいつには連絡つけておく。とか言ってたわよ。」
そういえば、今朝は谷口が教室に居なかった。他のメンバーを誘いに行ってたからだ。
それなのに、俺が用事あるとか知ってたのは・・・
「こういうことかよ・・・」
ポケットには、紙くずが。
『感謝しろキョン。シチュエーション立ててやったんだから、後はお前次第だぜ!――影の暗役者』
とあった。谷口の野郎!後で一発殴っておこう。
「ハルヒ。」
ハルヒの立ち位置に歩を進める。
返事をせずにうつむいてるハルヒ。
「その、えぇとだな。」
「・・・うん。」
「「・・・・・・」」
沈黙が痛い。
「ねえ」「なあ」
言い出しがかぶる。気まずい。
「キョンのほうが速かったわよ。あ、アンタから言いなさい。」
俺の口はなかなか開いてくれない。
まずは行動だ。ハルヒの肩を、両手でガッチリ掴む。
肩が震えた気がしたが、もう止まれない。
俺はきっと、今話題のインフルエンザ治療薬を服用してしまったんだ。そうにちがいない。
でなければ、こんな言葉は出ない。・・・きっと。
「――お前が好きだ。」
「・・・ぇ、むぐ!」
1年前の、この場所で起きたことを再現した。
俺は、これが夢でない事を、心のどこかで願っていた。


今日も飽きずに登校である。
小学校の頃から考えていたが、通学路を通るときは毎回気分がブルーになる。
苦手な学業に一生懸命になるのは精神的に辛いからだ。
「よっす。キョン」
そもそも、学校という建物が、人口当たり一番多いのが日本であるという調査結果を耳にした事があるが、
「あれ?キョーン」
それが何故日本なのか、という疑問を、俺はこの数年間忘れた事がない。
「もっしも~し」
この世からまっさきに消してほしいのは、核兵器とか、戦争の火種ではなく、この強制的な学業制度だ。
「いいかげんにしろこの馬鹿。」
俺の後頭部に衝撃が走った。
「よお、キョン。」
やぁ、谷口。さっきからうるさいと思ったら、君だったか。
「口調がえらく変化してんぞ。・・・そんなのはいい。昨日の結果。教えてくれ。」
俺が教えるまでもない。教室に入ったときに、なんか変わってると思うからさ。
「は?そんだけじゃわからねぇって。」
絶対わかる。普段じゃ起こりえない出来事だからな。

――教室にチョンマゲ生やしてる奴が、絶対に居るから。
おはよう、ハルヒ。