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千才脳力―センザイノウリョク―

あなたたちは、[ 才能 ]という言葉を聞いてど
う思うだろうか。人それぞれだ。とか、開花
しなかった。とか。いろいろあるだろう。
結局、なんなんだろうね?

序章
「おい、飯喰いにいかないかー?」
そういうのは、俺の幼稚園来の親友である正樹だ。
ついさっき4時限目の終了チャイムが鳴った。授業はまだ終わっていない。
「腹減ったのはわかるけどさぁ、もうちっと待てないのか?」
「俺の生活リズムは知っている筈だぞ。俺は朝飯を採らない。」
どこか自慢気である。
「そんなの威張って言うもんじゃないぞ。」
そりゃそうだと、おおげさな大声で笑う。そして、
「お前ら、うるさいぞ。」
低血圧な声の持ち主。この人は俺らの担任、
洋子先生である。(とてつもなくグラマーである)ちなみに今は英語の授業だった。
「ノープロブレム。ご心配には及びませんぜ」
正樹が言う。心配なのはお前の頭だろうが。と洋子先生の抑揚の無い声が響く。
――俺はまだ、気づかない。

1章
学校の日程が終わり、家路に着いた。正樹が開口一番こう告げる。
「お前さ、[ 才能 ]あると思うか?」
いつもよりかはまともな顔で、俺に聞く。
「[ 才能 ]か。あったら楽だよなぁ・・・」
俺の素直な感情である。才能があれば楽に暮らせるからだ。
野球の才能があれば、プロで活躍して、多大な年俸を貰えるし、
ギターの才能があれば、歌手として生きていける。
でも、その才能に気づけないのが大半を占めている。
誰彼構わず才能の開花が進めば、
この世にニートという名の職業難民はいなくなるからだ。
「俺の[才能]って、なんなんだろう・・」
「それを探すのもまた[才能]さ。」
じゃああんまり意味無いなとか、何気ない会話を進めていると
――目の前に黒猫が現れた。
「なんだ?野良猫かね?」
興味津々と近づく俺。呆れて見守る正樹。
これもまた『いつもの日常』だった。猫を撫でる俺。
首輪に手が行く。
・・・?
「・・・なぁ、正樹。」
ん?と小さなクエスチョンマーク。
「これ・・・なんだかわかるか?」
俺の手の中には、小さめの電子チップが。小指の先ほどの大きさである。
「わからないなぁ・・・。俺、機械に疎いし。」
正樹は言う。確かにコイツはパソコンすらろくにいじれない。
今時珍しい機械音痴という奴だ。
「俺はパスだ。全くわからん。」
正樹の言い分。
「じゃあ俺が調べてみる。わかったら教えるよ。」
「期待はしないで待ってるよ」
呆れたように言う正樹。また学校でと短い挨拶。
俺の心が速く調べろと急かす。
宿題もほっぽりだし、俺は早速解析作業に移る。
パソコン系知識なら、普通の人くらいはある俺。
チップに記載されてある識別番号のようなものを検索窓に書き込んで、エンターキーを押す。
・・・1件のヒットだ。さっそくそのホームページを開く。
「・・・あれ?」
おかしい。何もでない。更新キーを何度も叩くが、
何も出ない。それ以上詮索するのが、怖くなってきて、
俺はパソコンを閉じた。


「っていうことになったんだよ。」
必死に通学路で熱弁する俺に。正樹は
「ほらな。期待はしないって言ったじゃん」
上機嫌にそう言う。悔しい。非常に悔しい。
やりきれない。挽回する手は無いか。と詮索していると
「昨日は言わなかったけど、俺もそれ見つけたんだよなぁ。」
衝撃の新事実。
「なんでそれを早く言わないんだよ!」
「賞味期限を確かめる主婦のような目でこっちを見るな。
・・・正確に言うと、お前と別れた後に見つけた。」
話を聞いていると、正樹は自分の家の鍵を閉じこんでしまい、
中に入れなくなった。それで、窓から入ろうとしたら、
外に置いてあるバケツの中に入っていたのを見た。
――そういう事らしい。
「家に入れないことで焦ってたのが、運命の分かれ道だったな。」
うはははは。とバカみたいな大声で笑う正樹を無視し、
マジマジと見つめる。そこにはやはり何かの数字が。
昨日俺が拾った物と比べてみる
と、最後から2番目の数が2つほどずれていた。
「あんまり数に違いが無い。ってことは・・・」
「・・・ってことは?」
正樹が俺の顔を覗き込んでくる。
「わからん。」
「・・・お前には失望だよ」
両手を水平にして、ヒラヒラと振る。暗に【やれやれ】と言っているのだ。
なんだとこの野郎!と右腕を高々と上げて俺が走る。正樹も走る。
・・・今日は、変わらない。

2章
「初めまして。上町翔太です。よろしくお願いし
 ます。」
女子の黄色い歓声。男子の暖かい声と、そうでない
声。・・・多様な人間模様だ。
今は教室で、朝のHR中である。今日になって、
いきなり転入してきた少年。
上町翔太。悔しいが、イケメン君だった。1時限目前
の休み時間。翔太の席は俺の隣になったために、色々
な事を聞かれた。学校の間取りや、授業方針について。
部活等のクラブ活動にも興味があるようで、
「・・・どんなクラブがあるかな?」
といった質問も。今学校にあるクラブを全部教えてやった。
「・・・ふむ。僕の行っていた学校に無いものが沢山
 あるね。興味深いな。」
「へぇ、バレーとか、結構メジャーなスポーツが無いけ
 ど、小さい学校だったの?」
言ってから気づいたけど、こういう質問って失礼だな。
申し訳ない気持ちで一杯です。という時に、
「・・・小さくはなかったけど」
一呼吸置いて、
「――特殊だった。」
「特・・・?」
予想外の言葉に、俺の脳は悲鳴をあげた。
「・・・人の持つはずのない、特殊な能力を養成する学校だった
 のさ。僕はあんまり、[ 才能 ]が無かったから・・・」
ここでも才能という言葉が出た。みんな才能才能って・・・
「具体的には、どういうことをやってたの?」
しばらく考え込んだ後に、重たそうに口を開いた。
「超能力。」
・・・は?
「超能力って言ったのさ!でもさ、そういうのって素敵だよね!
 俺だって、もっとその開発を続けていたかったさ。でも、駄目なんだ・・・」
今、口調が、空気が、ひどく変わった気がした。
僕がいきなり俺になると、こうも違う雰囲気を生むのか。
「…ふうん。じゃあさ、特殊な訓練とかはしたの?」
「特殊な事といえば・・・そうだね、頭にチップを埋め込む。それだけかな。」
今、翔太はサラリと人権を無視した発言をした気がする。頭に、[チップ]。
俺の頭の中でカチリと歯車のはまる音がした。
「どんなチップか、見せてくれる?」
「・・・うーん。普段は持ち歩かないからなぁ・・・
 明日持ってくるよ。」
授業開始の鈴が鳴る。

****
「って言ってた。」
「ふーん。チップかぁ・・・」
昨日見つけたチップ。今日来た転校生。その可能性について、正樹に話した。
「俺にはよくわかんねーなぁ」
正樹はさほど考えた様子もなく、即答した。
「お前ちゃんと聞いてたかよ?」
「悪い。正直言うと3割くらいしか聞いてなかった。」
さも当然。というような憮然とした態度で言われる。
こうも堂々と言われると反論する気力もなくなる。
「だから、あのチップは翔太の通ってた高校のかもしれないんだって。」
ふーん。炭酸が抜けてしまったような声を出す正樹。
「仕方ない。とりあえずその正樹のチップ、俺に預けてくれ。」
「構わないぞ。」
鞄に手をつっこみ、荒々しい動作で探す。
「・・・っと。あったあった。ほい」
手渡ししてくる。こういうとこだけ律儀である。
「これ、今日調べてみるかな。」
「やめとけやめとけ。二の舞になると思うぞ。」

*********
その言葉を無視し、今、パソコンの前で、数値を入力している俺。
どうせ、また一件のヒットが出るんだろう。エンターを押す。
ヒット数は、[2件]。
「え?」
上のは、俺の入力した数字だけが。
下のは、それ以外にも気が遠くなるような数字の羅列が。
俺の手は、自然と2件目に動く。ここまできたらやめらんねぇ。
「・・・クリック!」
周りの音が消えた気がした。
・・・気がしただけだった。
はぁ、とため息を着き、再度画面の確認。
するとそこには驚きの現象が。皆さんはブラクラというものをしっているだろうか?
パソコンの意図に反し、勝手にページを増設していく迷惑機能(ウィルス)だ。
今まさに、そのような状態である。
ページは一つだが、隣のスクロールバーが物凄い速度で下降し、webページはというと、
下から上へ、こちらも異常な速度で数字が駆け巡っている。
しかし・・・
「なんだこれ、目で追えるぞ・・・?」
とてつもなく速い。速いけど、見える。そして確実に俺の脳に叩き込まれ・・・刷り込まれていく。
頭が割れそうになる。が、ここで目を離したら、何かを取り逃がしてしまうような錯覚を覚えた。
「うわあァぁぁアぁぁあァあ!」
ブツン。と、視界のブラックアウト。目を開けている感じはするのに、何も見えない。
「・・・なんだ?何が、どうなった?」

――こんにちわ。君は14人目の適合者だ。
何を言っているんだこの声の主は。俺をここから出してくれ。
――それはできない。何故ならここは、俗に言う[心理世界]という物だからだ。
そんなRPGみたいな仮想設定があってたまるか。早くここから出せ。
――仕方ない。君のような聞き分けのない者には、少々手荒な手段にでる事にする。
セリフをいい終わり、しばしの沈黙。
そして、いきなりやってくる目の前の光。
あまりに眩しい、その正体は・・・

****
「うわぁ!」
目が覚めた時、俺は机で突っ伏しながら、マウスを握り締めていた。
パソコン画面は、チカチカと明滅を繰り返している。
一応履歴は調べてみるが・・・おかしい。何も痕跡が残っていない。
俺の寝ぼけた頭は、ついさっきの出来事を、[夢]という事に改ざんした。
「・・・妙にリアルだったなぁ。」
制服を手に取り、今日の授業なんだっけと、限られた思考領域を埋め尽くしていく。
夢という物は、とても儚い。
俺は、昨日の夜から養分の行っていない肝臓にエネルギーの貯蓄をするべく、台所に向かった。
目玉焼きと、ベーコンと、食パン。いつも通りのパン食メニュー。
前述していないが、俺はパン派である。・・・関係ないか。
とても速い速度で食べ終える。ものの5分とかからない食事時間。
準備してる時間の方が長いかもしれないなぁ・・・。
「行ってきまーす。」
バタン。と扉を閉める音。
「・・・やべ。」
バタン。扉を開ける音。
俺の脚はパソコンに向かう。
そして、キーボードの周りを確認するが・・・
――無い。
昨日の出来事の発端である、正樹から借りたチップが。
俺の心臓は、高速で胸を叩く。
借りた物を紛失したからではない(それも焦るべき事だが)。
昨日の[夢]が、[夢]で済ませられる事じゃなくなったからだ。
・・・どうする、どうする!!
ピンポーン。間延びした機会音が響き渡る。
――まさか・・・。
「おーい。俺だ。正樹だ。」

・・・正樹のようだ。ここは正直に話すべきであろう。
その後俺は、借りたチップをなくした事を詫びて、その後に、[夢]の出来事について話した。
どうせ正樹のことだから、鼻を鳴らして笑うだろう。そう、思っていた。
「・・・そだろ。」
目を見開いたまま、呟いた。
――人間とは、神様のきまぐれに作られた、ただのオモチャであるらしい。

第3章

「なぁ、翔太。」
「・・・ん?」
やはりテンションが低い。朝だから、というわけではなく、コイツの特性なんだろう。
「・・・その・・・」
「・・・なんだよ。気になるだろ。早く言えよ。」
間が空く。
「――この学校には、慣れたか?」
俺のバカ。アホ。臆病者。
翔太は面食らったような表情を作り、
「あ、あぁ、慣れてきたよ。隣が話しやすいからかな。」
ははは。と、短いやり取りをする。しかし、会話が弾まない。
「「なぁ」」
やってはいけない気まずい状況BEST3に陥った。
「翔太の方が0,3秒速かった。お先にどうぞ」
いつ計ったんだよ。と言いたげな、不服を訴える目でコチラを見ている。
「――本当に聞きたいことは何だ?」
やっぱりばれたか。騙すつもりは無かったけど、直に言うのも酷な質問なんだ。
「・・・気にするな。喋ってくれ。」
俺はコクリと頷き、口を開ける。
「頭にチップ。・・・って言ったよな?」
「・・・あぁ。」
短い反応。俺は構わず話を続ける。
「そのチップは、どうやって頭に入れた?」
単刀直入すぎたかもしれないけど、ここまで来たら引き返せない。
正直に答えてくれ。翔太。
「・・・チップ自体を入れるわけじゃあない。」
「具体的にはどうするんだって聞いてるんだ。」
しょうがないなと言わんばかりに、ダルそうな感じで、
「刷り込む。」
は?
近頃、俺は驚く事が多い。いきなり非日常に足を踏み入れたようで。
「チップの情報を頭の、正確には思考回路に結び付けるんだ。」
ヤバイ。今朝の出来事を、俺は全身全霊を以って否定している。あたりまえだ。
電子情報をヒトの頭に。そんな科学は、馬鹿げている。