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本番みたいなもの

やぁこんにちわ。
突然だけれど、あなたには一つ考えてもらいたい事がある。
それはこの作品を読むにあたって、非常に大切なことである。

――神様とは何か。

さて、なんだろうね。


1章 学校(舞台)


春まっさかり。と言わんばかりに開花しているこの桜。
それぞれがこぞって俺を見てくれ!といった感じに咲いてくれている。
毎年思うが、桜ってのは不思議だ。
旅立ちの季節。新しいスタート地点に立つとき。
そのどちらにでも咲いている、後押しの花ではないか?        ←伏線
いや、これは俺の独断であり、偏見にすぎない。
まぁ、言いたいことは、卒業、入学シーズンには必ず桜が咲いているという事だけ。
つまるところ、今俺は先日卒業した中学校に背を向けて、新たな境地となる高校につま先を向けている所である
毎日のように歩いたあの通学路が懐かしい。地図を片手に歩くというものは、周囲の視線が生暖かで張り付いてくるようで嫌だ。
まぁ、これもそのうち日常の一部になり、地図が要らなくなる日もそう遠くないはずである。
こんな事を延々と語らい出してもダレモソンナコトキイテネエンダヨ的な空気が漂う事間違いなしなのでここで終わる。
俺の自由意志はどこに飛んでいってしまったのだろうか?
俺が死んでもお前らの自由は決してなくならないぞ。みたいな事を言った過去の偉人を頭に浮かべながら歩いていると、
今日から通うことになる高校が見えてきた。
このビル街でも、ひときわ背の高いアレである。
……圧巻だ。
口を痴呆症の爺さんの如く半開きにして、学校を眺めていると
「何馬鹿みたいに口開けてるの?」
軽いからかい言葉とともに俺の後頭部に衝撃が走る。
「痛ェ!」
俺の心の叫びを現実世界(リアルワールド)に顕現させつつ、声の主に視線をやる。 リアルワールド伏線。空想世界なので
「いちいち人の頭を叩くんじゃない。些細な事でも脳細胞は死滅してしまうんだぞ?」
こいつの名前は舞(まい)。姓は浜田で、名が舞である。
「それ、前にも聞いたよ?」
「お前は注意された事をあえてするのか?それによって何を表現したいんだ?構って欲しいのか?」
嫌味たっぷりにそういってやった。舞は、この9年間の義務教育の中でずっと一緒にいた、いわゆる幼馴染である。
クラブ活動に精を出しているわけでも無いのに、妙にしなやかな筋肉をお持ちである。
筋肉質な肢体は、肉体美を失うどころか、逆にどこか魅力的な雰囲気をかもし出している。
全体的にみれば、まだまだ成長しそうな部位が見て取れるだろう。
まぁ、ぶっちゃけて言えばまだまだ未熟なボディラインであるという事だ。
本人の自慢は、ウェーブをかけた、肩にかかるほどの髪の毛。天然の栗色が売りらしい。
「むぅ、私はそんなに寂しい少女じゃありませんよーだ」
両手の人差し指を口の両端にあてがい、舌を出す。
これは舞独自の感情表現のひとつで、一般に言われる[あかんべー]と同じニュアンスを秘めている。
こういうふざけた表情をしても美人に見えるのは不思議だ。生まれ持った宝だろう。
「しっかし、アンタは卒業してからも全く変わらないわねー」
「卒業式から入学式のこの僅かな期間で変貌する人間はそういないもんだと思うが……」
「そういうのも才能でしょうがよー」  ←伏線
「お前は俺をどういう人間だと思っているんだ……」
えぇ~?とクエスチョンマークを伴った喘ぎ声。
「どういう奴か、ってこと?」
「そうです。その通りです」
「理論的。まわりくどい。めんどくさい。その上真面目で絡みにくい。」
そんなか~んじ。とそれはもう楽しそうに語らいだす舞。
僕の自尊心と、立場が、音を立てて…
「でも、基本的にははいい奴で、頭脳派で、イケメン。」
…持ち直した。
にひひ、と悪戯な微笑みを向けてくる。やめてくれ、照れる。
しかし、うまく丸め込まれた感じは否めない。なんか、やりきれない
舞は幼稚園時代から変わらない。良く言えば自由気ままで、悪く言えば適当な人間なのである。
わかりましたせんせー!と意味無く大きな声で宣誓の言葉を紡ぐ舞。
相変わらず元気な奴……。という感想は心の中に閉じ込めておこう。


毎年思う事がもう一つ。桜が咲き誇る季節は、学園長やら学校長さんたちの独壇場でもあった。
新入生の名前を全て読み上げるこの苦労を知れ、という腹いせなのかはわからないが、やはり長い話だった。
自分に割り当てられた教室に歩を進めながら
『ったく、生徒の身にもなれよな』
『なんで教師どもはパイプ椅子に座りきりなんだ?』
『やっぱ年の差ってやつじゃないか?』
『なるほど。』
などといったぐだぐだな会話が、おそらく一緒のクラスなるのであろう人員で構成されていった。
思うことはみんな一緒なんだな、と俺の一般常識が間違っていない事に安堵していると、
「つ、疲れたー」
これから一生を終えるような弱々しいためいきと共にそんなセリフを吐き捨てたのは、中学校からの親友である正樹だった。
「お前は部活やってるから体力が無きゃおかしいだろ。サッカーやってるならなおさら脚が強いんじゃないのか?」
と、隣に並んだスポーツ刈りの青年に問う。
「サッカーってのは常に動き回るから、乳酸が溜まりにくいんだよ」
まぁ、理にかなった言い分だなとか思っていると、
「ところで乳酸ってなんだ?」
俺の心の中ではコイツが吹っ飛ぶくらいの逆平手を頬に食らわせた。
現実ではそうはいかないので、軽くポスっと突っ込みを入れておいた。
「いいか、乳酸ってのはだなぁ……」
「あ、いいよ。俺は小難しい事聞きたくねえから!」
額に青筋が走りそうになるのをこらえ、
「またお前と同じクラスか……」
と嫌味ったらしく悪態をついておいた。
正樹は、ガッチリした体形で、いかにも体育会系!という型にはまる青年である。
優柔不断な感じだが、責任感が強いので、同年代からも『アニキ!』と呼ばれていた。
自給自足をしているらしいのだが、しょっちゅうスーパーでコイツを見かける。
「同じクラスで何が都合悪いんだ?俺はお前と同じクラスになれてほんとによかったよ。」
なんで?と聞き返す間も無く、正樹は言葉を繋げる。
「今年もツッコミ役、よろしく」
背伸びしながら正樹が正直に理由を申告した。
コイツに責任感は本当にあるのだろうか?
がっくりとうなだれていると、後方から『あ、にいさーん!』
と女性特有の高い声。振り返る俺と正樹。                   教室の場所等の説明
俺が声の発生源を確認するより早く、正樹が
「なんだ、舞ちゃんも同じクラスみたいだな。」
嘘だろ……。今年もあまり代わり映えしないメンバーが揃ってしまったようだ。
なんていうか、運命というのは本当にあるらしい。                 ←伏線
俺の両脚は『早く休ませろこの馬鹿。』と抗議する代わりに、疲労感を着々と溜め込んでいった。


「また同じクラスになっちゃったねぇ」
僕の席に舞が近づいてきた。
「全くだ。旧知の友ばかりが集まると新たな友情の輪を広げられないから困るんだけどなぁ」
「翔太、少しはその喋り方直しなさい?いちいち難しいのよ」
「そんなに難しく喋ってる訳じゃないんだけどなぁ」
一般常識的な考えでいくと、僕の喋り方はこの上なくわかりやすいと思うんだけど。
「わかりくいのか?」
「分からなくはないけど、解読が面倒というか。翻訳が面倒というか…」
そんな違う国の人を眺めるような目でコッチを見るな。
舞と短いやり取りをしていたらまた新たな声が飛んできた。
「よー、お二人さん。相も変わらず夫婦漫才ですかい?」
やめろ正樹そんな誤解されるような言い方は控えなさい僕らは単に幼馴染という理由で親しいのであって
そんなやましい間柄であるわけはないのだよ正樹君?わかったら撤回してくれないか正……
「うわ!2人とも顔真っ赤にしちゃって!まさか本気にしちゃった?本気にしちゃったのか!?」
ブッコロス!と両手の拳を掲げて(かかげて)正樹を追いかける。
「うわははは!現役サッカー部員にお前のような帰宅部が勝てるとでも!?」
「理屈じゃ通らないことだってあるってことをここに証明してやるからちょっと止まりなさい!」
抜け出た教室からはははと笑い声が聞こえたが、今はぜんっぜん気にならない!気にならないったら気にならない!
「俺に失うものは何も無い!今失われるものは貴様をこの世に繋ぎとめている魂だとここに宣言しよう!」
「そんなことは俺とお前の今広がりつつある距離を縮めてから言いな!」
なにおう!?と奮起するのはいいが、一向に距離は縮まらない。
さらに、知能に物をいわせて先回りを得意とする俺に、この初めて見る地形は不利だ。
悔しいが、俺の負け……ん?
正樹は俺の方を見ながら走っているから分からないのか。
その先には、いかにも『開きません』と言った感じの扉が。     ←伏線
「正樹!止まれ!」
忠告するが
「そんな幼稚な罠(トラップ)にはひっかからな!?」          このあたりももっと拡大
最後まで言うことなく、正樹は尻餅をついた。
「なんだこれ…?」
俺と正樹は同じ事を言った。
「いかにもRPG的な雰囲気だな…。」
「いいねそれ。正樹の冒険ってか。楽しそうだな。」
何が楽しそうだ。お前の事だから勇者の資格に気づかないまま死ぬのがオチだろう。
正樹が失礼な…といい終えるのが速いか、『お前らそこで何してる!』という男教師の怒号で、俺らは脱兎の如く自分の教室に退散した。


息を切らしながら教室に入ると、そこには既に担任の教師であろう、若い女教師が。
「遅い。というか、お前らは入学早々何をしてるんだー?」
ゆるーい間延びした感じの声。『あぁ、めんどくさ』みたいな心の声が感じて取れる。
セミロングの髪形が印象的で、白いYシャツとブーツカットのジーンズを身に纏う、メリハリのある魅力的なボディライン。
いわゆる『大人の女性』がそこに立っていた。
「問題児のいるクラスにあたって、先生は悲しいよー。」
わざとらしく目元に手をやり、鼻をすするような音を出す。
あ、えっと……そのーと言い訳を模索していると、
「先生、心中お察しします。こいつらはいつも問題おこしてばっかで……。」
「わかってくれるかー、舞。教師って仕事は中間管理職とほぼ同じくらいに辛いものだよ。」
反論したいが、『責任取れよ』という悪質で突き刺さるような視線が俺と正樹に襲い掛かるため、行動に移せないでいる。
「まぁいいや。今年は指導のしがいがある生徒がいて嬉しいよ。」
くくくくく……。と未知の発明に成功した技術者のような笑いを喉の奥で奏でる様は俺らへの重圧(プレッシャー)に他ならない。
「とりあえず着席なさい。いろいろと説明する事があるから。」
ようやく座る事ができる。あぁ、このゆったりと血液のめぐる感覚は何度体験しても……。
「説明する事はだな……。」
言葉を濁し、手元にあった紙を眺める先生。
次に顔を上げたときには、苦痛に顔を歪めていた。
「どうしたんですか先生!」
えぇと…と滲ませるように語を繋ぐ。
「――これ、説明しなきゃ駄目か?」
おそらく教室内にいる全生徒が、頭を白くした事だろう
「どういうことですか?」
俺は尋ねる。
「いやぁ、どうもこういうことは苦手でねぇ…。そうだ、ちょっと待ってなさい。」
ガラガラ。と扉を開けてどこかに行ってしまった。
『何だ?』
『ラフな先生でよかったー』
『それより昨日のテレビでさー』
と思い思いの事を喋りだすクラスメイト。まぁ先生なんてものは俺らの学校生活を制限する鎖に他ならないわけであり、
その存在が消えようものなら、取り留めの無い会話が開始(スタート)する。
ふぅ。と小さく息を吐く。初日から大変だ……。
「……れから配る紙を各自よく見ておくようにー」
扉を開きながら言うものだから、うまく聞き取れない。なんて適当な先生だ…。
彼女が教卓に陣取る頃には、クラスメイトのトークショーは蜘蛛の子を散らすがごとく、ぴたりと止んでいた。
「最重要項目は①であるから、各自その脳みそに洩れなく叩き込んでおくこと。」
①には、こう書いてあった。

  • 他のクラスの人員とは決してコンタクトを取らないように。
  • 三年間の在学で卒業だが、卒業資格は1年生の内でも取れる。
  • 西校舎にある扉の奥には入らないように。

あまりに特殊なルールだった。
『接触を禁ずる』と『卒業資格』の件(くだり)は通常ありえない。
裏でなにかをする学校なのか…?とか考えていると、 ←伏線
「そーいえば先生まだ自己紹介してなかったなー」
のほほんとした声で言う先生。
「っても説明は面倒だから、紙配りまーす」
教室に露骨なズッコケ音が響く。
「どうした?みんな」
い、いえ…。
配布された紙に目を通すと、
『肩肘張った真面目な教員』
『お国のために働きます』
といった、ホントかウソかわからないような事が記入されていた。
「一通り目を通したら、今度はアンケートで-す」
僕はこのユルさに慣れることができるだろうか?
など思考を巡らしていると、パサ、っと紙独特の乾燥した質感の音が届いた。
「質問事項はだなー……」

  • 自分自身の生活環境を書きなさい。
  • 自分自身の性格を書きなさい。
  • 自分自身のポリシーを書きなさい
  • 自分自身の特徴を書きなさい。

ふむ。なかなかどうして興味深い物だ。
生活環境か。[親元離れて1人暮らし]
性格?今朝言われた事でも書いておくか。[理屈っぽい]
ポリシー…か。[使えるものはなんでも使う。]
特徴。またしても癖のある質問を…[調べだすと止まらない]
よし、終わり。と思っていたら、薄い字で何かが書いてあった。

  • あなたは神を信じますか?

……。[NO]
何が神様だ。目に見えない物を信じて何になるんだ。
「馬鹿げてる」
思わず口に出してしまったようだ。
隣の男子生徒がなに?と聞き返してきた。なんでもないよ。
「書き終わったら後ででいいからこの箱に入れといてくれー」
はーい、と不揃いな返事。終わったらすぐ入れておこう。
とりあえず、次の休み時間をどう過ごすかな、と幸せな思慮にふけっていると
「さて、質問はあるかー?」
本来なら最初に聞くべきポイントである質疑応答。どうにも、この人の常識は普通の人のそれと違うようだ。
いや、この考えに結びつく俺の思考力がおかしいのか。
そんな自己問答の苦しみを味わう事のないはずの楽観主義者が……舞がおずおずと手を上げる。どうぞ、と促す先生。
「名前。なんていうんですか?」
…そういえば紙に書いてなかったなそれ。
「名前?……なんの?この学校?」
「違います。先生の、先生の名前です。」
「私の名前かー。名前は洋子。木島洋子です。」
「洋子ですか。…これからお願いします、洋子(傍点)さん。」
なんて失礼な…。教師をさん付けで呼ぶとは、舞もやるようになったな。
しかし、空気を読んで行動しような。すげぇ気まずい空気に……
「おぉ。舞、わかってるねー。そういう馴れ馴れしさは必要だよー。」
なってなかった。逆になんか嬉しそうである。
「これから洋子せんせーなんて呼んだ奴は私刑だ。ワタクシのケイで、私刑だぞー」
しれっと、恐ろしい事を言った。この人がどういう人なのか、まだ全然分からない…。
「他に質問はー?」
長い沈黙。こういう空気のときはあまり波風立てずに過ごすのが最善の策であろう。
「ふむ。無しか。他にわからないことがあったら、個人的に聞きにくるようにー」
では。と言い残し、洋子せんせ…洋子さんは教室から去っていった。


「なぁ正樹」
「なんだ?」
「神様って信じるか?」
さっきのアンケートの質問である。他人の意見を聞いておくのも悪く無さそうだったから聞いてみた。
「神様か。信じてるよ」
以外な言葉だった。こいつはそんな物にすがる奴だとは思ってなかった。けどな、と印象に残る接続語を濁らせ、
「でも頼らない」
やっぱりか。
「じゃあ、なんで信じるんだ?」
それはな、とひと呼吸置いた後
「人間には、心のより所が必要なのさ。回りに頼れる人間がいなくなったら、お前どうする?」
「それは……。犬でも飼うかな?」
「だろ?人間はどうやっても1人で生きていけない。だから、最後の頼みの綱として、信じておいてるんだよ」
ヘぇ。正樹にしてはよく考えてる、のかな?
「でも、神様だぞ?いるのかわかんない存在なんだぞ?」
「そんなのわかってるさ。だから、頼らない。結局何かを成し遂げるのは自分の力なんだし。」
俺は、そう言う正樹が神様に見えた。俺には考えもつかないよそんなこと……。
「アニキー!」
またしても、舞の登場である。
「中学校のあだ名で呼ぶなって。恥ずかしいかもしれないだろ?」
「俺はアニキでいいのだが?」
「ほらね、本人もいいっていってるじゃん」
俺の意見がこいつらに採用される時がくる時はくるのだろうか?
円周率が割り切れるよりも長い時間がかかりそうなレベルで来ない気がする。
それは暗に、永遠に訪れないという事実を表している可能性が非常に高いのだが。
話題を失いかけた時に、舞が
「みんな、神様って信じる?」
お前も気になるのか、それ。
正樹が2回目ともなればダルくなるであろう説明を苦も無くこなす。
舞が、ほー、と感嘆の声を上げる。本当に納得しているかはわからないが。
「んじゃあ、舞ちゃんは?」
「俺もそれ気になるなぁ」
俺と正樹で舞を注視する。早く言えオーラを体中から噴出させているつもりなのだが、舞は
『えー』とか『恥ずかしいって』とか言って、一向に自白する様子が見られない。
「早く言えって。」
俺がシビレをきらしてそういうと、
「じゃあ翔太が先に言いなさいよ。そうしたら私も言うから。」
そういう言い訳は女子特有の言い回しなのか?
仕方ないなぁという表情で――できうる限りの演技力でだが――口を開ける。
「俺は、信じないね」
言ってやった。
なんで?と理由を求める声が上がったので、続ける。
「俺は、目に見えない物は信じない。俺のこの目で見るまでは、な。だからUFOとかも同様だ。信じない」
「なんでそんなに頑ななのよ」
「人間は夢を見ることができるだろ?――プロ野球選手になる!とかピアニストになりたい!とか」
うん。と2人は同調(シンクロ)して頷く。
「でも、その夢をかなえる事ができるのは、ごくごく僅かな数。極端な話神に愛された人だけだ。」
これも俺のちっぽけな考えにすぎないのだが。
「全ての人間が、夢を実現する事は不可能だ。それはなりたい事と、持ち合わせている才能の差異によるものだろう。」
「それがなんで、理由になるの?」
まだわからないのかお前は。
「神が自らが生み出した全ての人間に与えるのは、夢を見させることだけ。贔屓にしている連中には、それを実現させる才能をくれてやる。
 これは不公平だ。夢見る者全てに夢を実現させてやらない神なんか、俺は信じない。」
要するにただのエゴだ。俺だって夢を叶えたかったのに…。正義のヒーローとか。 ←伏線
感想を待つ俺。言葉を探す二人。この沈黙を打破した一言は
「翔太はもっと努力をなさい。努力を」
という俺の力説をいともあっさり無き物にした言葉だった。



舞の答えは『私は私であって私以外の何物でもない。』という質問の意図に沿っていない答えだった。
舞らしいといえば舞らしいのだが…。
「目を通す人の事も考えてあげなさい」
「だから、私は私なの!」
「例えそうであっても、他人をおもいやる気持ちをだな……」
「だって、教員ってそういう事が仕事じゃないの?」
「そういうことじゃなくて、人間として最低限の配慮の問題だ」
「いや、だから……!」
「その考えが……!」
あーでもない、こーでもないと論争を繰り広げる火種になってしまったことは事実である。
正樹は横で『まあまあ』と落ち着けと促しているが、屈した方が敗者であることは暗黙のルールとしてしっかりと記載されてしまっているので
どちらも引かない。ったく、強情な奴だな。
とその時。痺れを切らした正樹が
「いいから、やめなさい!」
語気を荒げて制した。カミナリオヤジよりも迫力のある怒鳴り声だった。
「な、なんだよ」
「今はそんな事よりもやる事があるだろうが」
なんかあったっけ?と首を傾げていると、
「侵入」
短い二言だった。

2章 

責任感
俺の一番
いいトコで
俺の一番
悪いトコ

今回の詩は、現在の状況を不公平だ!と訴えている俺の思考力君が産出した名言である。
次のテストにでも出してやるから覚悟しろ。
まぁ、冗談はそこまでにして。
今俺はこの温かみの無いコンクリートの廊下をめぐっている訳だ。
正直、帰りたい。
何で俺だけにこんな面倒くさい仕事が押し付けられるのだろうか?
……。
詰まるところ、正樹と舞に押し付けられたのである。
俺の心情は今、腐った牛乳を口いっぱいに流し込んでしまった時のアレに相当する。
飲みたかった。けど飲めない。だがそれを飲んでしまった。
うわーん。
この世に『責任』という言葉を作ってくださいました偉人を、38連コンボでぶちのめしたい衝動に駆られている俺。
しかしできるはずも無く、ただただ悶々とする俺。
……うわーーん!
泣き言ばかり言っていられないので、探索開始。
俺の任務は校内の間取りの把握。
そんで、誰にも見られることなく侵入できる道筋の推理である。
舞はいちいち『侵入じゃないって!突入だって!』とうるさかったが、最後には諦めた。
アイツの覚悟は蜃気楼よりも揺るぎやすいのではないのだろうか?