monkey tail
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monkey tail
ja
2005-09-10T00:42:18+09:00
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蛍
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頬にあたる風がひんやりとして、ふと気付くと疎水の畔を歩いていた。酷く酒に酔っていて、悲しかったり悔しかったりして、塀を叩いたり露地に叫んだりしていたような気がする。それがなんだか自分のこととも思われず、胸の奥がぽっかりとして、みるみる涙が溢れてきた。なんだかよく分からないけれど泣いてちゃいけない、涙なんか流しちゃいけないと思うと、お腹の辺りがひくひくと動き、それで喉を出たり入ったりする空気を押し止めることができなくなって、頻りに漏れる嗚咽をどうすることもできなくなった。このままじゃ、歩き続けてもどうなってしまうか分からないので、疎水縁の長椅子に座ってうずくまった。
時折吹く風が束の間だけ蒸した熱気を追いやった。何度も何度もひんやりするうち、もうただぼんやりと川面を見ているだけで、何をしていたのかも頭の中で朧気になっていた。吹くか吹かないかの風に揺られて、蛍がゆらりゆらりと流されてきた。こんなに遅くにと見ていると、少し離れた土手の方ではらりと転がった。しばらくすると草叢の中で薄青緑の光が弱々しく瞬いているのが見えてきた。もう少しそばで見てみたいと椅子から立ち上がり土手の方へ歩いていくと、蛍はふわりと浮き上がり、川面の上をあちら岸へと渡っていこうとする。立ち止まってその行く先を見つめていると、微かな光はふわりふわりと戻ってきて先ほどの草叢へ舞い降りた。腰を浮かすとまた舞い上がる。しゃがむと舞い戻る。立ち上がると浮かび、座っていると戻ってくる。もういいやとそのまま地べたに座り込む。そこから蛍の光を見つめていた。いつまでもいつまでも見つめていようと思った。
涼しげな風が吹き抜けたので、おやと思う間もなく、小さなつぶてが木の葉や地面を叩く音がし、すぐに大粒の雨が落ちてきた。烈しく叩き付ける雨の中でも蛍は光るのを止めなかった。紫の閃光が木々を書き割りのように浮き立たせ、腰掛けた地面がびりびりと震えた。それでも蛍を見続けた。川の水嵩がどんどん増えて溢れそうになる。蛍のいる草叢の辺りまで水が来そうになったが、草の葉を伝って先に行ったり、また戻ったりをするだけだった。雲の切れ間はみるみる拡がり満天の星が現れた。半円を縁取ったような細い月がしだいに膨らみ、白く煌めく欠けのない円盤となり、疎水の畔が冷たく照らされ、銀色の水底のように夜が輝いても蛍は変わらぬ光りを放っている。
2005-09-10T00:42:18+09:00
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短冊
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もう随分待っているように思うのだが、一向に信号が変わらない。汗で濡れていた服が、少し乾いてきたようだけど、風は生温く湿り気を帯びている。振り返ると門を閉ざした古い家々が、街灯のない露地にどこまでも連なっていて、こんなに暗い道を通って来たような気がしなくて、何処を通って来たのか思いだそうとしても、目の前の道路を走りゆく夥しい車達が、熱い煤を吐き、油っぽい埃を巻きたてて、暑い上に息苦しく感じてしまう。とても遠くにいるんだと感じた。引き返した方が良いんじゃないかと思った。そのことを言おうとしたけれど、行き交う車の喧噪に呑み込まれて、うまく伝えられそうになかった。それにしても何故こんな夜中に、こんなに沢山の車が通るのだろう。何時だろうかと時計を見ようとしたけれど、今日は着けてこなかったらしい。
頻繁に路面電車が道路の中央を走っていく。どの電車も酷く混んでいて、乗り切れなかった人たちが外から窓枠にしがみついている。揺れた拍子に振り落とされる人もいて、走って電車に追いつき、飛びついて、またしがみついた。何処だか分からない所へ急ぐ人々を見ているのが辛くて目を反らすと、傍らでは道の向こう側を見てじっと佇んでいる。こんなにうるさく車が通るのに、どうして歩道を歩いている人がいないんだろう思ったとき、信号が変わった。
大通りを渡りきり、また細い露地を進んでいく。町中が眠り込んでいるようで、さっき越えてきた通りの喧噪すら聞こえてこない。疲れているんじゃないかと顔をのぞき込むと、ただじっと道の先を見つめている。怒っているんじゃないだろうか。こんな夜更けにこんな遠くまで連れ出して、何処へ連れて行くのか分からないままに、ただただ夜道を急いでいる。帰り道すら朧気だし、そもそも帰る所がどこなのか朦朧としてきた。もう一度、戻ろうかと聞いてみようかと思ったけれど、そうねと言われたときにどうすれば良いのか分からなくて口に出せなかった。
家並みが途切れた所の小さな広場に自動販売機が有り、財布を探しているうちに少し歩みが遅れた。それでもどんどん先に行ってしまう。また流れ始めていた汗が急に冷たくなった。もしかすると連れ回しているのではなく、付け回しているのではないだろうか。そもそもどうしてこんな夜中に一緒に歩いているのだろう。脚が縺れだんだん背中が遠くなっていく。次の角まで行って漸く気付いたらしく。立
2005-08-29T23:40:31+09:00
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