「メリーの居る生活 三日目」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら
「メリーの居る生活 三日目」(2011/05/09 (月) 19:10:11) の最新版変更点
追加された行は緑色になります。
削除された行は赤色になります。
*メリーの居る生活 三日目
>2スレ目>>803
>作: ◆Rei..HLfH. ID:EUZWfjHI
>『[[メリーの居る生活 二日目]]』の続編
>眩しい…、朝か…。
>…今日は休みだし…もう少し寝てよう…ZZZZZzzz…。
>
>…ZZZZzzzz…。
>「隆一、起きてよ」
>…誰だ…誰でもいいや…。
>「はぁ…、お腹空いたわ…。」
>
>その日の隆一は、連日の睡眠不足から久々に開放され、夢の世界で羽根を広げていた。
>「んー…」
>一方メリーは、朝食を作る人間がまだ起床せず、起こそうと悪戦苦闘を強いられている。
>「何で私が起こさなきゃならないのよ…、声かけても起きないなら…」
>メリーはカマを取りだし、その刃を隆一の頬に着けた。
>「5秒の有余を与えるわ。それまでに起きなければ…どうなっても知らなくてよ?」
>「1…2…3…」
>
>「…………うぅ…」
>「あら?案外あっさりと起きたわね?」
>「…寝覚め最悪…」
>「おはよう。私に起こしてもらっただけ、ありがたく思いなさい」
>「おはょ…なんで朝から死の宣告を、目覚まし替わりにしなきゃならんのだ…」
>「早く着替えてリビングに来なさい。そして朝食を作るのよ」
>メリーはそう言うとさっさと1階に下りて行ってしまった。
>「へいへい…ふぁ~」
>「2度寝したら殺す」
>…1階から釘を刺された。
>「…ち」
>
>
>今日はメリーさんが来てから初めての休日。
>(と言っても、来たのは一昨日だが)
>昨夜、休日の過ごし方を考えている内に、寝てしまったようだ。
>とりあえず、昼まで寝ようと思ったが…10時か。
>まぁ、良しとするか。
>
>そういえばさっきのメリー、いつもと調子違ったかな…。
>「お腹空いたわ」とか「起きてよ」とか言ってた気がする…。
>…夢うつつ?
>そんな事を考えながら1階に下り、キッチンに立つ。
>
>「何食う?」
>「何でもいいわ…とにかく早くして。お腹空いたのよ」
>「んじゃ、とりあえず、すぐ出来る物作るよ」
>「頼んだわよ…」
>
>「はい、トースト+スクランブルエッグ出来あがり」
>「ありがと…」
>「あ、賞味期限ギリギリのハムもあったな、ついでに片付けちまおう」
>「………」
>「ん?先食ってていいぞ?」
>「食事はそろって食べる物よ」
>「分かった、さっさと作り上げる」
>
>二人の食卓には、スクランブルエッグとトースト、ハムの「とろけるチーズ」和えが置かれた。
>
>「いただきます」
>「いただきます」
>「このスクランブルエッグ辛過ぎ…」
>「どれ?……スマン。塩入れすぎだ…」
>「バターが無いわよ?」
>「ほんとだ、取ってくる」
>
>冷蔵庫にバターを取りに行く途中、カレンダーが目に入った。
>今日の日付に赤い丸が付いている。
>………忘れていた。
>どうしよう…。
>
>とりあえずバターを持って戻る。
>「はいよ、バター」
>「ありがと」
>「このハム美味しいわ」
>「僕の自信作なんだ。ハムをカリッと焼き上げてジューシーに、そして中の「とろけたチーズ」が濃厚な甘味を出す」
>適当な事を言ってみる。
>「トーストに乗せてもいいわね」
>…流された。
>「あぁ、結構いけるよ」
>「牛乳は無いの?」
>「あるけど…コーヒーじゃダメか?」
>「苦いから嫌いだわ」
>「へいへい…」
>少し遅めの朝食は、会話が弾んだ。
>
>「さて…」
>洗い物を終えた僕は、テーブルについて、
>「困った事になった」
>朝のニュースを見ていたメリーさんに言った。
>「どうしたの?」
>「今日、おじいちゃんとおばあちゃんが温泉旅行から帰ってくる…」
>「…それがどうかしたの?」
>「メリーさんは僕の了承だけで、住んでるよね?」
>勝手に住んでるの方が正しい
>「そうね」
>「でも、おじいちゃんとおばあちゃんは…」
>「………」
>「解った?」
>「…どうするのよ。私追い出される?」
>「最悪、補導だな…」
>「……………」
>「多分、三時には帰るとか言ってた気がする…」
>
>メリーは完全に沈黙してしまった。
>どうやら彼女は彼女なりに考えているらしい。
>僕も考えているが、どれも長持ちするとは思えない考えだけだった。
>
>「…最近は物騒で困るな」
>「!?」
>「うおっ!?」
>テレビの前のソファーには俊二が座っていた。
>…テレビのニュースは「パンダが生まれた」との内容だったが。
>「お前、どこから湧いて出た?」
>「玄関の鍵が開いていたのでな、そこから入ってきた」
>「最近の委員会は、不法侵入まで許されるのか…」
>「いや、これは俺の個人的趣味だ」
>もっとタチ悪い。
>「一度警察の世話になって来い」
>「俺は陸軍でも引っさげて来なきゃ、止められないぜ」
>
>軽い毒舌vs軽口が始まったが、メリーが止めるように一言。
>
>「…あなたは何の用で来たの?」
>俊二が向き直る。
>「いやぁ、二人が困ってたみたいだから、この天才が知恵を貸そうと思ってね」
>「何か良い考えでもあるのか?」
>「ふ…。俺の頭脳が冴え渡っているぜ」
>「…さては、お前寝ぼけてるだろ」
>本当に寝ぼけてたら救えないが、こいつの場合はありうる。
>「失礼な」
>「…本当に大丈夫なのか?」
>「任せておけ。A定食3日分で手を打とうか?」
>「…S定食だな」
>「ふ…、珍しい事もある物だ、お前から報酬を上げるとは…」
>「今回ばかりはリスクが高い、無論お前にもトバッチリが来るやもしれん」
>「なるほど、正当な報酬と言う事か。おもしろい」
>「交渉成立だ。完璧な仕事を頼む」
>「手を抜けるほど、器用じゃないんでね…」
>
>「…ハァ…本当に大丈夫なの?」
>ハードボイルド(?)な雰囲気で交渉していた僕達に、メリーはツッコミを入れた。
>「あぁ、こいつが報酬の話を持ち込んだら、やる気があるって事さ」
>「S定食の為に死力を尽くすぜ」
>「待てコラ」
>
>
>それから僕とメリーは、俊二の作戦を聞いた。
>作戦自体はかなり安直な物だったが、メリーにとっては相当キツそうな内容だ。
>
>午後3時を回った。
>「そろそろ帰ってくるな…」
>「数時間だが、リハーサルも重ねた。あとは、なるようになる」
>「…ねぇ…本当にやらなきゃダメ?」
>「追い出されたくなければ我慢しよう…。僕は僕で、何言われるか…ハァ…」
>「…うぅ…」
>
>「む?」
>委員長が何かを感じ取った。
>「どうした、俊二?」
>「どうやら、帰ってきたようだ…」
>…ピンポーン
>「何故わかる」
>「これくらい当然」
>「まぁいい…、はーい!!どちら様ぁー?」
>
>「開けておくれぇ…荷物が重くてかなわん…」
>…ビンゴか。
>「わかったー、今開けるー」
>ガチャ
>「おかえりー…って、うわ、何その荷物!?」
>「よっこいしょっと。ふぅ、ただいま。…いやぁ、お土産みてたら…なぁ?」
>「ただいま、隆一。えぇ、特産品は魅力的ですものねぇ」
>
>僕のおじいちゃんは、元大手工場の係長で、今は定年退職し、余生を満喫している。
>人柄が良く、近所の交流が物凄い。
>町内で何かイベントがあると、必ず招待されるほどだ。
>
>おばあちゃんは、【井戸端会議の女王】と呼ばれる町内の情報屋だ。
>町内の住民のありとあらゆる情報を持っている。
>その情報は使い方によっては危険だが、そんな事はしない。
>陰口も言わない、真っ当な人間だからだ。
>女王と称されるのは、そのせいかもしれない。
>
>「えーと…、おじいちゃんおばあちゃん。帰ってきていきなりで悪いんだけど、話があるんだ。いいかな?」
>このままだと、土産話の流れに入るので、こっちから話を切り出す。俊二のアドバイスだ。
>
>「本当にいきなりじゃのぅ…。わかった荷物を置いたら聞こう」
>「さ、隆一も手伝って」
>「あ、うん」
>あきらかに出発の時より数倍ある荷物を持って、リビングに向かう。
>リビングのソファーには、俊二とメリーが座っていた。
>
>「あぁ、御無沙汰しております、元気そうでなによりで!!」
>メリーに注目が行く前に、俊二が挨拶をする。
>「おぉ、俊ちゃんじゃないか、たくましくなったのぉ」
>「やだなぁ、おじいさん、先週あったばかりですよ」
>「おやまぁ、俊ちゃん、お母さんは元気にしとるかぇ?」
>「えぇ、おかげさまで」
>僕の幼馴染なので、もちろん二人は知っている。
>「…………」
>だが、メリーのことは知る由もない。
>「おや、このお嬢さんは、どなたかな?」
>来た…。
>リハーサル通りに対応できるか…。
>「め…メリーです。はじめまして」
>「めりー?はて、聞かぬ名じゃのぉ」
>
>「ままま、まずは座ってお話しましょう」
>俊二に促され、二人は椅子に腰掛ける。
>ここから僕は一切口を出さない。
>俊二に全てを任せる事になっている。
>
>「君は…メリーと言ったね。どこから来たんだい?」
>「えっと…その…」
>「彼女は海外からの留学生なんですよ」
>俊二が説明する。
>もちろん嘘八百だ。
>「おぉ!!留学生とは。日本の文化に触れるのは良い経験ですぞ」
>「彼女は俺達と同じクラスになるはずだったのですが、何やら不都合があったらしいんです」
>「まぁ、どんな事が?」
>「えぇ、俺独自の調査で調べたんですが、うちの学校への編入、寮への登録全てが、抹消されているらしいんですよ」
>「おやおや、お気の毒に…」
>「学ぶべき所も住む所も無く、さらには帰る家には家族が、煙のように消えてしまったようで…」
>「まぁ!!」
>「どうやら夜逃げらしいのですが、行方が一切わからない状況なんですよ」
>
>…こいつは、脳内にどんな夢物語を描いているのだろうか。
>
>「一昨日、下校する際校門で出会って、今保護しているんですよ」
>「そうなの…。大変なんですね…メリーさん」
>…ここまでは完璧…あとはメリーが切り抜けれるか…。
>「えぇ、国際電話ですと、何度もかけれるものでもありませんから、親戚筋にも連絡できませんし…」
>国際電話って、そんなに高くないだろ…。
>「日本には、どれくらいいられるんだい?」
>「しばらくは大丈夫です。滞在許可証もありますし、学校関係者からの伝で更新手続きもできます」
>…更新できる物なのか…?
>「それでも、寂しかろう?」
>「多少は寂しいです…。でも、隆一君と俊二君が優しくしてくれてるので、大丈夫です」
>…嘘に迷いが無い。
>本心…じゃないよな。
>
>「どうします?おじいさん…」
>「ふーむ…」
>悩んでる。
>…押しが甘かったか。
>「あ…あの…」
>「ん?なんじゃね?」
>「御迷惑でしたら、すぐに出て行きます…。ごめんなさい…」
>あれ?リハーサルにそんなセリフは無かったはずだ…。
>
>「…ねぇ、おじいさん。家に置いてあげませんか?」
>「当たり前じゃ。ここから追い出すような人でなしでは無いわい」
>
>「…本当ですか!!ありがとうございます!!」
>「ありがとう!!おじいちゃんおばあちゃん!!」
>「あぁ、ありがとうございます。よかったな、メリー」
>「ふむ、家族が増えるのは、老いぼれにとって、一番幸せなことじゃ」
>「えぇ、家が賑やかなのは、素敵な事ですからねぇ」
>
>こうして、正式にメリーは家に住みつく事になった。
>おじいちゃんとおばあちゃんの前では喜んでいたメリー。
>だが、僕の部屋に戻った途端。【いつものメリー】になった。
>
>バタン(←部屋のドアを閉めた音
>「はぁ…しんどかった…」
>「あ~…ヒヤヒヤしたぜ、まったく」
>「流石の俺も…今回はヤバかったな…」
>全員が部屋でへたり込む。
>「なんでだよ…思いっきり快勝じゃねぇか…」
>「…お前のおばあさんは何者だか解っているのか?」
>「…あぁ、なるほどね。…まぁ、大丈夫だろ」
>「だといいのだがな…」
>「まぁ、ともかく。メリーさん、お疲れー」
>メリーに声をかけたのだが、耳に届いてないようだ
>
>「あ~、私のプライドが~…」
>「あう~恥ずかしい~…」
>「何が隆一と俊二が優しくよ~…」
>かなり重傷だ。
>そっとしておいてやるか。
>
>「…で、お前はお前で、何でここに居るんだ?」
>「いやぁ、さっきおばあさんに食事に誘ってもらってね」
>「お前は『遠慮』という言葉を知らんのか?」
>「『甘える』という言葉なら知っている」
>「それは覚えるな」
>俊二と話していると、どこからともなく音が聞こえてきた。
>シュッシュ…シュッシュ…
>音の発生地を見てみると。
>
>「…えーと何やってるんすか?」
>「それは…カマなのか…?」
>メリーがカマを取りだし、その刃を研いでいた。
>「見ればわかるでしょ?研いでいるのよ」
>「何で?」
>「日常の手入れか?」
>「半分当たり。刃を研いでいると気が安らぐのよ…」
>「危ない趣味だな…」
>「うむ、要注意だ…」
>「うるさいわね。せっかく人がリラックスしてるのに…。斬られたい?」
>二人で『滅相も無い』と首を振る。
>そのあとメリーは2時間ほど刃を研ぎつづけた。
>
>そして僕は、俊二が大量に持ってきたマンガ雑誌を読でいた。
>俊二は…まだいた。2時間も座禅を組んでいる。
>2時間の間、ほとんど会話は無かった。
>カマを研ぐ音、僕がページをめくる音。
>それだけだった。
>
>だが、沈黙はメリーの一言で破られた。
>
>「ねぇ、あんた達」
>「ん?」
>「む?」
>ちょうど座禅が終わったのか、僕が話しかけても反応しなかった俊二が生き返った。
>…もしや、嫌味か?
>「カマ以外に良い武器は無い?」
>「…なんだそりゃ?」
>「そのカマの方が、強力だと思うが?」
>そういうと、メリーは首を振り、
>「違うわ、カマだと『うっかり』殺しちゃいそうだから、死なない程度な武器が欲しいの」
>「…それじゃあ、カマを振り回さないでくれ」
>「それは、隆一を心配しての配慮だな?」
>「う…」
>…図星のようだ。
>
>「とにかく、良い武器を探しなさい!!じゃないとカマのままでいるわよ?」
>「へいへい…」
>「となると、殺傷性が低い物か…」
>メリーに命じられ、僕と俊二はメリーの新しい武器を探す事になった。
>
>「どう?良いもの集まった?」
>「とりあえず持ってきた」
>「殺傷性が低くなると、どうも限られるからな…」
>傘…雑誌…おたま…ハエ叩き…布団叩き…ハンガー…辞書…輪ゴム…長ネギ?…便所スリッパ…ブーツ…ロケット花火…
>次々と出される半殺人兵器。
>「ハエ叩きとロケット花火は勘弁…」
>ハエ叩きって…ハエ以下か…。
>「まぁ、これくらい集まればいいだろ」
>「そうね…」
>「本当にこれで殴られるのか…」
>想像して、ため息をつく…
>
>「殴られるだけじゃなくてよ?」
>「…え?うおおぉあ!!」
>飛んできた辞書を紙一重で避けた
>「あぶ…危ねぇ…」
>「これで身のこなしを鍛えれるわね」
>「当たったらどうするんだよ!!」
>「打たれ強さを鍛える訓練」
>「…さいですか」
>当たり所によっちゃ、死ぬぞこれ…。
>
>「隆一ー。下りてらっしゃーい」
>1階からおばあちゃんの呼び声が聞こえた。
>「あ、そろそろ飯かな?」
>「…ふむ、時間的にそうだろうな」
>「隆一のおばあさまの料理の腕前…楽しみね」
>「僕が保証する。ばあちゃんの料理は天下一品さ。な?俊二…って居ねぇし」
>「おーい、早く来いよー」
>…1階から奴の声がした。
>
>僕とメリーが1階に下りると、廊下に俊二がいた。
>「お前は『遠慮』という言葉を学習したほうがいいな…。入ろうぜ」
>「まぁ、待て餓えた愚民よ」
>リビングに入ろうとした僕を俊二が止めた。
>「どうした?早く入ろうぜ?」
>「今日は、おばあさんが腕を振るったそうだぞ」
>「ほぅ、それは楽しみ…って何で?」
>「お前の後ろにいる、…今日の主役のためさ」
>メリーが主役?
>…あぁ、おばあちゃんならやりかねないな。
>「…私?」
>本人は解っていない。
>
>「さ、扉を開けるんだ」
>俊二が促す。
>「え…えぇ」
>メリーが恐る恐る扉を開ける。
>ガチャ…
>
>メリーは言葉を失った。
>
>リビングには【新しい家族、メリーの歓迎会】と銘打たれた、たれまくが飾ってあった。
>テーブルに、怪物級の大きさのケーキ。平凡ではあるが、ご馳走も並べられている。
>そして、それらに負けないほど老夫婦の温かい笑顔があった。
>後ろには、これまた温かい笑顔の同居人。
>その隣りに澄まして笑う、不法侵入者。
>
>何故人間は、こんな事をするんだろう。
>理解できない。
>今まで葬ってきた人間は、少なくともこんな温かい笑顔の持ち主はいなかった。
>
>本当に理解できない。
>何故今自分が泣きそうなのかも…。
>
>
>僕は悟っていた。
>メリーは、招かれざる殺戮者。
>憑かれた人間は、自分を殺そうとする彼女に抵抗をする。
>そして、彼女は『それ』を始末する。
>
>メリーはいつも一人だったのだろう。
>誰にも認められず。
>歓迎されずに。
>今メリーは、初めて出来た家族から、初めて温かい歓迎を受けている。
>
>
>「こ…これは?」
>僕の方を向いて、メリーがやっとの思いで口を開く。
>「見ての通り。キミの歓迎会だよ」
>「歓…迎会?」
>「そ、キミは家族になったんだ、歓迎会ぐらいは当たり前だよ」
>「家族…?」
>「うん、家族。おじいちゃんとおばあちゃんが認めてくれたって事」
>「あぁ――あ、ありがとうっ…スッ…ヒック…」
>また泣いてるし…。
>
>「さぁ、乾杯と行こうかの」
>「はぃ」
>「………はい!!」
>「隆一、お前が音頭を取るんだ」
>「よっし。新しい家族、メリーさんに!!」
>『かんぱーい!!』
>チン チン チン チン(グラスがぶつかってる音です
>
>そして、歓迎会なるパーティーが始まった。
>「いやぁ、いつもながら料理が上手でいらっしゃる」
>「当たり前だって。っていうか、お前食い過ぎ」
>「まぁまぁ、まだ沢山作ってあるから」
>「今日は、ばあさん気合入ってたからのぉ」
>「あ…この唐揚げおいしいです…!!」
>「あら、嬉しいわぁ♪」
>
>「まだ、ケーキがあるからなぁ…ペース考えないと、大変だぞ…」
>「私甘い物好きだから、任せなさい」
>「え…あ、あぁ、任せるわ。丸ごと一個」
>…メリー、ちょっと雰囲気変わったか?
>「このフォークで刺されたい?」
>「冗談です。勘弁してください」
>「いいわ、今気分良いから許してあげる」
>「心が寛大でいらっしゃる」
>…いつもの通りか。
>
>その後、ケーキに挑んだが、僕達男性陣は途中下車。
>おばあちゃんとメリーで2/3を制覇した。
>
>ケーキの甘ったるさが口に残る中、おじいちゃんとおばあちゃんの土産話がスタートした。
>旅館の女将さんが良い人だった…。旅先で出会った、老夫婦とも仲良くなれた…。
>二人はとても楽しそうに話していた。
>
>土産話が終わると、学校の話を聞かれる。
>学校の話は、ほとんど僕と俊二の漫才になってしまう。
>
>担任が実はズラだった。国語の担任がズラだった。理論の担任がズラだった。
>ほとんどの男性教師の頭に砂漠化の初期現象がみられた。
>購買部が生徒の波で決壊した。
>
>漫才は、夜遅くまで続いた。
>
>メリーはその日、ずっと笑っていた。
>どこにいてもおかしくはない、普通の女の子のように。
>
>
>「疲れた…」
>「あ~…私も笑いすぎて、疲れちゃったわ…」
>「何で俺漫才してたんだろう…」
>「いいんじゃない?楽しかったんだし」
>「はぁ、飯食ったらとっとと帰れってんだよ…アイツは」
>「でも、俊二が居なかったら盛り上がらなかったわよ?」
>「まったく…ふぁ~…眠い…」
>「そうね…寝ましょう」
>「おぅ…」
>「おやす…みッ!!」
>ブゥン!!
>「ぬおぉぉぉ!?」
>紙一重でハンガーを避ける。
>「あっぶねぇ…。寝る前にコレはねぇだろ…」
>「…ZZZZzzzz…」
>「うわぁお、寝逃げっすか」
>こいつは…。
>
>
>警戒しつつ僕も布団に潜りこみ、睡魔にひれ伏すことにした。
>
>
>…はっきりいって照れくさい。
>だが、このまま黙っているのも、納得がいかない。
>でも、面と向かって言うのも、恥ずかしい。
>だから彼女は、今言う事にした。
>布団から起きて、近寄る。
>隆一は寝ている。狸寝入りでもなさそうだ。
>
>「…ありがとう隆一」
>「あなたのおかげで、私にも家族が出来たわ…」
>「『隆一と俊二が優しくしてくれる』か…。本当ね…。恥ずかしがって…バカみたい…」
>「家族として、改めてよろしくね。隆一」
>「…おやすみ」
>
>彼女は、寝ている隆一の頬に軽く自分の唇を押し当てた。
>もし途中で起きられたら、いっそカマで真っ二つにしてやろうとも思ったが、大丈夫そうだ。
>礼は言った。明日から、隆一をたっぷりとしごいてやろう。
>そんな事を考えながら、少しウキウキした気分で眠りについた。
>
>
>
>ジリリリリリリリリリリリリリリ!!
>朝の宿敵に敗れ、僕は布団から生まれる。
>メリー…寝てるよな、やっぱり。
>さっさと仕度して、学校いかなきゃな。
>「それじゃ、行ってくるよ。メリーさん」
>眠っているメリーさんに挨拶し、僕は部屋を出た。
拍手っぽいもの(感想やら)
- これはかわいいwwwwwwwwwww -- ななし (2007-07-25 02:36:05)
- 漫画的なものつくってみたら? -- ななし (2007-07-29 16:50:13)
- 携帯小説にしたらいいと思うよ -- 名無しさん (2007-10-15 16:33:47)
- 萌え より かわいい が先に来たのは久しぶりかもしれない。 -- talk名 (2008-04-08 22:31:33)
- 漫画にするのはいいかも知れない。 -- 名無しさん (2009-08-04 22:56:09)
#comment(vsize=2,nsize=20,size=40)
*メリーの居る生活 三日目
>2スレ目>>803
>作: ◆Rei..HLfH. ID:EUZWfjHI
>『[[メリーの居る生活 二日目]]』の続編
>眩しい…、朝か…。
>…今日は休みだし…もう少し寝てよう…ZZZZZzzz…。
>
>…ZZZZzzzz…。
>「隆一、起きてよ」
>…誰だ…誰でもいいや…。
>「はぁ…、お腹空いたわ…。」
>
>その日の隆一は、連日の睡眠不足から久々に開放され、夢の世界で羽根を広げていた。
>「んー…」
>一方メリーは、朝食を作る人間がまだ起床せず、起こそうと悪戦苦闘を強いられている。
>「何で私が起こさなきゃならないのよ…、声かけても起きないなら…」
>メリーはカマを取りだし、その刃を隆一の頬に着けた。
>「5秒の有余を与えるわ。それまでに起きなければ…どうなっても知らなくてよ?」
>「1…2…3…」
>
>「…………うぅ…」
>「あら?案外あっさりと起きたわね?」
>「…寝覚め最悪…」
>「おはよう。私に起こしてもらっただけ、ありがたく思いなさい」
>「おはょ…なんで朝から死の宣告を、目覚まし替わりにしなきゃならんのだ…」
>「早く着替えてリビングに来なさい。そして朝食を作るのよ」
>メリーはそう言うとさっさと1階に下りて行ってしまった。
>「へいへい…ふぁ~」
>「2度寝したら殺す」
>…1階から釘を刺された。
>「…ち」
>
>
>今日はメリーさんが来てから初めての休日。
>(と言っても、来たのは一昨日だが)
>昨夜、休日の過ごし方を考えている内に、寝てしまったようだ。
>とりあえず、昼まで寝ようと思ったが…10時か。
>まぁ、良しとするか。
>
>そういえばさっきのメリー、いつもと調子違ったかな…。
>「お腹空いたわ」とか「起きてよ」とか言ってた気がする…。
>…夢うつつ?
>そんな事を考えながら1階に下り、キッチンに立つ。
>
>「何食う?」
>「何でもいいわ…とにかく早くして。お腹空いたのよ」
>「んじゃ、とりあえず、すぐ出来る物作るよ」
>「頼んだわよ…」
>
>「はい、トースト+スクランブルエッグ出来あがり」
>「ありがと…」
>「あ、賞味期限ギリギリのハムもあったな、ついでに片付けちまおう」
>「………」
>「ん?先食ってていいぞ?」
>「食事はそろって食べる物よ」
>「分かった、さっさと作り上げる」
>
>二人の食卓には、スクランブルエッグとトースト、ハムの「とろけるチーズ」和えが置かれた。
>
>「いただきます」
>「いただきます」
>「このスクランブルエッグ辛過ぎ…」
>「どれ?……スマン。塩入れすぎだ…」
>「バターが無いわよ?」
>「ほんとだ、取ってくる」
>
>冷蔵庫にバターを取りに行く途中、カレンダーが目に入った。
>今日の日付に赤い丸が付いている。
>………忘れていた。
>どうしよう…。
>
>とりあえずバターを持って戻る。
>「はいよ、バター」
>「ありがと」
>「このハム美味しいわ」
>「僕の自信作なんだ。ハムをカリッと焼き上げてジューシーに、そして中の「とろけたチーズ」が濃厚な甘味を出す」
>適当な事を言ってみる。
>「トーストに乗せてもいいわね」
>…流された。
>「あぁ、結構いけるよ」
>「牛乳は無いの?」
>「あるけど…コーヒーじゃダメか?」
>「苦いから嫌いだわ」
>「へいへい…」
>少し遅めの朝食は、会話が弾んだ。
>
>「さて…」
>洗い物を終えた僕は、テーブルについて、
>「困った事になった」
>朝のニュースを見ていたメリーさんに言った。
>「どうしたの?」
>「今日、おじいちゃんとおばあちゃんが温泉旅行から帰ってくる…」
>「…それがどうかしたの?」
>「メリーさんは僕の了承だけで、住んでるよね?」
>勝手に住んでるの方が正しい
>「そうね」
>「でも、おじいちゃんとおばあちゃんは…」
>「………」
>「解った?」
>「…どうするのよ。私追い出される?」
>「最悪、補導だな…」
>「……………」
>「多分、三時には帰るとか言ってた気がする…」
>
>メリーは完全に沈黙してしまった。
>どうやら彼女は彼女なりに考えているらしい。
>僕も考えているが、どれも長持ちするとは思えない考えだけだった。
>
>「…最近は物騒で困るな」
>「!?」
>「うおっ!?」
>テレビの前のソファーには俊二が座っていた。
>…テレビのニュースは「パンダが生まれた」との内容だったが。
>「お前、どこから湧いて出た?」
>「玄関の鍵が開いていたのでな、そこから入ってきた」
>「最近の委員会は、不法侵入まで許されるのか…」
>「いや、これは俺の個人的趣味だ」
>もっとタチ悪い。
>「一度警察の世話になって来い」
>「俺は陸軍でも引っさげて来なきゃ、止められないぜ」
>
>軽い毒舌vs軽口が始まったが、メリーが止めるように一言。
>
>「…あなたは何の用で来たの?」
>俊二が向き直る。
>「いやぁ、二人が困ってたみたいだから、この天才が知恵を貸そうと思ってね」
>「何か良い考えでもあるのか?」
>「ふ…。俺の頭脳が冴え渡っているぜ」
>「…さては、お前寝ぼけてるだろ」
>本当に寝ぼけてたら救えないが、こいつの場合はありうる。
>「失礼な」
>「…本当に大丈夫なのか?」
>「任せておけ。A定食3日分で手を打とうか?」
>「…S定食だな」
>「ふ…、珍しい事もある物だ、お前から報酬を上げるとは…」
>「今回ばかりはリスクが高い、無論お前にもトバッチリが来るやもしれん」
>「なるほど、正当な報酬と言う事か。おもしろい」
>「交渉成立だ。完璧な仕事を頼む」
>「手を抜けるほど、器用じゃないんでね…」
>
>「…ハァ…本当に大丈夫なの?」
>ハードボイルド(?)な雰囲気で交渉していた僕達に、メリーはツッコミを入れた。
>「あぁ、こいつが報酬の話を持ち込んだら、やる気があるって事さ」
>「S定食の為に死力を尽くすぜ」
>「待てコラ」
>
>
>それから僕とメリーは、俊二の作戦を聞いた。
>作戦自体はかなり安直な物だったが、メリーにとっては相当キツそうな内容だ。
>
>午後3時を回った。
>「そろそろ帰ってくるな…」
>「数時間だが、リハーサルも重ねた。あとは、なるようになる」
>「…ねぇ…本当にやらなきゃダメ?」
>「追い出されたくなければ我慢しよう…。僕は僕で、何言われるか…ハァ…」
>「…うぅ…」
>
>「む?」
>委員長が何かを感じ取った。
>「どうした、俊二?」
>「どうやら、帰ってきたようだ…」
>…ピンポーン
>「何故わかる」
>「これくらい当然」
>「まぁいい…、はーい!!どちら様ぁー?」
>
>「開けておくれぇ…荷物が重くてかなわん…」
>…ビンゴか。
>「わかったー、今開けるー」
>ガチャ
>「おかえりー…って、うわ、何その荷物!?」
>「よっこいしょっと。ふぅ、ただいま。…いやぁ、お土産みてたら…なぁ?」
>「ただいま、隆一。えぇ、特産品は魅力的ですものねぇ」
>
>僕のおじいちゃんは、元大手工場の係長で、今は定年退職し、余生を満喫している。
>人柄が良く、近所の交流が物凄い。
>町内で何かイベントがあると、必ず招待されるほどだ。
>
>おばあちゃんは、【井戸端会議の女王】と呼ばれる町内の情報屋だ。
>町内の住民のありとあらゆる情報を持っている。
>その情報は使い方によっては危険だが、そんな事はしない。
>陰口も言わない、真っ当な人間だからだ。
>女王と称されるのは、そのせいかもしれない。
>
>「えーと…、おじいちゃんおばあちゃん。帰ってきていきなりで悪いんだけど、話があるんだ。いいかな?」
>このままだと、土産話の流れに入るので、こっちから話を切り出す。俊二のアドバイスだ。
>
>「本当にいきなりじゃのぅ…。わかった荷物を置いたら聞こう」
>「さ、隆一も手伝って」
>「あ、うん」
>あきらかに出発の時より数倍ある荷物を持って、リビングに向かう。
>リビングのソファーには、俊二とメリーが座っていた。
>
>「あぁ、御無沙汰しております、元気そうでなによりで!!」
>メリーに注目が行く前に、俊二が挨拶をする。
>「おぉ、俊ちゃんじゃないか、たくましくなったのぉ」
>「やだなぁ、おじいさん、先週あったばかりですよ」
>「おやまぁ、俊ちゃん、お母さんは元気にしとるかぇ?」
>「えぇ、おかげさまで」
>僕の幼馴染なので、もちろん二人は知っている。
>「…………」
>だが、メリーのことは知る由もない。
>「おや、このお嬢さんは、どなたかな?」
>来た…。
>リハーサル通りに対応できるか…。
>「め…メリーです。はじめまして」
>「めりー?はて、聞かぬ名じゃのぉ」
>
>「ままま、まずは座ってお話しましょう」
>俊二に促され、二人は椅子に腰掛ける。
>ここから僕は一切口を出さない。
>俊二に全てを任せる事になっている。
>
>「君は…メリーと言ったね。どこから来たんだい?」
>「えっと…その…」
>「彼女は海外からの留学生なんですよ」
>俊二が説明する。
>もちろん嘘八百だ。
>「おぉ!!留学生とは。日本の文化に触れるのは良い経験ですぞ」
>「彼女は俺達と同じクラスになるはずだったのですが、何やら不都合があったらしいんです」
>「まぁ、どんな事が?」
>「えぇ、俺独自の調査で調べたんですが、うちの学校への編入、寮への登録全てが、抹消されているらしいんですよ」
>「おやおや、お気の毒に…」
>「学ぶべき所も住む所も無く、さらには帰る家には家族が、煙のように消えてしまったようで…」
>「まぁ!!」
>「どうやら夜逃げらしいのですが、行方が一切わからない状況なんですよ」
>
>…こいつは、脳内にどんな夢物語を描いているのだろうか。
>
>「一昨日、下校する際校門で出会って、今保護しているんですよ」
>「そうなの…。大変なんですね…メリーさん」
>…ここまでは完璧…あとはメリーが切り抜けれるか…。
>「えぇ、国際電話ですと、何度もかけれるものでもありませんから、親戚筋にも連絡できませんし…」
>国際電話って、そんなに高くないだろ…。
>「日本には、どれくらいいられるんだい?」
>「しばらくは大丈夫です。滞在許可証もありますし、学校関係者からの伝で更新手続きもできます」
>…更新できる物なのか…?
>「それでも、寂しかろう?」
>「多少は寂しいです…。でも、隆一君と俊二君が優しくしてくれてるので、大丈夫です」
>…嘘に迷いが無い。
>本心…じゃないよな。
>
>「どうします?おじいさん…」
>「ふーむ…」
>悩んでる。
>…押しが甘かったか。
>「あ…あの…」
>「ん?なんじゃね?」
>「御迷惑でしたら、すぐに出て行きます…。ごめんなさい…」
>あれ?リハーサルにそんなセリフは無かったはずだ…。
>
>「…ねぇ、おじいさん。家に置いてあげませんか?」
>「当たり前じゃ。ここから追い出すような人でなしでは無いわい」
>
>「…本当ですか!!ありがとうございます!!」
>「ありがとう!!おじいちゃんおばあちゃん!!」
>「あぁ、ありがとうございます。よかったな、メリー」
>「ふむ、家族が増えるのは、老いぼれにとって、一番幸せなことじゃ」
>「えぇ、家が賑やかなのは、素敵な事ですからねぇ」
>
>こうして、正式にメリーは家に住みつく事になった。
>おじいちゃんとおばあちゃんの前では喜んでいたメリー。
>だが、僕の部屋に戻った途端。【いつものメリー】になった。
>
>バタン(←部屋のドアを閉めた音
>「はぁ…しんどかった…」
>「あ~…ヒヤヒヤしたぜ、まったく」
>「流石の俺も…今回はヤバかったな…」
>全員が部屋でへたり込む。
>「なんでだよ…思いっきり快勝じゃねぇか…」
>「…お前のおばあさんは何者だか解っているのか?」
>「…あぁ、なるほどね。…まぁ、大丈夫だろ」
>「だといいのだがな…」
>「まぁ、ともかく。メリーさん、お疲れー」
>メリーに声をかけたのだが、耳に届いてないようだ
>
>「あ~、私のプライドが~…」
>「あう~恥ずかしい~…」
>「何が隆一と俊二が優しくよ~…」
>かなり重傷だ。
>そっとしておいてやるか。
>
>「…で、お前はお前で、何でここに居るんだ?」
>「いやぁ、さっきおばあさんに食事に誘ってもらってね」
>「お前は『遠慮』という言葉を知らんのか?」
>「『甘える』という言葉なら知っている」
>「それは覚えるな」
>俊二と話していると、どこからともなく音が聞こえてきた。
>シュッシュ…シュッシュ…
>音の発生地を見てみると。
>
>「…えーと何やってるんすか?」
>「それは…カマなのか…?」
>メリーがカマを取りだし、その刃を研いでいた。
>「見ればわかるでしょ?研いでいるのよ」
>「何で?」
>「日常の手入れか?」
>「半分当たり。刃を研いでいると気が安らぐのよ…」
>「危ない趣味だな…」
>「うむ、要注意だ…」
>「うるさいわね。せっかく人がリラックスしてるのに…。斬られたい?」
>二人で『滅相も無い』と首を振る。
>そのあとメリーは2時間ほど刃を研ぎつづけた。
>
>そして僕は、俊二が大量に持ってきたマンガ雑誌を読でいた。
>俊二は…まだいた。2時間も座禅を組んでいる。
>2時間の間、ほとんど会話は無かった。
>カマを研ぐ音、僕がページをめくる音。
>それだけだった。
>
>だが、沈黙はメリーの一言で破られた。
>
>「ねぇ、あんた達」
>「ん?」
>「む?」
>ちょうど座禅が終わったのか、僕が話しかけても反応しなかった俊二が生き返った。
>…もしや、嫌味か?
>「カマ以外に良い武器は無い?」
>「…なんだそりゃ?」
>「そのカマの方が、強力だと思うが?」
>そういうと、メリーは首を振り、
>「違うわ、カマだと『うっかり』殺しちゃいそうだから、死なない程度な武器が欲しいの」
>「…それじゃあ、カマを振り回さないでくれ」
>「それは、隆一を心配しての配慮だな?」
>「う…」
>…図星のようだ。
>
>「とにかく、良い武器を探しなさい!!じゃないとカマのままでいるわよ?」
>「へいへい…」
>「となると、殺傷性が低い物か…」
>メリーに命じられ、僕と俊二はメリーの新しい武器を探す事になった。
>
>「どう?良いもの集まった?」
>「とりあえず持ってきた」
>「殺傷性が低くなると、どうも限られるからな…」
>傘…雑誌…おたま…ハエ叩き…布団叩き…ハンガー…辞書…輪ゴム…長ネギ?…便所スリッパ…ブーツ…ロケット花火…
>次々と出される半殺人兵器。
>「ハエ叩きとロケット花火は勘弁…」
>ハエ叩きって…ハエ以下か…。
>「まぁ、これくらい集まればいいだろ」
>「そうね…」
>「本当にこれで殴られるのか…」
>想像して、ため息をつく…
>
>「殴られるだけじゃなくてよ?」
>「…え?うおおぉあ!!」
>飛んできた辞書を紙一重で避けた
>「あぶ…危ねぇ…」
>「これで身のこなしを鍛えれるわね」
>「当たったらどうするんだよ!!」
>「打たれ強さを鍛える訓練」
>「…さいですか」
>当たり所によっちゃ、死ぬぞこれ…。
>
>「隆一ー。下りてらっしゃーい」
>1階からおばあちゃんの呼び声が聞こえた。
>「あ、そろそろ飯かな?」
>「…ふむ、時間的にそうだろうな」
>「隆一のおばあさまの料理の腕前…楽しみね」
>「僕が保証する。ばあちゃんの料理は天下一品さ。な?俊二…って居ねぇし」
>「おーい、早く来いよー」
>…1階から奴の声がした。
>
>僕とメリーが1階に下りると、廊下に俊二がいた。
>「お前は『遠慮』という言葉を学習したほうがいいな…。入ろうぜ」
>「まぁ、待て餓えた愚民よ」
>リビングに入ろうとした僕を俊二が止めた。
>「どうした?早く入ろうぜ?」
>「今日は、おばあさんが腕を振るったそうだぞ」
>「ほぅ、それは楽しみ…って何で?」
>「お前の後ろにいる、…今日の主役のためさ」
>メリーが主役?
>…あぁ、おばあちゃんならやりかねないな。
>「…私?」
>本人は解っていない。
>
>「さ、扉を開けるんだ」
>俊二が促す。
>「え…えぇ」
>メリーが恐る恐る扉を開ける。
>ガチャ…
>
>メリーは言葉を失った。
>
>リビングには【新しい家族、メリーの歓迎会】と銘打たれた、たれまくが飾ってあった。
>テーブルに、怪物級の大きさのケーキ。平凡ではあるが、ご馳走も並べられている。
>そして、それらに負けないほど老夫婦の温かい笑顔があった。
>後ろには、これまた温かい笑顔の同居人。
>その隣りに澄まして笑う、不法侵入者。
>
>何故人間は、こんな事をするんだろう。
>理解できない。
>今まで葬ってきた人間は、少なくともこんな温かい笑顔の持ち主はいなかった。
>
>本当に理解できない。
>何故今自分が泣きそうなのかも…。
>
>
>僕は悟っていた。
>メリーは、招かれざる殺戮者。
>憑かれた人間は、自分を殺そうとする彼女に抵抗をする。
>そして、彼女は『それ』を始末する。
>
>メリーはいつも一人だったのだろう。
>誰にも認められず。
>歓迎されずに。
>今メリーは、初めて出来た家族から、初めて温かい歓迎を受けている。
>
>
>「こ…これは?」
>僕の方を向いて、メリーがやっとの思いで口を開く。
>「見ての通り。キミの歓迎会だよ」
>「歓…迎会?」
>「そ、キミは家族になったんだ、歓迎会ぐらいは当たり前だよ」
>「家族…?」
>「うん、家族。おじいちゃんとおばあちゃんが認めてくれたって事」
>「あぁ――あ、ありがとうっ…スッ…ヒック…」
>また泣いてるし…。
>
>「さぁ、乾杯と行こうかの」
>「はぃ」
>「………はい!!」
>「隆一、お前が音頭を取るんだ」
>「よっし。新しい家族、メリーさんに!!」
>『かんぱーい!!』
>チン チン チン チン(グラスがぶつかってる音です
>
>そして、歓迎会なるパーティーが始まった。
>「いやぁ、いつもながら料理が上手でいらっしゃる」
>「当たり前だって。っていうか、お前食い過ぎ」
>「まぁまぁ、まだ沢山作ってあるから」
>「今日は、ばあさん気合入ってたからのぉ」
>「あ…この唐揚げおいしいです…!!」
>「あら、嬉しいわぁ♪」
>
>「まだ、ケーキがあるからなぁ…ペース考えないと、大変だぞ…」
>「私甘い物好きだから、任せなさい」
>「え…あ、あぁ、任せるわ。丸ごと一個」
>…メリー、ちょっと雰囲気変わったか?
>「このフォークで刺されたい?」
>「冗談です。勘弁してください」
>「いいわ、今気分良いから許してあげる」
>「心が寛大でいらっしゃる」
>…いつもの通りか。
>
>その後、ケーキに挑んだが、僕達男性陣は途中下車。
>おばあちゃんとメリーで2/3を制覇した。
>
>ケーキの甘ったるさが口に残る中、おじいちゃんとおばあちゃんの土産話がスタートした。
>旅館の女将さんが良い人だった…。旅先で出会った、老夫婦とも仲良くなれた…。
>二人はとても楽しそうに話していた。
>
>土産話が終わると、学校の話を聞かれる。
>学校の話は、ほとんど僕と俊二の漫才になってしまう。
>
>担任が実はズラだった。国語の担任がズラだった。理論の担任がズラだった。
>ほとんどの男性教師の頭に砂漠化の初期現象がみられた。
>購買部が生徒の波で決壊した。
>
>漫才は、夜遅くまで続いた。
>
>メリーはその日、ずっと笑っていた。
>どこにいてもおかしくはない、普通の女の子のように。
>
>
>「疲れた…」
>「あ~…私も笑いすぎて、疲れちゃったわ…」
>「何で俺漫才してたんだろう…」
>「いいんじゃない?楽しかったんだし」
>「はぁ、飯食ったらとっとと帰れってんだよ…アイツは」
>「でも、俊二が居なかったら盛り上がらなかったわよ?」
>「まったく…ふぁ~…眠い…」
>「そうね…寝ましょう」
>「おぅ…」
>「おやす…みッ!!」
>ブゥン!!
>「ぬおぉぉぉ!?」
>紙一重でハンガーを避ける。
>「あっぶねぇ…。寝る前にコレはねぇだろ…」
>「…ZZZZzzzz…」
>「うわぁお、寝逃げっすか」
>こいつは…。
>
>
>警戒しつつ僕も布団に潜りこみ、睡魔にひれ伏すことにした。
>
>
>…はっきりいって照れくさい。
>だが、このまま黙っているのも、納得がいかない。
>でも、面と向かって言うのも、恥ずかしい。
>だから彼女は、今言う事にした。
>布団から起きて、近寄る。
>隆一は寝ている。狸寝入りでもなさそうだ。
>
>「…ありがとう隆一」
>「あなたのおかげで、私にも家族が出来たわ…」
>「『隆一と俊二が優しくしてくれる』か…。本当ね…。恥ずかしがって…バカみたい…」
>「家族として、改めてよろしくね。隆一」
>「…おやすみ」
>
>彼女は、寝ている隆一の頬に軽く自分の唇を押し当てた。
>もし途中で起きられたら、いっそカマで真っ二つにしてやろうとも思ったが、大丈夫そうだ。
>礼は言った。明日から、隆一をたっぷりとしごいてやろう。
>そんな事を考えながら、少しウキウキした気分で眠りについた。
>
>
>
>ジリリリリリリリリリリリリリリ!!
>朝の宿敵に敗れ、僕は布団から生まれる。
>メリー…寝てるよな、やっぱり。
>さっさと仕度して、学校いかなきゃな。
>「それじゃ、行ってくるよ。メリーさん」
>眠っているメリーさんに挨拶し、僕は部屋を出た。
拍手っぽいもの(感想やら)
- これはかわいいwwwwwwwwwww -- ななし (2007-07-25 02:36:05)
- 漫画的なものつくってみたら? -- ななし (2007-07-29 16:50:13)
- 携帯小説にしたらいいと思うよ -- 名無しさん (2007-10-15 16:33:47)
- 萌え より かわいい が先に来たのは久しぶりかもしれない。 -- talk名 (2008-04-08 22:31:33)
- 漫画にするのはいいかも知れない。 -- 名無しさん (2009-08-04 22:56:09)
- 漫画にしてみては? &br() -- 名無しさん (2011-05-09 19:10:11)
#comment(vsize=2,nsize=20,size=40)
表示オプション
横に並べて表示:
変化行の前後のみ表示: