SSその1
初代スレ >>270-273のSS
作:270 名前: 名無したん(;´Д`)ハァハァ ID:ljbjbI//
もう、メリーたんに憑依されてから3時間程経っただろうか。
とにかく振り向きさえしなければ良さそうなので、
俺はテレビを見ながらメリーたんが諦めるのをずっと待っている。
一方のメリーたんも、絶対に振り向くまいとする俺の意思を知ってか知らずか、
俺の後ろで頑なにその時を待ち続けている。
いくら幽霊でも、ずっと立ち続けていてはさすがに疲れて諦めるんじゃないかと思っていたのだが、
時折テレビ番組に反応してクスッと笑い声が聞こえるあたり、意外と楽しんでしまっているようだ。
これでは駄目だと思う反面、そのメリーたんの意外な一面に、理不尽な安らぎを感じてしまっている俺がいた。
このままメリーたんとの妙なひと時を満喫していても良かったのだが、
いかんせん相手は俺を殺そうとしているっぽい。
とにかく急いで何とかしなければいけないんだ。
そこで、メリーたんの耐久力の源となっているであろうTVを消してみた。
すると、「あっ」という残念そうな声が背後から聞こえたような気がした。
何も光を発さなくなったブラウン管には、タレントの代わりに悲しそうにうつむく少女の顔が在った。
その少女の姿は、長い髪に黒のプリムリボン、フリルのドレスも同様に黒で統一されていて、
ボリュームのあるシルエットとは裏腹な落ちついた印象を与える。
顔も非常に美しく、その出で立ちはまさに等身大のフランス人形といった所だ。
そんな、メルヘン世界から抜け出してきたような少女に眼を奪われていると、
かすかに口が動いたことに気付いた。
何か言ったのだろうか。何にせよ嫌な予感がするが…。
しかし小さすぎてよく聞こえなかったので、
「あの・・・もしかして何か言った?」と問い返してみた。恐怖で声は裏返っていただろう。
すると、メリーたんの口がもう一度動いた、
「さっき・・・、もう一度・・・せて・・・。」
多少聞き取れはしたが、まだ伝わってこない。
「ゴ、ゴメン…。まだよく聞こえないんだけど…。」
俺が勇気を振り絞って更に催促すると、メリーたんは意を決した様に語気を強めた。
「さっきそこに写っていたものを、もう一度見せなさいっていっているのよ!」
「え…。」
そのあまりに浮世離れした台詞に、俺は呆気にとられた。
(え?さっきの?さっきのって、TVのことだよな…。そんなに気に入ってたのか??)
更に思案は俺の頭の中を駆け巡る。
(というか本来の目的は忘れてしまったんだろうか?いや、それはそれでラッキーだが…。)
(それよりも!と、とにかくTVつけなきゃ!メリーたんの要求だ!)
俺は急いでリモコンを操作した。しかし気が動転してるせいか、なぜか反応してくれない。
「ちょっと、早くしてよね!それとも、私はそんなに難しいことを言ったのかしら?」
上手くいかなくて焦る俺の背中に、メリーたんの罵声が浴びせかけられる。
(おかしいな…なんでだ!?)
焦ってとにかくボタンを連打していたのだが、俺はふと気付いた。
(ちょwwww俺wwwww発信部ww手で抑えてたしwwwwwww)
俺は焦るあまりに、両手でガッチリとリモコンを持って操作していたのだ。
気を取り直していつも通りに片手で操作すると、あっさりテレビはついてくれた。
俺はとりあえずの危機を脱したのだ。これでメリーたんも満足してくるはず。
ところが、間髪いれずにメリーたんの怒号が飛んできた。
「ねえ、さっきのとは違うみたいだけど?どういうことなのよ!」
その言葉に慌ててテレビに眼をやると、
メリーたんお気に入りのバラエティは、いつの間にかニュースにシフトしていた。
拍手っぽいもの(感想やら)
初代スレ >>654-659
作:654 名前: 651 ID:FohXhrZf
夜の12時、男が店の戸締りをしている。
戸締りが終わると男は椅子に座り、テーブルの上の酒を一口飲んだ。
ジリリリリーン!ジリリリリーン!
古臭い電話がうるさい声を鳴らしている。
男はそれを黙らせて受話器を取る。
「ラールだ」
「私メリーさん。今、電話ボックスの中にいるの。」
「すまんが今夜は閉店だ。また電話しな、お嬢さん。」
チーン… 受話器を置いて、酒を飲む。
「ガキがこんな時間にイタズラ電話か。よっぽど暇なんだろうな」
ジリリリリーン!ジリリリリーン!
まただ。面倒臭い。
チーン…
「ラールだ」
「私メリーさん。今、裏のレストランにいるの」
「なぁお嬢さん。俺もあんたも電話代の無駄だからやめねえか?」
チーン… 受話器を置く。酒を飲む。
「三度目の正直でやめてくれりゃゆっくり酒を飲めるんだがな。」
ジリリリリーン!ジリリリリーン!
「よし、三度目の正直だ」
チーン…
「私メリ…」 ゴウン!!腰から取った銃で受話器を撃つ。
どうせ昔のボロ電話。買い換える時期が早まっただけ。
これでゆっくり酒を飲める。とっとと飲んで、もう寝るとしよう。
小瓶が空になった。よし、とっとと寝よう。
布団に入ろうとすると、さっき三回聞いた音が鳴った。
……ジリリリリーン!ジリリリリーン!
…壊したはずの電話が鳴っている。
ゆっくりと受話器を取り、三回聞いた声が聞こえる。
「私メリーさん。今あなたの後ろにいるの」
「後ろにいるのならそのまま声をかけな。じゃあなお嬢さん。」
ぶっ潰した電話から声が聞こえるなんてどうでもいい。眠い。寝る。
後ろを振り向いて布団に入ろうとすると、大きな鎌を持った少女が立っていた。
世界名作劇場に出てきそうな格好だ。綺麗な金髪にドレス。
上らへんが真っ黒で下らへんが真っ白の変なドレスだ。
「私メリーさん。今あなたの目の前にいるの」
「用があるならインターホンを押してから入るのが礼儀じゃないか?」
冗談を言っている内に鎌大が振り下ろされた。
大鎌は男をそのまま真っ二つに、しなかった。
「あー。惜しかったねお嬢さん。俺が後退りしなかったら切れてたのにね。」
楽しそうに、そして馬鹿にした様な口調で、男が言った。
「動かないで。大人しくしてて。お兄さん」
「嫌だね。ガキの頃からジッとしているのは苦手なんで」
また大鎌が振り下ろされた。避ける。
「埃が舞うからやめてほしいな」
「切るまでやめない。メリー、あなたを切りたいから」
「そうか。じゃあそれはお兄さんが没収してあげよう。切られるのは嫌だから」
またまた大鎌が脳天目掛けて振り下ろされた。
手をサッと鎌の方に向けて、それを止める。
男の手の肉を貫通し、骨までに刃が食い込んだ。
血で赤くなった刃を自分の方に曲げて、もう片方の手で奪い取る。
「じゃあ、これは没収ね。お兄さんは切られたくないから」
「…返して、メリーあなたを切れない」
いつの間にか男は少女の後ろに回り込んでいた。
刃が少女の首元にある。
「切る前に俺が切る」 「メリーも切られるのはいや」