メリーの居る生活 二日目
「おはよ~…」
「お、隆一おはよーさん」
僕はフラフラと自分の机に着き、そのまま力無く伏せこむ。
「なんだ?疲労困憊なノリだな」
「どんなノリだよ…。あ~眠い…」
昨日の突然の来客のおかげで、僕は一睡もしていない。
「ところで、昨日のアレは本当なのか?」
「僕は嘘であってほしい…眠い…」
昨日、僕はメリーさんに取り憑かれた。
嘘みたいな話だが、本当のことだ。
実際彼女に殺されかけたのも事実。
「で、そのメリーさんとやらは?」
「お前うるさい…寝るからむこう行ってろ…」
「委員長である俺の目の前で寝るとは良い度胸だな」
「ぐ…」
しまった…、そういえばコイツ委員長なんだった。
「昨日俺が電話で助けてやった恩を忘れるとは…薄情なやつだ」
「安心しろ、お前の助言は徒労に終わっている」
「で、あの後何があったんだ?聞かせてくれたら、授業開始まで寝ることを許す」
「分かったよ…」
あの後…。
「ということで、まずは…」
彼女は、おもむろにカマをしまうと、
「眠いわ。寝床を用意して」
「待ってください」
出来るだけ怒らせないように、下手に出てツッコミを入れる。
「ん?何か問題があるの?」
「キミはここに住む気?っていうか寝るの?」
「当たり前じゃない。私だって眠くもなるし、お腹も空くわ」
「………で、別の部屋で寝るってのは?」
「却下」
「何で!?」
「まずあなたの事を知るために、しばらくは観察させてもらうわ」
「…一人で寝るのが怖いとk」
言い終わらないうちに、一陣の風が舞起こった
「死にたい?」
メリーはカマを僕の首にかけていた。
「ゴメンなさい、失言でした」
「まったく…私がオバケを信じてるとでも思って?」
言いながらカマをしまうメリー。
どうやって出したんだ…?
「でも、さっきの騒動で部屋が荒れてるんだけど…」
「…………」
「片付けて、客人用の布団を運んで、…面倒だなぁ」
「あなたが暴れたからでしょ?」
「誰かさんも、でかいカマ振り回さなきゃ、こんなにならなかったんだけどね」
「…悪かったわよ」
「へ?」
カマが振り下ろされるかと思ったが、意外な言葉が飛んできた。
「えっと、今なんて?」
「…私も部屋を滅茶苦茶にしたのは事実だし」
「………」
「うるさいわね!!さっさと片付けるわよ、…私も手伝うから」
何も言ってませんが…。
「…そうだな。僕はコッチやるから、メリーさんは棚から落ちた物を戻しちゃって」
二人での部屋の片付けはそんなに時間は掛からなかった。
僕はそのあと、1階から客人用の布団を担いで、自分の部屋に持って来た。
「で、どこに敷く?」
メリーは部屋を見渡すと、
「あなたはどこに寝るの?」
「僕は、そこの窓の近くだけど?」
「じゃあ、その隣り」
「止めれ」
コンマ秒でツッコミを入れる。
「冗談よ。そこの壁よりに敷いてくれる?」
「へいへい…」
「襲おうとしたら、ぶつ切りにするからね」
そんな命知らずじゃありません。
と言う事で、寝ることにしたのだが、
いきなりの来客で、それが自分を殺しに来た女の子。
それが同じ部屋で寝てるとなると、やはり眠ることは出来ない。
カーテンを開ける。
都心から少し離れてるので、星がそこそこキレイに見える。
静まり返った部屋…。
数時間前まで、この部屋で九死に一生なイベントをこなしてたのが、嘘のようだ。
すこし気になったので、耳を澄ましてみる。
………
「スゥ…スゥ…スゥ…」
規則正しい寝息。彼女は寝ているらしい。
(呑気なもんだ…こっちは寝れないってのに…)
これからのことを想像しながら、夜明けを待つことにした。
ジリリリリリリリリリリ!!
朝の天敵が僕を起こそうとしている。
その僕は、すでに着替えてベランダで体操していた。
「ん~…うるさいわね…」
朝の天敵は僕が止めないことを良い事に、メリーさんに標的を入れたようだ。
僕は面白いので、それを見ていることにした。
ジリリリリリリリリリリリリ!!
ジリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリ!!
ジリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリリ!!
ジリリリリリカチッ
「お勤め御苦労」
彼女は寝起きが悪い。っていうか、起きない。
低血圧なのか?
寝ているメリーに布団をかけなおして、
僕は鞄を持ち、1階に下りた。
一昨日から四日間。僕の家族である、おじいちゃんとおばあちゃんは温泉旅行に行っている。
メリーには書き置きを残しておけば、大丈夫だろう。
そんな事を考えながらトーストをかじる。
そして、通学中に睡魔に誘われたと。
「全部話した…僕は寝るぞ…」
「なるほど、分かった。授業開始まで寝ることを許す。…といっても」
キーンコーンカーンコーン…
「もう授業開始だがな」
「…後で思いっきり殴ってやる」
「お前の話が長いから悪いのさ」
そこで僕は気付いた。
「っていうか、授業開始前なら寝ても問題無いんじゃないのか…」
「まだまだ修行が足らんな」
「鬼か…お前は…」
「いいや、委員長だ」
この極悪委員長こと、俊二は僕の幼馴染。
父親が武道に流通した人らしく、
本人もそこそこ武術の心得を持っている。
性格は明るくて面白く、ムードメイカー的な存在だ。
地獄の授業中(現代国語・社会基礎・理論・数学)
やっとの思いで昼休みに入った。
「腹減った…眠い…腹減った…眠い…」
かなり限界に来てる。
食堂や購買部に行くにも1階に下りなきゃならないが、僕にはその力は残っていない。
死を待つ冒険者か…ゴフ…
「ほらよ、相棒」
遠くの世界に行く僕に鬼委員長が何かを投げよこす。
「おぉ…神の恵みだ…」
おにぎりが三つ入った袋だった。
「ツケとくぜ」
「踏み倒す」
「恩を仇で返すかお前は」
もちろん、僕はそこまでヒドイ奴じゃない。
こいつもオゴリのつもりで買ってきている。
「あと2時限。気張れよ」
「あぁ、ってことで寝る」
おにぎりの摂取で体力を使い果たし、そのまま机に倒れこむ。
「よし、俺はお前に愛の子守唄を…」
「それを歌ったら、僕が過労死すると思え…」
そしてそのまま意識を失った。
6限目(英語)で事件は起こった。
「やべぇ…、昨日の騒ぎで課題やってねぇ…」
「あーあ、こりゃ腕立て…ヒィフゥミィ…500回だな」
「やっちまった…」
「おーい隆ちゃん、ジュース買ってきてくれよ」
山崎が絶望の彼方にいる僕に言う。
「わりぃ、課題終わらせんとダメだから無理だ」
「あぁ?課題なんてやんなきゃいいじゃんかよ」
「山やんは、先生が怖がってパスしてくれるからだろ。僕はそうもいかない」
「しゃあないなぁ…、コラァ!!そこのガリ勉メガネ!!」
クラスで一番優秀な典型的キャラにドスの効いた声で脅しをかける。
「はい!?わ…わたすですか?」
「テメェだよ!!今日の英語の課題隆一に見せてやれ。俺のに写させる」
「わっ分かりました!!コレです。終わったら机に置いといてください!!でわ!!」
ゴメンよ…川岸…
「ほらよ、終わったらさっさとジュース買って来いよ」
川岸のノートと、ジュース代を渡される。
「わかった。いつものでいいのか?」
「今日はリンゴだ」
「了解」
山崎は見た目は図体のデカいヤンキーで、
喧嘩になると、一騎当千の強さを発揮する。
だが、山崎も幼馴染で、根はとても良い奴。
しかも甘党だ。
同じ幼馴染の俊二がすこし警戒しているのは、
先月大喧嘩したかららしい。
さっさと課題を終らし、ジュースを買いに行く。
課題の提出を無事に終え、授業もこなし、下校時間になった。
メリーが家で何をやっているかが心配になった僕はさっさと帰る事にした。
…が、待ち構えていた俊二に捕まってしまった。
「一番最初に教室を出た僕より早く外にいるってどういうことだ?」
「世界は広いのだよ」
「ちゃんと答えろ」
「次元を越えるくらい造作ないことだ」
「………」
「俺もメリーさんとやらに挨拶しようと思ってね」
「まったく…………………」
と、僕は校門に目をやって、止まった。
普通ならあり得ないことだが、現実は僕をからかってるようだ。
「どうした?何か衝撃映像でも見たのか?」
「なぁ俊二、お前には校門に立っている女子を見えるか?」
「俺の目には金髪縦ロールのお嬢様が見えるな」
「お互い眼科に行った方がいいな」
「逃げるな、友よ」
「はぁ…」
校門には、書置きを無視し、何故か校門の前に立っているメリーさんがいた。
「……なんで?」
とりあえず近くに行き、あらゆる意味を込めたセリフを言う。
「遅い、待ちくたびれたわよ」
「書置きに、『家に居てください』と書いておいたはず…」
「敬語かよ…」
うるさい委員長
「帰りが遅いから、心配して迎えに来てあげたのよ」
「腹減ったんだな…」
「…わかっているなら、早く帰って食事の用意をしなさい!!」
帰りはメリーさんも入れて3人で帰る事になった。
俊二とメリーは、とくに問題も無く他愛もない雑談をしていた。
が、僕は俊二がしきりに後ろを警戒しているのに気付いた。
僕もさっきから怪しい学生を見ている。それも同じ奴を何度も。
嫌な予感がしていたが、ある住宅街に入って、その予感は的中してしまった。
「よぉにいちゃん、可愛い娘連れてるじゃねぇか」
いつの時代生まれなんだよ…。
見た所4人の不良に囲まれてしまったようだ。
その中に何度も見たあの怪しい学生もいた。
「にいちゃん、悪い事はいわねぇ、その娘こっちによこしな」
…あんたらに渡ったら一瞬にして肉塊の出来あがりだな。
だが、僕はメリーを見て気付いた。
…メリーさんの顔が強張っているのを。
そして、その手に握られているはずのカマは今僕の家にあると。
「さぁ?どうする?痛い目見る?その娘を渡す?」
マズイ…マジ目だ。
「まだ一つ選択肢があったりして」
「あん?」
不良の目の先には、委員長がいた。
ぶっちゃけ僕はこいつの存在を忘れていた。
こいつなら4人相手でも楽勝だろ。
「俺ら2人でお前等を撃退する。ってのはどうよ?」
「やっぱりアンタは鬼だ」
僕も戦えということらしい。
「まだ選択肢は残ってるぞ」
「あん?(二度目)」
「3人で大暴れ。っつうやつだ」
「山やん!!」
「山崎か…」
「なんだ?べっぴんな姫様と盗賊団から姫を護るナイトってメンツは?」
メリーがカマ持ってたら、危険物を輸送中にテロ軍団に襲われた自衛隊なんだろうな…
「見ての通りだ、加勢するなら来い。見物なら帰れ」
「喧嘩の華がなきゃつまらねぇだろダボが」
「………あとでお前も退治してやる」
「上等…さっさと片付けようぜ」
仲が良いのか、悪いのか…。この二人はいつもこうだ。
話から完全に無視された不良がそろそろ我慢の限界の様子。
「なんだか知らねぇが、痛い目みたいようだな、あぁ?」
短期な不良が臨戦体勢に入った。
「死ねやゴラアァァァー!!」
リーダーらしき不良が山やんに殴りかかる。
が、あっけなくガードされ、
「踏んでる場数が違いすぎるんだよっ!!」
おつりのボディブローで昏倒する。
「あぁぁぁぁぁぁっ!!」
リーダーの横にいた不良が俊二に飛びかかった。
何の型もない、自己流の格闘など取るに足りんといった足取りで、攻撃をかわし。
体勢を低くし、下から掌底でアゴを強打し、倒した。
「まずは、ステップから習うんだな」
だが相手は4人。
2人倒してもまだ2人居た。
そして、やっぱり1人が僕の方に突っ込んできた。
2週間ほど前に、興味本位で俊二に習った技を使う時が今のようだ。
メリーさんには怖さのあまり、使えなかったが、メリーさんに比べれば怖くもない。
…どうやら、早速特訓の成果が出ているようだ。
僕は鞄を相手の顔面に投げつけた。
相手はソレをはたき、真正面の僕を殴りにかかる!!
が、僕はそこにいない。
僕は鞄を投げた瞬間、相手の後ろに回りこんでいたからだ。
僕を見失った不良は、突然の事でわけもわからず左右を見まわている。
そして僕は後ろから思いっきり延髄を殴りつけた!!
不良はそのまま崩れ落ちた。
「ひ…ひいいぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」
仲間の3人がやられてしまったのを見て、
残りの1人は逃げ出してしまった。
が。
「待てやワレェ!!落とし前つけんかぃ!!」
「とりあえずお前も叩きのめす!!待てぇ!!」
逃げた不良を追っかけて、山やんと極悪委員長は行ってしまった。
残ったのは、気絶した不良3人と僕とメリーだけになった。
「まぁ、なんとかなったみたいだな…」
振り向こうとしたが、止められた。
背中が暖かい…さらに肩の下あたりに二つの柔らかい突起物…。
…抱きつかれてる?
「…どうした?」
もう一度振り向こうとして…。
「振り向いたら殺すわよ…」
…止めた。
彼女の腕…。
僕を捕まえている腕が震えていた。
「…怖かったのか?」
「…カマがあれば…あんなチンピラ秒殺よ…」
「いや、殺すのは犯罪」
「……………ヒックッヒック…」
泣いてる…?
「もしかして、泣いてる?」
「……かっ…んだから…」
「…へ?」
「怖かったのよ!!ヒック…」
「いきなり叫ぶな!!」
あービックリした…
「悪かったわよ…ヒック…」
「………これに懲りて、しばらくは家でおとなしくしておくこと」
「………わかったわ」
「家帰ったら、僕の得意料理を披露する」
といっても、カレーなのだが。
「…あ…ありがとう…」
「さて、家に帰ろう!!」
「……うわあぁぁぁぁぁん!!」
「いきなり泣くなー!!」
まだメリーさんとの生活は始まったばかりだ。
だけど、なんとかこのままやって行けそうな気がする。
「辛いわ。甘くして」
「無茶言うなよ」
…たぶん。
拍手っぽいもの(感想やら)
- やべえwwwwww可愛すぎるwwwwwwwwww -- kaz (2006-06-06 22:15:17)
- アニメ化はいつですか? -- 名無しさん (2008-11-02 22:43:39)
- ツンデレwwwwwwww -- 名無しさん (2009-03-01 16:38:27)
- 可愛すぎだろこれww -- 名無しさん (2009-08-04 22:47:08)
- メリーさんを私にください -- 名無しさん (2010-08-06 00:31:49)
- メリーさんからの電話はどうしたらきますか? -- 名無しさん (2010-10-09 10:35:48)
- ツンデレwwwwwww -- 名無しさん (2011-05-09 18:55:47)
- か、かわいい… -- 名無しさん (2012-11-02 01:18:49)