メリーの居る生活 四日目(修正版)
寝ているメリーを置いて、学校に行った僕。
なんら日常と変わらなく、ぼーっとしている内に下校時間に突入した。
早いとこ帰ろうとした僕を、奴が止めた。
「友よ、帰ろうではないか」
「お前…、委員会の仕事はどうした?」
「そんな物、昼休みに片付けた」
「ち…」
メリーが僕に憑いてから、鬼委員長は普段以上に寄ってくるようになった。
もしかしたら、僕は、こいつにも憑かれているのかもしれない。
「さて、今日は商店街でバザーが開催されるようだが、行ってみるか?」
「僕は早く帰りたい…」
「帰って…どうするのだ?」
「そりゃ帰ってメリーと…」
「メリーと?」
…よく考えてみたら、何もする事ないな。
帰ったところで、いろんな物投げられるし…。
「んじゃ、…バザー行くか」
「お前も大人になったな」
「わけわからんわ」
一部現実逃避の理由で、バザーに向かう事にした。
ザワザワザワザワザワザワ
「うっへぇー、相変わらず人多いなぁー」
商店街のバザーは、月に一度のイベントだ。
その日は、商店街にあるほとんどの店が閉まり、その前におびただしい数の露天が並ぶ。
「このまま突っ込んでも、良い買い物は期待できんな、一度引くか?」
「まいったなぁ、…ん?」
「どうした?…お?」
僕らが見つけたのは、裏通りに繋がる細い道。
その細い道の曲がり角から少しだけ見えた露天だった。
「行ってみるか?」
「もちろん、裏通りから本通りに行けるしな」
僕らは好奇心に任せ、その裏通りに足を踏み入れていった。
曲がり角を曲がり、その露天の前に立つ。
その露天は、形容しがたいセンスが散りばめられた、ある意味見事な領域だった。
「これは…なんとも」
「…何屋なんだ…これ」
その露天の主だろうか…
フード?を深くかぶり、一言も喋らない。
「……………」
寝ているのか?
「…にしても、気味悪いな…」
「ふむ…、蝋で作られたドクロ、錆びたナイフ、古びた書物…。その手の人間には堪らない逸品だな…」
いわゆる魔法使いの婆さんが開いてる闇魔法ショップな感じだ。
「……あれ?」
「ん?どうした」
「あの、奥でぶら下がってる人形」
「人形?………!!」
似ている…、金色の髪、左右から足れた縦ロール、眠っているが端正な顔立ち。
「…メリー」
無意識に、その名を口にした。
途端に主が、口を開いた。
「アンタは…この人形を知っているのか…?」
声は掠れていたが、何とか聞き取れた。
「人形は知らないけど、その人形に似たやつなら…」
「あぁ、俺も知っている」
それを聞いた老婆は、しばらくモゴモゴと何かを喋っていた。
断片的にだが、「大丈夫か…」「見つけられずに…」「かわいそうに…」と聞こえた。
しばらく、モゴモゴしていた主は、今度はハッキリとした口調で言った。
「おぬし等の知っている者の所に急ぎなされ…」
あまりにハッキリと言うものだから、逆に驚いた。
「え?」
「この本を持っていくといい…」
「え?ちょっと、おばあさん?」
「……………」
それきり店の主は、一言も喋ることはなかった。(死んだわけではありません)
『おぬし等の知っている者』…メリーのことか?
でも急げってどういう事だ?
「ふむ…、とりあえずメリーの所に行ってみるか」
「あぁ、そうだな。おばあさんが言ってたことが妙に気になる…」
胸騒ぎがしてきた…。なにかフラグが立ったようだ…。
「とにかく、急いで家に帰ろう」
「だったら、ここから行った方が近道だ」
すぐ横の塀を飛び越える。
「委員長に知らない事はない…か」
僕もその塀によじ登って、委員長の後を追った。
「ぜぇ…ぜぇ…確かに早かったが…」
「これくらいでバテる様では、メリーの修行もまだまだだな」
「と…とにかく、家に入ろう…。ただいまー」
「お邪魔します…おや?誰もいないのか?」
家に入り、すぐに部屋に直行する。
「あぁ、二人は土産を渡しに回ってるんだよ」
「なるほど」
ガチャ…
「メリー…」
「…………」
部屋に入る。
…静かだ。…おかしい。
普段ならテレビを見てるメリーがそこには居ない。
メリーは眠っていた。
ガクッとうな垂れた。
心配して損した…
「あーったく…、骨折り損ってやつか…」
「……………いや、待て」
俊二が緊張した面持ちで言う。
「隆一、お前は学校に来た時、メリーは寝てたんだよな?」
「あぁ、それがどうかしたか?」
「部屋を見てみろ」
「部屋…?別に、起きてきた時と何も変わりは………って、あ!!」
「あぁ、メリーは部屋で何らかの行動は起こしていないようだ…」
「まさか!!」
メリーに駆け寄る。
「おい!!メリー!!起きろよ!!オイ!!」
起きない…。いつもは昼までには起きていたはず。まさか…。
「静かに………脈はあるな」
「…はぁ…、何度も心配させるなよ…」
心臓いくつあっても足りねぇ…
「…とりあえず、生きてはいるんだな?」
「まぁ、そうだな」
「はぁ…、よかった…」
「さっき渡された本。貸してみろ」
「あいよ」
あのおばあさんから渡された本を俊二に渡した。
「…妙だな」
「見た目は確かに奇妙だが、読めるのか?」
「…表紙がボロボロなのに、頁の紙だけ新品同様だ…」
「………まぁ、あのおばあさんが持ってた物だ。おかしくないだろ」
「…あー…この文字は…」
「どうだ?」
「日本語だ。お前にも読める」
「っ…今思いっきり『ズコー!!』と言ってヘッドスライディングをしたい気分だ」
「と言っても、これは…理論学?関係なさそうだが…」
そう言って、俊二は本を読み続けた。
数分後
「…どうだ?何か解決策でも載ってたか?」
「これは凄い…」
「何だ!?何か載ってたのか?」
「乗客全員が犯人だったとは…」
「その本返せ役立たず」
「まぁ、待て。この本の2章が医学書のようだ。ここに『寝たまま目覚めなくなった』という症状が記されている」
「メリーと同じか…。解決策は?」
「どうやら、このケースは何らかの精神…心の欠落によって起こる症状のようだ」
「…心の欠落?なんか胡散臭いな…」
「そう言うな、信じられる物は、これしか無い」
「…で、その解決策は?」
「記されていない」
「無責任な…なんとかならないのか?」
「わからんが、1章の理論学に、『心の欠落は必然的なもの。他人にそれを埋めてもらい、人は生きて行ける』と書いてある」
「宗教くさい…」
「さらに、3章の精神学には、『睡眠時に、互いの精神の波長が合えば、精神が共同できる』とも」
「それ…何の本だ?」
「…全くもって、不思議な書物だ。出版社も書いていなければ、著者も不明…」
「その『精神が共同できる』って、どういう事なんだ?」
「平たく言えば、『夢の共用』だろうな」
「…夢の中に入れるってやつか?」
「それを利用すれば、メリーが昏倒状態になった理由も解るかもしれないぞ」
「…やってみるか」
「詳しい手順を言う。その通りに行動する事」
「解った」
「相手に触れた状態で寝ろ。以上だ」
「その本共々焼けてしまえ」
……………………………………
vision1
一面の花畑で、金髪の少女が嬉しそうに飛び跳ねている。
…メリー?
その幼い顔には、見覚えがある。
間違いない、メリーだ。
【メリー!!】
…!!声が出ない!?
もちろん、彼女にも聞こえていない。
【…ここはメリーの夢の中…?】
なら聞こえもしなく、見えもしないはずだ。
僕は彼女の夢を覗いているだけで、彼女にとっては、存在しない物なのだから。
少女は蝶々を見つけて追いかけている。
…周りに目をやる。
どうやら日本ではないらしい。
ふと、蝶々を追いかける足音が消えた。
少女の目の前には大きな樹木がそびえ立っていた。
少女はその樹木を見つめたまま動かない。
【デカイな…。昔からここにいるのか?】
ふわっと、ピンク色の葉が目の前を落ちていった。
【…?】
目の前を落ちていったのは、葉っぱではなく、花びらだった。
少女に目をやる。
…いない。
【やべ、どこ行った?】
少女は消えてしまった。
辺りを見回したが、見つけることが出来なかった。
だが、僕は見てしまった。
花畑の外から、険悪なムードで会話をする女性たちを…。
そして、全員が一点の方向…おそらく少女の向かった方向を見ていたのを…。
急に、目の前が真っ白に弾けた。
【な…なんだ!?】
vision2
『おかーさん!!』
…髪の長い少女が母親らしき女性に甘えている。
『ねぇ、今度編物教えて』
『えぇ、いいわよ』
『わーい!!』
…メリーなのか?あれが…
今のメリーとは、全然キャラが違う…。
ここは…屋内か。
けして立派ではないが、しっかりとした暖炉。
テーブルと、椅子が3脚ある。
…これは、ヨーロピアンテイスト?
さっきの花畑からみた建物も英国辺りかと踏んでいたが…。
まぁ、日本では無いわけだ。
地理は苦手だ。
彼女はまだ、母親にくっ付いている。
とても幸せそうだ。
『ねぇ、お母さんの指輪ってキレイだね』
『これは、お父さんから貰った、大切な指輪なの』
『何で大切なの?』
『これが無いと、メリーにおまじないが出来なくなるのよ?』
『えー。じゃあそれ無くしちゃダメだよ?』
『大丈夫。お母さんがずっと着けてるもの』
『メリーには、大切な物。あるのかしら?』
『うん!!私ね、あの広場に立ってる木。あの木が大切なの』
『あら?それは何故?』
『あの木はね、私をいつも見ていてくれる気がするの…変かな?』
『全然、変じゃないわよ。むしろとても素敵なことだわ』
『本当?』
『そうよ、私達一族は自然の原理をとても大切にしなきゃいけないの。自然と仲良くするのはとても、とても良い事なのよ?』
『?』
『それに…ここだけの話、あの樹は、魔法の樹なのよ?』
『魔法?』
『そうよ。春になると花が咲いて、夏になると葉を付けて…』
『……………』
【目をキラキラさせてる…。まぁ、まだ子供だしな…】
『それと、あともう一つ…』
『まだ何かあるの?』
『あの樹はね、ずっと昔に、お母さんとお父さんが二人で育てた樹なのよ』
『…じゃあ、私のお姉ちゃん?』
『そうね…。だからメリーのことを見守ってくれてるのね』
『えへへ…なんだか嬉しいな…』
【家族の夢見て起きたくない…ってなわけないよな…】
刹那、辺りが闇に包まれた。
【やれやれ、またか…】
vision3
【な…っ!!】
何が起きているんだ?
暗闇から抜けたと思ったら、想像を絶する光景が僕を待っていた。
僕の知った姿のメリーが、数人の人間に追いかけられている。
追手の手には、それぞれ獲物が握られている。
【何で…何で追いかけられているんだ!?】
『キリストの名に置いて貴様を連行する、待たんか魔女め!!』
魔女狩りだ!!
『私は、魔女なんかじゃない!!』
『嘘こけ!!匿名で情報が入っているんだ!!言い逃れはできん!!』
魔女狩り…中世ヨーロッパで起きた、惨劇。
何の根拠も無い噂や狂言から、多くの人々が拷問・処刑された。
今、メリーは、その魔女として追い立てられている。
【止めろ!!】
止めに入る。だが、僕の体を擦りぬけて、追手はメリーを追いかける。
【…くそ!!】
追手を追いかける。
無駄だとは解っていた。…その後の結末も。
『えぇい、忌々しい!!矢を放て!!ここで息の根を止めてやるのだ!!』
まずい!!
【避けろ!!かわすんだー!!】
メリーに向かって声の無い叫びを上げる。
ピュン!!
矢は放たれ。
少女の背中を貫いた。
そのまま少女は力なく崩れ落ちた
【あ…あ…メリー!!!】
近づく。
起こそうと思ったが、すり抜ける。
彼女の口がパクパクと開く…
『お…かあ…さ…ん』
虚空に手を伸ばす…その手は何も掴む事は無く、生命を失い、地に落ちた。
それ以降、彼女はピクリとも動かなくなってしまった…。
彼女は、何も罪の無い彼女は、孤独と共に、その短い生涯を…閉じた。
【そんな…、クソ…、畜生!!チクショウ…ッ!!】
生まれてこの方、こんなに憎しみを抱いたのは初めてだった。
僕がここに居たら…。あいつ等を刺し違いてでも皆殺しにしてやろうとも思った。
涙で視界が歪む…。
vision4
『おぉ…メリー…何てこと…』
視界が晴れると、そこには少女の骸を抱いた母親の姿があった。
場所は一転して、暗い家の中。
さっき見た家なのに、随分と印象が違う。
…待て。
おかしい、この家には照明という照明が無い…。
窓すら無くなっている。
ここは、彼女の家ではない。
ここはどこだ…。
『待っていて…必ずあなたを、生きかえらせる…』
そう言うと、そのまま奥に消えていった。
母親は黒いコートを被って戻ってきた。
『ここから遠く離れた樹木に、あなたの体を守ってもらうわ』
『時が経てば、あなたの体は元に戻っているはず』
『あなたにも、魔女の血が流れているなら…自然が守ってくれるわ』
『…そう。あなたのお姉さんが…守ってくれるわ…』
【魔女…?メリーが魔女だと?】
話が上手く飲みこめない。
今、重大な発言が来たというのに…。
【メリーのお姉さんって…たしか…】
『それまで…お休みなさい…』
……………………………………
「……!!」
「お、起きたか」
「ハァッ…ハァッ…!!何だ今のは…」
「…何か掴めたか?」
「あぁ、…認めたくないがな…」
「大丈夫か?随分と疲れてるようだが」
「…これくらい、特訓に比べれば楽なもんだ」
「で、これからどうするんだ?」
「ちょっと、行く所がある」
「…あの露店か。俺も行くぜ」
「いや、お前はここに居てくれ」
「ぬ?…解った。早く行って来い。バザーが終わっちまうぞ!!」
「あぁ、行ってくる!!」
今は5:58か…閉会が6時…マズイな。
間に合うか!?
「ハァ…ハァ…ハァ…」
無い…。
露店が消えている…。
「くそ…」
救う手段が無くなってしまった…。
主のおばあちゃんは消えてしまった。
「もう…ダメなのか…?」
「誰をお探しかね?」
「………!?」
老婆の声!!
振りかえる。
「おばあちゃんかよ…」
「おやおや、随分な御挨拶ねぇ」
まてよ…。
「ねぇ、おばあちゃん。ここの露店の人どこに行ったか解らない?」
「ここの露店の人かしら?それなら裏山で見たって聞いたわよ」
「ホント!?サンキュー!!おばあちゃん!!」
「裏山行くなら、クリーニング屋の間を抜けて行くと近道よー」
流石女王…。
おばあちゃんの言いつけ通り、クリーニング屋の間の抜け道を通る。
凄い近道だ…もう山が目の前だ。後で遅刻回避ルートに組み込もう。
階段で山を登る。
あの木が、俺の知っている木なら、必ずあそこに居る。
山頂についた!!
「ゼェゼェ…なんか…今日…息切ればっかしてる気が…」
顔を上げる。
あの怪しい露店の主…、メリーのお母さんはそこに居た。
フードを羽織り、桜の木を見つめている。
「桜は…来年の春まで咲きませんよ、おばさん」
「あら、よくここが解ったわね」
「僕のおばあちゃんの情報網は、町内ならNASAにも負けないんでね」
「あの子は…?」
「家でまだ眠ってるよ」
「………」
「メリーの夢を覗かせてもらったよ」
「………」
「とても…悲しい夢だった」
「………」
「聞きたい事があるんだ。いいかな?」
「どうぞ…」
「なぜメリーは人を襲うような事をしていたんだ?」
「…本当は、私が立ち会って、この木から解放されるメリーを受け止めるはずだったの」
「…会えなかったのか?」
「ズレが生じて、予想よりずっと早く、この木から開放されたの」
「………」
「それで、暴走が始まって、人を襲うように…」
「なんで暴走なんかするんだ?」
「…精神の影響でしょうね…」
「精神?」
「あの子は、人を殺めることで、自分の精神を守りつづけていたの」
「………!!」
「恐らくは、自分を殺した者への復讐心でしょうね…」
「………」
「人を…つまりアナタを殺すことを否定した結果、自分の精神を保てなくなり…」
「昏睡状態に陥った…と?」
「そういう事になるわね…」
「なるほど…」
「メリーはアナタを鍛えようとしているみたいだけど…何故だかわかるかしら?」
「……さっぱり」
「アナタとメリーは…同じだったのよ」
「…解らん」
「そのうち解るわよ」
「おばさん…あなたは何歳なんですか?」
「中世ヨーロッパ以前から生きてるわ」
「…ホンマもんの魔女だね…」
「結構面白い物よ?」
「なぜ…桜の木を育ててたんだ?」
「長生きすると、いろんな場所に行きたくなってね…」
「それでジパングに来たときに見惚れた…とか?」
「そうそう…あの人と出会ったのも…思えば日本だったわね…」
「………」
「さて、僕はメリーを助けるんだ。おばさん、どうすればいいか教えてくれ」
「あなたに…守れるの?」
「…どちらかと言うと、メリーから守ってほしい」
「…余裕ね」
「実際は結構切羽詰まってるけどね」
「これでしょ?アナタが欲しい物」
それは、露店の奥でぶら下がっていたメリーに似た人形だった。
「それがヒントよ。あとは自分だけで解決なさい」
「あ!!まだ聞きたいことが!!」
その時、咲いているはずの無い、桜の花…桜吹雪が僕を飲み込んだ。
僕は自分の家の前に立っていた。
あの人形を抱いて。
ガチャ!!
「俊二!!」
「…って瞑想中かよ」
肝心な時に…。
仕方ないので一人で謎を解くことに。
くそ…人形がヒントったって…?
『あとは自分だけで解決なさい』
僕が解決…つまり僕しか解らないことなのか?
メリーの弱点を攻めると起きるとか…
…弱点ってあったか?
メリーと人形に関する可能性のある行動をあらかた試したが、どうにも変化はなかった。
となると…夢の中か…。
…お母さんが登場したのは、2と4。…
2の内容は、親子と……大切な物……お守り……。
お守り!!
まさか、この人形にお守りが隠されているのか?
慌てて服を引っぺがしてみたが、指輪は見つからない。
「ねえじゃんか!!…って、お?」
腕にキラリと光るアクセントを見つける。
指輪が腕輪となって人形についていた。
これが、お守りか…。
外した指輪を見る。
『アナタとメリーは…同じだったのよ』
…そうか。
あの時の言葉をやっと理解した。
逃げることしか…できなかったよな…僕は…。
メリーが来たとき、僕はパニックに陥ってて何がなんだか分らなかった。
まぁ、ある意味結果オーライで終わったのだが。
彼女も、あの時、逃げずに凛とした態度で反論していれば、殺されなかったかもしれない。
あれだけ、素直で可愛らしい娘だったんだから…。
メリーと僕は、追っ手からの『死』メリーからの『死』から、間違った選択肢を選んでいたんだ。
…もう逃げない。
同じ過ちは繰り返さない。
「この指輪に誓う。俺はもう逃げない。何にとは…言えないが、とにかく逃げない」
そして、お守りをメリーの指にはめた。
「指輪が…」
「光っているな…神々しい…」
「もう少し瞑想しててくれ。お前は感動のシーンに相応しくない」
「邪険にするな…ん?この匂いは…?」
「桜の香りだな…」
「ほぉ…、奇跡の極みと言ったところか」
「姉さんが起こしてるんだよ…優しくな」
「ンン…ッ」
「ふぁ~…あら、おはよう」
「よぉ、こんばんは」
「?」
時計を差し出す。ついでにカーテンを開ける。
時刻はPM8時を指していた。
「……え~と…私こんなに寝てたの?」
「そりゃもう、ぐっすりと」
「なんで起こさないのよ!!」
「起きないからだ」
「うるさいわね!!」(ブンッ!!ゴッ!!
「ウガァッ!!」
8時の時計が僕の額に導かれた。
「ふ…起きたら起きたで騒がしいものだな…」
「イテテテ…お前…いつまで家にいるんだよ」
「あら、俊二。アナタも来てたのね」
「まぁ、俺はもう帰っておく、二人の邪魔は野暮だからな」
「わけわからん」
「………」
「それではアディオス!!」
「玄関から帰れ!!窓開けるな!!」
「…ち」
「『ち』じゃねぇ!!」
ズルズルズルズル…
隆一が俊二を引きずって部屋から出て行く。
「…(ボー)」
低血圧なので、頭が回らない。
「………」
目を擦る
なにやら色々な夢を見た…。
花畑で遊ぶ夢…大好きなお母さんと話してる夢…思い出したくない…あの夢…。
けれど、最後に見た夢は不思議な感じだった。
「お姉ちゃんが…起こしてくれた気が…」
ふと、自分の肉親に姉が居ないことを思い出す。
「私とした事が…相当寝ぼけてるわね…」
「……?」
まぶたに堅い物が当たる。
擦っていた指を見る。
「……!?」
眠気が吹っ飛んだ。
「こ…これお母さんの…」
自分の寝ている間になにが起きたか、隆一に白状させよう。
ついでに、床に転がっている、自分に似た半裸の人形の事も含めて。
その日、町内には夜中に悲鳴が数十回に渡り響いたと言う。
拍手っぽいもの(感想やら)
- 半裸www -- ななし (2007-10-23 02:43:48)