メリーの居る生活
メリーさんと一緒!!

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4スレ目>>881
作: ◆Rei..HLfH.

メリーの居る生活 クリスマス編『おしるこ缶のぬくもり』


「寒いわね…暖房強くするわよ」
クッションに寄りかかりながら、僕の漫画を読みふけっていたメリーが、返事を待たずにリモコンを操作する。
「布団でもかぶればいいだろ。僕が暑い」
エアコンの直線状に位置する机には、課題を年内に済ますべく奮闘してる僕が張り付いている。
「机の位置変えるなり、別の場所でやるなりすればいいじゃない」
メリーの意見ももっともだ。
だが、部屋の中にはありとあらゆる障害が散らばっている。
メリーの読み終わって放り投げてある漫画なんかがそうだ。
「この課題が終わるまで!僕は!この机から離れるのを止めない!!」
「何言ってるんだか…あら?」
「ん?」
メリーが何かに気づいて、カーテンを開ける。
「わぁ…雪だわ」
「おぉ、本当だ」
ついさっき降り始めたばかりなのだろう。
ちらほらと雪が舞い落ちてくる。

「降り続ければ、明日はホワイトクリスマスね」
「そうだな」
メリーは窓を開けると、落ちてくる雪を手のひらに乗せた。
「積もるかしら?」
溶けていく雪を見ながら僕に問う。
「この調子だと、そんなに期待できないな」
「夢が無いわね…」
「やかましい、寒いから窓閉めてくれ」
「はいはい…」
メリーは名残惜しそうに窓を閉め、読みかけの漫画をまた読み始めた。
僕は、調べ物用に付けておいたパソコンで、明日の天気を調べてみた。
「…今日は雪か。そうか…」
これは積もるかもしれないな。
「今降ってるじゃない」
と何故か不機嫌丸出しなメリーに突っ込まれた。

…そういう意味じゃないんだがね。

翌日
M1:00

まぁ、判ってたけどね。
判ってたけど、覚悟はしてなかった。
寒空の下、僕は河川敷に敷き詰められた雪の上に立っている。

「寒い…寒い…」
僕は寒風に凍えながら、遠くで何かしているメリーを眺めてる。
その震えた肩を叩く手。
「体動かせば時期に暖かくなる、ストレッチでもするか?」
「…何でお前がいるんだ。俊二」
「はっはっは。何を冗談を。お前が呼んだのだろう?」
俊二はこの寒さに身震い一つせず、爽やかに澄ませてみせる。
「そりゃ、メリーの命令でだ。昼間は行けないって言ってて何でいるんだよ」
「今年もクリスマスパーティするのだろう?それなら、いつ来ても同じだと思ってな」
クリスマスパーティとは、毎年僕の家で開催されるイベントだ。
このパーティはほぼ毎年、俊二と山やんは出席するようにしている。
「そういえば、今年は山やん来るって言ってたか?」
「昨日メールで来るって送ってきたぞ」
「何で僕じゃなくてお前に?」
「さあな。あいつの考えなんて知らんよ」
さては、またこいつはケンカでもしたのだろうか。
「なぁ、また何かしたn━━━」
「二人ともー!!こっち来なさーい!!」
訊こうとしたところで遠くのメリーから招集をかけられる。
「っと…、行くか」
「ふむ、今日は何をするのか…」
僕と俊二は、メリーを怒らせないために、小走りで彼女の元に向かった。

メリーが一人でせっせと雪で作っていた物。
それは腰辺りの高さまで積まれた雪の壁だった。
その壁が向かい合うように2つ立っている。
「これは…雪合戦でもするのか?」
「そのとーり!」
遠目から見ても丸判りだったが、今気づいた事にしておく。
そうしないと『何で判ってたのに手伝わなかったの』などと文句言われるからだ。
メリーの手を見る。手袋はしていない。指にはいつだかの指輪がはめられている。
雪遊びしに行くとは知らなかったため、僕とメリーは手袋はしてこなかったのだ。
「お前、雪を直に触ってて冷たくないのか?」
「へっちゃらよ。私を甘く見ないで欲しいわね」
…こいつは何でもありだ。
「そうかい。…で、この雪合戦ってのは3人でやるのか?」
「ふむ、審判なら任せておけ」
今この場に居るのは3人。
チーム戦にしても1人で2人を相手にすることになる。
「ジャンケンよ!」
「負けた奴が審判か?」
「何言ってるのよ。1対2よ!」
マジかよ。
隣で雪の壁の強度を確かめてる俊二に相談を持ちかける。
「おい、どうするよ…メリーの馬鹿力じゃ雪でも凶器になるぞ」
「ふむ。俺とお前がペアになれば助かる手立てもあるが…」
「完全に運か…」
…そういえばメリーは、雪合戦やったことあるのだろうか?
「なぁ、メリー。お前は雪合戦のルールは知ってるのか?」
「…相手が動かなくなるまで雪をぶつける?」
「待てや」
「ふむ、間違ってはいないな」
「お前も待て」
ダメだ、こいつら早く何とかしなきゃ…。

「はぁ…あまー…」
「寒いところで飲むしるこは格別だな」
と言うことで、今メリーと俊二はしるこ缶を飲んでいる。
ちなみに僕が買って来て二人に与えた。
「さて、今からルール説明をする。しるこ飲みながら聞きなさい」
「はーい」
「いいだろう」
こいつは、何でこんなに偉そうなんだ。

「えーまず、今回は正式ルールは無理だから、簡易式な形で始める」
「はい質問」
メリーが間髪入れずに手を上げる。
「ん、なんだ」
「何で正式ルールはダメなの?」
「いい質問だ。だが、本気で言ってるのか」
「本気よ」
「3人って時点で無茶だろが」
「やってみなきゃ判らないわよ」
「む、確かにその通りだ。メリーはいいこと言うな。アホか」
まともに言っても進まないな…。
「とにかくルールを説明する。今飲んでるしるこ缶を、両チームの陣地後ろに配置する」
「ふむふむ」
「ほう」
「相手の陣地にある缶を倒したチームが勝ちだ」
「…それだけ?」
「あとは…正式ルールだと、雪玉に当たったら退場なんだが、3人だからそれは無しだな」
「ふむ、当たったら壁の後ろまで戻ると言うのはどうだ?」
「そうだな。ルールはこんなもんでいいか。次は…」
しるこを飲み終えた二人を見る。
「チーム決めだが…。二人とも希望はあるか?」
『二人とも』と言いながら、俊二だけに聞く。
「うむ、俺はどこでも構わないぞ」
よし。よく言ってくれた。
「そうか。それじゃまず俊二を一人d」
「はい、提案」
メリーがまたもや間髪入れずに手を上げる
「…なんでしょう。メリーさん」
「隆一が一人で」

「さーて!始めるわよー!!」
「うむ」
「おーう…」
赤チーム:僕
青チーム:メリー・俊二
「いじめだ…これはいじめだ…」
「なーにブツブツ言ってるのよ!行くわよー!!」
ブン!!
ほーら、豪速球が飛んでくる。
まともに食らうと怪我しかねん。
僕は身を屈めて、雪の壁に身を隠す。
ドスッ
「あー…どうしようかな」
まともに戦ってもあの二人では戦闘力が目に見えている。
それ以前に一対二じゃ勝ち目が無い。
「こらー!出てきなさーい!!」
「出てこないと大変なことになるぞー」
あの野郎…他人事だと思いやがって。
壁から頭半分出して相手の様子を窺う。
「俊二、やってしまいなさい」
「はいはい…って事で、友よ悪く思うな」
ん?俊二が後ろに距離をとっている。
数歩歩くと、おもむろに立ち止まり、足元の雪をすくい球状にする。
「隠れていると壁が壊れるぞ。避ける方が後々のためだ」
…何であいつは本気なんだ。
ここは出た方がいいな。もしかしたら避けやすく投げてくれるかもしれん。

メリーが不意打ちで雪玉を投げてこないことを確認し、壁から離れる。
「…よし、来い」
「俺の一撃、避けれるか?」
避けてみせるさ。
伊達に何度も死線をくぐっていない。
俊二が、足元を均し一歩二歩歩き出す。三歩目から駆け足になる。
一歩、二歩、三歩、四歩、五歩、六歩、七歩…!!
「ふんッ!!」
七歩目で思い切り踏み込み、渾身の力で雪玉を僕に投げつける!!
雪玉は速度をグングン上げて飛んでくる。
「甘い!!」
スピードはあるが距離が離れている。
避ける事には難しくない!!
僕は半身をずらし、雪玉を避けた。
「ほほぅ。やるじゃないか」
「あんな雪玉、余裕余裕」
「『あんな雪玉』とは失礼だな。この技は『貫通シュート』と言ってd」
「くらえ」
隙丸出しの俊二に雪玉を投げつける。
ボフ
俊二は、説明に夢中になって無防備だった顔面に雪玉を受けた。
「ありゃ、クリーンヒット」
「ぬぅ…不意打ちとは卑怯な…」
「言いっこなしだ。こっちは一人だからな。形振り構ってられ━━━━」
と、その瞬間!!
なんと、別の方向から雪玉が飛んできたではないか。
僕は寸でのところでかわすことに成功した。
雪玉を投げたのは、そう。あの仕掛け人だ。
じゃなくて、メリーだ。
「アハハハ!あんたこそ、隙だらけよ!」
しかしこのメリー。ノリノリである。

「よっしゃあ!、やってやろうじゃないの!」
メリーの笑い声を聞いて楽しくなってきた。
僕もテンションが上がってきた。
「お前ら、どんどん投げてこいや!全部避けてやんよ!!」
どうやら、メリーも僕に当てる時は手加減してくれているようだ。
不意打ちでも、かわせるような玉を投げてくるなら、当たっても痛くはない。
さっきの1発で安心した。
「死なない程度の力加減でいいわねー」
「よし、その調子だ。今度は『百舌落しシュート』をお見舞いしてくれよう」
「何でも来やがれー!!」
もはやルールは関係なくなっていた。

このとき、誰が気づいたであろうか。
その姿が、まるで逃げ回る的を狙撃する射的場のような光景であったと言うことに。

「ちょ…ハァハァ…たんま…」
あれから何発の雪玉を避けただろう。
何発か当たったが、覚えていない。
「ハァハァ…な、何よ…。もう根を上げるの?」
あのメリーでさえ、肩で息をしている。
「さすがに、これ以上は…限界だ…」
「ふむ。3時か…そろそろ戻るほうがいいかもしれん」
ってことは、あれから2時間近くやってるのか。
僕も相当体力ついてきたな…。褒めてやりたい。
そして、俊二の野郎は、何で疲れ一つ見せないんだ。
まさかメリー以上の怪物か?

「俺は一度家に戻ってから、お前の家に行くことにする」
「わかった。僕らもすぐ帰るよ」
「………」
「それでは、ご馳走楽しみにしていよう」
「おーう。さって、帰って冷えた体温めるかー…」
俊二の後姿を見送り、僕も帰路に着こうとした。
が、メリーの様子がおかしい。
「…どうした?」
メリーの顔がみるみる青褪めていく。
「無いの…どうしよう…」
無い?
「無いって…何が無いんだ?」
「あ…あぁ…」
メリーが力なくしゃがみ込んでしまった。
「おい!メリー!!どうしたんだ!?しっかりしろ!」
唐突過ぎるメリーの行動に、僕は戸惑うしかなかった。
雪の上に膝をつき、しゃがみこんだメリーの肩を揺さぶる。
「ゆ…指…」
「指!?」
まさか、指を切断したのか!?
あわててメリーの両手を引っ張り、指の本数を確認する。
…10本あるじゃないか。
「違う…違うの…」
待て…、何か足りない。
雪合戦が始まる前に、僕は見た。
メリーの指にはまっていた、あの時の…メリーのお母さんの指輪だ。
それが、今の冷たくなったメリーの指には…はまっていない。
「指輪…か?」
コクコクとうなずく。
「どうしよう…お母さんから貰ったお守りなのに…私…私…」
さっきまで戦場だった雪原を見る。
雪玉に混ざって飛んだのなら、ここから半径10mほどの範囲。
…探せない距離じゃない。
あと2時間ほどで日が落ちる。
「探そう!まだ日が落ちてないから見つけられる!」
「………」
「メリー!探さなきゃ見つかる物も見つからない!探すんだ!」
失心しているメリーを叱咤する。
僕はこんなメリーを見ていたくはない。
必ず…必ず見つけ出す!!

「僕はメリーが投げてきた雪玉から探してみる」
「…うん」
まだメリーは上の空だ。
頼む、目を覚ましてくれ!
「メリーは陣地の辺りを探してくれ!」
「……わかったわ」
「必ず見つかる!だから頑張ろう!」
「…えぇ、見つけるわよ!」
「よし、その意気だ!!」
メリーの志気が戻ったところで、僕らは指輪の捜索を開始した。
本当に日が落ちるまでに見つかるのか?
この広いフィールドから、あんなに小さな指輪を探せるのか…?
…いや、探すんだ。
やってみなきゃ判らない!!

「っつ…指が…」
あまりの冷たさに、痛さを通り越して感覚が無くなってきている。
今の時間は3時半…残り1時間切ったか…。
メリーは、一心不乱に雪を掻き分けて探している…、危ないな。
僕は今探していた場所に目印を作り、メリーのもとに駆け寄った。
「メリー、手貸してみ」
「え?」
返事を待たずに、僕はメリーの手を取る。
「やっぱり…」
メリーの細かった指は凍傷で赤く腫れ上がっていた。
「…いったん家に帰ろう」
「…!!何言ってるの!まだ見つかってないのよ!!」
「お前をこのままにさせる訳にはいかない。いいから一度帰るぞ」
「嫌よ!!見つかるまで、私は動かない!!」
…こりゃ、梃子でも動かないって勢いだな。
「メリー、何も諦めるってわけじゃない。家に戻れば、俊二や山やんも居るだろ」
「……そうだけど…でも…」
「手袋も必要になるし、あいつらがいれば百人力だ。そうだろ?」
「…わかったわよ」
ふぅ…。
何とか説得は出来たか…
「そうか。よし、戻ろう」
名残惜しそうにするメリーの手を引き、僕らはその場を後にした。

「ただいま」
玄関をくぐると、階段の前で2人が立ち話をしていた。
「おう、遅ぇぞ、おめえら」
「よう、山やん。まいど」
「どうかしたのか?今から向かおうと話していたところだ」
「あぁ、実はな…」
僕は凍傷を負ったメリーをおばあちゃんに引き渡して、廊下で2人に事情を簡単に話した。

「…で、今までそれを探し回ってたのか」
「あぁ、協力してくれるか?」
「もちろんだ。すぐに行くぞ」
「おう。オレも行く」
山やんが、他校に乗り込みに行くような雰囲気で乗ってくれる。
「あぁ、悪い。山やんは待機してくれ」
だが、僕は断った。
「おぉう?そりゃ無いぜ。オレだけ除け者か?」
「いや、今メリーにしもやけしてる手を使わせるのは止めさせたい」
「ふむ。あの様子じゃついてくるだろうな」
「そう。だから、山やんにはメリーが外に出ないように見張っててもらいたいんだ」
「…なるほどな。そういうことならオレに任せときな!!」
声を張って、胸を叩く。
こういう時は頼りがいがある男なんだが。
「シー!!声がでかい!!バレたらどうするんだ!」
「おぉう。…すまん」
大きく見えた山やんが、今度は小さくなったように見えた。
どこか抜けてるんだよな。
「それじゃ、僕は手袋持ってくるよ」
「うむ。俺は外で待っているぞ」
「オレは…ここで立ちふさがるぜ」
「…僕が出れないじゃないか」
「おぉう」
なんだかなぁ…。

現場に着いた頃には、空が赤く染まり始めていた。
「まずいな…。日が暮れてきた」
「日が落ちる前に見つけ出せなければ…探し出すのは難しいな」
「とにかく探そう。お前は陣地の辺りを探してくれ!」
「任せておけ!」
僕らは暗くなりつつある辺りを、必死に探した。
時折冷たい風が容赦なく襲い掛かってくる。
それでも、僕と俊二は手を休めることはなかった。
体に相当な負担になるので、定期的にお互いの調子を聞くようにした。
「山崎を連れてこなかった理由…他にもあるのだろう?」
「…何を今更聞くかね」
「不良に絡まれたりしたら探し物もできんからな。正しい判断だ」
「…ありがとよ」
今は会話に時間を割く事さえ歯がゆい。
時間が刻々と過ぎていく。
それにつれて、辺りも暗闇に包まれていく。
「くそ…時間切れか…」
「まずいな…」
午後5時。
完全に日が落ちてしまって、周りは真っ暗だ。

「どうする…?」
「一度戻って懐中電灯を持ってくるしかないな」
「この暗さなら山やんも、もう連れてきても大丈夫そうだな」
「そうだな。俺が行こうか?」
「あぁ、頼む」
俊二が家に戻ろうとしたが、思い出したかのように僕に訊いてきた。
「…ふむ。彼女はどうする?」
…彼女?
僕は顔をあげて、俊二の視線の先を見た。
遠くからメリーが懐中電灯片手にこっちに走ってくる。
「…メリー?」
「どうやら山崎を葬ってきた後らしいな」
「やっぱり、山やんじゃ抑え切れなかったか」
「山崎が心配だ。俺も懐中電灯持ってくるついでに山崎に追い討ちを加えてくる」
「やめれ。冗談でもそれはやめれ」
こいつは真顔で言うから冗談なのか本気なのかわからない。
「仕方ないな…ともかく、行ってくるぞ」
「ああ、懐中電灯、僕の分も頼んだ」
家にいくつあるかわからんが、今はあるだけ必要だ。
俊二が家に向かって走る。
途中メリーとすれ違うが、何事も無く通り過ぎていった。

メリーが僕のところに小走りで近寄ってきた。
「隆一!!なんで私に黙ってたのよ!」
メリーの手には包帯がしてある。
思った以上に重症らしい。
「その手じゃ探すのは無理だろ。後は僕らが探す。メリーは待っててくれ」
「嫌よ!私も探す!!」
まぁ、言っても納得するとは最初から思ってないからな。
「それじゃ、僕の手元を照らしてくれ。それと一緒に目で探してくれ」
「…わかったわ。キリキリ動きなさい!」
「へーへー」
僕とメリーの共同作業。
見逃さないように慎重に、かつスムーズに雪を掻き分ける。
メリーは僕の手元を照らし、時折何かを見つけると、すぐに教えてくれる。
小石やビニールをいくつも発掘したが、目的の指輪は見つからない。
さらに冷気を増した冷たい風にメリーが肩を震わせる。
僕は上着をメリーに渡して、作業を再開する。
もう寒いとか感じてる暇はない。
半場やけくそだ。

絶対に…。
絶対に見つけてやる!!

「待って!」
何十回目だろう。
今度こそ、指輪であってくれ…。
ガサ…
「ビニールか…」
「………」
二人してうなだれる。
「どれだけ探したよ?」
「あそこから…ここまでね」
メリーが懐中電灯の光で辺りを照らす。
メリーが来てからローラー作戦で雪を掘り進んでいる。
あれだけ進んだと思ったのに、10mも到達していない。
「さすがに時間がかかるな…あとどれくらい残ってる?」
「まだこの辺り全体が残ってるわ」
またもメリーが光で範囲を示す。
その広さに気の遠くなる作業を想像して、うな垂れそうにった。
…ん?
「…おい、メリーもう一度あの辺を照らしてみてくれ」
「え…ここ?」
メリーが僕の指先に光を照らす。
見間違いじゃなければいいが…。
「もうちょい右だ、そこらへん」
メリーが操る光が、フラフラと一辺を照らす。
すると、不意に何かが光り輝いた。
「あ…!」
「光ってるな…もしかしたらもしかするぞ!!」
「うん!!」
僕達は祈る思いでそれに近づいていく。

懐中電灯の光を頼りに、光る物のすぐそばまで来た。
僕らが探していた場所の対極した位置だ。
メリーが、震える手で光るソレを拾い上げた。
「…あ、…あぁ」
「………ふぅ」
よかった…。
見つけた…。メリーの宝物。
「あった…。よかった…。よか…たッ…」
メリーは力が抜けたのかその場に座り込んでしまった。
メリーの宝物が、包帯が巻かれた手に、強く握られる。
「今度からは大事に持ってような?」
座り込んだメリーに、優しく声をかける。
「うん…うん…」
こういう時は素直なんだけどなぁ…。
「ほら、そんな所に座ってないで、家に帰ろう」
メリーの手を優しく引っ張り上げ、立たせようとする。
っと、手袋じゃ悪いな。
僕は手袋を外してから、メリーに手を差し伸べる。

メリーは差し伸べられた僕の手を見て、息を呑んで固まってしまった。
「どうした?」
「隆一…あなた…手が…」
手?
自分の手を見る。
暗くて見えない。
「……」
無言でメリーが僕の手を照らしてくれる。
「おぉ、ごんぶと」
いつのまにか僕も凍傷してたようだ。
必死になってて気がつかなかった。
「あなた…こんなになるまで…」
「手袋も冷気完全遮断ってわけじゃないからな」
「それなのに、あんなスピードで雪掻き分けて…私にあわせて…」
「僕も必死だったからなぁ…」
若干やけくそでノリノリだったし。
「ありがとう…私のためにこんなに…ありがとう…」
メリーがうつむきながら、包帯の巻かれた手で僕の手を包む。
「私…嬉しいよ…隆一…ありがとう…」
「あ、あぁ」
…これは、照れるな。
「…隆一!」
「うおっと!」
何だ!?何が起こった!?
「メ、メリー…どうしたんだ一体…」
メリーが抱きついてきたようだ。
「ううん…嬉しかったから…。もう少しこのままでいさせて」
「別にいいけど…ここ寒いんだが」
…しまった、空気の読めない発言してしまったか。
言う慣ればフラグクラッシュ。
「なら私が暖めてあげる…」
「ブッ━━!?」
何だ!?今聞き捨てならん発言が飛び出たぞ!?
「まぁまて、落ち着け。もうすぐ俊二と山やんが向かってくる。この場を見られるのは恥ずかしい」
「もー…、せっかく頑張ったご褒美に優しくしてあげてるのに」
別の方向で優しくしてくれ。
僕にはまだ早い。
「早く帰ろう。途中でしるこ缶買ってやるからさ」
「ホント!?」
甘い物となると食いつきいいなぁ。
「あぁ、さっさと帰ろうぜ」
「わーい!隆一ー!」
「だー!!引っ付くなー!!」

このメリーは、いつもの勝気のメリーの裏にいる、本当のメリーなのだろうか。
それとも、熱にやられて精神が若干幼くなったせいか。
はたまた、ただの気まぐれなのだろうか。

翌日、風邪で寝込んだ隆一は、同じく隣で寝込んでいるメリーに対し質問できる勇気も出ず。
その微妙な空気のまま、大晦日1日前まで過ごすのであった。



エピローグ

指輪を探し出せた隆一とメリーが、家に帰るまでのただそれだけのお話。



河川敷に出る少し前に設置されている自動販売機。
丸一年を通してあったか~いコーンポタージュとおしるこが売り出されてるマイペースな自販機だ。
カコン、カコン…。
メリーが昼間に使った空き缶を備え付けのゴミ箱に捨てている。
使ったらちゃんと片付けないとな。
「ここにメリーを連れてくるのは初めてだな」
「そういえばそうね。いつも通る道からは見えない所にあるのね」
「いわゆる穴場ってヤツだ。財布財布…」
指がかじかんで動かない。
尻ポケットから財布を取るのに手間取る。
「財布が抜けない。どうしよう」
「…私が取る?」
「いえ、気合で解決します」
もがきながらも財布をポケットから引き抜き、財布を開く。
「…小銭が取れない。どうしよう」
メリーに財布を渡す。
「はいはい…って、200円しかないわよ?」
む、メリーに飲ませるのはもちろんだが、僕も飲みたいのにな。
「じゃあ野口先生の出番だ」
メリーから財布を返してもらうと、二人の野口先生から一人を抜き取り、自販機に入れた。

自販機に吸い込まれていく野口先生。
程なくして戻ってくる野口先生。

グッバイ野口先生。
おかえり野口先生。

「戻ってくるなっての」

再び出陣野口先生。
再び帰還野口先生。
「もう一枚ので試してみたら?」
「ん、そうだな」
メリーの言うとおりに、野口先生をチェンジして試してみる。

グッドラック野口先生。
フォーエバー野口先生。

だめだな。
「…僕いらないから、メリーの分だけ買おうか」
「隆一はいいの?」
「あぁ、大丈夫だ。さっさと買って帰ろう」
「うん、わかった」
メリーは僕の財布から、200円を取り出し自販機に入れた。
「………うーん…」
が…、今度は赤く点灯するボタンをマジマジと見つめて、唸りだした。
もしかして自販機使ったことないのか?
僕が声をかけようとしたと同時に、メリーは点灯するボタンを押した。
ガタン
何を買うか悩んでいたらしい。
でも待て、おしるこを買うんじゃなかったのか?
僕はメリーの押したボタンの商品を見た。
「コーンポタージュ?」
「そうよ」
返事をしながら取り出し口から、少し熱いポタージュ缶を取り出した。
「おしるこ飲みたかったんじゃないのか?」
「そうだけど、隆一はおしるこ飲めたのかしら?」
「え?」
「私、あなたがおしるこを飲んでるところ見たことなかったから…」
「おしるこは飲めないわけじゃないんだけどな」
「あら、そうなの。ならおしるこにすればよかったわ」
「今日はもう飲んだから、それで我慢しとけ」
買う前に聞けばいいものを…不器用な気遣いだ。
メリー本人は気にすることも無く、缶のプルタブを開けていた。
カキョン
「って、指大丈夫なのか?」
さりげなく開けていたが、手はまだ凍傷が残ってるはずだ。
「…うん、大丈夫」
本人も忘れていたのか、痛みで涙目になっていた。

「ん…あったかい…」
歩きながらメリーは早速コーンポタージュを口にする。
「僕にもちょうだいな」
「ん」
それを渡され僕も飲む。
おぉ、美味い。温かさが身体に染み渡る。
今更間接キスだとか気にするようなことはない。
少なくとも僕はそうだ。
しょっちゅう俊二や山やんと回し飲みしてるし。
「ほい、やっぱり美味いな」
一口だけ飲んでメリーに返す。
「………」
返されたメリーは缶を見つめて飲もうとしない。
「どうした?」
「ううん、なんでもない」
とは言ったが、やはり飲まない。
…うん、間違いないな。
せっかくだからどうするか見てみたいな。
「…………」
「…………」
缶の飲み口をじっと見つめるメリー。
それをどうするか興味津々で見ている僕。
怪しい光景だ。

「おい、そこの怪しい二人組」
「…ん?俊二、山やん」
懐中電灯をごっそり持った山やんとビニール袋を持った俊二が目の前に立っていた。
「どうした二人とも、そんな大荷物で」
「本当ね。何かあったの?」
僕らは二人で同じ反応をする。
おそらくメリーは素でわかっていない。
「うむ、探し物に行く途中でな。差し入れも持ってきた」
「差し入れ?その袋か?」
俊二に渡された袋を開ける。
「あ、おしるこ缶だ」
それもごっそりと。

「おしるこ?なら飲むわよ」
お嬢様、ポタージュが残っております。
「このポタージュ俊二に上げるわ」
と、ポタージュを俊二に渡すと、僕からおしるこ缶をふんだくる。
そして、プルタブが開けられないことに気づき、山やんに「開けて!」と要求する。
「お、おぉう」と、気圧されながら言うとおりにする山やん。
山やんにしるこ缶を受け取り、クイッと一口。
「ふぅ…やっぱおしるこ缶よねぇ」

このお嬢様は数秒のうちに男3人を利用してしるこ缶にありつきやがった。

「まったく…敵わないな」
「ふむ、あのしょぼくれた顔とは大違いだな」
「オレまでつい従っちまったぜ」
メリーの行動の的確さに、三人で笑ってしまった。
「ん?何でみんな笑ってるのよ?」
「いや、なんでもない。それよりメリー、この袋抱えてみ」
袋とは言うまでも無く、差し入れのおしるこ缶入りの袋のことだ。
「重くない?」
「4本、いや、3本しか入ってないから大丈夫だ」
1本はメリーが今飲んでるそれだ。
僕はメリーに袋を渡すと、メリーは言うとおりに袋を抱えた。
「あ、あったかーい」
「ふむ、買いたてだからな。しばらくは温いぞ」
「ところで、あなた達は行く所あるんじゃないの?」
「いや、中止になった」
俊二が山やんは苦笑いを浮かべてる。
「そう、なら早く帰りましょう。パーティーが始まっちゃうわ」
「そうだな。おばあちゃん達が待ってる」

聖夜の空の下、四人は並んでパーティー会場である僕の家に向かって歩き出した。

「む、このポタージュ美味いな」
「オレにもくれ」
「コーンだけでいいか?」
「おぉう、それコーン入ってないだろ」
「ばれたか」
僕とメリーは二人のやり取りを見て笑っていた。
二人が騒いでる隙に、メリーは僕におしるこ缶を渡してくれた。
「ん?よこせって言ってないぞ?」
「飲んだら返してね」
「…ん、こっちも美味いな。ホイ」
一口飲んでメリーに返す。
「やっぱいいわねぇ、ん…ふぅ」
メリーは返された缶の飲み口に今度は躊躇い無く口をつけた。
「今日は…ありがとね」
「あぁ、いいさ。見つかってよかったな」
「うん…」

「なら飲み終わった缶をくれてやろう」
「おぉう、どうあっても飲ませない気かよ」
「うむ、というか、もう飲んだ」
「末代までボコボコにしてやる」
この二人は仲がいいんだな。多分。

僕とメリーは家に着くまで続いた二人のやり取りを見て笑いあっていた。

拍手っぽいもの(感想やら)
  • 最後に、不良に向かって「・・・私メリーさん。今あなた達の前にいるの・・・」とか言わせてみたい -- (砂) 2010-02-26 19:45:45
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