メリーの居る生活
メリーさんと一緒!!

絵保管庫
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注意書き


このお話は、まだ完成していません。
そのため、物語の内容が一部変更される場合があります。
ご了承くだしあ

気が抜けるほど長いお話です(作成途中の現在で「六日目」以上)
読むならばそれなりの時間を確保して取り掛かってください。
相当な長さなので、一区切りずつ公開して行こうと思います。
更新が止んだら、作成中なので、完成まで待ってあげてください。

というわけで、長らくお待たせしました。
今回のコンセプトは、自分が中二展開でメリーを書くとどうなる?です。
メリーと隆一の戦いを、お楽しみください。
作: ◆Rei..HLfH.

メリーの居る生活 番外編? 闇夜の舞踏会


ビュー…!!
ピュー!!

「凄い風だな…」
「そうね」シャッ…シュッ…

午後3時
いつもと変わらない日曜日。
いつもとは何か違った休日。

僕はマンガを読みふけ、メリーは鎌の刃を研いでいた。
天気の悪い休日は、部屋でのんびりするのに限る。
昼は天気が良かったのに…、出掛けないでよかった。

「あ、そういえば洗濯物取り込んだっけ?」

シャッシャ…

メリーが刃を研ぐ手を止めて、僕を見る。

「洗濯物…出てるの?」
「今日は途中まで天気良かったから…多分」

今、おばあちゃんは買い物に行ってて居ないはずだ。
じいちゃんは散歩に行ったきり戻っていない。
つまり、洗濯物はこの暴風に晒されている事になる。

「何か雲行きも怪しいよな」

僕は窓から空を見上げた。釣られてメリーも空を見る。
午後3時だというのに、やけに暗い。嫌な空模様だ。

「そうね…。降ってもおかしくないわ」
「よし、入れてこようか。メリーも手伝ってくれ」
「…仕方ないわね」

渋りながらも、あっさりと了承してくれた。
自分の服が濡れるのは嫌なのだろう。


一階のリビングに向かい、僕は庭に出るため窓を開けた。
轟々と唸り声のような音が聞こえると同時に、待ち構えていたかのように、リビングに強い風が入り込む。
これじゃ、雨が降るのも時間の問題だろう。

「うっへー!!すげぇ風…うわっぷ!!」
「嫌な風…早く済ませましょう」

庭に出た直後に強風に押されて、二人してよろめく。

「隆一、洗濯物は大丈夫?」
「飛ばされてる物は無さそうだな」

おばあちゃんは、物干し竿に無駄なスペースを作らない。
均等に並べられた洗濯物を見れば、一目瞭然だ。

「飛ばされる前に早いとこ入れちゃおう。僕らも飛ばされるぞ!!」
「ねぇ隆一、上の竿はどうやって取ればいいの?」

僕の家の物干し台は二段になっている。
その上の段に掛かっている竿は、棒で引っ掛けて下ろす事になっているのだが…。
あれ、棒が無い…風で飛ばされちまったのか?

「あれは長い棒で引っ掛けて下ろすんだけど、その棒が消えてる」

メリーに簡潔に説明する。

「えぇ…!?仕方ないわね…おいで!!」
「?」

メリーが何かを呼んだ。

何を呼んだかと思ったら、リビングからメリー愛用のカマがすっ飛んできた!!

「うをぉお!?」

僕のほうに向かって来てるわけじゃないが、僕は大きく飛び退いた。
カマは、まるでメリーが操っているかのようにふわりと回転し(実際操っているのかも知れないが)、
メリーはそれを手に取った。

「これで、届くんじゃない?」
「あ、あぁ…。届くだろ」

メリーはカマの柄を長く持ち、刃の部分で竿を突付いた。

「ん…先っぽが丸いから難しいわね」

今度は爪先立ちをしながら、一生懸命竿を降ろそうとしている。

おばあちゃん…。
カマで洗濯竿を下ろす光景を見ることになるなんて、思いもよらなかったよ。

「…って、ヤバくないか…あのタオル…」

下ろしている洗濯物の中に、洗濯バサミが外れかけているタオルを見つけた。
それを狙ったかのように、これまた強い風が吹く。

「…っあ!」

同時にメリーが小さく声を漏らした。
その強風に煽られて、竿から一枚のタオルが飛んでいってしまった。

「…DASH!!」

僕は庭の外に飛んでったタオルを追いかけた。

タオルは家から出た先の道のど真ん中に落ちていた。

「回収完了…また洗わないとダメかな?」
「隆一ーこっちは全部入れたわよ」

庭から挟まれた垣根の向こうから頭を出して、メリーが知らせてくれた。

「ナイスだ。さっさと戻ろう」
「そうね。―――――あら?」
「どうした?」

メリーが何かに気づいた。

「…やけに…暗くない?」
「…本当だ」

庭の外は、まるで夜のように暗くなっていた。
さっきまでは、わずかな太陽の日が提供されていたが、
庭から一歩出たその瞬間から、まるで別の空間のように暗闇に包まれていた。
それに…。
いつの間にか…風が止んでる?

「これ…おかしいだろ」
「何が起きているの…?」
「分らない…とりあえず家に戻ろう」
「そうね。外は気味が悪いわ…。とても…不安…」

メリーが灰色の空を仰ぐ。
その瞳には、微かにだが憂いの色が見えた。

「お前がか?珍しいな。茶でも飲んd――――――」

ビュウウウウウウウウ!!
止んだと思った風が、今までにない突風となって、僕らを飲み込んだ!

「う、うわああああああああ!!」
「キャ…、りゅ、隆一!?」



「隆一!!どうしたの、隆一!!ねぇ!!」

…………
気が付いたら俺は空を見ていた。
黒い…暗い…全ての物を吸い込んでしまいそうな空…。

「っく…あれ?」

上半身を起こすと、側にメリーがしゃがんで俺を見つめていた。

「隆一!!大丈夫!?」
「俺は…――。あぁ、意識が飛んだんだな…」
「あぁ…よかっt――じゃなくて…。し、心配させないでよね!」
「わりぃ、俺は大丈夫だ。…家に戻ろう」

よろめきながら立ち上がり、ズボンについた汚れを叩いて落とす。
まだ衝撃が残っているのか、おぼつかない足取りで歩き出す。

家に入る前に、メリーが俺の前に立ちふさがって再度訊く。

「ねぇ、隆一。本当に大丈夫なの?」

よほど心配なのか、近づいて俺の顔を覗き込んでくる。

「…何が?」
「何が?って、さっき倒れてたじゃない!どこか怪我してない?」
「風に呷られて転んだだけさ、別にどこも打ってない。それより、またあの風が来るかもしれない。早く入ろうぜ」

前を立ちふさがるメリーを押しのいて、家の中に入る。

「…………まったく」

メリーは溜息をつきながら、俺の後に家の中に入った。


「ザーザーーーー…」
カチッ
「ザーーーーー…」
カチ
「ザーーーー…」

「おいおい、本格的におかしくないか?」

家に入ってまず俺らがした事。
それはテレビを見ることだった。
最初は天気予報を見ようとして、テレビの電源を入れたが。
ブラウン管に映し出される物は、砂嵐だった。
試しにチャンネルを変えてみたが、どうやら全局砂嵐キャンペーンを開催しているらしい。

「世界と隔離された…って感じだな」
「そうね…普通ではあり得ないわ。こんな事」
「ネットは繋がるかなっと…」

二人で二階の俺の部屋に行き、パソコンの電源をつける。
鈍い起動音を聴きながら、窓の外を見る。

…よく見たら、近所の家。遠くに見える高層ビル。
全てに電灯は灯っていない。
こんなに暗いのに…。

「隆一、立ち上がったわよ」

暗闇に飲まれた見慣れない景色を眺めてるうちにパソコンは立ち上がった。

「おう、どれどれ…」

カチカチッ…
いつも通りの手際で、IEを立ち上げてみる。

【404 Not Found】

だめだコリャ。
後ろでパソコンの画面を覗いたメリーもため息をつく。

「メリー。電話は繋がらないのか?」

メリーは少し考えた後、

「…待ってなさい」

と言って、廊下に出て行った。

…が、1分もかからないうちに、戻ってきた。

「厄介ね…、私の知り合いにも電話が通じないわ」
「知り合いって?」
「アンタは知らなくていいの!」

それもそうだ。今はそんなこと訊いてる場合じゃない。

「テレビにネット、特別なような気がするメリーの電話も使えない…と」
「家電類が使えるから、停電でもないし。余計怪しいわよね…」
「どうする?このまま家で待機してるか?」
「普通の停電ならそうしたい所だけど…、今の状況じゃそれが安全なのかも判らないわ」
「安全なのか判らない…って?」

メリーが睨みつけるように、窓の外を見る。
俺も外を見る、さっきより暗くなってる気がする。
今この状況で、窓から化け物が飛び込んできても、俺は不思議とは思わないね。

「私は周りの状況を調べてみるわ。隆一は家でおとなしくしていて」
「おい、一人で大丈夫かよ」
「一人だからいいのよ。あんたなんか連れて行ったら、もしもの時足手まといになるじゃない」

言いながら、メリーは押入れから靴を出し、部屋の窓から出て屋根に立つ。

「何かあったら電話するわ。それまで外には出ないこと。来客はよく見極めて、迂闊に中に入れないで」
「あ、おい!!」
「それじゃ、1時間程度で戻るわ、おいで!!」

必要なことだけをペラペラ喋って、
鎌を呼ぶと同時に人並みはずれた跳躍で屋根から屋根に飛び移り、次第に闇の中に溶け込んでいった。

「ったく…、『何かあったら電話する』って、電話は通じないんだろうが…」

それに、鎌を持ち出して出かけるって事は『もしもの時』ってのはありうるしな…。

「仕方ない、行くか…」

もし会えなかったら、1時間以内にここに戻れば良いだけの話だ。
俺はリビングの棚に置いてあったクラフトナイフを手に、家を出た。

「……………フン…」

暗闇の空を眺め、メリーの飛んで行った方向に向かって漆黒の町に歩いていった。



「これは…」

やっぱりおかしい…。
平らで立ちやすい屋根を見つけ、そこで止まる。
人一人どころか、野良猫一匹、スズメ一羽すら見当たらない…。
言いがたい恐怖に襲われる。
人も動物も何もかもが死滅した世界に、私と隆一は来てしまったのではないか。
さっき廊下で電話をかけたとき、ホッペをつねって痛かったから、夢ではないのは判った。

「一体…何が起こってるの?」

その言葉に返答はなく、そのまま闇に飲まれてしまう。
…闇?
辺りを見回す。
そういえば、辺りには灯りになる物は無いのに、視界は悪くない。
それどころか10mほどなら難なく見える。
ハッと息を呑む。

「これは…闇じゃない…黒…黒の空間?」

黒の空間…時空儀式で生まれる人工空間。
本来は身を隠す為に…、つまり暗殺に使う物のはず…。

「まさか…こんな大規模な人工空間、生み出せれるはずが…」

必死に否定する。
でも、今この状況は、それの全てに当てはまる。
一体誰が?何の為に?
私は自問自答を繰り返した。

カァ

…?

「カラス?」

やっと生き物に出会ったと思った。
けれど、その生物を見て、私は今置かれている状況の深刻さを知る事になる。

電線にとまるカラスのような物は、煙のような塊で、実態は無いに等しい。
だけど、赤く黒い血のような目は、その生き物がそこにいる事を物語っている。

「…何…この生き物…」

少なくとも、この世界の生き物ではない。
この黒い世界の副産物か…それとも、この生き物も故意に生み出された物なのか…。

カァ

「!?」

後ろを振り向く。
さっきまで何もいなかった電線に、もう一匹、同じカラスのような生き物がとまっていた。

カァ

「っく…」

また別の方向に、カラスがいつの間にか姿を現す。

カァ…カァ

増えていくカラスたちを目で追っていく内に、周囲にカラスが次々に増えていった。

「これは…囲まれてる…!?」

カラスたちは私を取り囲むように集まり、その赤い目でこちらをギロリと睨んでいた。
電線、屋根から生えたアンテナ、木の枝。所々が黒い塊になっている。

「実体が見にくいから何匹かも解らないわね…300匹くらいかしら…」

カァ!!カァ!!

「…!」

カラスの群れの中にいる、ひときわ大きい体のカラスが翼を広げて鳴きだした。
その声と同時に、他のカラスも一斉に鳴きだす。

「(…来る!!)」


私は鎌を構え、腰を深く落とした。
大きい体のカラスが鳴き終えると、次第に周りのカラスも鳴き止み、辺りに沈黙が戻る。

クァーーー!!!

体の大きなカラスが、咆哮とも言える声で鳴くと、周りのカラスが一斉に私を目掛けて突進してきた!!

「ふっ!」
タンッ!!

一度、その場所から大きく跳躍し上空に逃げる。
目標を失ったカラス数匹が、屋根に激突し粉々になって砕け散っていく。
激突を免れたカラスたちは方向を変え、上空にいる私に向かって凄まじいスピードで飛んで来る!!

「たあぁッ!!」

ビュオォウ!!

下から襲い掛かるカラス達に、鎌を振り下ろす!!

ビチャビチャビチャ!!

黒い塊が刺さった鎌を構えなおし、落ちながら今度はカラスの集団に横薙ぎをお見舞いする。

「やぁッ!!」

ザシュッ!!

何匹か裂いた感触を確認した後、また構えを直し着地の準備をする。

タッ…ザザザッ!!

屋根に着地すると同時に、前方に転がり追撃を避ける。
そのすぐ後に、さっき着地した場所にカラスが勢い余って墜落する。

「(今ので大体半分…いや、1/3くらい…次で行ける…かな?)」

数の目算をしながら、道路向かいの民家の屋根に飛び移り、カラスの大群から離れる。
でもカラスは私をすぐに捕捉し、また勢いをつけて突っ込んでくる!!

「ふぅ…」

一呼吸吐き、高速で向かってくるカラス達を見て、鎌を後ろ手に回しクスリ…と笑った。

「足場さえあれば、あなたたちなんて敵じゃないの。…バイバイ」



「さぁってと、あいつはどこに行ったのかねぇ」

誰も歩いていない狭い道で、俺は俺に語りかけた。
見慣れない町に冒険心を沸きたてたのは、ずいぶん昔の話。
今ではさっさと目的地に着いて、さっさと用を済ませたい。

「…にしても、こりゃ暗いって感覚じゃないよなぁ…」

暗い割りには辺りが良く見回せて、なんだか不思議な世界に迷い込んだみたいだ。

「まぁ、灯りがいらないから、こっちの方が助かるからいいんだけどねー」

何も無い空を見上げる。何度見ても同じだ。
月も星も見当たらない、蓋をされたような空。

「月夜の散歩ってのが気持ちいいんだが…、まったく、趣の無い演出だな」

タッタッタッタッタッタッ…!!

「…?」

手をポケットに突っ込み、臨戦態勢に入る。
近辺の状況…。一般道。左右に住宅、左方住宅の塀が低い…か。
後ろじゃねえ…、…上から聞こえる。屋根…メリーか?

「誰かいるのか?独り言ばかりだと寂しいから顔を出してくれよ」

女の子と一緒なら、雰囲気出るんだろうな。

ジャリ…ジャリ…

「………」

大佐、後ろに何かいるぞ。
油断したっぽいな。回り込まれたか。

「まいったなぁ、ダンボールもないし誤魔化せねえや。って、見つかってたら意味ねえか」

ため息をつきながら後ろを振り向く。

「おやおや、これはまぁ」

俺はどうやら、煙っぽくブラックなキャットやワンコにストーキングされてたらしい。
塀の上にいる猫(命名:クロ)も含めると、犬猫6匹か。
体の実体つかめないし、目が赤いし。なかなか世紀末的な生き物だな。

「おかしいな、俺って動物には好かれないタチなんだが…撫でて欲しいのか?ん?」

それより触れるのかが問題だ。

グルルルル…

「ん、今のは唸ってるのか…それとも腹の虫か。もしかしてエサが欲しいのかい?」

って言うか、俺がエサって展開かな。うん。
グアアアアアァァッ!!
その黒い生き物は、一度咆哮すると、俺に向かって一直線に走ってきた。

「狂犬病でも、そんなシャクに障る声で鳴かないってぇの…」

俺はクラフトナイフを手にし、襲い掛かってくる犬(命名:無糖)を…蹴り飛ばした。

ドカッ!!
キャイン!!キャン!!

無糖は痛々しい悲鳴を上げ宙に浮き、塀に叩きつけられた。

「あー、動物っぽいものでも一応愛護してやる。バラバラってのは、猟奇っぽいからな」

シャー!!

クロが威嚇する。

「そう怒るなよ畜生ども、ナイフはあいつを切り裂くために使わないでおいてやるから」

俺はクラフトナイフをしまうと、愛くるしい動物たちとふれあいガチンコバトルを繰り広げる事にした。


さて、今から質問することに冷静に答えるんだ。
Qここはどこだ?
A…解らない
Q僕は誰だ?
A皆のアイドル隆一だ
Q何故ここにいる?
A情け容赦ない突風にあおられて、気を失ってここにいた。
Q急に意識が飛んだ?
A急や
よし、自我が無事なら後は何とかなるな。

自問自答を終え、むくりと起き上がる。

「さて…、マジでここはどこでしょう」

前は文字通り木の壁、右には木、左にも木。

「よっと」

立ち上がって、軽くストレッチをしてみる。
どうやら身体は健康らしい。

「五体満足って素晴らしい事だな」

服についた湿った土を叩き落としながら、辺りをぐるりと見回す。
どこか見覚えのあるこのフィールド、ふと、視界に何かが映った。
お世辞にも立派とはいえない小さな小屋が、そこにあった。

「あれ?もしかして、秘密基地…か?ってことはここ公園?」

どうやら僕がのびていたのは、幼いながらも玄人思考で作った秘密基地の前だったようだ。
(どうせなら、秘密基地の中で倒れていたかったな)
ここは最近、小娘を追っかけて訪れた事がある。


「ますます状況が読み込めないな。何だって言うんだよ…」

メリーと出会ってから、少しだけ非日常的なイベントには慣れてきたつもりだったが、
今回は、少し度が過ぎる。

「…そうだ!メリーは!?」
今頃になって気付く。

こんな事が起こるのは、常にあいつが中心にいることは間違いない。
僕はもう一度、周辺を見回していた。
やっぱりいない。
ここにいるのは僕だけなのだろうか。

「仕方ない、探しに行くか…」

きっとメリーも僕を探してるはずだ。
とりあえず家に帰ってみよう。

僕は垣根の隅から四つん這いになって、公園にはって出た。

「あらー、さっきより暗くなってる気がする」

どれだけ気を失ってたのかはわからないが、町の一面を覆いつくす暗闇に辺りは包まれていた。
公園を見回してみると、砂場や滑り台付近にオモチャが放置され、ベンチにはランドセルが置いてあり、
まるで、一瞬にしてこの世界が元の世界と切り離されたような印象を受ける。

「って、あれ、見える?暗く…無い?へ?」

遠くにある砂場が見れるのに気付いた僕は、試しにさらに遠くに視線をやってみる。
ぼんやりとだが、その先が見える。
辺りが黒かったから、暗いって印象があったけど、いざ真っ黒になってみると…。

「黒い世界…だな、ますます奇天烈な現象だ…ウゥ…」

不気味な感覚に身震いする。
さっさと家に戻ろう。
僕は公園の出口に向かって、少し早い歩調で歩きだした…。

グルルル…

やべ。何か聞こえたぜオイ…。
公園の中央まで歩いたところで、歩を止める。
こんな声を聞いた自分の耳を呪うべきか…。
後ろを振り向く。

「いきなり後ろから噛み付かれなかったことを感謝するか…」

僕の後ろにいたのは犬だった。
だが、これまた奇天烈に輪をかけたビックリ生物。
僕は動物番組をよく見るが、体が煙みたいな犬なんて見たことない。

「興奮してるねぇ、それとも腹ペコで気が立ってるのでらっしゃい?」

いかん、動揺して語尾がぶっ飛んでる。
マズイな。
かなりマズイ。
今メリーがいないとなると、ガチンコで不思議生物と殺りあうハメになる。
選択肢ミスったらカレー先生の教室か、虎の道場に行きそうなほどだ…。

ここ数日の行いを反省してみる。
…死亡フラグは立ててないはず。
いや、今の状況下じゃフラグもクソも無い。
くそ、現実を見るんだ僕。

近くに武器は?
おっと、都合よくバットが横に落ちてるじゃないか。
僕は犬と目を合わせながら、そっと、自分の足元に落ちているバットを拾い構える。
(一応言っておくが、バッターよろしくな構えじゃないぞ。前に構えてる形だ)
メリーとの特訓で俊敏さには定評あるが、犬の突進を避けた事なんてない。
それ以前に、避けるに重点置いても、問題は解決しないな。
出来れば一撃で脳天フルスウィング&サヨナラホームランを狙おう。
失敗したら…。

その時考えよう!!
もう時間が無い!?

心の準備が出来てないってのに、犬まっしぐらに僕に飛び掛ってきた!!

ガアァァァァッ!!

「う、うわあああああああぁぁぁぁぁっ!!」

僕はてっきり突進で来るかと思っていたが、犬は予想GUYな跳躍力で飛び込んできた。
バットじゃ反撃できないと判断した僕は、横に転がって犬の突撃をかわす!

ズザザザッ!!

「く、くそ…!!」

すぐ立ち上がり、バットを構えなおすが、足がガクガク振るえて動けなくなる。
立ってるのが精一杯だ、気を抜いたら腰抜かしちまう。

「ハァッ…ハァッ…ハァッ…」

恐い…心臓が恐怖で締まりすぎて止まってしまいそうだ。
死ぬのか?マジでこいつに殺されちまうのか!?

グルルルルルル…!!

今のままじゃ…次のターンで確実に殺られる!!
畜生!!何かいい案は無いか!?
思いつけ!それか思い出せ!!
何か…何か…!!

『まったく…隆一は守りに入ることばかりね…』
『うっせぇ!僕は平和主義なんだ!!』
『そんなこと言ってたら、どうにもならない相手と対峙した時、死ぬわよ?』
『ぐ…』
『あなた、避ける事と攻撃を無効化させるアイディアは素晴らしいわ。認めてあげる。』
『え?』
『自惚れないで。…一人前になるならこれを覚えておきなさい』
『覚える?』
『そう。自己防衛システムを確立させるのよ』
『何だそれ?』
『あなたなりに言い換えたつもりだけど…、自分の身に危機が迫ったとき、人間は今まで以上の力を発揮するわ』
『あぁ、なんだっけ…火事場のクソ力?』
『火事場の馬鹿力よ』
『ぐぅ…』
『避ける事に能力が向上するか、相手を倒す事に能力が向上するかは、わからないけれど、防衛システムが確立すれば、どうにかなるかもしれないわ』
『確立って、言われてもなぁ。厨漫画臭いな。いわゆる覚醒じゃないか?』
『覚醒…というよりは…そうね、精神に大きな余裕ができるから動きやすくなる…って所かしら』
『余裕?何か新しい力が目覚めてーとかじゃないの?』
『まったく…、そんな簡単に新しいスキルが手に入るなら困らないわよ』
『っていうか、余裕が出来るってどういうことだ?』
『その時の感情―――焦り、不安や高揚感を一度に全てをリセットするの。そうする事で、無心になって次の行動に素早く体が動くのよ』
『無心で体が動くって、達人の域だぞ』
『そうよ。あなたの避ける技術は達人と行っても過言では無いわ。だから―――――』
『意義あり!!被告は守りだけでは死ぬと言っていたではないか。守りにさらに強くしても意味無いと思うぞ?』
『あんたね…。平和主義者だからって、完全に無抵抗って訳じゃないでしょ?』
『はい、ごめんなさい』
『避けスキルS攻撃スキルEでも、抵抗くらいするなら、このシステムは意味あるの!!わかった!?』
『はい、先生』
『よろしい。それじゃ早速、そのシステムを確立させてみましょうか』
『一抜けた!!』
『あ!?こら!!まちなさーい!!』
『スタコラサッサだぜー!!』

よくある回想終わり。
さて、今この時が、そのシステムを稼動させてピンチを切り抜ける所なんだろう。
(回想の間は時間が止まる、これ正論よ)
くそ、あらかじめ確立させておけばよかった…。
対メリーの為に防衛システム確立しても、結局は手加減してくれるから意味無いと思ってたんだが…。
メリー以外とドンパチは想定外だった。
まさに後の祭りだな。

僕のよく読む漫画なら、次の一撃で瞬時にそのシステムが発動して、反撃のチャンスが生まれるってのが王道だが、
足がガクガク、腕がブルブルの腰砕け野朗に、そんな奇跡的な展開が訪れるものなのだろうか。

僕は、これからどうなる?

A・絶体絶命のこのタイミングでメリーが助けに来てくれる
B・頭のいいナイスガイの僕が、とっさに防衛システムを確立させ窮地を凌ぐ
C・助からない。運命は残酷だ

…あかんて!!
この展開でこの選択肢はあかんて!!
犬に助けてもらえる展開なのに、襲おうとしてるのが犬じゃ本末転倒じゃん!

そんな脳内会議が意味も無く進行するなか、とうとう犬の『待て』は限界ラインを越えてしまった。

グアアアアアアアアア!!

「いやあああああああああああっ!?」

今度こそ死ねる!?大往生!?
グッバイ人生!ウェルカム胃袋!?

そこからは、見るもの全てが、まるでスローモーションのように動いて見えた。
犬が僕を目掛けて飛び掛ってくる。
足は動かない、避けられない。
手が痺れて動かない、塞ぐこともできない。
僕に出来ることは、飛び掛ってくる犬を見ているだけだった。
抵抗できない僕は最後、それも拒否した。

怖かったから。
絶命するであろう一撃を、受け入れることが怖かったから。

僕は目を閉じた。
まぶたの裏で、今まで出会った人達の顔が浮かんできた。
そうか、これが走馬灯か。
もう、終わりらしい。


パァンッ!!
キャインッ!?

「ッ!?」

突然の破裂音。
そして生き物の悲鳴。
…あれ?僕生きてるみたい!!

「な、何!?何!?」(錯乱中)

周りを見ると、あの犬が遠く10m程離れた所でのびている。
何が起きたのか、サッパリわからん。
解る奴がいたらここに来い。そして僕に説明しろ。


「それじゃあ、何でも知っているこの魔法使いさまが直々に説明してあげようかしら」

どっかで聞いたことのあるこの透き通った声。
声のした方向を向く。


黒の世界に、紅一点の満開の花弁を纏った桜の木が、そこにあった。
その桜の木の枝には、メリーではない、メリーによく似た少女が座っていた。
彼女は、背中ほどまで垂れた金色のポニーテールを揺らし優しく微笑んでいる。
その微笑と、着ている純白のワンピースが眩しく、似合っていた。
歳はメリーと同じくらいか、少し幼く見える。
雰囲気のせいだろうか。

「よっと!」

枝から飛び降りた少女は、ゆっくり僕の前に立った。

「お久しぶり、元気にしてたかしら?」
「え?あ、ええ、まあ…」

今さっき元気とは正反対の状態になるところだったがな。

「まったく、暗くなったから雨が降るかと思って外に出たら、こんな事になってるとはねぇ」

まずい、普通に会話が始まった。

「待った!!…失礼ですが、どなた様で?その桜の木は?魔法使いって?あんた誰?あの犬は?」

相手が喋りだす前に、今疑問に思ってることを一気に聞く。
正直、今の状況がまったくわからん。

「あら、どなた様って、失礼ね。前にこの桜の木の下で話したじゃない。あの子のこと」

あの子?メリーの事か?

「それに、魔法使いなら、こんなしみったれた世界に桜の花を咲かせることなんて、わけないわ」

どうやら、新手の魔法使いらしい。
流行っているのか。魔法使い。

「あのワンちゃんには、ちょっと吹き飛んでもらったけど、お邪魔だったかしら?」
「いえいえ、とんでもございません」
「あと数秒遅かったら、仏様になってたわね」

何でこの娘は、単語に年季が入っているんだ。
子供っぽいのに、妙なギャップがある。
っていうか、マジで誰だ。
問い詰めたいが、『前に会った』と言われている以上、聞き直すのは気まずい。


「この世界は、一体なんなのさ?あの犬も」

話題を変えて、今の状況を聞くことにした。
何でも知ってるんだろう?教えてくれ。

「むむ…、ちょーっと待ってね、整理するから…」

少し困った顔をして、自分の額を人差し指で突付きながら唸ったあと…。

「詳しく話すと長くなるんだけどね、魔法とはちょっと違う、空間儀式という方法で作り出した空間がこれなのよ」
「黒空間って言って、文字通りそこいらを黒く染める空間なんだけど、今回それとは別に、いる筈の無い影みたいな魔物まで出てきてるわけ」
「この影の正体は解らないんだけど、今のところ動物の形しか見てないから、怨念の塊みたいな物がウヨウヨしてるって思って」
「以上、解説終わり!!」

文句無しの説明が終わった。
まったく意味が解らない。
ただ、僕はトンデモ世界にいるということは、よくわかった。

「他の人間はどうなったんだ?」
「多分、別の世界として切り離されてるんだと思うよ、これほど強い空間儀式だからね…」
「スケールでかいなぁ…」
「今こうしている時にも、元の世界は何の変化も無く生活を送っているはずよ。私たちがいないって所を除けばね」

事態に感心しながら、別空間ってことになっている公園を見回す。
どうりで、ランドセルが落ちてたり遊び道具が放置されているわけだ。
無機質な物は、こっちの世界にも持ち出されたらしい。

グルルルルルルル…

…あの吹き飛んだ犬が、起き上がりながらこっち見てる。

「…まさか、本当に吹き飛ばしただけだったの?」
「しつけがなってないねぇ。ご近所に迷惑だよ」

いや、そういう問題じゃないぞ。

「魔法使い様、キツイお仕置きをあの犬畜生めにお与えください」
「あらほれさっさっとね」

少女は、空間をチョンッっと突付いた。
突付かれた空間は、次第に光を伴いながら丸くなり、バレーボール程の大きさになった。
そのバレーボールの前に、人差し指と親指で○を作り、でこぴんをする要領で…。
一気に人差し指で、その球体を弾いた!!

パシュッ!!

まばゆい光を帯びた弾は、勢いよく犬の頭に飛んで行き、

パァン!!

一段と綺麗に弾けた。

「………!!」

犬は叫びを上げる間もなく絶命し、煙のようにかき消えた。

「すっげぇ…」

非日常的な世界で、非日常的な少女が、非日常的な必殺技で、非日常的な生き物を粉砕した。
日常的な日々カムバック。

「さてと…、私は他の動物たちを狩りに行くわ」
「ぼ、僕は何すればいい?」

って言うか、一人にしないでくれ。
次一人で襲われたら、確実にDEAD ENDだ。

「あなたは、メリーのところに行ってあげて、きっと心配してるわ」
「んなこと言われても、一般人には全裸で戦場行けと言っているようなものだぞ」
「まったく…注文の多いボウヤだねぇ…、そのバットをお貸し」

ヤレヤレと溜息をついて、僕の持ってるバットをひったくる。

「――――――――――――――――」

彼女は、バットを握り締め、目を瞑り、ブツブツ言い始めた。
何か唱えているのだろうか?
その割には、小さな唇は動いているように見えない。

「…はい、おしまい!」

数十秒ほど経って、彼女がバットを返してくれた。

「何か細工でもしたのか?あんまり変わらないような気がするんだが…」

ちょっと離れて、スウィングしてみるが、特に変わったところは無い。

「バットの性能自体に変化は無いわ。バットを持った人に効果を付けるようにしたの」
「ってことは、今の僕には何か効果が?」
「簡単に説明すると、その人の長けた部分をさらに向上させるようにしてみたわ」

よくわからない。
そのままの意味で受け取ると、回避率大幅アップってことか?

「それじゃ、私は行くね!」
「ほ、本当に大丈夫なのか?」

自分の身は自分で守れ。
さっき絶体絶命の危機を体験した人間には、酷なことだぞ。

「私を信じなさいな。もし危なそうなら、また助けてあげるからさ」
「本当かよ…」
「魔法使いに、不可能は無いのだ!」

アテにならねえ。

「あ、そうそう、明日の学食Bランチの献立変わるから、よろしくね。それじゃ!!」

彼女は素敵なセリフを残して、走り去っていった。


「謎だ…。何で今学食の話が出てくるんだ…。あ、頭痛ぇ…」

僕は、急に胡散臭く見えてきたバットを担ぎ、彼女が走り去った方向とは反対の出口に歩いていった。
公園から出る直前、僕はもう一度振り向いた。
……なるほどな。明日からは学食も利用してみるか。
公園の反対側で歩いていた女性は、裏山で出会った娘想いの魔法使いだった。
この少女については、六日目の学食のシーンを参照。メリーの名前を知っている初対面の人物が彼女です。

カラスのような生き物をなぎ払ってから、幾度となく様々な影が私に襲い掛かってきた。
この大通りの真ん中でも、転々と停まっている車の隙間から縫うように影たちは近づいてくる。
獣のような形の、大小様々な影が、私を取り囲んでいた。
私は静かに鎌を構え、影の懐に飛び込んでいった。

「――たああぁ!!」

グシャ…メキメキメキ!!

影のクセに、この生々しい感触…忘れかけていた―――いいえ、忘れようとしていた嫌な感覚。
犬のようなものは、もう動かない。
鎌を既に絶命したそれから、嫌な音を立てて引き抜く。

グチュ…ビチャビチャビチャ…。

「ハァッ……ハァッ…ゥッ…ゲホッゲホッ…」

吐き気がする。

グルルルルルル…。

あと数匹…。
半分は減らしただろう、増殖も止んだ。
これだけの数をこなしただけで、こんなに疲れるなんて…。

「ハァ…ハァ…ちょっと…運動サボりすぎた…かな…?」

この闇から抜け出したら、甘い物控えよう…。

「隆一…ちゃんと留守番してるかな…?」

ふと、口から零れた。
今は自分のことで精一杯のはずなのに、何であんなのを心配してるんだろう。

グアアアアアアアァ!!

「クッ!…ハッ!!」

ドス!!

飛び掛ってきた犬を回し蹴りをお見舞いする。
蹴り飛ばされた犬に反応して、二の足を踏んだ別の犬に高速で接近し、延髄に鎌を振り下ろす!!

バシュ…!!

犬の首が吹き飛び、蹴り飛ばされた犬もピクリともしなくなった。


「…今ので終わりね……ふぅ…」

しばらく休もう…。吐きそう…。
私は静かになった道路の真ん中で座り込んだ。
何度となく見上げた空をもう一度見上げる。

「どうしちゃったのかな…この世界…」

戦っていれば、原因に近づけると思ったのに。
一向に見えないどころか、影の数や種類まで増えてきた。

「あ…いけない、時間…」

もう1時間は裕に過ぎている。
隆一は何をしているだろう。
影の存在を知らずに外に出ようとしてるかもしれない。
帰らなきゃ。隆一が心配だ。

疲れた体を起こし、ふらふらな足で私は家に戻ることにした。


ドガッ!!
キャイン!?

首筋を思い切り蹴られた犬(命名:海苔)は、くるりと宙を舞い、地面に叩きつけられて動かなくなった。
ふれあい開始から絶え間なく続いた攻撃はいつの間にか止んでいた。

「他愛ないな。ま、準備運動にはなったか」

周囲に転がる影の塊たちを見下ろす。
数十はある塊は、どれもピクリともしない。
だが消滅していない。止めを刺していないから。
こいつらは、そのうちくたばる。
苦しみと痛みの中、その身と同じに、命も煙のように消え果るといい。

トントン…

もう動くことは無い影を足で蹴り転がす。

実態は無いものの、触れることができる影。
その影が蔓延るこの世界で、いつアイツと出会うか解らない散歩を続けている。
アイツは影に喰われているかもしれない。アイツが影を喰ってるかもしれない。

「趣は無いが、これはこれで…。面白い余興だ」

胸にこみ上げる何かを、笑みに代えた。
こんな感情の高ぶりは久しぶりだ。

「さぁ、殺人鬼と暗殺者の演劇は…。いつ始まるのかな」

メリメリ…バキ…パキ…

道に転がる影を踏み砕き、一人の役者は歩き出した。
もう一人の役者と舞台を探して。


どんどん続きます。




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