イフ・ブレー

イフ・ブレー、ツォルドン・ブレー

 イフ・ブレー(их/大 бүрээ/喇叭)は長さが3m程ある金管楽器 で19世紀末頃にはウヘル(үхэр/牛)・ブレーとも呼ばれていた 。前述のビシグールと同様にチベット仏教寺院で用いられていた法器で、寺院の閉鎖後は博物館入りしていた。
1945年に映画《ツォクト・タイジ》の音楽作曲の際、スミルノーフが用い、その際トロンボーン奏者が持ち替えで演奏したが 、当時どのような楽器が用いられたのかは不明である。その後1959年にムルドルジが仏教音楽の楽器の音色を民族楽器オーケストラに入れることを提案し、インドゥレーが実際の製作にあたった。この2つの楽器は1961年の革命40周年記念演奏会で初めて使用された。
ツォルドン(цордон/小管)・ブレーは1960年インドゥレーが製作したが、この当時の楽器の詳細は不明である。その後1984年2つの楽器は共に長い朝顔部分を湾曲したY字型の台に乗せて演奏する。その後1984年に新しく製作し直された。トロンボーンやホルンのような役割を担う。
改良イフ・ブレーは同じく1960年に製作された。Es管テューバのロータリー部分をそのまま利用して製作されたという 。民族楽器オーケストラの中では基音を奏しテューバの役割を果たす。
現在人民歌舞団使われているイフ・ブレーとツォルドン・ブレーは、音楽舞踊中学校卒後、模範軍楽隊と国立ジャズ・バンド“バヤン・モンゴル”でサクソフォーンとトロンボーンを演奏した後人民歌舞団に入団し、この楽器を演奏していたG.サムバルフンデブの提案で、2001年にチェコの楽器製造会社に製作を依頼したものである。これを2006年にロータリー式だったものをピストン式に改造して使用しているという 。特にツォルドン・ブレーはトランペットの胴体に2001年製作の長い朝顔をそのまま取り付けたものである。
この現在使用されているツォルドン・ブレーの音域はC4からD6で、実音で記譜される。イフ・ブレーの音域はB♭1からC4またはE4で、実音で記譜される。
 などスミルノーフ1971にはドン・ブレー というチベット仏教で法会を知らせるために吹く貝を民族楽器オーケストラの楽器として挙げている が、音程の不安定なこの楽器を実際に使用していたとは考えがたい。舞台で、演出として使われていた可能性はある。

最終更新:2012年10月13日 10:33