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*ベレー帽のヒロイン(完)」(2006/08/09 (水) 15:29:54) の最新版変更点

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**後編  嗚海のお母さんが予想した通り、嗚海は親と医師の話を聞いていた。嗚海は後悔をしたくないが為に、学校へ走って行った。いつ自分が死ぬかわからないというのに…。  校門まで行くと、クラスの人が帰って行くところだった。  「あ、飯田さん!」  「あれ?岬さんじゃない、どうしたの?」  嗚海はそこにいた一人を呼び止めると、東也がどこにいるかたずねた。  「東也君…?どこに行ったけなあ…たしか…」  「東也なら用事あるっつって裏玄関行ったぜ」  そう言ったのは、東也と仲の良い「秋野」だった。  「秋野、ありがとう!飯田さんも、ありがとう!」  嗚海はそう言うと、全速力で裏玄関まで行った。 ―言わなきゃ…東也に、、、病気の事・・・・それに・・・・・・この気持ちも・・・・・  裏玄関まで行く細い道を歩いていると、あと一つ角を曲がるだけという所で、誰かの話声が聞こえた。嗚海は角を曲がらず、そこから除いて見た。そこには東也と三崎がいた。 ―…三崎さん…?  立ち聞きは趣味じゃないが、嗚海はそこで耳をすました。  「あの、私…わたし…と、東也君が、、、、好きです!!!」  嗚海は目を見開いた。こんなに早く事が進むとは思ってもみなかった。  「え…?俺の事を…?間違いでなくて?」  「間違いなんかじゃない!私は東也君が好きです!つきあって…くれますか・・・・・・?」  三崎の目は必死だった。そして、本気だという事が、東也に、そして、嗚海にも伝わった。  「俺なんかで…よければ…」 ―え?  ポツッ ポツッ・・・・ザアアアアーーーーーーーーーーーー  突然大雨が降ってきた。  その影響で、嗚海は東也の言葉のその先が聞き取れなかった。けれど、「何か」でかすんだ目と雨の中、東也が三崎を雨から守っているのを見て、その先の言葉を想像出来た。 ―『付き合うよ』、か…  嗚海の頬を涙がつたった。最初から雨で濡れていた顔だけど、涙だけは何か違った。頬をつたう事が、とても悲しいと感じた。嗚海は自分の頭の上でびしょびしょになっているベレー帽をとると、強く、強く抱き締めた。  裏玄関からは校舎の中に戻れない。2人は表玄関まで戻った方が良いと考えたのか、嗚海がいる方に進んで来た。  嗚海は泣いていたから、2人が自分の方に来る事に気が付かず、見つかってしまった。  「嗚海…?」  びくっとして嗚海が泣いていた顔を上げると、そこには、東也が自分のフードつきの上着を三崎にかけている光景が見えた。  「お前何してんだよ、そんな所で、風邪ひくだろ?」  「岬さん…もしかして……」  「え?」  嗚海はベレー帽を投げ捨てて掛け出した。見つかった事なんてどうでもいい。もう、終わったんだという事を知ったから。とても悲しくて、逃げ出した。  「岬さん…」  「どういう事だよ、なんで逃げるんだよ…。あいつがベレー帽投げ捨てるなんて…」  「東也君、一番大切な事言った時…雨、ふってきたよね…?」  「ああ。それが?」  「岬さん…誤解したのかも…」  「え…?」  東也は目を見開くと、投げ捨てられて泥だらけになったベレー帽を拾って、嗚海が逃げて行った方に走って行った。 ―嗚海…どうして最後まで聞かなかったんだよ…  実は、東也は三崎の告白を断っていた。そう、あの雨が降った時。  『友達にはなるよ』  『え?』  『俺さ、好きな奴いるから…。確かに三崎は美人だけど、つきあったりはできない。ごめん。』  『もしかして…岬さん…?』  『なッッなんでわかるんだよッッ―――』  『だって、毎朝仲良くしてるじゃない』  『あ、あれは仲良くというか…』  『ケンカするほど仲がいいって言うじゃない?きっと岬さんも東也君の事好きよ』  『そうかなあ…?』  『絶対そうよ!ね!?自身持って!』  『あ、ありがとう…。強いんだな、三崎は』  『そんなんじゃないよ。わかってたもの。東也君が岬さんを好きな事。だから、覚悟はしてたの。』  『そう、なんだ…。ごめんな』  『ううん。いいの。それより…すごい雨ね』  『ああ』  『私、表玄関に傘があるから走ってとってくるわね。東也君も傘あるなら、持ってくるけど…』  『え、いいよ。俺も傘あるけど、一緒に戻ろう。俺等、友達だろ?』  『…うん』  『それにしてもおんまえ薄着だなあ・・・』  『えええ?このくらい普通よお。』  『モデルはこのくらいの温度差乗り切らないとやってけねえのか…』  『そんなんじゃないって…』  『これ着ろよ』  『え?いいわよ』  『いいってば。着ろよ。モデルが風邪ひいちゃ駄目だろ?』  『ありがとう』  こんな会話の中、東也は隠れていた嗚海を見つけた。  東也が走り回って嗚海を探している中、嗚海は、一つの大きな樹の下で雨をしのいでいた。 ―あー…。なんか息荒くなった来たなあ…。今日死ぬかもしれないんだもんね。結局…言いたかった事全部…言えなかったなあ…。あーあ。もう…早く死にたい...  そしてしばらく時間が経つと、東也が樹の下の嗚海を見つけた。  「あっ嗚海!え…?」  パタッ…  嗚海が倒れた。  「嗚海…?嗚海!!!どうしたんだよおい!嗚海!」  「東也君?どうした…あっっ!岬さん!?」  「な…なんで倒れるんだよ・・・おい…」  手を触ると、冷たいのがわかった。  「嗚海はね、病気だったの」  「え?」  そういったのは、嗚海の母親だった。嗚海のお母さんは、嗚海がいなくなった後、必死に嗚海を探していたのだ。そして、最後に行きついたのが、学校だった。  「どういう、事ですか…?」  「貴方が、東也君?」  「はい」  「貴方は?」  「三崎です。嗚海ちゃんと同じクラスで、同じ名前の。」  「ああ、貴方が三崎さん…」  「それより、嗚海が病気って、どういう…」  「今日診断が出てね。今日死ぬか、明日死ぬか、わからない病気にかかった事がわかったの。もって1年。それ以内に死ぬ病気…。手術をして治った子や、一年間病院にいて死んだ子とか、いっぱいいたわ。嗚海はね、診断が出て1時間弱だった。それだけよ」  嗚海のお母さんはとても苦しそうに、それだけ2人に話した。    「それって、もう嗚海ちゃんは…」  「…………ええ。死んだわ」  「そんな…嗚海…嗚海…」  「東也君…」  ザアアーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー・・・・  次の日は、とてもいい快晴の日だった。クラスの皆はいつもと変わらず、嗚海、東也、三崎の3人が休んだだけだった。2人は、嗚海の葬式に行った。  嗚海の大切なベレー帽は嗚海と一緒に燃やすはずだったが、嗚海の母親が「東也君が持ってて。そして、大事にしてあげて。」と言ったので、東也が大切に持つ事にした。    「なあ、三崎」  「なあに?」  「嗚海、元気だよな?あっちでも泣いてたりしないよなあ?」  「私は、信じてるわよ。東也君が信じてれば、岬さんも元気だと思うよ」  「そっか…じゃあ…信じてみるか…」  ベレー帽のヒロイン。ずっとずっと、いつまでも。 ~終わり~

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