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「ギブアンドテイクの契約」(2009/02/02 (月) 15:11:20) の最新版変更点
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*ギブアンドテイクの契約 ◆9L.gxDzakI
――何故、こんな物が都合よく自分の持ち物の中にあったのだろう。
虫の音すらならぬ静寂の暗闇の中、石畳に軽く腰掛けたゼストは、微かに呆れたような表情でため息をついていた。
少し離れた場所では、同様に1人の少女が座っている。
エメラルドのごとき緑髪は、この宵闇の暗さの中でも、負けずに優美な輝きを放っていた。
まるで絹の糸のように、冷たい風にゆらゆらと揺れている。
人形のように綺麗な黄金の瞳は、手にしたもの――赤色やら黄色やらの乗った断片を見つめていた。
白く細い指が、それを口の中へと運び、ゆっくりと入れる。黄色いもの――熱々にとろけたチーズが微かに糸を引いた。
そう。彼女が食べているものは、
「なかなか用意がいいじゃないか」
ピザだ。
だれがどう見ようと、紛れもなくピザだった。トマトソースやチーズの乗ったそれは、いわゆるマルゲリータ・ピザ。
「オリーブだけが綺麗さっぱりなくなっているのが、また妙な話だがな」
言いながら、少女はまた手にしたピザの一切れに噛り付く。
もう気が付いているだろう。彼女が食べているこのイタリア料理は、横に座っているゼストの持ち物だったものだ。
数分前に彼女らは、この淡い月光が照らす神社の中で出会った。
空腹で、おまけに三度の普通の飯より三度のピザを好むような偏食家の少女は、出会い頭にピザを要求する。
この状況で、しかも武器を構えていた正体不明の男にそんなことをよく頼めるものだとは思うが、生憎と彼女は普通の人間ではない。
彼女は落ち着いていた。そう、それこそ、図太いと言われるような領域に達するほどに、性根が座っていたのだ。
とはいえ、急にそんなことを頼まれたゼストはたまったものではなかった。
何でそんな物をわざわざ要求したのかは理解できなかったし、こんな所にピザがあるはずもない。
そして腹が減っているのなら、何か適当なおにぎりでも1つ渡してやろうと思って、
デイバックに手を突っ込んだ矢先に――自分の持ち物の中に、あまりに都合のよすぎる代物を発見し、今に至ったのだ。
「……まぁ、今はこれくらいでいいだろう」
12分の1にカットされた一片をたいらげると、少女はピザの箱を閉じる。
そしてあつかましくも、自分のデイバックの中にそれを突っ込もうとして、
「おい」
ゼストに止められた。
「不満か?」
「当たり前だ」
不機嫌そうにゼストが呟く。
何故こんなものが自分に支給されていたのかは分からないが、一応そのピザ一枚分、彼は他の人間よりも食料面で優位に立っていたのだ。
そのピザを他人に奪われては、たまったものではない。
「まぁいい」
そちらもそちらで不機嫌そうに頬を膨らませながら、少女は自分とゼストの間にピザの箱を置いた。
微妙に奥行きの広かった石畳の段は、幅広なピザもどうにかこうにか支えられている。
「私も、色々と聞きたいことがあるからな」
少女はゼストに本題を切り出した。
元々危険を冒してまで彼に接触したのには、それなりの理由がある。
ピザだけを欲してるのなら、不意打ちで殺して持ち物をあさってしまえばよかったのだから。
彼女が欲しているのは、情報。
戦場――ことさらこうしたサバイバルゲームの中では、フィールドに隠れた敵の情報が物を言う。
たとえば、得意とする戦闘スタイル。たとえば、使われると苦手な戦法。
このデスゲームの中で生き残るには、1人でも多くの情報を知っておくに越したことはなかった。
「この場にいる参加者の中で、お前が知っているのは誰だ?」
故に、その情報を得るために、少女は問いかける。
そしてゼストもまた、彼女に対して、同様の念を抱いていた。
戦う人間の情報は何としても欲しい。ここで答えておけば、ギブアンドテイクということで相手から聞き出すこともできるだろう。
何より、自分は相手に対して恩を売っている。マルゲリータピザ12分の1の恩を。
(それに、元より情報を知られて困る仲間など……この場にはいないからな)
故に、ゼストは要求に応じた。
再びデイバックに手を入れ、そこから支給された名簿を取り出す。
ごつい指先でその上をなぞりながら、ゼストは己が知りうる参加者の名前を少女に伝えた。
まず、高町なのは。名簿の中でも1番上に名前の載っていた、許されざる復讐鬼の名前。
続く、管理局の魔導師達。フェイト、はやて、シグナム、ヴィータ、シャマル、ザフィーラ、ギンガ、クロノ、etc……
これらの人間とは直接刃を交えたことはないので、スカリエッティから与えられた情報のみを伝えることになるだろう。
そして、そのスカリエッティが従える戦闘機人達。クアットロ、チンク、ディエチ、そして――スバル。
その名前を聞いた時に、少女は微かにその瞳を見開いた。
「スバル・ナカジマなら、私も知っているぞ」
知り合いがかぶったのだ。
この名前の人間ならば、彼女も知っている。直接姿を見たことだってある。人ならざる身体を持った、蒼髪の少女だ。
「知っているのか?」
ゼストの声音に、微かな警戒の色が宿る。
その金の瞳――スカリエッティと、一部の戦闘機人に見られる共通の特徴だ――に、彼は漠然とある予想を立てていた。
根拠はない。同じ色の目をしていたからといって、あのスカリエッティに関与しているのでは、というのは因縁もいいところだ。
しかし、その不確かな推測は、僅かにその色を濃厚にする。
この少女はスバルを知っている。スカリエッティの13番目の配下を――亡き部下から取りあげた娘を知っている。
ということは、彼女はまた、同時にあの狂気の科学者とも繋がりを持っていてもおかしくない。
そう判断していたのだが、
「ああ。少し前から、ルルーシュの学校に転校してきた」
この言葉には目を丸くするしかなかった。
「………………………、なんだって?」
一拍の間の後、ゼストはそれこそ思いっきり呆けたような表情をして、何とかそれだけを問いかける。
学校、とは一体どういうことだ。あの少女は、スカリエッティの戦闘員として戦っているのではないのか。
それが何故、そんな血生臭い戦いとは一切無縁の健全な学び舎に通う必要があるのだろう。
いやそもそも、そんな話は聞かされていない。大体、つい最近までナンバーズの中に混ざっているのを見ている。
そんな少女が急に学校などと、にわかには信じられるわけがなかった。
「何かおかしなことを言ったか?」
少女は怪訝そうにして、ゼストの顔を覗き込んでいる。
この様子からして、嘘はついていない。それは間違いないし、大体この嘘は明らかにつくメリットがない。
ならば少なくとも彼女の中では、スバル・ナカジマは健全な女子学生ということになっているのだろう。
これ以上追求しても頭がこんがらがりそうだったので、そこで考えるのを打ち切った。
「……まぁ、いい。それで……そのルルーシュというのが、お前の知っている人間なんだな?」
名簿に視線を落としながら、ゼストは少女に問いかける。
そこには間違いなく、そのファーストネームを持った参加者が明記されていた。ルルーシュ・ランペルージという名前だ。
「ああ。一応、『共犯者』といったところかな? 私にとっては大事な男さ」
口元に余裕を持った笑みを浮かべながら、彼女は言った。
共犯者、という独特な言い回しに、ゼストはその太い眉をひそめる。
要するに、この少女は犯罪者ということなのだろうか。もしもスカリエッティに関わっていたのならば、その線も有り得る。
だが、その「といったところ」という微妙なニュアンスは一体何なのだ。
共犯者とはただの言葉遊びで、本当は犯罪者ではないのかもしれない。つくづく、度し難い娘だとゼストは思う。
「契約したからな……私はルルーシュには、何としても生きていてもらわねばならない」
そんな内心などお構いなしに、少女は言葉を続けていく。
「まぁ逆に言えば、それ以外は生きようと死のうと、極論私が殺すことになろうと、知ったことではないということだがな」
微かな笑みを、その上等な人形のような綺麗な顔に貼り付けながら。
苦虫を噛み潰したような表情を、ゼストは我知らず浮かべていた。
嫌な娘だ。未だ若いというのに、殺すという言葉をこんなに平然と言い放っている。
「救いようのない奴だな」
嫌悪感を隠そうともせずに、ゼストが呟いた。
「それもよく言われることさ」
少女はそれでも、余裕な表情を崩すことはなかった。
同じ金色の瞳で笑うスカリエッティともまた違う、何か。底抜けの闇のように深い何かを、ゼストは感じ取っていた。
「それで? お前の今後の行動方針はどうなんだ?」
そして彼女は、今度はゼストに問いかける。
ここまでのギブアンドテイクというスタンスからすれば、当然の流れだった。
この緑髪の少女だけが、特定の情報をオープンにするのもフェアではない。当然彼女にも知る権利はあるはずだ。
「先ほど教えた高町なのは……俺は、今までずっと奴を追ってきた」
故に、ゼストもまたその目的を口にする。
「殺すために」
それだけは譲れない、彼の生きる目的だ。たとえこのような異常にさらされても、である。
彼が知る高町なのはは、さながら聖人君子のように謳われたエース・オブ・エースではない。
かつての栄光と安寧から叩き落とされ、身体と心を蝕まれ、悪鬼と成り果てた復讐者だ。
自身を改造したジェイル・スカリエッティに報いるためならば、あらゆる犠牲も厭わぬ狂人。
復讐を追い求める限り、その存在そのものが人々を脅かすことになる阿修羅。
そんな化け物を退治すること。
本来生きることなど許されるはずもない身体を、それでも突き動かさんとする、自らが己に課した使命。
「それだけか?」
ゼストの言葉を、少女は淡々とした口ぶりで聞き返す。
「後はプレシアの打倒と、可能ならば、ルーテシア・アルピーノという少女の保護……今浮かぶのはそれだけだ」
彼の脳裏に浮かぶのは、2人の女性の姿だ。
1人はこのゲームの首謀者――プレシア・テスタロッサ。
己の欲望に他者を巻き込み、蹂躙するという点では、この死んだはずの犯罪者もなのはと同罪だった。
故に、同じ罰を下す。自らの手によって再び死を与える。
そして、もう1人はメガーヌ・アルピーノ――ルーテシアの母たる女性だった。
生前首都防衛隊の一翼を担っていた自分の部下だ。娘に受け継がれたアスクレピオスを操る召喚魔導師だ。
そして、ゼストが愛した女性でもあった。
闇の王女に寄り添うルーテシアは、父親こそ知らないが、大切な女を母とする、言わば忘れ形見だった。
右手は高町なのはとプレシア・テスタロッサを殺すために。
左手に携えた力でルーテシア・アルピーノを救う。
相反する2つの目的を、しかしゼストは、己の身一つで成し遂げようとしていた。
「……では、私の行動をとやかく言われることもなさそうだな」
全てを聞き遂げた少女が呟く。
「ついてくるとでも言うのか?」
「か弱い女の子に、戦いなどできるはずもないだろう。それに私の武器は、どうやら私の手には余るようなんでな……」
言いながら、少女はエメラルドの糸を揺らしながら、デイバックをごそごそと漁った。
やがて、そこから何かが取り出される。
暗闇の中に眩く映える、白銀のフォルムを有したそれは――
「ブリッツキャリバー、だったか」
ゼストにも見覚えのある、インテリジェントデバイスの姿だった。
少女が抱える雷神の具足は、待機状態を解かれたデバイスモードとなっている。
もう1人の部下クイント・ナカジマの娘にして、もう1人のタイプゼロ――ギンガ・ナカジマが用いる、鋼鉄の装具。
なるほど確かに、これをこの少女が使いこなせるはずはない。デバイスはあくまで魔導師の武器だ。
「その様子からして、お前にはこれが使えるようだな」
「そしてお前は、このナイフを欲しているというわけか」
「分かりきったことだろう?」
少女はまたも妖しげな笑みを浮かべる。
全てが万事、ギブアンドテイクで一貫していた。互いに同じ種類の情報を提供し、互いの欲する武器を交換し合う。
それが暗黙の了解のもとに成り立った、一種の「契約」。
鋭い投擲ナイフは、男の手から少女のもとへ。
白銀のデバイスは、少女の手から男のもとへ。
契約はここになされた。
ゼストは受け取ったブリッツキャリバーに、そのスペックを提示させる。
同じ近代ベルカ式デバイスとはいえ、彼の有した槍とは大きく異なる業物だ。
カートリッジシステムが搭載されていないのもそうだが、普段使い慣れた物との相違点は探せば膨大に見つかることだろう。
故に、その情報を得ておかねばならなかった。これが彼の生命線なのだから。
(デバイスのファイナルリミッターが、解除されている……?)
そして、スペックノートをせわしなく読み上げていた瞳が、ある一点でピタリと止まった。
(ギア・エクセリオン……A.C.Sだと?)
表示された結果に対する驚きは、少女がスバルの身の上を語った時にも匹敵する。
こんな機能がブリッツキャリバーに搭載されているという報告は、今までに聞いたことがなかった。
Accelerate Charge System――瞬間突撃システム。その通称をA.C.Sと言う。
その名の通り、魔導師の瞬間的な加速力を、爆発的に増大させるシステムの名称だ。
かつてあのなのはが、白きエースとして名声を上げていた時から用いていたと言えば、その性能もかくやといったところだろう。
しかし、このシステムには危険も大きい。
レイジングハートがこれを併用するエクセリオンモードは、膨大な量の魔力を一気に消耗する諸刃の剣だった。
実装された闇の書事件が解決した後には、その身体負担もなくなるよう改良されたと聞くが、
果たして自身のデバイスのフルドライブさえ持て余す、不安定な人造魔導師の身体を持ったゼストが、同じように耐えられるかどうか。
(だが……もし、あの復讐人と相まみえることがあれば)
しかし、ゼストは落ち着いた様子で軽く瞳を閉じる。
(使うだろうな)
彼は躊躇いもなく使うだろう。
己の命が果てることを微塵も怖れることなく、雷神の具足の禁断の力を解放するだろう。
ゼスト・グランガイツは――自身の命さえも、使命のためには投げうることも辞さなかった。
ブリッツキャリバーを待機状態にし、首にかけると、石畳から立ち上がろうとする。
「ちょっと待て」
そしてそれを少女が制した。
「何だ」
「まだピザの対価を払っていなかったからな」
言いながら、少女はその手の細指を伸ばす。
雪のように真っ白な指先が、すっとゼストの厳つい顔の額へ向かい、そっと触れた。
しばし、世界の時は止まる。
夜風の音色さえもこの時ばかりは押し黙り、虫の声など聞こえるはずもなく、完全なる沈黙が宵闇を満たした。
一拍の間。その後に、しかし少女は困ったような表情を浮かべ、すぐにその指を離す。
「何だったんだ?」
特に身体に変わった様子は見受けられない。ならば目の前の少女は一体何をした。
ゼストが怪訝そうな表情を浮かべて問いかけた。
「いや……忘れろ」
一方の少女は、そんな素っ気無い言葉で応じた。
これ以上聞いても無駄だと判断すると、ゼストはその腰を上げ、神社の石畳を降りていく。
後にはその美麗な髪を揺らして、白装束を纏った少女がついて歩いていった。
そこで、ふと気が付いたゼストは、彼女の方へと振り返る。
「それで、結局お前のことは何と呼べばいいんだ?」
そして問いかけた。
名前を忘れ、思い出しても語るつもりがないのならばそれでもいい。しかし、仮の呼び方ぐらいは決めておいてもいいだろう。
でなければ、共に行動するのには何かと不便だ。
それに、ゼストは名乗ったというのにそんな風では、これまでのギブアンドテイクの法則にも反している。
少女はしばし沈黙した後、立ち止まった彼を追い抜くようにして歩いていくと、
「……名簿いわく、C.C.だとさ」
と、これまた素っ気無く返した。
【1日目 深夜】
【現在地A-4 神社境内】
【ゼスト・グランガイツ@魔法少女リリカルなのは 闇の王女】
【状況】健康
【装備】ブリッツキャリバー(待機状態)@魔法妖怪リリカル殺生丸
【道具】オリーブ抜きのピザ(11/12サイズ)@魔法少女リリカルなのはStylish、支給品一式
【思考】
基本:高町なのはを捜索、抹殺する
1.プレシアの抹殺
2.ルーテシアの保護
3.ひとまずC.C.と行動を共にする
4.C.C.という通称……イニシャルか何かか?
5.なのはと戦うことになれば、ギア・エクセリオンの発動も辞さない
【備考】
・なのはとルーテシアが『健全な』歴史(StS)から来たのを知りません。
・C.C.との協力関係は、ギブアンドテイクという暗黙の了解の上に成り立っています。
・ブリッツキャリバーは、十話での殺生丸戦後からの出典です。
原作とは異なり、ファイナルリミッターが解除され、ギア・エクセリオンが使用可能となっています。
・ギア・エクセリオンがゼストにかける負担の程度は、未だ明らかになっていません。
ゼスト自身は、自分のデバイスのフルドライブ同様、自身の命を削る可能性もあると推測しています。
C.C.と名乗った少女は、少々の困惑を己が内に秘めていた。
先ほど彼女がゼストの額に触れた時――あの時C.C.は、ピザの対価として彼に「ギアス」を提供しようとしたのだ。
ギアス。
それは一言で言うならば王の力。能力者の特性に合わせた、超常的な威力を発揮する力。
たとえば、彼女が契約したルルーシュ・ランペルージが、相手にあらゆる命令を実行させる絶対遵守の力を持つように。
たとえば、かつて彼女と共にあったマオという名の男が、心の声を聞き取ることのできる読心の力を持っていたように。
しかし、その能力を与えようとしたC.C.には、一切の手ごたえが返ってこなかったのだ。
人間の脳へのアクセスを可能とする――そんな彼女の力が、今は使えなくなっている。
ギアスを人に与えることができない。対象にショックイメージを見せるなどの精神干渉もできない。
加えて言うならば、「Cの世界」との交信手段も閉ざされている。
「魔女」と謳われたC.C.の能力が、残らずその効力を失っていたのだ。
ということは、あるいは不死身なまでの再生能力も制限されているのだろうか。
そもそも考えてみれば、この殺し合いのゲームの中で、死なない人間がいるというのも不公平な話だった。
(ようやく、死ねるということかな)
ふと、そんなことを思う。
数百年に渡る長い期間、延々と生き続け、そして死に続けたこの身体。
ここならば、そんな虚しい連鎖からも解き放たれ、人並みに死ねるのだろうか。
(……いや、今はまだ)
首を振り、その思考を払いのける。
今はまだ、死ぬことは許されない。ルルーシュとの契約がある。いつまでもずっと傍にいる、と。
かつてならそれでよかったかもしれないが、今は自分1人の都合で、勝手に死ぬことが許される身体ではないのだ。
C.C.は顔を上げ、けろりとした様子で歩き出す。
(さて……ピザの対価は、どうやって払おうか?)
高町なのはは闇の王女である。
ルルーシュは黒き魔王である。
片や、自らの全てを奪った狂気の科学者に。
片や、母の命と妹の自由を奪った実の父に。
いずれも暗き心を漆黒の鎧で武装し、全てを巻き込み復讐を誓った王だった。
白き魔女は魔王と添い遂げるために。
死人騎士は王女に引導を渡すために。
共に並び、2人はそれぞれの王を追い求める。
【C.C.@コードギアス 反目のスバル】
【状況】健康
【装備】スティンガー×10@魔法少女リリカルなのはStrikerS
【道具】支給品一式、ランダム支給品0~2個(確認済み)
【思考】
基本:ルルーシュたちと合流する
1.ひとまずゼストに身を守ってもらう
2.向かってくる者は基本的には殺す
3.ピザの対価を払う方法を考える
【備考】
・スバルが『StS』から来たのを知りません。
・ゼストとの協力関係は、ギブアンドテイクという暗黙の了解の上に成り立っています。
・「ギアス提供」「精神干渉」「Cの世界との交信」が不可能となっていることに気付きました。
・再生能力も制限されている可能性があると考えました。
|Back:[[家族(後編)]]|時系列順で読む|Next:[[不思議な出会いⅡ]]|
|Back:[[家族(後編)]]|投下順で読む|Next:[[不思議な出会いⅡ]]|
|Back:[[武人と魔女]]|ゼスト・グランガイツ|Next:[[大食漢走る 巨人の鼓動]]|
|Back:[[武人と魔女]]|C.C.|Next:[[大食漢走る 巨人の鼓動]]|
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*ギブアンドテイクの契約 ◆9L.gxDzakI
――何故、こんな物が都合よく自分の持ち物の中にあったのだろう。
虫の音すらならぬ静寂の暗闇の中、石畳に軽く腰掛けたゼストは、微かに呆れたような表情でため息をついていた。
少し離れた場所では、同様に1人の少女が座っている。
エメラルドのごとき緑髪は、この宵闇の暗さの中でも、負けずに優美な輝きを放っていた。
まるで絹の糸のように、冷たい風にゆらゆらと揺れている。
人形のように綺麗な黄金の瞳は、手にしたもの――赤色やら黄色やらの乗った断片を見つめていた。
白く細い指が、それを口の中へと運び、ゆっくりと入れる。黄色いもの――熱々にとろけたチーズが微かに糸を引いた。
そう。彼女が食べているものは、
「なかなか用意がいいじゃないか」
ピザだ。
だれがどう見ようと、紛れもなくピザだった。トマトソースやチーズの乗ったそれは、いわゆるマルゲリータ・ピザ。
「オリーブだけが綺麗さっぱりなくなっているのが、また妙な話だがな」
言いながら、少女はまた手にしたピザの一切れに噛り付く。
もう気が付いているだろう。彼女が食べているこのイタリア料理は、横に座っているゼストの持ち物だったものだ。
数分前に彼女らは、この淡い月光が照らす神社の中で出会った。
空腹で、おまけに三度の普通の飯より三度のピザを好むような偏食家の少女は、出会い頭にピザを要求する。
この状況で、しかも武器を構えていた正体不明の男にそんなことをよく頼めるものだとは思うが、生憎と彼女は普通の人間ではない。
彼女は落ち着いていた。そう、それこそ、図太いと言われるような領域に達するほどに、性根が座っていたのだ。
とはいえ、急にそんなことを頼まれたゼストはたまったものではなかった。
何でそんな物をわざわざ要求したのかは理解できなかったし、こんな所にピザがあるはずもない。
そして腹が減っているのなら、何か適当なおにぎりでも1つ渡してやろうと思って、
デイバックに手を突っ込んだ矢先に――自分の持ち物の中に、あまりに都合のよすぎる代物を発見し、今に至ったのだ。
「……まぁ、今はこれくらいでいいだろう」
12分の1にカットされた一片をたいらげると、少女はピザの箱を閉じる。
そしてあつかましくも、自分のデイバックの中にそれを突っ込もうとして、
「おい」
ゼストに止められた。
「不満か?」
「当たり前だ」
不機嫌そうにゼストが呟く。
何故こんなものが自分に支給されていたのかは分からないが、一応そのピザ一枚分、彼は他の人間よりも食料面で優位に立っていたのだ。
そのピザを他人に奪われては、たまったものではない。
「まぁいい」
そちらもそちらで不機嫌そうに頬を膨らませながら、少女は自分とゼストの間にピザの箱を置いた。
微妙に奥行きの広かった石畳の段は、幅広なピザもどうにかこうにか支えられている。
「私も、色々と聞きたいことがあるからな」
少女はゼストに本題を切り出した。
元々危険を冒してまで彼に接触したのには、それなりの理由がある。
ピザだけを欲してるのなら、不意打ちで殺して持ち物をあさってしまえばよかったのだから。
彼女が欲しているのは、情報。
戦場――ことさらこうしたサバイバルゲームの中では、フィールドに隠れた敵の情報が物を言う。
たとえば、得意とする戦闘スタイル。たとえば、使われると苦手な戦法。
このデスゲームの中で生き残るには、1人でも多くの情報を知っておくに越したことはなかった。
「この場にいる参加者の中で、お前が知っているのは誰だ?」
故に、その情報を得るために、少女は問いかける。
そしてゼストもまた、彼女に対して、同様の念を抱いていた。
戦う人間の情報は何としても欲しい。ここで答えておけば、ギブアンドテイクということで相手から聞き出すこともできるだろう。
何より、自分は相手に対して恩を売っている。マルゲリータピザ12分の1の恩を。
(それに、元より情報を知られて困る仲間など……この場にはいないからな)
故に、ゼストは要求に応じた。
再びデイバックに手を入れ、そこから支給された名簿を取り出す。
ごつい指先でその上をなぞりながら、ゼストは己が知りうる参加者の名前を少女に伝えた。
まず、高町なのは。名簿の中でも1番最初に目に留まった、許されざる復讐鬼の名前。
続いて、管理局の魔導師達。フェイト、はやて、シグナム、ヴィータ、シャマル、ザフィーラ、ギンガ、クロノ、etc……
これらの人間とは直接刃を交えたことはないので、スカリエッティから与えられた情報のみを伝えることになるだろう。
そして、そのスカリエッティが従える戦闘機人達。クアットロ、チンク、ディエチ、そして――スバル。
その名前を聞いた時に、少女は微かにその瞳を見開いた。
「スバル・ナカジマなら、私も知っているぞ」
知り合いがかぶったのだ。
この名前の人間ならば、彼女も知っている。直接姿を見たことだってある。人ならざる身体を持った、蒼髪の少女だ。
「知っているのか?」
ゼストの声音に、微かな警戒の色が宿る。
その金の瞳――スカリエッティと、一部の戦闘機人に見られる共通の特徴だ――に、彼は漠然とある予想を立てていた。
根拠はない。同じ色の目をしていたからといって、あのスカリエッティに関与しているのでは、というのは因縁もいいところだ。
しかし、その不確かな推測は、僅かにその色を濃厚にする。
この少女はスバルを知っている。スカリエッティの13番目の配下を――亡き部下から取りあげた娘を知っている。
ということは、彼女はまた、同時にあの狂気の科学者とも繋がりを持っていてもおかしくない。
そう判断していたのだが、
「ああ。少し前から、ルルーシュの学校に転校してきた」
この言葉には目を丸くするしかなかった。
「………………………、なんだって?」
一拍の間の後、ゼストはそれこそ思いっきり呆けたような表情をして、何とかそれだけを問いかける。
学校、とは一体どういうことだ。あの少女は、スカリエッティの戦闘員として戦っているのではないのか。
それが何故、そんな血生臭い戦いとは一切無縁の健全な学び舎に通う必要があるのだろう。
いやそもそも、そんな話は聞かされていない。大体、つい最近までナンバーズの中に混ざっているのを見ている。
そんな少女が急に学校などと、にわかには信じられるわけがなかった。
「何かおかしなことを言ったか?」
少女は怪訝そうにして、ゼストの顔を覗き込んでいる。
この様子からして、嘘はついていない。それは間違いないし、大体この嘘は明らかにつくメリットがない。
ならば少なくとも彼女の中では、スバル・ナカジマは健全な女子学生ということになっているのだろう。
これ以上追求しても頭がこんがらがりそうだったので、そこで考えるのを打ち切った。
「……まぁ、いい。それで……そのルルーシュというのが、お前の知っている人間なんだな?」
名簿に視線を落としながら、ゼストは少女に問いかける。
そこには間違いなく、そのファーストネームを持った参加者が明記されていた。ルルーシュ・ランペルージという名前だ。
「ああ。一応、『共犯者』といったところかな? 私にとっては大事な男さ」
口元に余裕を持った笑みを浮かべながら、彼女は言った。
共犯者、という独特な言い回しに、ゼストはその太い眉をひそめる。
要するに、この少女は犯罪者ということなのだろうか。もしもスカリエッティに関わっていたのならば、その線も有り得る。
だが、その「といったところ」という微妙なニュアンスは一体何なのだ。
共犯者とはただの言葉遊びで、本当は犯罪者ではないのかもしれない。つくづく、度し難い娘だとゼストは思う。
「契約したからな……私はルルーシュには、何としても生きていてもらわねばならない」
そんな内心などお構いなしに、少女は言葉を続けていく。
「まぁ逆に言えば、それ以外は生きようと死のうと、極論私が殺すことになろうと、知ったことではないということだがな」
微かな笑みを、その上等な人形のような綺麗な顔に貼り付けながら。
苦虫を噛み潰したような表情を、ゼストは我知らず浮かべていた。
嫌な娘だ。未だ若いというのに、殺すという言葉をこんなに平然と言い放っている。
「救いようのない奴だな」
嫌悪感を隠そうともせずに、ゼストが呟いた。
「それもよく言われることさ」
少女はそれでも、余裕な表情を崩すことはなかった。
同じ金色の瞳で笑うスカリエッティともまた違う、何か。底抜けの闇のように深い何かを、ゼストは感じ取っていた。
「それで? お前の今後の行動方針はどうなんだ?」
そして彼女は、今度はゼストに問いかける。
ここまでのギブアンドテイクというスタンスからすれば、当然の流れだった。
この緑髪の少女だけが、特定の情報をオープンにするのもフェアではない。当然彼女にも知る権利はあるはずだ。
「先ほど教えた高町なのは……俺は、今までずっと奴を追ってきた」
故に、ゼストもまたその目的を口にする。
「殺すために」
それだけは譲れない、彼の生きる目的だ。たとえこのような異常にさらされても、である。
彼が知る高町なのはは、さながら聖人君子のように謳われたエース・オブ・エースではない。
かつての栄光と安寧から叩き落とされ、身体と心を蝕まれ、悪鬼と成り果てた復讐者だ。
自身を改造したジェイル・スカリエッティに報いるためならば、あらゆる犠牲も厭わぬ狂人。
復讐を追い求める限り、その存在そのものが人々を脅かすことになる阿修羅。
そんな化け物を退治すること。
本来生きることなど許されるはずもない身体を、それでも突き動かさんとする、自らが己に課した使命。
「それだけか?」
ゼストの言葉を、少女は淡々とした口ぶりで聞き返す。
「後はプレシアの打倒と、可能ならば、ルーテシア・アルピーノという少女の保護……今浮かぶのはそれだけだ」
彼の脳裏に浮かぶのは、2人の女性の姿だ。
1人はこのゲームの首謀者――プレシア・テスタロッサ。
己の欲望に他者を巻き込み、蹂躙するという点では、この死んだはずの犯罪者もなのはと同罪だった。
故に、同じ罰を下す。自らの手によって再び死を与える。
そして、もう1人はメガーヌ・アルピーノ――ルーテシアの母たる女性だった。
生前首都防衛隊の一翼を担っていた自分の部下だ。娘に受け継がれたアスクレピオスを操る召喚魔導師だ。
そして、ゼストが愛した女性でもあった。
闇の王女に寄り添うルーテシアは、父親こそ知らないが、大切な女を母とする、言わば忘れ形見だった。
右手は高町なのはとプレシア・テスタロッサを殺すために。
左手に携えた力でルーテシア・アルピーノを救う。
相反する2つの目的を、しかしゼストは、己の身一つで成し遂げようとしていた。
「……では、私の行動をとやかく言われることもなさそうだな」
全てを聞き遂げた少女が呟く。
「ついてくるとでも言うのか?」
「か弱い女の子に、戦いなどできるはずもないだろう。それに私の武器は、どうやら私の手には余るようなんでな……」
言いながら、少女はエメラルドの糸を揺らしながら、デイバックをごそごそと漁った。
やがて、そこから何かが取り出される。
暗闇の中に眩く映える、白銀のフォルムを有したそれは――
「ブリッツキャリバー、だったか」
ゼストにも見覚えのある、インテリジェントデバイスの姿だった。
少女が抱える雷神の具足は、待機状態を解かれたデバイスモードとなっている。
もう1人の部下クイント・ナカジマの娘にして、もう1人のタイプゼロ――ギンガ・ナカジマが用いる、鋼鉄の装具。
なるほど確かに、これをこの少女が使いこなせるはずはない。デバイスはあくまで魔導師の武器だ。
「その様子からして、お前にはこれが使えるようだな」
「そしてお前は、このナイフを欲しているというわけか」
「分かりきったことだろう?」
少女はまたも妖しげな笑みを浮かべる。
全てが万事、ギブアンドテイクで一貫していた。互いに同じ種類の情報を提供し、互いの欲する武器を交換し合う。
それが暗黙の了解のもとに成り立った、一種の「契約」。
鋭い投擲ナイフは、男の手から少女のもとへ。
白銀のデバイスは、少女の手から男のもとへ。
契約はここになされた。
ゼストは受け取ったブリッツキャリバーに、そのスペックを提示させる。
同じ近代ベルカ式デバイスとはいえ、彼の有した槍とは大きく異なる業物だ。
カートリッジシステムが搭載されていないのもそうだが、普段使い慣れた物との相違点は探せば膨大に見つかることだろう。
故に、その情報を得ておかねばならなかった。これが彼の生命線なのだから。
(デバイスのファイナルリミッターが、解除されている……?)
そして、スペックノートをせわしなく読み上げていた瞳が、ある一点でピタリと止まった。
(ギア・エクセリオン……A.C.Sだと?)
表示された結果に対する驚きは、少女がスバルの身の上を語った時にも匹敵する。
こんな機能がブリッツキャリバーに搭載されているという報告は、今までに聞いたことがなかった。
Accelerate Charge System――瞬間突撃システム。その通称をA.C.Sと言う。
その名の通り、魔導師の瞬間的な加速力を、爆発的に増大させるシステムの名称だ。
かつてあのなのはが、白きエースとして名声を上げていた時から用いていたと言えば、その性能もかくやといったところだろう。
しかし、このシステムには危険も大きい。
レイジングハートがこれを併用するエクセリオンモードは、膨大な量の魔力を一気に消耗する諸刃の剣だった。
実装された闇の書事件が解決した後には、その身体負担もなくなるよう改良されたと聞くが、
果たして自身のデバイスのフルドライブさえ持て余す、不安定な人造魔導師の身体を持ったゼストが、同じように耐えられるかどうか。
(だが……もし、あの復讐人と相まみえることがあれば)
しかし、ゼストは落ち着いた様子で軽く瞳を閉じる。
(使うだろうな)
彼は躊躇いもなく使うだろう。
己の命が果てることを微塵も怖れることなく、雷神の具足の禁断の力を解放するだろう。
ゼスト・グランガイツは――自身の命さえも、使命のためには投げうることも辞さなかった。
ブリッツキャリバーを待機状態にし、首にかけると、石畳から立ち上がろうとする。
「ちょっと待て」
そしてそれを少女が制した。
「何だ」
「まだピザの対価を払っていなかったからな」
言いながら、少女はその手の細指を伸ばす。
雪のように真っ白な指先が、すっとゼストの厳つい顔の額へ向かい、そっと触れた。
しばし、世界の時は止まる。
夜風の音色さえもこの時ばかりは押し黙り、虫の声など聞こえるはずもなく、完全なる沈黙が宵闇を満たした。
一拍の間。その後に、しかし少女は困ったような表情を浮かべ、すぐにその指を離す。
「何だったんだ?」
特に身体に変わった様子は見受けられない。ならば目の前の少女は一体何をした。
ゼストが怪訝そうな表情を浮かべて問いかけた。
「いや……忘れろ」
一方の少女は、そんな素っ気無い言葉で応じた。
これ以上聞いても無駄だと判断すると、ゼストはその腰を上げ、神社の石畳を降りていく。
後にはその美麗な髪を揺らして、白装束を纏った少女がついて歩いていった。
そこで、ふと気が付いたゼストは、彼女の方へと振り返る。
「それで、結局お前のことは何と呼べばいいんだ?」
そして問いかけた。
名前を忘れ、思い出しても語るつもりがないのならばそれでもいい。しかし、仮の呼び方ぐらいは決めておいてもいいだろう。
でなければ、共に行動するのには何かと不便だ。
それに、ゼストは名乗ったというのにそんな風では、これまでのギブアンドテイクの法則にも反している。
少女はしばし沈黙した後、立ち止まった彼を追い抜くようにして歩いていくと、
「……名簿いわく、C.C.だとさ」
と、これまた素っ気無く返した。
【1日目 深夜】
【現在地A-4 神社境内】
【ゼスト・グランガイツ@魔法少女リリカルなのは 闇の王女】
【状況】健康
【装備】ブリッツキャリバー(待機状態)@魔法妖怪リリカル殺生丸
【道具】オリーブ抜きのピザ(11/12サイズ)@魔法少女リリカルなのはStylish、支給品一式
【思考】
基本:高町なのはを捜索、抹殺する
1.プレシアの抹殺
2.ルーテシアの保護
3.ひとまずC.C.と行動を共にする
4.C.C.という通称……イニシャルか何かか?
5.なのはと戦うことになれば、ギア・エクセリオンの発動も辞さない
【備考】
・なのはとルーテシアが『健全な』歴史(StS)から来たのを知りません。
・C.C.との協力関係は、ギブアンドテイクという暗黙の了解の上に成り立っています。
・ブリッツキャリバーは、十話での殺生丸戦後からの出典です。
原作とは異なり、ファイナルリミッターが解除され、ギア・エクセリオンが使用可能となっています。
・ギア・エクセリオンがゼストにかける負担の程度は、未だ明らかになっていません。
ゼスト自身は、自分のデバイスのフルドライブ同様、自身の命を削る可能性もあると推測しています。
C.C.と名乗った少女は、少々の困惑を己が内に秘めていた。
先ほど彼女がゼストの額に触れた時――あの時C.C.は、ピザの対価として彼に「ギアス」を提供しようとしたのだ。
ギアス。
それは一言で言うならば王の力。能力者の特性に合わせた、超常的な威力を発揮する力。
たとえば、彼女が契約したルルーシュ・ランペルージが、相手にあらゆる命令を実行させる絶対遵守の力を持つように。
たとえば、かつて彼女と共にあったマオという名の男が、心の声を聞き取ることのできる読心の力を持っていたように。
しかし、その能力を与えようとしたC.C.には、一切の手ごたえが返ってこなかったのだ。
人間の脳へのアクセスを可能とする――そんな彼女の力が、今は使えなくなっている。
ギアスを人に与えることができない。対象にショックイメージを見せるなどの精神干渉もできない。
加えて言うならば、「Cの世界」との交信手段も閉ざされている。
「魔女」と謳われたC.C.の能力が、残らずその効力を失っていたのだ。
ということは、あるいは不死身なまでの再生能力も制限されているのだろうか。
そもそも考えてみれば、この殺し合いのゲームの中で、死なない人間がいるというのも不公平な話だった。
(ようやく、死ねるということかな)
ふと、そんなことを思う。
数百年に渡る長い期間、延々と生き続け、そして死に続けたこの身体。
ここならば、そんな虚しい連鎖からも解き放たれ、人並みに死ねるのだろうか。
(……いや、今はまだ)
首を振り、その思考を払いのける。
今はまだ、死ぬことは許されない。ルルーシュとの契約がある。いつまでもずっと傍にいる、と。
かつてならそれでよかったかもしれないが、今は自分1人の都合で、勝手に死ぬことが許される身体ではないのだ。
C.C.は顔を上げ、けろりとした様子で歩き出す。
(さて……ピザの対価は、どうやって払おうか?)
高町なのはは闇の王女である。
ルルーシュは黒き魔王である。
片や、自らの全てを奪った狂気の科学者に。
片や、母の命と妹の自由を奪った実の父に。
いずれも暗き心を漆黒の鎧で武装し、全てを巻き込み復讐を誓った王だった。
白き魔女は魔王と添い遂げるために。
死人騎士は王女に引導を渡すために。
共に並び、2人はそれぞれの王を追い求める。
【C.C.@コードギアス 反目のスバル】
【状況】健康
【装備】スティンガー×10@魔法少女リリカルなのはStrikerS
【道具】支給品一式、ランダム支給品0~2個(確認済み)
【思考】
基本:ルルーシュたちと合流する
1.ひとまずゼストに身を守ってもらう
2.向かってくる者は基本的には殺す
3.ピザの対価を払う方法を考える
【備考】
・スバルが『StS』から来たのを知りません。
・ゼストとの協力関係は、ギブアンドテイクという暗黙の了解の上に成り立っています。
・「ギアス提供」「精神干渉」「Cの世界との交信」が不可能となっていることに気付きました。
・再生能力も制限されている可能性があると考えました。
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