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「Fate/cross dawn」(2009/01/07 (水) 15:42:11) の最新版変更点
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*Fate/cross dawn ◆RsQVcxRr96
閑散とした市街地の一角。
そこにいかにも極々普通のアパートが建っている。
100人が見たら100人がアパートだと言う事になるぐらい普通のアパートだ。
しかしそのアパートの外見は普通だが、アパートとしては決して普通ではなかった。
人の気配がほとんどしないのだ。
それはアパートの付近にも同じ事が言える。
時期が時期なら肝試しの場所として活用できそうな程に人気がないが、別に寂れているという訳ではない。
ただ単に人がいないだけ。
それだけがこのアパートに異常という一面を与えている。
でも、そんなアパートの一室に腰を落ち着けている者もいる。
「……なるほど。じゃあフェイトは、その時空管理局って所で働いているんだ。私より年下なのに凄いね」
「そ、そんな! 私なんて、まだまだで……」
一人は若くして難関のデュエルアカデミアの編入試験を突破したデュエリスト、早乙女レイ。
もう一人は若くしてAAAランクの実力を持つ魔導師、フェイト・T・ハラオウン。
二人の出会いはこのアパートの前だった。
最初フェイトを発見した時にレイはどう対応するべきか悩んだ。
自分から見たら過去の時代から来たであろう『目の前のフェイト』は酷く怯えているようだった。
確かに魔法が使える事で戦力にはなるが、それでも『自分の知っているフェイト』が戦うだけのゾンビである以上どうするべきか悩んだ。
結局、とりあえずレイはフェイトと話をするという結論に至った。
未来がどうであれ今目の前にいるフェイトは明らかに殺し合いに乗っているようには見えないし、事実フェイト本人も殺し合いを否定している。
第一に、自分が知っているフェイトもゾンビになる前は頼りになる優しい人であったはずだ。
その事を加味してみても目の前にいるフェイトは、とりあえずは信用に足りる人物であるという結論に達したのだった。
今のフェイトなら話をする価値は十分にあるはずだ。
だが話をする前に、まずはフェイトを落ち着かせる事が先決だった。
あのような怯えた状態では進む話も進まない。
そこでレイはフェイトと連れ立ってアパートの一室へと入ったのだった。
落ち着かせるにはまずはその人に話をさせるのがいい。
そんな事をレイはどこかで聞いた事があったような気がしたので、とりあえずフェイトに自分の事を話すように勧めてみた。
最初は戸惑ったように話していたフェイトだったが、徐々に落ち着きを取り戻してきたのか最後の方は年に似合わず冷静な様相を見せていた。
もちろんフェイトが今話した事の大半は以前にも聞いた事だったが、それは黙っていた。
今フェイトにその事を話したら確実に混乱するのが目に見えていたからだ。
でも、これで目の前のフェイトが自分の知っているフェイトの過去の姿である可能性が高まった。
時空管理局の説明や交友関係など、どれも自分の知っているフェイトの状況とほぼ一緒だった。
(それにしても、死んだと思っていた母親に殺し合いをしろって言われるなんて……そりゃあ、あの状態になるのも無理はないか)
レイはフェイトの家庭環境を聞くのは今回が初めてだった。
以前はそこまで話す必要のない状況だったが、今回は違う。
フェイトは巻き込んでしまった責任を感じて、自分の事は包み隠さず正直に全部話したのだった。
レイの知り合いのフェイトは厳密にはこの場所にいるフェイトとは違うのだが、それを分かっているのはレイだけだった。
「私はプレシア母さんを止めたい……だけど、今の私にはそんな力無くて……」
「でも魔法が使えるんじゃ?」
「それが……デバイスがないから簡単な魔法しか使えないんだ。
それに魔力を制限する結界でも張っているらしくて、いつもより魔力運用の効率も落ちているから」
全部は理解しきれなかったが、どうやらここはフェイトたち魔導師にとって魔法が使いにくい場所という事はレイにも分かった。
つまりは反抗されても大丈夫なようにするための対策なのだろうか。
もしやある程度の力を持つ参加者は何らかの制限を掛けられているのだろうか。
そんな事を考えつつ、レイはフェイトに疑問の声を投げかけた。
「そういえばフェイトは何が配られたの? もしかしてデバイスが――」
「う、ごめん。デバイスは無かったんだ。それに私の支給品は外れみたいで……全部カードだったよ」
そう言ってフェイトがデイパックから取り出したのは種類の違う3枚のカードだった。
確かに殺し合いをしろと言っておきながら3枚のカードを渡すだけとは、プレシアがフェイトをどう思っているかどことなく伝わってくる。
だが意外だったのは、その3枚の中に見覚えのあるカードがあった事だった。
「なんでこれが?」
「レイ、知っているの?」
「あ……ぅん、まあ」
1枚目は『フリーズベント』というカード。
名前と絵柄からゲームでは相手を凍らせるカードという事ぐらいしか推測のしようがなかった。
2枚目は『風化戦士』、3枚目は『光の護封剣』というカード。
これがレイにとって既知のカードだった。
なんと言ってもレイはこのデュエルモンスターズカードを扱う学院に通っているのだから。
しかも最近行われたプロアマ混合のジェネックス大会では準優勝という成績を収め、最年少にして飛び級でデュエルアカデミアに入学を許可された程の実力の持ち主であった。
だが、そんな実績もこのような殺し合いの場では役に立つはずないと内心気落ちしてもいた。
見事に3枚ともカードばかり。
専用のゲームならそれなりに使えたのかもしれないが、ここでは役に立ちそうにない。
つくづく自分に拳銃が支給されて良かったとレイは思った。
「あのさ、もう一度聞くんだけど……」
「ん? なに、レイ?」
フェイトの事はだいたい分かった。
正直自分より魔法が使える分、生き残れる確率は高いだろう。
いくらそれが制限されているからといっても、そのアドバンテージはそう簡単には覆らない。
だからこそもう一度確かめておきたかった。
「フェイト、殺し合いはしないんだよね?」
この問いをするのは2度目。
1度目は即答で否定された。
そして今度は――
「うん。私はみんな一緒に帰りたい」
やはり先程の同じ答えだった。
だがそんな事は予想がついていた。
本当に聞きたいのは、今からする二つ目の問いだ。
「それはつまり……誰も殺さないって事?」
「うん。できる限り私は誰も殺したくないな」
「それが、たとえ……殺し合いをする者でも、フェイトはそいつを殺さないの?」
「そうだよ」
――やっぱり。
レイには何となく分かっていた。
話している感じ、不殺を宣言する時の表情、そして雰囲気。
このフェイトと知り合って間もないが、フェイトが殺し合いを肯定する人には到底思えなかった。
そして、それは自分と周り全てに向いている。
誰も殺し合いなどせずに力を合わせてここから脱出する。
フェイトが望んでいる事はそれだろう。
でも、そんなものはただの夢でしかない。
プレシアは殺し合いをさせるために自分達をここに集めた。
それはつまり集められた中に殺し合いをする人が必ずいるという事だ。
全員とは思わないが、それでもかなりいるだろう。
そうでなかったら殺し合いなど起きるはずもない。
そしてそれはその数だけ遊城十代に危害を加える人がいると言う事だ。
だからこそ――
「……じゃあ、フェイトとはここでお別れね」
「な、なんで!」
フェイトと一緒にいてはいけない。
レイの目的は殺し合いに乗った人を一人でも多く殺す事。
それが十代様を救う事に繋がるとレイは信じている。
十代は優しすぎる。
それは人によっては甘さにも見えるかもしれないが、だけどそこが十代のいい所でもある。
だからレイは決心した。
十代様の優しさに付け込む悪は自分が消し去ると。
その手に持つSIG P220で殺すと。
「私には大切な人がいる。その人は優しくて、優しすぎるから……きっと殺し合いを止めるために今もどこかで頑張っていると思う。
でも、それじゃあ殺し合いに乗った人に会ったら死んでしまう。
だから私が十代様のために、殺し合いに乗った人を殺すの!」
「そ、そんな……ダメだよ、レイ。そんな事しちゃ――」
「じゃあ、十代様に死ねっていうの!!」
「――ッ」
フェイトは優しい。
十代と同じで優しい心を持っている。
だから自分が誰かを殺すと言ったら止めるだろうという事は予想が付いた。
だからこその別離。
一緒にいたら自分の願いは果たされない。
「……どうしても行くの」
「ええ」
しばらくの沈黙の後、フェイトが声をかけた。
それに対する自分の答えは決まっているものだった。
レイはフェイトの顔を正面から見据えた。
出会った時とは見違えるように気が張り詰めている。
たぶん今自分が何をするべきか判断したのだろう。
だからと言って素直に止められる気はレイには微塵もなかった。
「フェイト、通してくれないの」
「レイの言う事も分かるよ。私にも大切な人がいるから――でも違う!
私の大切な人は私が誰かを傷つける事を望まない。それはレイの大切な人も一緒のはずだ!」
「それでも、それでも私は十代様がいなくなる事の方が嫌ァ!
だから私は十代様を守るために殺し合いに乗った人を殺すの!」
レイは覚悟を決めていた。
なにがなんでも遊城十代だけは守ると。
その意志を貫くために手に持ったままのカードをフェイトに向けて翳した。
「風化戦士、召喚! フェイトにダイレクトアタック!」
それが意味する事を知っているレイは悠然と構え、それが意味する事を知らないフェイトは不測の事態に備えて身構える。
そしてカードの効果が発動される。
二人の顔に驚愕の表情が浮かぶのは同時だった。
「う、ウソ!?」
「これって……」
二人が驚くのも無理はなかった。
レイがカードを翳したと同時に、カードの絵柄そのままの岩石に身を包んだモンスターが突如出現したのだから。
フェイトが驚いたのは突如風化戦士が出現したからだ。
何の前兆もなくこのようなものが召喚されるなど全く予想していなかった。
レイには魔力は感じられなかったから、尚更目の前の出来事に気を取られてしまった。
フェイトの思考に空隙が生じるのも無理はなかった。
レイが驚いたのも突如風化戦士が出現したからだ。
しかしレイの驚きはフェイトの驚きとは違うものだった。
レイがモンスターの実体化を見たのはこれが初めてではない。
デュエルアカデミアが飛ばされた砂漠の異世界。
そこではデュエルディスクを通してモンスターが実体を持つ事が可能だった。
だがそれはあくまでもあの特殊な異世界での話。
まさかここでも同じような事が起きるとはレイには予想もつかなかった。
レイは単にフェイトに対する牽制としてカードを使っただけだった。
詳細を知らないフェイトなら用心している間にこの場から離れられると考えたが、予想以上の事が起きたためにレイの思考にも空隙が生じる事となる。
「ガァ――ッ!!」
風化戦士は無情にも与えられた命令通り、その堅固な岩石の腕をフェイトに向けて放った。
一瞬の空隙から思考を戻したフェイトの目の前には既に風化戦士の拳が迫って来ており、その衝撃のまま背後の壁に叩きつけられた。
壁には穴が開き、部屋の中には埃が濛々と立ち込める結果となった。
「え、フェイト?」
レイはこの時になってようやく事態を理解し始めた。
だがこの時既にフェイトは風化戦士の攻撃を受け、未だに立ちあがる気配は微塵もなかった。
風化戦士は役目を終えたためか、主を置いたまま光となって消えていった。
この場に立っているのは事態をようやく理解できたばかりのレイだけだった。
レイは呆然としていた。
フェイトを殺すつもりなど全くなかった。
ただ少し注意を逸らして、その間に逃げるつもりだった。
殺し合いに乗っている者ならともかく、フェイトはその逆、殺し合いを止めようとしていた。
初めての人殺し。
なんだか実感が湧かなかった。
直接手を下していないという事もあるだろう。
なんだろう。
デュエルの勝ち負けとは比べ物ならない程の――
「――ぇ!?」
考え込んでいた頭に不意に音が飛び込んできた。
その音に導かれるままに視線を音の方――壁に向けると、一人の少女が立っていた。
「……フェイト」
それは紛れもなくフェイト・T・ハラオウンだった。
完全に無事という訳ではなさそうだが、それでも生きている事が分かってレイはほっとした。
まだ少しふらついているが、概ね大丈夫そうな感じだった。
そしてレイはフェイトの手の中にあるものに気付いた。
それは自分に支給されていた物だった。
(なるほど、あれのおかげで助かったのか)
なにはともあれ殺すべきでない人を殺していない事が分かって安心する。
ならばここに長居は無用だ。
フェイトの意識がはっきりしないうちに逃げるのが得策だ。
「フェイト、私はやるよ。十代様を失いたくないから」
その言葉を残してレイはフェイトを横目に見つつ床に放置されているデイパック2つを持って、部屋から外へ出た。
背後からフェイトの呼び止める声が聞こえるが、そのようなものに足を止める訳にはいかない。
是が非でもここでフェイトの追跡を絶たないと今度の行動に支障が出る。
そんな事を考えながら走っていたせいだろう。
進行方向に誰かいる事にレイは全く気が付いていなかった。
「キャ!」
「あ、大丈夫ですか」
そこにいたのは運(さだめ)に翻弄される皆の無事を切(せつ)に願う少女だった。
▼ ▼ ▼
「――止めなきゃッ」
フェイト・T・ハラオウンは傷ついた身体で部屋を出た。
あの時――モンスターが攻撃してきた瞬間――フェイトは咄嗟に足元にあったデイパックに手を入れて何か盾になるような物がないか探った。
僅かな時間では碌に探る事も出来なかったが、その結果あるものを引き当てる事ができた。
それをデバイスだった。
正式名称はオーバーフラッグ、近代ベルカ式のデバイスだ。
見慣れた形態のものとはいえ、触れれば魔力の通り具合でそれと分かった。
そして間一髪で起動して防御魔法の構築に成功した。
即興とはいえデバイスを介しての防御魔法は風化戦士の直撃を防ぐのには十分だった。
だがそれでも直撃を防ぐのがギリギリで壁に叩きつけられた際の怪我は防ぎようがなかった。
「止めないと……今なら、まだ間に合うはずだ」
それでもフェイトはレイを止めるという一心で彼女を追いかける。
なぜ自分がこうまでレイにこだわるのか、その理由は分かっていた。
レイは似ているのだ。
はやてのために闇の書の完成を目指した守護騎士達。
そしてプレシアのために、プレシア母さんの役に立ちたい一心でジュエルシードを集めていた自分に。
かけがえのない大切な人のために何もかもを投げ打って目的を為そうとしている姿勢が。
フェイトはその姿をよく知っていた。
だからこそレイを止めたいと強く思った。
彼女をそんな辛い道に進ませないために。
「レイ、待っていて。今――!!」
そんなフェイトの足が急に止まった。
薄暗い空の下に伸びるコンクリートで舗装された道路。
その上に一人の白い戦闘服のようなものを着た人が立っていたのだ。
しかもその手には狙撃銃が構えられていて、狙いは間違いなくフェイトに向けられていた。
「急いでいるんです! 退いてくれませんか!」
「それはできません。君を通したら、さっきの女の子を追いかけるつもりなんですよね」
「ええ、私はレイを――」
「なら通せません。なんの力もない人を無闇に襲うような人を通す訳にはいきません!」
「え!?」
フェイトは話を聞くうちに愕然とした。
その話が本当ならレイは自分の事を殺し合いに乗った者だと目の前の戦闘服の人に説明した事になる。
こうしている間にもレイは自分の手の届かない所へ行っている――今を逃せば取り返しのつかない事になるのでは。
その想いからフェイトは手っ取り早く敵意がない事を証明するべく唯一の持ち物だったオーバーフラッグを相手の方に投げて寄こした。
「私は時空管理局嘱託魔導師フェイト・T・ハラオウン。殺し合いに乗る気はありません。
さっきの子、レイとは少し行き違いが「フェイトさん!?」え、はい?」
事情を説明しようとした矢先に上げられた言葉。
それはどうも自分の名前を聞いての事らしい。
そういえば今になって思えばレイも自分の事を知っているような節があったような気がする。
何か自分の知らない重大な事がある。
そんな事を思いつつ、フェイトはまずは相手の名前を尋ねる事にした。
名前を聞いて呼び合う事は大切な事だと、なのはから教わったから。
「えっと、あなたの名前は?」
「新庄、さ……運切です」
「あ、あの運切さ――」
「ごめん。呼び方、名字で呼んでくれるかな?」
「あ、はい。新庄さん」
それが運命を名に冠する子と、運命から命を切った名を持つ子が交差した瞬間だった。
▼ ▼ ▼
新庄がフェイトを連れてレイが隠れるといった場所に着いた時はもうレイの姿はどこにもなかった。
早乙女レイ、それが自分に助けを求めてきた少女の名前だった。
道端で出会った時は事情も聞けぬまま殺し合いに乗った人が追いかけて来ると言うから、足止めを買って出てここに隠れているように言ったのだ。
だがフェイトの話を聞くに自分は騙されていたらしく、案の定レイの姿はどこにもなかった。
フェイト曰く、遊城十代の説得なら何とかなるかもしれないとの話だった。
今はフェイトが最初にいたアパートに足を運んで治療を兼ねて休憩している。
フェイトの左腕には目立った傷があったが、幸いそれほど深くはなく部屋に置いてあったシーツを包帯代わりにした。
そんなフェイトもたび重なる状況に疲れているようなので、少し横になるように言ってそうさせている。
もう少ししたら起こす手筈になっている。
(フェイト・T・ハラオウン……君はいったい……)
新庄にはフェイト・T・ハラオウンという同僚がいる。
だがそれは目の前にいるフェイトがずっと成長したような姿だ。
まるで自分の知るフェイトが小さくなったような感じだった。
そうは言っても自分とフェイトの付き合いは浅く、軽々しく結論は出せない。
この件はしばらく保留にするという事で落ち着けた。
(それにしても僕の名前……不吉だな……)
新庄・運切――『運命という字から、命を切った』名前。
そしてフェイトは『運命』という意味を持つ名前。
果たしてこれは何かの暗示だろうかと新庄は取り留めもない不安に駆られるのだった。
新庄は知らない。
自身の名前の中にあるもう一つの可能性に。
新庄・運切――『命を縛る運(さだめ)を切り、自由にする』ための名前。
【一日目 黎明】
【現在地 G-4 アパートの一室】
【フェイト・T・ハラオウン@魔法少女リリカルなのはA's】
【状態】健康、不安、戸惑い、魔力消費(中)、左腕に軽い切傷(治療済み、包帯代わりにシーツが巻かれている)、睡眠中
【装備】オーバーフラッグ@魔法妖怪リリカル殺生丸
【道具】なし
【思考】
基本:なのは達との合流。
1:しばらく休んだのち、レイを探し出して話したい。
2:遊城十代を探してレイを止めるように頼む。
3:殺し合いを止める。
4:プレシアともう一度話したい……けど
【備考】
※魔法少女リリカルなのはA'sサウンドステージ3以降の参戦です。
※もう一人のフェイトを、自分と同じアリシアのクローン体だと思っています。
※なのはとはやても一人はクローンなのではと思っています。
【新庄・運切@なのは×終わクロ】
【状況】健康、女性体
【装備】ストームレイダー(15/15)@魔法少女リリカルなのはStrikerS
【道具】支給品一式、ランダム支給品(0~2、武器なし)
【思考】
基本:出来るだけ多くの人と共にこの殺し合いから生還する。
1.フェイトが十分に動けるようになったら、機動六課隊舎の704式ヘリ確保を目指す。
2.早乙女レイが心配。
3.弱者、及び殺し合いを望まない参加者と合流する。
4.殺し合いに乗った参加者は極力足止め、相手次第では気付かれないようにスルー。
5.自分の体質については、問題が生じない範囲で極力隠す。
【備考】
※参戦時期は、第7章で佐山と別れた後です。
※特異体質により、「朝~夕方は男性体」「夜~早朝は女性体」となります。
※スマートブレイン本社ビルを中心して、半径2マス分の立地をおおまかに把握しました。
※ストームレイダーの弾丸は全て魔力弾です。非殺傷設定の解除も可能です。
▼ ▼ ▼
早乙女レイは走っていた。
向かう先は自分が通っている学院、デュエルアカデミアだ。
先の一件でレイはある仮説が浮かんだ。
それは『この世界では異世界のようにカードが実体化する』というものであった。
そうでなければあの時の事は説明できない。
しかもここはデュエルディスクなしでカードの効果が発動できるらしい。
ただし使用したらカードが消滅する仕組みになっているらしかった。
でも、それでもこれはかなり好都合だ。
今自分の手持ちにはカードが何枚かある。
見た事もないカードもあるが、おそらくこれも何らかの役に立つはずだ。
そしてこの場で最も多くのカードが存在する可能性がある場所――それがデュエルアカデミアだ。
最初にいたアパートにも日用品はそのままだったので、アカデミアにもカードが置いてある可能性は十分にあると思えたのだ。
カードが手に入りさえすれば、自分の戦力と戦略は飛躍的に高まる。
拳銃ではどこまでできるか不安だったが、カードの扱いなら自分の力が十分に生かせるはずだ。
――十代様を守る。
その一心でレイはただ走る。
自分の力になってくれるものがあると信じて。
だがレイは知らない。
今自分が走っている道の後方をまさしく遊城十代が横切っていた事に。
運命は無情にも当人の知らない所で交差する。
【1日目 黎明】
【現在地 G-6 大通り上】
【早乙女レイ@リリカル遊戯王GX】
【状態】健康
【装備】SIG P220(9/9)@リリカル・パニック
【道具】支給品一式×2、『フリーズベント』@リリカル龍騎、『光の護封剣』@リリカル遊戯王GX、ランダム支給品0~1
【思考】
基本:十代を守る。
1:デュエルアカデミアに向かう。
2:殺し合いに乗っている者を殺害する。
3:フェイト(StS)、エリオ、万丈目を強く警戒。
【備考】
※リリカル遊戯王GX10話から参戦です。
※フェイト(A's)が過去から来たフェイトだと思っています。
※フェイト(StS)、エリオ、万丈目がデュエルゾンビになっていると思っています。
※ここではカードはデュエルディスクなしで効果が発動すると知りました。
|Back:[[GUNMAN×CHAPEL×BLADE]]|時系列順で読む|Next:[[されど嘘吐きは救済を望む(前編)]]|
|Back:[[Shooting Bullet(後編)]]|投下順で読む|Next:[[それでも台風は微笑う。そして奔る]]|
|Back:[[少女、その想い]]|早乙女レイ|Next:[[Subaru's Adventures in Parallel world]]|
|Back:[[少女、その想い]]|フェイト・T・ハラオウン(A's)|Next:[[]]|
|Back:[[空への翼]]|新庄・運切|Next:[[]]|
*Fate/cross dawn ◆RsQVcxRr96
閑散とした市街地の一角。
そこにいかにも極々普通のアパートが建っている。
100人が見たら100人がアパートだと言う事になるぐらい普通のアパートだ。
しかしそのアパートの外見は普通だが、アパートとしては決して普通ではなかった。
人の気配がほとんどしないのだ。
それはアパートの付近にも同じ事が言える。
時期が時期なら肝試しの場所として活用できそうな程に人気がないが、別に寂れているという訳ではない。
ただ単に人がいないだけ。
それだけがこのアパートに異常という一面を与えている。
でも、そんなアパートの一室に腰を落ち着けている者もいる。
「……なるほど。じゃあフェイトは、その時空管理局って所で働いているんだ。私より年下なのに凄いね」
「そ、そんな! 私なんて、まだまだで……」
一人は若くして難関のデュエルアカデミアの編入試験を突破したデュエリスト、早乙女レイ。
もう一人は若くしてAAAランクの実力を持つ魔導師、フェイト・T・ハラオウン。
二人の出会いはこのアパートの前だった。
最初フェイトを発見した時にレイはどう対応するべきか悩んだ。
自分から見たら過去の時代から来たであろう『目の前のフェイト』は酷く怯えているようだった。
確かに魔法が使える事で戦力にはなるが、それでも『自分の知っているフェイト』が戦うだけのゾンビである以上どうするべきか悩んだ。
結局、とりあえずレイはフェイトと話をするという結論に至った。
未来がどうであれ今目の前にいるフェイトは明らかに殺し合いに乗っているようには見えないし、事実フェイト本人も殺し合いを否定している。
第一に、自分が知っているフェイトもゾンビになる前は頼りになる優しい人であったはずだ。
その事を加味してみても目の前にいるフェイトは、とりあえずは信用に足りる人物であるという結論に達したのだった。
今のフェイトなら話をする価値は十分にあるはずだ。
だが話をする前に、まずはフェイトを落ち着かせる事が先決だった。
あのような怯えた状態では進む話も進まない。
そこでレイはフェイトと連れ立ってアパートの一室へと入ったのだった。
落ち着かせるにはまずはその人に話をさせるのがいい。
そんな事をレイはどこかで聞いた事があったような気がしたので、とりあえずフェイトに自分の事を話すように勧めてみた。
最初は戸惑ったように話していたフェイトだったが、徐々に落ち着きを取り戻してきたのか最後の方は年に似合わず冷静な様相を見せていた。
もちろんフェイトが今話した事の大半は以前にも聞いた事だったが、それは黙っていた。
今フェイトにその事を話したら確実に混乱するのが目に見えていたからだ。
でも、これで目の前のフェイトが自分の知っているフェイトの過去の姿である可能性が高まった。
時空管理局の説明や交友関係など、どれも自分の知っているフェイトの状況とほぼ一緒だった。
(それにしても、死んだと思っていた母親に殺し合いをしろって言われるなんて……そりゃあ、あの状態になるのも無理はないか)
レイはフェイトの家庭環境を聞くのは今回が初めてだった。
以前はそこまで話す必要のない状況だったが、今回は違う。
フェイトは巻き込んでしまった責任を感じて、自分の事は包み隠さず正直に全部話したのだった。
レイの知り合いのフェイトは厳密にはこの場所にいるフェイトとは違うのだが、それを分かっているのはレイだけだった。
「私はプレシア母さんを止めたい……だけど、今の私にはそんな力無くて……」
「でも魔法が使えるんじゃ?」
「それが……デバイスがないから簡単な魔法しか使えないんだ。
それに魔力を制限する結界でも張っているらしくて、いつもより魔力運用の効率も落ちているから」
全部は理解しきれなかったが、どうやらここはフェイトたち魔導師にとって魔法が使いにくい場所という事はレイにも分かった。
つまりは反抗されても大丈夫なようにするための対策なのだろうか。
もしやある程度の力を持つ参加者は何らかの制限を掛けられているのだろうか。
そんな事を考えつつ、レイはフェイトに疑問の声を投げかけた。
「そういえばフェイトは何が配られたの? もしかしてデバイスが――」
「う、ごめん。デバイスは無かったんだ。それに私の支給品は外れみたいで……全部カードだったよ」
そう言ってフェイトがデイパックから取り出したのは種類の違う3枚のカードだった。
確かに殺し合いをしろと言っておきながら3枚のカードを渡すだけとは、プレシアがフェイトをどう思っているかどことなく伝わってくる。
だが意外だったのは、その3枚の中に見覚えのあるカードがあった事だった。
「なんでこれが?」
「レイ、知っているの?」
「あ……ぅん、まあ」
1枚目は『フリーズベント』というカード。
名前と絵柄からゲームでは相手を凍らせるカードという事ぐらいしか推測のしようがなかった。
2枚目は『風化戦士』、3枚目は『光の護封剣』というカード。
これがレイにとって既知のカードだった。
なんと言ってもレイはこのデュエルモンスターズカードを扱う学院に通っているのだから。
しかも最近行われたプロアマ混合のジェネックス大会では準優勝という成績を収め、最年少にして飛び級でデュエルアカデミアに入学を許可された程の実力の持ち主であった。
だが、そんな実績もこのような殺し合いの場では役に立つはずないと内心気落ちしてもいた。
見事に3枚ともカードばかり。
専用のゲームならそれなりに使えたのかもしれないが、ここでは役に立ちそうにない。
つくづく自分に拳銃が支給されて良かったとレイは思った。
「あのさ、もう一度聞くんだけど……」
「ん? なに、レイ?」
フェイトの事はだいたい分かった。
正直自分より魔法が使える分、生き残れる確率は高いだろう。
いくらそれが制限されているからといっても、そのアドバンテージはそう簡単には覆らない。
だからこそもう一度確かめておきたかった。
「フェイト、殺し合いはしないんだよね?」
この問いをするのは2度目。
1度目は即答で否定された。
そして今度は――
「うん。私はみんな一緒に帰りたい」
やはり先程の同じ答えだった。
だがそんな事は予想がついていた。
本当に聞きたいのは、今からする二つ目の問いだ。
「それはつまり……誰も殺さないって事?」
「うん。できる限り私は誰も殺したくないな」
「それが、たとえ……殺し合いをする者でも、フェイトはそいつを殺さないの?」
「そうだよ」
――やっぱり。
レイには何となく分かっていた。
話している感じ、不殺を宣言する時の表情、そして雰囲気。
このフェイトと知り合って間もないが、フェイトが殺し合いを肯定する人には到底思えなかった。
そして、それは自分と周り全てに向いている。
誰も殺し合いなどせずに力を合わせてここから脱出する。
フェイトが望んでいる事はそれだろう。
でも、そんなものはただの夢でしかない。
プレシアは殺し合いをさせるために自分達をここに集めた。
それはつまり集められた中に殺し合いをする人が必ずいるという事だ。
全員とは思わないが、それでもかなりいるだろう。
そうでなかったら殺し合いなど起きるはずもない。
そしてそれはその数だけ遊城十代に危害を加える人がいると言う事だ。
だからこそ――
「……じゃあ、フェイトとはここでお別れね」
「な、なんで!」
フェイトと一緒にいてはいけない。
レイの目的は殺し合いに乗った人を一人でも多く殺す事。
それが十代様を救う事に繋がるとレイは信じている。
十代は優しすぎる。
それは人によっては甘さにも見えるかもしれないが、だけどそこが十代のいい所でもある。
だからレイは決心した。
十代様の優しさに付け込む悪は自分が消し去ると。
その手に持つSIG P220で殺すと。
「私には大切な人がいる。その人は優しくて、優しすぎるから……きっと殺し合いを止めるために今もどこかで頑張っていると思う。
でも、それじゃあ殺し合いに乗った人に会ったら死んでしまう。
だから私が十代様のために、殺し合いに乗った人を殺すの!」
「そ、そんな……ダメだよ、レイ。そんな事しちゃ――」
「じゃあ、十代様に死ねっていうの!!」
「――ッ」
フェイトは優しい。
十代と同じで優しい心を持っている。
だから自分が誰かを殺すと言ったら止めるだろうという事は予想が付いた。
だからこその別離。
一緒にいたら自分の願いは果たされない。
「……どうしても行くの」
「ええ」
しばらくの沈黙の後、フェイトが声をかけた。
それに対する自分の答えは決まっているものだった。
レイはフェイトの顔を正面から見据えた。
出会った時とは見違えるように気が張り詰めている。
たぶん今自分が何をするべきか判断したのだろう。
だからと言って素直に止められる気はレイには微塵もなかった。
「フェイト、通してくれないの」
「レイの言う事も分かるよ。私にも大切な人がいるから――でも違う!
私の大切な人は私が誰かを傷つける事を望まない。それはレイの大切な人も一緒のはずだ!」
「それでも、それでも私は十代様がいなくなる事の方が嫌ァ!
だから私は十代様を守るために殺し合いに乗った人を殺すの!」
レイは覚悟を決めていた。
なにがなんでも遊城十代だけは守ると。
その意志を貫くために手に持ったままのカードをフェイトに向けて翳した。
「風化戦士、召喚! フェイトにダイレクトアタック!」
それが意味する事を知っているレイは悠然と構え、それが意味する事を知らないフェイトは不測の事態に備えて身構える。
そしてカードの効果が発動される。
二人の顔に驚愕の表情が浮かぶのは同時だった。
「う、ウソ!?」
「これって……」
二人が驚くのも無理はなかった。
レイがカードを翳したと同時に、カードの絵柄そのままの岩石に身を包んだモンスターが突如出現したのだから。
フェイトが驚いたのは突如風化戦士が出現したからだ。
何の前兆もなくこのようなものが召喚されるなど全く予想していなかった。
レイには魔力は感じられなかったから、尚更目の前の出来事に気を取られてしまった。
フェイトの思考に空隙が生じるのも無理はなかった。
レイが驚いたのも突如風化戦士が出現したからだ。
しかしレイの驚きはフェイトの驚きとは違うものだった。
レイがモンスターの実体化を見たのはこれが初めてではない。
デュエルアカデミアが飛ばされた砂漠の異世界。
そこではデュエルディスクを通してモンスターが実体を持つ事が可能だった。
だがそれはあくまでもあの特殊な異世界での話。
まさかここでも同じような事が起きるとはレイには予想もつかなかった。
レイは単にフェイトに対する牽制としてカードを使っただけだった。
詳細を知らないフェイトなら用心している間にこの場から離れられると考えたが、予想以上の事が起きたためにレイの思考にも空隙が生じる事となる。
「ガァ――ッ!!」
風化戦士は無情にも与えられた命令通り、その堅固な岩石の腕をフェイトに向けて放った。
一瞬の空隙から思考を戻したフェイトの目の前には既に風化戦士の拳が迫って来ており、その衝撃のまま背後の壁に叩きつけられた。
壁には穴が開き、部屋の中には埃が濛々と立ち込める結果となった。
「え、フェイト?」
レイはこの時になってようやく事態を理解し始めた。
だがこの時既にフェイトは風化戦士の攻撃を受け、未だに立ちあがる気配は微塵もなかった。
風化戦士は役目を終えたためか、主を置いたまま光となって消えていった。
この場に立っているのは事態をようやく理解できたばかりのレイだけだった。
レイは呆然としていた。
フェイトを殺すつもりなど全くなかった。
ただ少し注意を逸らして、その間に逃げるつもりだった。
殺し合いに乗っている者ならともかく、フェイトはその逆、殺し合いを止めようとしていた。
初めての人殺し。
なんだか実感が湧かなかった。
直接手を下していないという事もあるだろう。
なんだろう。
デュエルの勝ち負けとは比べ物ならない程の――
「――ぇ!?」
考え込んでいた頭に不意に音が飛び込んできた。
その音に導かれるままに視線を音の方――壁に向けると、一人の少女が立っていた。
「……フェイト」
それは紛れもなくフェイト・T・ハラオウンだった。
完全に無事という訳ではなさそうだが、それでも生きている事が分かってレイはほっとした。
まだ少しふらついているが、概ね大丈夫そうな感じだった。
そしてレイはフェイトの手の中にあるものに気付いた。
それは自分に支給されていた物だった。
(なるほど、あれのおかげで助かったのか)
なにはともあれ殺すべきでない人を殺していない事が分かって安心する。
ならばここに長居は無用だ。
フェイトの意識がはっきりしないうちに逃げるのが得策だ。
「フェイト、私はやるよ。十代様を失いたくないから」
その言葉を残してレイはフェイトを横目に見つつ床に放置されているデイパック2つを持って、部屋から外へ出た。
背後からフェイトの呼び止める声が聞こえるが、そのようなものに足を止める訳にはいかない。
是が非でもここでフェイトの追跡を絶たないと今度の行動に支障が出る。
そんな事を考えながら走っていたせいだろう。
進行方向に誰かいる事にレイは全く気が付いていなかった。
「キャ!」
「あ、大丈夫ですか」
そこにいたのは運(さだめ)に翻弄される皆の無事を切(せつ)に願う少女だった。
▼ ▼ ▼
「――止めなきゃッ」
フェイト・T・ハラオウンは傷ついた身体で部屋を出た。
あの時――モンスターが攻撃してきた瞬間――フェイトは咄嗟に足元にあったデイパックに手を入れて何か盾になるような物がないか探った。
僅かな時間では碌に探る事も出来なかったが、その結果あるものを引き当てる事ができた。
それをデバイスだった。
正式名称はオーバーフラッグ、近代ベルカ式のデバイスだ。
見慣れた形態のものとはいえ、触れれば魔力の通り具合でそれと分かった。
そして間一髪で起動して防御魔法の構築に成功した。
即興とはいえデバイスを介しての防御魔法は風化戦士の直撃を防ぐのには十分だった。
だがそれでも直撃を防ぐのがギリギリで壁に叩きつけられた際の怪我は防ぎようがなかった。
「止めないと……今なら、まだ間に合うはずだ」
それでもフェイトはレイを止めるという一心で彼女を追いかける。
なぜ自分がこうまでレイにこだわるのか、その理由は分かっていた。
レイは似ているのだ。
はやてのために闇の書の完成を目指した守護騎士達。
そしてプレシアのために、プレシア母さんの役に立ちたい一心でジュエルシードを集めていた自分に。
かけがえのない大切な人のために何もかもを投げ打って目的を為そうとしている姿勢が。
フェイトはその姿をよく知っていた。
だからこそレイを止めたいと強く思った。
彼女をそんな辛い道に進ませないために。
「レイ、待っていて。今――!!」
そんなフェイトの足が急に止まった。
薄暗い空の下に伸びるコンクリートで舗装された道路。
その上に一人の白い戦闘服のようなものを着た人が立っていたのだ。
しかもその手には狙撃銃が構えられていて、狙いは間違いなくフェイトに向けられていた。
「急いでいるんです! 退いてくれませんか!」
「それはできません。君を通したら、さっきの女の子を追いかけるつもりなんですよね」
「ええ、私はレイを――」
「なら通せません。なんの力もない人を無闇に襲うような人を通す訳にはいきません!」
「え!?」
フェイトは話を聞くうちに愕然とした。
その話が本当ならレイは自分の事を殺し合いに乗った者だと目の前の戦闘服の人に説明した事になる。
こうしている間にもレイは自分の手の届かない所へ行っている――今を逃せば取り返しのつかない事になるのでは。
その想いからフェイトは手っ取り早く敵意がない事を証明するべく唯一の持ち物だったオーバーフラッグを相手の方に投げて寄こした。
「私は時空管理局嘱託魔導師フェイト・T・ハラオウン。殺し合いに乗る気はありません。
さっきの子、レイとは少し行き違いが「フェイトさん!?」え、はい?」
事情を説明しようとした矢先に上げられた言葉。
それはどうも自分の名前を聞いての事らしい。
そういえば今になって思えばレイも自分の事を知っているような節があったような気がする。
何か自分の知らない重大な事がある。
そんな事を思いつつ、フェイトはまずは相手の名前を尋ねる事にした。
名前を聞いて呼び合う事は大切な事だと、なのはから教わったから。
「えっと、あなたの名前は?」
「新庄、さ……運切です」
「あ、あの運切さ――」
「ごめん。呼び方、名字で呼んでくれるかな?」
「あ、はい。新庄さん」
それが運命を名に冠する子と、運命から命を切った名を持つ子が交差した瞬間だった。
▼ ▼ ▼
新庄がフェイトを連れてレイが隠れるといった場所に着いた時はもうレイの姿はどこにもなかった。
早乙女レイ、それが自分に助けを求めてきた少女の名前だった。
道端で出会った時は事情も聞けぬまま殺し合いに乗った人が追いかけて来ると言うから、足止めを買って出てここに隠れているように言ったのだ。
だがフェイトの話を聞くに自分は騙されていたらしく、案の定レイの姿はどこにもなかった。
フェイト曰く、遊城十代の説得なら何とかなるかもしれないとの話だった。
今はフェイトが最初にいたアパートに足を運んで治療を兼ねて休憩している。
フェイトの左腕には目立った傷があったが、幸いそれほど深くはなく部屋に置いてあったシーツを包帯代わりにした。
そんなフェイトもたび重なる状況に疲れているようなので、少し横になるように言ってそうさせている。
もう少ししたら起こす手筈になっている。
(フェイト・T・ハラオウン……君はいったい……)
新庄にはフェイト・T・ハラオウンという同僚がいる。
だがそれは目の前にいるフェイトがずっと成長したような姿だ。
まるで自分の知るフェイトが小さくなったような感じだった。
そうは言っても自分とフェイトの付き合いは浅く、軽々しく結論は出せない。
この件はしばらく保留にするという事で落ち着けた。
(それにしても僕の名前……不吉だな……)
新庄・運切――『運命という字から、命を切った』名前。
そしてフェイトは『運命』という意味を持つ名前。
果たしてこれは何かの暗示だろうかと新庄は取り留めもない不安に駆られるのだった。
新庄は知らない。
自身の名前の中にあるもう一つの可能性に。
新庄・運切――『命を縛る運(さだめ)を切り、自由にする』ための名前。
【一日目 黎明】
【現在地 G-4 アパートの一室】
【フェイト・T・ハラオウン@魔法少女リリカルなのはA's】
【状態】健康、不安、戸惑い、魔力消費(中)、左腕に軽い切傷(治療済み、包帯代わりにシーツが巻かれている)、睡眠中
【装備】オーバーフラッグ@魔法妖怪リリカル殺生丸
【道具】なし
【思考】
基本:なのは達との合流。
1:しばらく休んだのち、レイを探し出して話したい。
2:遊城十代を探してレイを止めるように頼む。
3:殺し合いを止める。
4:プレシアともう一度話したい……けど
【備考】
※魔法少女リリカルなのはA'sサウンドステージ3以降の参戦です。
※もう一人のフェイトを、自分と同じアリシアのクローン体だと思っています。
※なのはとはやても一人はクローンなのではと思っています。
【新庄・運切@なのは×終わクロ】
【状況】健康、女性体
【装備】ストームレイダー(15/15)@魔法少女リリカルなのはStrikerS
【道具】支給品一式、ランダム支給品(0~2、武器なし)
【思考】
基本:出来るだけ多くの人と共にこの殺し合いから生還する。
1.フェイトが十分に動けるようになったら、機動六課隊舎の704式ヘリ確保を目指す。
2.早乙女レイが心配。
3.弱者、及び殺し合いを望まない参加者と合流する。
4.殺し合いに乗った参加者は極力足止め、相手次第では気付かれないようにスルー。
5.自分の体質については、問題が生じない範囲で極力隠す。
【備考】
※参戦時期は、第7章で佐山と別れた後です。
※特異体質により、「朝~夕方は男性体」「夜~早朝は女性体」となります。
※スマートブレイン本社ビルを中心して、半径2マス分の立地をおおまかに把握しました。
※ストームレイダーの弾丸は全て魔力弾です。非殺傷設定の解除も可能です。
▼ ▼ ▼
早乙女レイは走っていた。
向かう先は自分が通っている学院、デュエルアカデミアだ。
先の一件でレイはある仮説が浮かんだ。
それは『この世界では異世界のようにカードが実体化する』というものであった。
そうでなければあの時の事は説明できない。
しかもここはデュエルディスクなしでカードの効果が発動できるらしい。
ただし使用したらカードが消滅する仕組みになっているらしかった。
でも、それでもこれはかなり好都合だ。
今自分の手持ちにはカードが何枚かある。
見た事もないカードもあるが、おそらくこれも何らかの役に立つはずだ。
そしてこの場で最も多くのカードが存在する可能性がある場所――それがデュエルアカデミアだ。
最初にいたアパートにも日用品はそのままだったので、アカデミアにもカードが置いてある可能性は十分にあると思えたのだ。
カードが手に入りさえすれば、自分の戦力と戦略は飛躍的に高まる。
拳銃ではどこまでできるか不安だったが、カードの扱いなら自分の力が十分に生かせるはずだ。
――十代様を守る。
その一心でレイはただ走る。
自分の力になってくれるものがあると信じて。
だがレイは知らない。
今自分が走っている道の後方をまさしく遊城十代が横切っていた事に。
運命は無情にも当人の知らない所で交差する。
【1日目 黎明】
【現在地 G-6 大通り上】
【早乙女レイ@リリカル遊戯王GX】
【状態】健康
【装備】SIG P220(9/9)@リリカル・パニック
【道具】支給品一式×2、『フリーズベント』@リリカル龍騎、『光の護封剣』@リリカル遊戯王GX、ランダム支給品0~1
【思考】
基本:十代を守る。
1:デュエルアカデミアに向かう。
2:殺し合いに乗っている者を殺害する。
3:フェイト(StS)、エリオ、万丈目を強く警戒。
【備考】
※リリカル遊戯王GX10話から参戦です。
※フェイト(A's)が過去から来たフェイトだと思っています。
※フェイト(StS)、エリオ、万丈目がデュエルゾンビになっていると思っています。
※ここではカードはデュエルディスクなしで効果が発動すると知りました。
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