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「不屈の心、無双の龍」(2008/11/24 (月) 14:28:19) の最新版変更点
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*不屈の心、無双の龍 ◆9L.gxDzakI
――我が声に応えよ。
我こそは強靭にして無敵。あらゆる敵を打ち砕く最強の龍。
我が爪は剣となりて敵を裂き、我が牙は槍となりて敵を穿つ。
いかなる障壁であろうとも、我が剣呑なる刃の前では無力。全てがただ、悉く塵へと還るのみ。
我が息は灼熱。
全てを焼き尽くす真紅の炎。全てを熔かし尽くす必殺の炎熱。
堅牢なる鋼鉄であろうとも、ひとたび我が業火を浴びせれば、たちどころに昇華するであろう。
我こそは強靭。
我こそは無敵。
我こそは最強。
幾多の雑兵どもが立ちはだかろうと、我の行く手を阻むことは叶わぬ。
惰弱な攻めは我が鎧を通さず。脆弱な守りは我が力を防げず。
我の通りし道筋には、灰色の死体が列を成す。全てが等しく蹂躙され、ただただ屍と成り果てるのみ。
故に我は背負うのだ。
何物にも屈さぬ覇者の名を。
数多の屍で固めた名を。
“無双龍”の二つ名を。
天下無双。
その名を冠する者に敗北は許されぬ。
覇者は覇者でなければならぬのだ。何物にも勝る存在でなければならぬのだ。
故に、我は欲する。
あの者との戦いを。
我を退け、我が契約者を屠った男との戦いを。
我に敗北は許されぬ。ましてや、かようにか細き男になど。
退いては我の名が廃る。屈しては我が矜持が廃る。
我に応えよ。
我に力を授けよ。
我に贄を捧げよ。
さすれば我は立ち上がり、咆哮と共に再び牙をむくであろう。
常勝無敗のこの力、今こそあの者に教えてやる。
何ゆえ我が無双たるか、今こそあの者に知らしめてくれる。
我が声を聞け。
我が力となれ。
我をこの鏡の檻より解き放て。
仮面ライダーよ。
契約の戦士よ。
我は龍。
灼熱操りし赤き龍。
無双龍――ドラグレッダー。
//
◆
太陽が顔を出し始め、眩い陽光がゆっくりと差し込む。
早朝とはいえ、まだまだ生徒達が登校し、賑やかな声に溢れるには早いだろうか。大体そういった頃合の時間。
なのは達が学校へと辿り着いたのは、ちょうどその頃だった。
きっかけはほんの偶然だった。
たまたまそちらへと向けた視線に、常軌を逸した光景が飛び込んできた。
天空駆ける真紅の巨龍。
悪い予感を覚えぬはずがなかった。いかに殺し合いの舞台といえど、あの光景は異常だったから。
何ゆえあれほどの化け物がここにいるのか。
何ゆえあの化け物は地に落ちたのか。
そして、彼女が走る理由はそれだけではない。
何故か胸騒ぎを覚えるのだ。何故か言い知れぬ不安に駆られるのだ。
その龍のすぐ傍に、ほんの微かに見えた小さな人影のようなものへの。
たとえるならば、そこで大切な誰かの命が、今まさに失われんとしているような。
乱れた息を整えることもせず、校門をくぐって一直線。
全ての答えを知るために、なのはは龍の落下した校庭へ向かう。
「……何、これ」
そして、見た。
戦闘の結果を。
虐殺の現場を。
やがてなのはの背後に迫る、新たな足音が3つ。これまでに見つけた協力者。とはいえ、彼女がその存在に気付けたかどうか。
「何だこりゃあ……」
禿頭の巨漢――武蔵坊弁慶が、3人の中で真っ先に口を開いた。
4人の目の前にあるものは、3つ
頭を引きちぎられた黄色い恐竜。
胸を貫かれた赤い恐竜。
盛大にぶちまけられた鮮血の血溜まり。
「ひどいもんだな」
誰がどう見ても理解できる、分かりやすい戦闘跡を見て、金居が小さく呟いた。
2匹の小さな恐竜は、既にどちらも息絶えている。黄色い方からは確認できなかったが、赤い方にはあの首輪があった。
爆弾の埋め込まれた金属の首輪。すなわち、この殺し合いの参加者の証。
何故彼らのような人外までもが、このデスゲームに参加させられたのかは知らない。
それでも確かなことはある。
あの巨大か龍か、あの小さな人影。彼らはそのどちらかに殺されたであろうこと。
そのどちらもが、現在この場所に影も形も見えないということ。
そして血の池を作った、本来あるべき3つ目の死体もまた、忽然とその姿を消していたこと。
「い、一体誰が、これを――」
「――決まってる! 俺が見たあの銀色の鬼だ!」
ペンウッドの声に被せるようにして、弁慶が苛立った叫びを上げる。
黄色いパイロットスーツに包んだ巨漢を、どすどすと音を立てるようにして歩ませた。
そして、その足が止まる。その腕が伸びる。
筋骨隆々とした右腕が、頭蓋なき黄色い恐竜の身体をつまみ上げていた。
「俺はさっき目の前で、そいつにこの喋るこいつを横取りされたんだ!」
血みどろの爬虫類の身体を指差しながら、怒声を発する。
「横取り?」
微かに怪訝そうな表情を浮かべ、金居が尋ねた。
その言い回しは確かに気になる。
状況によっては、これまで味方だと思っていた相手が、実は殺し合いに乗っていた人間でした、という展開になりかねない。
「おう。初めはこいつのこと、ただのトカゲだと思ってたんだ。せっかくだから獲って食おうとしたら、その鬼に奪われたってわけよ」
言いながら、弁慶は視線を動かす。
そして、赤と黒の体色を持った、もう1匹の恐竜を見据えた。正確には、首輪の巻かれた首元を。
//
「だが、似たようなこの赤いのに首輪がついてる以上、実際はこいつも参加者だったのかもしれねぇ。
あんまり頭のよくない俺でも、それくらいは分かる。こいつも俺達のように、この下らねぇゲームに巻き込まれたのかも、ってな……」
反省する。
ろくに首輪を確認せず、ただ見た目が人間でなかったという理由だけで、恐竜の命を奪おうとしたことを。
それが自分達のように、人格を持った個人であるという可能性も考えもしなかった、己の軽率な判断を。
一歩間違えば、再び殺人鬼になっていたのかもしれない自分を。
「……だがよぉ……」
そして、それを上から塗り潰すものがある。
後悔を覆い隠すほどに、大きく煮えたぎる感情がある。
「だったらなおさら許せねぇ! この俺の目の届かねぇところで、あいつはこいつらを皆殺しにしたんだ!
俺が守れたかもしれねぇ命を、容赦なく踏みにじりやがったんだ!」
それは怒り。
胸の中で轟々と渦巻く、マグマのごとき灼熱の憤怒。
救えたはずの命を取りこぼしてしまった自分への。
そしてそれ以上に、その命を奪った銀色の鬼へと。
「あの野郎……絶対に許しちゃおけねぇ!」
膨れ上がった怒りは憎悪へと変わる。
烈火のごとき眼光を放った弁慶は、怒号と共になのは達へと向き直る。
あの銀色の鬼を追いかけるために。
犯した過ちの痛みを、そっくりそのまま返すために。
人でなしの鬼どもに、遠慮する理由などどこにもない。
「今すぐ行くぞ! まだ近くにいるかもしれねぇ……あの鬼は俺が――」
「――ちょ、ちょっと待ってくれないか?」
冷水を浴びせられた心地がした。
熱を孕んだかのような弁慶の怒声を、不意に遮る声があった。
自信なさげに震えながらも、怒れる破戒僧よりは、遥かに冷静な響きを持った声が。
「……んだよ、ペンウッドのじいさん?」
言葉を中断させられたことで、やや不機嫌そうな表情を浮かべた弁慶が問いかける。
今まさにその声を放った、おどおどと震える老人へと。
「そ、それじゃおかしいんじゃ、ないかな?」
「だから、何がだよ?」
「本当にその鬼がやったのなら、何でその場ですぐに殺さなかったんだ?」
ペンウッドの声に、傍観していたなのはがはっと目を見開く。
確かに怒れる弁慶の声を聞いていた時には、何の疑問も浮かぶことはなかった。
だが言われてみれば奇妙な話だ。鬼という怪物が彼の言うとおりの存在なら、何故最初に会った時点で殺していなかったのか。
目標を殺さずに連れ去るという知性を、何故発揮することができたのだろうか。
「そりゃあ、その……獲っておいて、後で食おうとしてたんじゃないか?」
指先でぽりぽりと頭をかきながら、弁慶が難しそうな顔で答える。
先ほどまでの激情はなりを潜め、今では教師に叱られた小さな子供のようだ。
「で、でも、それっておかしいじゃないか。鬼に知性がないなら、そんな回りくどいことはできないと思う、けど」
「そうなのか? そう言われりゃ、そんなような気も……」
「――おっさん、意外と使えるんだな」
2人のやりとりの間に、今度は金居が割って入った。
「俺も大体、同じように思っていた」
正直これまで、ただおどおどとしているだけの無能な親父とばかり思っていたペンウッドが、自分と同じ結論を割り出せた。
その事実に対して若干の感心を覚えながら、男は再び言葉を紡ぎ始める。
//
「そもそも弁慶の言っていた鬼だが……正直、お前と同じように、この恐竜が参加者だと気付かないとは思えない」
「そりゃ、どういうこった?」
「そいつはこの殺し合いの中に、人間以外の連中が混ざっている可能性に気付いている。自分自身がそうだからな。
だったら自分以外の非人間を見ても、『こんな奴が参加者のはずがない』と思うことはない。俺だってそうする」
実際、金居は2匹の恐竜を見た時点で、それが参加者であるということに気付いていた。
首輪のある赤い方はともかく、首輪のない黄色い方も、だ。
自分だって、人間とは異なるギラファアンデッドであり、すなわち人外の化け物である。
そしてここは、様々なパラレルワールドから参加者の集められた場所。
ならば他の世界から、そこに暮らしている化け物が呼び寄せられていてもなんら不思議ではない。
要するに、自分が元いた世界における、自分の立場と変わらないのだから。
「そしてその銀色の鬼……そもそも本当に鬼だったのか?」
「へ?」
金居の問いかけに対し、弁慶は間抜けな声と顔で返す。
「この黄色いトカゲや俺にしても、ペンウッドのいう吸血鬼にしても……この場に集められた人外は、皆一定以上の知性を持ち合わせている。
それこそ、少なくとも人間レベルのだ。……実際、トカゲは言葉を喋ったんだろ?」
「ん……あぁ」
弁慶がうなずく。
「なら、それで決まりだな」
トカゲの発する声を、人間の弁慶が言葉として認識した。人間が用いる言語レベルの言葉として。
つまりその黄色い恐竜は、人間と同程度の言語を用いる――すなわち、人間と同レベルの知性を持ち合わせている。
「それに、だ……そもそも人間の殺し合いに、人間以下の知性を持った連中を入れたら、プレシアから見ても面白くはならない。
つまり、人間以下の鬼は、まずこの殺し合いに混ざることはない。
となると、銀色の化け物は鬼ではなく、トカゲを食おうとしたわけでもなく――」
「トカゲさんを、弁慶さんから助けようと……した?」
「恐らく、正解」
間に入ったなのはの声を、金居が肯定した。
もしも銀色の化け物が恐竜を殺そうとするのなら、そのまま連れ去るメリットはどこにもない。
食うわけでもないのだし、持ち歩きには邪魔になる。抵抗を受ける可能性もある。
つまり、銀色の化け物の目的は真逆。恐竜を殺そうとしていた弁慶の魔の手から、彼を救い出そうとした。
「じゃあ、ここでトカゲどもをブッ殺した奴も……」
「その銀色じゃないな。もっとも、何でそいつがここにいないのかは分からないが」
「ふぅ……危なかった」
思わず、なのはが安堵の声を漏らす。
もしもこのまま金居の考えを聞かず――否、そもそもそれ以前に、ペンウッドが制止の声をかけていなければ、
自分達は取り返しのつかない事態を招いていたかもしれなかった。
銀色が鬼であると誤解し、そのまま殺してしまったかもしれなかったのだ。
根拠のない憶測で行動することの愚かしさを再確認し、今後にその反省を生かすべく、決意を固める。
「と、となると問題は……あのドラゴンがどこに消えたのか、だな」
「ああ。銀色がシロとなると、このトカゲ達を殺したのは龍である可能性が高い」
「だがよぅ、あの龍はいきなりこの校庭に落ちてたぞ。何かにやられちまったみたいに」
「もちろん、奴がここにいた第三の存在と戦っていたという可能性もある。それこそ、銀色が龍を迎撃したのかもしれない。
あるいは銀色は最初からここにはおらず、全く別の何者かが戦っていたのか。
……待てよ。それが有り得るのなら、むしろ龍はそいつらからトカゲを守ろうとした線も考えられるな。
まぁ、まずは消えた龍を見つけないことには……」
と、金居が視線を僅かに泳がせた、その時だった。
校庭に転がっていた、小さな直方体を。
金色の模様の刻み込まれた小さな箱を。
見覚えのあるアイテムを、視界の片隅に目撃したのは。
「……見つけたぞ」
そして、呟く。
驚愕と共に、一同が金居を注目。
彼の手は、デイパックからそれとよく似たものを――ペンウッドから奪い取ったきりになっていたものを、取り出していた。
//
「あれを見ろ」
塞がれた方とは別の手で、校庭に転がるものを指差す。
「あ!」
真っ先に反応したのはなのはだった。
それに向かって駆け寄ると、その箱を拾い上げる。
瞬間、彼女の感覚が捉えたものは。
響き渡る低い唸りは。
それによって促された視線の先で、校舎のガラスに映し出されていたのは。
「……あの子の時と、同じ……!」
ミラーモンスター・ドラグレッダーの姿がそこにあった。
蛇のような赤い巨体を、苦しげに横たえる龍の姿が。
思い返されるのは、ちょうど自分より1つ下程の、名前も知らないツインテールの少女だ。
彼女は今なのはが持っていたものと、同じようなケースを持っていた。
鏡に映る巨大な龍と、同じような化け物を呼び出していた。鏡のように像を映す血溜まりから。
「これでそいつの正体は分かった。さっきのコブラと同じ、支給品から呼び出されるモンスターだ」
なのはの背後から、金居の声が響く。
あの赤い巨龍は、柊かがみがそうしたように、カードデッキから召喚されたミラーモンスター。
何者かによって、何らかの理由によって呼び出され、何者かと戦った。
そして、負けた。かがみの呼び出した魔物・ベノスネーカーが、金居相手に後退を余儀なくされたように。
その瞬間を目撃していたペンウッドの理解は早かったが、弁慶は相変わらず首をかしげている。
無理もない。彼はこのチームでただ1人、モンスターと金居の戦いを目撃していないのだ。
それを悟った金居が、ため息混じりに自分のカードデッキ(を模したレプリカ)を握らせる。
唐突に姿を現した龍を見て、弁慶は「わっ」という声と共に跳び上がった。
「そいつを呼び出した側と、呼び出された側……どっちがこいつらを殺したのかは分からない。
ただ、こいつがあのコブラと同じなら、恐らくこいつを従えてた奴も既にやられてる。どの道、ここで誰かが誰かを殺したことに――」
「――ねぇ」
不意に、金居の声を、なのはが遮る。
その瞳は彼を見ていない。それどころか、ペンウッドや弁慶さえも。
ただ窓ガラスに映し出された、巨大な龍の姿を、じっと真っ向から見据えている。
「何というか……この子、すごく悔しそうな顔してる」
呟くなのはの顔は、沈痛な色に染まっていた。
もちろん、表情から何かが分かるわけではない。爬虫類の顔から感情など、そうそう読み取れるものではない。
だが、気配で分かる。
その身を横たえながらも、時折何かを訴えるようにくねらす様から。微かに、しかし何かを語るように吐き出される苦鳴から。
何よりも、じっとなのはの瞳を覗き込む、その黄金の眼差しから。
「負けたことが悔しい」
言いながら、なのはがその歩を進める。
1歩、また1歩。ドラグレッダーの姿を映す校舎に向かって、真っ直ぐに。
少しずつ、だが着実に。
真紅の無双龍が語る言葉を、その身に受け止めようと構えながら。
再び戦いたい。
自分を倒した奴と戦いたい。
「貴方を呼んだ人の……仇を取りたい。そう、言ってるんだよね」
この龍が、カードデッキを持った者の呼びかけに答える存在ならば。
龍が負けているならば、これを持っていた者もまた敗北したということだ。
なのはの手が、ガラスに触れていた。
なのはの目が、龍の目と鼻の先にあった。
青と金の瞳が、ゆっくりと向き合っていた。
//
「……この子も連れて行こう」
言いながら、なのはがゆっくりと振り返る。
「なっ……本気で、言ってるのか? その……危ないんじゃ、ないか?」
まず最初に口を開いたのはペンウッドの言葉だ。
かがみの呼び出した、ベノスネーカーとメタルゲラスの脅威は、未だ彼にとって記憶に新しい。
あの時は金居が、ギラファアンデッドに変身して退けてくれた。だが、そうそう何度も危険に晒されてはたまらない。
そもそもドラグレッダーの巨体は、それらよりも何倍も大きいのだ。視覚から感じられるプレッシャーは相当なものだった。
「大丈夫。この子なら、きっと大丈夫ですから」
それでもなのはは、確かな意志と共に言葉を紡ぐ。
根拠はない。それこそ先ほど危惧した憶測とも、何ら変わらないかもしれない。
だが、この巨大な龍の放つ何かが、なのはにそれを確信させる。
この龍は、自分達に牙をむくことはない。少なくとも、もっと大事な目的を果たすまでは、自分達に力を貸してくれる。
誇り高き無双龍の気配が、なのはに強い確信を抱かせる。
「……そうだな。そもそも俺達を食うつもりなら、なのはがそれを持った時点で、とっくに襲い掛かってきてる」
ツインテールの娘の例に倣うならば。
背後から金居がその言葉を放ったとき、それはすなわちなのはの意志の肯定を意味した。
「危ねぇ奴かもしれねぇが、手綱持ってりゃ戦力にはなるだろうしな」
「……ん……分かったよ、うん」
最後に弁慶が、同じく合意を示す。それで観念したのか、ペンウッドもまた、遂に彼女の意志を認めた。
「ありがとう」
笑顔と共に感謝すると、なのはは再び校舎を見上げる。
そこに並べられた窓ガラスへと。その境界からこちらを見つめる、大いなる赤き巨龍へと。
「一緒に行こう」
静かに、だが確かな覇気を込め。
「もう二度と……その人のような犠牲を出したりはしない!」
無双龍ドラグレッダーの唸りは、彼女には力強い頷きのように聞こえていた。
◆
新たにカードデッキを手にした高町なのはは、実は1つの誤解を抱えている。
このドラグレッダーにとっては、実際、契約者の死はどうでもいいことだった。
ただ自分を倒した者――アーカードとの再戦さえできれば、クロノ・ハラオウンのことはどうだっていいのだ。
そしてなのはは、ミラーモンスターにとってあまりにも無知だった。
カードデッキを鏡にかざすことで、仮面ライダーへと変身できること。
常に人を食わせ続けなければ、契約者を食らう諸刃の剣であること。
赤き龍の存在は、いつか彼女にとって呪縛になるかもしれない。
しかしなのはは、誇り高き管理局の魔導師である。
ドラグレッダーの誇りが本物ならば、なのはが正義にかけた誇りも本物だ。
であれば、なのははその力を、己が信ずる正義の下に振りかざす時が来るかもしれない。
無双龍を従える戦士――仮面ライダー龍騎は、そういう男だったのだから。
そして何より。
ドラグレッダーの無双の名が、最強の称号を指すのならば。
――仮面ライダーの名もまた、正義の味方の証なのだから。
//
【1日目 早朝】
【現在地 D-4 学校】
【高町なのは@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
【状態】健康、プレシアに対する怒り
【装備】グロック19(14/15+1発)@リリカル・パニック
【道具】カードデッキ(龍騎)@仮面ライダーリリカル龍騎
【思考】
基本:誰の命も欠かす事無く、出来るだけたくさんの仲間を集めて脱出する。
1.なんとしてもヴィヴィオを救出する。それは何よりも優先。
2.工場に向かい、首輪解除の手がかりを探す。
3.出来る限り全ての戦えない人を保護し、仲間を集める。
4.この龍(=ドラグレッダー)の契約者のような犠牲は絶対に出さない
5.さっきの子(柊かがみ)はどうするんだろう……?
6.アリサの思いと勇気は、絶対に無駄にはしない。
7.龍を倒した奴(=アーカード)を警戒
【備考】
※金居の事は多少警戒しています。
※エリオが死んだという話は信じていません。
※カードデッキの説明書を読んでいません。
カードデッキの特性について把握できている情報は、「契約モンスターを呼べる」ことくらいです。
【シェルビー・M・ペンウッド@NANOSING】
【状態】健康、若干の不安
【装備】なし
【道具】支給品一式、ランダム支給品(未確認1~2)、おにぎり×10
【思考】
基本:自らの仕事を果たす。
1.工場に向かい、首輪を解除する手がかりを探す。
2.この龍は本当に大丈夫なんだろうか?
3.アリサという少女の思いは無駄にしてはいけない。
4.龍を倒した奴(=アーカード)を警戒
【備考】
※少なくとも第四話以降の参戦です。
【金居@魔法少女リリカルなのはマスカレード】
【状態】健康
【装備】なし
【道具】支給品一式、カードデッキの複製(タイガ)@リリカル龍騎、砂糖1kg×10、ランダム支給品(未確認1~3)
【思考】
基本:首輪を解除し、このゲームから脱出する。
1.工場に向かい、首輪を解除する手がかりを探す。
2.利用できるものは全て利用する。邪魔をする者には容赦しない。
3.脱出の為ならば、人間と手を組むのも仕方がない。
4.ジョーカーは出来ればこの戦いの中で倒してしまいたい。
5.もしもラウズカード(スペードの10)か、時間停止に対抗出来る何らかの手段を手に入れた場合は容赦なくキングを殺す。
6.龍を倒した奴(=アーカード)を警戒
【備考】
※このデスゲームにおいてアンデッドの死亡=カードへの封印だと思っています。
※最終的な目的はアンデッド同士の戦いでの優勝なので、ジョーカーもキングも封印したいと思っています。
※どちらかと言えば悪者側よりも仮面ライダー側に味方した方が有利だと思っています。
【武蔵坊弁慶@ゲッターロボ昴】
【状態】健康、トカゲ達(=アグモンとギルモン)を殺した者に対する怒り
【装備】閻魔刀@魔法少女リリカルなのはStirkers May Cry
【道具】基本支給品一式、ランダム支給品0~2
【思考】
基本:殺し合いを止め、プレシアを打倒する(どうやって戦うかは考えていない)
1.スバル、ティアナと合流。
2.軍事基地か地上本部に行き、ネオゲッターロボの所在を確かめる。
3.龍を倒した奴(=アーカード)を警戒
【備考】
※5話終了後からの参戦です。
※自分とスバル、ティアナ、隼人の4人は、ネオゲッターロボごとここに送り込まれたのだと思い込んでいます。
また、隼人がどうして参加者の中に居ないのかという疑問を持っています。
隼人がこのゲームに関わっていない事を知りませんし、スバル・ティアナの来た世界が自分とは違う事も知りません。
※銀色の戦士(ミライ)が鬼ではないことに気付きました。
【チーム:少し、頭冷やそうか】
【共通思考】
基本:首輪を解体し、このゲームから脱出する。
1.工場に向かい、首輪解除の手がかりを探す。
2.戦えない者は保護していく。
【備考】
※それぞれが違う世界の出身であると気付きました。
※なのはの話から、プレシア・テスタロッサについて大体の情報を得ました。
※チーム内で、ある程度の共通見解が生まれました。
敵対的:アーカード、アレクサンド・アンデルセン、相川始、キング
友好的:機動六課組、インテグラ・ヘルシング、天道総司
要注意:クアットロ
また、アーカードについてはインテグラと合流出来れば従わせる事が可能だと判断しています。
※カードデッキの特性について把握できている情報は、「契約モンスターを呼べる」ことくらいです。
|Back:[[戦いの嵐、再びなん?]]|時系列順で読む|Next:[[ピカレスク]]|
|Back:[[闇とリングとデッキの決闘者]]|投下順で読む|Next:[[ピカレスク]]|
|Back:[[敵か味方か?]]|シェルビー・M・ペンウッド|Next:|
|Back:[[敵か味方か?]]|金居|Next:|
|Back:[[敵か味方か?]]|高町なのは(sts)|Next:|
|Back:[[敵か味方か?]]|武蔵坊弁慶|Next:|
*不屈の心、無双の龍 ◆9L.gxDzakI
――我が声に応えよ。
我こそは強靭にして無敵。あらゆる敵を打ち砕く最強の龍。
我が爪は剣となりて敵を裂き、我が牙は槍となりて敵を穿つ。
いかなる障壁であろうとも、我が剣呑なる刃の前では無力。全てがただ、悉く塵へと還るのみ。
我が息は灼熱。
全てを焼き尽くす真紅の炎。全てを熔かし尽くす必殺の炎熱。
堅牢なる鋼鉄であろうとも、ひとたび我が業火を浴びせれば、たちどころに昇華するであろう。
我こそは強靭。
我こそは無敵。
我こそは最強。
幾多の雑兵どもが立ちはだかろうと、我の行く手を阻むことは叶わぬ。
惰弱な攻めは我が鎧を通さず。脆弱な守りは我が力を防げず。
我の通りし道筋には、灰色の死体が列を成す。全てが等しく蹂躙され、ただただ屍と成り果てるのみ。
故に我は背負うのだ。
何物にも屈さぬ覇者の名を。
数多の屍で固めた名を。
“無双龍”の二つ名を。
天下無双。
その名を冠する者に敗北は許されぬ。
覇者は覇者でなければならぬのだ。何物にも勝る存在でなければならぬのだ。
故に、我は欲する。
あの者との戦いを。
我を退け、我が契約者を屠った男との戦いを。
我に敗北は許されぬ。ましてや、かようにか細き男になど。
退いては我の名が廃る。屈しては我が矜持が廃る。
我に応えよ。
我に力を授けよ。
我に贄を捧げよ。
さすれば我は立ち上がり、咆哮と共に再び牙をむくであろう。
常勝無敗のこの力、今こそあの者に教えてやる。
何ゆえ我が無双たるか、今こそあの者に知らしめてくれる。
我が声を聞け。
我が力となれ。
我をこの鏡の檻より解き放て。
仮面ライダーよ。
契約の戦士よ。
我は龍。
灼熱操りし赤き龍。
無双龍――ドラグレッダー。
//
◆
太陽が顔を出し始め、眩い陽光がゆっくりと差し込む。
早朝とはいえ、まだまだ生徒達が登校し、賑やかな声に溢れるには早いだろうか。大体そういった頃合の時間。
なのは達が学校へと辿り着いたのは、ちょうどその頃だった。
きっかけはほんの偶然だった。
たまたまそちらへと向けた視線に、常軌を逸した光景が飛び込んできた。
天空駆ける真紅の巨龍。
悪い予感を覚えぬはずがなかった。いかに殺し合いの舞台といえど、あの光景は異常だったから。
何ゆえあれほどの化け物がここにいるのか。
何ゆえあの化け物は地に落ちたのか。
そして、彼女が走る理由はそれだけではない。
何故か胸騒ぎを覚えるのだ。何故か言い知れぬ不安に駆られるのだ。
その龍のすぐ傍に、ほんの微かに見えた小さな人影のようなものへの。
たとえるならば、そこで大切な誰かの命が、今まさに失われんとしているような。
乱れた息を整えることもせず、校門をくぐって一直線。
全ての答えを知るために、なのはは龍の落下した校庭へ向かう。
「……何、これ」
そして、見た。
戦闘の結果を。
虐殺の現場を。
やがてなのはの背後に迫る、新たな足音が3つ。これまでに見つけた協力者。とはいえ、彼女がその存在に気付けたかどうか。
「何だこりゃあ……」
禿頭の巨漢――武蔵坊弁慶が、3人の中で真っ先に口を開いた。
4人の目の前にあるものは、3つ
頭を引きちぎられた黄色い恐竜。
胸を貫かれた赤い恐竜。
盛大にぶちまけられた鮮血の血溜まり。
「ひどいもんだな」
誰がどう見ても理解できる、分かりやすい戦闘跡を見て、金居が小さく呟いた。
2匹の小さな恐竜は、既にどちらも息絶えている。黄色い方からは確認できなかったが、赤い方にはあの首輪があった。
爆弾の埋め込まれた金属の首輪。すなわち、この殺し合いの参加者の証。
何故彼らのような人外までもが、このデスゲームに参加させられたのかは知らない。
それでも確かなことはある。
あの巨大か龍か、あの小さな人影。彼らはそのどちらかに殺されたであろうこと。
そのどちらもが、現在この場所に影も形も見えないということ。
そして血の池を作った、本来あるべき3つ目の死体もまた、忽然とその姿を消していたこと。
「い、一体誰が、これを――」
「――決まってる! 俺が見たあの銀色の鬼だ!」
ペンウッドの声に被せるようにして、弁慶が苛立った叫びを上げる。
黄色いパイロットスーツに包んだ巨漢を、どすどすと音を立てるようにして歩ませた。
そして、その足が止まる。その腕が伸びる。
筋骨隆々とした右腕が、頭蓋なき黄色い恐竜の身体をつまみ上げていた。
「俺はさっき目の前で、そいつにこの喋るこいつを横取りされたんだ!」
血みどろの爬虫類の身体を指差しながら、怒声を発する。
「横取り?」
微かに怪訝そうな表情を浮かべ、金居が尋ねた。
その言い回しは確かに気になる。
状況によっては、これまで味方だと思っていた相手が、実は殺し合いに乗っていた人間でした、という展開になりかねない。
「おう。初めはこいつのこと、ただのトカゲだと思ってたんだ。せっかくだから獲って食おうとしたら、その鬼に奪われたってわけよ」
言いながら、弁慶は視線を動かす。
そして、赤と黒の体色を持った、もう1匹の恐竜を見据えた。正確には、首輪の巻かれた首元を。
//
「だが、似たようなこの赤いのに首輪がついてる以上、実際はこいつも参加者だったのかもしれねぇ。
あんまり頭のよくない俺でも、それくらいは分かる。こいつも俺達のように、この下らねぇゲームに巻き込まれたのかも、ってな……」
反省する。
ろくに首輪を確認せず、ただ見た目が人間でなかったという理由だけで、恐竜の命を奪おうとしたことを。
それが自分達のように、人格を持った個人であるという可能性も考えもしなかった、己の軽率な判断を。
一歩間違えば、再び殺人鬼になっていたのかもしれない自分を。
「……だがよぉ……」
そして、それを上から塗り潰すものがある。
後悔を覆い隠すほどに、大きく煮えたぎる感情がある。
「だったらなおさら許せねぇ! この俺の目の届かねぇところで、あいつはこいつらを皆殺しにしたんだ!
俺が守れたかもしれねぇ命を、容赦なく踏みにじりやがったんだ!」
それは怒り。
胸の中で轟々と渦巻く、マグマのごとき灼熱の憤怒。
救えたはずの命を取りこぼしてしまった自分への。
そしてそれ以上に、その命を奪った銀色の鬼へと。
「あの野郎……絶対に許しちゃおけねぇ!」
膨れ上がった怒りは憎悪へと変わる。
烈火のごとき眼光を放った弁慶は、怒号と共になのは達へと向き直る。
あの銀色の鬼を追いかけるために。
犯した過ちの痛みを、そっくりそのまま返すために。
人でなしの鬼どもに、遠慮する理由などどこにもない。
「今すぐ行くぞ! まだ近くにいるかもしれねぇ……あの鬼は俺が――」
「――ちょ、ちょっと待ってくれないか?」
冷水を浴びせられた心地がした。
熱を孕んだかのような弁慶の怒声を、不意に遮る声があった。
自信なさげに震えながらも、怒れる破戒僧よりは、遥かに冷静な響きを持った声が。
「……んだよ、ペンウッドのじいさん?」
言葉を中断させられたことで、やや不機嫌そうな表情を浮かべた弁慶が問いかける。
今まさにその声を放った、おどおどと震える老人へと。
「そ、それじゃおかしいんじゃ、ないかな?」
「だから、何がだよ?」
「本当にその鬼がやったのなら、何でその場ですぐに殺さなかったんだ?」
ペンウッドの声に、傍観していたなのはがはっと目を見開く。
確かに怒れる弁慶の声を聞いていた時には、何の疑問も浮かぶことはなかった。
だが言われてみれば奇妙な話だ。鬼という怪物が彼の言うとおりの存在なら、何故最初に会った時点で殺していなかったのか。
目標を殺さずに連れ去るという知性を、何故発揮することができたのだろうか。
「そりゃあ、その……獲っておいて、後で食おうとしてたんじゃないか?」
指先でぽりぽりと頭をかきながら、弁慶が難しそうな顔で答える。
先ほどまでの激情はなりを潜め、今では教師に叱られた小さな子供のようだ。
「で、でも、それっておかしいじゃないか。鬼に知性がないなら、そんな回りくどいことはできないと思う、けど」
「そうなのか? そう言われりゃ、そんなような気も……」
「――おっさん、意外と使えるんだな」
2人のやりとりの間に、今度は金居が割って入った。
「俺も大体、同じように思っていた」
正直これまで、ただおどおどとしているだけの無能な親父とばかり思っていたペンウッドが、自分と同じ結論を割り出せた。
その事実に対して若干の感心を覚えながら、男は再び言葉を紡ぎ始める。
//
「そもそも弁慶の言っていた鬼だが……正直、お前と同じように、この恐竜が参加者だと気付かないとは思えない」
「そりゃ、どういうこった?」
「そいつはこの殺し合いの中に、人間以外の連中が混ざっている可能性に気付いている。自分自身がそうだからな。
だったら自分以外の非人間を見ても、『こんな奴が参加者のはずがない』と思うことはない。俺だってそうする」
実際、金居は2匹の恐竜を見た時点で、それが参加者であるということに気付いていた。
首輪のある赤い方はともかく、首輪のない黄色い方も、だ。
自分だって、人間とは異なるギラファアンデッドであり、すなわち人外の化け物である。
そしてここは、様々なパラレルワールドから参加者の集められた場所。
ならば他の世界から、そこに暮らしている化け物が呼び寄せられていてもなんら不思議ではない。
要するに、自分が元いた世界における、自分の立場と変わらないのだから。
「そしてその銀色の鬼……そもそも本当に鬼だったのか?」
「へ?」
金居の問いかけに対し、弁慶は間抜けな声と顔で返す。
「この黄色いトカゲや俺にしても、ペンウッドのいう吸血鬼にしても……この場に集められた人外は、皆一定以上の知性を持ち合わせている。
それこそ、少なくとも人間レベルのだ。……実際、トカゲは言葉を喋ったんだろ?」
「ん……あぁ」
弁慶がうなずく。
「なら、それで決まりだな」
トカゲの発する声を、人間の弁慶が言葉として認識した。人間が用いる言語レベルの言葉として。
つまりその黄色い恐竜は、人間と同程度の言語を用いる――すなわち、人間と同レベルの知性を持ち合わせている。
「それに、だ……そもそも人間の殺し合いに、人間以下の知性を持った連中を入れたら、プレシアから見ても面白くはならない。
つまり、人間以下の鬼は、まずこの殺し合いに混ざることはない。
となると、銀色の化け物は鬼ではなく、トカゲを食おうとしたわけでもなく――」
「トカゲさんを、弁慶さんから助けようと……した?」
「恐らく、正解」
間に入ったなのはの声を、金居が肯定した。
もしも銀色の化け物が恐竜を殺そうとするのなら、そのまま連れ去るメリットはどこにもない。
食うわけでもないのだし、持ち歩きには邪魔になる。抵抗を受ける可能性もある。
つまり、銀色の化け物の目的は真逆。恐竜を殺そうとしていた弁慶の魔の手から、彼を救い出そうとした。
「じゃあ、ここでトカゲどもをブッ殺した奴も……」
「その銀色じゃないな。もっとも、何でそいつがここにいないのかは分からないが」
「ふぅ……危なかった」
思わず、なのはが安堵の声を漏らす。
もしもこのまま金居の考えを聞かず――否、そもそもそれ以前に、ペンウッドが制止の声をかけていなければ、
自分達は取り返しのつかない事態を招いていたかもしれなかった。
銀色が鬼であると誤解し、そのまま殺してしまったかもしれなかったのだ。
根拠のない憶測で行動することの愚かしさを再確認し、今後にその反省を生かすべく、決意を固める。
「と、となると問題は……あのドラゴンがどこに消えたのか、だな」
「ああ。銀色がシロとなると、このトカゲ達を殺したのは龍である可能性が高い」
「だがよぅ、あの龍はいきなりこの校庭に落ちてたぞ。何かにやられちまったみたいに」
「もちろん、奴がここにいた第三の存在と戦っていたという可能性もある。それこそ、銀色が龍を迎撃したのかもしれない。
あるいは銀色は最初からここにはおらず、全く別の何者かが戦っていたのか。
……待てよ。それが有り得るのなら、むしろ龍はそいつらからトカゲを守ろうとした線も考えられるな。
まぁ、まずは消えた龍を見つけないことには……」
と、金居が視線を僅かに泳がせた、その時だった。
校庭に転がっていた、小さな直方体を。
金色の模様の刻み込まれた小さな箱を。
見覚えのあるアイテムを、視界の片隅に目撃したのは。
「……見つけたぞ」
そして、呟く。
驚愕と共に、一同が金居を注目。
彼の手は、デイパックからそれとよく似たものを――ペンウッドから奪い取ったきりになっていたものを、取り出していた。
//
「あれを見ろ」
塞がれた方とは別の手で、校庭に転がるものを指差す。
「あ!」
真っ先に反応したのはなのはだった。
それに向かって駆け寄ると、その箱を拾い上げる。
瞬間、彼女の感覚が捉えたものは。
響き渡る低い唸りは。
それによって促された視線の先で、校舎のガラスに映し出されていたのは。
「……あの子の時と、同じ……!」
ミラーモンスター・ドラグレッダーの姿がそこにあった。
蛇のような赤い巨体を、苦しげに横たえる龍の姿が。
思い返されるのは、ちょうど自分より1つ下程の、名前も知らないツインテールの少女だ。
彼女は今なのはが持っていたものと、同じようなケースを持っていた。
鏡に映る巨大な龍と、同じような化け物を呼び出していた。鏡のように像を映す血溜まりから。
「これでそいつの正体は分かった。さっきのコブラと同じ、支給品から呼び出されるモンスターだ」
なのはの背後から、金居の声が響く。
あの赤い巨龍は、柊かがみがそうしたように、カードデッキから召喚されたミラーモンスター。
何者かによって、何らかの理由によって呼び出され、何者かと戦った。
そして、負けた。かがみの呼び出した魔物・ベノスネーカーが、金居相手に後退を余儀なくされたように。
その瞬間を目撃していたペンウッドの理解は早かったが、弁慶は相変わらず首をかしげている。
無理もない。彼はこのチームでただ1人、モンスターと金居の戦いを目撃していないのだ。
それを悟った金居が、ため息混じりに自分のカードデッキ(を模したレプリカ)を握らせる。
唐突に姿を現した龍を見て、弁慶は「わっ」という声と共に跳び上がった。
「そいつを呼び出した側と、呼び出された側……どっちがこいつらを殺したのかは分からない。
ただ、こいつがあのコブラと同じなら、恐らくこいつを従えてた奴も既にやられてる。どの道、ここで誰かが誰かを殺したことに――」
「――ねぇ」
不意に、金居の声を、なのはが遮る。
その瞳は彼を見ていない。それどころか、ペンウッドや弁慶さえも。
ただ窓ガラスに映し出された、巨大な龍の姿を、じっと真っ向から見据えている。
「何というか……この子、すごく悔しそうな顔してる」
呟くなのはの顔は、沈痛な色に染まっていた。
もちろん、表情から何かが分かるわけではない。爬虫類の顔から感情など、そうそう読み取れるものではない。
だが、気配で分かる。
その身を横たえながらも、時折何かを訴えるようにくねらす様から。微かに、しかし何かを語るように吐き出される苦鳴から。
何よりも、じっとなのはの瞳を覗き込む、その黄金の眼差しから。
「負けたことが悔しい」
言いながら、なのはがその歩を進める。
1歩、また1歩。ドラグレッダーの姿を映す校舎に向かって、真っ直ぐに。
少しずつ、だが着実に。
真紅の無双龍が語る言葉を、その身に受け止めようと構えながら。
再び戦いたい。
自分を倒した奴と戦いたい。
「貴方を呼んだ人の……仇を取りたい。そう、言ってるんだよね」
この龍が、カードデッキを持った者の呼びかけに答える存在ならば。
龍が負けているならば、これを持っていた者もまた敗北したということだ。
なのはの手が、ガラスに触れていた。
なのはの目が、龍の目と鼻の先にあった。
青と金の瞳が、ゆっくりと向き合っていた。
//
「……この子も連れて行こう」
言いながら、なのはがゆっくりと振り返る。
「なっ……本気で、言ってるのか? その……危ないんじゃ、ないか?」
まず最初に口を開いたのはペンウッドの言葉だ。
かがみの呼び出した、ベノスネーカーとメタルゲラスの脅威は、未だ彼にとって記憶に新しい。
あの時は金居が、ギラファアンデッドに変身して退けてくれた。だが、そうそう何度も危険に晒されてはたまらない。
そもそもドラグレッダーの巨体は、それらよりも何倍も大きいのだ。視覚から感じられるプレッシャーは相当なものだった。
「大丈夫。この子なら、きっと大丈夫ですから」
それでもなのはは、確かな意志と共に言葉を紡ぐ。
根拠はない。それこそ先ほど危惧した憶測とも、何ら変わらないかもしれない。
だが、この巨大な龍の放つ何かが、なのはにそれを確信させる。
この龍は、自分達に牙をむくことはない。少なくとも、もっと大事な目的を果たすまでは、自分達に力を貸してくれる。
誇り高き無双龍の気配が、なのはに強い確信を抱かせる。
「……そうだな。そもそも俺達を食うつもりなら、なのはがそれを持った時点で、とっくに襲い掛かってきてる」
ツインテールの娘の例に倣うならば。
背後から金居がその言葉を放ったとき、それはすなわちなのはの意志の肯定を意味した。
「危ねぇ奴かもしれねぇが、手綱持ってりゃ戦力にはなるだろうしな」
「……ん……分かったよ、うん」
最後に弁慶が、同じく合意を示す。それで観念したのか、ペンウッドもまた、遂に彼女の意志を認めた。
「ありがとう」
笑顔と共に感謝すると、なのはは再び校舎を見上げる。
そこに並べられた窓ガラスへと。その境界からこちらを見つめる、大いなる赤き巨龍へと。
「一緒に行こう」
静かに、だが確かな覇気を込め。
「もう二度と……その人のような犠牲を出したりはしない!」
無双龍ドラグレッダーの唸りは、彼女には力強い頷きのように聞こえていた。
◆
新たにカードデッキを手にした高町なのはは、実は1つの誤解を抱えている。
このドラグレッダーにとっては、実際、契約者の死はどうでもいいことだった。
ただ自分を倒した者――アーカードとの再戦さえできれば、クロノ・ハラオウンのことはどうだっていいのだ。
そしてなのはは、ミラーモンスターにとってあまりにも無知だった。
カードデッキを鏡にかざすことで、仮面ライダーへと変身できること。
常に人を食わせ続けなければ、契約者を食らう諸刃の剣であること。
赤き龍の存在は、いつか彼女にとって呪縛になるかもしれない。
しかしなのはは、誇り高き管理局の魔導師である。
ドラグレッダーの誇りが本物ならば、なのはが正義にかけた誇りも本物だ。
であれば、なのははその力を、己が信ずる正義の下に振りかざす時が来るかもしれない。
無双龍を従える戦士――仮面ライダー龍騎は、そういう男だったのだから。
そして何より。
ドラグレッダーの無双の名が、最強の称号を指すのならば。
――仮面ライダーの名もまた、正義の味方の証なのだから。
//
【1日目 早朝】
【現在地 D-4 学校】
【高町なのは@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
【状態】健康、プレシアに対する怒り
【装備】グロック19(14/15+1発)@リリカル・パニック
【道具】カードデッキ(龍騎)@仮面ライダーリリカル龍騎
【思考】
基本:誰の命も欠かす事無く、出来るだけたくさんの仲間を集めて脱出する。
1.なんとしてもヴィヴィオを救出する。それは何よりも優先。
2.工場に向かい、首輪解除の手がかりを探す。
3.出来る限り全ての戦えない人を保護し、仲間を集める。
4.この龍(=ドラグレッダー)の契約者のような犠牲は絶対に出さない
5.さっきの子(柊かがみ)はどうするんだろう……?
6.アリサの思いと勇気は、絶対に無駄にはしない。
7.龍を倒した奴(=アーカード)を警戒
【備考】
※金居の事は多少警戒しています。
※エリオが死んだという話は信じていません。
※カードデッキの説明書を読んでいません。
カードデッキの特性について把握できている情報は、「契約モンスターを呼べる」ことくらいです。
【シェルビー・M・ペンウッド@NANOSING】
【状態】健康、若干の不安
【装備】なし
【道具】支給品一式、ランダム支給品(未確認1~2)、おにぎり×10
【思考】
基本:自らの仕事を果たす。
1.工場に向かい、首輪を解除する手がかりを探す。
2.この龍は本当に大丈夫なんだろうか?
3.アリサという少女の思いは無駄にしてはいけない。
4.龍を倒した奴(=アーカード)を警戒
【備考】
※少なくとも第四話以降の参戦です。
【金居@魔法少女リリカルなのはマスカレード】
【状態】健康
【装備】なし
【道具】支給品一式、カードデッキの複製(タイガ)@リリカル龍騎、砂糖1kg×10、ランダム支給品(未確認1~3)
【思考】
基本:首輪を解除し、このゲームから脱出する。
1.工場に向かい、首輪を解除する手がかりを探す。
2.利用できるものは全て利用する。邪魔をする者には容赦しない。
3.脱出の為ならば、人間と手を組むのも仕方がない。
4.ジョーカーは出来ればこの戦いの中で倒してしまいたい。
5.もしもラウズカード(スペードの10)か、時間停止に対抗出来る何らかの手段を手に入れた場合は容赦なくキングを殺す。
6.龍を倒した奴(=アーカード)を警戒
【備考】
※このデスゲームにおいてアンデッドの死亡=カードへの封印だと思っています。
※最終的な目的はアンデッド同士の戦いでの優勝なので、ジョーカーもキングも封印したいと思っています。
※どちらかと言えば悪者側よりも仮面ライダー側に味方した方が有利だと思っています。
【武蔵坊弁慶@ゲッターロボ昴】
【状態】健康、トカゲ達(=アグモンとギルモン)を殺した者に対する怒り
【装備】閻魔刀@魔法少女リリカルなのはStirkers May Cry
【道具】基本支給品一式、ランダム支給品0~2
【思考】
基本:殺し合いを止め、プレシアを打倒する(どうやって戦うかは考えていない)
1.スバル、ティアナと合流。
2.軍事基地か地上本部に行き、ネオゲッターロボの所在を確かめる。
3.龍を倒した奴(=アーカード)を警戒
【備考】
※5話終了後からの参戦です。
※自分とスバル、ティアナ、隼人の4人は、ネオゲッターロボごとここに送り込まれたのだと思い込んでいます。
また、隼人がどうして参加者の中に居ないのかという疑問を持っています。
隼人がこのゲームに関わっていない事を知りませんし、スバル・ティアナの来た世界が自分とは違う事も知りません。
※銀色の戦士(ミライ)が鬼ではないことに気付きました。
【チーム:少し、頭冷やそうか】
【共通思考】
基本:首輪を解体し、このゲームから脱出する。
1.工場に向かい、首輪解除の手がかりを探す。
2.戦えない者は保護していく。
【備考】
※それぞれが違う世界の出身であると気付きました。
※なのはの話から、プレシア・テスタロッサについて大体の情報を得ました。
※チーム内で、ある程度の共通見解が生まれました。
敵対的:アーカード、アレクサンド・アンデルセン、相川始、キング
友好的:機動六課組、インテグラ・ヘルシング、天道総司
要注意:クアットロ
また、アーカードについてはインテグラと合流出来れば従わせる事が可能だと判断しています。
※カードデッキの特性について把握できている情報は、「契約モンスターを呼べる」ことくらいです。
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