「王蛇のブランチ」(2009/10/26 (月) 23:13:32) の最新版変更点
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*王蛇のブランチ ◆7pf62HiyTE
仮面ライダー浅倉威は犯罪者である。彼にデッキを与えた神崎士郎はある目的を企む神崎優衣の兄である。仮面ライダーは己の願いのために他のライダーと戦うのだ。
浅倉威は戦いを求めている。その為、浅倉は戦う相手となる人物を捜して市街地に向かっていた。
何故市街地に向かうのか?一番の理由は数時間前に出会ったキングからもたらされた鎌を持った参加者、浅倉は名前を知らないがキャロ・ル・ルシエを追う為である。
彼女に追いつく事自体は出来なかったが、市街地に向かったことは容易に想像出来た。それ故に浅倉は市街地に向かっていた。
とはいえ、実の所キングからの情報が無くても市街地には向かうつもりではあったのだ。
そもそも浅倉は天道総司と戦う為に彼を追っていたが、彼に追いついた後は他の参加者がいるであろう市街地の施設に向かおうと考えていたのだ。
なお、天道自体はキングが抱えていたが、浅倉は彼が負傷していたという事もありその場では見逃している。
さて、『戦いを求める』という願いを持つ仮面ライダー王蛇浅倉威は今現在……
「焼けたか」
と、焼き上がった肉にかぶりついた。十分に焼かれた肉は肉汁がしたたり誰が見ても旨そうに見える。
「熱ぃ」
焼きたての肉は熱く舌を火傷しそうになる。
そう、浅倉はF-6のレストランで肉を食べていたのだ。何故、戦いを求めていたはずの浅倉がレストランにいたのだろうか?ここで時間を少々遡ってみよう。
★ ★ ★
E-6に入った浅倉が見たのは倒壊したビル街である。エリアが崩壊した理由は数時間前に行われた相川始とエネルによる戦闘……正確にはエネルの雷による攻撃によるものだ。
とはいえ、浅倉にしてみれば誰が行ったかなど特別問題ではなく、その場所で戦いが起こったことの方が重要である。
「随分時間が過ぎているようだな」
崩壊したビルから出てくる煙等から判断して、その戦いが行われてから既に数時間経っているものだと浅倉は判断した。
「流石にこの辺りにはいないだろうな……」
既に戦いを行った者はこのエリアには居ないと浅倉は結論付けた。もしかしたらこのエリアを散策すればもしかすれば負傷し動けない参加者がいるかもしれない。
だが、戦いを求めている浅倉にとっては戦えなさそうな参加者になど興味はない。浅倉が求めているのは自分と戦える参加者なのだ、故に浅倉は早々にこのエリアから移動しようと考えた。
さて、浅倉の表情には笑みが浮かんでいる。何しろエリア1つを崩壊させる程の参加者なのだ、それだけの参加者と戦えるのは浅倉にとって至上の喜びである。
だが、出会えないのであれば現状でそれに固着する必要はない。あれだけの参加者だ、そうそう簡単に死ぬことも無いだろう。ひとまず浅倉は移動を始めようと……
その時、浅倉の身体から音が響いた。
「腹減ったなぁ……」
それは浅倉の空腹を告げる音である。考えても見ればこの殺し合いが始まってから既に10時間弱、それまでに浅倉は何一つ食べていない。
元々浅倉はそれ程食事には恵まれていなかったので多少の空腹など問題にはならない。その為、これまでは食事よりも戦いのことを優先していた。
また、つい先程まで同行していたヴィヴィオとシャーリー・フェネットも殺し合いという異常な状況、放送による母親や友人の死のショック等で食事をしよう等とは言わなかった。
故に浅倉はこれまで食事を一切行っていなかったのである。
とはいえ何時までも空腹でいるわけにはいかないだろう。浅倉自身も本能的に空腹では戦えないことはわかっている。だからこそ浅倉は何か食べようとデイパックを開けた。
そして中からパンを出しそれをほおばる浅倉であった。その浅倉が思うことは……
「肉が食いてぇなぁ……」
浅倉は肉を食べたかったのだ。
ここで参加者に支給された食料を簡単に説明しよう。各々のデイパックの中には丁度9食分の水と食料が入っている。つまり、主催者としては約3日間の期間を想定した上で殺し合いを行っているという事である。
さて、その中身だが何処でも食べられるように調理の必要が無い、もしくは簡単な調理で済むものばかりである。つまり、パンや缶詰及びレトルト食品等といったものばかりなのだ。
なお、余談ではあるが各種施設には食料が置かれている所もある。仮に食料が無くなればそちらで補充する手段もあるだろう。しかしそうそう甘い話などあるはずがない。
現実としてスーパーにも食料が置かれていたがどれも生の物ばかりでレトルト食品の類は見付けられなかった。
またデパートにも食料が置かれていたがやはりすぐに食べられそうな物は野菜かパンばかりでだった。
恐らくは他の施設でも調理の必要が無い物はせいぜいパンかおにぎり、野菜ぐらいしか見付けられないだろう。
閑話休題、先程も述べた通り支給された食料はパンや缶詰といった物ばかり。空腹を満たすだけならば十分に事足りる。
しかし、浅倉はそれだけで満足出来なかった。浅倉の中は肉汁の滴る肉を食いたいという欲求が湧き上がっていた。
勿論、食料の中に肉の類が無いことも無いが、保存食に適した缶詰の肉等で浅倉の欲求が満たされるわけもない。
その浅倉は周囲を見回す。その理由はその辺にいるトカゲ等の動物を探す為である。浅倉は非情に悪食でトカゲも平然と食するし、ムール貝も殻毎食べようともする。仕舞には泥すらも喰う人物だ。
つまり、浅倉はトカゲを見付けそれを食しようと考えたのである。しかし、市街地にトカゲなどいるわけがない。
そんな中、浅倉はある事を思い出す。
「待て……そういえばここに来てから虫も動物も見てねぇな……」
それは、参加者以外の動物や虫を一切見かけていないという事である。市街地であればともかくこれまで浅倉のいた森の中でも動物や虫の類を見かけないというのは奇妙な話である。
特に空腹時にトカゲ等を捕らえて食していた浅倉から見ればある意味異常だろう。なお、これまで気に留めなかったのは戦いを求めていた為気にしなかったからというのは言うまでもない。
「まぁいい……」
が、別に狩りをしたいというわけではない為その事については深く考えないことにした。無い物をねだっても仕方がないと考え、パンを頬張りながら次の目的地をどうするか考える為地図を広げる。
「ん、これは……」
そして、今の自分の目的が果たせる場所が近くにあるのを見付けたのだ。
★ ★ ★
その場所こそがF-6にあるレストランだったのだ。言うまでもないがレストランは食事を行う所だ。つまり、中には食料……肉がある可能性は高い。
肉を食べたい浅倉はすぐさまそこへ向かったのだ。仮に他の参加者がいるのであればそれはそれで好都合、一応パンを食していることで空腹は満たされている為戦うことには支障は無い。
参加者がいなければそこでゆっくり肉を食えばいい、浅倉はそう考えレストランに向かったのだ。
幸か不幸か今までにレストランには他の参加者は一切来ていなかった。つまり、全く手つかずの状態で置かれていたのだ。
戦いが出来ないことについては正直残念ではあったが、今の目的は肉……浅倉はすぐさま厨房に入り肉類や魚介類、野菜類といった食料を見付けた。
そして見付けた肉を使ってレストランの調理道具を使いすぐさま調理を始めたのだ。そして見事に焼き上がった肉を食していたのである。
「ふぅ……」
食事を終えて満腹となった浅倉は少し休むことにした。ちなみにレストランで見付けた他の食料や、包丁やナイフ、フライパンといった調理器具はデイパックに収められている。
また肉を食いたいと考えていたというのもあるし、包丁等は武器として使えると考えたのだ。
当初はある程度絞ろうかと考えたが、物を入れていく内に質量と体積を無視している事に気が付いた浅倉は使えそうな道具はある程度多めに持っていくことにしたのだ。
自身の持っている仮面ライダー王蛇のカードデッキがあるならば武器に固着する必要は無かったが、手元にそれが無い以上はどうしても他の武器が必要なのだ。
手元にはヴィンデルシャフトとマシンガンブレードがあるにはあるが、使い慣れていない武器で戦えるかは正直微妙、アテにはしきれない。故に武器として使えそうな物を確保したのだ。
そして浅倉は手持ちの武器を眺めながらこれからの事を考える。
「こいつはどうしたものかな……」
浅倉はデイパックから出したベルトを見つめていた。キングから渡された仮面ライダーカブトの変身ベルトである。実の所、キングから受け取った時はこれで仮面ライダーに変身出来ると驚喜してはいた。
しかしすぐさまそれは頓挫する。何故ならベルトには何かを填め込む所があるが、そこに填め込むべき物がなかったのだ。これでは仮面ライダーに変身出来ないことは浅倉にも明白だ。
ちなみに浅倉達が使うカードデッキの場合は変身する際にVバックルというベルトが出現する為、カードデッキさえあればすぐさま変身出来る。
だが、カブトのベルトはそうはいかない。変身しようと思っても都合よくはめ込む物が現れるという事は無いのだ。お陰で浅倉の苛立ちは頂点に達したのである。
だが、口うるさいヴィヴィオやシャーリーと別れ、空腹も満たされ、武器の補充も完了した今の浅倉は冷静だ。
「無いなら探せばいいんだろう?」
填め込むべき物を探せば良いと考え、これから戦う相手を捜すついでに探せばよいと結論付けた。
但し、浅倉は気付いていないが実の所そんな必要は無いのが現実だ。カブトのベルトで変身する為には浅倉の推測通り、カブトゼクターと呼ばれる物が必要だ。
しかし、そのカブトゼクターについては実は参加者には支給されていない。支給されているのはカブトの力を強化する為のハイパーゼクターやパーフェクトゼクターで変身する為のゼクターは支給されていないのだ。
では、どうしたらカブトゼクターを入手する事が出来るのだろうか?
答えは簡単だ、カブトゼクターは変身する時において何処かから飛来してくるのだ。それを使えば変身することが出来る。
但し、その為には条件がある。それはカブトゼクターに認められなければならないということだ。カブトゼクターが認める為の条件……それは『自信』である。精神的にそれが満たされていればゼクターは変身者の元へと飛んでくるのだ。
ちなみにこのカブトのベルトが支給されたのはキングである。しかし、カブトゼクターはキングを認めなかった。故にキングはカブトへと変身することは出来なかったのだ。
もっとも、キングにしてみれば本来の持ち主である天道がベルトを所持していないことで変身出来ない事の方が重要だった為、全く気にしていなかったが。
さて、ベルトの本来の持ち主は天道である。天道はその名が示す通り自信に満ちあふれており当然のことながらカブトに変身する資格を満たしている。では、他の参加者の中にその資格を満たす人物はどれだけいるだろうか?
雷となりて自らを神と名乗る男、
赤いコートを着て闘争を求める吸血鬼、
偉大な妖怪を父に持つ妖怪、
愛と平和を訴える男の兄で人間を抹殺しようと目論む男、
元の世界にて人類抹殺を行おうとする片翼の天使、
帝国を破壊しようと目論む漆黒の皇子、
既に死亡している者もいるが彼等ならばカブトゼクターも認める可能性はあるかもしれない……では、浅倉をカブトゼクターは認めるのだろうか?
今はまだ何処かで浅倉を見定めているのかもしれない、浅倉を認めるかどうか……それはまだカブトゼクターにしかわからない話である。
そんなカブトゼクターの思惑を余所に、浅倉の中には別の思惑もあった。
「天道だったか?今度奴に会ったらコイツを返してやってもいいな」
それは、次に天道と会った時にカブトのベルトを返すというものである。
カブトのベルトが天道の物だという話は既にキングからも聞いている。しかし負傷している天道ではベルトを使えないということでキングはベルトを浅倉に渡したのだ。
となればだ、仮に天道の怪我が回復し戦える状態になったならばベルトを返すというのも良いと考えたのだ。
勿論その理由はその後で自分と戦ってもらう為である。もっとも、填める物の無いベルトが使えるとは思えないとも浅倉は考えていたが。
その最中、浅倉は残る2つの武器を見つめる。マシンガンブレードに関しては深く考えることはない。普通にマシンガンとして使える武器だと考えた。とはいえどうせならば剣とかの方が良いと浅倉自身は考えていたが。
続いて、ヴィンデルシャフトを起動して改めて回してみる。トンファー型ということで、浅倉にしてみれば少々使いにくい武器というのは言うまでもない。とはいえ、他に使えそうな武器が無い以上は仕方がないと考えていた。
と、暫くヴィンデルシャフトを回したり調べている内にあるものを見付けた。
「何だこれは……?」
それはヴィンデルシャフトの柄の所に存在するカートリッジシステムである。最初は何の事かわからない浅倉だったが眺めていく内にあることを思い出した。
「そうか、こいつはあいつらが使う武器と同じ……」
それはこの殺し合いに呼ばれる前での話だ。浅倉達仮面ライダーの戦いを妨害する者が自分達の前に現れたのだ。
浅倉は仮面ライダーになる際に士郎よりその人物達の事を大まかに聞かされていたのだ。
そう、その人物こそが高町なのは達なのだ。浅倉が実際に彼女達と遭遇したのは一度しかないが、ヴィンデルシャフトは彼女達の使う武器と系統が近かった。
「コイツを使えば連中と同じ事が出来るというわけか……どうやら、考えていたよりは使えそうな武器らしいな」
確かにデバイスを使えば浅倉でもある程度の魔法を使うことが出来るだろう。真面目な話、浅倉が魔力を扱えるかどうかは不明だがカートリッジを使えば純粋に攻撃力を強化することが出来る。
事実として魔力を扱えない少女でもある吸血鬼の両腕を切断した上で更に身体を切り裂いた事が出来た事からもそれは明らかだ。その事を知らない浅倉ではあったが、カートリッジシステムは十分に使える物だと考えていた。
「待てよ、確かあのガキのママって奴の名前は……」
その最中、浅倉はヴィヴィオが話していた『高町なのは』の事を思い出す。ヴィヴィオの話など殆どまともに聞いていない浅倉ではあったがなのはの事ばかり話していた事もありその事は覚えていたのだ。
ヴィヴィオによるとなのはは優しくて強いという話であった。とはいえ、子供の言う『強い』など殆どアテにしていなかった為、その事については殆ど気に留めていなかった。
浅倉にとって重要だったのはヴィヴィオを餌にして他の参加者をおびき寄せる事でしかなかった為、ヴィヴィオの話など殆ど聞き流していた。
だが『高町なのは』という名前を冷静に思い出した浅倉にとってこれは重要な意味を持つ。
「奴のママも『高町なのは』だったな……あのガキの名前も『高町なのは』……どういう事だ?」
そう、先程も述べた通り浅倉はこの殺し合いに呼ばれる前にもなのはと遭遇しているし、彼女についての話も士郎から聞いている。
だが、その情報には大きな差異が見られる。
士郎から聞いた『高町なのは』は9歳の子供、ヴィヴィオから聞いた『高町なのは』は大人の女性でヴィヴィオのママ、
同じ名前でありながらその人物像には大きな差異が見られる。
「確か名前が2つあったな」
浅倉は改めて名簿を確認する。
実の所、名簿自体は来た時点……ヴィヴィオと遭遇する前にも一度確認はしている。だが、知り合いや仲間、守るべき者のいない浅倉にとって名簿確認は自分と戦うべき強者を確認する為のものでしかない。
さて、名簿を見た限り元の世界にいた仮面ライダーの名前は誰一人としていなかった。士郎と同じ姓を持つ優衣の名前が気になった物の2人の関係に興味など無い浅倉にしてみればどうでもいい話だった。
しかし、名簿の中には士郎から聞かされた仮面ライダーの戦いを妨害する者達の名前があったのだ。
高町なのは、フェイト・T・ハラオウン、八神はやて、シグナム、ヴィータ、シャマル、ザフィーラ、クロノ・ハラオウン、ユーノ・スクライア
仮面ライダーの戦いを妨害する者である彼女達の名前を確認した浅倉はその存在をマークしていたのだ。ちなみになのは、フェイト、はやての名前が2つあったもののその時の浅倉は特に気に留めてはいなかった。
ちなみに浅倉が実際に遭遇したのはなのは、はやて、シャマルの3人しかいない為、彼女達以外の実力については知らないが、彼女達の実力を踏まえて相当な物だということは予想出来ていた。
その為、先程の放送でなのは、シグナム、クロノの死亡が知らされた時には戦える相手が減ったことで僅かながらも悔しさがあった。もっとも、他の奴を探せばいいと特に引きずる事もなかったが。
さて、これまで浅倉はずっと『高町なのは』を9歳の少女だと思っており、名簿にでている『高町なのは』は彼女の物だと思っていた。
だが、ヴィヴィオの話では『高町なのは』は大人の女性とある。そうなれば名簿にでている『高町なのは』は彼女の物の可能性があるという事にはならないだろうか?
そして、名簿には何故かなのは、フェイト、はやての名前が2つずつ存在する。もし、これに意味があるとしたらそれは何だろうか?
だが、浅倉はその事について深くは考えず、シンプルな結論を出した。
それは、言葉通りなのは、フェイト、はやては2人ずついるというものである。そして、彼女達の片方が浅倉の知る9歳の彼女達で、もう片方がヴィヴィオの話していた大人の彼女達だと結論付けた。
ちなみに、大人のフェイトがいる事についてはヴィヴィオとシャーリーの会話が耳に入った時に彼女の名前が出ていたことからの判断で、大人のはやてについては大人の2人がいることからの推測である。
無論、どうして同じ名前で年齢の違う2人がいるのかは引っかかるが、浅倉はそれについては特に考えていない。何度も書くが浅倉の目的は戦うことでしかないからだ。
となれば、この後なのは達を探すというのも良いだろうと浅倉は考えた。
既に死亡しているなのはがどちらなのかは分からないが、9歳のなのはの実力は確かな物だし、大人のなのはにしてもヴィヴィオの言葉を信じるなら強い相手という事になるのでどちらにしても相手としては相応しいだろう。
更に、大人のなのはに遭遇したならばヴィヴィオの名前を出せば戦いに応じる可能性は高い。探す意味はあるだろう。
その一方、浅倉は自身が持っていたカードデッキの事を考えていた。ある程度の武器が揃った為、戦う分には困らない。だが、浅倉は仮面ライダーだ。
出来うるなら仮面ライダーとして戦いたいのが本音である。果たして、自身の持っていた王蛇のカードデッキは何処に行ったのだろうか?
「そういやプレシアが言っていたな……武装を解除してランダムで支給したと、ならば支給された奴から奪い返すだけだ」
今更ながらに最初の場所でプレシアが参加者の元々持っていた武装を解除してプレシアサイドで用意した幾つかの道具と混ぜてランダムに支給した事を話していたのを思い出した。
実際、浅倉がそこまで考えているかは別にして浅倉自身の支給品もその辺にありそうな鉄パイプはともかくぬいぐるみはヴィヴィオの所有物であったし、クラールヴィントはシャマルのデバイスだ。
それから見ても、参加者の武装がその持ち主本人にそのまま支給されている可能性は低く、他の参加者に支給されている可能性は高い。
また、参加者がある支給品を支給されていても、それが元々その参加者自身の支給品である可能性は低い。むしろ他の参加者の所有物の可能性が高いと言えるだろう。
もっとも、幾つか例外は存在し参加者の所有物や武装が持ち主自身に支給されているもしくは没収されずにそのまま残っている参加者は何人かいるが、それは稀なケースだ。
なお、先程も述べた通りこの事はプレシアが最初に話していた事、つまり参加者全てに与えられている情報だ。
だが、ある参加者はその事実を見落としている……もしくは聞き逃している、忘れているだけかもしれないがその為に致命的な勘違いをしている。
その参加者はつい2,3時間程前まで浅倉と同行していたシャーリーだ。彼女の父親はゼロと名乗る仮面の男の行動に巻き込まれて死んだ……ゼロに殺されたと言ってもいいだろう。
偶然にもシャーリーはこの場においてゼロの身に付けている仮面が支給された参加者……天道と遭遇出来た。
彼女はあろうことか仮面を天道が持っていたことで天道をゼロだと決めつけてしまったのだ、天道自身もプレシアが入れたと話したにも関わらず全く信じていない。
勿論、彼女の心情を考えれば、プレシアの話を忘れていたり、天道の言葉を信じられないのも無理は無いだろう。
しかし彼女はその後自分を含めた参加者数人の支給品を確認している。ヴィヴィオのぬいぐるみやシャマルのクラールヴィントを浅倉が持っていた事を知っているし、
シャーリー自身に支給されたヴィンデルシャフトやマシンガンブレード、銃が本来は誰の物かは知らないものの彼女自身の物ではない事も当然わかっている(余談だが銃の本来の所有者はゼロである)。
そこから冷静に考えれば、ゼロの仮面も天道の元々の所有物ではない可能性がある事に気付きそうなものだが……果たして彼女はいつまで勘違いを続けるのだろうか?
もっとも、もしかしたらその勘違いに気付きゼロの仮面の本来の所有者……ゼロの正体を知らない方が彼女にとって幸福かも知れないが、それはまた別の話である。
閑話休題、
何はともあれプレシアの言葉を信じれば自身の武器ともいうべき王蛇のカードデッキも他の参加者に支給されているのは想像に難くない。その人物を探し出して奪い返せばいい、浅倉はそう結論付けた。
そして浅倉は首に手を当てる。そこにはプレシアによって嵌められた首輪が着けられている。
「この首輪……イライラさせる……」
首輪はこの殺し合いを嫌がる参加者に強要させる、プレシアに刃向かうのを阻止する為の物だ。
殺し合いからの脱出を目論む参加者については邪魔な物でしかないが、殺し合いに乗った参加者については別に邪魔な物ではない。
また、殺し合いに乗っていても最終的にプレシアも殺すつもりの参加者にとっては邪魔だが、そういった意志がなく放送で言っていた願い事を叶えるつもりの参加者ならば邪魔ではない。
さて、浅倉にしてみればどうだろう?浅倉は殺し合いに乗っていて、なおかつ現状プレシアを殺そうと考えてはいない。願い事については現状考えていないが、せいぜい『戦いの続行』といった所だろう。
しかし、浅倉にとっても首輪は邪魔な物だった。
何て事はない、首輪をさせられているのが気に入らない、イライラするといった単純な理由だ。
だが、その単純な理由であっても浅倉は機会さえあれば首輪を外したいとは思っていた。とはいえ、機会があれば程度でそれに固着するつもりもなかったが。
さて、これから浅倉はどうするのだろうか?このまま戦いを求め他の参加者を捜しても良いがもう少し休んでもいいだろうと考えていた。
それに時計を確認した所11時を過ぎている。12時になれば放送が流れる、放送となれば新たな死亡者、禁止エリア等といった新たな情報が入る、今後の戦いの為にも放送は聞いておきたいと考えていた。
勿論、それまでにレストランの食料目当て等で他の参加者が来たのであればその人物と戦うつもりではある。
では、放送が終わり情報がまとまった後はどうするか?放送の内容にもよるが、戦える参加者を求めて市街地にある人が集まりそうな施設に向かうのも良いだろう。
しかし、ここで浅倉の脳裏にある手段が浮かぶ。
別にこっちから参加者を探しに行くばかりが能ではない。逆に向こうからやって来るのを待ちかまえるというのも1つの手である。そう、何かしらの手段で他の参加者を誘き寄せ、彼等を迎え撃つという手段だ。
問題はどうやって参加者を誘き寄せるか……浅倉はレストランの厨房のコンロを思い出し……
「燃やしてみるか?」
【1日目 昼】
【現在地 F-6 レストラン】
【浅倉威@仮面ライダーリリカル龍騎】
【状態】右手に火傷、満腹
【装備】ライダーベルト(カブト)@魔法少女リリカルなのは マスカレード、マシンガンブレード@仮面ライダーカブト
【道具】支給品一式、ヴィンデルシャフト@魔法少女リリカルなのはStrikerS、肉×10kg、魚×10kg、包丁×3、フライパン×2、食事用ナイフ×12、フォーク×12
【思考】
基本:戦いを楽しむ。戦える奴は全員獲物。
1.放送まで休む。但し、放送前に誰かが来た場合はそいつと戦う。
2.放送後、戦える者を探す為市街地にある施設に向かうか?もしくはレストランを燃やし他の参加者を誘き寄せようか?
3.王蛇のカードデッキ、及びカブトのベルトに填める物(カブトゼクター)を探す。
4.回復した天道と戦う時にはベルトを返した上で戦う。
5.なのは(sts)と遭遇した時にはヴィヴィオの名前を出してでも戦ってもらう。
6.キング、鎌を持った奴(キャロ)、なのは、フェイト、はやて、ヴィータ、シャマル、ザフィーラ、ユーノと戦う。
7.首輪にイライラ、外したい
【備考】
※プレシアは殺し合いを監視しており、参加者の動向を暗に放送で伝えていると考えています。
※ヴィンデルシャフトのカートリッジシステムに気付きました。
※カブトに変身できる資格があるかどうかは分かりません。
※なのは、フェイト、はやては自分の知る9歳の彼女達(A's)とヴィヴィオの言っていた大人の彼女達(StS)の2人がいると考えています。
|Back:[[Paradise Lost(後編)]]|時系列順で読む|Next:[[未知あるいは既知との遭遇]]|
|Back:[[三人の印象]]|投下順で読む|Next:[[暇をもてあました神々の遊び]]|
|Back:[[三人の印象]]|浅倉威|Next:[[]]|
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*王蛇のブランチ ◆7pf62HiyTE
仮面ライダー浅倉威は犯罪者である。彼にデッキを与えた神崎士郎はある目的を企む神崎優衣の兄である。仮面ライダーは己の願いのために他のライダーと戦うのだ。
浅倉威は戦いを求めている。その為、浅倉は戦う相手となる人物を捜して市街地に向かっていた。
何故市街地に向かうのか?一番の理由は数時間前に出会ったキングからもたらされた鎌を持った参加者、浅倉は名前を知らないがキャロ・ル・ルシエを追う為である。
彼女に追いつく事自体は出来なかったが、市街地に向かったことは容易に想像出来た。それ故に浅倉は市街地に向かっていた。
とはいえ、実の所キングからの情報が無くても市街地には向かうつもりではあったのだ。
そもそも浅倉は天道総司と戦う為に彼を追っていたが、彼に追いついた後は他の参加者がいるであろう市街地の施設に向かおうと考えていたのだ。
なお、天道自体はキングが抱えていたが、浅倉は彼が負傷していたという事もありその場では見逃している。
さて、『戦いを求める』という願いを持つ仮面ライダー王蛇浅倉威は今現在……
「焼けたか」
と、焼き上がった肉にかぶりついた。十分に焼かれた肉は肉汁がしたたり誰が見ても旨そうに見える。
「熱ぃ」
焼きたての肉は熱く舌を火傷しそうになる。
そう、浅倉はF-6のレストランで肉を食べていたのだ。何故、戦いを求めていたはずの浅倉がレストランにいたのだろうか?ここで時間を少々遡ってみよう。
★ ★ ★
E-6に入った浅倉が見たのは倒壊したビル街である。エリアが崩壊した理由は数時間前に行われた相川始とエネルによる戦闘……正確にはエネルの雷による攻撃によるものだ。
とはいえ、浅倉にしてみれば誰が行ったかなど特別問題ではなく、その場所で戦いが起こったことの方が重要である。
「随分時間が過ぎているようだな」
崩壊したビルから出てくる煙等から判断して、その戦いが行われてから既に数時間経っているものだと浅倉は判断した。
「流石にこの辺りにはいないだろうな……」
既に戦いを行った者はこのエリアには居ないと浅倉は結論付けた。もしかしたらこのエリアを散策すればもしかすれば負傷し動けない参加者がいるかもしれない。
だが、戦いを求めている浅倉にとっては戦えなさそうな参加者になど興味はない。浅倉が求めているのは自分と戦える参加者なのだ、故に浅倉は早々にこのエリアから移動しようと考えた。
さて、浅倉の表情には笑みが浮かんでいる。何しろエリア1つを崩壊させる程の参加者なのだ、それだけの参加者と戦えるのは浅倉にとって至上の喜びである。
だが、出会えないのであれば現状でそれに固着する必要はない。あれだけの参加者だ、そうそう簡単に死ぬことも無いだろう。ひとまず浅倉は移動を始めようと……
その時、浅倉の身体から音が響いた。
「腹減ったなぁ……」
それは浅倉の空腹を告げる音である。考えても見ればこの殺し合いが始まってから既に10時間弱、それまでに浅倉は何一つ食べていない。
元々浅倉はそれ程食事には恵まれていなかったので多少の空腹など問題にはならない。その為、これまでは食事よりも戦いのことを優先していた。
また、つい先程まで同行していたヴィヴィオとシャーリー・フェネットも殺し合いという異常な状況、放送による母親や友人の死のショック等で食事をしよう等とは言わなかった。
故に浅倉はこれまで食事を一切行っていなかったのである。
とはいえ何時までも空腹でいるわけにはいかないだろう。浅倉自身も本能的に空腹では戦えないことはわかっている。だからこそ浅倉は何か食べようとデイパックを開けた。
そして中からパンを出しそれをほおばる浅倉であった。その浅倉が思うことは……
「肉が食いてぇなぁ……」
浅倉は肉を食べたかったのだ。
ここで参加者に支給された食料を簡単に説明しよう。各々のデイパックの中には丁度9食分の水と食料が入っている。つまり、主催者としては約3日間の期間を想定した上で殺し合いを行っているという事である。
さて、その中身だが何処でも食べられるように調理の必要が無い、もしくは簡単な調理で済むものばかりである。つまり、パンや缶詰及びレトルト食品等といったものばかりなのだ。
なお、余談ではあるが各種施設には食料が置かれている所もある。仮に食料が無くなればそちらで補充する手段もあるだろう。しかしそうそう甘い話などあるはずがない。
現実としてスーパーにも食料が置かれていたがどれも生の物ばかりでレトルト食品の類は見付けられなかった。
またデパートにも食料が置かれていたがやはりすぐに食べられそうな物は野菜かパンばかりでだった。
恐らくは他の施設でも調理の必要が無い物はせいぜいパンかおにぎり、野菜ぐらいしか見付けられないだろう。
閑話休題、先程も述べた通り支給された食料はパンや缶詰といった物ばかり。空腹を満たすだけならば十分に事足りる。
しかし、浅倉はそれだけで満足出来なかった。浅倉の中は肉汁の滴る肉を食いたいという欲求が湧き上がっていた。
勿論、食料の中に肉の類が無いことも無いが、保存食に適した缶詰の肉等で浅倉の欲求が満たされるわけもない。
その浅倉は周囲を見回す。その理由はその辺にいるトカゲ等の動物を探す為である。浅倉は非情に悪食でトカゲも平然と食するし、ムール貝も殻毎食べようともする。仕舞には泥すらも喰う人物だ。
つまり、浅倉はトカゲを見付けそれを食しようと考えたのである。しかし、市街地にトカゲなどいるわけがない。
そんな中、浅倉はある事を思い出す。
「待て……そういえばここに来てから虫も動物も見てねぇな……」
それは、参加者以外の動物や虫を一切見かけていないという事である。市街地であればともかくこれまで浅倉のいた森の中でも動物や虫の類を見かけないというのは奇妙な話である。
特に空腹時にトカゲ等を捕らえて食していた浅倉から見ればある意味異常だろう。なお、これまで気に留めなかったのは戦いを求めていた為気にしなかったからというのは言うまでもない。
「まぁいい……」
が、別に狩りをしたいというわけではない為その事については深く考えないことにした。無い物をねだっても仕方がないと考え、パンを頬張りながら次の目的地をどうするか考える為地図を広げる。
「ん、これは……」
そして、今の自分の目的が果たせる場所が近くにあるのを見付けたのだ。
★ ★ ★
その場所こそがF-6にあるレストランだったのだ。言うまでもないがレストランは食事を行う所だ。つまり、中には食料……肉がある可能性は高い。
肉を食べたい浅倉はすぐさまそこへ向かったのだ。仮に他の参加者がいるのであればそれはそれで好都合、一応パンを食していることで空腹は満たされている為戦うことには支障は無い。
参加者がいなければそこでゆっくり肉を食えばいい、浅倉はそう考えレストランに向かったのだ。
幸か不幸か今までにレストランには他の参加者は一切来ていなかった。つまり、全く手つかずの状態で置かれていたのだ。
戦いが出来ないことについては正直残念ではあったが、今の目的は肉……浅倉はすぐさま厨房に入り肉類や魚介類、野菜類といった食料を見付けた。
そして見付けた肉を使ってレストランの調理道具を使いすぐさま調理を始めたのだ。そして見事に焼き上がった肉を食していたのである。
「ふぅ……」
食事を終えて満腹となった浅倉は少し休むことにした。ちなみにレストランで見付けた他の食料や、包丁やナイフ、フライパンといった調理器具はデイパックに収められている。
また肉を食いたいと考えていたというのもあるし、包丁等は武器として使えると考えたのだ。
当初はある程度絞ろうかと考えたが、物を入れていく内に質量と体積を無視している事に気が付いた浅倉は使えそうな道具はある程度多めに持っていくことにしたのだ。
自身の持っている仮面ライダー王蛇のカードデッキがあるならば武器に固着する必要は無かったが、手元にそれが無い以上はどうしても他の武器が必要なのだ。
手元にはヴィンデルシャフトとマシンガンブレードがあるにはあるが、使い慣れていない武器で戦えるかは正直微妙、アテにはしきれない。故に武器として使えそうな物を確保したのだ。
そして浅倉は手持ちの武器を眺めながらこれからの事を考える。
「こいつはどうしたものかな……」
浅倉はデイパックから出したベルトを見つめていた。キングから渡された仮面ライダーカブトの変身ベルトである。実の所、キングから受け取った時はこれで仮面ライダーに変身出来ると驚喜してはいた。
しかしすぐさまそれは頓挫する。何故ならベルトには何かを填め込む所があるが、そこに填め込むべき物がなかったのだ。これでは仮面ライダーに変身出来ないことは浅倉にも明白だ。
ちなみに浅倉達が使うカードデッキの場合は変身する際にVバックルというベルトが出現する為、カードデッキさえあればすぐさま変身出来る。
だが、カブトのベルトはそうはいかない。変身しようと思っても都合よくはめ込む物が現れるという事は無いのだ。お陰で浅倉の苛立ちは頂点に達したのである。
だが、口うるさいヴィヴィオやシャーリーと別れ、空腹も満たされ、武器の補充も完了した今の浅倉は冷静だ。
「無いなら探せばいいんだろう?」
填め込むべき物を探せば良いと考え、これから戦う相手を捜すついでに探せばよいと結論付けた。
但し、浅倉は気付いていないが実の所そんな必要は無いのが現実だ。カブトのベルトで変身する為には浅倉の推測通り、カブトゼクターと呼ばれる物が必要だ。
しかし、そのカブトゼクターについては実は参加者には支給されていない。支給されているのはカブトの力を強化する為のハイパーゼクターやパーフェクトゼクターで変身する為のゼクターは支給されていないのだ。
では、どうしたらカブトゼクターを入手する事が出来るのだろうか?
答えは簡単だ、カブトゼクターは変身する時において何処かから飛来してくるのだ。それを使えば変身することが出来る。
但し、その為には条件がある。それはカブトゼクターに認められなければならないということだ。カブトゼクターが認める為の条件……それは『自信』である。精神的にそれが満たされていればゼクターは変身者の元へと飛んでくるのだ。
ちなみにこのカブトのベルトが支給されたのはキングである。しかし、カブトゼクターはキングを認めなかった。故にキングはカブトへと変身することは出来なかったのだ。
もっとも、キングにしてみれば本来の持ち主である天道がベルトを所持していないことで変身出来ない事の方が重要だった為、全く気にしていなかったが。
さて、ベルトの本来の持ち主は天道である。天道はその名が示す通り自信に満ちあふれており当然のことながらカブトに変身する資格を満たしている。では、他の参加者の中にその資格を満たす人物はどれだけいるだろうか?
雷となりて自らを神と名乗る男、
赤いコートを着て闘争を求める吸血鬼、
偉大な妖怪を父に持つ妖怪、
愛と平和を訴える男の兄で人間を抹殺しようと目論む男、
元の世界にて人類抹殺を行おうとする片翼の天使、
帝国を破壊しようと目論む漆黒の皇子、
既に死亡している者もいるが彼等ならばカブトゼクターも認める可能性はあるかもしれない……では、浅倉をカブトゼクターは認めるのだろうか?
今はまだ何処かで浅倉を見定めているのかもしれない、浅倉を認めるかどうか……それはまだカブトゼクターにしかわからない話である。
そんなカブトゼクターの思惑を余所に、浅倉の中には別の思惑もあった。
「天道だったか?今度奴に会ったらコイツを返してやってもいいな」
それは、次に天道と会った時にカブトのベルトを返すというものである。
カブトのベルトが天道の物だという話は既にキングからも聞いている。しかし負傷している天道ではベルトを使えないということでキングはベルトを浅倉に渡したのだ。
となればだ、仮に天道の怪我が回復し戦える状態になったならばベルトを返すというのも良いと考えたのだ。
勿論その理由はその後で自分と戦ってもらう為である。もっとも、填める物の無いベルトが使えるとは思えないとも浅倉は考えていたが。
その最中、浅倉は残る2つの武器を見つめる。マシンガンブレードに関しては深く考えることはない。普通にマシンガンとして使える武器だと考えた。とはいえどうせならば剣とかの方が良いと浅倉自身は考えていたが。
続いて、ヴィンデルシャフトを起動して改めて回してみる。トンファー型ということで、浅倉にしてみれば少々使いにくい武器というのは言うまでもない。とはいえ、他に使えそうな武器が無い以上は仕方がないと考えていた。
と、暫くヴィンデルシャフトを回したり調べている内にあるものを見付けた。
「何だこれは……?」
それはヴィンデルシャフトの柄の所に存在するカートリッジシステムである。最初は何の事かわからない浅倉だったが眺めていく内にあることを思い出した。
「そうか、こいつはあいつらが使う武器と同じ……」
それはこの殺し合いに呼ばれる前での話だ。浅倉達仮面ライダーの戦いを妨害する者が自分達の前に現れたのだ。
浅倉は仮面ライダーになる際に士郎よりその人物達の事を大まかに聞かされていたのだ。
そう、その人物こそが高町なのは達なのだ。浅倉が実際に彼女達と遭遇したのは一度しかないが、ヴィンデルシャフトは彼女達の使う武器と系統が近かった。
「コイツを使えば連中と同じ事が出来るというわけか……どうやら、考えていたよりは使えそうな武器らしいな」
確かにデバイスを使えば浅倉でもある程度の魔法を使うことが出来るだろう。真面目な話、浅倉が魔力を扱えるかどうかは不明だがカートリッジを使えば純粋に攻撃力を強化することが出来る。
事実として魔力を扱えない少女でもある吸血鬼の両腕を切断した上で更に身体を切り裂いた事が出来た事からもそれは明らかだ。その事を知らない浅倉ではあったが、カートリッジシステムは十分に使える物だと考えていた。
「待てよ、確かあのガキのママって奴の名前は……」
その最中、浅倉はヴィヴィオが話していた『高町なのは』の事を思い出す。ヴィヴィオの話など殆どまともに聞いていない浅倉ではあったがなのはの事ばかり話していた事もありその事は覚えていたのだ。
ヴィヴィオによるとなのはは優しくて強いという話であった。とはいえ、子供の言う『強い』など殆どアテにしていなかった為、その事については殆ど気に留めていなかった。
浅倉にとって重要だったのはヴィヴィオを餌にして他の参加者をおびき寄せる事でしかなかった為、ヴィヴィオの話など殆ど聞き流していた。
だが『高町なのは』という名前を冷静に思い出した浅倉にとってこれは重要な意味を持つ。
「奴のママも『高町なのは』だったな……あのガキの名前も『高町なのは』……どういう事だ?」
そう、先程も述べた通り浅倉はこの殺し合いに呼ばれる前にもなのはと遭遇しているし、彼女についての話も士郎から聞いている。
だが、その情報には大きな差異が見られる。
士郎から聞いた『高町なのは』は9歳の子供、ヴィヴィオから聞いた『高町なのは』は大人の女性でヴィヴィオのママ、
同じ名前でありながらその人物像には大きな差異が見られる。
「確か名前が2つあったな」
浅倉は改めて名簿を確認する。
実の所、名簿自体は来た時点……ヴィヴィオと遭遇する前にも一度確認はしている。だが、知り合いや仲間、守るべき者のいない浅倉にとって名簿確認は自分と戦うべき強者を確認する為のものでしかない。
さて、名簿を見た限り元の世界にいた仮面ライダーの名前は誰一人としていなかった。士郎と同じ姓を持つ優衣の名前が気になった物の2人の関係に興味など無い浅倉にしてみればどうでもいい話だった。
しかし、名簿の中には士郎から聞かされた仮面ライダーの戦いを妨害する者達の名前があったのだ。
高町なのは、フェイト・T・ハラオウン、八神はやて、シグナム、ヴィータ、シャマル、ザフィーラ、クロノ・ハラオウン、ユーノ・スクライア
仮面ライダーの戦いを妨害する者である彼女達の名前を確認した浅倉はその存在をマークしていたのだ。ちなみになのは、フェイト、はやての名前が2つあったもののその時の浅倉は特に気に留めてはいなかった。
ちなみに浅倉が実際に遭遇したのはなのは、はやて、シャマルの3人しかいない為、彼女達以外の実力については知らないが、彼女達の実力を踏まえて相当な物だということは予想出来ていた。
その為、先程の放送でなのは、シグナム、クロノの死亡が知らされた時には戦える相手が減ったことで僅かながらも悔しさがあった。もっとも、他の奴を探せばいいと特に引きずる事もなかったが。
さて、これまで浅倉はずっと『高町なのは』を9歳の少女だと思っており、名簿にでている『高町なのは』は彼女の物だと思っていた。
だが、ヴィヴィオの話では『高町なのは』は大人の女性とある。そうなれば名簿にでている『高町なのは』は彼女の物の可能性があるという事にはならないだろうか?
そして、名簿には何故かなのは、フェイト、はやての名前が2つずつ存在する。もし、これに意味があるとしたらそれは何だろうか?
だが、浅倉はその事について深くは考えず、シンプルな結論を出した。
それは、言葉通りなのは、フェイト、はやては2人ずついるというものである。そして、彼女達の片方が浅倉の知る9歳の彼女達で、もう片方がヴィヴィオの話していた大人の彼女達だと結論付けた。
ちなみに、大人のフェイトがいる事についてはヴィヴィオとシャーリーの会話が耳に入った時に彼女の名前が出ていたことからの判断で、大人のはやてについては大人の2人がいることからの推測である。
無論、どうして同じ名前で年齢の違う2人がいるのかは引っかかるが、浅倉はそれについては特に考えていない。何度も書くが浅倉の目的は戦うことでしかないからだ。
となれば、この後なのは達を探すというのも良いだろうと浅倉は考えた。
既に死亡しているなのはがどちらなのかは分からないが、9歳のなのはの実力は確かな物だし、大人のなのはにしてもヴィヴィオの言葉を信じるなら強い相手という事になるのでどちらにしても相手としては相応しいだろう。
更に、大人のなのはに遭遇したならばヴィヴィオの名前を出せば戦いに応じる可能性は高い。探す意味はあるだろう。
その一方、浅倉は自身が持っていたカードデッキの事を考えていた。ある程度の武器が揃った為、戦う分には困らない。だが、浅倉は仮面ライダーだ。
出来うるなら仮面ライダーとして戦いたいのが本音である。果たして、自身の持っていた王蛇のカードデッキは何処に行ったのだろうか?
「そういやプレシアが言っていたな……武装を解除してランダムで支給したと、ならば支給された奴から奪い返すだけだ」
今更ながらに最初の場所でプレシアが参加者の元々持っていた武装を解除してプレシアサイドで用意した幾つかの道具と混ぜてランダムに支給した事を話していたのを思い出した。
実際、浅倉がそこまで考えているかは別にして浅倉自身の支給品もその辺にありそうな鉄パイプはともかくぬいぐるみはヴィヴィオの所有物であったし、クラールヴィントはシャマルのデバイスだ。
それから見ても、参加者の武装がその持ち主本人にそのまま支給されている可能性は低く、他の参加者に支給されている可能性は高い。
また、参加者がある支給品を支給されていても、それが元々その参加者自身の支給品である可能性は低い。むしろ他の参加者の所有物の可能性が高いと言えるだろう。
もっとも、幾つか例外は存在し参加者の所有物や武装が持ち主自身に支給されているもしくは没収されずにそのまま残っている参加者は何人かいるが、それは稀なケースだ。
なお、先程も述べた通りこの事はプレシアが最初に話していた事、つまり参加者全てに与えられている情報だ。
だが、ある参加者はその事実を見落としている……もしくは聞き逃している、忘れているだけかもしれないがその為に致命的な勘違いをしている。
その参加者はつい2,3時間程前まで浅倉と同行していたシャーリーだ。彼女の父親はゼロと名乗る仮面の男の行動に巻き込まれて死んだ……ゼロに殺されたと言ってもいいだろう。
偶然にもシャーリーはこの場においてゼロの身に付けている仮面が支給された参加者……天道と遭遇出来た。
彼女はあろうことか仮面を天道が持っていたことで天道をゼロだと決めつけてしまったのだ、天道自身もプレシアが入れたと話したにも関わらず全く信じていない。
勿論、彼女の心情を考えれば、プレシアの話を忘れていたり、天道の言葉を信じられないのも無理は無いだろう。
しかし彼女はその後自分を含めた参加者数人の支給品を確認している。ヴィヴィオのぬいぐるみやシャマルのクラールヴィントを浅倉が持っていた事を知っているし、
シャーリー自身に支給されたヴィンデルシャフトやマシンガンブレード、銃が本来は誰の物かは知らないものの彼女自身の物ではない事も当然わかっている(余談だが銃の本来の所有者はゼロである)。
そこから冷静に考えれば、ゼロの仮面も天道の元々の所有物ではない可能性がある事に気付きそうなものだが……果たして彼女はいつまで勘違いを続けるのだろうか?
もっとも、もしかしたらその勘違いに気付きゼロの仮面の本来の所有者……ゼロの正体を知らない方が彼女にとって幸福かも知れないが、それはまた別の話である。
閑話休題、
何はともあれプレシアの言葉を信じれば自身の武器ともいうべき王蛇のカードデッキも他の参加者に支給されているのは想像に難くない。その人物を探し出して奪い返せばいい、浅倉はそう結論付けた。
そして浅倉は首に手を当てる。そこにはプレシアによって嵌められた首輪が着けられている。
「この首輪……イライラさせる……」
首輪はこの殺し合いを嫌がる参加者に強要させる、プレシアに刃向かうのを阻止する為の物だ。
殺し合いからの脱出を目論む参加者については邪魔な物でしかないが、殺し合いに乗った参加者については別に邪魔な物ではない。
また、殺し合いに乗っていても最終的にプレシアも殺すつもりの参加者にとっては邪魔だが、そういった意志がなく放送で言っていた願い事を叶えるつもりの参加者ならば邪魔ではない。
さて、浅倉にしてみればどうだろう?浅倉は殺し合いに乗っていて、なおかつ現状プレシアを殺そうと考えてはいない。願い事については現状考えていないが、せいぜい『戦いの続行』といった所だろう。
しかし、浅倉にとっても首輪は邪魔な物だった。
何て事はない、首輪をさせられているのが気に入らない、イライラするといった単純な理由だ。
だが、その単純な理由であっても浅倉は機会さえあれば首輪を外したいとは思っていた。とはいえ、機会があれば程度でそれに固着するつもりもなかったが。
さて、これから浅倉はどうするのだろうか?このまま戦いを求め他の参加者を捜しても良いがもう少し休んでもいいだろうと考えていた。
それに時計を確認した所11時を過ぎている。12時になれば放送が流れる、放送となれば新たな死亡者、禁止エリア等といった新たな情報が入る、今後の戦いの為にも放送は聞いておきたいと考えていた。
勿論、それまでにレストランの食料目当て等で他の参加者が来たのであればその人物と戦うつもりではある。
では、放送が終わり情報がまとまった後はどうするか?放送の内容にもよるが、戦える参加者を求めて市街地にある人が集まりそうな施設に向かうのも良いだろう。
しかし、ここで浅倉の脳裏にある手段が浮かぶ。
別にこっちから参加者を探しに行くばかりが能ではない。逆に向こうからやって来るのを待ちかまえるというのも1つの手である。そう、何かしらの手段で他の参加者を誘き寄せ、彼等を迎え撃つという手段だ。
問題はどうやって参加者を誘き寄せるか……浅倉はレストランの厨房のコンロを思い出し……
「燃やしてみるか?」
【1日目 昼】
【現在地 F-6 レストラン】
【浅倉威@仮面ライダーリリカル龍騎】
【状態】右手に火傷、満腹
【装備】ライダーベルト(カブト)@魔法少女リリカルなのは マスカレード、マシンガンブレード@仮面ライダーカブト
【道具】支給品一式、ヴィンデルシャフト@魔法少女リリカルなのはStrikerS、肉×10kg、魚×10kg、包丁×3、フライパン×2、食事用ナイフ×12、フォーク×12
【思考】
基本:戦いを楽しむ。戦える奴は全員獲物。
1.放送まで休む。但し、放送前に誰かが来た場合はそいつと戦う。
2.放送後、戦える者を探す為市街地にある施設に向かうか?もしくはレストランを燃やし他の参加者を誘き寄せようか?
3.王蛇のカードデッキ、及びカブトのベルトに填める物(カブトゼクター)を探す。
4.回復した天道と戦う時にはベルトを返した上で戦う。
5.なのは(sts)と遭遇した時にはヴィヴィオの名前を出してでも戦ってもらう。
6.キング、鎌を持った奴(キャロ)、なのは、フェイト、はやて、ヴィータ、シャマル、ザフィーラ、ユーノと戦う。
7.首輪にイライラ、外したい
【備考】
※プレシアは殺し合いを監視しており、参加者の動向を暗に放送で伝えていると考えています。
※ヴィンデルシャフトのカートリッジシステムに気付きました。
※カブトに変身できる資格があるかどうかは分かりません。
※なのは、フェイト、はやては自分の知る9歳の彼女達(A's)とヴィヴィオの言っていた大人の彼女達(StS)の2人がいると考えています。
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