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「Change the world ~変わる世界~」(2010/01/31 (日) 17:54:46) の最新版変更点
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*Change the world ~変わる世界~ ◆vXe1ViVgVI
G-4に位置する市街地を、一台の大型トレーラーがエンジン音を撒き散らしながら走行していた。
その運転席に座するアレックスは、危なげない手捌きでトレーラーを操り、目的の地を目指していく。
時折後方を振り返るのは、仲間の生存が心配だからか。
満身創痍のLを保護してから、もはや二時間以上もの時間が経過している。
いまだ命を保っている事さえ殆ど奇跡に等しい。
加えて、現在生死の境目をさ迷っている男は、非常に優れた頭脳を有しているのだ。
他を遥かに上回るその頭脳は、このデスゲームを転覆させるに必要不可欠な存在となる筈だ。
喪失する訳にはいかない、必ず延命させねばならない男。
心配するなという方が無理であろう。
(地上本部まではおよそ3km程か。10分もあれば辿り着くだろうが……)
殆ど表情には出さねど、アレックスは焦燥を感じていた。
運転席に設置されたデジタル型の時計を見るに、放送の時間も近い。
あれからザフィーラはどうなったのか。
果たしてLの命を救う事は出来るのか。
機動六課の面々は無事なのか。
焦燥を覚える要素は山のように存在した。
心内に溜まる焦りに乗じて、アクセルを踏む力は強くなる。
それに伴い、段々と加速していくトレーラー。
けたたましいエンジン音が昼間の市街地に吸い込まれ、消えていく。
苛立ちに眉を顰めながら、トレーラーの操作を続けるアレックス。
彼の首輪から放送が流れ始めたのは、それから凡そ数分後の事であった。
この放送にて呼ばれる死者の中でアレックスの知人は四名。
その過酷な現実に直面した時、アレックスはどのような感情を覚えるのか?
それはまだ、彼自身でさえ予想する事が出来ないだろう感情。
『戦いの神』としてではなく『機動六課隊員』として、彼は仲間の死を知る。
第一回放送時の死者を聞いた際は、殆ど動揺を見せなかった。
さて今回は―――?
―――時間は刻一刻と、流れていく。
□ ■ □ ■
放送に対する考察を終えてから数分後、金居は学校に向けて足を進めていた。
灰色のコンクリートで舗装された大通りに沿って、ひたすらに前進。
周囲に警戒を飛ばすのも忘れずに、クワガタ型の始祖たるアンデットが昼間の市街地をひた歩いている。
(それにしても、なぜ俺は首輪の回収を忘れていたのか……)
足を動かしながら、金居はある疑問について頭を悩ませていた。
それは失念していた首輪の存在について。
奢りでも何でもなく、金居は自身が高等な頭脳を有していると自覚している。
だからこそ、今回の失念が彼に与えた衝撃は大きい。
(まさか思考の内容についてまでも制御下に置かれている? ……バカな、流石にそれは有り得ない。
洗脳による思考の束縛ならまだしも、首輪や脱出に関する考察が出来て『首輪の回収』という思考のみを忘れさせるというのは……いや、だが……)
『首輪の回収』という重大な事項を忘却する自分に、金居はどうしても作為的なもの感じずにはいられなかった。
首輪について思い出せなかったのは、あの場に居た四人全員。
弁慶のような単細胞ならまだしも、高町なのはやペンウッドのようなそれなりに頭の切れる奴等までもが、首輪の存在を思い出せなかったのだ。
流石に不自然さが覚えずにはいられない。
(……万が一、という事も考えておいた方が良いか……)
思考の末に辿り着いた答えは保留。
金居自身は殆ど有り得ない事だと考えているが、現状では明確な答えは導けない。
プレシアが人の思考回路を操るだけの『力』を持っている可能性もあれば、偶然に偶然が重なり自分達四人全員が首輪という存在を忘れていたという可能性もある。
どちらか一方の可能性を切り捨てるには、余りに時期尚早。
選択肢の一つとして残しておいても、何ら問題は無いだろう。
「……と……着いたな」
『首輪の忘却』についての軽い考察を終えたその時には、既に金居は学校の付近へと到着していた。
思考への集中により散漫となっていた警戒心を、最大限にまで上げる金居。
校門の影に隠れ膝を付くと、顔の半分を門柱から突き出し敷地内の観察を始めた。
金居は、広大な校庭の隅々にまで視線を送っていく。
(……チッ、やはり居やがったか……)
そして、金居は発見した。
校庭のド真ん中にて、悠然と無防備に立ち尽くす男の姿を。
そして、一目で理解する。
奴が、奴こそが、あの『禍々しい気配』の根源だと。
あの紅コートの男は危険だと。
あの男は、不死者である筈の自分の生命を脅かす存在だと……金居は本能で感じ取った。
その頬から、一筋の汗が流れ落ちる。
(……接触は……しない方が得策だな……)
その決断は迅速なものだった。
危険だと分かっている相手へと、わざわざ出向く道理もない。
危険だと分かっている相手に、わざわざ遭遇する必要もない。
金居は、発見から数秒とせずに接触を諦め、立ち上がる。
あの男もずっと学校に居る訳ではない筈。
少しの間この近隣の市街地に身を隠し、適当な頃に再び訪れれば良い。
弁慶達の首輪が奪われるかもしれないが、それはそれで諦めるしかない。
あの男と接触してまで、首輪を入手しようとは思わない。
首輪が入手できなかったその時は、USBの中身だけでも確認して、直ぐに立ち去ればいいだけの話だ。
確かに無駄な時間の浪費は惜しいが、身の安全には及ばない。
勝機がない……とまでは思わないが、あの異様な雰囲気を醸し出す男と戦闘して無事で済むとも思えない。
まだ中盤とも言えるこの戦い。無駄なダメージを負う事は避けたい。
それは不死者たるアンデットであろうとも、だ―――。
―――そう理屈づけ、金居は学校に背を向ける。
あの異様な男の存在は確かにイレギュラーであったが、予想の範囲外と言う訳ではない。
学校に進路を変更した時点で、最悪の展開の一つとして、頭の片隅には置いてあった。
予想をしてあったからこそ、悠然とした心持ちで対処できる。
あの男の発見は、何ら今後に影響する事項では無い。
(……さて、何処で時間を潰すかな)
校門から少し離れた場所で首を回し、周囲を見回す金居。
手頃な建物は直ぐ発見できた。
それは何の変哲もない平屋建ての平凡な民家。
その民家へと金居は悠然と歩を進める。
金居の表情に焦りはなく、また確かな余裕が見て取れた。
そう、金居の判断に間違いはない。
学校にいるアーカードとの接触を避けた事も、アーカードが消えるまで待機を選択した事も、何ら間違いではない。
むしろ現状からすれば的確な判断。
流石は、あの熾烈なバトルファイトを最終盤まで生き残るアンデットと言えよう。
だが、ただ一つ、金居は重大な見誤りをしていた。
いや、これを見誤りと言うには余りに酷か。
不運……そう、金居は不運だっただけなのだ。
彼の行動に間違いはなく、ただただ不運だった。
その頭脳を持って立ち回るには、その判断を持って回避するには―――余りに相手が悪すぎた。
吸血鬼の始祖たる化け物から逃亡を成功させるには、彼の最適な判断を持ってしても、全てが足りない。
吸血鬼の『第三の目』からは、逃げ切れない。
轟音と共に、彼の右手側から、白銀の十字架が飛来した。
十字架は、金居の直ぐ手前の地面に突き刺さり、彼の足を止める。
金居は、十字架の直ぐ手前の地面に立ち止まり、呆然と飛来物を見詰める。
十字架を投擲した男は、数秒前まで学校と市街地とを区切っていたコンクリートブロックを踏みしめながら、金居に向けて笑顔を飛ばす。
急変を見せる事態に、さしもの金居も動きを忘れ、立ち尽くしていた。
制止する彼の世界を再び動かしたのは、鮮血の如く紅を身に纏った男の一言。
「さて、私はお前に聞かなければならない事がある」
クワガタムシの始祖を前に、吸血鬼の始祖は語る。
紅色のコートを棚引かせ、紅色の瞳を歪ませて、万にも及ぶ命を啜ってきた口を開く。
「我がマスターを、インテグラル・ファルブルケ・ヴィンゲーツ・ヘルシングを殺したのは―――貴様か?」
頬に残る涙の残滓を拭き取ろうともせず、吸血鬼はただ一つ、問い掛けた。
心の奥底にたぎる憤慨を、一縷たりとも面に出す事なく―――不死王は不死者の前に降臨した。
□ ■ □ ■
「ふむ、そうか。貴様が訪れた時には既にインテグラルは殺されていたか」
「ああ、そうだ。……すまないな。お前の知人だと知っていれば、首輪のサンプルを取ろうとは考えなかった」
邂逅から数分後、不死者と不死王は肩を並べて市街地を歩いていた。
歩きながら行われているのは、互いが持つ情報の交換。
遭遇時とはまるで正反対の、比較的穏やかな雰囲気が二人の間には流れていた。
「……それにしても少し予想外だったな」
「何がだ?」
「いや、ペンウッドの話していたお前とはまるで印象が違っていてな。
奴の話によると、アーカードという吸血鬼は確実に殺し合いに乗っているとの事だったが」
「流石はペンウッドだ。良く分かってるじゃないか。まさにその通り、私は殺し合いに乗っていた。
そしてこの十二時間、闘争に闘争を重ね、人々を殺害して回ったよ」
男が口にした最初の問いに、金居は平然と嘘を吐いた。
アーカードに発見された事に多少の動揺は感じていたものの、頭脳は普段通りに動いてくれた。
冷静に思考し、動揺を心中に留め、嘘の解答を導き出したのだ。
勿論アーカードにその虚言を見抜く術は無く、完全にではないだろうが、金居の言葉を信じてしまう。
本心はどうあれ、表向きは主催への対抗を方針とする二人。
二人は互いが持つ情報を交わし合いながら、市街地を歩き始めた。
「……その吸血鬼が何故主催者に対抗する道を選んだんだ? この十二時間の間に……お前に何があった」
素直に情報交換に応ずるアーカードを前にして、金居は違和感を覚えずにはいられなかった。
そして、ある種の……俗に嫌な予感と云われる感情を感じていた。
登場時の行動は常軌を逸していたが、それ以外はペンウッドの話とは正反対の紳士ぶり。
しかしながら、ペンウッドやインテグラルという人物に付いてもしっかりと把握している。
本人しか知る筈の無い情報を有し、だが事前に聞いた人物像とはまるで違った男。
眼前の男が本当に『アーカード』なのか……金居には判断する事が出来なかった。
「対した事ではない。ただ主人の命令に従ったまでだ」
「……命令……? だが、お前の主は学校で死んでいたのでは……」
「そう、死んでいたよ。そして最期の最期、燃え尽きる寸前の篝火で伝えたのだ。私に、主人の言い付けすら守れなかった私に……最期の命令(オーダー)を遺して死んでいったのだ」
アーカードの言葉に金居の疑念は溶け去っていった。
確かに金居の一撃はインテグラルの胸元を貫いた。
だが即死だったかと問われれば、彼自身確信は持てない。
死に至る寸前に、何らかのメッセージを残す事は可能だったのかもしれない。
つまりはそうだ。
自分は、最強の吸血鬼と、それを止める唯一の『鍵』とを引き合わせてしまったのだ。
吸血鬼の殺戮劇を続行させようと行った事が、結果としてその幕を下ろすきっかけとなってしまった。
そして誕生したのは、殺し合いを阻止せんと行動する不死王。
優勝を目指す者達からすれば、厄介この上無い存在。
主催者に対する者達からすれば、これ以上無い程に心強い味方。
『鍵』を破壊したつもりが、二人を引き合わせす結果となった。
自身の行動が齎した現状に、思わず金居は歯噛みする。
「……参加者だ」
そんな金居を尻目に、アーカードは行動を始めていた。
唐突にある方向……市街地の南側へと視線を向け、そこに建ち並ぶビル列を見詰める。
そのアーカードの異変に金居も気付くが、彼の行動が何を意味するかまでは分からない。
「何を言っている? 何処にも人の気配はないが……」
「音だ。南の方からうっすらとだがエンジン音が聞こえる。おそらく大型車……この会場内で仕入れたか、支給されたかのどちらかだろう」
アンデットである金居も、常人とは比較にならない程の感覚神経を持っている。
だが、その聴覚を総動員してもエンジンの音などは感じ取れない。
この察知能力、流石は最強の吸血鬼と言ったところか……と、僅かな感心と脅威とを覚える金居であった。
「少し見てくる」
一言そう告げると、アーカードはビルの一つへと近付いていく。
そして、それがさも当然のように―――ビルの壁へと『垂直』に立ち上がった。
重力という概念をまるで無視した行動。
その光景に金居は目を見開き、驚愕を面に出していた。
悠然と歩を進めながら壁を登っていくアーカード。
その身体が屋上へと到着したのはほんの十数秒後の事であった。
「あそこだな。人数は二人……一人は死にかけか」
とはいえ、屋上からであっても市街地を見渡す事は不可能。
建ち並ぶ多種多様の建造物が阻害し、市街地の全貌を把握することは出来ない。
ましてや、走行する車両の発見など出来る筈もない。
その筈なのだが―――アーカードの表情と発言は、捜索の成功を告げている。
小さく頷くと、アーカードは寸分の躊躇いも見せずに屋上から飛び降りた。
重力に引かれ、その落下速度はどんどんと加速していく。
だが、アーカードは動揺する様子を全く見せず、そして優雅に着地した。
多大な衝撃がその両脚に掛けられた筈なのに、身じろぎ一つしない。
それどころかその様子はまるで羽毛が舞い落ちたかの如く。
アーカードは再び金居の前へと現れた。
「南東に約1km……そこを漆黒のトレーラーが走っていた。中には男が二人。一人は無傷、一人は死にかけだ。
おそらくはあの高層ビルでも目指しているのだろう。接触するぞ」
「……この位置から良く見付けられたな」
「意識して隠れているのならまだしも、あれだけ大っぴろげに動いているのだ。吸血鬼の『第三の目』からは逃れられんよ」
そう言い放つと、アーカードは金居に背を向け、市街地の奥へと進んでいく。
その後ろ姿を見詰めながら、金居は思考する。
どうやってこの化け物を殺害するか―――ただそれだけをひたすらに考える。
(ペンウッドの言う通りだな……コイツは大した化け物だ)
遭遇から僅か十数分であったが、金居はアーカードの異常性を充分に理解していた。
完璧に隠れていた筈の自分を易々と見付け出した察知力。
制限下に在りながら1km先のエンジン音を聞き取る聴覚。
建ち並ぶビルの数々を物ともせずに1km先を走る車を発見し、その状況すらも把握した視覚。
成る程、化け物という言葉が此処まで当てはまる者もそうは居ないだろう。
だが―――
(―――殺す方法がない訳ではない)
そう、この殺し合いに参加させられている時点で断定できる。
こいつは死ぬ。
ペンウッドの口は、まるで打つ手がない最強の化物のように語られていたが、それは違う。
こいつは死ぬのだ。少なくとも首を斬り落とせば、こいつは死ぬ。
首輪が装着されてる時点で、それは自明の理。
殺せる存在なのだ。
自分達アンデット同様、制限によりこいつは『殺せる存在』に成っているのだ。
(……だが、慎重に動く必要はあるか……)
とはいえアーカードが難敵であることもまた事実。
単純な不意打ちではおそらく殺害には至らない。
行動を起こす時は慎重に慎重を喫し、攻撃する時は全力に全力を込めた一撃により一瞬で終わらせる。
まともな戦闘になれば無駄な被害を被るのは分かりきっている。
下手すれば『死』に繋がる程の傷を負う可能性すらある。
この状況を切り抜けるには、慎重さを欠いたら話にもならないだろう。
「おい、不死者(ノストラフィラ)。置いてくぞ」
アーカードの声に思考を打ち切り、金居は足を動かし始める。
焦る必要はない。
じっくりと機が熟すのを待てば良い。
……そう考え、金居はアーカードと行動を共にする。
自身の行動が招いた状況に頭を悩ませながらも、金居は動く。
優勝し自分達の世界を手に入れる為―――ただそれだけを望みクワガタムシのアンデットは前に進む。
□ ■ □ ■
アレックス達が地上本部に辿り着いたのは、放送が終わってから約十分後の事であった。
到着したアレックスはLを背負い、出来るだけ振動を与えないよう走り出した。
地上本部の医務室は一度だけ利用した事がある。医務室に着くのに大した時間は掛からなかった。
Lをベッドの一つに寝かせると、アレックスは治療を開始する。
治療器具も設備も充分。ただ足りない物はアレックスの知識のみ。
如何に知識を振り絞ろうと、応急手当ての範囲を出る事はあらず。
だがそれでもと、出来る限りの治療をアレックスはLへと施していく。
アレックスの手が止まったのは、Lの身体が包帯と湿布に覆い隠されたその時。
溜め息と舌打ちとを吐き捨て、アレックスは付近に置かれた回転椅子へと腰を落とした。
その表情は……悔しさに満ちた物であった。
「……無理か……」
手は尽くした。彼の持つ知識の限りに、治療は行った。
だが、到底足りない。余りに時間が経ち過ぎている。
もはや応急処置でどうこうなる状況を逸脱していた。
救えない。
自分では、この命を、救えない。
―――その事実がアレックスの感情を蝕んでいた。
「……済まない、ザフィーラ」
思い出されるは、数時間前自分に全てを託して殿を勤め、そして先の放送で呼ばれてしまった守護獣の姿。
恐らくはあの紫色の大蛇との戦いで死亡したのだろう。
自分が残っていれば、とは言わない。
ただその最期の頼みを叶えられなかった事、それが、それだけが悔やまれる。
「機動六課の奴等も殆どが死亡した……残るはヴィータ、キャロ・ル・ルシエ、スバル・ナカジマのみか」
死に掛けのLを見詰めながら、アレックスは一人言葉を紡ぐ。
放送で告げられた、新たなる世界で出会った仲間達の死。
何もせずにいた自分がいる一方で、死者の数は膨れ上がっている。
仲間の殆どは死亡し、自分はのうのうと生き延びている。
何が違ったのか。
死んだ仲間達と自分とでは何が違ったのか。
分からない、分かる訳のない問いが脳裏に纏わりついていた。
「闘争……」
思えば自分はこの殺し合いの場で闘争らしい闘争をしていない。
唯一の闘争はセフィロスやシグナムの三つ巴のみ。
その三つ巴も結果として逃亡を選択した。
闘争を運命付けられた自分とは思えない、此処までの道のりであった。
「これは運命から逃れられたという事なのか……?」
自問に対する解答は瞬時に思い浮かんだ。
アレックスは自嘲の念と共にその答えを口にする。
「……違うな」
違う、自分は運命から逃れられてなどいない。
心の奥底で求めている。
闘争を、血湧き肉踊る闘争を……求めている。
だが―――
「だが、俺は……決めた」
そう、自分は決めた筈だ。
運命に縛られた闘争は、もうしないと。
奴等と同様に、自分の意志による闘争を行おうと……新たな世界に飛ばされた時に誓った。
だから、この殺し合いに於いても無駄な戦闘はしない。
プレシア・テスタロッサを―――闘争を強制させる魔女を打倒する為に、力を振るう。
心中に宿る渇望などは二の次だ。
死んでいった仲間の為に―――、
眼前で死へと向かっている仲間の為に―――、
そして―――
(―――俺は……俺の為に……力を使う)
『戦いの神』としてではない。
キース・シルバーとしてではない。
ただ一人の意志を持った人間・アレックスとして、力による自由ではない、真なる自由を勝ち取る為に―――戦おう。
「だから……済まない」
Lのデイバックを回収し、アレックスは立ち上がる。
今この場に居続けたところで、彼に出来る事は何も無い。
出来うる限りの治療はしたのだ。
しかし、それでもLの命を救う事は不可能であった。
これ以上アレックスに出来る事といえば、その死の瞬間を看取る事のみ。
だが、その行動には何ら意味が無い―――と、アレックスは冷徹に断定する。
そうして無駄に時間を浪費するならば、一分一秒でも早く行動を始めるべきだ。
その一分一秒で救える命が有るかもしれない。その一分一秒で打開が可能な状況が有るかもしれない。
ならばこそ、今は動く時だ。
(取り敢えずは地上本部の内部を捜索するか。何か出て来るかもしれん)
緩慢なる死へと向かうLを放置し、アレックスは出口へと近付いていく。そして扉は開く。
外に広がるは今までの世界とは別の新たな世界。
仲間達の死を背負い戦う事を決意したアレックスの、新たな闘争の世界。
彼はその世界へと踏み出した。
【1日目 日中】
【現在地 E-5 地上本部内部】
【アレックス@ARMSクロス『シルバー』】
【状態】健康、疲労(小)
【装備】なし
【道具】支給品一式×3、首輪探知機、ガムテープ@オリジナル、ラウズカード(ハートのJ、Q、K)@魔法少女リリカルなのは マスカレード、レリック(刻印ナンバーⅥ、幻術魔法で花に偽装中)@魔法少女リリカルなのはStrikerS、首輪(シグナム)、首輪の考察に関するメモ、ランダム支給品(ザフィーラ:1~3)
【思考】
基本:この殺し合いを管理局の勝利という形で終わらせる。
1.地上本部の中を探索する
2.自分の意思による闘争を行う。
3.六課メンバーと合流する。
4.キース・レッドに彼が所属する組織の事を尋問する。その後に首輪を破壊する。
5.東側に医療設備が偏っているのが気になる。
6.このまま行動していてキース・レッドに出会えるのだろうか。
【備考】
※身体にかかった制限を把握しました。
※セフィロスはデスゲームに乗っていると思っています。
※はやて@仮面ライダー龍騎は管理局員であり、セフィロスに騙されて一緒にいると思っています。
※キース・レッド、管理局員以外の生死にはあまり興味がありません。
※参加者に配られた武器にはARMS殺しに似たプログラムが組み込まれていると思っています。
※殺し合いにキース・レッドやサイボーグのいた組織が関与していると思っています。
※他の参加者が平行世界から集められたという可能性を考慮に入れました。
※ザフィーラから第1放送の内容とカードデッキに関する簡単な説明を聞きました。
※市街地東側に医療設備が偏っていることから、西側にプレシアにとって都合の悪いものがあるかもしれないと推測しています。
【黒の騎士団専用トレーラーの状態】
※トレラーは地上本部入り口前に放置されています。
※内部のコンピューターのOSは地球及びミッドチルダのものと異なります。
※機械設備や通信機能は全てコンピューター制御です(ただし居住スペースはその限りではない)。ギアス世界のOSを知る者もしくはOS自体を書き換えない限り使用不可能です。
※ベノスネーカーとの接触でエンジン部に多大なダメージを負いました。このまま走らせるとエンジン部が爆発する可能性が非常に高いです。アレックスはこの事にはまだ気づいていません。
□ ■ □ ■
そして、死に掛けの探偵が残された医務室。
治療を施されたとはいえ、重傷のその身体はゆっくりと死へと進んでいく。
唯一の味方も離れていった。
もはや手の尽くしようはなく、世界最高と云われた探偵は再び黄泉の世界へと引きずられようとしている。
もはや誰にも手の尽くしようはない。
もしこの場に医師が居たとしても、そのボロボロの身体を一目見ただけで、直ぐさま諦めてしまうだろう。
医者と言えど全ての人間を死の淵から救える訳ではない。
どうしようも無い、どう治療しても救う事が出来ない患者は居るのだ。
今のLなど、将にそうだ。
医者には、いや人間にはどうする事もできない状況。
―――そう、人間にはどうする事もできない状況であった。
「なあ金居、人間を殺すのは何だと思う?」
だが、どうだろう?
彼等のような人外の化け物達にとっては、Lは本当に手の尽くしようのない患者なのか?
彼等のような死を知らぬ化け物達にとっては。Lは本当に手の尽くしようのない患者なのか?
答えはノーだ。
「……今は謎掛けなどをしている場合では無いと思うが」
「答えは簡単だ。『あきらめ』さ、『あきらめ』が人を殺す。絶望的な状況であきらめなかった者のみが、生を掴む事が出来る。
あきらめを拒絶した時、人間は人道を踏破する権利人となりうるのだ」
何時のまにか、医務室に二人の男が立っていた。
男達は死に掛けのLを見下ろしながら、言葉を交える。
片や呆れの色を、片や興味の色を、その表情に浮かべながら、二人はそこに居た。
「この男は助からないな。治療した痕があるが……おそらくは諦めたんだろう。まぁこの様子なら仕方ないだろう。
血の臭いを辿って此処まで来たが……無駄手間だったな」
「そうかな? この男はまだあきらめていないぞ。こんな状況に陥りながら、未だ『生』を掴もうとしている」
「……確かにあきらめは人を殺す。だが、あきらめなかったからといって、人間が生き延びられる訳ではない。
意志だけではどうにもならない事もある。そうだろ? 」
「そうだ。あきらめなかったからといって、必ず生き延びられる訳ではない。だが、あきらめなかった者が機会を得るのだ―――今回のようにな」
吸血鬼のその行動を、不死者は止める暇もなかった。
Lの首元に顔を近付け、刃物のように洗練された牙を血管へとめり込ませる。
そして―――噴き出したその真紅吸い上げた。
Lの身体を循環し続ける血液が、吸血鬼の喉を通り過ぎ、浸透する。
血液を通貨とした魂と命の同化。
人間を超越する為の儀式。
これが男の生存できる唯一の方法。
Lは、Lの諦めなかった心が―――最後のチャンスを掴み取ったのだ。
「あの男は放っておいて良いのか?」
数分後の市街地、アーカードと金居の二人がそこを歩いていた。
ポツリと放った金居の問にアーカードは笑顔を浮かべる。
そして、ゆっくりと振り返り、その視線を金居へと合わせた。
「さあな。奴がどうなるかは私にも分からん。
だが、最低限の書き置きはしておいた。奴がどう行動するかは、奴自身が判断をする事だ。
理性の欠片もないグールになる可能性だってあるし、吸血鬼になったとしても、化け物の身体での『生』を望むかは分からない。
化け物となった自分に悲観し、自らの死を選ぶ可能性も十二分に有り得る」
心底楽しそうにアーカードは語る。
男の―――最期まであきらめる事をしなかった男の、その可能性を、その選択を待ち望む。
「まぁ良いがな。俺としては奴の生存を願うまでだ。……それともう一人の男の事だが」
「トレーラーは入り口に止まっている。おそらくこのビルの内部でも探索しているのだろう」
「接触はしないのか?」
「探すのが面倒だ。あれだけ広大なビルになると、人一人を見つけ出すの流石に難しい。その全身に大量の血液を纏っているのならまだしもな」
「ならば工場への到着を先に目指すか……まぁ良いだろう」
二人のアンデットが市街地を歩いていく。
互いの目指すものは正反対。
なれど不死王は不死者の真意に気が付く事がなく、主の命を守る為に進んでいく―――
【1日目 日中】
【現在地 E-5 市街地】
【金居@魔法少女リリカルなのは マスカレード】
【状態】健康
【装備】なし
【道具】支給品一式×2、トランプ@なの魂、いにしえの秘薬(残り7割)@魔法少女リリカルなのはSTS OF HUNTER、砂糖1kg×8、
カードデッキの複製(タイガ)@仮面ライダーリリカル龍騎、USBメモリ@オリジナル、S&W M500(5/5)@ゲッターロボ昴、コルト・ガバメント(6/7)@魔法少女リリカルなのは 闇の王女、ランダム支給品0~1
【思考】
基本:プレシアの殺害。
1.プレシアとの接触を試みる(その際に交渉して協力を申し出る。そして隙を作る)。御褒美の話については状況次第。
2.基本的に集団内に潜んで参加者を利用or攪乱する、強力な参加者には集団をぶつけて消耗を図る(状況次第では自らも戦う)。
3.利用できるものは全て利用する。邪魔をする者には容赦しない。
4.隙を見てアーカードを殺害する。
5.アーカードの隙を見て、USBメモリの中身の確認を行う。
6.工場に向かい、首輪を解除する手がかりを探す振りをする。
.もしもラウズカード(スペードの10)か、時間停止に対抗出来る何らかの手段を手に入れた場合は容赦なくキングを殺す。
【備考】
※このデスゲームにおいてアンデッドの死亡=カードへの封印だと思っています。
※最終的な目的はアンデッド同士の戦いでの優勝なので、ジョーカーもキングも封印したいと思っています。
※カードデッキ(龍騎)の説明書をだいたい暗記しました。
※殺し合いが適度に難航すればプレシアが介入してくると考えています。また、首輪を運良く解除出来てもその後にはプレシア達との戦いが待っていると考えています。
※参加者が異なる並行世界及び時間実から連れて来られている可能性に気が付きました。
※ジョーカーが殺し合いに乗っていないでインテグラルと組んでいた場合、アーカードを止める鍵になる可能性があると考えています。
※制限に気が付きました。また、変身時間の制限も元に戻った後50分は再変身出来ない所までは把握しました。なお、変身不能から丁度1時間経過した為変身が可能になりましたがまだその事には気付いていません。
※プレシアに思考を縛る力があるかもと考えています
【アーカード@NANOSING】
【状況】健康、昂ぶり、アンデルセンの死への悼み、セフィロスへの対抗心
【装備】パニッシャー(砲弾残弾70%/ロケットランチャー残弾60%)@リリカルニコラス
【道具】支給品一式、拡声器@現実、首輪(アグモン)、ヘルメスドライブの説明書
【思考】
基本:インテグラの命令(オーダー)に従い、プレシアを打倒する。
1.プレシアの下僕を誘き寄せるために、工場に向かい首輪を解除する。
2.積極的に殺し合いに乗っている暇はないが、向かってくる敵には容赦しない。
3.工場へ向かう道中で、首輪を解除できる技術を持った参加者を探してみる?
4.セフィロスは自分の手で殺す。アンデルセンを殺した奴も殺す。
【備考】
※スバルやヴィータが自分の知る二人とは別人である事に気付きました。
※パニッシャーは憑神刀(マハ)を持ったセフィロスのような相当な強者にしか使用するつもりはありません。
※第1回放送を聞き逃しました。
※ヘルメスドライブに関する情報を把握しました。
※セフィロスを自分とほぼ同列の化物と認識しました。
※今回のゲームはプレシア単独で実行されたものではなく、共犯者ないし部下が協力していると考えています。
また、首輪が解除された場合の主催者の対処法が、「刺客を送り込んで強制的に排除させる」というものだと考えています。
□ ■ □ ■
再び場所は移り変わり地上本部の医務室。
そこには世界最高の頭脳を持つ男が一人横になっている。
男が眠るヘッドの横に設置された寝頭台には、一枚の紙が残されていた。
それは真祖たる吸血鬼が置いていったメッセージ。
化け物となった男に問う、最後の判断。その内容は以下の通りである。
『もしお前が食人鬼(グール)とならず、吸血鬼になったとしたならば伝えておく。
判断しろ。化け物として生きるか、それとも人間の尊厳を持ったまま死ぬのかを。
判断しろ。闇の元でしか生きていけない下等な存在となるのか、人間としてのお前で居続けたいのかを。
なに、死を選んだとしても大した苦痛はない。普段通りに日の下へ身体を放り出せば良いだけだ。
たったそれだけでお前は死ぬ事ができる。痛みは一瞬だ。一瞬でお前は元あった通りに塵となれる。
機会は与えた。後の判断をするのは全てお前だ。
お前自身が、お前自身の意志を持って、日か影かどちらかの世界を選べ』
吸血鬼となってしまうのか、理性の欠片もない食人鬼(グール)となってしまうのか……それは誰にも分からない。
ただ一つ確かな事は、Lは以前のような生き方は望めないという事のみ。
日の当たらない建物の中、Lの世界が変わっていく―――。
【1日目 日中】
【現在地 E-5 地上本部・医務室】
【L@L change the world after story】
【状態】全身打撲(治癒中)、全身裂傷(治癒中)、中程度の出血(治癒中)、右足粉砕(治癒中)、気絶中、吸血鬼orグール化
【装備】全身に包帯と湿布
【道具】なし
【思考】
基本:プレシアの野望を阻止し、デスゲームから帰還する。デスゲームに乗った相手は説得が不可能ならば容赦しない。
※以下気絶前の思考。
1.機動六課隊舎でザフィーラ達を待ちながら、首輪の解析。
2.メタルゲラスがかがみを連れてきたら、改めて拘束するなり、落ち着かせるなりして、尋問。
3.10時までにザフィーラ達が来たら、ミラーモンスターを倒しにかかる。来なかったら、鏡のない部屋に引きこもる。
4.以上のことが終わったら、船を調べに、その後は駅を調べにいく。
5.通信で誰かと連絡がついたら、その人と情報交換、味方であるなら合流。
【備考】
※参加者の中には、平行世界から呼び出された者がいる事に気付きました。
※クアットロは確実にゲームに乗っていると判断しています。
※ザフィーラ以外の守護騎士、チンク、ディエチ、ルーテシア、ゼストはゲームに乗っている可能性があると判断しています。
※首輪に何かしらの欠陥があると思っています。
※アレックスからセフィロスが殺し合いに乗っているという話を聞きました。
※吸血鬼になるかグールになるかは、後の書き手に任せます
|Back:[[銀色クアットロ(後編)]]|時系列順で読む|Next:[[命の理由]]|
|Back:[[銀色クアットロ(後編)]]|投下順で読む|Next:[[命の理由]]|
|Back:[[這い寄るもの]]|アレックス|Next:[[共振~バイブレーション~]]|
|Back:[[這い寄るもの]]|L|Next:[[]]|
|Back:[[MISSING KING]]|金居|Next:[[バトルはやて]]|
|Back:[[しにがみのエレジー。~名もなき哀のうた~]]|アーカード|Next:[[バトルはやて]]|
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*Change the world ~変わる世界~ ◆vXe1ViVgVI
G-4に位置する市街地を、一台の大型トレーラーがエンジン音を撒き散らしながら走行していた。
その運転席に座するアレックスは、危なげない手捌きでトレーラーを操り、目的の地を目指していく。
時折後方を振り返るのは、仲間の生存が心配だからか。
満身創痍のLを保護してから、もはや二時間以上もの時間が経過している。
いまだ命を保っている事さえ殆ど奇跡に等しい。
加えて、現在生死の境目をさ迷っている男は、非常に優れた頭脳を有しているのだ。
他を遥かに上回るその頭脳は、このデスゲームを転覆させるに必要不可欠な存在となる筈だ。
喪失する訳にはいかない、必ず延命させねばならない男。
心配するなという方が無理であろう。
(地上本部まではおよそ3km程か。10分もあれば辿り着くだろうが……)
殆ど表情には出さねど、アレックスは焦燥を感じていた。
運転席に設置されたデジタル型の時計を見るに、放送の時間も近い。
あれからザフィーラはどうなったのか。
果たしてLの命を救う事は出来るのか。
機動六課の面々は無事なのか。
焦燥を覚える要素は山のように存在した。
心内に溜まる焦りに乗じて、アクセルを踏む力は強くなる。
それに伴い、段々と加速していくトレーラー。
けたたましいエンジン音が昼間の市街地に吸い込まれ、消えていく。
苛立ちに眉を顰めながら、トレーラーの操作を続けるアレックス。
彼の首輪から放送が流れ始めたのは、それから凡そ数分後の事であった。
この放送にて呼ばれる死者の中でアレックスの知人は四名。
その過酷な現実に直面した時、アレックスはどのような感情を覚えるのか?
それはまだ、彼自身でさえ予想する事が出来ないだろう感情。
『戦いの神』としてではなく『機動六課隊員』として、彼は仲間の死を知る。
第一回放送時の死者を聞いた際は、殆ど動揺を見せなかった。
さて今回は―――?
―――時間は刻一刻と、流れていく。
□ ■ □ ■
放送に対する考察を終えてから数分後、金居は学校に向けて足を進めていた。
灰色のコンクリートで舗装された大通りに沿って、ひたすらに前進。
周囲に警戒を飛ばすのも忘れずに、クワガタ型の始祖たるアンデットが昼間の市街地をひた歩いている。
(それにしても、なぜ俺は首輪の回収を忘れていたのか……)
足を動かしながら、金居はある疑問について頭を悩ませていた。
それは失念していた首輪の存在について。
奢りでも何でもなく、金居は自身が高等な頭脳を有していると自覚している。
だからこそ、今回の失念が彼に与えた衝撃は大きい。
(まさか思考の内容についてまでも制御下に置かれている? ……バカな、流石にそれは有り得ない。
洗脳による思考の束縛ならまだしも、首輪や脱出に関する考察が出来て『首輪の回収』という思考のみを忘れさせるというのは……いや、だが……)
『首輪の回収』という重大な事項を忘却する自分に、金居はどうしても作為的なもの感じずにはいられなかった。
首輪について思い出せなかったのは、あの場に居た四人全員。
弁慶のような単細胞ならまだしも、高町なのはやペンウッドのようなそれなりに頭の切れる奴等までもが、首輪の存在を思い出せなかったのだ。
流石に不自然さが覚えずにはいられない。
(……万が一、という事も考えておいた方が良いか……)
思考の末に辿り着いた答えは保留。
金居自身は殆ど有り得ない事だと考えているが、現状では明確な答えは導けない。
プレシアが人の思考回路を操るだけの『力』を持っている可能性もあれば、偶然に偶然が重なり自分達四人全員が首輪という存在を忘れていたという可能性もある。
どちらか一方の可能性を切り捨てるには、余りに時期尚早。
選択肢の一つとして残しておいても、何ら問題は無いだろう。
「……と……着いたな」
『首輪の忘却』についての軽い考察を終えたその時には、既に金居は学校の付近へと到着していた。
思考への集中により散漫となっていた警戒心を、最大限にまで上げる金居。
校門の影に隠れ膝を付くと、顔の半分を門柱から突き出し敷地内の観察を始めた。
金居は、広大な校庭の隅々にまで視線を送っていく。
(……チッ、やはり居やがったか……)
そして、金居は発見した。
校庭のド真ん中にて、悠然と無防備に立ち尽くす男の姿を。
そして、一目で理解する。
奴が、奴こそが、あの『禍々しい気配』の根源だと。
あの紅コートの男は危険だと。
あの男は、不死者である筈の自分の生命を脅かす存在だと……金居は本能で感じ取った。
その頬から、一筋の汗が流れ落ちる。
(……接触は……しない方が得策だな……)
その決断は迅速なものだった。
危険だと分かっている相手へと、わざわざ出向く道理もない。
危険だと分かっている相手に、わざわざ遭遇する必要もない。
金居は、発見から数秒とせずに接触を諦め、立ち上がる。
あの男もずっと学校に居る訳ではない筈。
少しの間この近隣の市街地に身を隠し、適当な頃に再び訪れれば良い。
弁慶達の首輪が奪われるかもしれないが、それはそれで諦めるしかない。
あの男と接触してまで、首輪を入手しようとは思わない。
首輪が入手できなかったその時は、USBの中身だけでも確認して、直ぐに立ち去ればいいだけの話だ。
確かに無駄な時間の浪費は惜しいが、身の安全には及ばない。
勝機がない……とまでは思わないが、あの異様な雰囲気を醸し出す男と戦闘して無事で済むとも思えない。
まだ中盤とも言えるこの戦い。無駄なダメージを負う事は避けたい。
それは不死者たるアンデットであろうとも、だ―――。
―――そう理屈づけ、金居は学校に背を向ける。
あの異様な男の存在は確かにイレギュラーであったが、予想の範囲外と言う訳ではない。
学校に進路を変更した時点で、最悪の展開の一つとして、頭の片隅には置いてあった。
予想をしてあったからこそ、悠然とした心持ちで対処できる。
あの男の発見は、何ら今後に影響する事項では無い。
(……さて、何処で時間を潰すかな)
校門から少し離れた場所で首を回し、周囲を見回す金居。
手頃な建物は直ぐ発見できた。
それは何の変哲もない平屋建ての平凡な民家。
その民家へと金居は悠然と歩を進める。
金居の表情に焦りはなく、また確かな余裕が見て取れた。
そう、金居の判断に間違いはない。
学校にいるアーカードとの接触を避けた事も、アーカードが消えるまで待機を選択した事も、何ら間違いではない。
むしろ現状からすれば的確な判断。
流石は、あの熾烈なバトルファイトを最終盤まで生き残るアンデットと言えよう。
だが、ただ一つ、金居は重大な見誤りをしていた。
いや、これを見誤りと言うには余りに酷か。
不運……そう、金居は不運だっただけなのだ。
彼の行動に間違いはなく、ただただ不運だった。
その頭脳を持って立ち回るには、その判断を持って回避するには―――余りに相手が悪すぎた。
吸血鬼の始祖たる化け物から逃亡を成功させるには、彼の最適な判断を持ってしても、全てが足りない。
吸血鬼の『第三の目』からは、逃げ切れない。
轟音と共に、彼の右手側から、白銀の十字架が飛来した。
十字架は、金居の直ぐ手前の地面に突き刺さり、彼の足を止める。
金居は、十字架の直ぐ手前の地面に立ち止まり、呆然と飛来物を見詰める。
十字架を投擲した男は、数秒前まで学校と市街地とを区切っていたコンクリートブロックを踏みしめながら、金居に向けて笑顔を飛ばす。
急変を見せる事態に、さしもの金居も動きを忘れ、立ち尽くしていた。
制止する彼の世界を再び動かしたのは、鮮血の如く紅を身に纏った男の一言。
「さて、私はお前に聞かなければならない事がある」
クワガタムシの始祖を前に、吸血鬼の始祖は語る。
紅色のコートを棚引かせ、紅色の瞳を歪ませて、万にも及ぶ命を啜ってきた口を開く。
「我がマスターを、インテグラル・ファルブルケ・ヴィンゲーツ・ヘルシングを殺したのは―――貴様か?」
頬に残る涙の残滓を拭き取ろうともせず、吸血鬼はただ一つ、問い掛けた。
心の奥底にたぎる憤慨を、一縷たりとも面に出す事なく―――不死王は不死者の前に降臨した。
□ ■ □ ■
「ふむ、そうか。貴様が訪れた時には既にインテグラルは殺されていたか」
「ああ、そうだ。……すまないな。お前の知人だと知っていれば、首輪のサンプルを取ろうとは考えなかった」
邂逅から数分後、不死者と不死王は肩を並べて市街地を歩いていた。
歩きながら行われているのは、互いが持つ情報の交換。
遭遇時とはまるで正反対の、比較的穏やかな雰囲気が二人の間には流れていた。
「……それにしても少し予想外だったな」
「何がだ?」
「いや、ペンウッドの話していたお前とはまるで印象が違っていてな。
奴の話によると、アーカードという吸血鬼は確実に殺し合いに乗っているとの事だったが」
「流石はペンウッドだ。良く分かってるじゃないか。まさにその通り、私は殺し合いに乗っていた。
そしてこの十二時間、闘争に闘争を重ね、人々を殺害して回ったよ」
男が口にした最初の問いに、金居は平然と嘘を吐いた。
アーカードに発見された事に多少の動揺は感じていたものの、頭脳は普段通りに動いてくれた。
冷静に思考し、動揺を心中に留め、嘘の解答を導き出したのだ。
勿論アーカードにその虚言を見抜く術は無く、完全にではないだろうが、金居の言葉を信じてしまう。
本心はどうあれ、表向きは主催への対抗を方針とする二人。
二人は互いが持つ情報を交わし合いながら、市街地を歩き始めた。
「……その吸血鬼が何故主催者に対抗する道を選んだんだ? この十二時間の間に……お前に何があった」
素直に情報交換に応ずるアーカードを前にして、金居は違和感を覚えずにはいられなかった。
そして、ある種の……俗に嫌な予感と云われる感情を感じていた。
登場時の行動は常軌を逸していたが、それ以外はペンウッドの話とは正反対の紳士ぶり。
しかしながら、ペンウッドやインテグラルという人物に付いてもしっかりと把握している。
本人しか知る筈の無い情報を有し、だが事前に聞いた人物像とはまるで違った男。
眼前の男が本当に『アーカード』なのか……金居には判断する事が出来なかった。
「対した事ではない。ただ主人の命令に従ったまでだ」
「……命令……? だが、お前の主は学校で死んでいたのでは……」
「そう、死んでいたよ。そして最期の最期、燃え尽きる寸前の篝火で伝えたのだ。私に、主人の言い付けすら守れなかった私に……最期の命令(オーダー)を遺して死んでいったのだ」
アーカードの言葉に金居の疑念は溶け去っていった。
確かに金居の一撃はインテグラルの胸元を貫いた。
だが即死だったかと問われれば、彼自身確信は持てない。
死に至る寸前に、何らかのメッセージを残す事は可能だったのかもしれない。
つまりはそうだ。
自分は、最強の吸血鬼と、それを止める唯一の『鍵』とを引き合わせてしまったのだ。
吸血鬼の殺戮劇を続行させようと行った事が、結果としてその幕を下ろすきっかけとなってしまった。
そして誕生したのは、殺し合いを阻止せんと行動する不死王。
優勝を目指す者達からすれば、厄介この上無い存在。
主催者に対する者達からすれば、これ以上無い程に心強い味方。
『鍵』を破壊したつもりが、二人を引き合わせす結果となった。
自身の行動が齎した現状に、思わず金居は歯噛みする。
「……参加者だ」
そんな金居を尻目に、アーカードは行動を始めていた。
唐突にある方向……市街地の南側へと視線を向け、そこに建ち並ぶビル列を見詰める。
そのアーカードの異変に金居も気付くが、彼の行動が何を意味するかまでは分からない。
「何を言っている? 何処にも人の気配はないが……」
「音だ。南の方からうっすらとだがエンジン音が聞こえる。おそらく大型車……この会場内で仕入れたか、支給されたかのどちらかだろう」
アンデットである金居も、常人とは比較にならない程の感覚神経を持っている。
だが、その聴覚を総動員してもエンジンの音などは感じ取れない。
この察知能力、流石は最強の吸血鬼と言ったところか……と、僅かな感心と脅威とを覚える金居であった。
「少し見てくる」
一言そう告げると、アーカードはビルの一つへと近付いていく。
そして、それがさも当然のように―――ビルの壁へと『垂直』に立ち上がった。
重力という概念をまるで無視した行動。
その光景に金居は目を見開き、驚愕を面に出していた。
悠然と歩を進めながら壁を登っていくアーカード。
その身体が屋上へと到着したのはほんの十数秒後の事であった。
「あそこだな。人数は二人……一人は死にかけか」
とはいえ、屋上からであっても市街地を見渡す事は不可能。
建ち並ぶ多種多様の建造物が阻害し、市街地の全貌を把握することは出来ない。
ましてや、走行する車両の発見など出来る筈もない。
その筈なのだが―――アーカードの表情と発言は、捜索の成功を告げている。
小さく頷くと、アーカードは寸分の躊躇いも見せずに屋上から飛び降りた。
重力に引かれ、その落下速度はどんどんと加速していく。
だが、アーカードは動揺する様子を全く見せず、そして優雅に着地した。
多大な衝撃がその両脚に掛けられた筈なのに、身じろぎ一つしない。
それどころかその様子はまるで羽毛が舞い落ちたかの如く。
アーカードは再び金居の前へと現れた。
「南東に約1km……そこを漆黒のトレーラーが走っていた。中には男が二人。一人は無傷、一人は死にかけだ。
おそらくはあの高層ビルでも目指しているのだろう。接触するぞ」
「……この位置から良く見付けられたな」
「意識して隠れているのならまだしも、あれだけ大っぴろげに動いているのだ。吸血鬼の『第三の目』からは逃れられんよ」
そう言い放つと、アーカードは金居に背を向け、市街地の奥へと進んでいく。
その後ろ姿を見詰めながら、金居は思考する。
どうやってこの化け物を殺害するか―――ただそれだけをひたすらに考える。
(ペンウッドの言う通りだな……コイツは大した化け物だ)
遭遇から僅か十数分であったが、金居はアーカードの異常性を充分に理解していた。
完璧に隠れていた筈の自分を易々と見付け出した察知力。
制限下に在りながら1km先のエンジン音を聞き取る聴覚。
建ち並ぶビルの数々を物ともせずに1km先を走る車を発見し、その状況すらも把握した視覚。
成る程、化け物という言葉が此処まで当てはまる者もそうは居ないだろう。
だが―――
(―――殺す方法がない訳ではない)
そう、この殺し合いに参加させられている時点で断定できる。
こいつは死ぬ。
ペンウッドの口は、まるで打つ手がない最強の化物のように語られていたが、それは違う。
こいつは死ぬのだ。少なくとも首を斬り落とせば、こいつは死ぬ。
首輪が装着されてる時点で、それは自明の理。
殺せる存在なのだ。
自分達アンデット同様、制限によりこいつは『殺せる存在』に成っているのだ。
(……だが、慎重に動く必要はあるか……)
とはいえアーカードが難敵であることもまた事実。
単純な不意打ちではおそらく殺害には至らない。
行動を起こす時は慎重に慎重を喫し、攻撃する時は全力に全力を込めた一撃により一瞬で終わらせる。
まともな戦闘になれば無駄な被害を被るのは分かりきっている。
下手すれば『死』に繋がる程の傷を負う可能性すらある。
この状況を切り抜けるには、慎重さを欠いたら話にもならないだろう。
「おい、不死者(ノストラフィラ)。置いてくぞ」
アーカードの声に思考を打ち切り、金居は足を動かし始める。
焦る必要はない。
じっくりと機が熟すのを待てば良い。
……そう考え、金居はアーカードと行動を共にする。
自身の行動が招いた状況に頭を悩ませながらも、金居は動く。
優勝し自分達の世界を手に入れる為―――ただそれだけを望みクワガタムシのアンデットは前に進む。
□ ■ □ ■
アレックス達が地上本部に辿り着いたのは、放送が終わってから約十分後の事であった。
到着したアレックスはLを背負い、出来るだけ振動を与えないよう走り出した。
地上本部の医務室は一度だけ利用した事がある。医務室に着くのに大した時間は掛からなかった。
Lをベッドの一つに寝かせると、アレックスは治療を開始する。
治療器具も設備も充分。ただ足りない物はアレックスの知識のみ。
如何に知識を振り絞ろうと、応急手当ての範囲を出る事はあらず。
だがそれでもと、出来る限りの治療をアレックスはLへと施していく。
アレックスの手が止まったのは、Lの身体が包帯と湿布に覆い隠されたその時。
溜め息と舌打ちとを吐き捨て、アレックスは付近に置かれた回転椅子へと腰を落とした。
その表情は……悔しさに満ちた物であった。
「……無理か……」
手は尽くした。彼の持つ知識の限りに、治療は行った。
だが、到底足りない。余りに時間が経ち過ぎている。
もはや応急処置でどうこうなる状況を逸脱していた。
救えない。
自分では、この命を、救えない。
―――その事実がアレックスの感情を蝕んでいた。
「……済まない、ザフィーラ」
思い出されるは、数時間前自分に全てを託して殿を勤め、そして先の放送で呼ばれてしまった守護獣の姿。
恐らくはあの紫色の大蛇との戦いで死亡したのだろう。
自分が残っていれば、とは言わない。
ただその最期の頼みを叶えられなかった事、それが、それだけが悔やまれる。
「機動六課の奴等も殆どが死亡した……残るはヴィータ、キャロ・ル・ルシエ、スバル・ナカジマのみか」
死に掛けのLを見詰めながら、アレックスは一人言葉を紡ぐ。
放送で告げられた、新たなる世界で出会った仲間達の死。
何もせずにいた自分がいる一方で、死者の数は膨れ上がっている。
仲間の殆どは死亡し、自分はのうのうと生き延びている。
何が違ったのか。
死んだ仲間達と自分とでは何が違ったのか。
分からない、分かる訳のない問いが脳裏に纏わりついていた。
「闘争……」
思えば自分はこの殺し合いの場で闘争らしい闘争をしていない。
唯一の闘争はセフィロスやシグナムの三つ巴のみ。
その三つ巴も結果として逃亡を選択した。
闘争を運命付けられた自分とは思えない、此処までの道のりであった。
「これは運命から逃れられたという事なのか……?」
自問に対する解答は瞬時に思い浮かんだ。
アレックスは自嘲の念と共にその答えを口にする。
「……違うな」
違う、自分は運命から逃れられてなどいない。
心の奥底で求めている。
闘争を、血湧き肉踊る闘争を……求めている。
だが―――
「だが、俺は……決めた」
そう、自分は決めた筈だ。
運命に縛られた闘争は、もうしないと。
奴等と同様に、自分の意志による闘争を行おうと……新たな世界に飛ばされた時に誓った。
だから、この殺し合いに於いても無駄な戦闘はしない。
プレシア・テスタロッサを―――闘争を強制させる魔女を打倒する為に、力を振るう。
心中に宿る渇望などは二の次だ。
死んでいった仲間の為に―――、
眼前で死へと向かっている仲間の為に―――、
そして―――
(―――俺は……俺の為に……力を使う)
『戦いの神』としてではない。
キース・シルバーとしてではない。
ただ一人の意志を持った人間・アレックスとして、力による自由ではない、真なる自由を勝ち取る為に―――戦おう。
「だから……済まない」
Lのデイバックを回収し、アレックスは立ち上がる。
今この場に居続けたところで、彼に出来る事は何も無い。
出来うる限りの治療はしたのだ。
しかし、それでもLの命を救う事は不可能であった。
これ以上アレックスに出来る事といえば、その死の瞬間を看取る事のみ。
だが、その行動には何ら意味が無い―――と、アレックスは冷徹に断定する。
そうして無駄に時間を浪費するならば、一分一秒でも早く行動を始めるべきだ。
その一分一秒で救える命が有るかもしれない。その一分一秒で打開が可能な状況が有るかもしれない。
ならばこそ、今は動く時だ。
(取り敢えずは地上本部の内部を捜索するか。何か出て来るかもしれん)
緩慢なる死へと向かうLを放置し、アレックスは出口へと近付いていく。そして扉は開く。
外に広がるは今までの世界とは別の新たな世界。
仲間達の死を背負い戦う事を決意したアレックスの、新たな闘争の世界。
彼はその世界へと踏み出した。
【1日目 日中】
【現在地 E-5 地上本部内部】
【アレックス@ARMSクロス『シルバー』】
【状態】健康、疲労(小)
【装備】なし
【道具】支給品一式×3、首輪探知機、ガムテープ@オリジナル、ラウズカード(ハートのJ、Q、K)@魔法少女リリカルなのは マスカレード、レリック(刻印ナンバーⅥ、幻術魔法で花に偽装中)@魔法少女リリカルなのはStrikerS、首輪(シグナム)、首輪の考察に関するメモ、ランダム支給品(ザフィーラ:1~3)
【思考】
基本:この殺し合いを管理局の勝利という形で終わらせる。
1.地上本部の中を探索する
2.自分の意思による闘争を行う。
3.六課メンバーと合流する。
4.キース・レッドに彼が所属する組織の事を尋問する。その後に首輪を破壊する。
5.東側に医療設備が偏っているのが気になる。
6.このまま行動していてキース・レッドに出会えるのだろうか。
【備考】
※身体にかかった制限を把握しました。
※セフィロスはデスゲームに乗っていると思っています。
※はやて@仮面ライダー龍騎は管理局員であり、セフィロスに騙されて一緒にいると思っています。
※キース・レッド、管理局員以外の生死にはあまり興味がありません。
※参加者に配られた武器にはARMS殺しに似たプログラムが組み込まれていると思っています。
※殺し合いにキース・レッドやサイボーグのいた組織が関与していると思っています。
※他の参加者が平行世界から集められたという可能性を考慮に入れました。
※ザフィーラから第1放送の内容とカードデッキに関する簡単な説明を聞きました。
※市街地東側に医療設備が偏っていることから、西側にプレシアにとって都合の悪いものがあるかもしれないと推測しています。
【黒の騎士団専用トレーラーの状態】
※トレラーは地上本部入り口前に放置されています。
※内部のコンピューターのOSは地球及びミッドチルダのものと異なります。
※機械設備や通信機能は全てコンピューター制御です(ただし居住スペースはその限りではない)。ギアス世界のOSを知る者もしくはOS自体を書き換えない限り使用不可能です。
※ベノスネーカーとの接触でエンジン部に多大なダメージを負いました。このまま走らせるとエンジン部が爆発する可能性が非常に高いです。アレックスはこの事にはまだ気づいていません。
□ ■ □ ■
そして、死に掛けの探偵が残された医務室。
治療を施されたとはいえ、重傷のその身体はゆっくりと死へと進んでいく。
唯一の味方も離れていった。
もはや手の尽くしようはなく、世界最高と云われた探偵は再び黄泉の世界へと引きずられようとしている。
もはや誰にも手の尽くしようはない。
もしこの場に医師が居たとしても、そのボロボロの身体を一目見ただけで、直ぐさま諦めてしまうだろう。
医者と言えど全ての人間を死の淵から救える訳ではない。
どうしようも無い、どう治療しても救う事が出来ない患者は居るのだ。
今のLなど、将にそうだ。
医者には、いや人間にはどうする事もできない状況。
―――そう、人間にはどうする事もできない状況であった。
「なあ金居、人間を殺すのは何だと思う?」
だが、どうだろう?
彼等のような人外の化け物達にとっては、Lは本当に手の尽くしようのない患者なのか?
彼等のような死を知らぬ化け物達にとっては。Lは本当に手の尽くしようのない患者なのか?
答えはノーだ。
「……今は謎掛けなどをしている場合では無いと思うが」
「答えは簡単だ。『あきらめ』さ、『あきらめ』が人を殺す。絶望的な状況であきらめなかった者のみが、生を掴む事が出来る。
あきらめを拒絶した時、人間は人道を踏破する権利人となりうるのだ」
何時のまにか、医務室に二人の男が立っていた。
男達は死に掛けのLを見下ろしながら、言葉を交える。
片や呆れの色を、片や興味の色を、その表情に浮かべながら、二人はそこに居た。
「この男は助からないな。治療した痕があるが……おそらくは諦めたんだろう。まぁこの様子なら仕方ないだろう。
血の臭いを辿って此処まで来たが……無駄手間だったな」
「そうかな? この男はまだあきらめていないぞ。こんな状況に陥りながら、未だ『生』を掴もうとしている」
「……確かにあきらめは人を殺す。だが、あきらめなかったからといって、人間が生き延びられる訳ではない。
意志だけではどうにもならない事もある。そうだろ? 」
「そうだ。あきらめなかったからといって、必ず生き延びられる訳ではない。だが、あきらめなかった者が機会を得るのだ―――今回のようにな」
吸血鬼のその行動を、不死者は止める暇もなかった。
Lの首元に顔を近付け、刃物のように洗練された牙を血管へとめり込ませる。
そして―――噴き出したその真紅吸い上げた。
Lの身体を循環し続ける血液が、吸血鬼の喉を通り過ぎ、浸透する。
血液を通貨とした魂と命の同化。
人間を超越する為の儀式。
これが男の生存できる唯一の方法。
Lは、Lの諦めなかった心が―――最後のチャンスを掴み取ったのだ。
「あの男は放っておいて良いのか?」
数分後の市街地、アーカードと金居の二人がそこを歩いていた。
ポツリと放った金居の問にアーカードは笑顔を浮かべる。
そして、ゆっくりと振り返り、その視線を金居へと合わせた。
「さあな。奴がどうなるかは私にも分からん。
だが、最低限の書き置きはしておいた。奴がどう行動するかは、奴自身が判断をする事だ。
理性の欠片もないグールになる可能性だってあるし、吸血鬼になったとしても、化け物の身体での『生』を望むかは分からない。
化け物となった自分に悲観し、自らの死を選ぶ可能性も十二分に有り得る」
心底楽しそうにアーカードは語る。
男の―――最期まであきらめる事をしなかった男の、その可能性を、その選択を待ち望む。
「まぁ良いがな。俺としては奴の生存を願うまでだ。……それともう一人の男の事だが」
「トレーラーは入り口に止まっている。おそらくこのビルの内部でも探索しているのだろう」
「接触はしないのか?」
「探すのが面倒だ。あれだけ広大なビルになると、人一人を見つけ出すの流石に難しい。その全身に大量の血液を纏っているのならまだしもな」
「ならば工場への到着を先に目指すか……まぁ良いだろう」
二人のアンデットが市街地を歩いていく。
互いの目指すものは正反対。
なれど不死王は不死者の真意に気が付く事がなく、主の命を守る為に進んでいく―――
【1日目 日中】
【現在地 E-5 市街地】
【金居@魔法少女リリカルなのは マスカレード】
【状態】健康
【装備】なし
【道具】支給品一式×2、トランプ@なの魂、いにしえの秘薬(残り7割)@魔法少女リリカルなのはSTS OF HUNTER、砂糖1kg×8、
カードデッキの複製(タイガ)@仮面ライダーリリカル龍騎、USBメモリ@オリジナル、S&W M500(5/5)@ゲッターロボ昴、コルト・ガバメント(6/7)@魔法少女リリカルなのは 闇の王女、ランダム支給品0~1
【思考】
基本:プレシアの殺害。
1.プレシアとの接触を試みる(その際に交渉して協力を申し出る。そして隙を作る)。御褒美の話については状況次第。
2.基本的に集団内に潜んで参加者を利用or攪乱する、強力な参加者には集団をぶつけて消耗を図る(状況次第では自らも戦う)。
3.利用できるものは全て利用する。邪魔をする者には容赦しない。
4.隙を見てアーカードを殺害する。
5.アーカードの隙を見て、USBメモリの中身の確認を行う。
6.工場に向かい、首輪を解除する手がかりを探す振りをする。
.もしもラウズカード(スペードの10)か、時間停止に対抗出来る何らかの手段を手に入れた場合は容赦なくキングを殺す。
【備考】
※このデスゲームにおいてアンデッドの死亡=カードへの封印だと思っています。
※最終的な目的はアンデッド同士の戦いでの優勝なので、ジョーカーもキングも封印したいと思っています。
※カードデッキ(龍騎)の説明書をだいたい暗記しました。
※殺し合いが適度に難航すればプレシアが介入してくると考えています。また、首輪を運良く解除出来てもその後にはプレシア達との戦いが待っていると考えています。
※参加者が異なる並行世界及び時間実から連れて来られている可能性に気が付きました。
※ジョーカーが殺し合いに乗っていないでインテグラルと組んでいた場合、アーカードを止める鍵になる可能性があると考えています。
※制限に気が付きました。また、変身時間の制限も元に戻った後50分は再変身出来ない所までは把握しました。なお、変身不能から丁度1時間経過した為変身が可能になりましたがまだその事には気付いていません。
※プレシアに思考を縛る力があるかもと考えています
【アーカード@NANOSING】
【状況】健康、昂ぶり、アンデルセンの死への悼み、セフィロスへの対抗心
【装備】パニッシャー(砲弾残弾70%/ロケットランチャー残弾60%)@リリカルニコラス
【道具】支給品一式、拡声器@現実、首輪(アグモン)、ヘルメスドライブの説明書
【思考】
基本:インテグラの命令(オーダー)に従い、プレシアを打倒する。
1.プレシアの下僕を誘き寄せるために、工場に向かい首輪を解除する。
2.積極的に殺し合いに乗っている暇はないが、向かってくる敵には容赦しない。
3.工場へ向かう道中で、首輪を解除できる技術を持った参加者を探してみる?
4.セフィロスは自分の手で殺す。アンデルセンを殺した奴も殺す。
【備考】
※スバルやヴィータが自分の知る二人とは別人である事に気付きました。
※パニッシャーは憑神刀(マハ)を持ったセフィロスのような相当な強者にしか使用するつもりはありません。
※第1回放送を聞き逃しました。
※ヘルメスドライブに関する情報を把握しました。
※セフィロスを自分とほぼ同列の化物と認識しました。
※今回のゲームはプレシア単独で実行されたものではなく、共犯者ないし部下が協力していると考えています。
また、首輪が解除された場合の主催者の対処法が、「刺客を送り込んで強制的に排除させる」というものだと考えています。
□ ■ □ ■
再び場所は移り変わり地上本部の医務室。
そこには世界最高の頭脳を持つ男が一人横になっている。
男が眠るヘッドの横に設置された寝頭台には、一枚の紙が残されていた。
それは真祖たる吸血鬼が置いていったメッセージ。
化け物となった男に問う、最後の判断。その内容は以下の通りである。
『もしお前が食人鬼(グール)とならず、吸血鬼になったとしたならば伝えておく。
判断しろ。化け物として生きるか、それとも人間の尊厳を持ったまま死ぬのかを。
判断しろ。闇の元でしか生きていけない下等な存在となるのか、人間としてのお前で居続けたいのかを。
なに、死を選んだとしても大した苦痛はない。普段通りに日の下へ身体を放り出せば良いだけだ。
たったそれだけでお前は死ぬ事ができる。痛みは一瞬だ。一瞬でお前は元あった通りに塵となれる。
機会は与えた。後の判断をするのは全てお前だ。
お前自身が、お前自身の意志を持って、日か影かどちらかの世界を選べ』
吸血鬼となってしまうのか、理性の欠片もない食人鬼(グール)となってしまうのか……それは誰にも分からない。
ただ一つ確かな事は、Lは以前のような生き方は望めないという事のみ。
日の当たらない建物の中、Lの世界が変わっていく―――。
【1日目 日中】
【現在地 E-5 地上本部・医務室】
【L@L change the world after story】
【状態】全身打撲(治癒中)、全身裂傷(治癒中)、中程度の出血(治癒中)、右足粉砕(治癒中)、気絶中、吸血鬼orグール化
【装備】全身に包帯と湿布
【道具】なし
【思考】
基本:プレシアの野望を阻止し、デスゲームから帰還する。デスゲームに乗った相手は説得が不可能ならば容赦しない。
※以下気絶前の思考。
1.機動六課隊舎でザフィーラ達を待ちながら、首輪の解析。
2.メタルゲラスがかがみを連れてきたら、改めて拘束するなり、落ち着かせるなりして、尋問。
3.10時までにザフィーラ達が来たら、ミラーモンスターを倒しにかかる。来なかったら、鏡のない部屋に引きこもる。
4.以上のことが終わったら、船を調べに、その後は駅を調べにいく。
5.通信で誰かと連絡がついたら、その人と情報交換、味方であるなら合流。
【備考】
※参加者の中には、平行世界から呼び出された者がいる事に気付きました。
※クアットロは確実にゲームに乗っていると判断しています。
※ザフィーラ以外の守護騎士、チンク、ディエチ、ルーテシア、ゼストはゲームに乗っている可能性があると判断しています。
※首輪に何かしらの欠陥があると思っています。
※アレックスからセフィロスが殺し合いに乗っているという話を聞きました。
※吸血鬼になるかグールになるかは、後の書き手に任せます
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