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「キングの狂宴/狙われた天道(後編)」(2010/02/26 (金) 04:03:46) の最新版変更点
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*キングの狂宴/狙われた天道(後編) ◆HlLdWe.oBM
「ん、こ、ここは……」
聞き覚えのない声と痛みに起こされたC.C.は自分がどこか道路の上に放り出されている事に気付いた。
白い拘束衣に無数の擦り傷が走っている事から身体のあちこちが痛むのは道路を転がされたせいだと分かった。
最新の記憶では自分は高町なのは達とスーパーの事務室で情報交換をしていたはず。
それがいきなり外、しかも道路に置き去り状態、さらに隣では同じように訳が分からない顔をしているペンウッドもいた。
どうやらこの場所にいるのは二人だけのようだ。
何がどうなっているのか全く分からなかった。
だが次の瞬間、C.C.をさらに混乱させる声が耳に飛び込んできた。
『現在あなたがいるエリアは禁止エリアに指定されています。20秒以内に退去してください』
それは死へのカウントダウン。
先程も聞いたはずだが目覚めたばかりで失念していたようだ。
だがこれでもう意識は否応なく現実へと引きずり出された。
「え、こ、これは――」
ようやくペンウッドも現状を理解したらしい。
これは紛れもなく首輪の爆弾のタイムリミット。
だが悠長にその事を考えている猶予はない。
「走るぞ、ペンウッド!!!」
だがどこに走ればいい?
唯一分かっている事は現在二人がいる場所が禁止エリアに指定されていて、20秒以内に退去しないと首輪を爆破されて死んでしまうという事だけだ。
こうしている間にも残り時間はなくなっている。
まずはどの方向へ向かって走るべきか四方を見渡すべき。
しかしその判断を一瞬で下したC.C.の目に信じられないものが飛び込んできた。
「ゼ、ゼロ!?」
それは何メートルか離れた所に立っていた。
見慣れた黒いマントに黒い仮面を身に付けた黒の騎士団のリーダーゼロ。
それに気付いたC.C.はひどく驚いた。
だが同時にそこに活路を見出していた。
「こっちだ、ペンウッド!!」
いきなり現れたゼロに対して湧き上がる疑問は無数にある。
あれはルルーシュなのか?
それとも中身は別の者なのか?
なぜあのような場所に立っているのか?
本当にあちらに走って大丈夫なのか?
こちらの様子を見ていながら何もする様子がないのはなぜか?
だがどれもこの場で死んでしまっては聞けなくなる。
どういうつもりであの場所に立っているのか知らないが、ゼロがいる場所は確実に禁止エリア外のはず。
だからそこまで辿り着く事ができれば……。
『10』
そこまで考えたところ僅かに足が鈍った。
このまま禁止エリアにいれば長年の願い、自らの死が叶う。
元の世界にいれば永遠に叶わないと思っていた願いがあと10秒で成就する。
死、それは待ち望んだ甘美な響きだった。
不老不死の苦しみから解き放たれるのならばこのまま死んでもいいではないか。
『8』
だがその誘惑は一瞬で払った。
今の自分は昔のようにただ漫然と惰性で生を送っている身ではない。
それに死に導いてくれる当てならできた。
だがその前に今はまだ死ねない。
『5』
ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア。
愚直なまでに妹の幸せを願う青年と出会ってから自分は少し変わった気がする。
『4』
以前なら考えられないような心境の変化。
それをもたらしたルルーシュに抱く感情が何なのか。
『3』
それはまだはっきりとは分からない。
『2』
「よし!!!」
途中で迷っていた分だけペンウッドが一歩先んじてゼロの脇を通り過ぎた。
ゼロがてっきり何かしてくるのかと思ったが、意外にも何の行動も起こさなかった。
だが油断は禁物、もう猶予も残り僅か。
あとは一心に走って禁止エリアから――。
「――ガッ!?」
一瞬何が起こったのか分からなかった。
いきなり顔面に衝撃が走った。
視界はブラックアウトして意識は一瞬何処か遠いところに飛んでいった。
それが勢いよく走っていた自分と突然空中に現れた何かがぶつかったせいだと気付いたのはもう身体が衝撃で後方に倒れている最中だった。
『1』
もうここから体勢を立て直すのは無理だ。
それならばせめて最期に悪足掻きぐらいしてみようか。
いつでも出せるように懐に忍ばせておいたスティンガーを両手で取り出す。
投擲の構えなど関係ない。
狙うべき的は目の前だ。
『0』
(ルルーシュ、死ぬなよ……)
▼ ▼ ▼
ペンウッドは目の前の光景に言葉が出なかった。
ギリギリだったとはいえC.C.も爆発を回避できるはずだった。
だがそれは叶わなかった――全身黒尽くめのゼロという謎の人物のせいで。
そしてペンウッドは見た――C.C.の首輪が爆発して拘束衣の少女の首と胴体が分かれる瞬間を。
C.C.が最期の抵抗に放ったスティンガーはゼロに届く前に何かに弾かれて傷一つ負わす事も出来なかった。
その様子を見る前に死んだ事がせめてもの救いだったのかもしれない。
「ほぅ、生き残ったのはペンウッド君か、おめでとう。ならば勝利した君にはこれを送ろう」
いきなりデイパックを3つよこしたゼロに思わず不信の目を向ける。
そういえば目覚めた時、自分もC.C.もデイパックを持っていなかった。
おそらく予めゼロが回収していたのだろう。
だがそれをわざわざ返す意味が分からない。
「ど、どういう意味だ……」
「なに、簡単な事だ。今のは余興、どちらが早く禁止エリアから脱出できるかというゲームだ」
「な、なん……だと……」
「結果は君の勝利だ、おめでとう。そして残念ながら敗北したC.C.君には罰ゲームとして禁止エリアでの死を与えた」
つまりこういう事か。
目の前のゼロは単なる余興でC.C.とペンウッドを競わせて高みの見物をしていたと。
そして先にペンウッドが到着した事を確認すると後ろから来たC.C.が禁止エリアから出る事を妨げた。
ある意味ペンウッドが殺したとも言えなくもないが、今はそこまで考えられない。
「ああ、そうそう。スーパーに戻っても誰もいないぞ――全員もう死んでいるからね」
「な、そんな事が――」
「これがその証拠だ」
そう言ってペンウッドの目の前に掲げられた物はキングが持っていたはずの携帯電話の画面。
そこに映っているのは仲間の死体。
右脇を斬られて血を流して倒れている天道総司の死体。
身体中至る所を斬られて全身血に塗れて倒れている高町なのはの死体。
そして今しがた絶望の中で死んでいったC.C.の死体。
(天道君、なのは君、C.C.君――!?)
そこでペンウッドは気付いた。
スーパーに集った者は自分を含めて5人。
つまり後一人足りない。
「まあ余計な詮索はなしにしてもらおうか」
その瞬間、ペンウッドの思考を読み取ったかのようにゼロが有無を言わさぬ圧力をかけてきた。
目と鼻の先まで近づけられたゼロの仮面。
その見えない圧力にペンウッドは黙るしかなかった。
「よし、面白いこと思い付いた。どちらが多く参加者を殺せるか勝負しようか」
「そ、そんな――」
「断るならここで殺してもいいんだよ」
一度口から出かけた否定の言葉を飲み込んでペンウッドは悩んだ。
もう頼れる仲間は全員死んでしまった。
今の状態は完全に孤立無援状態。
そして明らかにゼロとの力の差は歴然だった。
「わ、わかった! 勝負すればいいんだろう」
それならばこの申し出を受ける事も仕方のない事なのかもしれない。
「そうこなくちゃ。じゃあ期限は次の放送まで。精々がんばってね」
ペンウッドに期限と励ましの言葉をかけたゼロはそれでもう用は済んだとばかりに後姿を向けていた。
これでようやくこの重圧から逃れられる。
本当は人殺しなどしたくないが、今はこの場を乗り切ることが大切。
ペンウッドはほっとしてゼロと反対の方向に――。
「――嫌だ!!」
決意と共に放たれたのは一発の銃弾。
そこには先程までの優柔不断な中年軍人の姿はなかった。
そこにいたのは一人の男。
もうペンウッドに迷いはない。
「どういう事かな?」
絶対的強者の位置でゼロはペンウッドの行動を咎めた。
決死の思いで放たれた銃弾は空中に現れた物体で防がれていた。
だがそれを見てもペンウッドは引き下がらなかった。
「そんな申し出は聞けないね!!」
「へぇー、意外だね。てっきり何もできない奴だと思っていた」
「……私は無能かもしれんが、卑怯者ではないよ」
ここで逃げる事は出来ない、それだけは出来ない。
なぜならここで逃げればペンウッドは『卑怯者』になってしまう。
何もできないと言い訳をして危険人物を野放しにする。
それは卑怯者と一緒だ。
「私は駄目な男だ、無能だ、臆病だ。自分でも何故こんな所にいるのか分からんほど駄目な男だ。
生まれついての家柄と地位だけで生きてきたも同然だ。
自分で何もつかもうとしてこなかった、いつも人から与えられた地位と仕事をやってきた」
「うん、僕もそう思うよ」
「だから、せ、せめて、仕事は、この仕事だけは全うしなきゃならんと思う」
「立派な心掛けだね。で、その仕事って何さ?」
「最期まで抵抗して義務を果たす――貴様を葬り去る事だ!!」
その言葉と共にグロック19の銃口が勇ましく火を噴いた。
何発も何発も何発も銃弾が尽きるまで撃ち続けた。
連続射撃の反動で手が痺れても火薬の臭いで噎せそうになっても恐怖で押しつぶされそうになっても。
ゼロをこのまま行かせるわけにはいかない。
唯その一心で。
高町なのは、天道総司、キング、C.C.、4人も殺した危険人物を野放しにしてはいけない。
もうこうなればこの命はないも同然。
だから最期に刺し違えてでも――。
「ああ、もういいよ」
何事もなかったかのようにゼロの声が聞こえてきた刹那、何かが飛んできた。
それはひどくスローに見えたが、なぜかペンウッドの身体は思うように動いてくれなかった。
実際には目にも留まらぬ速さで飛来しているからそのように錯覚するのだ。
そして真っ直ぐ首輪に向かって飛んできて到達した瞬間、再びあの光景を目にした。
見渡す限り虹色に輝く上下左右の感覚がない不思議な空間。
そして目の前に青と銀色の巨人の姿がぼんやりと見えた。
なぜかそれが以前ここで聞いた温かな声の主――ウルトラマンヒカリであるとすぐに分かった。
そして今回もヒカリはペンウッドに向かって何か話している。
「 」
だが今その声は聞こえない。
何かを伝えようとしているが何も伝わってこない。
以前と今で何が違うのかペンウッドには分からない。
もしかしたら本当に死ぬ瞬間とはこういうものかもしれないとひどく冷静に考えている自分がいた。
(奇跡は何度も起きないか)
そしてペンウッドの意識は戻る。
(すまん、皆、すまんな)
▼ ▼ ▼
『お前の探しものはスーパーにある(面倒になる前に先に言っておく。あいつはお前の世界の奴ではなく安全だ) byピザの代価』
残された書き置きにはそう書かれていた。
「ピザの代価となればあいつに間違いないな」
ゼストはメモを見て、これがC.C.によって書かれた物である事を確認した。
だがその内容は短いながらも衝撃的だった。
これが本当ならゼストの目的は根本から崩れる事になる。
しかしC.C.が間違った情報を残した可能性もある。
「どちらにせよ行くしかないか。だがもしも高町が悪鬼でないなら、俺は――」
【1日目 日中】
【現在地 C-3 商店街跡地】
【ゼスト・グランガイツ@魔法少女リリカルなのは 闇の王女】
【状態】健康
【装備】ブリッツキャリバー@魔法妖怪リリカル殺生丸
【道具】支給品一式
【思考】
基本:高町なのはの捜索・抹殺? プレシアの抹殺。ルーテシアの保護。
1.スーパーに行って高町なのはの正体を見極める。
2.落ち着いたらC.C.及びブリッツキャリバーから彼等の世界について詳しく確認する。
3.その後、軍事基地に向かい万丈目と合流する。
4.カードデッキ及び千年リングを見付けた場合は破壊・処分する。
5.行動を共にする仲間を増やす(市街地は危険そうなので武装が整うまでは基本的に避けたい)。
6.なのはと戦う事になればギア・エクセリオンの発動も辞さない――己の命を削ってでも。だが、仮に彼女が自分の世界の彼女では無いとしたら――?
【備考】
※C.C.との協力関係はギブアンドテイクという暗黙の了解の上に成り立っています。
※ギア・エクセリオンによる負担の程度は不明(ゼストは自分のデバイスのフルドライブ同様に命を削る可能性もあると推測)。
※プレシアにはスカリエッティと同等かそれ以上の技術があると思っていますが、プレシアを全く信用していません。
※ヴィータとプレシアの間で何らかの約定があったかもしれないと考えています(並行世界の彼女の可能性を考えています)。
※スバルが『スバル・ナカジマ』の名前である事に疑問を抱きました(並行世界の彼女の可能性を考えています)。
※カードデッキの制限と千年リングについての情報を把握しました。
※参加者が異なる並行世界から連れて来られている可能性を知りました。
※プレシアは殺し合いの早期決着を望んでいると考えています。
※エリアの端と端が繋がっている事を知りました。
▼ ▼ ▼
「まあまあだったかな、意外と楽しめたからいいか」
先程C.C.とペンウッドを殺したゼロの衣装を着た人物――キングはあの爆発現場に戻っていた。
見たところカブトエクステンダーを押しながら地面に視線を落として何かを探す仕草をしていた。
キングは探しているのだ。
先程ここで捜索している時に見つけたあるものを。
そしてそれは程なく見つかった。
「お、あった、あった」
それは血痕。
だいぶ薄くなっているが道路上を東の方に点々と伸びていた。
キング以外にこれに気付いた者はいない。
なぜならこの血痕は捜索現場の最東端付近にあるので捜索時お互い別々の箇所を探していた4人は全く知らないのだ。
「さて、この先にあるのは何かな? それにしても放送後は上手くいかなかったけど、情報交換の時の様子は面白かったな」
――でも、やっぱり私ははやてちゃんを信じます。
――へぇ、この画像を見てもまだ信じるんだ。
――あのはやてちゃんが理由もなく誰かを殺すなんて信じられません。だから今度会ったら絶対にお話を聞かせてもらうつもりです。
確たる証拠を見せられても尚親友を信じようする姿。その儚い姿は思い出しただけで笑いが込み上げてくる。
――貴様、浅倉達に会っていたのか!?
――怒らないでよ。今まで話す機会がなかったんだから。文句なら自分に言いなよ。
――ヴィヴィオは、その、どんな様子だったの。
あの時の天道となのはの様子は実によかった。驚きと不安を必死に押し隠そうとしている様は見ていて非常に楽しかった。
――……キングさん、その人の姿はそれ以上分からなかったんですか。
――うーん、なにせ天道を連れていてバイクで振り切ろうと必死だったからねー。もしかして心当たりでもあるの?
――その、フェ、フェイトちゃんに似ているところが……。
――高町、やはりお前もテスタロッサに思い至ったのか。
――でも、フェイトちゃんがそんな!?
――俺も同感だ。八神の時とは違って今回は情報があやふやだ。まだ可能性の一つでしかない。
もう一人の親友が殺し合いに乗ったかもしれないという不安を垣間見せた瞬間、笑いを堪えるので必死だった。
「と、ここが終点か。なんだ、誰かいるのかと思ったら違ったのか」
いろいろ思い返しているうちにキングは血痕の終点に辿り着いていた。
だがここでキングはこれが終点ではなく始点である事を確信した。
理由は血痕の規模。
ここの血痕は明らかに爆発地点よりも派手だ。
つまり血痕の主はここで傷を負ってそのまま移動して先程の場所で爆発に巻き込まれたと考えるのが自然だ。
ここに向かっている最中にそんな気はしていたが、一応確認のため来てみれば案の定だった。
だが誰もいなかったが、その代わりに奇妙な物が落ちていた。
「それにしても何だろう? 腕に嵌める物みたいだけど……それにカードも……あれ? 確かどこかにそういう話が……」
『CROSS-NANOHA』で見かけた記憶があるが、さすがにあの量だ。
流し読みではどこに書かれていた内容かすぐに思い出す事は不可能だった。
少なくとも自分の事が書かれた『MASUKARE-DO』とルルーシュの事が書かれた『HANNMOKU NO SUBARU』にはそのような物は出ていなかった。
「あとで探してみようかな。えっと、こうかな。『治療の神 ディアン・ケト』発動! な~んて――え?」
キングは不細工な絵柄のカードに苦笑しつつ適当に腕を振ってそれらしい掛け声をかけてみた。
果たしてそれはキングの意図しないところで発動キーと認識され、知らず知らずのうちにカードの効果の顕現させる事になった。
別に大して疲れていないが、それでもこのカードの効果で僅かな疲れが癒されていくのは感じた。
元いた世界でもカードを使う仮面ライダーは何人もいたので、このカードもその一種なんだなと納得した。
「へぇ、凄いじゃん。もし戻っても回復していなかったらこれ使ってあげよう」
そう言ってバイクに跨ったキングは携帯を取り出した。
そこにはキングが気に入った動画や画像がいくつも収められている。
先程のC.C.とペンウッドの死の瞬間の画像は写メで保存済みだ。
逆にヴィータとギルモンの画像のように使い道がなくなれば順次消去している。
「それにしてもこの画像、我ながらよく撮れたな――まるで本物みたい」
キングは携帯に映した高町なのはと天道総司の『偽の死体の画像』を見つつ一人悦に入っていた。
▼ ▼ ▼
「…………」
「…………」
先程まで5人が集っていたスーパーは打って変わってひどく静かになっている。
これまで幾人もの来訪者が訪れて内部を調べたせいもあって店内に残された品物はあまりない。
当然ながら明かりは付いておらず、誰が見ても寂れているという印象を受ける。
だが誰もいないというわけではない。
一番奥の事務室。
そこに一人静かに回復魔法を掛け続ける高町なのはの姿があった。
ただし身に付けている衣服は機動六課の制服ではなく一風変わった着物に変化している。
そして両手を翳した先で横になっている人物は天道総司。
このような状況になったのはやむを得ない理由があった。
今より少し前に目覚めた時の高町なのはの見た目は酷いものだった。
機動六課の制服は無残にも切り裂かれて衣服の役目を果たす事叶わず、その上茶色だった生地は真っ赤な血で染まっていた。
ただ幸い身体自体に傷は一つもなかった。
あくまで服がボロボロにされただけ。
思わず年頃の女性らしく声を上げそうになったが、そこは歴戦のエース。
喉元まで上がった声を押し留めて気持ちを落ち着かせた。
――ここで自分が取り乱してどうする!
そしてようやく周囲の様子を確認する余裕を取り戻して、近くに天道がなのはと同じように血まみれで倒れている事に気付いた。
だが天道はなのはと違って本当に傷を負っていた。
どうやら治りかけていた合流前に負ったという脇の傷が強い衝撃によって開いたようだ。
さっそく治癒魔法を行使して治療に掛かったところで違和感を覚えた。
そしてその違和感の正体がペンウッドとC.C.とキングの姿がどこにも見当たらない事だと気付いた時、背筋に嫌な汗が伝った。
――いったい気を失っている間に何があったのか。
この状況で目覚めれば誰もが思い浮かべる疑問を当然なのはも思い浮かべていた。
いくつか予想はできるが、どれもこれも悪いものばかり。
なのはは自分の予想が見当違いであってほしいと願うしかなかった。
だがその疑問は最悪の形ですぐに解けた。
『連れは預かった。返して欲しければ天道の傷を治して大人しく待っていろ byゼロ』
そんな言葉が書かれたメモが一枚置いてあった。
この場合連れとは単純に考えればペンウッドとC.C.とキングだが、そう簡単ではない。
当初なのはは今回の騒動はキングが仕組んだ事だと考えていた。
その最たる理由はこの事務室で見つけたパソコンに入っていた一通のメール。
『月村すずかの友人』という特定の参加者にしか分からない宛名から自分達に向けて送られたメールである事はすぐに分かった。
そこにはいくつか項目があったが、その中の一つにキングに注意しろという内容があった。
先程のキングの話と合わせて考えると、このメールの送り主は八神はやての可能性が高い。
これを素直に受け取るならキングはプレシアに立ち向かう集団に不和の種を蒔く危険人物という事になる。
だがキングの話が本当なら逆にはやてが自分に不利な情報を持っているキングの信用を下げるために送信したとも考えられる。
これは一人で決断を下していい問題ではなかったので、一応キングとC.C.が帰ってくる前に密かに一番キングの事を把握している天道にこの事を相談してみた。
そしてしばらく様子を見るしかないという結論に至った。
確かにキングは怪しいが、はやてがギルモンを殺した瞬間の画像という物的証拠もある。
さらにもし仮にキングが危険人物だとしても今の段階で手を出すのは得策ではない。
正体が露見したキングが形振り構わず攻撃してくれば無傷で対処する事など不可能だろう。
だから今は下手にこちらから手を出すより皆に注意を促して何もできないように見張る方がいい。
幸いキングは自分から積極的に参加者を殺そうという気はないように見えた。
そしてその結果が今の状況だ。
だが今回の行動がキングの仕業だとしたら腑に落ちない点がある。
なぜこのタイミングで行動を起こしたのか。
なぜ天道となのはを荷物もそのままで放置したのか。
第一このような事をすれば真っ先にキングが疑われる事はキング自身も分かっていたはず。
もしキングの仕業なら痕跡すら残さずに実行してもおかしくない。
だからキングが犯人だとどうしても断定できないでいた。
「……いったい、どうすれば」
「…………」
天道にもこの事を話したが、未だに返事をする事なく黙ったまま。
一度シャワーを浴びて着替えるために少し離れたが、帰ってきても天道に変化はなかった。
幸いボロボロになった制服の代わりとなる衣服はスーパーの店内にあった。
何かの宣伝のために置かれたマネキンに着せられていた着物は最初こそ一風変わった意匠だったので幾許かの躊躇いはあった。
だが実際に着てみると意外と動きやすく、且つ腰布もきちんと機能して安心した。
これなら戦闘で激しく動いても色々と支障は出てこない。
結局今はこうして天道の治療を行っているが、下手人の言葉を信じてこのままこの場で治療をしつつ待つべきかどうか悩むところだ。
とりあえず天道が満足に動けるようになるまではどちらにせよ動く事も儘ならない。
(それにヴィヴィオも……)
ここにきて初めてつかんだヴィヴィオの消息。
数時間前ではあるが、それでもいくらか安心できた。
一緒にいる人物が凶悪犯である事が気掛かりだが、なんとか上手くやっているらしい。
(ごめんね、ヴィヴィオ。なのはママ、もう少し迎えに行くのが遅くなりそう。だから無事でいてね)
だがなのはは知らない。
数時間後、そのヴィヴィオが聖王として覚醒する事に。
この時はまだなのはを含めて誰も予想すらしていなかった。
【1日目 日中】
【現在地 D-2 スーパーの事務室】
【高町なのは@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
【状態】健康、魔力消費小、プレシアに対する怒り、キングへの疑念、困惑
【装備】とがめの着物@小話メドレー、すずかのヘアバンド@魔法少女リリカルなのは、ケリュケイオン@魔法少女リリカルなのはStrikerS、フリードリヒ@魔法少女リリカルなのはStrikerS
【道具】支給品一式
【思考】
基本:誰の命も欠かす事なく、出来るだけたくさんの仲間を集めて脱出する。なんとしてもヴィヴィオを救出する。
1.ひとまず天道の治療を行う。その後でどうするか改めて相談する。
2.出来る限り全ての戦えない人を保護し、仲間を集める。
3.フェイトちゃん、はやてちゃん……本当にゲームに乗っているの?
4.早く騎士ゼストの誤解を解かないと……。
【備考】
※金居とキングを警戒しています。また紫髪の女子高校生(柊かがみ)を気に掛けています。
※フェイトとはやて(StS)に対して僅かな疑念を抱いていますが、きちんとお話して確かめたいと考えています。
【天道総司@魔法少女リリカルなのは マスカレード】
【状態】健康、疲労小、右脇腹負傷(治癒中)
【装備】カードデッキ(龍騎)@仮面ライダーリリカル龍騎、『SEAL―封印―』『CONTRACT―契約―』(龍騎のデッキに収納)@仮面ライダーリリカル龍騎
【道具】支給品一式、爆砕牙@魔法妖怪リリカル殺生丸、スティンガー×5@魔法少女リリカルなのはStrikerS
【思考】
基本:出来る限り全ての命を救い、帰還する。
1.???(何を考えているかは後続の書き手に任せます)
2.天の道を往く者として、ゲームに反発する参加者達の未来を切り拓く。
3.カードデッキとモンスターについて調べる必要がある。
4.エネルを捜して、他の参加者に危害を加える前に止める。
5.キングは信用できない。常に警戒し、見張っていたが……。
6.カブトセクターを始めとする各ゼクターを取り戻す。
【備考】
※首輪に名前が書かれていると知りました。
※ドラグレッダーはなのはと天道に城戸真司の面影を重ねているようです。
※SEALのカードがある限り、モンスターは現実世界に居る天道総司を襲う事は出来ません。
※天道自身は“集団の仲間になった”のではなく、“集団を自分の仲間にした”感覚です。
※C.C.からカードデッキの説明書きを受け取りました。
※PT事件のあらましを知りました(フェイトの出自は伏せられたので知りません)。
【チーム:スターズチーム】
【共通思考】
基本:出来る限り全ての命を保護した上で、殺し合いから脱出する。
1.これからどうするか?
2.協力して首輪を解除、脱出の手がかりを探す。
3.出来る限り戦えない全ての参加者を保護。
4.工場に向かい首輪を解析する。
【備考】
※それぞれが違う世界から呼ばれたという事に気付きました。
※チーム内で、ある程度の共通見解が生まれました。
友好的:なのは、(もう一人のなのは)、フェイト、(もう一人のフェイト)、(もう一人のはやて)、ユーノ、(クロノ)、(シグナム)、ヴィータ、シャマル、(ザフィーラ)、スバル、(ティアナ)、(エリオ)、キャロ、(ギンガ)、ヴィヴィオ、ペンウッド、天道、(弁慶)、ゼスト、(インテグラル)、C.C.、ルルーシュ、(カレン)、シャーリー
敵対的:アーカード、(アンデルセン)、浅倉、相川始、エネル
要注意:クアットロ、はやて、銀色の鬼?、金居、(矢車)、キング
それ以外:チンク・(ディエチ)・ルーテシア、紫髪の女子高校生、ギルモン・アグモン
▼ ▼ ▼
Q.キングの基本方針は?
A.このデスゲームを滅茶苦茶にして楽しみたい。
Q.なぜキングはデスゲームを滅茶苦茶にすると言いつつも殺し合いを促すような行動が多いの?
A.手っ取り早く滅茶苦茶にして楽しむなら参加者を弄る事が最も効果的だと思った&その方が面白いから。
Q.第二回放送後、キングは何かしたの?
A.特に何もしなかった……というよりも出来なかった。
A-1.なのは:ギンガ、ザフィーラ、フェイト、弁慶、はやての計5人もの死者、特にフェイトとはやてとは10年来の親友なのでその訃報は特に堪えていたから期待していたが、合流した当初からキングについては懐疑的だったため容易に近づけなかった。
A-2.天道:特に心を乱すような死亡者がいなかった。むしろ浅倉との対決の方に期待。
A-3.ペンウッド:インテグラルの死によって最凶の吸血鬼であるアーカードの歯止めがなくなった事で人一番怯えていたから一番期待していたが、キングの行動を予想していた天道が終始キングが近づく機会は与えなかった。
A-4.C.C.:特に心を乱すような死亡者がいなかった……というより『CROSS-NANOHA』を読んでもどんな人物かよく分からない。
Q.爆発地点でキングは何をしていたの?
A.終始それとなく警戒されていたので少々苛立ちながらも何か面白い物がないか探していた。
Q.爆発地点でキングは何を見つけたの?
A.ヒビノ・ミライの血痕(捜索区域は分担制だったのでキング以外に気付いた人はいなかった)。
A’.ハンドグレネード(1発で数十人の意識を失わせる事が出来る代物。厳密にはペンウッドの支給品。ペンウッドが転んだ時にこっそり一つ盗んだ)。
Q.スーパーの周囲の偵察や知らないうちになのはとペンウッドが平常心を取り戻していた時、キングはどんな心境だったの?
A.はっきり言って面白くなかった&だからある計画を実行する気になった。
Q.なぜキングはチーム・スターズから脱退したの?
A.浅倉を連れて来て天道と戦わせるため(元々期待していた上にそろそろ浅倉も何人か殺しているだろうから良い頃合いだと思った)。あとチーム・スターズに入った覚えはない。
Q.情報交換はキングにとって面白くなかったの?
A.それなりに面白かったが、既にキングにとって浅倉と天道の対決の方が遥かに楽しみだった。
A’.キングが話した内容には所々嘘が混じっている(全部嘘でないのは信憑性を持たせるため)。
Q.なぜキングはこんな方法を取ったの?
A.皆を気絶させた方が余計な手間を掛けずに出ていけると考えたため。
Q.どうやってキングは4人の意識を失わせたの?
A.まず適当なところで蛍光灯を念動力で壊して皆の注意を上に逸らす。次に皆に気付かれない位置でハンドグレネードを作動させて意識を失わせた(この時キングは息を止めていた&アンデッドだから人間より僅かに効きにくかったので意識を失う事はなかった)。
Q.なぜあのタイミングだったの?
A.C.C.がマントを出して皆の気がそれに向いていたから(単に自分の番が終わってペンウッドの番が回るまでならどこでもよかった)。
Q.なぜキングは天道の傷を開いたの?
A.そうすればしばらく動けないから(浅倉を連れてくるまで動かないでほしかった&動いたら探すのが面倒)。
Q.なぜキングはなのはを殺さずに残したの?
A.天道の傷を治療させる(だいたい戻ってくる頃には完治させているはず)&浅倉に同行していたヴィヴィオをネタに揺さぶるため。
Q.なぜキングは偽の死体の写真を撮ったの?
A.あとで何かに使えると思ったから(なのはに付いていた血は天道の血)。
Q.なぜキングはC.C.とペンウッドを連れ出したの?
A.禁止エリアに入った時の首輪の反応を確かめたかったから。
Q.なぜキングは二人を投げ入れて生還レースを行ったの?
A.ただの余興。それ以上でもそれ以下でもない。敢えて言うなら本当に首輪が爆発するか確かめるため。
Q.C.C.がぶつかった物って何だったの?
A.ソリッドシールド。スティンガーやグロック19の銃弾を弾いた物も同様。
Q.なぜキングはゼロの口真似ができるの?
A. 『CROSS-NANOHA』でルルーシュ(本物のゼロ)について念入りに調べた時に軽く覚えたから(だが慣れていないので時折素に戻る)。
Q.なぜキングはペンウッドに『どちらが多く参加者を殺せるか勝負しよう』と言ったの?
A.仮面ライダーに変身する道具を手に入れるため(このまま天道と浅倉を会わせても浅倉が仮面ライダーに変身できなければ面白くない。他の参加者から奪う手もあるが、運良く変身道具を持った参加者に会えるかどうか分からない。それならばプレシアが言っていたボーナスを利用する手がある。ペンウッドが殺害数を稼いでボーナスをもらえそうなら変身道具をもらうように仕向けるつもりだった)。
Q.なぜキングはペンウッドを最終的に殺したの?
A.申し出を受けない時点で興味が失せた&決死の抵抗が無意味だと悟って死ぬ顔が見たくなった&本当に無理やり外そうとすると首輪は爆発するのか確かめるため。
Q.結局首輪について何か判明したの?
A.禁止エリアに30秒以上滞在する&首輪を割る程の大きな衝撃を与えると爆発する。不老不死の奴でも死ぬ。
Q.デイパックをいっぱい持っているけど最強だから必要ないんじゃないの?
A.なぜ持っていないかと聞かれるのが億劫だから一応持つ事にした(面白い事になりそうなら誰かにあげてもいい)。
Q.なぜキングはゼロの仮面と衣装を着たままバイクに乗っているの?
A.仮面ライダーみたい(仮面を被ってバイクに乗っている的な意味で)&周囲の反応を楽しみたいから(ただし邪魔なら脱ぐ)。
Q.これからキングはどこへ行くの?
A.浅倉がいそうな場所(いざとなったら魔力を持つものを使って地上本部最上階の転移装置を使う)。
Q.キングは最後の一人になるつもりなの?
A.当たり前。
Q.この質問と回答って信頼していいの?
A.どうなんだろう?
【1日目 日中】
【現在地 E-3 大通りの近く】
【キング@魔法少女リリカルなのはマスカレード】
【状態】健康、上機嫌、ゴジラへの若干の興味、面白いものへの高揚感
【装備】ゼロの仮面@コードギアス 反目のスバル、ゼロの衣装(予備)@【ナイトメア・オブ・リリカル】白き魔女と黒き魔王と魔法少女たち、キングの携帯電話@魔法少女リリカルなのは マスカレード、カブトエクステンダー@魔法少女リリカルなのは マスカレード
【道具①】支給品一式、おにぎり×10、ハンドグレネード×4@魔法少女リリカルなのはStrikerS、ギルモンとアグモンとC.C.のデイパック(道具②③④)
【道具②】支給品一式、RPG-7+各種弾頭(榴弾5/照明弾2/スモーク弾2)@ACE COMBAT04 THE OPERATION LYRICAL、トランシーバー×2@オリジナル
【道具③】支給品一式、菓子セット@L change the world after story
【道具④】支給品一式、スティンガー×5@魔法少女リリカルなのはStrikerS、デュエルディスク@リリカル遊戯王GX、治療の神 ディアン・ケト(ディスクにセットした状態)@リリカル遊戯王GX
【思考】
基本:この戦いを全て滅茶苦茶にする。
1.浅倉を迎えに行って天道と戦うように御膳立てする。
2.はやての挑発に乗ってやる。
3.浅倉とキャロに期待。
4.シャーリーに会ったらゼロがルルーシュだと教える。
5.ヴィヴィオをネタになのはと遊ぶ。
【備考】
※携帯には『相川始がカリスに変身する瞬間の動画』『八神はやて(StS)がギルモンを殺す瞬間の画像』『高町なのは(StS)の偽装死体の画像』『天道総司の偽装死体の画像』『C.C.の死の瞬間の画像』『シェルビー・M・ペンウッドの死の瞬間の画像』が保存されています。
※首輪に名前が書かれていると知りました。
※全ての参加者の性格とおおまかな戦闘スタイルを把握しました。特に天道に関しては念入りに調べてあります。
※ゼロの正体がルルーシュだと知りました。
※はやての事はゲームの相手プレイヤーという感覚で見ています。
※PT事件のあらましを知りました(フェイトの出自は伏せられたので知りません)。
&color(red){【C.C.@コードギアス 反目のスバル 死亡確認】}
&color(red){【シェルビー・M・ペンウッド@NANOSING 死亡確認】}
【全体備考】
※D-2寄りのD-3にC.C.も死体(首と胴体が分かれている)が放置されています。
※D-3寄りのD-2にナイトブレスを付けたペンウッドの死体(首と胴体が分かれている/近くに)が放置されています。
※グロック19(0/0)はペンウッドの死体の傍に放置されています。
【ハンドグレネード@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
セインが時空管理局地上本局の指揮管制室を制圧した際に使用したハンドグレネード。
弾頭部分には化学兵器(毒ガス)が装填されており、2発だけで指揮管制要員数十名を一瞬で無力化した。
この毒ガスは分析によれば「致死性ではなく麻痺性」と言われていた(バリアジャケットに対毒ガス用術式を施す事で回避可能)。
【とがめの着物@小話メドレー】
奇策士とがめが着ている着物。スーパー内にあった何かの宣伝用のマネキンが着ていた物。
左右非対称で奇抜な意匠だが特に機能性に問題はない。腰の部分が心許ないように見えるが中が見える事はない。
|Back:[[キングの狂宴/狙われた天道(前編)]]|時系列順で読む|Next:[[お昼ごはんの時間だよ]]|
|~|投下順で読む|Next:[[Blue Swear―――蒼い誓い]]|
|~|ゼスト・グランガイツ|Next:[[]]|
|~|高町なのは(StS)|Next:[[13人の超新星(1)]]|
|~|天道総司|Next:[[13人の超新星(1)]]|
|~|キング|Next:[[13人の超新星(1)]]|
|~|&color(red){シェルビー・M・ペンウッド}|&color(red){GAME OVER}|
|~|&color(red){C.C.}|&color(red){GAME OVER}|
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*キングの狂宴/狙われた天道(後編) ◆HlLdWe.oBM
「ん、こ、ここは……」
聞き覚えのない声と痛みに起こされたC.C.は自分がどこか道路の上に放り出されている事に気付いた。
白い拘束衣に無数の擦り傷が走っている事から身体のあちこちが痛むのは道路を転がされたせいだと分かった。
最新の記憶では自分は高町なのは達とスーパーの事務室で情報交換をしていたはず。
それがいきなり外、しかも道路に置き去り状態、さらに隣では同じように訳が分からない顔をしているペンウッドもいた。
どうやらこの場所にいるのは二人だけのようだ。
何がどうなっているのか全く分からなかった。
だが次の瞬間、C.C.をさらに混乱させる声が耳に飛び込んできた。
『現在あなたがいるエリアは禁止エリアに指定されています。20秒以内に退去してください』
それは死へのカウントダウン。
先程も聞いたはずだが目覚めたばかりで失念していたようだ。
だがこれでもう意識は否応なく現実へと引きずり出された。
「え、こ、これは――」
ようやくペンウッドも現状を理解したらしい。
これは紛れもなく首輪の爆弾のタイムリミット。
だが悠長にその事を考えている猶予はない。
「走るぞ、ペンウッド!!!」
だがどこに走ればいい?
唯一分かっている事は現在二人がいる場所が禁止エリアに指定されていて、20秒以内に退去しないと首輪を爆破されて死んでしまうという事だけだ。
こうしている間にも残り時間はなくなっている。
まずはどの方向へ向かって走るべきか四方を見渡すべき。
しかしその判断を一瞬で下したC.C.の目に信じられないものが飛び込んできた。
「ゼ、ゼロ!?」
それは何メートルか離れた所に立っていた。
見慣れた黒いマントに黒い仮面を身に付けた黒の騎士団のリーダーゼロ。
それに気付いたC.C.はひどく驚いた。
だが同時にそこに活路を見出していた。
「こっちだ、ペンウッド!!」
いきなり現れたゼロに対して湧き上がる疑問は無数にある。
あれはルルーシュなのか?
それとも中身は別の者なのか?
なぜあのような場所に立っているのか?
本当にあちらに走って大丈夫なのか?
こちらの様子を見ていながら何もする様子がないのはなぜか?
だがどれもこの場で死んでしまっては聞けなくなる。
どういうつもりであの場所に立っているのか知らないが、ゼロがいる場所は確実に禁止エリア外のはず。
だからそこまで辿り着く事ができれば……。
『10』
そこまで考えたところ僅かに足が鈍った。
このまま禁止エリアにいれば長年の願い、自らの死が叶う。
元の世界にいれば永遠に叶わないと思っていた願いがあと10秒で成就する。
死、それは待ち望んだ甘美な響きだった。
不老不死の苦しみから解き放たれるのならばこのまま死んでもいいではないか。
『8』
だがその誘惑は一瞬で払った。
今の自分は昔のようにただ漫然と惰性で生を送っている身ではない。
それに死に導いてくれる当てならできた。
だがその前に今はまだ死ねない。
『5』
ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア。
愚直なまでに妹の幸せを願う青年と出会ってから自分は少し変わった気がする。
『4』
以前なら考えられないような心境の変化。
それをもたらしたルルーシュに抱く感情が何なのか。
『3』
それはまだはっきりとは分からない。
『2』
「よし!!!」
途中で迷っていた分だけペンウッドが一歩先んじてゼロの脇を通り過ぎた。
ゼロがてっきり何かしてくるのかと思ったが、意外にも何の行動も起こさなかった。
だが油断は禁物、もう猶予も残り僅か。
あとは一心に走って禁止エリアから――。
「――ガッ!?」
一瞬何が起こったのか分からなかった。
いきなり顔面に衝撃が走った。
視界はブラックアウトして意識は一瞬何処か遠いところに飛んでいった。
それが勢いよく走っていた自分と突然空中に現れた何かがぶつかったせいだと気付いたのはもう身体が衝撃で後方に倒れている最中だった。
『1』
もうここから体勢を立て直すのは無理だ。
それならばせめて最期に悪足掻きぐらいしてみようか。
いつでも出せるように懐に忍ばせておいたスティンガーを両手で取り出す。
投擲の構えなど関係ない。
狙うべき的は目の前だ。
『0』
(ルルーシュ、死ぬなよ……)
▼ ▼ ▼
ペンウッドは目の前の光景に言葉が出なかった。
ギリギリだったとはいえC.C.も爆発を回避できるはずだった。
だがそれは叶わなかった――全身黒尽くめのゼロという謎の人物のせいで。
そしてペンウッドは見た――C.C.の首輪が爆発して拘束衣の少女の首と胴体が分かれる瞬間を。
C.C.が最期の抵抗に放ったスティンガーはゼロに届く前に何かに弾かれて傷一つ負わす事も出来なかった。
その様子を見る前に死んだ事がせめてもの救いだったのかもしれない。
「ほぅ、生き残ったのはペンウッド君か、おめでとう。ならば勝利した君にはこれを送ろう」
いきなりデイパックを3つよこしたゼロに思わず不信の目を向ける。
そういえば目覚めた時、自分もC.C.もデイパックを持っていなかった。
おそらく予めゼロが回収していたのだろう。
だがそれをわざわざ返す意味が分からない。
「ど、どういう意味だ……」
「なに、簡単な事だ。今のは余興、どちらが早く禁止エリアから脱出できるかというゲームだ」
「な、なん……だと……」
「結果は君の勝利だ、おめでとう。そして残念ながら敗北したC.C.君には罰ゲームとして禁止エリアでの死を与えた」
つまりこういう事か。
目の前のゼロは単なる余興でC.C.とペンウッドを競わせて高みの見物をしていたと。
そして先にペンウッドが到着した事を確認すると後ろから来たC.C.が禁止エリアから出る事を妨げた。
ある意味ペンウッドが殺したとも言えなくもないが、今はそこまで考えられない。
「ああ、そうそう。スーパーに戻っても誰もいないぞ――全員もう死んでいるからね」
「な、そんな事が――」
「これがその証拠だ」
そう言ってペンウッドの目の前に掲げられた物はキングが持っていたはずの携帯電話の画面。
そこに映っているのは仲間の死体。
右脇を斬られて血を流して倒れている天道総司の死体。
身体中至る所を斬られて全身血に塗れて倒れている高町なのはの死体。
そして今しがた絶望の中で死んでいったC.C.の死体。
(天道君、なのは君、C.C.君――!?)
そこでペンウッドは気付いた。
スーパーに集った者は自分を含めて5人。
つまり後一人足りない。
「まあ余計な詮索はなしにしてもらおうか」
その瞬間、ペンウッドの思考を読み取ったかのようにゼロが有無を言わさぬ圧力をかけてきた。
目と鼻の先まで近づけられたゼロの仮面。
その見えない圧力にペンウッドは黙るしかなかった。
「よし、面白いこと思い付いた。どちらが多く参加者を殺せるか勝負しようか」
「そ、そんな――」
「断るならここで殺してもいいんだよ」
一度口から出かけた否定の言葉を飲み込んでペンウッドは悩んだ。
もう頼れる仲間は全員死んでしまった。
今の状態は完全に孤立無援状態。
そして明らかにゼロとの力の差は歴然だった。
「わ、わかった! 勝負すればいいんだろう」
それならばこの申し出を受ける事も仕方のない事なのかもしれない。
「そうこなくちゃ。じゃあ期限は次の放送まで。精々がんばってね」
ペンウッドに期限と励ましの言葉をかけたゼロはそれでもう用は済んだとばかりに後姿を向けていた。
これでようやくこの重圧から逃れられる。
本当は人殺しなどしたくないが、今はこの場を乗り切ることが大切。
ペンウッドはほっとしてゼロと反対の方向に――。
「――嫌だ!!」
決意と共に放たれたのは一発の銃弾。
そこには先程までの優柔不断な中年軍人の姿はなかった。
そこにいたのは一人の男。
もうペンウッドに迷いはない。
「どういう事かな?」
絶対的強者の位置でゼロはペンウッドの行動を咎めた。
決死の思いで放たれた銃弾は空中に現れた物体で防がれていた。
だがそれを見てもペンウッドは引き下がらなかった。
「そんな申し出は聞けないね!!」
「へぇー、意外だね。てっきり何もできない奴だと思っていた」
「……私は無能かもしれんが、卑怯者ではないよ」
ここで逃げる事は出来ない、それだけは出来ない。
なぜならここで逃げればペンウッドは『卑怯者』になってしまう。
何もできないと言い訳をして危険人物を野放しにする。
それは卑怯者と一緒だ。
「私は駄目な男だ、無能だ、臆病だ。自分でも何故こんな所にいるのか分からんほど駄目な男だ。
生まれついての家柄と地位だけで生きてきたも同然だ。
自分で何もつかもうとしてこなかった、いつも人から与えられた地位と仕事をやってきた」
「うん、僕もそう思うよ」
「だから、せ、せめて、仕事は、この仕事だけは全うしなきゃならんと思う」
「立派な心掛けだね。で、その仕事って何さ?」
「最期まで抵抗して義務を果たす――貴様を葬り去る事だ!!」
その言葉と共にグロック19の銃口が勇ましく火を噴いた。
何発も何発も何発も銃弾が尽きるまで撃ち続けた。
連続射撃の反動で手が痺れても火薬の臭いで噎せそうになっても恐怖で押しつぶされそうになっても。
ゼロをこのまま行かせるわけにはいかない。
唯その一心で。
高町なのは、天道総司、キング、C.C.、4人も殺した危険人物を野放しにしてはいけない。
もうこうなればこの命はないも同然。
だから最期に刺し違えてでも――。
「ああ、もういいよ」
何事もなかったかのようにゼロの声が聞こえてきた刹那、何かが飛んできた。
それはひどくスローに見えたが、なぜかペンウッドの身体は思うように動いてくれなかった。
実際には目にも留まらぬ速さで飛来しているからそのように錯覚するのだ。
そして真っ直ぐ首輪に向かって飛んできて到達した瞬間、再びあの光景を目にした。
見渡す限り虹色に輝く上下左右の感覚がない不思議な空間。
そして目の前に青と銀色の巨人の姿がぼんやりと見えた。
なぜかそれが以前ここで聞いた温かな声の主――ウルトラマンヒカリであるとすぐに分かった。
そして今回もヒカリはペンウッドに向かって何か話している。
「 」
だが今その声は聞こえない。
何かを伝えようとしているが何も伝わってこない。
以前と今で何が違うのかペンウッドには分からない。
もしかしたら本当に死ぬ瞬間とはこういうものかもしれないとひどく冷静に考えている自分がいた。
(奇跡は何度も起きないか)
そしてペンウッドの意識は戻る。
(すまん、皆、すまんな)
▼ ▼ ▼
『お前の探しものはスーパーにある(面倒になる前に先に言っておく。あいつはお前の世界の奴ではなく安全だ) byピザの代価』
残された書き置きにはそう書かれていた。
「ピザの代価となればあいつに間違いないな」
ゼストはメモを見て、これがC.C.によって書かれた物である事を確認した。
だがその内容は短いながらも衝撃的だった。
これが本当ならゼストの目的は根本から崩れる事になる。
しかしC.C.が間違った情報を残した可能性もある。
「どちらにせよ行くしかないか。だがもしも高町が悪鬼でないなら、俺は――」
【1日目 日中】
【現在地 C-3 商店街跡地】
【ゼスト・グランガイツ@魔法少女リリカルなのは 闇の王女】
【状態】健康
【装備】ブリッツキャリバー@魔法妖怪リリカル殺生丸
【道具】支給品一式
【思考】
基本:高町なのはの捜索・抹殺? プレシアの抹殺。ルーテシアの保護。
1.スーパーに行って高町なのはの正体を見極める。
2.落ち着いたらC.C.及びブリッツキャリバーから彼等の世界について詳しく確認する。
3.その後、軍事基地に向かい万丈目と合流する。
4.カードデッキ及び千年リングを見付けた場合は破壊・処分する。
5.行動を共にする仲間を増やす(市街地は危険そうなので武装が整うまでは基本的に避けたい)。
6.なのはと戦う事になればギア・エクセリオンの発動も辞さない――己の命を削ってでも。だが、仮に彼女が自分の世界の彼女では無いとしたら――?
【備考】
※C.C.との協力関係はギブアンドテイクという暗黙の了解の上に成り立っています。
※ギア・エクセリオンによる負担の程度は不明(ゼストは自分のデバイスのフルドライブ同様に命を削る可能性もあると推測)。
※プレシアにはスカリエッティと同等かそれ以上の技術があると思っていますが、プレシアを全く信用していません。
※ヴィータとプレシアの間で何らかの約定があったかもしれないと考えています(並行世界の彼女の可能性を考えています)。
※スバルが『スバル・ナカジマ』の名前である事に疑問を抱きました(並行世界の彼女の可能性を考えています)。
※カードデッキの制限と千年リングについての情報を把握しました。
※参加者が異なる並行世界から連れて来られている可能性を知りました。
※プレシアは殺し合いの早期決着を望んでいると考えています。
※エリアの端と端が繋がっている事を知りました。
▼ ▼ ▼
「まあまあだったかな、意外と楽しめたからいいか」
先程C.C.とペンウッドを殺したゼロの衣装を着た人物――キングはあの爆発現場に戻っていた。
見たところカブトエクステンダーを押しながら地面に視線を落として何かを探す仕草をしていた。
キングは探しているのだ。
先程ここで捜索している時に見つけたあるものを。
そしてそれは程なく見つかった。
「お、あった、あった」
それは血痕。
だいぶ薄くなっているが道路上を東の方に点々と伸びていた。
キング以外にこれに気付いた者はいない。
なぜならこの血痕は捜索現場の最東端付近にあるので捜索時お互い別々の箇所を探していた4人は全く知らないのだ。
「さて、この先にあるのは何かな? それにしても放送後は上手くいかなかったけど、情報交換の時の様子は面白かったな」
――でも、やっぱり私ははやてちゃんを信じます。
――へぇ、この画像を見てもまだ信じるんだ。
――あのはやてちゃんが理由もなく誰かを殺すなんて信じられません。だから今度会ったら絶対にお話を聞かせてもらうつもりです。
確たる証拠を見せられても尚親友を信じようする姿。その儚い姿は思い出しただけで笑いが込み上げてくる。
――貴様、浅倉達に会っていたのか!?
――怒らないでよ。今まで話す機会がなかったんだから。文句なら自分に言いなよ。
――ヴィヴィオは、その、どんな様子だったの。
あの時の天道となのはの様子は実によかった。驚きと不安を必死に押し隠そうとしている様は見ていて非常に楽しかった。
――……キングさん、その人の姿はそれ以上分からなかったんですか。
――うーん、なにせ天道を連れていてバイクで振り切ろうと必死だったからねー。もしかして心当たりでもあるの?
――その、フェ、フェイトちゃんに似ているところが……。
――高町、やはりお前もテスタロッサに思い至ったのか。
――でも、フェイトちゃんがそんな!?
――俺も同感だ。八神の時とは違って今回は情報があやふやだ。まだ可能性の一つでしかない。
もう一人の親友が殺し合いに乗ったかもしれないという不安を垣間見せた瞬間、笑いを堪えるので必死だった。
「と、ここが終点か。なんだ、誰かいるのかと思ったら違ったのか」
いろいろ思い返しているうちにキングは血痕の終点に辿り着いていた。
だがここでキングはこれが終点ではなく始点である事を確信した。
理由は血痕の規模。
ここの血痕は明らかに爆発地点よりも派手だ。
つまり血痕の主はここで傷を負ってそのまま移動して先程の場所で爆発に巻き込まれたと考えるのが自然だ。
ここに向かっている最中にそんな気はしていたが、一応確認のため来てみれば案の定だった。
だが誰もいなかったが、その代わりに奇妙な物が落ちていた。
「それにしても何だろう? 腕に嵌める物みたいだけど……それにカードも……あれ? 確かどこかにそういう話が……」
『CROSS-NANOHA』で見かけた記憶があるが、さすがにあの量だ。
流し読みではどこに書かれていた内容かすぐに思い出す事は不可能だった。
少なくとも自分の事が書かれた『MASUKARE-DO』とルルーシュの事が書かれた『HANNMOKU NO SUBARU』にはそのような物は出ていなかった。
「あとで探してみようかな。えっと、こうかな。『治療の神 ディアン・ケト』発動! な~んて――え?」
キングは不細工な絵柄のカードに苦笑しつつ適当に腕を振ってそれらしい掛け声をかけてみた。
果たしてそれはキングの意図しないところで発動キーと認識され、知らず知らずのうちにカードの効果の顕現させる事になった。
別に大して疲れていないが、それでもこのカードの効果で僅かな疲れが癒されていくのは感じた。
元いた世界でもカードを使う仮面ライダーは何人もいたので、このカードもその一種なんだなと納得した。
「へぇ、凄いじゃん。もし戻っても回復していなかったらこれ使ってあげよう」
そう言ってバイクに跨ったキングは携帯を取り出した。
そこにはキングが気に入った動画や画像がいくつも収められている。
先程のC.C.とペンウッドの死の瞬間の画像は写メで保存済みだ。
逆にヴィータとギルモンの画像のように使い道がなくなれば順次消去している。
「それにしてもこの画像、我ながらよく撮れたな――まるで本物みたい」
キングは携帯に映した高町なのはと天道総司の『偽の死体の画像』を見つつ一人悦に入っていた。
▼ ▼ ▼
「…………」
「…………」
先程まで5人が集っていたスーパーは打って変わってひどく静かになっている。
これまで幾人もの来訪者が訪れて内部を調べたせいもあって店内に残された品物はあまりない。
当然ながら明かりは付いておらず、誰が見ても寂れているという印象を受ける。
だが誰もいないというわけではない。
一番奥の事務室。
そこに一人静かに回復魔法を掛け続ける高町なのはの姿があった。
ただし身に付けている衣服は機動六課の制服ではなく一風変わった着物に変化している。
そして両手を翳した先で横になっている人物は天道総司。
このような状況になったのはやむを得ない理由があった。
今より少し前に目覚めた時の高町なのはの見た目は酷いものだった。
機動六課の制服は無残にも切り裂かれて衣服の役目を果たす事叶わず、その上茶色だった生地は真っ赤な血で染まっていた。
ただ幸い身体自体に傷は一つもなかった。
あくまで服がボロボロにされただけ。
思わず年頃の女性らしく声を上げそうになったが、そこは歴戦のエース。
喉元まで上がった声を押し留めて気持ちを落ち着かせた。
――ここで自分が取り乱してどうする!
そしてようやく周囲の様子を確認する余裕を取り戻して、近くに天道がなのはと同じように血まみれで倒れている事に気付いた。
だが天道はなのはと違って本当に傷を負っていた。
どうやら治りかけていた合流前に負ったという脇の傷が強い衝撃によって開いたようだ。
さっそく治癒魔法を行使して治療に掛かったところで違和感を覚えた。
そしてその違和感の正体がペンウッドとC.C.とキングの姿がどこにも見当たらない事だと気付いた時、背筋に嫌な汗が伝った。
――いったい気を失っている間に何があったのか。
この状況で目覚めれば誰もが思い浮かべる疑問を当然なのはも思い浮かべていた。
いくつか予想はできるが、どれもこれも悪いものばかり。
なのはは自分の予想が見当違いであってほしいと願うしかなかった。
だがその疑問は最悪の形ですぐに解けた。
『連れは預かった。返して欲しければ天道の傷を治して大人しく待っていろ byゼロ』
そんな言葉が書かれたメモが一枚置いてあった。
この場合連れとは単純に考えればペンウッドとC.C.とキングだが、そう簡単ではない。
当初なのはは今回の騒動はキングが仕組んだ事だと考えていた。
その最たる理由はこの事務室で見つけたパソコンに入っていた一通のメール。
『月村すずかの友人』という特定の参加者にしか分からない宛名から自分達に向けて送られたメールである事はすぐに分かった。
そこにはいくつか項目があったが、その中の一つにキングに注意しろという内容があった。
先程のキングの話と合わせて考えると、このメールの送り主は八神はやての可能性が高い。
これを素直に受け取るならキングはプレシアに立ち向かう集団に不和の種を蒔く危険人物という事になる。
だがキングの話が本当なら逆にはやてが自分に不利な情報を持っているキングの信用を下げるために送信したとも考えられる。
これは一人で決断を下していい問題ではなかったので、一応キングとC.C.が帰ってくる前に密かに一番キングの事を把握している天道にこの事を相談してみた。
そしてしばらく様子を見るしかないという結論に至った。
確かにキングは怪しいが、はやてがギルモンを殺した瞬間の画像という物的証拠もある。
さらにもし仮にキングが危険人物だとしても今の段階で手を出すのは得策ではない。
正体が露見したキングが形振り構わず攻撃してくれば無傷で対処する事など不可能だろう。
だから今は下手にこちらから手を出すより皆に注意を促して何もできないように見張る方がいい。
幸いキングは自分から積極的に参加者を殺そうという気はないように見えた。
そしてその結果が今の状況だ。
だが今回の行動がキングの仕業だとしたら腑に落ちない点がある。
なぜこのタイミングで行動を起こしたのか。
なぜ天道となのはを荷物もそのままで放置したのか。
第一このような事をすれば真っ先にキングが疑われる事はキング自身も分かっていたはず。
もしキングの仕業なら痕跡すら残さずに実行してもおかしくない。
だからキングが犯人だとどうしても断定できないでいた。
「……いったい、どうすれば」
「…………」
天道にもこの事を話したが、未だに返事をする事なく黙ったまま。
一度シャワーを浴びて着替えるために少し離れたが、帰ってきても天道に変化はなかった。
幸いボロボロになった制服の代わりとなる衣服はスーパーの店内にあった。
何かの宣伝のために置かれたマネキンに着せられていた着物は最初こそ一風変わった意匠だったので幾許かの躊躇いはあった。
だが実際に着てみると意外と動きやすく、且つ腰布もきちんと機能して安心した。
これなら戦闘で激しく動いても色々と支障は出てこない。
結局今はこうして天道の治療を行っているが、下手人の言葉を信じてこのままこの場で治療をしつつ待つべきかどうか悩むところだ。
とりあえず天道が満足に動けるようになるまではどちらにせよ動く事も儘ならない。
(それにヴィヴィオも……)
ここにきて初めてつかんだヴィヴィオの消息。
数時間前ではあるが、それでもいくらか安心できた。
一緒にいる人物が凶悪犯である事が気掛かりだが、なんとか上手くやっているらしい。
(ごめんね、ヴィヴィオ。なのはママ、もう少し迎えに行くのが遅くなりそう。だから無事でいてね)
だがなのはは知らない。
数時間後、そのヴィヴィオが聖王として覚醒する事に。
この時はまだなのはを含めて誰も予想すらしていなかった。
【1日目 日中】
【現在地 D-2 スーパーの事務室】
【高町なのは@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
【状態】健康、魔力消費小、プレシアに対する怒り、キングへの疑念、困惑
【装備】とがめの着物@小話メドレー、すずかのヘアバンド@魔法少女リリカルなのは、ケリュケイオン@魔法少女リリカルなのはStrikerS、フリードリヒ@魔法少女リリカルなのはStrikerS
【道具】支給品一式
【思考】
基本:誰の命も欠かす事なく、出来るだけたくさんの仲間を集めて脱出する。なんとしてもヴィヴィオを救出する。
1.ひとまず天道の治療を行う。その後でどうするか改めて相談する。
2.出来る限り全ての戦えない人を保護し、仲間を集める。
3.フェイトちゃん、はやてちゃん……本当にゲームに乗っているの?
4.早く騎士ゼストの誤解を解かないと……。
【備考】
※金居とキングを警戒しています。また紫髪の女子高校生(柊かがみ)を気に掛けています。
※フェイトとはやて(StS)に対して僅かな疑念を抱いていますが、きちんとお話して確かめたいと考えています。
【天道総司@魔法少女リリカルなのは マスカレード】
【状態】健康、疲労小、右脇腹負傷(治癒中)
【装備】カードデッキ(龍騎)@仮面ライダーリリカル龍騎、『SEAL―封印―』『CONTRACT―契約―』(龍騎のデッキに収納)@仮面ライダーリリカル龍騎
【道具】支給品一式、爆砕牙@魔法妖怪リリカル殺生丸、スティンガー×5@魔法少女リリカルなのはStrikerS
【思考】
基本:出来る限り全ての命を救い、帰還する。
1.???(何を考えているかは後続の書き手に任せます)
2.天の道を往く者として、ゲームに反発する参加者達の未来を切り拓く。
3.カードデッキとモンスターについて調べる必要がある。
4.エネルを捜して、他の参加者に危害を加える前に止める。
5.キングは信用できない。常に警戒し、見張っていたが……。
6.カブトセクターを始めとする各ゼクターを取り戻す。
【備考】
※首輪に名前が書かれていると知りました。
※ドラグレッダーはなのはと天道に城戸真司の面影を重ねているようです。
※SEALのカードがある限り、モンスターは現実世界に居る天道総司を襲う事は出来ません。
※天道自身は“集団の仲間になった”のではなく、“集団を自分の仲間にした”感覚です。
※C.C.からカードデッキの説明書きを受け取りました。
※PT事件のあらましを知りました(フェイトの出自は伏せられたので知りません)。
【チーム:スターズチーム】
【共通思考】
基本:出来る限り全ての命を保護した上で、殺し合いから脱出する。
1.これからどうするか?
2.協力して首輪を解除、脱出の手がかりを探す。
3.出来る限り戦えない全ての参加者を保護。
4.工場に向かい首輪を解析する。
【備考】
※それぞれが違う世界から呼ばれたという事に気付きました。
※チーム内で、ある程度の共通見解が生まれました。
友好的:なのは、(もう一人のなのは)、フェイト、(もう一人のフェイト)、(もう一人のはやて)、ユーノ、(クロノ)、(シグナム)、ヴィータ、シャマル、(ザフィーラ)、スバル、(ティアナ)、(エリオ)、キャロ、(ギンガ)、ヴィヴィオ、ペンウッド、天道、(弁慶)、ゼスト、(インテグラル)、C.C.、ルルーシュ、(カレン)、シャーリー
敵対的:アーカード、(アンデルセン)、浅倉、相川始、エネル
要注意:クアットロ、はやて、銀色の鬼?、金居、(矢車)、キング
それ以外:チンク・(ディエチ)・ルーテシア、紫髪の女子高校生、ギルモン・アグモン
▼ ▼ ▼
Q.キングの基本方針は?
A.このデスゲームを滅茶苦茶にして楽しみたい。
Q.なぜキングはデスゲームを滅茶苦茶にすると言いつつも殺し合いを促すような行動が多いの?
A.手っ取り早く滅茶苦茶にして楽しむなら参加者を弄る事が最も効果的だと思った&その方が面白いから。
Q.第二回放送後、キングは何かしたの?
A.特に何もしなかった……というよりも出来なかった。
A-1.なのは:ギンガ、ザフィーラ、フェイト、弁慶、はやての計5人もの死者、特にフェイトとはやてとは10年来の親友なのでその訃報は特に堪えていたから期待していたが、合流した当初からキングについては懐疑的だったため容易に近づけなかった。
A-2.天道:特に心を乱すような死亡者がいなかった。むしろ浅倉との対決の方に期待。
A-3.ペンウッド:インテグラルの死によって最凶の吸血鬼であるアーカードの歯止めがなくなった事で人一番怯えていたから一番期待していたが、キングの行動を予想していた天道が終始キングが近づく機会は与えなかった。
A-4.C.C.:特に心を乱すような死亡者がいなかった……というより『CROSS-NANOHA』を読んでもどんな人物かよく分からない。
Q.爆発地点でキングは何をしていたの?
A.終始それとなく警戒されていたので少々苛立ちながらも何か面白い物がないか探していた。
Q.爆発地点でキングは何を見つけたの?
A.ヒビノ・ミライの血痕(捜索区域は分担制だったのでキング以外に気付いた人はいなかった)。
A’.ハンドグレネード(1発で数十人の意識を失わせる事が出来る代物。厳密にはペンウッドの支給品。ペンウッドが転んだ時にこっそり一つ盗んだ)。
Q.スーパーの周囲の偵察や知らないうちになのはとペンウッドが平常心を取り戻していた時、キングはどんな心境だったの?
A.はっきり言って面白くなかった&だからある計画を実行する気になった。
Q.なぜキングはチーム・スターズから脱退したの?
A.浅倉を連れて来て天道と戦わせるため(元々期待していた上にそろそろ浅倉も何人か殺しているだろうから良い頃合いだと思った)。あとチーム・スターズに入った覚えはない。
Q.情報交換はキングにとって面白くなかったの?
A.それなりに面白かったが、既にキングにとって浅倉と天道の対決の方が遥かに楽しみだった。
A’.キングが話した内容には所々嘘が混じっている(全部嘘でないのは信憑性を持たせるため)。
Q.なぜキングはこんな方法を取ったの?
A.皆を気絶させた方が余計な手間を掛けずに出ていけると考えたため。
Q.どうやってキングは4人の意識を失わせたの?
A.まず適当なところで蛍光灯を念動力で壊して皆の注意を上に逸らす。次に皆に気付かれない位置でハンドグレネードを作動させて意識を失わせた(この時キングは息を止めていた&アンデッドだから人間より僅かに効きにくかったので意識を失う事はなかった)。
Q.なぜあのタイミングだったの?
A.C.C.がマントを出して皆の気がそれに向いていたから(単に自分の番が終わってペンウッドの番が回るまでならどこでもよかった)。
Q.なぜキングは天道の傷を開いたの?
A.そうすればしばらく動けないから(浅倉を連れてくるまで動かないでほしかった&動いたら探すのが面倒)。
Q.なぜキングはなのはを殺さずに残したの?
A.天道の傷を治療させる(だいたい戻ってくる頃には完治させているはず)&浅倉に同行していたヴィヴィオをネタに揺さぶるため。
Q.なぜキングは偽の死体の写真を撮ったの?
A.あとで何かに使えると思ったから(なのはに付いていた血は天道の血)。
Q.なぜキングはC.C.とペンウッドを連れ出したの?
A.禁止エリアに入った時の首輪の反応を確かめたかったから。
Q.なぜキングは二人を投げ入れて生還レースを行ったの?
A.ただの余興。それ以上でもそれ以下でもない。敢えて言うなら本当に首輪が爆発するか確かめるため。
Q.C.C.がぶつかった物って何だったの?
A.ソリッドシールド。スティンガーやグロック19の銃弾を弾いた物も同様。
Q.なぜキングはゼロの口真似ができるの?
A. 『CROSS-NANOHA』でルルーシュ(本物のゼロ)について念入りに調べた時に軽く覚えたから(だが慣れていないので時折素に戻る)。
Q.なぜキングはペンウッドに『どちらが多く参加者を殺せるか勝負しよう』と言ったの?
A.仮面ライダーに変身する道具を手に入れるため(このまま天道と浅倉を会わせても浅倉が仮面ライダーに変身できなければ面白くない。他の参加者から奪う手もあるが、運良く変身道具を持った参加者に会えるかどうか分からない。それならばプレシアが言っていたボーナスを利用する手がある。ペンウッドが殺害数を稼いでボーナスをもらえそうなら変身道具をもらうように仕向けるつもりだった)。
Q.なぜキングはペンウッドを最終的に殺したの?
A.申し出を受けない時点で興味が失せた&決死の抵抗が無意味だと悟って死ぬ顔が見たくなった&本当に無理やり外そうとすると首輪は爆発するのか確かめるため。
Q.結局首輪について何か判明したの?
A.禁止エリアに30秒以上滞在する&首輪を割る程の大きな衝撃を与えると爆発する。不老不死の奴でも死ぬ。
Q.デイパックをいっぱい持っているけど最強だから必要ないんじゃないの?
A.なぜ持っていないかと聞かれるのが億劫だから一応持つ事にした(面白い事になりそうなら誰かにあげてもいい)。
Q.なぜキングはゼロの仮面と衣装を着たままバイクに乗っているの?
A.仮面ライダーみたい(仮面を被ってバイクに乗っている的な意味で)&周囲の反応を楽しみたいから(ただし邪魔なら脱ぐ)。
Q.これからキングはどこへ行くの?
A.浅倉がいそうな場所(いざとなったら魔力を持つものを使って地上本部最上階の転移装置を使う)。
Q.キングは最後の一人になるつもりなの?
A.当たり前。
Q.この質問と回答って信頼していいの?
A.どうなんだろう?
【1日目 日中】
【現在地 E-3 大通りの近く】
【キング@魔法少女リリカルなのはマスカレード】
【状態】健康、上機嫌、ゴジラへの若干の興味、面白いものへの高揚感
【装備】ゼロの仮面@コードギアス 反目のスバル、ゼロの衣装(予備)@【ナイトメア・オブ・リリカル】白き魔女と黒き魔王と魔法少女たち、キングの携帯電話@魔法少女リリカルなのは マスカレード、カブトエクステンダー@魔法少女リリカルなのは マスカレード
【道具①】支給品一式、おにぎり×10、ハンドグレネード×4@魔法少女リリカルなのはStrikerS、ギルモンとアグモンとC.C.のデイパック(道具②③④)
【道具②】支給品一式、RPG-7+各種弾頭(榴弾5/照明弾2/スモーク弾2)@ACE COMBAT04 THE OPERATION LYRICAL、トランシーバー×2@オリジナル
【道具③】支給品一式、菓子セット@L change the world after story
【道具④】支給品一式、スティンガー×5@魔法少女リリカルなのはStrikerS、デュエルディスク@リリカル遊戯王GX、治療の神 ディアン・ケト(ディスクにセットした状態)@リリカル遊戯王GX
【思考】
基本:この戦いを全て滅茶苦茶にする。
1.浅倉を迎えに行って天道と戦うように御膳立てする。
2.はやての挑発に乗ってやる。
3.浅倉とキャロに期待。
4.シャーリーに会ったらゼロがルルーシュだと教える。
5.ヴィヴィオをネタになのはと遊ぶ。
【備考】
※携帯には『相川始がカリスに変身する瞬間の動画』『八神はやて(StS)がギルモンを殺す瞬間の画像』『高町なのは(StS)の偽装死体の画像』『天道総司の偽装死体の画像』『C.C.の死の瞬間の画像』『シェルビー・M・ペンウッドの死の瞬間の画像』が保存されています。
※首輪に名前が書かれていると知りました。
※全ての参加者の性格とおおまかな戦闘スタイルを把握しました。特に天道に関しては念入りに調べてあります。
※ゼロの正体がルルーシュだと知りました。
※はやての事はゲームの相手プレイヤーという感覚で見ています。
※PT事件のあらましを知りました(フェイトの出自は伏せられたので知りません)。
&color(red){【C.C.@コードギアス 反目のスバル 死亡確認】}
&color(red){【シェルビー・M・ペンウッド@NANOSING 死亡確認】}
【全体備考】
※D-2寄りのD-3にC.C.も死体(首と胴体が分かれている)が放置されています。
※D-3寄りのD-2にナイトブレスを付けたペンウッドの死体(首と胴体が分かれている/近くに)が放置されています。
※グロック19(0/0)はペンウッドの死体の傍に放置されています。
【ハンドグレネード@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
セインが時空管理局地上本局の指揮管制室を制圧した際に使用したハンドグレネード。
弾頭部分には化学兵器(毒ガス)が装填されており、2発だけで指揮管制要員数十名を一瞬で無力化した。
この毒ガスは分析によれば「致死性ではなく麻痺性」と言われていた(バリアジャケットに対毒ガス用術式を施す事で回避可能)。
【とがめの着物@小話メドレー】
奇策士とがめが着ている着物。スーパー内にあった何かの宣伝用のマネキンが着ていた物。
左右非対称で奇抜な意匠だが特に機能性に問題はない。腰の部分が心許ないように見えるが中が見える事はない。
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|~|&color(red){シェルビー・M・ペンウッド}|&color(red){GAME OVER}|
|~|&color(red){C.C.}|&color(red){GAME OVER}|
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