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「Round ZERO ~MOONLIT BEETLES」(2010/12/22 (水) 23:55:51) の最新版変更点
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*Round ZERO ~MOONLIT BEATLES ◆7pf62HiyTE
――ふと空を見上げる。そこには変わらぬ満月が彼を照らしていた。
「嫌な月だ――」
金居はそう呟く。
昨日と同じ変わらぬ満月――自分達参加者以外には人も動物も虫もいない異常な空間――それはこの場所が作られた空間である事を意味している。
その場所に放り込まれて一方的に殺し合いをしろと言われて良い気などするわけがないだろう。
C-9、ジェイル・スカリエッティのアジトより北方数百メートルの位置に金居はいた。
放送前、プレシア・テスタロッサからの要請でアジトに集結するであろう対主催集団を崩壊させろと指示を受けていた筈の金居はアジトに向かう事無くその場所で待機していた。
プレシアの指示を無視? 確かに最終的に遵守するつもりはないが、現状で刃向かうメリットなど少ない。では何故か?
実際の所、アジト周辺に到着したのは放送開始前だった。上空から確認した所アジトには2人の参加者が既に到着していたのが見えた。
両名とも自身にとって未知の人物であった為、この2人と接触し攪乱もしくは殺害する事を考えてはいた。
だが、やはり上空から確認した所、ヴァッシュ・ザ・スタンピードと八神はやてがアジトに向かってくるのが見えていた。
そして、実際に地上に降りた後、アジトに近付こうとしたタイミングではやてとヴァッシュが到着。結果として接触のタイミングを逃してしまった。
その後、連中に気付かれない様にアジトから離れたという事だ。幸い再会での盛り上がり、及び放送が流れてきた事で周囲への警戒が多少緩んでいたため自分の存在には気付かれていないだろう。
そして、双方共に確認出来ない場所まで移動し周辺への警戒は怠らず待機していたという事だ。なお、只待っていても意味など無い為砂糖を舐めながらである。
何故、4人の集団に接触しなかったのか? それは金居自身にとって少々分の悪い賭けだったからだ。
金居、ヴァッシュ、はやては共に激闘が繰り広げられたホテルアグスタにいたがその場所から先に離脱したのはヴァッシュとはやてだ。金居はジョーカーこと相川始と戦う為その場に残った。
その後、金居と始は激闘を繰り広げたがそこにエネルとヴィヴィオという金居でも手を焼く強敵が乱入した事で金居は2人をジョーカー、そして始の戦いを見届けるため残ったはやての部下スバル・ナカジマに任せる形でホテルより離脱した。
金居が戦いに加わる前、始は既にスバル、ヴァッシュ、そして柊かがみと戦っていた。その決着については始が紫髪の少女を倒しヴァッシュとスバルを助ける形で終わった。そしてヴァッシュとスバルは始を仲間として迎えていた。
始の正体は最強最悪の存在ジョーカー、ギラファクワガタムシの祖であるギラファアンデッドである金居から見ても人類から見ても敵でしかない。だが、事情を知らないヴァッシュ達が理解出来なくても仕方のない話ではある。
つまり、もしこの場でのこのこ自分が現れた場合、始やスバルを置き去りにした事でヴァッシュやはやてから不要な疑いを掛けられる可能性が高い。少なくても始が封印された事は事実なのでどちらにしても警戒される可能性は高いだろう。
そもそもホテルを経ったタイミングが遅い筈なのに同じタイミングで現れるというのも違和感を覚えさせる要因だ。
幾らプレシアの要請とはいえ、金居にとっては不利な要因が大きい。戦いになったところで負けるつもりは無いが、後にキングとの戦いが控えている以上消耗は最小限に抑えたい。
故に現状は下手に介入せず近くで待機する事が最善と判断したのだ。時が経ち状況が変われば介入するタイミングも見えるだろう。
とはいえ、ただ無駄に待つ事をプレシアは望まないだろうし金居としてもそうするつもりはない。
故に金居は先を読み一手仕掛ける事にした。そう、金居の手元にあるガジェットドローン5機を利用するという事だ。
頭に命令を思い浮かべるだけで実行するそれは金居にとって強力な武器だ。金居は手元の5機にある命令を送り現在位置よりから北方向へ飛ばしたのだ。無論、アジトからは確認出来ないように。
その命令は『各種施設の探索及び破壊』、『施設に向かった参加者の殺害』である。
何故、ガジェットをアジトで繰り広げられるであろう戦闘で使わず遠くの施設に飛ばしたのか?
勿論手元に密かに置いておく事で隙を作るメリットは確かにあった。しかし一方でガジェットを所持しておく事で不要な警戒を招く危険性もある。
故に全てのガジェットを手元から離す事でその疑いを避けるという手法も有効だという事だ。
幸いガジェットへの命令は頭で思い浮かべるだけで済む為、集団でいる所でガジェットに自分以外を襲う様にし向けても自分が命令元だと悟られる可能性はさほど高くはない。
さて、先の命令を送った理由だが、それは対主催集団の次の行動を読んでの事だ。
アジトに集った参加者は次はどうするのか? おおかた首輪解除に向けて工場等他の施設に向かうだろう。
また、アジトで戦闘が起こった場合も他の施設へ待避する事も想像に難くない。
つまり、先手を打つ事で連中の次の手を潰し仕留めるという事だ。対主催の妨害になっているのならば少なくてもプレシアから文句を言われる筋合いは無いだろう。
北を見ると火の手が上がっているのが見える。どうやら工場が炎上しているのだろう。ガジェット達はちゃんと仕事をしているという事だ。
「これで首輪解除の手段が1つ潰れたな」
その最中、金居は今後の事を考える。放送からある程度時間が経過した。このタイミングならば連中の前に姿を現しても疑われる可能性は大分低くなる。
とはいえ絶対とは言い難い、残り人数は自身を含め12人。彼等の情報を今一度纏め直したい所だ。
まず元々の敵とも言うべきコーカサスビートルアンデッドキング、厳密に言えばここで決着を着ける必然性も無いが奴の性格上自身の目的の障害になる可能性が高い故、戦いは避けられない。
そもそも最後の1人になるまで戦う事を偽装するならばキングとも戦うという事は当然の理だろうし金居もキングと戦う事については異存はない。
幸いこの場では時間停止が行えない事は確認済みなので戦いになっても自身が圧倒的に不利という事はないだろう。とはいえ自身と同じカテゴリーKである以上その実力は互角、どういう状況になるにせよ極力自分優位に持っていきたい所だ。
次に仮面ライダーカブトこと天道総司、ライダーに変身出来ないならば戦力的に問題は無いが変身出来るならば厄介な相手だ。
また変身出来ない状況でもその能力は侮りがたい。味方だと入り込んだ所で自身の目的を看破される可能性が高いだろう。
続いてはやて、高町なのは、スバル、ユーノ・スクライア、管理局の4人だ。ユーノに関しては未知の人物だがはやてとなのは辺りに対してはある程度信頼を得てはいるが完全とは言い難い。
いや、以前仕掛けたカードデッキの仕掛を看破されたならばなのはからも警戒されている可能性も高い。どちらにせよ以前のように味方として接する事が出来るとは言い難いだろう。
またスバルに対しても彼女が始を信頼していた事などを踏まえ自分を敵と認識している可能性が高いだろう。ジョーカーが危険な存在であってもその脅威を知らない以上それも仕方がない。
続いてなのはの娘であるヴィヴィオ、ホテルでの戦いでは殺戮マシーン状態だったが、今現在は元の無力な幼女に戻った事を確認済み。故に現状警戒する必要はない。
次にヴァッシュだ。先の戦いを見た所その実力は確か。同時に人格面でも殺し合いを良しとしない事は明白。自分の事をどう思っているかは不明瞭だが警戒しておくにこした事はない。
先のホテルで始達が交戦したかがみに対しては特別脅威ではないだろう。ライダーに変身するベルトは既にスバルが取り上げている。ベルトがなければ只の少女、大きな障害にはなり得ない。
もっともライダーに変身したところで始の変身したカリスに敗れている以上その実力は始以下、どちらにしろ問題はない。
泉こなた、アンジール・ヒューレーに関しては詳細不明、もしかしたらアジトで待っていた人物かもしれないがそうでない可能性もあるため言及は避けよう。
勿論、金居自身アンデッドや仮面ライダーはともかく人間程度に負けるとは思ってはいない。
しかし前にギンガ・ナカジマ及び始と戦った時、武蔵坊弁慶が盾にならなければ自分が敗れていた状況であった事を踏まえるならば人間を侮りすぎる事は愚行と言える。
そもそもエネルやアーカード、先のヴィヴィオと言った自身の戦闘能力を凌駕する連中が数多くいる事は認めたくはないが事実だ。どの相手に対しても油断せずにゆくべきだろう。
とはいえどんな強敵であっても倒す事が可能なのはこれまでの戦いが証明している。故にそれについては絶望していない。だが、それはこちらも同じ事、いかにアンデッドといえども倒される可能性を決して忘れてはならない。
一方で金居自身ある事が引っかかっていた。それは先の放送が定時より10分遅れだった事だ。金居にとってこれは重要な事である。
金居視点から見た場合、10分遅れた理由は放送前に自身との接触があり、自身が無事にプレシアの言葉に従い倉庫の中身を確保しアジトに向かうかどうかを確かめていたからと説明する事は可能だ。
しかし、今回に限っては説明出来てしまっては正直まずい。要するに10分遅れてしまったら、暗に何かあったのではと思案される危険がある。
つまり、遅れたのは『何か仕掛をしていた=金居と接触していた』と悟られる可能性があるという事だ。
わかりきった事だが金居としてはこれは非常に困る話だ。散々人に参加者殺せと言っておきながらその足を引っ張るのは如何なものか。
別にサポートしてくれとは言わないがせめて足を引っ張らないで欲しいと思う。
勿論、これ自体がプレシアが参加者を攪乱させる為だけという話も無いではないが、警戒される以上自分としては良い迷惑である。真意が何であれ自分に不利益な解釈をされかねない事は避けてもらいたかった。
「定時に出来ないのなら前の放送の様に誰かに変わってもらえば良かっただろうが……」
そう毒突く金居であったが、実際3回目の放送の様にオットーにやらせれば何の問題もない話なのは確か。自分との接触で遅れたのならば正直笑えない話である。
だが、プレシアもそこまで愚者だとは思えない。もしかすると自身との接触の段階では問題は無かったがその直後に何かあったという可能性は否定出来ない。
いや、それならそれでひとまずオットー辺りに定時に行わせプレシア自身は事態の鎮圧に向かえば良い。それでもどうにもならなければ10分遅れた事について簡単で良いからフォローを入れればある程度違和感は拭える筈だ。
それをせずに単純に10分遅れただけで何の変哲も無い放送をしたとなると、漠然と放送を聞くだけの何も考えない参加者はともかく知略に秀でた者達は容易にその異常さに気付くだろう。
考えられる事としてはオットーに放送を任せられない事態が発生したという可能性。つまり、主催側の内乱である。
だが、こういう解釈が出来るとなるとその内乱でプレシア自身にも何かが起こり――最悪退場した可能性もある。
そしてプレシアがいかにも健在であるかの様に見せる為、放送はプレシアに扮した者が行うという話だ。金居自身の世界に人間に擬態するワームの存在がある以上そういう可能性があっても不思議ではないだろう。
だが――
「――何にしても現状すべき事に変わりはない」
結局の所、主催側で何かが起こったとしてもそれは想像の域を出ない。確定的な証拠が出ない以上断定は避けるべきだ。
それに仮に何かが起こっていたとしても自分優位な状況を作り出すため今後も当面は参加者同士を潰し合わせる方針に変わりはない。
そもそも主催側の事情がどうあれキングは何れ倒す敵である事に変わりはないし、参加者の中には障害となるものもいる。故に、
「あんたの望む通りに戦ってやる。もっとも俺なりのやり方ではあるがな――」
プレシアに聞こえる様にそう呟いた――
そんな中、1体のガジェットが金居の所に戻ってきた。前述の金居の指示に従うならば戻ってくる理由は――
「……ほう」
ガジェットが持ってきたのは3つの道具だ。一見すると全て無用の長物に見える。しかし金居の目を惹くものがそこには確かにあった。
「まさかクラブのKが手に入るとはな」
その内の1つがアンデッドが封印されているラウズカード、それも金居やキング同様カテゴリーKのカードだ。
もっとも、金居が手に入れた所で別段使えるものではない。しかし自身の世界のものである以上捨て置く理由はない。故に金居はそれをデイパックに仕舞う。
「後の2つは……よくわからんな」
残りは宝石の様な球体と何かの首飾りだった。
使い道がわからない為、今の金居にとって有用な道具ではないが他の者にとってはそうとは言えない。
故に下手に利用されるのを避けるため自分の手元に置いておく分には問題はないだろう。そうかさばるものではないというのも理由にある。
そして用事を済ませたガジェットは再び金居の指示に従い北へ向かった。
「しかし、一体何処で手に入れたんだ? まぁどうでもいい話だがな」
金居自身知る由は無いが3つの道具はある場所から回収されたものだ。
それらは聖王のゆりかご玉座の間にあった。ガジェット達は北上しループを越えてゆりかごに辿り着いた。そしてその玉座の間にあった道具の中で使えると判断したものを回収したのだ。
これまでの話を読んだ方の中には玉座の間には他にも道具があったのではと疑問に思う者も数多いだろう。しかし結論を言えば他に使える道具を見つける事は出来なかった。
何故か? そもそも玉座の間には3人の参加者ルーテシア・アルピーノ、キャロ・ル・ルシエ、フェイト・T・ハラオウンが所持していた道具があった。
だが、その後ヴィヴィオがキャロの遺体を完膚無きまでに破壊した際に力任せに攻撃を繰り返した。エネルにも匹敵する力を無尽蔵に加えればどうなるだろうか?
その結末など考えるまでもない。その周囲にも破壊が及ぶのは当然の理。結論を言えば、そこに置かれていた道具の殆どは完膚無きまでに破壊された。
破壊を免れたのは惨劇の場から離れていた首飾り型のスバルのデバイスマッハキャリバー、破壊される事の無いラウズカード、本当に幸運にも被害を避ける事の出来た球体かいふくのマテリアぐらいだった。
余談だがフェイトの道具に関してはフェイトが事切れる前フェイトの手から離れていた。そのためフェイトの遺体自体は攻撃から免れたが道具に関しては破壊に巻き込まれている。なお、フェイトの遺体はその後ヴィヴィオによって何処かへ移送されている。
なお、マテリアにしてもマッハキャリバーにしても金居にとって未知のものである以上使用は不可能。当然だがマテリアの説明書きは攻撃に巻き込まれ消失している。
マッハキャリバーについてはマッハキャリバー自身がガジェット及び金居を敵と判断したため一切の応答を断っていた。
ルーテシアに利用されて持ち主のスバルを危険に巻き込んでしまった事もあり、もう二度と敵に利用されるつもりはなかった。利用されるぐらいならば壊された方がずっとマシだと考えている。
幸い金居は自身を知らない為、現状は何の変哲もない首飾りと思われている。それで十分だとマッハキャリバーは思考していた。
「さて、そろそろ動こうか――」
腹ごしらえも済みアジトへ向けて歩を進めようとした矢先、一発の銃声が響いた。無論方向はアジト方面である。
「どうやら俺が手を下すまでもなく争ってくれているようだな」
このタイミングならば内部に入り込み集団を瓦解させる事も襲撃して一網打尽する事も可能ではある。
しかし油断してはいけない、内部分裂の状況だからこそ襲撃を警戒する者もいるだろう。
「どうしたものか――選択肢は数多い――いや、俺が選ぶ道は1つか――」
【2日目 深夜】
【現在地 C-7密林】
【金居@魔法少女リリカルなのは マスカレード】
【状況】健康、ゼロ(キング)への警戒
【装備】バベルのハンマー@仮面ライダークウガA’s ~おかえり~
【道具】支給品一式、トランプ@なの魂、砂糖1kg×5、イカリクラッシャー@魔法少女リリカルなのはSTS OF HUNTER、首輪(アグモン、アーカード)、正宗@魔法少女リリカルなのはStrikerS 片翼の天使、デザートイーグル(4/7)@オリジナル、L、ザフィーラ、エネルのデイパック(道具①・②・③)
【道具①】支給品一式、首輪探知機(電源が切れたため使用不能)@オリジナル、ガムテープ@オリジナル、ラウズカード(ハートのJ、Q、K、クラブのK)@魔法少女リリカルなのは マスカレード、レリック(刻印ナンバーⅥ、幻術魔法で花に偽装中)@魔法少女リリカルなのはStrikerS、首輪(シグナム)、首輪の考察に関するメモ
【道具②】支給品一式、ランダム支給品(ザフィーラ:1~3)、マッハキャリバー@魔法少女リリカルなのはStrikerS、かいふくのマテリア@魔法少女リリカルなのはStrikerS 片翼の天使
【道具③】支給品一式、顔写真一覧表@オリジナル、ジェネシスの剣@魔法少女リリカルなのはStrikerS 片翼の天使、クレイモア地雷×3@リリカル・パニック
【思考】
基本:プレシアの殺害。
1.プレシアの要件通りスカリエッティのアジトに向かい、そこに集まった参加者を排除するor仲違いさせる(無理はしない方向で)。
2.基本的に集団内に潜んで参加者を利用or攪乱する。強力な参加者には集団をぶつけて消耗を図る(状況次第では自らも戦う)。
3.利用できるものは利用して、邪魔者は排除する。
【備考】
※この戦いにおいてアンデットの死亡=封印だと考えています。
※殺し合いが難航すればプレシアの介入があり、また首輪が解除できてもその後にプレシアとの戦いがあると考えています。
※参加者が異なる世界・時間から来ている可能性に気付いています。
※変身から最低50分は再変身できない程度に把握しています。
※プレシアが思考を制限する能力を持っているかもしれないと考えています。
※放送の遅れから主催側で内乱、最悪プレシアが退場した可能性を考えています。
【全体の備考】
※ガジェットドローンⅣ型×5@魔法少女リリカルなのはStrikerSがアジトより北にある各種施設に向かいました。以下の命令を受けています。
・各種施設の探索及び破壊、確保した道具は金居の所へ持ち帰る。
・施設に向かった参加者の殺害。
※工場がガジェットにより破壊されています。
※ゆりかご玉座の間に残っていた道具の殆どが使用不能になるまで破壊されています。もしかしたら何か使える物が残っているかもしれません。
――ふと空を見上げる。そこには変わらぬ満月が彼等を照らしていた。
「ふっ、良い月だ」
キングはそう呟く。
「何か言ったか?」
「いや、別に」
アンジール・ヒューレーの問いかけをそう返したキングの心中は高揚していた。
月光はゲームの支配者である自分だけを照らしている。一方的に放り込まれ殺し合えと言われた時は良い気はしなかったが実際はどうだろうか?
ゲームは幾つかの不測の事態があったものの概ね自分の思う通りに進んでいる。天も地も、そして全ての者達が自分の玩具であった。
月明かりは自分を祝福してくれると思えば良い気もするだろう。
E-9にある森林に2人はいた。D-2のスーパー跡地にいたはずの2人が何故ここにいるのか? そこで、少し時間を遡りつつ振り返っていこう。
そもそも2人はあの後逃走した天道となのはの追跡をしていた。逃走した方向に関しては戦闘時の立ち位置等からある程度予測出来た。その方向は西方向、故に2人はまず西へと向かった。
市街地の闇に消えた可能性も無いではなかったが敢えてその裏をかき、逆方向の平野へ向かった説もあるとキングは判断していた。
アンジールはそうではないが、キングにとってはここで2人を見失っても別段問題はない。只の戯れの1つ程度にしか思っていなかった。
結論から言えば2人を見つける事は出来なかったがその代わりにD-1に血痕をそれも比較的新しいものを見つけた。
「ふむ……」
「そんなものどうでも良いだろう、何もないなら市街地に戻るぞ」
「いや、そうでもないさ。何故こんな所に血痕が出来る?」
「ここで戦いが起こったからだろう?」
「アンジール、君はわざわざフィールドの端で戦ったりするか?」
「……そういう事か」
普通に考え参加者は人のいる市街地へ向かい当然戦いもそこで起こる。殺すにしろ組むにしろ参加者の足取りは端から中央、もしくは施設に向くのは当然の事だ。
だが、D-1はエリアの端にあり同時に周囲に施設はない。好き好んでここで戦いを起こす理由は皆無だ。しかもこの場所はD-1においても西側、ますますこの場所で戦う必然性に欠けるだろう。
「……試してみるか」
キングは更に西方向に足を進める。アンジールは何を考えているんだと思いつつ着いていくが――突然キングの姿が消えた。
「何?」
アンジールは慌てて追いかけた。そして気が付いたら景色が森に変わっていた。
「なるほど。プレシアの奴も面白い仕掛しやがって」
と、ゼロを演じる事も忘れ素の姿をキングはさらけ出していた。
「どういうことだ?」
「何、大したことじゃない。フィールドの端と端は繋がっているというだけの話だ」
一連の事から端と端は繋がっていてループするという事実に気が付いた。先の血痕の主もループしD-9へとワープしたのだろう。と、
「キング……お前主催者側の人間だったな、知らなかったのか?」
「私とてプレシアから全てを聞かされているわけじゃないさ。逃がさない仕掛をしているとは聞いていたがまさかループとは予想外だったという事さ」
「それでこれからどうする? 俺にとってはループなどどうでも良いんだが……」
「そうだな……状況から考えて2人もループを使って逃げた可能性が高い……」
キングは地図を見ながら
「よし、ホテルへ向かおうか。恐らくそこで参加者を集めているのだろう」
と、南方向へと足を進めていく。アンジールも後方のアジトを気に掛けながらもキングの後を着いていった。
「ところで――先程君は私をキングと呼んでいたが、私は君に名乗っていたかね?」
「……さっきの戦いで天道達がお前をそう呼んでいただろう。それを聞いただけだ」
「そういえばそうだったな。正直この姿の時はゼロとでも呼んで欲しいが……まぁいい」
その後、2人はF-9に辿り着いたがそこは崩壊したホテルと1人の半裸の男の死体しか残っていなかった。真面目な話半裸の男の死体など2人にとっては意味は無く、得る物も無い為早々にこの場から離れようとしたが、
「……あれは?」
キングは地面に何かを見つけその場所に向かった。そして
「これジョーカーのカードじゃん、何でこんな所に?」
とまたしてもゼロを演じるのを忘れカードを拾い上げる。それはハートのAのラウズカードだ。
「キン……ゼロ、そのカードがどうかしたのか?」
「いや、別に君に関係の無い事だ」
「それと同じようなカードなら向こうにもあるぞ」
と、少し離れた場所にも別のラウズカードが落ちているのが見える。
それらの位置から考え起こった事はある程度推測出来た。ホテルでジョーカーこと始は戦い激闘の末に封印された。その後、カードだけが風などで飛ばされて散っていったという事だ。
「アンジール、他にもカードが落ちているだろう。捜すぞ」
「ちょっと待て、こんなカードなどどうでも良いだろうが。何故……」
「おや、君は私に逆らえる立場だったかな? まぁ君が捜したくないというのなら別段構わ……」
「くっ……わかったそのカードを捜せば良いんだな?」
キングにとってラウズカードはある種最高の玩具、故にキングはそれを集めようとしていた。アンジールは渋々それに付き合いカード探索をした。
そして、キングの手元にはハートのA、3~10、9枚のラウズカードが集った。
「ふむ、ジョーカーとハートの2が無いのは些か妙だな……先に拾われたか?」
こうしてカード探しをしている内にE-9まで戻ったという事だ。どうやら風が北方向に吹いていたためカードも北方向に散らばりそれらを拾っていく内に北へ進んだという事だ。
「ゼロ、そういえばさっきからバックの中で何かが騒いでいるが何かあったのか?」
「ん? ああ、こいつか。只の人質だよ、連中を従わせる為のね」
なのはから奪ったフリードリヒはキングを警戒、いやむしろ嫌悪していた。キングのした事を踏まえるならばそれも当然の事である。
故に度々フリードは暴れだそうとしていたがデイパックに押し込まれていたが故に何も出来なかったのだ。
「人質程度で連中がお前に従うとは思えないが?」
「だが少なくとも私に刃向かう事は無いだろう」
「不意を突かれ奪還されるかも知れないだろうがな」
そう口にするアンジールの言葉を聞いてキングも少し考える。
確かに先の戦闘でカブトは自分から2つのデイパックを奪取している。2度も同じ事をされるとは思わないが警戒しておいて損はない。
「そうだな……ならコレは君が持っていたまえ」
と、フリードの入ったデイパックをアンジールに渡した。
「良いのか?」
「構わないさ、他にこれといった物は何もない」
「俺がコイツを殺すとは考えないのか?」
「ソレは参加者じゃない。殺した所で君にメリットは皆無だ。それに私の意に背いて殺したり逃がしたりなど君に出来るのか?」
「……もっともだな」
「もし私に何かがあればその時は……」
キングが追いつめられた時、アンジールがフリードに刃を突き付け連中を抑制しろ……その指示をアンジールは無言で頷いた。
連中もフリードをアンジールに渡しているとは思うまい。優位に立ったと思った所で絶望させる……そう考えキングは仮面の下で笑みを浮かべていた。
真面目な話、渡した理由の中にはデイパックの中で騒ぐフリードが正直疎ましく感じていたからというのもあった。
その最中、キングは地図を確認し次の目的地をスカリエッティのアジトに定めていた。恐らくホテルでの戦いを終えた者達はそこに向かっていると判断した。
「喜べアンジール、ようやく君の望む通り戦えるだろう」
強敵とも言うべきジョーカーもエネルももう退場済み、仮面ライダーであろうとも自分を倒す事は不可能。いざとなればフリードを人質にすればよい。
放送が10分遅れた事もキングにとってはどうでも良い話、主催側で何が起こっていようが自分はやりたい様にやるだけだ。
このゲームの支配者はプレシアではなく自分――そう考えキングは足を進めていた。
「(――全く、何をやっているんだろうな俺は……なぁセフィロス……)」
キングの後方でアンジールは空を見上げていた。
妹達を守る為に戦い続けたが結局何も守れず、生き返らせる為に戦おうとしても結局は主催関係者と語るゼロの手駒と化す状況、
「(これでは道化人形としか言いようがないな……)」
これまでずっと守る為に走り続けたアンジールにとってキングの指示に只従うという状況は結果として落ち着いて考える時間を与えてくれた。
結論から言えばアンジール自身、キングの言葉については疑心を抱いている。そう、キングがプレシアの手先であるという部分について嘘の可能性を疑っているという事だ。
前述の通りキングの名前を知っていた事に関しては斬りかかる直前天道及びなのはの口からキングの名前が出てきた事が耳に入ったからだ。それに対してキングが何と応えていたかまでは聞き取れてはいなかったが。
勿論、それだけでゼロがキングという名前だと判断出来るとは言い難い。しかし、少し時間が経過し考えている内にある事を思い出したのだ。
それはデパートのパソコンに残っていたメールのログ。そこにはキングに警戒しろという情報があった。その時点では特に気にしていなかったがそれを思い出した事を切欠にキングの存在とゼロを結びつける事が出来たのだ。
勿論、これだけならばキングが警戒すべき存在でしかない。だが、どうにもキングの言動を見る限り本当に主催者側の人間として働いている様な感じがしない。
突然口調が変わった事と言い、追跡すると言っておきながらカード集めに走った事といい、どうにも納得がいかない。悪く言えば遊んでいるとしか思えないという事だ。
しまいには主催側の人間といっておきながらループの事を知らなかったのも気になる。
そう、主催者側の人間という話自体が自分との戦いを避け同時に手駒にする為の口からでまかせという可能性に気付いたのだ。主催者側の人間でないならば従う通りは全く無い。
自分について妙に詳しかったのは別のカラクリがあったとすれば説明が付く。
それこそ当初考えた様にセフィロス辺りが自分の情報を売ったという説もあるし、自分がメールで情報を得たのと同様に何処かの施設で情報を得たという説もある。確かメールには施設を調べろという事も書かれていた筈なので情報を得られる可能性はある。
勿論、本当に主催者側の可能性もあるが仮にそうだとしても許せる存在ではない。
そもそもの話、クアットロを殺したのはキングではないのか? 仮に主催者側の人間であったとしても直接の下手人を許せる道理はない。
また、根本的な部分で引っかかる事がある。オットーが放送を行った件についてだ。勿論、これ自体はオットー達も主催者側にいるという事で説明が出来るだろう。
だが、一方でクアットロ達が参加者側にいる事が気になる。オットー達がいるならクアットロ達も主催者側の人間でなければおかしいだろう。
ではクアットロ達も主催者側の人間で参加者を攪乱するために送り込まれていたのか? いや、一度クアットロと接触した限りクアットロは自分を覚えていなかったしそういう役割を与えられていたという素振りも見せなかった。
勿論、記憶を操作した上でそういう役割を与えたという説もあるだろう。だが仮にそうだとするならばなおの事キングを許す事は出来ない。
キングは参加者の情報を与えられている一方、クアットロ達は記憶封鎖されている。何故こうも扱いに差があるのだ? キングや主催側に怒りを覚えずにはいられない。
そして最終的にはクアットロ達を斬り捨てた――オットー達もきっと主催者側に命を握られているのだろう。決して主催者達を許す事は出来ない。
だが現状では主催者の望み通り彼等に従い優勝を目指し妹達を助けるしか選択肢はない。それが真実という保証も無いが嘘だという確証も無い。故に今は従うしかないのだ。
同時にキングに対しても現状は従うしかない。キングに疑心があるとはいえこれまた確たる証拠が無い。もし本当に主催者側の人物だったら彼の機嫌を損ねれば最悪優勝しても願いは叶わない。
自分が状況に流されるだけの道化人形だという事は理解している。それでも願い事を叶えたいという想いだけは誰にも否定させやしない。
「(笑えよ――セフィロス――)」
友が今の自分を見てどう思っているかはわからない。妹達を守るために奴の大切な者――八神はやてを殺しておきながら結局何も守れなかった。
今の自分の姿はさぞかし滑稽に映っているだろう。
自虐はそこで終える。何にせよ目的地はある意味本拠地とも言うべきスカリエッティのアジト。全ての決着を着けるという意味ではある意味相応しい場所だ。
「(キング、今はお前に従ってやる。だが、クアットロを殺したお前を許すつもりはない――何れ落とし前だけは着けさせてもらう――
プレシア達もだ――妹達をこの殺し合いに巻き込んで只で済むと思うな――)」
敵意だけは決して消すことなく、道化へと堕ちてもなお兄としての僅かなプライドを残して戦士は行く――
「そうだ――俺が選ぶ選択肢は――1つだ――」
「何か言ったか?」
「いや、別に」
【2日目 深夜】
【現在地 E-9】
【キング@魔法少女リリカルなのは マスカレード】
【状態】健康
【装備】ゼロの仮面@コードギアス 反目のスバル、ゼロの衣装(予備)@【ナイトメア・オブ・リリカル】白き魔女と黒き魔法と魔法少女たち、キングの携帯電話@魔法少女リリカルなのは マスカレード
【道具】支給品一式、おにぎり×10、ハンドグレネード×4@魔法少女リリカルなのはStrikerS、ラウズカード(ハートの1、3~10)、ボーナス支給品(未確認)
【道具①】支給品一式、RPG-7+各種弾頭(照明弾2/スモーク弾2)@ACE COMBAT04 THE OPERATION LYRICAL、トランシーバー×2@オリジナル
【道具②】支給品一式、菓子セット@L change the world after story
【道具③】支給品一式、『SEAL―封印―』『CONTRACT―契約―』@仮面ライダーリリカル龍騎、爆砕牙@魔法妖怪リリカル殺生丸
【道具④】支給品一式、いにしえの秘薬(空)@魔法少女リリカルなのはSTS OF HUNTER
【思考】
基本:この戦いを全て無茶苦茶にする。
1.アジトに向かう。
2.他の参加者にもゲームを持ちかけてみる。
3.上手く行けば、他の参加者も同じように騙して手駒にするのもいいかも?
4.『魔人ゼロ』を演じてみる(飽きたらやめる)。
5.はやての挑戦に乗ってやる。
【備考】
※キングの携帯電話には『相川始がカリスに変身する瞬間の動画』『八神はやて(StS)がギルモンを刺殺する瞬間の画像』『高町なのはと天道総司の偽装死体の画像』『C.C.とシェルビー・M・ペンウッドが死ぬ瞬間の画像』が記録されています。
※全参加者の性格と大まかな戦闘スタイルを把握しています。特に天道総司を念入りに調べています。
※八神はやて(StS)はゲームの相手プレイヤーだと考えています。
※PT事件のあらましを知りました(フェイトの出自は伏せられたので知りません)。
※天道総司と高町なのはのデイバッグを奪いました。
※十分だけ放送の時間が遅れたことに気付き、疑問を抱いています。
【アンジール・ヒューレー@魔法少女リリカルなのはStrikerS 片翼の天使】
【状態】疲労(小)、深い悲しみと罪悪感、脇腹・右腕・左腕に中程度の切り傷、全身に小程度の切り傷、願いを遂行せんとする強い使命感、キングと主催陣に対する怒り
【装備】リベリオン@Devil never Strikers、チンクの眼帯
【道具】支給品一式、フリードリヒ@魔法少女リリカルなのはStrikerS
【思考】
基本:最後の一人になって亡き妹達の願い(妹達の復活)を叶える。
1.キングと共に、参加者を殺す。
2.参加者の殲滅。
3.ヴァッシュのことが、微かに気がかり。(殺すことには、変わりない)
4.キングが主催者側の人間で無かった事が断定出来た場合、キングを殺す。
5.主催者達を許すつもりはない。
【備考】
※ナンバーズが違う世界から来ているとは思っていません。もし態度に不審な点があればプレシアによる記憶操作だと思っています。
※『月村すずかの友人』のメールを確認しました。一応内容は読んだ程度です。
※オットーが放送を読み上げた事から主催者側にナンバーズの命が握られている可能性を考えています。
※キングが主催側の人間という事について疑いを持っています。
月明かりに照らされながら終末の光へと誘われるかの様に虫の王達は一点へと集う――
それは偶然か? それとも必然か?
何れにせよ運命の決着は近い――
決めてとなる切札は王の手にあるのか――
あるいは――
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*Round ZERO ~MOONLIT BEETLES ◆7pf62HiyTE
――ふと空を見上げる。そこには変わらぬ満月が彼を照らしていた。
「嫌な月だ――」
金居はそう呟く。
昨日と同じ変わらぬ満月――自分達参加者以外には人も動物も虫もいない異常な空間――それはこの場所が作られた空間である事を意味している。
その場所に放り込まれて一方的に殺し合いをしろと言われて良い気などするわけがないだろう。
C-9、ジェイル・スカリエッティのアジトより北方数百メートルの位置に金居はいた。
放送前、プレシア・テスタロッサからの要請でアジトに集結するであろう対主催集団を崩壊させろと指示を受けていた筈の金居はアジトに向かう事無くその場所で待機していた。
プレシアの指示を無視? 確かに最終的に遵守するつもりはないが、現状で刃向かうメリットなど少ない。では何故か?
実際の所、アジト周辺に到着したのは放送開始前だった。上空から確認した所アジトには2人の参加者が既に到着していたのが見えた。
両名とも自身にとって未知の人物であった為、この2人と接触し攪乱もしくは殺害する事を考えてはいた。
だが、やはり上空から確認した所、ヴァッシュ・ザ・スタンピードと八神はやてがアジトに向かってくるのが見えていた。
そして、実際に地上に降りた後、アジトに近付こうとしたタイミングではやてとヴァッシュが到着。結果として接触のタイミングを逃してしまった。
その後、連中に気付かれない様にアジトから離れたという事だ。幸い再会での盛り上がり、及び放送が流れてきた事で周囲への警戒が多少緩んでいたため自分の存在には気付かれていないだろう。
そして、双方共に確認出来ない場所まで移動し周辺への警戒は怠らず待機していたという事だ。なお、只待っていても意味など無い為砂糖を舐めながらである。
何故、4人の集団に接触しなかったのか? それは金居自身にとって少々分の悪い賭けだったからだ。
金居、ヴァッシュ、はやては共に激闘が繰り広げられたホテルアグスタにいたがその場所から先に離脱したのはヴァッシュとはやてだ。金居はジョーカーこと相川始と戦う為その場に残った。
その後、金居と始は激闘を繰り広げたがそこにエネルとヴィヴィオという金居でも手を焼く強敵が乱入した事で金居は2人をジョーカー、そして始の戦いを見届けるため残ったはやての部下スバル・ナカジマに任せる形でホテルより離脱した。
金居が戦いに加わる前、始は既にスバル、ヴァッシュ、そして柊かがみと戦っていた。その決着については始が紫髪の少女を倒しヴァッシュとスバルを助ける形で終わった。そしてヴァッシュとスバルは始を仲間として迎えていた。
始の正体は最強最悪の存在ジョーカー、ギラファクワガタムシの祖であるギラファアンデッドである金居から見ても人類から見ても敵でしかない。だが、事情を知らないヴァッシュ達が理解出来なくても仕方のない話ではある。
つまり、もしこの場でのこのこ自分が現れた場合、始やスバルを置き去りにした事でヴァッシュやはやてから不要な疑いを掛けられる可能性が高い。少なくても始が封印された事は事実なのでどちらにしても警戒される可能性は高いだろう。
そもそもホテルを経ったタイミングが遅い筈なのに同じタイミングで現れるというのも違和感を覚えさせる要因だ。
幾らプレシアの要請とはいえ、金居にとっては不利な要因が大きい。戦いになったところで負けるつもりは無いが、後にキングとの戦いが控えている以上消耗は最小限に抑えたい。
故に現状は下手に介入せず近くで待機する事が最善と判断したのだ。時が経ち状況が変われば介入するタイミングも見えるだろう。
とはいえ、ただ無駄に待つ事をプレシアは望まないだろうし金居としてもそうするつもりはない。
故に金居は先を読み一手仕掛ける事にした。そう、金居の手元にあるガジェットドローン5機を利用するという事だ。
頭に命令を思い浮かべるだけで実行するそれは金居にとって強力な武器だ。金居は手元の5機にある命令を送り現在位置よりから北方向へ飛ばしたのだ。無論、アジトからは確認出来ないように。
その命令は『各種施設の探索及び破壊』、『施設に向かった参加者の殺害』である。
何故、ガジェットをアジトで繰り広げられるであろう戦闘で使わず遠くの施設に飛ばしたのか?
勿論手元に密かに置いておく事で隙を作るメリットは確かにあった。しかし一方でガジェットを所持しておく事で不要な警戒を招く危険性もある。
故に全てのガジェットを手元から離す事でその疑いを避けるという手法も有効だという事だ。
幸いガジェットへの命令は頭で思い浮かべるだけで済む為、集団でいる所でガジェットに自分以外を襲う様にし向けても自分が命令元だと悟られる可能性はさほど高くはない。
さて、先の命令を送った理由だが、それは対主催集団の次の行動を読んでの事だ。
アジトに集った参加者は次はどうするのか? おおかた首輪解除に向けて工場等他の施設に向かうだろう。
また、アジトで戦闘が起こった場合も他の施設へ待避する事も想像に難くない。
つまり、先手を打つ事で連中の次の手を潰し仕留めるという事だ。対主催の妨害になっているのならば少なくてもプレシアから文句を言われる筋合いは無いだろう。
北を見ると火の手が上がっているのが見える。どうやら工場が炎上しているのだろう。ガジェット達はちゃんと仕事をしているという事だ。
「これで首輪解除の手段が1つ潰れたな」
その最中、金居は今後の事を考える。放送からある程度時間が経過した。このタイミングならば連中の前に姿を現しても疑われる可能性は大分低くなる。
とはいえ絶対とは言い難い、残り人数は自身を含め12人。彼等の情報を今一度纏め直したい所だ。
まず元々の敵とも言うべきコーカサスビートルアンデッドキング、厳密に言えばここで決着を着ける必然性も無いが奴の性格上自身の目的の障害になる可能性が高い故、戦いは避けられない。
そもそも最後の1人になるまで戦う事を偽装するならばキングとも戦うという事は当然の理だろうし金居もキングと戦う事については異存はない。
幸いこの場では時間停止が行えない事は確認済みなので戦いになっても自身が圧倒的に不利という事はないだろう。とはいえ自身と同じカテゴリーKである以上その実力は互角、どういう状況になるにせよ極力自分優位に持っていきたい所だ。
次に仮面ライダーカブトこと天道総司、ライダーに変身出来ないならば戦力的に問題は無いが変身出来るならば厄介な相手だ。
また変身出来ない状況でもその能力は侮りがたい。味方だと入り込んだ所で自身の目的を看破される可能性が高いだろう。
続いてはやて、高町なのは、スバル、ユーノ・スクライア、管理局の4人だ。ユーノに関しては未知の人物だがはやてとなのは辺りに対してはある程度信頼を得てはいるが完全とは言い難い。
いや、以前仕掛けたカードデッキの仕掛を看破されたならばなのはからも警戒されている可能性も高い。どちらにせよ以前のように味方として接する事が出来るとは言い難いだろう。
またスバルに対しても彼女が始を信頼していた事などを踏まえ自分を敵と認識している可能性が高いだろう。ジョーカーが危険な存在であってもその脅威を知らない以上それも仕方がない。
続いてなのはの娘であるヴィヴィオ、ホテルでの戦いでは殺戮マシーン状態だったが、今現在は元の無力な幼女に戻った事を確認済み。故に現状警戒する必要はない。
次にヴァッシュだ。先の戦いを見た所その実力は確か。同時に人格面でも殺し合いを良しとしない事は明白。自分の事をどう思っているかは不明瞭だが警戒しておくにこした事はない。
先のホテルで始達が交戦したかがみに対しては特別脅威ではないだろう。ライダーに変身するベルトは既にスバルが取り上げている。ベルトがなければ只の少女、大きな障害にはなり得ない。
もっともライダーに変身したところで始の変身したカリスに敗れている以上その実力は始以下、どちらにしろ問題はない。
泉こなた、アンジール・ヒューレーに関しては詳細不明、もしかしたらアジトで待っていた人物かもしれないがそうでない可能性もあるため言及は避けよう。
勿論、金居自身アンデッドや仮面ライダーはともかく人間程度に負けるとは思ってはいない。
しかし前にギンガ・ナカジマ及び始と戦った時、武蔵坊弁慶が盾にならなければ自分が敗れていた状況であった事を踏まえるならば人間を侮りすぎる事は愚行と言える。
そもそもエネルやアーカード、先のヴィヴィオと言った自身の戦闘能力を凌駕する連中が数多くいる事は認めたくはないが事実だ。どの相手に対しても油断せずにゆくべきだろう。
とはいえどんな強敵であっても倒す事が可能なのはこれまでの戦いが証明している。故にそれについては絶望していない。だが、それはこちらも同じ事、いかにアンデッドといえども倒される可能性を決して忘れてはならない。
一方で金居自身ある事が引っかかっていた。それは先の放送が定時より10分遅れだった事だ。金居にとってこれは重要な事である。
金居視点から見た場合、10分遅れた理由は放送前に自身との接触があり、自身が無事にプレシアの言葉に従い倉庫の中身を確保しアジトに向かうかどうかを確かめていたからと説明する事は可能だ。
しかし、今回に限っては説明出来てしまっては正直まずい。要するに10分遅れてしまったら、暗に何かあったのではと思案される危険がある。
つまり、遅れたのは『何か仕掛をしていた=金居と接触していた』と悟られる可能性があるという事だ。
わかりきった事だが金居としてはこれは非常に困る話だ。散々人に参加者殺せと言っておきながらその足を引っ張るのは如何なものか。
別にサポートしてくれとは言わないがせめて足を引っ張らないで欲しいと思う。
勿論、これ自体がプレシアが参加者を攪乱させる為だけという話も無いではないが、警戒される以上自分としては良い迷惑である。真意が何であれ自分に不利益な解釈をされかねない事は避けてもらいたかった。
「定時に出来ないのなら前の放送の様に誰かに変わってもらえば良かっただろうが……」
そう毒突く金居であったが、実際3回目の放送の様にオットーにやらせれば何の問題もない話なのは確か。自分との接触で遅れたのならば正直笑えない話である。
だが、プレシアもそこまで愚者だとは思えない。もしかすると自身との接触の段階では問題は無かったがその直後に何かあったという可能性は否定出来ない。
いや、それならそれでひとまずオットー辺りに定時に行わせプレシア自身は事態の鎮圧に向かえば良い。それでもどうにもならなければ10分遅れた事について簡単で良いからフォローを入れればある程度違和感は拭える筈だ。
それをせずに単純に10分遅れただけで何の変哲も無い放送をしたとなると、漠然と放送を聞くだけの何も考えない参加者はともかく知略に秀でた者達は容易にその異常さに気付くだろう。
考えられる事としてはオットーに放送を任せられない事態が発生したという可能性。つまり、主催側の内乱である。
だが、こういう解釈が出来るとなるとその内乱でプレシア自身にも何かが起こり――最悪退場した可能性もある。
そしてプレシアがいかにも健在であるかの様に見せる為、放送はプレシアに扮した者が行うという話だ。金居自身の世界に人間に擬態するワームの存在がある以上そういう可能性があっても不思議ではないだろう。
だが――
「――何にしても現状すべき事に変わりはない」
結局の所、主催側で何かが起こったとしてもそれは想像の域を出ない。確定的な証拠が出ない以上断定は避けるべきだ。
それに仮に何かが起こっていたとしても自分優位な状況を作り出すため今後も当面は参加者同士を潰し合わせる方針に変わりはない。
そもそも主催側の事情がどうあれキングは何れ倒す敵である事に変わりはないし、参加者の中には障害となるものもいる。故に、
「あんたの望む通りに戦ってやる。もっとも俺なりのやり方ではあるがな――」
プレシアに聞こえる様にそう呟いた――
そんな中、1体のガジェットが金居の所に戻ってきた。前述の金居の指示に従うならば戻ってくる理由は――
「……ほう」
ガジェットが持ってきたのは3つの道具だ。一見すると全て無用の長物に見える。しかし金居の目を惹くものがそこには確かにあった。
「まさかクラブのKが手に入るとはな」
その内の1つがアンデッドが封印されているラウズカード、それも金居やキング同様カテゴリーKのカードだ。
もっとも、金居が手に入れた所で別段使えるものではない。しかし自身の世界のものである以上捨て置く理由はない。故に金居はそれをデイパックに仕舞う。
「後の2つは……よくわからんな」
残りは宝石の様な球体と何かの首飾りだった。
使い道がわからない為、今の金居にとって有用な道具ではないが他の者にとってはそうとは言えない。
故に下手に利用されるのを避けるため自分の手元に置いておく分には問題はないだろう。そうかさばるものではないというのも理由にある。
そして用事を済ませたガジェットは再び金居の指示に従い北へ向かった。
「しかし、一体何処で手に入れたんだ? まぁどうでもいい話だがな」
金居自身知る由は無いが3つの道具はある場所から回収されたものだ。
それらは聖王のゆりかご玉座の間にあった。ガジェット達は北上しループを越えてゆりかごに辿り着いた。そしてその玉座の間にあった道具の中で使えると判断したものを回収したのだ。
これまでの話を読んだ方の中には玉座の間には他にも道具があったのではと疑問に思う者も数多いだろう。しかし結論を言えば他に使える道具を見つける事は出来なかった。
何故か? そもそも玉座の間には3人の参加者ルーテシア・アルピーノ、キャロ・ル・ルシエ、フェイト・T・ハラオウンが所持していた道具があった。
だが、その後ヴィヴィオがキャロの遺体を完膚無きまでに破壊した際に力任せに攻撃を繰り返した。エネルにも匹敵する力を無尽蔵に加えればどうなるだろうか?
その結末など考えるまでもない。その周囲にも破壊が及ぶのは当然の理。結論を言えば、そこに置かれていた道具の殆どは完膚無きまでに破壊された。
破壊を免れたのは惨劇の場から離れていた首飾り型のスバルのデバイスマッハキャリバー、破壊される事の無いラウズカード、本当に幸運にも被害を避ける事の出来た球体かいふくのマテリアぐらいだった。
余談だがフェイトの道具に関してはフェイトが事切れる前フェイトの手から離れていた。そのためフェイトの遺体自体は攻撃から免れたが道具に関しては破壊に巻き込まれている。なお、フェイトの遺体はその後ヴィヴィオによって何処かへ移送されている。
なお、マテリアにしてもマッハキャリバーにしても金居にとって未知のものである以上使用は不可能。当然だがマテリアの説明書きは攻撃に巻き込まれ消失している。
マッハキャリバーについてはマッハキャリバー自身がガジェット及び金居を敵と判断したため一切の応答を断っていた。
ルーテシアに利用されて持ち主のスバルを危険に巻き込んでしまった事もあり、もう二度と敵に利用されるつもりはなかった。利用されるぐらいならば壊された方がずっとマシだと考えている。
幸い金居は自身を知らない為、現状は何の変哲もない首飾りと思われている。それで十分だとマッハキャリバーは思考していた。
「さて、そろそろ動こうか――」
腹ごしらえも済みアジトへ向けて歩を進めようとした矢先、一発の銃声が響いた。無論方向はアジト方面である。
「どうやら俺が手を下すまでもなく争ってくれているようだな」
このタイミングならば内部に入り込み集団を瓦解させる事も襲撃して一網打尽する事も可能ではある。
しかし油断してはいけない、内部分裂の状況だからこそ襲撃を警戒する者もいるだろう。
「どうしたものか――選択肢は数多い――いや、俺が選ぶ道は1つか――」
【2日目 深夜】
【現在地 C-7密林】
【金居@魔法少女リリカルなのは マスカレード】
【状況】健康、ゼロ(キング)への警戒
【装備】バベルのハンマー@仮面ライダークウガA’s ~おかえり~
【道具】支給品一式、トランプ@なの魂、砂糖1kg×5、イカリクラッシャー@魔法少女リリカルなのはSTS OF HUNTER、首輪(アグモン、アーカード)、正宗@魔法少女リリカルなのはStrikerS 片翼の天使、デザートイーグル(4/7)@オリジナル、L、ザフィーラ、エネルのデイパック(道具①・②・③)
【道具①】支給品一式、首輪探知機(電源が切れたため使用不能)@オリジナル、ガムテープ@オリジナル、ラウズカード(ハートのJ、Q、K、クラブのK)@魔法少女リリカルなのは マスカレード、レリック(刻印ナンバーⅥ、幻術魔法で花に偽装中)@魔法少女リリカルなのはStrikerS、首輪(シグナム)、首輪の考察に関するメモ
【道具②】支給品一式、ランダム支給品(ザフィーラ:1~3)、マッハキャリバー@魔法少女リリカルなのはStrikerS、かいふくのマテリア@魔法少女リリカルなのはStrikerS 片翼の天使
【道具③】支給品一式、顔写真一覧表@オリジナル、ジェネシスの剣@魔法少女リリカルなのはStrikerS 片翼の天使、クレイモア地雷×3@リリカル・パニック
【思考】
基本:プレシアの殺害。
1.プレシアの要件通りスカリエッティのアジトに向かい、そこに集まった参加者を排除するor仲違いさせる(無理はしない方向で)。
2.基本的に集団内に潜んで参加者を利用or攪乱する。強力な参加者には集団をぶつけて消耗を図る(状況次第では自らも戦う)。
3.利用できるものは利用して、邪魔者は排除する。
【備考】
※この戦いにおいてアンデットの死亡=封印だと考えています。
※殺し合いが難航すればプレシアの介入があり、また首輪が解除できてもその後にプレシアとの戦いがあると考えています。
※参加者が異なる世界・時間から来ている可能性に気付いています。
※変身から最低50分は再変身できない程度に把握しています。
※プレシアが思考を制限する能力を持っているかもしれないと考えています。
※放送の遅れから主催側で内乱、最悪プレシアが退場した可能性を考えています。
【全体の備考】
※ガジェットドローンⅣ型×5@魔法少女リリカルなのはStrikerSがアジトより北にある各種施設に向かいました。以下の命令を受けています。
・各種施設の探索及び破壊、確保した道具は金居の所へ持ち帰る。
・施設に向かった参加者の殺害。
※工場がガジェットにより破壊されています。
※ゆりかご玉座の間に残っていた道具の殆どが使用不能になるまで破壊されています。もしかしたら何か使える物が残っているかもしれません。
――ふと空を見上げる。そこには変わらぬ満月が彼等を照らしていた。
「ふっ、良い月だ」
キングはそう呟く。
「何か言ったか?」
「いや、別に」
アンジール・ヒューレーの問いかけをそう返したキングの心中は高揚していた。
月光はゲームの支配者である自分だけを照らしている。一方的に放り込まれ殺し合えと言われた時は良い気はしなかったが実際はどうだろうか?
ゲームは幾つかの不測の事態があったものの概ね自分の思う通りに進んでいる。天も地も、そして全ての者達が自分の玩具であった。
月明かりは自分を祝福してくれると思えば良い気もするだろう。
E-9にある森林に2人はいた。D-2のスーパー跡地にいたはずの2人が何故ここにいるのか? そこで、少し時間を遡りつつ振り返っていこう。
そもそも2人はあの後逃走した天道となのはの追跡をしていた。逃走した方向に関しては戦闘時の立ち位置等からある程度予測出来た。その方向は西方向、故に2人はまず西へと向かった。
市街地の闇に消えた可能性も無いではなかったが敢えてその裏をかき、逆方向の平野へ向かった説もあるとキングは判断していた。
アンジールはそうではないが、キングにとってはここで2人を見失っても別段問題はない。只の戯れの1つ程度にしか思っていなかった。
結論から言えば2人を見つける事は出来なかったがその代わりにD-1に血痕をそれも比較的新しいものを見つけた。
「ふむ……」
「そんなものどうでも良いだろう、何もないなら市街地に戻るぞ」
「いや、そうでもないさ。何故こんな所に血痕が出来る?」
「ここで戦いが起こったからだろう?」
「アンジール、君はわざわざフィールドの端で戦ったりするか?」
「……そういう事か」
普通に考え参加者は人のいる市街地へ向かい当然戦いもそこで起こる。殺すにしろ組むにしろ参加者の足取りは端から中央、もしくは施設に向くのは当然の事だ。
だが、D-1はエリアの端にあり同時に周囲に施設はない。好き好んでここで戦いを起こす理由は皆無だ。しかもこの場所はD-1においても西側、ますますこの場所で戦う必然性に欠けるだろう。
「……試してみるか」
キングは更に西方向に足を進める。アンジールは何を考えているんだと思いつつ着いていくが――突然キングの姿が消えた。
「何?」
アンジールは慌てて追いかけた。そして気が付いたら景色が森に変わっていた。
「なるほど。プレシアの奴も面白い仕掛しやがって」
と、ゼロを演じる事も忘れ素の姿をキングはさらけ出していた。
「どういうことだ?」
「何、大したことじゃない。フィールドの端と端は繋がっているというだけの話だ」
一連の事から端と端は繋がっていてループするという事実に気が付いた。先の血痕の主もループしD-9へとワープしたのだろう。と、
「キング……お前主催者側の人間だったな、知らなかったのか?」
「私とてプレシアから全てを聞かされているわけじゃないさ。逃がさない仕掛をしているとは聞いていたがまさかループとは予想外だったという事さ」
「それでこれからどうする? 俺にとってはループなどどうでも良いんだが……」
「そうだな……状況から考えて2人もループを使って逃げた可能性が高い……」
キングは地図を見ながら
「よし、ホテルへ向かおうか。恐らくそこで参加者を集めているのだろう」
と、南方向へと足を進めていく。アンジールも後方のアジトを気に掛けながらもキングの後を着いていった。
「ところで――先程君は私をキングと呼んでいたが、私は君に名乗っていたかね?」
「……さっきの戦いで天道達がお前をそう呼んでいただろう。それを聞いただけだ」
「そういえばそうだったな。正直この姿の時はゼロとでも呼んで欲しいが……まぁいい」
その後、2人はF-9に辿り着いたがそこは崩壊したホテルと1人の半裸の男の死体しか残っていなかった。真面目な話半裸の男の死体など2人にとっては意味は無く、得る物も無い為早々にこの場から離れようとしたが、
「……あれは?」
キングは地面に何かを見つけその場所に向かった。そして
「これジョーカーのカードじゃん、何でこんな所に?」
とまたしてもゼロを演じるのを忘れカードを拾い上げる。それはハートのAのラウズカードだ。
「キン……ゼロ、そのカードがどうかしたのか?」
「いや、別に君に関係の無い事だ」
「それと同じようなカードなら向こうにもあるぞ」
と、少し離れた場所にも別のラウズカードが落ちているのが見える。
それらの位置から考え起こった事はある程度推測出来た。ホテルでジョーカーこと始は戦い激闘の末に封印された。その後、カードだけが風などで飛ばされて散っていったという事だ。
「アンジール、他にもカードが落ちているだろう。捜すぞ」
「ちょっと待て、こんなカードなどどうでも良いだろうが。何故……」
「おや、君は私に逆らえる立場だったかな? まぁ君が捜したくないというのなら別段構わ……」
「くっ……わかったそのカードを捜せば良いんだな?」
キングにとってラウズカードはある種最高の玩具、故にキングはそれを集めようとしていた。アンジールは渋々それに付き合いカード探索をした。
そして、キングの手元にはハートのA、3~10、9枚のラウズカードが集った。
「ふむ、ジョーカーとハートの2が無いのは些か妙だな……先に拾われたか?」
こうしてカード探しをしている内にE-9まで戻ったという事だ。どうやら風が北方向に吹いていたためカードも北方向に散らばりそれらを拾っていく内に北へ進んだという事だ。
「ゼロ、そういえばさっきからバックの中で何かが騒いでいるが何かあったのか?」
「ん? ああ、こいつか。只の人質だよ、連中を従わせる為のね」
なのはから奪ったフリードリヒはキングを警戒、いやむしろ嫌悪していた。キングのした事を踏まえるならばそれも当然の事である。
故に度々フリードは暴れだそうとしていたがデイパックに押し込まれていたが故に何も出来なかったのだ。
「人質程度で連中がお前に従うとは思えないが?」
「だが少なくとも私に刃向かう事は無いだろう」
「不意を突かれ奪還されるかも知れないだろうがな」
そう口にするアンジールの言葉を聞いてキングも少し考える。
確かに先の戦闘でカブトは自分から2つのデイパックを奪取している。2度も同じ事をされるとは思わないが警戒しておいて損はない。
「そうだな……ならコレは君が持っていたまえ」
と、フリードの入ったデイパックをアンジールに渡した。
「良いのか?」
「構わないさ、他にこれといった物は何もない」
「俺がコイツを殺すとは考えないのか?」
「ソレは参加者じゃない。殺した所で君にメリットは皆無だ。それに私の意に背いて殺したり逃がしたりなど君に出来るのか?」
「……もっともだな」
「もし私に何かがあればその時は……」
キングが追いつめられた時、アンジールがフリードに刃を突き付け連中を抑制しろ……その指示をアンジールは無言で頷いた。
連中もフリードをアンジールに渡しているとは思うまい。優位に立ったと思った所で絶望させる……そう考えキングは仮面の下で笑みを浮かべていた。
真面目な話、渡した理由の中にはデイパックの中で騒ぐフリードが正直疎ましく感じていたからというのもあった。
その最中、キングは地図を確認し次の目的地をスカリエッティのアジトに定めていた。恐らくホテルでの戦いを終えた者達はそこに向かっていると判断した。
「喜べアンジール、ようやく君の望む通り戦えるだろう」
強敵とも言うべきジョーカーもエネルももう退場済み、仮面ライダーであろうとも自分を倒す事は不可能。いざとなればフリードを人質にすればよい。
放送が10分遅れた事もキングにとってはどうでも良い話、主催側で何が起こっていようが自分はやりたい様にやるだけだ。
このゲームの支配者はプレシアではなく自分――そう考えキングは足を進めていた。
「(――全く、何をやっているんだろうな俺は……なぁセフィロス……)」
キングの後方でアンジールは空を見上げていた。
妹達を守る為に戦い続けたが結局何も守れず、生き返らせる為に戦おうとしても結局は主催関係者と語るゼロの手駒と化す状況、
「(これでは道化人形としか言いようがないな……)」
これまでずっと守る為に走り続けたアンジールにとってキングの指示に只従うという状況は結果として落ち着いて考える時間を与えてくれた。
結論から言えばアンジール自身、キングの言葉については疑心を抱いている。そう、キングがプレシアの手先であるという部分について嘘の可能性を疑っているという事だ。
前述の通りキングの名前を知っていた事に関しては斬りかかる直前天道及びなのはの口からキングの名前が出てきた事が耳に入ったからだ。それに対してキングが何と応えていたかまでは聞き取れてはいなかったが。
勿論、それだけでゼロがキングという名前だと判断出来るとは言い難い。しかし、少し時間が経過し考えている内にある事を思い出したのだ。
それはデパートのパソコンに残っていたメールのログ。そこにはキングに警戒しろという情報があった。その時点では特に気にしていなかったがそれを思い出した事を切欠にキングの存在とゼロを結びつける事が出来たのだ。
勿論、これだけならばキングが警戒すべき存在でしかない。だが、どうにもキングの言動を見る限り本当に主催者側の人間として働いている様な感じがしない。
突然口調が変わった事と言い、追跡すると言っておきながらカード集めに走った事といい、どうにも納得がいかない。悪く言えば遊んでいるとしか思えないという事だ。
しまいには主催側の人間といっておきながらループの事を知らなかったのも気になる。
そう、主催者側の人間という話自体が自分との戦いを避け同時に手駒にする為の口からでまかせという可能性に気付いたのだ。主催者側の人間でないならば従う通りは全く無い。
自分について妙に詳しかったのは別のカラクリがあったとすれば説明が付く。
それこそ当初考えた様にセフィロス辺りが自分の情報を売ったという説もあるし、自分がメールで情報を得たのと同様に何処かの施設で情報を得たという説もある。確かメールには施設を調べろという事も書かれていた筈なので情報を得られる可能性はある。
勿論、本当に主催者側の可能性もあるが仮にそうだとしても許せる存在ではない。
そもそもの話、クアットロを殺したのはキングではないのか? 仮に主催者側の人間であったとしても直接の下手人を許せる道理はない。
また、根本的な部分で引っかかる事がある。オットーが放送を行った件についてだ。勿論、これ自体はオットー達も主催者側にいるという事で説明が出来るだろう。
だが、一方でクアットロ達が参加者側にいる事が気になる。オットー達がいるならクアットロ達も主催者側の人間でなければおかしいだろう。
ではクアットロ達も主催者側の人間で参加者を攪乱するために送り込まれていたのか? いや、一度クアットロと接触した限りクアットロは自分を覚えていなかったしそういう役割を与えられていたという素振りも見せなかった。
勿論、記憶を操作した上でそういう役割を与えたという説もあるだろう。だが仮にそうだとするならばなおの事キングを許す事は出来ない。
キングは参加者の情報を与えられている一方、クアットロ達は記憶封鎖されている。何故こうも扱いに差があるのだ? キングや主催側に怒りを覚えずにはいられない。
そして最終的にはクアットロ達を斬り捨てた――オットー達もきっと主催者側に命を握られているのだろう。決して主催者達を許す事は出来ない。
だが現状では主催者の望み通り彼等に従い優勝を目指し妹達を助けるしか選択肢はない。それが真実という保証も無いが嘘だという確証も無い。故に今は従うしかないのだ。
同時にキングに対しても現状は従うしかない。キングに疑心があるとはいえこれまた確たる証拠が無い。もし本当に主催者側の人物だったら彼の機嫌を損ねれば最悪優勝しても願いは叶わない。
自分が状況に流されるだけの道化人形だという事は理解している。それでも願い事を叶えたいという想いだけは誰にも否定させやしない。
「(笑えよ――セフィロス――)」
友が今の自分を見てどう思っているかはわからない。妹達を守るために奴の大切な者――八神はやてを殺しておきながら結局何も守れなかった。
今の自分の姿はさぞかし滑稽に映っているだろう。
自虐はそこで終える。何にせよ目的地はある意味本拠地とも言うべきスカリエッティのアジト。全ての決着を着けるという意味ではある意味相応しい場所だ。
「(キング、今はお前に従ってやる。だが、クアットロを殺したお前を許すつもりはない――何れ落とし前だけは着けさせてもらう――
プレシア達もだ――妹達をこの殺し合いに巻き込んで只で済むと思うな――)」
敵意だけは決して消すことなく、道化へと堕ちてもなお兄としての僅かなプライドを残して戦士は行く――
「そうだ――俺が選ぶ選択肢は――1つだ――」
「何か言ったか?」
「いや、別に」
【2日目 深夜】
【現在地 E-9】
【キング@魔法少女リリカルなのは マスカレード】
【状態】健康
【装備】ゼロの仮面@コードギアス 反目のスバル、ゼロの衣装(予備)@【ナイトメア・オブ・リリカル】白き魔女と黒き魔法と魔法少女たち、キングの携帯電話@魔法少女リリカルなのは マスカレード
【道具】支給品一式、おにぎり×10、ハンドグレネード×4@魔法少女リリカルなのはStrikerS、ラウズカード(ハートの1、3~10)、ボーナス支給品(未確認)
【道具①】支給品一式、RPG-7+各種弾頭(照明弾2/スモーク弾2)@ACE COMBAT04 THE OPERATION LYRICAL、トランシーバー×2@オリジナル
【道具②】支給品一式、菓子セット@L change the world after story
【道具③】支給品一式、『SEAL―封印―』『CONTRACT―契約―』@仮面ライダーリリカル龍騎、爆砕牙@魔法妖怪リリカル殺生丸
【道具④】支給品一式、いにしえの秘薬(空)@魔法少女リリカルなのはSTS OF HUNTER
【思考】
基本:この戦いを全て無茶苦茶にする。
1.アジトに向かう。
2.他の参加者にもゲームを持ちかけてみる。
3.上手く行けば、他の参加者も同じように騙して手駒にするのもいいかも?
4.『魔人ゼロ』を演じてみる(飽きたらやめる)。
5.はやての挑戦に乗ってやる。
【備考】
※キングの携帯電話には『相川始がカリスに変身する瞬間の動画』『八神はやて(StS)がギルモンを刺殺する瞬間の画像』『高町なのはと天道総司の偽装死体の画像』『C.C.とシェルビー・M・ペンウッドが死ぬ瞬間の画像』が記録されています。
※全参加者の性格と大まかな戦闘スタイルを把握しています。特に天道総司を念入りに調べています。
※八神はやて(StS)はゲームの相手プレイヤーだと考えています。
※PT事件のあらましを知りました(フェイトの出自は伏せられたので知りません)。
※天道総司と高町なのはのデイバッグを奪いました。
※十分だけ放送の時間が遅れたことに気付き、疑問を抱いています。
【アンジール・ヒューレー@魔法少女リリカルなのはStrikerS 片翼の天使】
【状態】疲労(小)、深い悲しみと罪悪感、脇腹・右腕・左腕に中程度の切り傷、全身に小程度の切り傷、願いを遂行せんとする強い使命感、キングと主催陣に対する怒り
【装備】リベリオン@Devil never Strikers、チンクの眼帯
【道具】支給品一式、フリードリヒ@魔法少女リリカルなのはStrikerS
【思考】
基本:最後の一人になって亡き妹達の願い(妹達の復活)を叶える。
1.キングと共に、参加者を殺す。
2.参加者の殲滅。
3.ヴァッシュのことが、微かに気がかり。(殺すことには、変わりない)
4.キングが主催者側の人間で無かった事が断定出来た場合、キングを殺す。
5.主催者達を許すつもりはない。
【備考】
※ナンバーズが違う世界から来ているとは思っていません。もし態度に不審な点があればプレシアによる記憶操作だと思っています。
※『月村すずかの友人』のメールを確認しました。一応内容は読んだ程度です。
※オットーが放送を読み上げた事から主催者側にナンバーズの命が握られている可能性を考えています。
※キングが主催側の人間という事について疑いを持っています。
月明かりに照らされながら終末の光へと誘われるかの様に虫の王達は一点へと集う――
それは偶然か? それとも必然か?
何れにせよ運命の決着は近い――
決めてとなる切札は王の手にあるのか――
あるいは――
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