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二人の兄と召喚士 ◆jiPkKgmerY




茶を基調とした制服を身に纏い、鮮やかなピンク色の髪の毛を揺らし、少女——キャロ・ル・ルシエは暗闇の森林をただひたすらに歩いていた。


闇。
それが全てを包み込んでいた。
本来ならば心に安らぎを与えてくれる筈の木々の緑も、今は不安を煽る黒にしか見えない。
歩いても歩いてもあるのは闇ばかり。
バックに入っていたランプを使おうとも考えたが、誰かに見つかると思ったら怖くて使えなかった。


キャロの脳裏には未だに、あの時の光景が映し出されていた。

——弾け飛ぶ首。
——噴出する血液。

まだ少女と言える見た目とは裏腹に、キャロは人並み外れた人生を送ってきた。
部族から追放され、管理局に拾われ、幾多の戦いを経験して、しかしそれでもキャロは折れる事なくここまで生きてきた。
そして、それらを乗り越えることで、相応の実力と精神力を身に着けてきた。
様々な事を乗り越えて身に着けたそれらは嘘じゃないと信じている。

確かにキャロは強い。
だが、それでもなお今回の出来事はキャロの精神を蝕む。

——キャロは初めてだった。

——『死』を見るのが。
——人の首が弾け飛ぶところを見るのが。
——狂ったスプリンクラーの様に血液が噴出するところを見るのが。

——初めてだった。

——初めて直視した人間の『死』。

それが恐怖となり心を包む。

——自分以外の全員が死なないと助からないという状況。

それが絶望となり心を包む。


気を抜いたら涙が零れてしまいそうだった。
このままゲームが終わるまでどこか隅の方に隠れていようか。
そんな弱い考えまで浮かんだ。




——だが、少女は歩いている。少女は前を見続けている。
恐怖心、絶望感を押し殺し、零れそうになる涙押し止め、前に進んでいる。

——掛け替えのない仲間がいるから。

——信頼できる上司がいるから。

——自分を孤独から救ってくれた人がいるから。

——皆と力を合わせれば絶対にこのゲームを止める事が出来る、そう信じているから。

——キャロは前を向き、歩き続ける。

——この殺し合いを止める為、仲間と再会する為、歩き続ける。


キャロは、自らの手に包まれた金色の三角形を握り締める。
それは、自分を救ってくれた人——フェイトさんのデバイス。

あの人だったら絶対に、みんなを救う為に動く筈だから。
怖いけど……怖くてたまらないけど——少女は、延々と続く闇に向かって歩き続ける。




歩き始めてどれくらいたっただろうか。

最初は小さく見えたそれも今では天にそびえる程の巨大さを示している。

——ホテル・アグスタ。
最初に自分が居た地点から一番近くにあった施設。
キャロはそこを目指していた。

みんなが何処に居るかは分からないけど、当てもなく歩くよりは出会う可能性は高い。
それに仲間じゃなくても、もしかしたらこのゲームに反抗する人と出会えるかもしれない。

キャロは小さな望みを胸に歩き続けていた。

それから更に数分後、ようやく森が開けている地点が目に入った。
森が開けている、即ち、そこにホテル・アグスタがある。


キャロは僅かに気を高ぶらせ、歩みを早める。
フェイトさん、エリオ君、ティアナさん、スバルさん。
居ると決まった訳ではないのに、みんなの顔が頭に浮かぶ。
どんどんゴールが近付いてくる。
そしてようやく長い長い森を抜けた。

「キャッ!」

——と、同時に地面に埋まっていた石ころに足を引っ掛け、ベチャという音が聞こえそうなほど綺麗に倒れた。



——そして、キャロの真後ろに存在した木々が数十の木片になった。




「え……?」

思わず声がもれる。

——何が起きたのだろう?
——何で、あの木はシグナム副隊長に何回も斬られたみたいになってるのだろう?

魔法ですら有り得ないその現象に、キャロは目を丸くする。

「よく避けたな」

その氷のように冷たい声にキャロの心が粟立つ。
短髪の金髪。
端正な顔。
ティアナさんがよく着ているライダースーツを真っ白に染めた様な服。
そして——刀のように変形した左腕。
それをこちらに向けている。


本能が騒ぎ立てていた。
——この人はゲームにのっている、と。

男の冷酷な瞳を見つめ返しながら、キャロはバルディッシュを握り締めた。




男——ナイブズは驚いていた。
踏み潰そうとした虫が予想外の動きで攻撃を避けた事に。

だが、偶然転び、偶然攻撃を回避できただけ。
結果は変わらない。
死ぬまでの時間が数秒延びただけだ。

ナイブズの左腕が振るわれ、肘から延びた刃が少女へと迫る。
狙いは首。
素手の少女じゃ避けることも、防ぐことも、知覚することすら出来ないスピード。
刃が少女の首と胴体を切り裂く————寸前それは起こった。

『sonic move』

ナイブズの目が見開かれる。
少女が消えた。
まるで瞬間移動をしたかの様に。
そこでナイブズはある考えに至る。

(魔導師か……)

だが動揺はしない。
左腕を振り上げる。
瞬間、刃と化している男の腕が触手の如く伸びた。
それは一瞬で数十メートルという距離を突き進み、木々をなぎ倒す。
そして——

「ア、アァァアッッ!!」

少女が消えた地点から遥か右側の木の影から、少女の叫び声が響いた。
ナイブズは血の付いた腕を戻し、声のした方へ歩み寄る。
そこには脇腹から血を流しうずくまっている少女の姿。
先程と服装が変わっているのはバリアジャケットを装着しているからだろう。

「うぅ、バル……ディッシュ!!」
『sonic move』

ガシャンという音と共に、戦斧内にあるリボルバーが回転、再び少女の姿が消える。

——根性はある。

あの傷を負ってまだ逃げ出す力が残っているのだ、ただの素人ではない。

(……だが奴らと比べると話にならん)

左側の森林へと、ナイブズが無造作に刃を振るう。
それだけで数本の木が真っ二つになり、轟音と共に崩れ落ちる。

「クッ……!」

と、同時に斬られた木の影に隠れていた少女が飛び出る。
まだ逃げる気なのか、血を流し続ける脇腹を抑え、必死に足を動かしている。
だがその動きは鈍い。
デバイスの補助があるとはいえ慣れない高速移動魔法の連用、そして軽くはない脇腹の傷。
この二つの要因がキャロの体力を著しく削っていた。

「醜くいものだ」

それでも生き延びようともがくキャロへ、ナイブズは無慈悲に刃を振るう。
刃はバリアジャケット毎、キャロの左太腿を貫く。

「う゛ぁぁぁああ!!」
経験した事のない痛みがキャロを襲う。

痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い———……
助けて誰か……

痛みにもがくキャロへ、ナイブズの左腕が振るわれ、バルディッシュがキャロの手から弾き飛ぶ。

「あ……」

思わず漏れた少女の声も意に介さず、ゆっくりとナイブズは近付く。
その眼は何の感情も宿していない。
まるで虫を見るかのように冷たい。

「な、何で……何でこんな殺し合いにのるんですか……」

武器もない、足も動かない。
満身創痍のキャロが問い掛けた。
その問いにナイブズの口が三日月を描く。

「虫を殺すのに理由がいるのか?」

冷徹に、冷酷に、一片の躊躇いすら持たずにナイブズは答えた。
その答えに——その顔に宿る狂気に、キャロは愕然とする。




——この人は今まで出会ったどんな人とも違う。
——この人は全てを壊す。

——止めたい。

無力な少女は心の底から願った。

——この人を止めたい。
だが現実は非情である。
少女の願いは叶わない。


満月を背にナイブズは無言で刃と化した左腕を振り上げる。
それを見ながら少女は今まで出会った沢山の人々を思い出していた。

——あぁ、もう一度会いたかったな。

——いつも一緒にいた飛竜、フリード

——厳しく、そして優しかったなのは隊長、ヴィータ副隊長、シグナム副隊長。

——辛い訓練を共にした二人の仲間、スバルさんとティアナさん。

——自分に暖かい世界を教えてくれた優しい女性、フェイトさん。

——そしてどんな戦いでも一緒に戦った少年、エリオ君。

最後に会いたかった。
でも無理だ。
自分はここで死ぬのだから。
せめて願おう。
みんなが一人も欠けずにこのゲームを脱出できることを。
私はもう無理だけど、みんなは————

——刃が降り下ろされ、同時にキャロの意識は途切れた。





「誰だ、貴様は」

左腕を振り落ろした体勢のままナイブズは顔を上げ、口を開いた。
一本の剣で自分の左腕を止めている男に向けて。

「貴様に名乗る名などない」

月夜に照らされた、透き通るような銀色の髪。
鋭い耳に、顔に走る三本の赤い線。
胴に装備された漆黒の鎧。
そして鎧とは対照的な色彩を放つ毛皮。




男は凛とした態度で立っていた。

「……何故この女を助ける」

ナイブズが大きく後ろに飛び、距離をとる。
その顔には警戒の色を覗かせている。

だが銀髪の男はナイブズの問いに答える事なく、剣をバックの中へと入れ気絶したキャロを抱きかかえる。
そして呟く。

「……貴様は人間ではないな」

その言葉にナイブズは目を見開く。が、それも一瞬の事。
直ぐに元の表情に戻る。

「……当たり前だ。人間如きと一緒にするな。…………そういうお前も人間ではないようだが」

人間ならば有り得ない尖った耳。
そして何より纏っている空気。
明らかに人間とは違う。
ナイブズは続ける。

「お前は良い眼をしている。自分の邪魔する者を躊躇いなく殺す眼だ」

普段のナイブズからは考えられないほど饒舌に語る。
それは人間ともプラントとも違う、新たな種に出会えた感動か。

「そんな男が何故そのゴミのようなガキを庇う?」

終始、無表情に徹していた男の眉が僅かに動いた。

「…………黙れ」

静かなる覇気が籠もった言葉。
男の鋭くつり上がった眼がナイブズを射抜く。

「そうだ、その眼だ……お前は良いナイフになりそうだ」

だがナイブズはその視線を気にもせず、平然と受け流す。

「……ところでだ。お前はその女をどうする気だ?もはや傷だらけでボロボロ、連れて行っても足手まといになるだけだぞ?」

ナイブズの腕が変化する。

「——そいつを置いてけ、そうすればお前は見逃してやる」

その一言に空気が戦場のそれと化す。
左手を振り上げたナイブズに対し、男はバックへ手を突っ込む。

——どうやら戦う気か。
ナイブズは嘲笑を浮かべる。

——所詮は人間どもに感化された下らん隷下か。
——消えろ。

ナイブズがそう考え、腕を振り下ろそうとした瞬間————光が世界を支配した。






何が起きたのかナイブズは分からなかった。
気付いた時には強烈な光が辺りを包んでいた。

(——目くらましか)

腕で目を庇い、発光が止まるまで耐えると同時に、相手からの攻撃に対処すべく身構える。
だが、何時までたっても攻撃は来なかった。

「ちぃっ!」

ようやく止んだ発光と同時にナイブズは空を見上げる。
そこにはまるで月に向かうかのように天舞う銀髪——脇には女を抱えている。

(逃げを選んだか……それなりに頭は回るらしい……だが)

もはやその姿は遥か彼方、米粒のような大きさになっている。
だがそれでも、ナイブズは迷うことなく左腕を構えた。

(——俺から逃げられると思ったか?)

腕が刃状に変形。
同時に『門』を開く。
交差する『持っていく力』と『持ってくる力』。
その中から『持ってくる力』を選択する。
視認できる程巨大な『門』。
——人二人を殺すには充分すぎる程の『力』を秘めた『門』。


男もこちらの行動に気付いたのか、高度を下げ森の中に姿を消した。

——みすみす的にはならないということか。
——だが、無駄だ。


——エンジェル・アーム。

ナイブズ——プラント自立種のみが持つ事を許された人知を越えた究極の能力。
それは成層圏に存在する衛星さえ刻み落とし、月に巨大なクレーターを作る。
その能力の前では数百メートルなんて距離はあってないようなもの。
隠れた所で意味をなさない。

(——消えて逝け)

——その念と共に数十もの斬撃と化した『力』が放たれた。







——何故この小娘を助けようとしたのか。

最強の妖怪の血を引く男——殺生丸は月の浮かぶ空を舞いながら、自らのした不可解な行動について考えていた。

始まりは『音』だった。
自分からそう遠くない場所から轟音が聞こえたのだ。
これだけの轟音を響かせる程の戦闘。
僅かに興味をそそられて、音のした方へ近付いてみた。
そこで見たものは、異形の左腕を振り上げている男。
そして、血だらけで気絶している少女。

——その光景を見た瞬間、反射的に殺生丸の体は動いていた。

——まるで少女を助けるかの様に男の斬撃を受け止めていた。

——そして、男の挑発に受ける事なく、強烈な光を放つと説明書きされていた『すたんぐれねーど』とやらで目を潰し、逃げ出した。

——あの場で戦うことだって出来たはずなのに。


(……何故だ?)

殺生丸の眉間にシワがよる。
人間などという下等な生き物を何故この私が助ける?
しかもこの小娘は自分と、そしてあの見てるだけで胸糞悪くなる男・スカリエッティと敵対していた者の一人。
そんな奴が死のうがどうなろうが関係ないはずだ。
なのに何故――?


高潔なる妖怪——殺生丸は気付いていなかった。
一瞬、少女——キャロ・ル・ルシエの姿が、自分が助けた人間の少女に重なったことを。
現在自分が同行している少女と重なったことを。
いや、気付いていたのかもしれない——だが、殺生丸はそれを認めようとしない。


自分は最強の妖怪だった父の血を引く高貴なる妖怪だ。
そんな自分が人間に対して『情』という感情を持つなど有り得ない。


数秒間何かを考える様な遠い目をした後、殺生丸は頭を振り思考を振り払う。

今はこのような下らない事を考える時ではない。
取り敢えずあの男は撒いた。考えるべきは、これからどのように行動するかだ。


思考を切り替え、最強の妖怪は飛び続ける。心に掛かる靄のような感情を振り払う事が出来ずに。






——と、その時、殺生丸の首筋がゾクリと粟立った。

(何……?)

後方——あの男が居た所から異様な気配を感じた。
その気配の正体を探るべく殺生丸は首をひねり、男が居た方を見る。
そして目に映ったのは、巨大な刃に変貌した左腕をこちらへ向けている男の姿。
そして禍々しい色をした拳ほどの大きさの『門』。
瞬間、殺生丸は舌打ちと共に地面に向け、高度を下げた。

——あの男は、何かを狙っている。この距離で。
地面に降り立った殺生丸は、男との距離を離すべく、人間離れした脚力で地を蹴る。

——あの男はこの距離からでも当てられる技を放つ気だろう。
鉄砕牙の技の一つ『風の傷』のように驚異的な威力と射程を誇る技を。

この時、殺生丸の手に自らが生み出した妖刀・爆砕牙があれば、真っ正面から受けて立ったかもしれない。
だが、今彼の手にあるのは爆砕牙と比べれば明らかに頼りない刀が一振り。
妖怪の中でも最強クラスの力を持つ殺生丸といっても、これでは話にならない。

ならば、出来ることは一つ。
敵の見えない場所へ移動し、兎に角距離をとる。
要するに逃亡。



——次会った時は必ず殺す。

殺生丸はそう胸に誓い、森林を駆ける。
ハンデを抱えるとはいえ、自分に逃げを選択させたのだ。
それが人間ではない存在だとしても到底許せるものではない。

——必ず自分の手でなぶり殺しにしてやる。

噴出しかける殺意を胸に押し込み、殺生丸は駆け続ける。



瞬間、視界が開けた。
鬱蒼とした木々はなくなり、淡い月光が体を照らす。
森を抜けたのだ。

殺生丸がそう認識したとほぼ同時に——後方の威圧感を放っていたそれが爆発した。



——まばたきをする暇すらない。

——不可視の刃は全てを斬り裂いた。









ガソリンの不快な臭いが立ち込める中、殺生丸は腕を組み壁に寄りかかり体を休めていた。
いや、殺生丸自体は体を休める必要など無い。
数百メートルを全力で駆けたとはいえ、その体に残る疲労は微々たる物。
まだ休息をとる程ではない。
なら、何故不快な臭いを我慢してまで、この施設——ガソリンスタンドへと立ち寄ったのか。

それは傷だらけの少女——キャロを休ませるため。
キャロは近くのソファをに寝かされている。
苦悶に歪んだ表情をしているが、出血は止まっている。
少なくとも命に関わる程の傷ではないようだ。



月明かりだけのみが照らす部屋にて、殺生丸はこれからの行動方針を考える。

(……取り敢えずは中心地に向かうか)

この限られた空間では、人は中心地に集まり易い。
名簿とやらに載っていたルーテシアやゼストもそこに集まるだろう。
その分、先程の男のような殺し合いにのった輩も出て来るだろうが問題はない。

——殺せば良いのだから。

爆砕牙には遠く及ばないが妖刀と思しき刀もある。
この忌々しい首輪の影響なのか、嗅覚や身体能力に制限がされているみたいだが、それも大した問題にはならない。

だが問題なのは——この小娘。

殺生丸は考える。

この人間の子供を捨て置くか、否か。


——その端正な顔が僅かに歪んだ。





【1日目 深夜】
【現在位置 F-8 ガソリンスタンド内】

【殺生丸@リリカル殺生丸】
【状態】疲労(小)
【装備】童子切丸@ゲッターロボ昴
【道具】スタングレネード×2、支給品一式×2、不明支給品(0〜1個、確認済み)
【思考】
基本:進んで殺し合いには乗らないが、気に食わない者や立ち向かってくる者と会えば容赦なく殺す。
1:こいつをどうするか……。
2:中心地へ向かう。出来ればルーテシアとゼストと合流したい。
3:今度、あの男(ナイブズ)に会ったら殺す。
[備考]
※自分の嗅覚が制限されているのを知りました。
※ルーテシア、ゼストが自分とは違う世界から来ている事に気付いていません。

【キャロ・ル・ルシエ@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
【状態】疲労(大)、脇腹に切り傷、左太腿に貫通傷、気絶中
【装備】なし
【道具】なし
【思考】
基本:殺し合いを止める。殺し合いに乗ってる人がいたら保護する。
1:……………
2:仲間を探し合流する。
[備考]
※取り敢えずキャロの傷は命に関わる程ではありません。
※キャロの支給品一式、不明支給品(1〜2)は殺生丸が持っています。
※バルディッシュはF—9のホテルアグスタの近くに落ちています。
※別の世界からきている仲間がいることに気付いてません。



月夜が照らすホテル・アグスタ前。
一人の男——ナイブズが息を切らし、左腕を押さえている。

「何だ……これは……!」

エンジェル・アームを使った直後、突如襲った強烈な疲労。
それがナイブズを苦しめていた。
今まで能力を使って来て、この様な疲労など感じた事はない。

(……この首輪の影響か?)

疲労に霞む頭を押さえ、何とか立ち上がる。

最初から疑問だった。
何故このような殺し合いに、この圧倒的な力を持つ自分を参加させたのか。
自分の能力は、この会場の端から端まで易々と届く。
そのような者を参加させたら起こるのは——殺し合いではなく虐殺だ。
なのに何故参加させた?




答えは今、出た。

能力の制限だ。
どのような原理かは分からないが、プレシアという女はエンジェル・アームの力を大幅に制限している。

先の一撃は確実に奴に届く『力』を込めた、にも関わらず斬撃は消失した。

そう、ナイブズの攻撃は殺生丸には届かなかったのだ。

威力、射程、そして負担の増大。
制限されているとしたら、そんなところか。


忌々しげにナイブズは舌打ちをする。

(予想以上に、あのプレシアとかいう女は力を持っているようだ)

そう考え、ナイブズは歩き始める。
制限があろうとやるべき事は変わらない。
それに——

ナイブズの顔が狂気に歪む。

——この会場には、良いナイフになりそうな奴がいる。

自分からの逃走を成功させた男。
冷たい眼、一目で強者だと感じさせる立ち居振る舞い。
そして何より、人間を下等な生き物と断定している。
少し甘い面もあるが、奴は最高のナイフになる可能性を秘めている。

さらに名簿には載っていた守護騎士達。
奴らも精神的に甘いが、この狂ったゲームを経験すればその甘さも無くなるかもしれない。
願わくば、人殺しとしての血を思い出して欲しい。

ナイブズの笑みが深くなる。


——そしてヴァッシュ・ザ・スタンピード。

奴はこの狂ったゲームに於いても、絶対にその下らない信念を貫こうとする。
このゲームは、あの分からず屋に人間の醜さを理解させるには、打ってつけだ。
上手くいけば覚醒もあるかもしれない。


「ク、ク、ハハ、ハハハハハハハ!!」


堪えきれなくなったのか、ナイブズが高らかな笑い声を上げ始める。

(下らないと思っていたが……なかなか面白くなりそうじゃないか!)




人から見たら狂った様な、男からしてみれば最高の笑顔を浮かべたまま、男は進み続ける。


——ナイフに成りうる存在を探し求めて。

——最高の殺戮を探し求めて。

——自らの野望を達成する為に、男は歩き続ける。




——だが、男は知らない。


自分の疲労が能力の制限のせいだけでは無いことを。
自分の髪に走る一筋の漆黒の意味を。


——男は知らない。


【1日目 深夜】
【現在位置 F-9 西側の林間】

【ミリオンズ・ナイブズ@リリカルTRIGUNA's】
【状態】疲労(大)
【装備】なし
【道具】支給品一式、不明支給品(1〜3)
【思考】
基本:出会った参加者は殺す。が、良いナイフ(殺戮者)になりそうな奴は見逃す。良いナイフになりそうな奴でも刃向かえば殺す。
1:中心部へ向かい人を探す。
2:ヴォルケンズ、ヴァッシュは殺さない。
3:制限を解きたい。
4:殺生丸に期待。でも刃向かったら殺す。


【備考】
※エンジェル・アームの制限に気付きました。
※高出力のエンジェル・アームを使うと黒髪化が進行し、多大な疲労に襲われます。
※黒髪化に気付いていません。また、黒髪化による疲労も制限によるものだと考えています。
※はやてとヴォルケンズ達が別世界から来ている事に気付いていません。
※エンジェル・アームによりホテル・アグスタ付近からF-8の平野に向けて500メートルに渡り、木々が切り倒されました。また、木々が倒れた時、周囲に轟音が響き渡りました。



Back:反逆の探偵 時系列順で読む Next:駆け抜ける不協和音
Back:なごり雪 投下順で読む Next:駆け抜ける不協和音
GAME START キャロ・ル・ルシエ Next:童子切丸は砕けない(前編)
GAME START 殺生丸 Next:童子切丸は砕けない(前編)
GAME START ミリオンズ・ナイブズ Next:童子切丸は砕けない(前編)






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