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Heart of Iron ◆WMc1TGFkQk




「何……な、何だってのよ」
 悪い夢でも見てるようだ。それが、この状況(正確には先程起きた事態)を言い表す、現在自分が思いつく最大限の言葉だった。
 自分こと柊かがみは、陵桜高校三年C組に通う、極平凡な……ついついお菓子を食べ過ぎて、体重計の上で後悔をする……所謂普通の女の子だ。
 それなのに、何故、こんな場所に居るのだろうか?

 普段通り、登校し——季節外れの転校生という、友人の喜びそうな(事実友人、泉こなたは喜んでいた)イベントはあったものの——普段通り、下校した。
 そうだ。普段通りの筈だったのだ。普段通り就寝した筈だったのだ。
 それなのに、何故自分は今、こんな所……どう見ても屋外なんかに、居るのだろうか?
 しかも、いつの間にか……身に覚えのないデイパックなんかを持って。

「………………これ、夢、よね」
 そう口に出すと、自分の発した言葉が、よりいっそう真実味無く聞こえた。
 それどころか、まるで遥か及ばない何者かが、自分を追ってきている。そんな風にも錯覚された。
 寝る前に、あんな本を読んだからだろうか?
 帰宅途中に立ち寄った書店(その一言には甚だしいものだが)で、何気なく購入したライトノベル。内容は……SFで、登場人物の中に壁や天井も歩いて追ってくる執拗な追跡者がいた。
 『帰宅途中』……そういえば、それには確か、あの転校生達も同行していた。
 『あの転校生達』……なのはと、フェイト。

 そうだ。彼女達もあの場にいた。
 なのはは自分の知らない金髪の友人“アリサちゃん”と、フェイトは変なボンテージファッションの女“母さん”に……。

「!!」

 そこまで記憶を遡ると、同時に、かがみの食道を何かが遡った。
 突然込み上がるものに顔を歪め、空気を求めかがみは必死に口を開いた。
 息……いや、それよりも熱い何かが、食道を通り、口腔を満たし、唇を伝わり、地面に落ち、水音を立てる。
 焼け付くような感覚に、何度も口を開閉すると、同時に湿り気のある音が鳴る。
 そこまで経って、漸くかがみは気が付いた。ああ、自分は吐瀉しているのだ、と。




 何故か? ……それは考えてはいけない。
 何故だ? ……それを思い出してはいけない。
 何故、考えてはいけない? 何故、思い出してはいけない?
 ダメだ。兎に角ダメだ。思い出し——

 ——ヒトガシンデイタノダ。

「ううっ!!!」
 吐いた。また吐いた。もう一度吐いた。
 思い返してしまった光景を否定するように、何度なく吐き戻した。
 しかし、脳は……記憶はかがみを責め立てる。
 人が死んでいた……殺されたのだ、これは紛れもない現実だ、と。
「いや、いや、イヤァァァァァア!!! こなた、こなた、こなた————ッ!!!」
 思い付いた人間……親しい友人の名を呼ぶ、必死に叫ぶが、それに応えは無い。
 暗闇に、柊かがみの絶叫が響いた。

       ◇  ◆  ◇

 そこから少し離れた場所に、少年、エリオ・モンディアルは居た。
「……ッ! なんて酷いことを……ッ!」
 抱える感情は、怒り。紛れもない憤怒そのものだった。
 自分はデジタルワールドに居た。キャロとは離れ離れ、その先でユーノと出会い、炎の街へ向かった……それが何故こんな場所に。
 通常ならばそう考えるであろう思考を弾き飛ばす、それほどの心の炎だった。
 許せない。許せるわけがない。
 目の前であんな行為を行われて、冷静で居られるほどにエリオは非情な存在ではなかった。
 怒りで固める拳から骨の軋む音が聞こえようと、エリオの憤激は止む事が無い。
 握りしめた爪が肉に食い込み、薄紅の曲線を付ける。そのまま続けばやがて真紅になるであろうが、それは一先ず中断された。
 女の悲鳴に、よって。

 反射的に飛び出していた。走ると揺れる背中のデイパックが気にはなるが、今は構ってなどいられない。
 自分に出来る事があれば……いや、例え自分が及ばなかったとしても、誰かには及ばせはしない——行くしかない!
 エリオ・モンディアルはそういう少年……騎士、なのだ。





 程なくして、エリオはその音源にたどり着いた。
 声の主であろう少女、柊かがみ(エリオは名を知らない)は吐瀉物にまみれ、その場にうずくまっていた。
 恐慌状態、というものだろうとエリオは判断。すぐさま声を掛けるか思案の後、話しかける事にした。
「あの……」
「ひ……ッ!」
 恐怖と急迫が混じり合った、半ば反射的じみたスピードでかがみは頭を起こした。
 暗闇に浮かぶ街灯の薄明かりが、かがみのその目に映る光が紛れもない恐れのそれであると、エリオに伝える。
 少女は自分を恐れている、そう速断を下す。
 無理もない。あの場で行われた、敬愛する女性が「母」と呼んだ女が行った行動は、異常や異端と呼ばれるそれなのだ。
 エリオは多少鍛えがあった。覚悟があった。それでも恐ろしかった。耐え難いものだった。
 しかし目の前の人はどうだろうか。鍛えている風にも見えない。極めて一般人然としている……事実、一般人だろう。
 そんな人間が、凶行(アレ)に耐えられるものなのか。

 答えは否だ。耐えられる筈がない。
 恐らくは嘔吐もそれが原因だ——エリオは直観する。
 ならば先ずは落ち着かせなくては——エリオは決断する。
「あの……」
「ひぃ……ヤ」
 何とかコンタクトを取ろうと一歩を踏み出したエリオだったが、それと同時にかがみの顔の恐色が増した。
「ぼ、僕は……別に怪しいものではありません!」
 何とかしなくては、そう思っての一言だったが……直後、エリオは理解し、後悔する。
 それは、如何なる人間が発せようとも、瞬く間に怪しい人物と思わせてしまう、まさしく魔法の言葉なのだ、と。

「ひッ……や、やだ……こないで……ッ!!」
「違うんです! 僕は……」
「イヤ……こないで……こないで……ッ!」
 服が、靴が、手が、吐露した物体にまみれようとも、柊かがみは後退を止めない。
 襲いかかる恐怖という名の怪物から、手足に纏わりつく「シ」という名の触手から、一心不乱に自分……柊かがみという名の生命を遠ざける。
 しかし、かがみの願いに反して、恐怖状態の筋肉はなかなかそれを実行しない。
 カタカタと余計な緊張をして、後ろへちっとも戻ろうとせず、挙げ句、デイパックの中身を撒いてしまう。
 零れ落ち音を立てた二つの直方体形の塊。




 『それ』が視界に入るや否や、今までとは打って変わった素早い動きで手に取り、かがみは目の前の少年へと突き出した。
 黒き直方体形の塊……即ち、銃を。
「こ……こないで……ッ! お、お願い……だから……ッ」
「クッ……」
 エリオは歯噛みする。目の前の女性が手にしたのは、御禁制の質量兵器——銃。対する自分は何もない。
 せめてデバイス——バリアジャケットさえ展開できれば……。そう思っても、現実自分の手には何もない。
 だが、何もないからと言って、この女性を見捨てるのか? こんな場所に、怯える女性を一人、置き去りにするのか?
 ——違う!

「僕は……あなたを放っては置けません!
 こんな場所にあなたを一人、置いては行けません!」
 故に、口にする。自分は関係なくは、ないのだ、と。
「え……」
「だからッ!」
 エリオが一歩を踏み出した。
「僕と、話を」
 そこで、エリオの言葉はかき消された。一発の銃声によって。
 撃つつもりなどなかった。柊かがみは銃の実物なんて見た事はないし、ましてや手に取った事などない。
 ならば、人を撃った事なんて決して有り得ない。
 ただ、それを握っていれば少しでも恐怖が遠ざかってくれる『かもしれない』と思って、必死に銃を掴んでいた。
 だから、撃つつもりなんてなかった。少年が自分に近寄ったことに驚いて、驚いて……、

 銃を握り/引き金にかかった指を——しめた/引いた。

——ア……ア…………
 崩れ落ちた少年の体。流れ出る体液。
——アア……アアア……
 街灯の冷ややかな照明がそれが赤い——血であると証明する。
——アア……アアアア………アアアア
 液面に反射した姿を見て、柊かがみは初めて自分が叫んでいるのだ——この声は自分が出しているのだ、と認識した。




       ◇  ◆  ◇

 それからまた若干の距離を置いた場に、シェルビー・M・ペンウッドは居た。
 彼は無能だ。しかし、そんな彼にも分かる事はある。
 それは、ここが異常な空間である、という事。

 ペンウッドは生まれついての家柄と地位だけで生きてきたも同然な男だ。いつも与えられた仕事だけをやって来た。
 しかし、その仕事はレジ打ちではない。バーテンダーではない。マイクを持って壇上で「畜生」「畜生」と叫ぶ職業ではない。
 彼の仕事は鉄火場、或いはそれに準ずるもの——実際戦地に赴かなかったとしても——だ。
 だから分かる。故に気づいた。
 今自分が居るこの場こそは、生と死が混じり合い、黒き災禍が渦巻く、死の臭いに満ち溢れる闘争の場である、と。
 そう、殺し、殺され、滅ぼし、滅ぼされる——凶骸の宴なのだ。ここは。
 あの女も……自分達をこの場に集めたあの女も、「デスゲーム」と、狂った殺し合いだと称していた。
 ただの一人しか生き残る事を許さない、狂った殺し合いだと称していた。

 なれば、なれば、臆病者の、無能なシェルビー・M・ペンウッドはどうするのか?
 決まっている。決まりきっているとも。

 あの場には、一切の抵抗を否定され、殺された非力な少女が居た。あの場には、年端も行かない子供達が集められていた。ペンウッドはそれを見ていた。見てしまった。
 子供は幼く、どうしようもなく無力だ。あの場に集められた子供達だって本来なら家族と、友達と、恋人と笑いあっている筈だろう。
 それを、そんな子供達を、あの場に集めて、あんな場所に閉じ込めて、恐怖を以て、殺人を以て、殺し合え、生き延びたければ、殺し合えと——そう言った。
 あの女は、プレシアと呼ばれたあの女は、確かにそう言った。

 シェルビー・M・ペンウッドは無能で、臆病者な、ちっぽけな男だ。自分ではコンソールひとつ動かせない、家柄で生きてきたも同然のちっぽけな男だ。
 しかし、彼は——シェルビー・M・ペンウッドは男の中の男だった。



「た、確かにわたしは無能で、臆病者だ。でも、私は……卑怯者ではない。わ、私は……こんな殺し合いには乗らない。
 そんな頼み事は、どんな理由だって……聞けないね!」
 思い胸に、思い言葉に、シェルビー・M・ペンウッドは、断固とした決意を口にした。

 それより数十秒、ペンウッドは立ち尽くしていた。
 別に、すべきことが分からずに、何もしなかったわけではない。
「な、何も起きない……のか?」
 起きるであろう何かを待っていただけだった。
 そう、起きるであろう何か——即ち、首輪の爆発を待っていたのだ。
 最初に集められた場で、あのプレシアは、「アリサ」と呼ばれた少女を爆殺した。
 理由は明らか——「口答えをした」からだろう。
 あの少女は、無惨に殺されたあの少女は、恐らく全く以て普通の少女であろう。
 吸血鬼でも、王立騎士団でも、法皇庁でも、軍人でも、魔導師でもないただの少女であろう。
 そんな、そんなただの——ただの無力な少女を、口答え……『言葉で刃向かった』という理由だけで惨殺した。

 それなのだ。あの女……プレシアはそういう女なのだ。
 憤った無力な少女を殺す、そんな女なのだ。

 あの場で誰よりもしっかりと、誰よりもはっきりと、女へと立ち向かった少女を——勇気ある、無力な少女を見殺しにした。
 突然のことで混乱したとか、締め付けられて臆病になったとか、そんな理由で見殺しにした。
 それが、ペンウッドには何よりも許せなかった。
 自分が、或いは自分が女に拒絶を告げれば良かった。
 無能な、どうしようもなく臆病者の自分が代わりになってやれば良かった。代わりになれれば良かった。
 では何故なれなかった? ——それは、臆病者だからだ。
「待て、やるならわたしをやれ」と、映画の中の英雄か、それでなくとも言ってやれば良かった。言い放てれば良かった。
 しかし、だかしかしそれを口には出来なかった。
 自分は無能で臆病者だが、卑怯者ではない。——それは嘘だ。
 卑怯者だ。しようのないほどの御し難い卑怯者だ。
 勇気ある少女を見殺し、路傍の石に変えたのは、紛れもなく自分シェルビー・M・ペンウッドだ。




 代わってあげられれば良かった。今からでも代わりたかった。
 叶わぬなら。今後、この場で人を裏切り、屠り、生き血を啜り生き残るくらいならば、自害したかった。
 いや、するつもりだった。
 どうせ死ぬのならば、自分の他二十四時間誰も死ぬことがないように、そうやって死にたかった。
 だから、口にした。少女の、自分の、意志を、決意を。
 だが、だが現実に、実際にはシェルビー・M・ペンウッドは死なず、こうして震えを抑えられずに生きながらえている。
 刃向かえば、意を反せば殺すのではなかったのか? ——しかし、ペンウッドは生きている。
 この事は重要な事だが、差して喜ばしい事ではない。
 だが、多少の言動では……『この場に於いては』殺さない、という事なのだろうか。
 いや、そもそもに……。

「こ、この場での、行動は……分かる、のか?」
 あの女は、プレシアは、こちらを知覚しうる手段を以ているのか?
 あの女は魔法が使える。魔法使いだ。魔導師だ。ペンウッドだって魔導師は知っている。どころか、今は共に戦っている。

 だから、彼らの『艦』でやっているように、遠く離れた場所を見られる事を知っている。
 しかし、幾つだ? それは幾つになる? 
 ここに集められた人間(言わば、“参加者”)の人数分、二十四時間、或いはそれ以上。そんなものを、ひとりで確認しきれるのか?
 不可能だ。ならば、間違いなく『協力者』とやらは存在するだろう。
 だが、何人だ? 何人こんな『いかれた殺し合い』に加担する? 加担はするが参加せず、この『いかれた殺し合いの観戦に止まる』?
 百人か? 二百人か? そんなに居るわけがない。いる筈がない。
 そうならば、監視の目は不自由。だから今、シェルビー・M・ペンウッドは爆殺されなかった。
 或いは、「貴様のような無能で臆病者の男には何も出来んよ」と、そう言っているのだろうか?
 ならば、ならばその考えを崩してやろう。それが叶わぬとも、誰かの助けになろう。
 それが、シェルビー・M・ペンウッドに託された、「アリサ」という少女からの、仕事なのだ。

 そう決意し、立ち上がったペンウッドの耳に、叫び声と銃声が飛び込んで来るのだった。




【一日目 深夜】
【現在地 E‐2】
【シェルビー・M・ペンウッド@NANOSING】
【状態】健康
【装備】なし
【道具】支給品一式、ランダム支給品(未確認1〜3個)
【思考】
基本:自らの仕事を果たす
1.この悲鳴をどうするか
2.殺し合いに乗るつもりはない

【備考】
※少なくとも第四話以降の参戦です
※プレシアは何らかの方法(魔法含む)で自分達、『参加者』の監視をしている。
 しかし、それがあまり正確ではないと考察しました






 世界はいつも『こんなはずじゃない事』ことばかりだ。

 もし、その喉で叫びをあげていなければ、柊かがみは、そんな風な事を口にしているだろう。
 悪夢のような場所にいる——『こんなはずじゃない事』。
 人が目の前で殺された——『こんなはずじゃない事』。
 人を撃ってしまった——『こんなはずじゃない事』。
 こんな筈じゃなかった。撃つつもりなんてなかった。そう、声を大にして訴えたかった。
 すまない。と、撃ってしまってすまないと、直ぐにでも謝罪と手当てをして上げたかった。
 いや、して『上げたかった』などという傲慢ではない。直ぐにでも謝罪と手当てをさせて欲しかった。したかった。
 しかし、思いに反して、かがみの体は動かない。
 或いは——罪を認める事を、体が拒否しているのか。
 罪……自分を気にかけた少年を“射殺した”事。
 射殺した……そう、殺、した。命を……未来を奪ったのだ。
 自分をこんな場所に一人置いてはいけない——そう言った少年。
 優しいだろう。強いだろう。そんな少年の未来を、これからを奪った。

 きっとまだまだ出会ってない人や、やりたいこと、友達……いっぱいあっただろう。
 それら全てを、この手で奪ったのだ。柊かがみの、この手で。

「ごめんなさい」
 気が付けば、口から謝罪の言葉が出ていた。
「ごめんなさい」
 謝って、許されるなんて甘い考えは持ってない。
「ごめんなさい」
 しかし、それでも言わずにはいられなかった。
「ごめんなさい」
 謝らずにはいられなかった。
「ごめんなさい」
 許して貰うつもりはなかった、
「ごめんなさい」
 ただただ、謝る事しか出来なかった。
「ごめんなさい」
 謝罪の言葉を口にしていく内に、
「ごめんなさい」
 かがみはある考えに至った。
「ごめんなさい」
 それは些か都合のいい考えかもしれない。
「ごめんなさい」
 ただの逃げに他ならないかもしれない。
「ごめんなさい」
 それでも、かがみにはもう耐えられなかった。
「ごめんなさい」
 自分が今、生きている事に。

 右手を持ち上げ、米噛と垂直にした。鈍く光るプラスティックの拳銃とは、平行。
 指を引き込む。カチリと、トリガーセーフティが解除された。

「ごめんなさい」




「謝る必要なんか……ないッ!」
 少年の体が、持ち上がった。引き金を弾く、一瞬前だった。
「僕は……大丈夫です! だから……」
 血溜まりから体を起こすエリオの顔色は悪い。当然だ。致命傷にならずとも、至近距離で銃撃を受けたのだ。
 それに死には遠い量だが、体からは相当量の出血をしているし、着弾によるショックで気絶していた頭は、こんなに早くの復帰には些か耐え難いだろう。
 だがしかし、エリオの瞳に宿る力強き炎は、それを良しとしない。

「だから、あなたは……泣かないで、泣かないで下さい!」
「え……っ!」
 手を伸ばし、目尻に触れる。
 言われて、かがみは初めて気が付いた。自分の頬を伝わる涙に。
 そうしている間に、エリオが一歩踏み出した。
「辛かったんですよね。苦しかったんですよね」
「来な……」
 かがみの声が音を成すより先に、エリオの言葉が形を成す。
「あなたの苦しみ全部を、僕がわかることは出来ません。それでも、この場には僕がいて、あなたがいる。分け合う事は出来ます」
「え……」
「だから、分け合いましょう。その苦しみを、悲しみを」
 既にエリオとかがみの距離は埋まった。
「僕の名前はエリオ、エリオ・モンディアル。そこから、始めましょう」
「ひ……う、ううっ……」
 銃がかがみの手から滑り落ち、音を立てる。
 ——許してくれるんだ。許されていいんだ。
 かがみは、エリオの手を取り、泣いた。

       ◇  ◆  ◇

「その、エリオ……ありがと」
 赤らめた目尻を拭いながら、頬を紅潮させるかがみ。その言葉は、緊張からの解放感からか、はたまたエリオへの安心からか。
「いえ、僕は……グッ」
「エリオッ!」
 膝を付いたエリオの胸には暗赤——即ち、出血痕。
「大丈夫……ちょっと吃驚しただけです。もう、大した痛みは……ありません」
「でも……」
 改めて、自分のやった事を恐ろしく思った。許されてはいけない、そうも感じる。
 そんな様子を見越してか、エリオは優しくかがみの手を握った。
「この位、大丈夫です」
「でも……」
「きっと、大事な血管や臓器は無事です。ほら、もう血も殆ど止まってますから」
「そう……だけど」




 そうは言っても、あの出血量だ。手放しではいられない。何か——せめて手当て位は、しないと。
「ちょっと、待ってて……あ」
 振り向いた足が蹴りつけたもの——銃が地面を滑った。
 忌まわしき、銃。エリオをこんな風にした、原因。自分が使った。
「あ……あ…………」
「——僕が持ちます!」
「え?」
「大丈夫、僕が持ちます」
 落ち着ける為だけに言った訳ではない。この場に居るなら、どこかで、いつか、使わなければならなくなるものだ。
 それはエリオだって重々承知している。
 それでも、“持つ”——“使う”とは言えないのは覚悟が足りないが故か。

「え……あ、うん」
 エリオを言葉を受け、一先ずデイパックへと向かう。と、もう一つ何かを落としていた事を思い出した。
 案の定、デイパックのそばに墜ちている紫のそれをとりあえずスカートのポケットへと押し込め、デイパックを開く。
「えっと……」
 漁ってみるも、かがみの望むような医療品は有りそうもない。
 ——どこかに、病院があれば手当てして上げられるかな。
 地図を広げようとして、かがみは気づいた。細かい事だが大事なことだ。まだ、名前を教えていなかった。

「そう言えば、私の名前をまだ言ってなかったわよね。私の名前は柊——」
 “かがみ”……その言葉が、エリオに届く事はなかった。

「なッ……うわああああああ」
 エリオ・モンディアルだった体の一部……その血溜まりから湧き現れた紫色の怪物は、目と鼻の先の人間——エリオ・モンディアルに襲いかかった。
 怪物……それこそは鏡の世界『ミラーワールド』に生息するミラーモンスター。
 ベノスネーカー——仮面ライダー王蛇の契約モンスター——はエリオの作った血溜まりの鏡面から出現、その眼前にいる、エリオを「餌」と認識、襲いかかった。
 それがカードデッキの主、柊かがみの望むものでないのだが——最早、ベノスネーカーには関係ない。それ程までに、飢えていた。
 突然の襲撃に、不意をつかれ為す術もないエリオは無惨にもミラーワールドに引き込まれ、そのまま咀嚼——文字通り無“残”な最後を遂げる。

 急な事態に声も上げられず、茫然とする内に目の前で自分を許してくれた少年——エリオが飲まれていくのを見ていたかがみ。




 何があったのか、何が起きたのか……それすら分からず、逃げるようにその場を飛び出した。
 かがみに分かる事はただ一つ、
「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい」
 自分は、決して許されてはいない——いけないのだ、と。


【エリオ・モンディアル@デジモン・ザ・リリカルS&F 死亡】
【残り人数:59人】

【一日目 深夜】
【現在地 E‐2南部/路上】
【柊かがみ@なの☆すた】
【状態】健康、極度の精神不安定
【装備】王蛇のカードデッキ@仮面ライダーリリカル龍騎
【道具】なし
【思考】
1.ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい

【備考】
※なの☆すた第一話からの参戦です。
※柊かがみのデイパック(支給品一式、ランダム支給品0〜1)はE-2に放置されています
※柊かがみのランダム支給品、グロック19(15/15+1発)@リリカル・パニックはE-2に放置されています
※エリオ・モンディアルのデイパック(支給品一式、ランダム支給品1〜3)はE-2に放置されています



Back:駆け抜ける不協和音 時系列順で読む Next:悪魔とテロリスト
Back:駆け抜ける不協和音 投下順で読む Next:特別捜査、開始
GAME START シェルビー・M・ペンウッド Next:残る命、散った命(前編)
GAME START 柊かがみ Next:残る命、散った命(前編)
GAME START エリオ・モンディアル GAME OVER






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