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不思議な出会いⅡ ◆Qpd0JbP8YI




デュエルアカデミアの裏手にある路地の奥まった所で、
淡い緑色をした光が突如として空間に描き出され、そして消えていった。

「転移魔法もダメか」

落胆ともいえる声を発した主は無限書庫司書長ユーノ・スクライアだった。
彼はこの場所に転送されて以来、念話を始めとした幾つかの魔法を試していたが、
そのいずれも芳しい結果を迎えていなかった。
その連綿とした事実にユーノの心に次第にやるせなさが募っていった。
だけど、彼にはそれで挫けることが出来るだけの時間と心の余裕もなかった。
彼の内にいる高町なのはは決して笑顔を見せることなく佇んでいたのだから。
その悲しい様は先の出来事を思い浮かべれば当然の事だった。

一刻も早くなのはに会いたい。
何にも増して、その思いは焦燥となって彼の胸を焼いた。
彼女は親友であるアリサを目の前で殺されたのだ。
それでどうして彼女が大丈夫などと言えよう。
確かに彼女は強い。何かを失うということでは決して歩みを止めることはないだろう。
恐らくは今も彼女はアリサの死を胸にしまいこみ、次の犠牲者を出すまいと奔放しているはずだ。
そうして自分に襲い掛かる悲しみや怒りを無視して、自分の身体を無理につき動かしている。
なまじ責任感が人一倍強く、そして誰よりも人の悲しみに敏感な人間なだけに、
彼女は自分の本当の気持ちを無視して、他人の為に無理をしてしまう。
誰よりも近くにいたユーノはその事を知っていた。
だけど、同時にそれが生み出す結果を彼は知っていた。

「違う、それじゃダメなんだよ、なのは」

ユーノの脳裏に思い浮かぶのは度重なる無理によって生じた撃墜事故だった。
彼女はそれによって、後の人生に支障をきたしかねない重大な怪我を負った。
結果的に大事に至らなかったが、だからといってまた無理をしていいという話ではない。
確かに人を救うという行為は高尚なものだ。そこには人として尊ぶべきものがある。
だけど、それによって当の本人が救われないようでは話にならない。本末転倒というものだ。
死んだアリサだってなのはが無理をして、取り返しのつかないことになったら悲しむし
何より生きているみんなだってそんな姿を見たくない。
彼女はいつもそういった大事なことを忘れていた。

「何でも一人で背負うものじゃないんだよ、なのは。一緒に背負っていこう。
どんなに辛いことだって、悲しい事だって、一人より二人の方が楽だ」

意識せずに自然と漏れた言葉だった。
だけど、そこには彼の思いに満ちたものがあった。
その思いがどんな言葉に所以されるかは彼自身正確なところを図りかねていたが
彼女の支えになってやりたいという彼の気持ちは誰に負けることなく存在していた。
それに大切な友人が死んだという事実は、ただ耐えてばかりいれいいというものではない。
鬱積した感情はやがては自分の精神を蝕み、身体に変調をきたしてしまう。
死は悲しいことであるし、それは泣いてもいいことなのだ。

《だから、僕がなのはが泣いていられる時間を作ってあげる。
僕がなのはの側にいて、なのはの周りの人を助けてあげる。
そうすれば僅かな時間にしろ、自分の気持ちと向き合えれるはすだ》

ユーノはその言葉と共に決意を固めた。
そして、ユーノは心の内に積もったやるせなさを払拭し、
自分の意志を貫くべく再び魔法を発動。
だけど、ユーノの決意とは裏腹に願いは聞き届けられることはなかった。
思わず壁を叩きつける。
御大層な決意を掲げながらも、結果は相変わらずだ。
プレシアに対してより、大切な人の為に何も出来ない無様な自分に怒りが湧いた。
だが、このままあがいていても現状を打開を出来ない。
無力感に打ちひしがれながらも、ユーノは何とか冷静になろうと努めた。
そしてユーノはゆっくりと息を落ち着けて、この状況について考えまとめ始めた。

魔法が発動しない、魔法を発動させない、ということを考えて
彼の頭に真っ先に思い浮かんだのはジャミングだった。
本来ならジャミングは通信や探知魔法を阻害するもので
その他の魔法の発動を邪魔をするものではないが
現状を省みるにあらゆる魔法に対して妨害がなされていると考えてよい。
無論、全ての魔法自体が発動出来ないわけではないが
どうしても魔力の働きに困難が生じてしまう。
やはり魔法に対して無差別にジャミングがかけられているのだろう。

では、どこからジャミングをかけているか。
それに対して思いついた答えが、この空間を構築しているであろう結界だった。
普通なら魔導師本人がジャミングをかけるものだが、
結界の外からそれをするのは結界に阻まれて無理というものだろう。
また結果内にひっそりと隠れて、プレシア本人がジャミングを発しているというのもいかにも馬鹿げたものだった。
殺し合いを強要する人間が参加者と同じフィールドに立っているなど狂っているとしかいいようがない。
参加者にに見つかったら、間違いないく彼女にとっていい結果にはならないのだから。
恐らくは結界の術式に魔法の発動を阻害するプログラムを組み込み、結界を構築したのだろう。
だけど、ここまで巨大な結界を更に複雑なものとして維持するのには莫大な魔力が必要だ。
ただでさえ時空管理局の捜査から免れるために探知防壁を使い、また他者の参入を防ぐための封時結界
参加者の逃亡を防ぐための強装結界を複合的に用いていると思われるだから、
消費する魔力などは考えただけで頭が痛くなるものだ。
それを幾らあのプレシア――本物かどうか疑わしいところもあるが――とはいえ、
一人によってまかなっていると思えなかった。
魔力炉を用いているという考えもあるが、そんな巨大なものを管理局から隠し通せるとは思えないし、
また隠すにしても、新たな魔力炉を用いた強固な結界が必要となってくるだろう。
ロストロギアによって魔力を補完している可能性もあるが、
それこそ魔力炉よりも、その反応を隠し通すことは難しいし、
ロストロギアは常に暴走という危険性を孕んでいる以上、
このようないつ終わるとも知れないゲームで長時間使用するのは余り考えられない。
よって、その線も薄いだろう。
だとしたら、結界以外による手段によってジャミングをしていることになる。
そうしてしばらく思案して、ユーノはゆっくりと自分の首に巻きつけられている首輪を摩った。
結界以外にプレシアが現段階で参加者に干渉しているものは首輪しかない。
恐らく首輪にジャミングに関する機械装置が取り付けられているのだろう。
その方が魔力消費の観点からいっても妥当なことだった。
そしてそれはユーノにとって喜ぶべきものだった。
何故なら彼は首輪を外せるかもしれない方法を一つ知っていたのだから。

それは変身魔法。

己が身を小さくし、小さな動物へと姿を変えれば、
人間である状態で巻かれた首輪は自然と外れることになるだろう。
無論、変身魔法を発動しないという可能性もあるが、ここで試してみない理由もない。
ユーノは逸る気持ちを抑えながら変身魔法を唱えた。
幾らか魔力の流れに滞りを感じたが、無事にそれは発動。
見る見るうちに彼の身体は小さくなり、愛らしいフェレットへと姿を変えていった。
だが変身した後も、その結果とは裏腹に彼の顔は喜びに染め上げられることはなかった。
何故ならフェレットとなったその姿にもしっかりと首輪は巻きついていたのだから。
しばし茫然としながらがも、彼はこの事実に対する考えをまとめた。

「そういえば服を着ていても、それが元のままってわけじゃなかったしね」

自分が過去に行った変身魔法を思い出し、
その時身に付けていた衣服がどうなったかを思い返してみて、ユーノは納得をした。
俄かに現れた首輪を外せる、なのはに会えるという明るい未来ばかりに目を向けていて
肝心なところで盲目でいた。
ユーノは自分の浅慮に消沈した。
だが、先も述べたようにユーノはここで挫けることなど出来なかった。
魔法の行使が失敗するのならば、次は自分の足で彼女を探すだけだ。
バッグの中から地図を取り出し、なのはが行きそうなところを考える。
だけど彼女が明確な目的場所を定め、そこへ向かうところがユーノには想像できなかった。
確かに地図上には、なのはが行きそうなところがたくさんあった。
アリサとの想い出がある学校、家族との安寧がある翠屋。
傷心しているなのはは自然とそういった場所を求めるかもしれない。
また管理局の建物と思われる地上本部に行って、仲間との合流を図ろうとする可能性もあったし、
将来設立を考えていると言っていた機動六課の建物に疑問を持ち、それを調べようとする可能性もあった。
そして怪我人がいるであろう病院へ向かい、その人たちを守るという選択肢も彼女にはあるだろう。
それ以外にも無限書庫司書長である自分と関連がありそうな図書館へ足を向けてくれるかもしれない。
だが、ユーノは一通りの答えを思い浮かべてから、溜息を漏らした。
そのどれもが正解である可能性を秘めながらも、答えとして明瞭なものは何一つなかったからだ。
どこへ向かっていようと、彼女の目の前の戦闘が起きれば、
彼女は何を投げ打ってもその戦いを止めにはいるだろう。
常に他人を第一に考える彼女の性格だから、それは当然だ。
そしてそんな彼女だから、自然と自分の目的地も疎かになってしまう。
それ故に彼女の視点に立って彼女の行き先を考えるというのは、この場合では余り得策なことではなかった。
だが彼女が争いを止めるべく頑張るとすれば、戦闘が頻発しそうな場所に赴けば、彼女と会える確率は増すだろう。
それは自分の身を危険に晒す行為であるが、なのはの為を思えば、そんな事は問題ではない。
とはいえ、疑問も残る。
このような状況で誰もが危険と思うようなところに足を向ける人はいるだろうかということだ。
戦える力があるにせよ、ないにせよ、後方支援もままならず、
ろくに休息ができないであろうこの場所で長く生き残るには、
出来るだけ消耗を抑えるのが得策だ。
恐らく戦いに慣れている人たちや性格に状況を判断を出来る人たちの活動は消極的になるだろう。
そういった中で戦闘が起きそうな場所を特定するのは難しい。
だが、全く戦いをしないというのでは
ゲームに反旗を翻すものに結束するだけの時間的余裕を与えてしまう。
そうなってしまってはゲームに乗ったものにとって、余り良い結果にはならない。
故に全く戦闘が起きないという可能性もなかった。
しかし、だからといって戦闘がどこで起こるかというのも
今のユーノには分からなかった。

なのはの支えになってやりたい。
そんな思いを叶えられない現実を惨めに思い、彼はまた一つ溜息を漏らした。
そうして自分の不甲斐なさに頭を抱え込んでいると、彼の耳にふと水の流れる音が聞こえてきた。
どうやら今まで考え事に夢中で気づかなかったらしい。
地図を改めて見て見ると、川が記載されてあることに気がついた。
なのはを見つけるための手段と目的地が判然としない今はせめて地図に書かれていることが
本当かどうか確かめてみることが目的のための有意な第一歩かもしれない。
そう思ったユーノは、川の流れる音がする方に足を向けることにした。

そうして歩き出そうとして、すぐに彼は人の気配があることに気づいた。
ユーノは足を止めて、慎重に辺りを窺った。
すると、まるで自分の存在を示すかのように物音が川の方から続いた。
間違いなく人がいる。ユーノは矢庭に緊張した。
向こうにはゲームに乗った人がいるかもしれないのだ。
戦闘補助を得意とする彼にとって、真正面から敵と対峙するのは危険だ。
ここは大人しく逃げた方がいいのかもしれない。

だけど、ユーノは首を振って、その考えを追い払った。
向こうにいるのが、なのはだという可能性もあるのだ。
もしそうであったらなら、みすみす彼女に会えるというチャンスを逃してしまい、
彼女のためにと掲げた決意と違えることになってしまう。
危険があるとはいえ、やはり確認しに行くべきなのだろう。
ユーノは荷物を置き、気づかれぬようにとフェレットの姿のまま、
急ぎながらも忍び足で向かっていった。
やがて川の流れがはっきりと聞こえるようになり、
彼の目にもその様が見れるのではないかというところで
突如として彼の思考は驚きの声と共に真っ白に染め上げられた。

「いっ!?」

この殺し合いという状況の中で、いきなり声を上げて自らの居場所を知らせるといのは愚かな行為だ。
挙句、何故か彼は自分の手で自ら目を塞ぐというの行動に出たのだからそれは尚更だった。
だけど、それはある意味しょうがないことだったのかもしれない。
何故なら彼の目に映ったのは、僅か10歳ばかりのあられもない少女の裸だったのだから。

余りに予想外の光景にユーノは思考を奪われ、呆然となった。
人の死を連想させるはずの陰鬱なこの場で、
それとは全く関係ない場面と遭遇してしまったのだから、それも当然といえるだろう。
だけど、彼も幾つもの戦闘を経験してきた魔導師であり、また幼いなのはを常から見守ってきた優しい人間だ。
すぐさま意識を取り戻し、彼女が自分に危険な行為に及ばないように、
そしてこの場で裸という無防備な女の子から目を離す危険性を考慮して、
しっかりと指の間に隙間を作り、その間から彼女が安全かどうかを彼は見守ることにした。

女の子はそんなユーノの思惑など知る由もなく、彼の存在に気がつくと
何の警戒もなしに裸のまま無言で彼の方に歩いてきた。
殺し合いという状況の中での他の参加者へ恐怖のせいだろうか、
それともユーノの心の内のどこかに後ろめたさがあったせいがろうか
彼はそんな彼女を見て、思わず逃げだしたい気持ちに駆られた。
しかしここで逃げたら、本当に覗きにきただけと誤解されるのではないだろうか。
自らの命の危険より、そんな事態を恐れて、彼は二の足を踏んでいた。
そしてその動揺が隙となり、何をする間もなく裸体の女の子にがっちりと
ユーノはその身体を掴まれることになった。

異様な緊張がユーノの身体を覆った。
これから自分は糾弾されるのだろうか。
未来の無様な自分の姿が思い浮かべられたが、
一向に彼女はそれらしい行動を起こすことはなかった。
その様子を見てユーノは安心すると同時に彼女がゲーム消極的であると判断した。
そしてユーノは彼女が裸であることから、何かしらの戦闘に巻き込まれたのでは危惧し
彼女の身体に傷がないか丹念に観察をすることにした。

藤色の長く伸びた髪が目に付いた。
そしてそれは調和するかのように真っ白な肢体の上に添えられていた。
僅かに膨らみ始めた胸は、しとやかに女性であることを主張し
何故か水に濡れ、肌に一段と瑞々しさを加えていたその身体は
少女という年齢には不似合いは艶かしさを持っていた。
月の光が優しく彼女に降り注いでいた。
その光を受けて、彼女の白い肌は蒼く写し出され、身体に散りばめられた水滴は
まるで宝石のように月の光を反射させ、輝いていた。
何とも綺麗な身体だった。
夜であるはずなのに、その肌は傷一つなく、しっとりとなめらかに存在していることを
ユーノにはっきっりと知らせていた。

喉をゴクリと鳴らせながら、ユーノは検分を終えた。
彼女が傷を負うことなく、綺麗なことでいるのに彼は満足感を覚えた。
そして心優しい彼は念のために彼女の容態を窺おうと顔を上げて、
彼の目は少女の感情の灯さない瞳とぶつかった。
その瞬間、音のない時間が流れた。
そしてそこにトリルのように少女のユーノを冷たく見据える目が添えられた。
その冷酷な視線はユーノの心の内にあった女の子の裸を見てしまったという事実を
罪悪感として加速度的に膨れ上がらせ、苛烈な勢いをもって彼を咎め始めた。
そして尚も遠慮なくもたらされる彼女の侮蔑ともとれる視線に耐えかねたユーノは慌てて弁解を始めた。

「い、いや、違うんだ。僕は決してそんなつもりで見ていたわけじゃなくて、
ただこんなところで女の子が裸でいるだなんて、危ないなって思って、
だからそんなやましい思いで、君を見ていたわけじゃなくて、
ただ純粋に君の事を心配して……いや、そうじゃなく、物音がしたから
何だろうと思って来てみたら、君が裸でいて……本当だよ!
本当にそんなつもりじゃなかったんだ!」

その言葉を聞いても、彼女からは何も反応がなかった。
ただ黙ってユーノを見つめるだけ。
それはまるでお前は変態だと烙印を押しているような仮借ないものだった。

「あはは……は」

逼迫した状況に耐えかねたユーノは取り合えず笑ってみた。
笑顔は人に良い印象を与えるといういつか読んだ本の記憶を元にユーノはそれを忠実に実行。
それでもって彼は自分に与えられたであろう不当な印象を拭おうとした。
だけど、残念ながら彼女の様子には、それに呼応したような変化の兆しは見られなかった。
こういう場合では幾ら事故とはいえ、謝ったほうがいいのだろうか。
ユーノにそういった考えがちらついた頃、ようやく女の子は口を開いてくれた。

「あなたも参加者なの?」

ユーノの首に巻きつけられた首輪を見ながら女の子は訊ねた。
ユーノは思っていた展開と違うことに、安堵を覚えた。
それこそユーノは自分は変態だと罵られ、蛇蝎の如く弾劾されるものかと思っていた。
だけど、実際には彼は不当な裁判を免れ、告訴されることなく勝利を得たのだ。
それには当初こそ呆けてしまったものの、やがて目の当たりに事実に気がつくと
彼はに言いようのない喜び感じ取った。

「え、うん!そうだよ!……君もだよね?」

喜びのせいだろうかか、デスゲームの最中だというのに、彼の言葉は随分と弾んだものだった。
少女はそんな調子外れともいえるユーノの質問に対して僅かに頷くだけで答えた。

「名前は何ていうの?」

ユーノは軽快に質問を重ねる。

「ルーテシア・アルピーノ……あなたは?」
「僕はユーノ。ユーノ・スクライア」

名前を聞き終えると、ルーテシアは何故かユーノを地面に下ろし、荷物のところへと向かっていった。
彼女は何をしたかったのだろうか。
彼女のいきなりの行動に疑問を感じたが、彼女がそこで服を着始めたのでユーノは納得した。
折角、ゲームに乗っていないであろう参加者に会えたのに、名前だけの情報交換では幾らか寂しいものがある。
置き去りにされたユーノは慌てて彼女の後を追いかけていった。
そして彼女のところまで追いすがると、ユーノは一番に疑問に思ったことを訊ねた。

「ねえ、その、何で裸なの?」
「……川に落ちた」
「どうして?」
「川の上に転送された」

淡々とユーノの質問に答えながら、彼女はバッグの中から取り出した服を着ていった。
だけどその様子を見ていたユーノはまた次第に顔を赤く染めていった。

「な、何でそんな格好を?」
「バッグの中に入ってた。これしか他に服がない」

服を着終えた彼女はバニーガールの格好でユーノと向き合っていた。
ご丁寧にウサギの耳まで頭に取り付け、それを僅かに揺らせながら佇む彼女の姿は
その小さな身体もあいまってか、思わず愛玩してしまいたくなるような可愛さがあった。
愛らしいその姿はユーノの心にも幾らかの動揺を与えたが、
彼は必死に大人としての矜持を揺り起こし、その衝動に耐え抜いた。
そして彼女を戒めるべく、一人の大人としての意見を彼女に与えることにした。

「ねぇ、ルーテシア。その、人前で女の子が着替えたり、裸でいたりしちゃダメだよ」
「どうして?」
「だって僕は……」

だって僕は男だよ。
ルーテシアの何の他意もない疑問に、そんな答えを心の中で思い浮かべ、
思わず口から出して、彼女に注意を与えてしまいたくなったのを彼は何とか我慢した。
こんな状況でどうしてそんなことが彼女に言えようか。
自分が人間であることを隠し、わざわざ動物の姿に変身して裸の女の子に忍び寄る。
それは自分が変態であると自ら彼女に告げるようなものだった。
それでは折角、無罪を勝ち取ったのに、再び裁判を受けることになってしまう。
もうユーノは被告人席に立ち、彼女の裁判官のような冷酷な目を受けるのは嫌だった。
とはいえ、このまま人であることを押し隠し、動物のままでいるのも
自分が変態であると自ら言外に認めているような気がして、愉快な気分ではいられなかった。
一体、僕はどうするべきなのだろうか。
自分が人間であると告げるべきか、告げざるべきか。
二つの答えを前に今までにないほどの激しい葛藤を心の中で続け、
今までにないほどの並列思考を重ねに重ね
ユーノはようやく彼女に向けて自らの在り方を示した。

「だって僕は…………オスだよ」

ユーノは人の尊厳を捨て、全てを隠し通すことにした。
確かに動物という擬態を続けるのは、これからのルーテシアとのやり取りや
他の参加者との接触の際に情報の齟齬を招き、困難な状況を引き起こしてしまうかもしれない。
そして何よりも年端もいかない少女に対して欺瞞を続ける自分のことを情けなく感じた。
だけどそれでもユーノにとっては、少女から変態と罵られるよりも遥かにマシに思えた。
肝心のルーテシアはこの言葉をどう取ってくれるだろうか。
嘘がばれたのではないかという不安と
自分の言葉を信じてくれたのではないかという期待をない交ぜにした瞳で
ユーノはルーテシアの双眸を見つめた。
だけど、ユーノの言葉、瞳には彼女は何の感慨も示さず
二人の間にはただ沈黙が流れるだけであった。
ひょっとしてばれているのだろう。
絶え間ない沈黙は、ユーノの心にのしかかり、最悪な結果をユーノに予想させた。
もしそうであったら、自分は変態の上に卑怯者の烙印を押されてしまう。
そんな沈黙が与えるプレッシャーにユーノは押し潰され、
もう一杯一杯になった彼は目の前の問題から逃げ去ることにした。
即ち、話題転換である。

「ほ……他にバッグの中には何が入っていたの?」

随分と強引な話の振り方だとユーノも自覚できたが、
それでもあの空気の中にいるよりも、居心地はマシになった。
ルーテシアはというと、ユーノの質問に口で答えることなく、
実際にバッグの中に手を入れることで答えを示していった。
地図に食料、ランタン、名簿を一つずつ取り出していき、
丁寧にユーノの前に並べたてた。
そして水色の水晶をかたどったようなデバイスが現れた。

「名簿に……デバイス?」

そういえば自分の荷物を地図以外に確認していなかったな、と
自分の迂闊を呪いながらも彼女の支給品である名簿とデバイスが、
どんなものであるかを訊ねようとしたところで、
彼の頭はまた別な感情に塗り替えられた。

「ジュエルシード!?」

ルーテシアが最後に取り出しのは蒼い宝石。それは間違いなくジュエルシードだった。
なのはと出会うきっかけとなったもの、なのはとの想い出を綴ってくれたもの。
それには温かい思いでも含まれていたが、
同時にPT事件という悲しく、忌まわしい出来事を起こしたものであった。

「ジュエルシード?」

ルーテシアは無垢な声で質問をした。

「うん、ジュエルシード。次元干渉型のエネルギー結晶体。
僕が発掘したロストロギアだよ」

彼はそう言いながら、近くでジュエルシードを観察した。

「間違いない。ジュエルシードだ。封印処理はされているみたいだけど……」

封印処理されているとはいえ、ユーノには懸念があった。
殺し合いというこの状況。
ジュエルシードをもって戦闘に陥れば、それをきっかけとして封印が解けてしまう可能性がある。
そうすればそれを手に持つ者を取り込んで、いつぞやのように暴走してしまうし、
下手をすれば次元断層を引き起こし、その場にいる者を虚数空間に放り込んでしまう。
ジュエルシードの回収に従事していた彼は誰よりもその危険性を知っていた。

ジュエルシードが支給品として配られたのなら、ルーテシアの他にも配られたものがいるかもしれない。
もしそうなら発掘者として回収する義務があるだろう。
そして暴走を防ぐためにも、それによる被害者を出さないためにも
回収を急がなければならない。
だけど、ルーテシアのこともある。
ジュエルシードは危険なものだ。
当然、回収する立場にあるものにもそれが及ぶ。
なのはの時は、自分が怪我をしてしまい、止む無く彼女に助けを求めてしまったが
今回はそのような状態にはない。
当然、一人で行うべきなのだろう。
しかし、彼女をこの場で一人放っておくというのも躊躇ってしまうことであった。
実際に先ほどの会場でアリサが殺されたのだ。
死という存在はこの場所では、いつもよりも近くにある。
そんな所に女の子一人を捨て置いていくことなど出来はしない。
確かにジュエルシードの回収は危険を伴うが
それでも自分が近くにいれば、幾らかは彼女を守ってやることが出来るし
その方が殺し合いという場で一人でいるよりも安全ではないかと思えた。

勿論、なのはのことは依然として心配であった。
ここに来てから、真っ先に思い浮かんだのが彼女のことだ。
彼女の支えになってやるという決意は、今も確かな形で彼の中にある。
だけど、それでもルーテシアを放っておくことなど出来なかった。
ここで彼女を蔑ろにし、ジュエルシードを無視して、なのはのためにと銘を打って行動をしても
それは結局余計に彼女に心配と悲しみの重りを加えるだけになってしまう。
高町なのはは誰かの犠牲に上に自分が助かることは望んでいない。
だからこそ、今は自分に出来ることをしなければならないのだ。

《ごめんね、なのは。必ず君のところに行く。だから、ほんの少しだけ待っていて》

ユーノは心の中でなのに断りを入れると、ルーテシアに目を向けた。
思い出すのはなのはと出会った時のこと。
あの時もジュエルシードによって、彼女との絆が生まれた。
これもなのはの時のように自分にとって大切な出会いの一つなのだろうか。
心のどこからか湧き上がる思いを胸にユーノは彼女に訊ねた。

「ジュエルシードの回収、手伝ってくれませんか?」

また流れる沈黙。
彼女はほんの少し考え、その質問に答えてくれた。

「うん、別にいいよ。ユーノのこと、嫌いじゃないし」

相変わらず感情の見えない顔で、彼女はあの時のなのはのように明るい笑顔は見せてくれなかった。
その事にユーノは少し寂しさを覚えた。
だけど、彼女の言葉の内には人の為に何かをするという優しさが垣間見ることが出来た。
それに気がついたユーノはルーテシアに対して微笑を零さずにはいられなかった。

「ユーノの支給品は何?」

ユーノの感慨を無視して唐突に疑問の声がかけられた。
それに対してユーノは少し前のことを思い出しながら答える。

「ん、僕の?僕のバッグは向こうの方に置いてあるんだ」

ルーテシアはその言葉を聞くと、ユーノの指差す方に黙って歩き出した。
慌てて自分を追いかけるユーノを尻目に
彼女はロストロギアという言葉を聞いて、一つの可能性を考えていた。
ひょっとしてこのゲームの参加者に支給品という形でレリックが渡されているのではないか。
生体ポッドで眠る母を蘇らせ、自分に感情を与えてくれるナンバーⅩⅠのレリックがここにあるのではないか。
彼女はそのことを考えて、ほんの僅かに頬を緩ませた。




【1日目 深夜】
【現在地 H-7 川原 】

【ユーノ・スクライア@L change the world after story】
【状態】健康、フェレットに変身中
【装備】なし
【道具】なし
【思考】
 基本 なのはの支えになる
 1.名簿と支給品の確認
 2.ルーテシアの保護
 3.ジュエルシードの回収
 4.首輪の解除

【備考】
 ※JS事件に関連したことは何も知りません
 ※名簿はまだ確認してません
 ※ユーノの支給品はG―7のデュエルアカデミアの裏手にある路地に放置されています
 ※プレシアの存在に少し疑問を持っています


【ルーテシア・アルピーノ@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
【状態】健康
【装備】バニースーツ@魔法少女リリカルなのはStrikers-砂塵の鎖―
【道具】支給品一式、マッハキャリバー@魔法少女リリカルなのはStrikerS、ジュエルシード@魔法少女リリカルなのは
【思考】
 基本  ナンバーⅩⅠのレリックの捜索
 1.ユーノの支給品の確認
 2.ジュエルシードの回収を手伝う

【備考】
 ※参戦時期はゆりかご決戦前です
 ※名簿はまだ確認してません
 ※ユーノが人間であることを知りません



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GAME START ルーテシア・アルピーノ Next:遠い声、遠い出会い






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