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勇気の選択 ◆Qpd0JbP8YI




まずクロノが思ったことは、時期が悪いということだった。
今、第97管理外世界で闇の書事件が起こっている最中だ。
そんな中で執務官である自分になのはやフェイトといった第一線の魔導師が
突如としていなくなれば、管理局は混乱をきたすであろう。
無論、その程度で管理局自体がどうこうなるとは彼とて思わなかったが、
闇の書の守護騎士たち相手ではそういった足踏みが致命的となる恐れがある。
そしてその間隙を縫って遠からず闇の書は完成し、暴走。
その結果、第97管理外世界は闇の書によって侵蝕されてしまう。
そのことを想像すると、自然と父の無念がクロノの心を満たした。
それを晴らす機会がやっと訪れたのにこの様だ。
そのやりきれなさが彼にはひどく歯がゆかった。
だが、ここでどうあがいてもしょうがない。
クロノはリンディ、グレアム両提督に自分の思いを託すことにした。

闇の書から思考を切り捨て、今を注視する。
名簿をざっと読み流しながらも、やはりプレシアの存在に驚嘆を隠すことは出来なかった。
彼女が虚数空間に落ちたことは確認されている。
故にそれをもって管理局は彼女を帰還不可能とみなして、死んだものと認識している。
そしてそれについてはクロノも同様の見解だった。
だが、現実として彼女の姿は確かに彼の目に映りこんだ。

果たして人は虚数空間から帰ることは可能なのか。
それに対しての答えとして思いついた最も簡便なものが、アルハザード到達であった。
彼女がそこを目指して自ら虚数空間に身を投げ込んだのだから、そういった話も有り得なくはない。
そしてそこに辿り着いたのなら、そこの技術を用いて帰還も可能となるだろう。
だが、アルハザードというそんな御伽噺にも似た話を俄かにクロノは信じられなかった。
そもそも虚数空間に落ちたぐらいで、簡単にアルハザードに到着できるなら
忘れられた都などという風に伝説化されずに、他の人の手によって既に発見されていることだろう。
それがないのだから、やはりアルハザードは人の想像の産物以上には思えなかった。

では、アルハザード以外にも虚数空間からの脱出は可能だろうか。
未知の管理外世界による救出という可能性も彼の頭をもたげたが
管理局ですら未だ確立できていない航行技術を、他の世界が持っているとも思えなかった。
またそれほどの技術を持っているのなら、真っ先に管理局の存在に気がつき、接触を図ってくるだろう。
虚数空間航行技術など数多の世界を統括管理する管理局ですら持ち得ない技術だ。
それを上手く扱えば、莫大な利権が生まれ出るはず。それをみすみす見逃す手はない。
そしてひとたび交渉がもたれたなら、それを執務官である自分が知らないはずがない。
よって、これもアルハザード同様に可能性は低いように思えた。

それならば、あのプレシアは何であろうか。
クロノが下した結論は、もっと現実に即したものであった。
つまりあのプレシアの姿は変身魔法か、幻術魔法によるものではないかということだ。
確かにプレシアの姿をあの場所で模す有用性というものは余り見出せないが、
魔法によって彼女の姿を似せるという方が、虚数空間から帰ったというよりは
遥かに現実的で説得力もあり、クロノにもその方が納得がいった。

では、あのプレシアの姿を真似るものは何者だろうか。
それについては情報が不足しているゆえ、クロノにも結論は出せなかった。
だが、何者か正確なところは分からないが、その外延は幾らかは分かるところがあった。
相手は管理局に気づかれずに大勢の魔導師を拉致するということを成し遂げている。
その犯罪の規模から考えて個人の能力では無理だろう。組織だって行動が予想される。
また犯罪手段の不可解さから何らかのロストロギアの不法所持及び不正使用の可能性が窺える。
それを用いたとすれば、このような事態を作り出すことにさしたる問題はないだろう。
総合するに目の前の状況と対峙すべき相手は闇の書のように至って最悪だ。
だけど、それは絶望すべきことではない。
これだけ次元に干渉した犯罪ならば、もう管理局はこの事に気がつき、動き出していることだろう。
いずれ管理局が救援にやってくる。

それにこんな状況とはいえ、たった一つの僥倖があることをクロノは知った。
名簿を見ていて確認したシグナムとヴィータという名前。
これは確か先日なのはとフェイトたちが戦った闇の書の守護騎士たちの名前だったはず。
彼女らがこの場所にいるのなら、闇の書の主もここにいるかもしれない。
その可能性は彼の心を俄かに躍らせた。
自分を含め、なのはやフェイトとといった優秀な魔導師がここに呼ばれていることからして、
参加者の選定基準に魔力が高いことが挙げられる。
だとすれば、闇の書の主に選ばれるほどのものなら
ここに呼ばれる可能性も自然と高くなるだろう。
ずっと探していた闇の書の主がこの狭い空間内にいるのだ。
それはクロノにとって願ってもないことだった。
そして、クロノは苦笑を漏らす。
犯罪者のおかげで第97管理外世界は救われたのだ、と。
別に感謝をするわけではないが、一つの憂いがなくなったことは確かだった。
おかげで全神経を使って闇の書の主の捜索とこの問題に取り組める。


だが、と思い、クロノは名簿にある一つの名前を睨みつけた。
ヴァッシュ・ザ・スタンピード。
彼が何故ここに呼ばれているのかが分からなかった。
確かに彼はハンデを加えていたとはいえ、自分に魔法で一撃を加えた。
そして鍛えればきっと立派な魔導師にはなりうるだろう。
だけど、現段階においては訓練士にも劣る魔導師だ。
魔力の高さが選定基準ならここに呼ばれるのはおかしい。
ひょっとして自分たちがここに呼ばれる際に巻き込まれてしまったのだろうか。
その思いに至ると、自然とクロノの心の内に自責の念が募った。
やはり早急に元の世界に帰すべきだったのだろう。
妙な情に絆されて、なのはの側にいることを許してしまった自分の判断が悔やまれた。
魔法がなくても彼が強いということはクロノ自身知っているが、
それでもこんな状況で生きていけるかというと不安になった。
やはり早急に彼を保護したい。
自分には彼を無事に元の世界に返す責任があるのだから……。

そして名簿から投げかけられる懸念事項はまだあった。
高町なのはとフェイトの名前が二つあるということだ。
片方は自分の知る二人なのだとクロノは思った。
先の会場で実際に本人の姿を自身の目で確認している。
勿論、彼女たちのことも心配ではあるが、仮にも彼女たちは管理局員だ。
そして何より彼女たちの芯の強さをクロノは理解していた。
故に彼女たちに対して差し迫るほどの懸念というものはなかった。
彼にもっと確かな形で不安を与えたのは自分の知らないなのはとフェイトの存在だった。
その二人も先の場所で見たから、その二人がいるということに確信は持てた。
では、彼女たちは一体何者だろうか。
これも恐らくあのプレシア同様に変身、幻術魔法の類なのだろう。
目的は参加者の攪乱といったところだろうか。
外見では知り合いを謀ることが出来るだろうし、彼女たちを知らない人にとっても、
先の会場の出来事を見ていれば、自然と情を移して警戒を緩めてしまう。
そして彼女たちが魔法による存在だとしたら
「プレシア」の意図を汲んだものであり、このゲームとやらの促進剤となる可能性がある。
だとしたら、危険極まりない存在だ。
それを防ぐためには彼女たちの早急な確保と拘束が求められる。
また八神はやてという名前も気になった。
なのはたちと同様に二つ名前が記されていることから彼女たちと何かしら共通点があるはず。
魔力の高さ、戦闘能力の高さ、管理局員……と言ったところだろうか。
もしかしたらなのはたちの知り合いかも知れない。
どちらにしても彼女との接触、もしくは拘束が必要となってくるだろう。


クロノは名簿に一通り目を通し、それを覚えると、彼は他の支給品に目を向けることにした。
そして宛がわれた武器の説明書を読み、その内容に間違いがないか確認するため
念の為もう一度ゆっくり読み直して、クロノはやっとこの世界に来て初めての言葉を漏らした。

「くそっ……」

それは消えそうなくらい小さな声だった。
だが、間違いなくその中に彼の言い様のない怒りが含まれていた。
支給品の説明書には「龍騎のカードデッキ」と記されていた。
その内容には契約モンスターに食料として人間を捧げること
それを拒むような類のことをしたら、自身を襲うということが書かれていた。
首輪に加えて、このような支給品が自分以外の参加者に配られていると考えるとクロノの心には怒りが湧いた。
これではこのゲームに消極的な人たちも、自分の身を守るために他の参加者を襲わざるを得ない。
ゲームを進める上では如才ないの一言ではあるが、褒める気にもなれなかった。

このような代物があっては今度の行動も慎重を期さなければならない。
ヴァッシュを含め、犯罪被害者を保護しようにも、これがあっては話しにならない。
これでは逆に自分が相手の命を脅かすこととなってしまうのだから。
となると、まず自分がしなければならないことは、この契約モンスターを倒すことだ。
だが、それに対しても問題はある。
モンスターを簡単に倒せるようなものなら、こんなものは支給されないだろう。
それでは人を殺しうる武器になり得ないのだから。
そして逆に強すぎても、殺しを一方的にしてしまい、ゲームバランスを崩してしまう可能性がある。
恐らくは守護騎士たちと同等の強さといったところか。
守護騎士と同じ強さなら、何とかなるかもしれないが、無手で挑むのは無謀というものだろう。
これに代わる武器、デバイスの入手が最優先だ。
魔導師が多数呼ばれているのだから、その武器でもあるデバイスも支給されている可能性がある。
一刻も早く他の参加者と接触をしてデバイスを預かりたい。

一刻も早く……そう、時間がないのだ。
説明書には12時間に一人生きた人間を喰わせることとある。
最後にこのモンスターとやらが、人間を食べたのはいつか。
ここに送る直前に人を食べさせたという律儀ともいえる行為を、当然クロノは期待していなかった。
となると、次の瞬間にもモンスターが大口を開けてやってくる可能性があるわけだ。
故にモンスターに対抗する準備をするために迅速な行動が求められる。

そしてクロノは自分の考えの一助とも成り得るもう一つの支給品、拡声器を取りだした。
これを使えば、より早く他の参加者との連絡が取れるだろう。
そして上手くいけば、デバイスの入手に加えて、仲間との合流も図れる。
勿論、拡声器を使えば、ゲームに乗ったものを引き寄せる可能性があるだろう。
このデスゲームという会場で自分の位置を他人に知らせるというのは自分の命を危険に晒す愚策ともいえるものだ。
それくらいクロノも分かっている。
だが、クロノの並列思考はそれとは別にもう一つの回答を導き出していた。
即ち短時間ながらもゲームに乗ったものを自分に引き付けられる、と。
それならその分、他の参加者の安全は保証されるし、そこに自分がやらない理由などない。
自分ならどんな相手に対してもそう遅れをとることはないだろう。
安易というわけではないが、執務官であるという自負が彼にそう思わせた。
それに最後の手段ではあるが、彼の手にはカードデッキがある。
無論、クロノには躊躇いがある。
これは殺し合いをするために配られたものだ。
絶対といって非殺傷設定など組み込まれていないだろう。
つまり容易に人を殺しうるものだ。
そんな物を例えゲームに乗ったものに対しても向けていいものなのか。
時空管理局執務官という責任ある立場が、彼の心に疑問を投げつけた。

だけど、その答えが出るまでこのままジッとして徒に時間を浪費するのも無駄に思えた。
時間が経てば経つほどモンスターによって自分の身に危険が迫るし、
また他の参加者同士の戦いで命を落とすものが増える可能性があるのだ。
他者との接触、ゲームに乗ったものとの衝突を恐れているわけにはいかない。
そしてクロノはその瞳に決然とした輝きを灯し、拡声器のスイッチを押した。


「僕は時空管理局執務官、クロノ・ハラオウンだ。
この声が聞こえるものは、どうか聞いて欲しい。
あの女、プレシアと名乗る者の言いなりになって、殺し合いをするのは、どうか止めてもらいたい。
皆、いきなりこのような状況に陥って不安になっていると思う。
人の死を見せ付けられ、いつの間にか首輪をされ、閉鎖空間に閉じ込められたのだからそれも当然だ。
皆、自分の死に怯えていると思う。
だけど、どうか安心してもらいたい。
既に時空管理局はこの事態に気がつき、僕たちを助けるべく動き出している。
そして、僕以外にもこの空間には管理局員が何人もいる。
彼らは殺し合いなどせずに、きっと皆の助けになってくれるはずだ。
だから、人を殺すという軽挙なことは止めてもらいたい。
僕たちは助かるのだ。
僕は今、地図で言うD-4の学校にいる。
この声が聞こえるもの、不安に怯えるものは、どうか僕のところに来てもらいたい。
繰り返す。
僕は時空管理局執務官、クロノ・ハラオウンだ――」



夜の帳に木霊する自分の声を聞きながらクロノは拡声器を下ろした。
果たしてこれでよかったのだろうか。一抹の不安が残った。
拡声器を使ったことは勿論、その放送内容にも疑問はあった。
闇の書の主に守護騎士たち、そして「プレシア」の意図を汲んだ可能性のある存在。
この場で危険な人物はたくさんいる。
それらを伝えて周りに注意を呼びかけることも出来た。
だけど、クロノはそれをしなかった。
彼らが危険というのもまだ現段階では不確かな情報の元に推測したことに過ぎない。
事実とは異なる可能性があるのだ。
下手に警戒心を煽り、参加者同士で疑心暗鬼に陥らせることはないとクロノは思った。
だが、推測したことが事実だった場合はどうなるか……。
仮定に仮定を重ねた不確かな「事実」が、クロノの心を責めさいなんだ。



【現在地 D-4 学校屋上】

【クロノ・ハラオウン@リリカルTRIGUNA's】
【状態】健康 、軽い苛立ち
【装備】拡声器@現実
【道具】支給品一式、カードデッキ(龍騎)@仮面ライダーリリカル龍騎、ランダム支給品0~1個
【思考】
 基本 ゲームの主催者と闇の書の主の逮捕、ヴァッシュを元の世界へ送還
 1.デバイスの入手
 2.契約モンスターの退治
 3.闇の書の主の捜索
 4.大なのはと大フェイト、八神はやての拘束と事情聴取
 5.仲間との合流
【備考】
 ※プレシア・テスタロッサは偽者だと思っています
 ※例外があるにしろ、この空間にいるメンバーは総じて魔力が高いと思っています
 ※大なのは、大フェイト、そして片方の八神はやてがゲーム主催者と何かしらの関係があると思っています。
 ※片方の八神はやては管理局員だと思っています
 ※ヴァッシュは自分のせいでこの殺し合いに巻き込まれたと思っています
 ※カードデッキを使うのに躊躇いがあります
 ※闇の書の主が八神はやてとは知りません
 ※参戦時期は七話終了後です
 ※クロノの声はD-4を中心に辺りに響きました



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