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意思の証 ◆RsQVcxRr96




ホテル・アグスタ。
その最上階に位置するスイートルーム。
白いシーツが掛けられた清潔感溢れるベッド。
床に敷かれた落ち着いた様相を見せる水色のカーペット。
部屋の隅に置かれた緑が映える観葉植物。
厳かな水晶のような今は光のないシャンデリア。
部屋の中央に置かれた白いテーブルクロスが乗っているテーブル。
それらは全て高級なスイートルームに相応しいものばかりだった。
月や星の光が開け放たれた窓から部屋の中へと燦燦と降り注いでいる。
それがまたこの部屋の調度品の素晴らしさを際立てさせている。

「本当に余計なものが多いGね」

そして空に浮かぶ月を見ながら部屋には一人の女性客がいた。
彼女の世界には月も星もない。
だからこそ空から降り注ぐ光を余計なものと言う。
紫の瞳と灰色に近いプラチナブロンドの長い髪。
髪は赤紫色のリボンで結わえられツインテールを形作っている。
それに対して身長は低めだが、それがまた不思議な印象を作り出す。
表情はほとんどなく、少女はただ淡い光が差し込む窓から月を眺めていた。
どことなく気品が感じられる人物である。
そしてその身には身分を表すように学生服を纏っていた。
赤いリボンと左胸の校章が印象的な紺を基調としたブレザーと、やや色を抑えた感じのスカート。
少女はそれを模範生徒のようにきちんと着こなしていた。

「はぁ……厄介な事に巻き込まれたみたいね」

少女の名はブレンヒルト・シルト。
尊秋多学院の次期三年生、且つ総合美術部の次期部長である。
しかしそれは彼女の一面でしかない。

「全く、こんな時に……どういう事かしら」

各々独自の『概念』を持つ10の世界『G(ギア)』の存亡を巡る異世界間の戦争『概念戦争』の末に滅びた世界の一つ。
文字が力を持つ世界『1st-G』の生き残りであり過激派集団・市街派に与する長寿族の魔女。
それがブレンヒルトの本当の姿である。
長寿族というだけあって、その実年齢は幼さを感じさせる身体とは裏腹に70を越えている。
ネクタイに『刃』と書けばそれは鋭い刃と化し、液体の入ったコップに『すごい毒の入れ物』と書けばその中身はすごい毒と化す。
その物自体の外見は変わらずにその本質が変化する。
それが1st-Gの概念『文字には力を与える能がある』の為せる技である。

最近の情勢の変化を報告するために市街派の本拠地へ赴いたまでは良かった。
全竜交渉という行動を起こそうとしている時空管理局に対して市街派も何らかの対策を取らなければいけない。
それは尊秋多学院で1st-Gを滅ぼした大罪人ギル・グレアムの監視役にある自分も例外ではない。
自分の世界を裏切って滅ぼした彼をブレンヒルトは許せなかった。
そしてその感情は彼の養女である八神はやてにも少なからず向けられていた。

市街派のリーダーであるラルゴ翁も報告を聞くと機は満ちつつあると言っていた。
報告の任を終えて学院への帰途に付こうとした時に異変は起きた。
形見となったデバイスのレークイヴェムゼンゼを起動させて飛び立ったところまでは記憶にある。
しかし次に来る記憶は広間の椅子に座らされて拘束されているものだった。
そしてプレシアという魔女によって宣告される殺し合いという名のゲームの開始。
不満を抱いたが、勇んで異を唱えたアリサと呼ばれる少女が問答無用に殺されては黙る以外の選択肢はなかった。
一方的な宣告を終えるとプレシアは『転移』というもので参加者全員を会場へと移送させてみせた。
そしてブレンヒルトが転移させられた場所が、このホテル・アグスタのスイートルームであった。
居場所が判明したのはランダムで配られたという支給品のおかげだった。
自身の傍にあったデイパックの中に双眼鏡が入っていたのだ。
これにより周囲の様子と遠方に見える高層の建物の位置関係から現在地は分かった。
ブレンヒルトが次に行ったのは参加者の確認——結果、知り合いが何人かいる事が判明した。
尊秋多学院の生徒会長、会計、広報の任に就く八神はやて、高町なのは、フェイト・T・ハラオウンの3名。
そして彼女達は全竜交渉に携わる選抜チームにも所属しているとの話だ。
不思議なのはそれぞれ二つずつ名前が記載されている事だが、考えても埒が明かないので保留にしておく。
幸運な事にランダムで配られる支給品にはさっきの双眼鏡の他に1st-Gの賢石があった。
これがあれば1st-Gの術式を行使して殺し合いの中で生き延びる事はある程度可能である。

そこで考えなければならない事は自分がどういう目的で行動するかという事だ。
もちろん最終目的はここからの脱出である。
ではその目的を達成するためにはどうすればいいか。
ここで思い出すのは最初にプレシアが言ったこのデスゲームの内容である。

——これから、あなた達に殺し合いをしてもらうわ。
——これから会場へあなた達を転移させる、そこで最後の一人になるまで殺し合いなさい。
  力の無い者にもチャンスをあげる、あなたたちの武装は全て解除して、こちらで用意したいくつかの道具と混ぜてランダムで支給するわ、精々あがきなさい。
  それからあなた達に付けているその首輪。
——全員で逃げ回られても困るわ、24時間一人も死ななければその首輪に仕掛けた爆弾を爆発させる。
  それから6時間毎にそれまでに死んだ者の名前と、禁止エリアを伝えるわ。その禁止エリアに入っても首輪は爆発する。
——判ったかしら、さっき言った条件を満たしたらこうなる……生き延びたければ、最後の一人になるしかないのよ。
——さぁ、デスゲームの始まりよ。

もしこの通りならプレシアの言うように殺し合いに乗るのは早計だ。
なぜならプレシアは最後に一人を『どうする』とは一言も言っていないからだ。
褒美を与えるとも元の場所に帰すとも言っていない。
任意で爆破できる首輪を付けたから生き残りたければ殺し合いなさい、要約すれば言っている意味はこうなる。
殺し合いをさせたいのなら参加者にそうするのが得策だと思わせなければならない。
確かに自分の命が助かるために殺し合いに乗る者もいるだろう。
だが簡単に乗るような者ばかりいるとは思えない。
全竜交渉部隊の3人は普段の素行や黒猫からの知らせから推測するに、明らかに乗るような分類ではない。
それに殺し合いをしてほしかったら殺人嗜好のある危険人物でも集めて行うほうが余程効率はいい。
だがそんな事はせずにわざわざ首輪まで付けてゲームを執り行う理由とは——

「ん!?」

ブレンヒルトの思考はそこで中断を余儀なくされた。
中断を齎したのは開け放たれた窓から入ってきた微かな音。
何かそれなりの質量を持つ物が倒れる音が幾重にも聞こえてきた。
音から察するに原因はホテルの周辺である事が分かる。
ブレンヒルトは様子を探るために双眼鏡を窓の外に向けた。
音の正体はすぐに見つかった。
それは狩りのような光景だった。


     ▼     ▼     ▼


天より降り注ぐ朧気な月と星の光の下にその二人はいた。
桃色の髪が印象的な幼い少女と金髪が印象的な青年。
その場は狩りに例える事ができよう。
狩る者——青年、狩られる者——少女。
少女は必死の抵抗を試みようと何やら高速で移動しているようだが、実力差は歴然だった。
ここからでも青年の不気味な冷酷さが伝わってくるようだった。
それはまるで氷でできた鋭い刃のようでもあった。
青年の腕が振るわれるたびに木々は破壊され、少女は傷を負っていった。
どれだけ少女が素早く動こうと、面で攻撃を与える青年から逃れる術はなかった。
ついに少女の動きが止まった。
高く振りあがる青年の腕。
あれが振り落とされれば少女は死ぬだろう。
ブレンヒルトはその光景をただ見ている事しかできなかった。
この距離では何をしようと間に合わない。
また誰かがいなくなるところを見るのか。
そんな事を覚悟していたが——それは訪れなかった。
青年の刃を遮ったのはまた別の青年の刃だった。
狩りに割り込んできた第三者は月光によって輝く銀の長髪を持つ不思議な青年だった。
一振りの刀を手に乱入してきた青年は金髪の青年とはまた違う威圧感を放っていた。
二人の青年は互いに敵意を露わにして数合斬り結ぶ。
しかしその戦いはすぐに終わりを告げた。
銀髪の青年が閃光弾らしきもので金髪の青年の動きを封じると、少女を連れて逃走したのだ。
後に残ったのは一人取り残された刃を納めない金髪の青年だけだった。
狩りは終焉となった——そう思っていた。
だがそれは間違いだった。
金髪の青年の本気——桁違いの刃の猛襲が周辺の森を根こそぎ破壊していった。
自ら齎した破壊の傷痕に満足したのか、程なくして金髪の青年もいずこかへ消えて行った。
そして残るのは無惨な破壊痕のみだった——


     ▼     ▼     ▼


「……はぁ、それ本当なの」
『Yes』

ホテルの一階ロビーにある休憩用のソファー。
そこに一人の少女——ブレンヒルトが座っていた。
辺りには人影はなく彼女が一人だという事が分かる。
しかし彼女は会話をしている。
会話とは相手がいないと成立しない。
ここでブレンヒルトの相手となっているのは——

「すぐには信じられないわ、バルディッシュ」

バルディッシュ・アサルト。
あの規格外の破壊を齎した戦闘が終結した場で見つけたのが、このバルディッシュ。
桃色の髪の少女——キャロというらしい——をサポートしていたが、奮戦虚しく敗退したところはブレンヒルトも知っていた。
思わぬ拾い物に驚かされたが、話ができると分かると早速協力を代価に情報を聞き出す事に成功した。
ミッドチルダ式のインテリジェントデバイス。
マスターはフェイト・T・ハラオウン。
フェイト・T・ハラオウン——その名前ならブレンヒルトも知っている。
自身が在学する尊秋多学院の生徒会広報であり、全竜交渉部隊の一員。

——のはず。

そこで矛盾が発生した。
バルディッシュの知り合いの中には共通する者が3人いたのだが、その状況が食い違ったのだ。
該当するのは八神はやて、高町なのは、フェイト・T・ハラオウンの3人だ。
そしてなにより驚いた事が『概念』に関する情報を何一つ持っていない事だった。
別の世界の産物であろうと何かしらの概念を持っていると踏んでいたが、その考えは呆気なく潰えた。
しかしその代りとして文字通り『魔法』なる力が備わっているらしい。
ともかくバルディッシュから得られた情報は多岐に渡り、一人では判断が付けがたいものだった。
群れるのは本意ではないが、この場で必要なのは情報だ。
ともかく人が集まりそうな場所へ移動して、対策を考える必要があるようだ。

「そろそろ移動しましょうか」

ブレンヒルトは立ち上がると、傍のデイパックを背負って行く準備を整えた。
ホテル内をざっと調べたが、特に目ぼしい物は見つける事が出来なかった。
本格的に調べたら結果は変わったかもしれないが、そんな事をしていたら1日が終わりそうなので断念した。
とりあえずこのホテルとも一旦お別れだ。

「バルディッシュ、セット・アップ!」

左手でバルディッシュを掲げつつ、右手に持った賢石で空中に文字を描く。
すると次の瞬間にはブレンヒルトの服装は別のものへと変わっていた。
黒のワンピースに黒の三角帽——所謂魔女の黒装束と称される服装だ。

それはバルディッシュの話を聞いている最中の事だった。
なんとなく気になって魔法が使えるか試してみたところ起動まではできた。
なぜできたのかはバルディッシュにも分からないようだった。
しかし可能なのはそこまでで魔力が足りない自分ではまともに使う事は無理なはずだった。
カートリッジを使えば魔法が使えるらしいが、残り5つしかないそれを使うのは早計だ。
そこでふと1st-Gの術式の力を代用できないか試してみようと思った。
もしも上手くいけば色々と便利だ。
魔法とやらの理論を理解するのに少し時間が掛かったが、その分の成果はあった。
初めは根本で違う系統の術式故に苦労した。
しかし使用している術に類似点もあったので、終にどうにか使えるレベルにまで達した。
一番良かったのはバリアジャケットが作れた事だろうか。
これなら余程の一撃でない限り即死は免れるそうだ。

「考える事は多そうね」

ホテルの玄関。
漆黒のデバイスと漆黒の装束を身につけてブレンヒルトは呟く。
向かうのは西の方角、市街地の中心部だ。
先程向かう方角で凄まじい爆発音が聞こえたが、気にしなかった。
それほどの音を立てる戦闘なら、あれから静かになった今は戦闘が終了したという事だろう。
それなら当事者はあそこから立ち去った可能性が高い、仮にいたとしても死力を尽くした後なら無理はしないだろう。
むしろあそこへ向かう参加者もいるはずだ。
なるべく無駄な戦闘は避けたいところだ。

(小鳥、大丈夫かしら)

ふとブレンヒルトの心をよぎるのは学院に置いてきた小鳥の事。
怪我をして安静にさせているが、どうにも気になる。
拾った責任……それとも……
そして思い出される小鳥の記憶と一人の参加者の身の上が重なる。

——フェイト・T・ハラオウン。

バルディッシュから聞いたプレシアとフェイトの複雑な関係。
肉親に見捨てられたフェイトが遠き昔にいなくなった小鳥とどこか重なる。
そんな取りとめもない事を考えつつブレンヒルトは薄らと明るくなった空の下を進んで行った。



【1日目 黎明】
【現在地 F-9 西部】
【ブレンヒルト・シルト@なのは×終わクロ】
【状態】健康
【装備】1st-Gの賢石@なのは×終わクロ、バルディッシュ・アサルト(カートリッジ5/6)@魔法少女リリカルなのはStrikerS、バリアジャケット(魔女の黒装束)
【道具】基本支給品一式、双眼鏡@仮面ライダーリリカル龍騎、ランダム支給品0〜1
【思考】
 基本:ここからの脱出。
 1.中心部へ行き、情報を集める。
 2.戦闘には極力関わらない。
 3.フェイトの生い立ちに若干の興味。
【備考】
 ※自分とバルディッシュに共通する知人に矛盾がある事を知りました(とりあえず保留)。
 ※キャロ、金髪の青年(ナイブズ、危険人物と認識)、銀髪の青年(殺生丸)の姿を遠くから確認しました。
 ※F-7での戦闘の光を確認しました。



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