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誰かのために生きて、この一瞬が全てでいいでしょう(後編) ◆9L.gxDzakI





「……そして、俺はここに来た」
 保健室のベッドに身を預けたルルーシュが、自らの話をそう締めくくった。
 傍らでその話を聞いていたこなたの表情は、複雑、と評すのが最も的確であろう。
 黒髪の少年の語る話は、彼女の想像を遥かに超えた物語だった。
 かつての皇子、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア。祖国に捨てられ、日本へ送られ、その日本さえも侵攻を受けた、7年前の夏の日。
 その瞬間から、彼の血塗られた修羅の運命は、既に動き出していた。
 魔女C.C.との出会い。手にしたのは絶対遵守を現実化する王の力。
 ギアスと黒き仮面のみを頼りに、少年は魔王へと化身する。
 ゼロ。
 亡き母の仇を討ち、最愛の妹が望む優しい世界を手に入れるため、遂に立ち上がった漆黒の魔人。
 素顔を隠し、名を偽り、嘘にまみれて。反逆のルルーシュの足跡は、数多の犠牲の上に、赤黒き血のロードを描き続けた。
 無数の大型機動兵器・ナイトメアフレームが飛び交う戦場を、ルルーシュは意のままに支配する。
 その裏で、本当に大切な者達を、次々と失い続けながらも。
 自分が傷付けた少女の記憶。初恋を抱いた皇女の命。そして恐らくは、7年来の親友との絆さえも。
 日々己を蝕む命の激痛に心をすり減らしながらも、ルルーシュは戦い続けていた。
 まるでテレビアニメのような、そんな絵空事とも取られる物語。
 だがルルーシュの語る声音が、それを真実だと確信させる。そういう世界も、確かに存在しているのだと。
「……たくさんの人を、犠牲にしちゃったんだね」
 そして、ぽつり、とこなたが呟いた。
「ここに来てからだってそうだ。俺のせいで、ディエチという名の女が命を落とした。
 家族の命を救うために、俺と自分の命を天秤にかけて、会ったばかりの俺のために、自分の命を投げ出したんだ」
 鎮痛な面持ちで、ルルーシュが言う。
 苦しんでいるのだ。この少年は。
 憎むべき敵を倒すために出てしまった、本来そうなるはずもなかった犠牲者達の死に。
 自分の勝手な都合のせいで、奪い続けてしまった命に。
 何十何百もの死を背負った、僅か17歳の少年の重責は、こなたには計り知れなかった。
「……進むことだけが、その死者への弔いだと思っていた」
 ルルーシュは独白する。
 生み出してしまった犠牲のためにも、自分が結果を残さなければならないと。
 日本独立の実現。現ブリタニア政権の打倒。それらの実現こそが、奪ってしまった命への唯一の償いになるのだ、と。
「だが、多分俺はもう戦えない。俺は独りでは何もできない、ちっぽけなただの人間だ。
 腕を失い、敗北の証を刻まれたこの身で、一体どうやって無敵の英雄を演じられる? どうやって人を惹き付けることができる?」
 嗚呼、自分はこんなにも情けなくて、弱い。
 たった1本の腕がなくなっただけで、何1つできなくなってしまうなんて。
 ならば、どうやって責任を果たせばいい。どうやって償いを果たせばいい。
「俺は……どうすればいい……」
 血を吐くように。
 うなだれながら、ルルーシュは言った。
 あのディエチに問いかけたのと、同じ言葉を。ベッドのすぐ傍で座るこなたに。
 先ほどの強気な視線など、所詮はただの強がりだ。本当はのしかかる重責に、今にも押し潰されそうだった。
 沈黙が重苦しい。
 こなたはかける言葉に迷う。
 1秒が1分にも感じられた、あるいは10分。1時間。はたまた丸々1日にさえも。
 このまま次の放送が入るまで、ずっと続くのではないかと錯覚するほどの静寂。
 絶望の淵へと立たされたルルーシュの姿は、まさしくスバルの危惧そのものだった。
 もしもここにいたスバルが、彼の知っていた彼女だったなら。あるいは、その苦しみを和らげてやることもできたかもしれない。
 だが、そのスバルはいない。ルルーシュと親しいスバルは存在しない。
 ならば自分が何か言ったところで、この男を救ってやることなど、できはしないのではないか。
「……あたしは、さ」
 それでも。
 だとしても。
 やはりこなたは、言葉をかけずにはいられなかった。
 罪の痛みに囚われたルルーシュを、見捨てることなどできなかった。
「何かこう、軽々しく言えるような人間じゃないし……戦争してる人の気持ちなんて、分かるものでもないんだけど、ね」
 そう前置きしながら、つとめて笑顔で言葉を紡ぐ。
「でも、そうやって悩んで立ち止まるのは……生き残ってからでも、出来ると思うんだ」
「……?」
 微かに目を丸くしながら、ルルーシュが顔を持ち上げる。
 紫色の瞳が、こなたを真っ向から見据えていた。
「責任を取ることはもちろん大事だと思うし、どうすればそれができるのかを考えるのも、もちろん大事だと思う。
 でも、今そのために何もできずに立ち止まってて、そのまま殺されちゃったら、何にもならないよ。きっと、誰も喜ばない。
 それにここにはルルーシュの助けを待ってる人もいるし、ディエチって人の家族もいる」
 だから。
「だからさ……今はまず、生き残ることを考えようよ。ね?」
 そうやって、こなたは締めくくった。
 一方のルルーシュは、彼女の言葉を、僅かな驚愕と共に受け止めていた。
 それでいいのだと。
 慌てることはないのだ、と。
 なまじ頭が回るが故に、性急に答えを出すことだけに囚われていた彼は、その結論には至れなかったのだから。
 自分が生き残ることそのものが、死者の怒りと憎しみを煽るのだとばかり思っていた。
 だからこそ、このまま悩み続けて、結果死ぬことがあったとしても構わないとさえ、心のどこかで思っていた。
 しかし、違ったのだ。結局のところ、それは逃避でしかなかったのだ。
 答えを急いで押し潰されるくらいなら、ゆっくりでもいいから答えを出していけばいい。
 そんなことを言われたのは、初めてだった。
 今一度、ルルーシュはこなたの姿を見る。
 よく見てみれば、彼女はどことなくスバルに似通っていた。
 ぴんと立ったアンテナのような髪の毛。低めの身長。青い髪色に、澄んだエメラルドのような瞳。
 髪の長さや、目元の泣きぼくろのような差異はあったものの、多くの特徴がスバルと一致していた。
 だからこそ、ルルーシュはこなたの言葉を、特別な念と共に受け止める。
(……アイツも、きっとそうやって言うかもしれないな)
 その面影の先に、大切な少女の存在を感じて。
 内心で呟くルルーシュの表情には、いつしか、穏やかな笑みが戻っていた。
「すまないな、こなた」
「どういたしまして」
 感謝の言葉を素直に述べる。
 失意と絶望の暗闇の中、一筋の光を見出してくれた娘の存在に。
(俺は戦い続けよう)
 そして、誓う。
 こなたに。スバルに。散っていったディエチやカレンに。未だどこかで生きているシャーリーとC.C.に。
 こんな自分の命でも、まだ誰かの希望になりうるのならば。
(俺にはまだ、戦い続ける理由がある)
 そう。立ち止まるわけにはいかなかったのだ。
 ここには守るべき人間が大勢いる。
 ディエチが願いを託した彼女の姉妹。かつて自分が記憶を奪ってしまったシャーリー。共犯者として共に在ることを誓ったC.C.。
 何より、誰よりも大切な――スバル。
 たとえ幾千億の日本人のためのゼロを演じることができなくとも。
 この場の一握りの人々ならば、救うことだってできるはずだ。
 自分の頭脳は。ディエチの信じた戦略は。そんな脆弱なものではなかったはずだ。
(だから)
 前へと進む。
 この殺し合いから脱出する。この身に背負った命と共に。
 偽りの魔王ゼロではなく、ブリタニアの少年ルルーシュの本心に。
 硬く、誓いを立てた。
 がちゃり、と。
 不意に、扉が開かれる。入ってきたのは、青いショートカットの少女だ。
「あ、スバル」
 こなたがその名を呼ぶ。
「もう落ち着いたの?」
「うん、まぁ」
 問いに答えるスバルの言葉は、未だに危ういところもあるが、どうにか平静を取り戻しつつはあるようだ。
 その彼女の視線が、ベッドの上のルルーシュへと向けられる。
「あ……えー、っと……」
「ルルーシュ。ルルーシュ・ランペルージだって」
 言葉に詰まったスバルへと、こなたが名を教える。
 名前が分かったことは彼女にとって幸いだが、すぐにそれが意味することに気付いた。
 もう、ルルーシュという人は知ってしまったのだ。自分が彼のことを知らないことに。自分では彼の支えになれないことに。
「えっと……その……ルルーシュ、さん」
 所在なさげに、スバルがその名を口にした。
「いや、ルルーシュでいい。『さん』付けというのもむず痒いからな」
 ルルーシュが返す。そして、反射的に自分の口を突いた言葉を思い返し、軽く噴出したように笑った。
 同じ言葉なのだ。奇しくも彼女と初めて出会った時、自分を『ルルーシュ君』と随分しおらしい呼び方で呼んだ時の返答と。
 やはりスバルはスバルだ。
 自分のことを知らなくても、それ以外はまるで変わらない。自分の知っている、大切なスバルだ。
 だからそんなスバルが、自分をよりにもよって『さん』付けで呼ぶのは、どう考えても似合わない。
「お前が俺の知ってるスバルじゃないってことは、もうこなたから聞いてる」
 言いながら、ルルーシュはベッドから立ち上がった。
 枕元に置かれていた漆黒のマントを、左手だけでやや苦労しながら身に着ける。
 かつ、かつ、かつ、と。
 靴音を響かせ、未だにバランスの取れない身体を制御しながら、スバルの元へと歩み寄った。
「あの……その、ルルーシュの知ってるあたしは……どんな人だったんですか?」
 困惑したような表情で、スバルが問いかける。
「……別に、何も変わらないさ」
 その様子がなんだかおかしくて、ルルーシュは若干苦笑した。
「ただ、俺の傍にいた。それだけのことだよ。他は何も変わらない。
 たとえどんな世界にいようと、お前はお前だ。いつも笑顔で、楽しそうで……精一杯真っ直ぐに生きてる、スバル・ナカジマだ」
「……えと……」
 スバルは若干頬を紅潮させながら、幾分か戸惑ったように言葉を濁す。
 それもそうだ。見ず知らずの人間に、そんなにきっぱりと自分のことを断言されては、何だか気恥ずかしくなるのも無理はない。
 ましてや、きっとこの人は、自分を褒めてくれているのだから、尚更のことだった。
「だから……」
 ルルーシュの左腕が、伸びる。
 たとえ住んでいる世界が違ったとしても。自分の知る彼女とは、厳密には別人であったとしても。
 その本質には違いがないのだから。
 赤の他人などではない、紛れもない本物のスバル・ナカジマがいるのだから。
 こうしてこの殺し合いの中で、命を落とすことなく生き続けてくれたのだから。
「わぷっ」
 思わず、スバルの可愛らしい声が上がる。
 急に密着した紫色の衣服。顔面が思いっきり塞がれる感触。
 背中に回された腕。身体から伝わる暖かい体温。
 スバルの身体を、左腕だけのルルーシュが、強く抱き締めていた。
「えっ……え……!?」
 突然の抱擁に、スバルは困惑する。それこそ顔をトマトのように真っ赤に染めて、四肢の全てをじたばたとさせた。
 父親以外の男の人に、抱き締められた経験などない。いや、父すらもそういうことをするような気質ではなかった。
 彼氏を作ったことも、異性に心惹かれた経験すらもなかったスバルが、初めて味わった感触。
 唐突にそれを味わう羽目になった彼女の意識は、容易にパニックへと陥ってしまう。
 だが、次の瞬間。
「……お前が生きていてくれて……本当によかった……!」
 絞り出すようなルルーシュの声が、スバルの耳元に届いていた。
 震えるような男の声に、彼女の意識は急速に冷静さを取り戻していく。気付けば、自身の身体を抱く腕も、小刻みに震えていた。
「……ルルーシュ……」
 自分よりもずっと背の高い男の顔を、その腕の中で見上げる。
 緑の瞳が見つめた紫の瞳は、微かに熱い雫に潤んでいた。
 それは甘さではあったのかもしれない。
 破壊と殺戮の道を歩むことを決めながらも、ルルーシュが捨て切れなかった甘えであったのかもしれない。
 早熟すぎたが故に。未熟であるが故に。
 優しさを失えなかった嘘つきは、静かに涙の光を湛える。
 ここにいるのは、自分の知っているスバルではない。
 こうして抱き止めても、応えてはくれない。もっとも、仮に彼女だったとしても、応えてくれると決まったわけではないのだが。
 それでも、この瞬間だけは。
 こうでもしなければ、この砕けかけた心の痛みは――

「――えーと……そろそろいいですか?」

 と。
 不意に、新たな声が割って入る。どことなくうんざりとしたような、幼さを残した少女の声が。
 見れば案の定、そこには半ば呆れたような表情をした、黒髪の娘が立っていた。
 外見年齢は、スバルよりも1つか2つ幼いくらいといったところ。羽織った赤いジャケットが特徴的。
「あ、と……」
 そこでルルーシュは、ようやく今自分の取っている態勢が、周囲の目にどのように映っているかに気付き、慌ててスバルから離れる。
 こういうことを素でやらかす辺りが、彼の悪い性分なのだろうが、素なのだから気付けるわけもない。
 学友のリヴァル辺りが見れば、だからお前は天然スケコマシなんだ、とからかうだろう。
「あ、そうそうそうだった!」
 そしてスバルが声を張り上げる。
 内心の動揺を押し隠すための行動なのだろうが、上ずった声と真っ赤な顔では説得力がない。否、むしろ可愛らしいぐらいだ。
「この子、早乙女レイって言って……やっぱり、別の世界であたしに会ったことのある子なんだって」
「つまり、そいつもパラレルワールドから来たということか」
 言いながら、ルルーシュはその瞳でレイを見据える。
 涙の痕跡の一切も残さず、猛禽のごとき鋭い眼差しで。
 研ぎ澄まされた紫の眼光が、探るようにレイの全身をなぞった。
 この殺し合いのゲームでは、出会った人間全員を信用していては生き残れない。
 自分を救出したこなたは信じてもいいだろうし、スバルを疑う余地はない。だが、自分はレイのことを何も知らないのだ。
 見定めなければならない。この娘が敵か味方か。こうしている間にも、虎視眈々と自分達の命を狙っているのではないか。
(肉付きからして、身体能力に長けているわけではない、か……)
 着目したのは、彼女の身体つきだ。
 見たところ、レイの体格は標準体型。敵を殴り倒す剛力も、縦横無尽に駆け回る俊敏性も見られない。
 ここにいるのは年上ばかりで、しかも1人は格闘戦を得意とする魔導師だ。
 そんなところに丸腰で乗り込んで来るとは、到底思えない。あまりにも無防備すぎる。
 となると、次に考慮すべきは。
「そいつの持ち物は調べてあるか?」
「あ、はい……一応、簡単な持ち物検査みたいなのを」
 ルルーシュの問いかけにスバルが答えた。
 頭を使うのは得意でない部類に入る彼女だったが、管理局員として最低限の判断力は持っていたことに、内心で安堵する。
 バリアジャケットのズボンのポケットから、1つの拳銃が取り出された。
 スバルの手の中に握り締められていたのは、レイから没収したSIG P220である。
「あとは、紙のカードみたいなものが2枚」
「カード?」
 スバルとルルーシュの声。
 それに呼応するように、レイが制服の胸ポケットへと手を伸ばした。
 そこから取り出された2枚のカード。1つは光の護封剣。1つはフリーズベント。
 前者は彼女が扱いを得意とする、デュエルモンスターズの魔法カード。後者は未知のカードゲーム。
「私の元いた世界で、武器として使っていたカードです」
 2枚のカードをルルーシュ達に見せながら、レイが言った。


 捕まった。
 ルルーシュと呼ばれていた男の視線を受けた時、そう思った。
 たかだが13歳の思考能力でも、彼の放つ眼力が本物であることは分かる。この男を前にしては、半端な嘘は意味をなさない。
 スバルさえどうにか言いくるめればいいとばかり思っていたが、まさかこんな奴が待っていようとは。
 この男はごまかせない。下手を打てば即座に始末される。冗談ではない殺気が込められている。
 故に、ここは正直に話すしかなかった。
「武器として……魔法のようなものか」
「大体そんなところです」
 ルルーシュの確認に、レイが答えた。
「そしてこのデュエルアカデミアは、元々私が通っていた、このカードの使い手を要請する学校なんです。
 それで……ちょうど、今、そのカードを探していたところで、スバルさんを見つけたんです」
 幾分か早口になりながら、己が手の内を晒す。
 今は信用を勝ち取らねば。スバルのような単純思考ではない、この疑り深い男を納得させるためにも。
「場所の目星はついているのか?」
 ほら、食いついた。
 内心でレイはほくそ笑む。
 スバル達の魔法にも並ぶ能力を秘めたアイテムが、欲しくないはずがない。
 であれば、こうして協力的な姿勢を見せれば、自分への疑いをある程度緩和することもできるはずだ。
「案内します」
 言いながら、扉の外へと皆を促す。
 先頭を歩きながら、背後の面々へと思考を向けた。
 さて、この状況で、自分はいかに動くべきか。
 厄介なのはスバルだ。彼女の思考回路はある程度知っている。それが殺人という手段を、到底選ぶはずもないということも。
 無論、彼女がパラレルワールドというところから来た、もう1人のスバルであるという事実には大いに驚いた。
 だがその性分は、自分の知るスバルと、大体一致していると見て間違いはないだろう。
 憧れる上司と親友のために、悲しみの涙を流していたのが何よりの証拠だ。
 もう1人の青髪の少女も、見たところアカデミアの生徒達のような一般人と思われる。
 この2人の意見と自分の方向性とは、まず間違いなく反発する。殺しを提案しても切って捨てられる。
 つまりこのままでは、十代のために戦うことが難しくなってしまうということだ。
 かといって、スバルはこのまま振り切れるような相手ではない。ルルーシュの警戒の目もある。
(……いや)
 と、不意に脳裏をよぎる思考があった。
(むしろ、好都合なんじゃ……?)
 他ならぬルルーシュの存在だ。
 この中で最も警戒すべきだと思っていた男。だが、ともすれば、それを逆手に利用することもできるのではないか、と。
 ルルーシュは先ほど自分に対し、明らかに殺気を放っていた。
 つまりこの男、他の2名と異なり、ある程度の危険思想の持ち主であることが伺える。
 もちろん、無為な殺人を繰り返すほど愚かでもない。であれば彼は、まさにうってつけの存在ではないか。
 殺し合いから脱出しようとするスバルを守るために、殺人者達を手にかけようとするのではないか、と。
 そうして危険人物を減らしてくれれば、十代の安全が守られることにも繋がるはずだ。
 鍵はルルーシュが握っている。しかし、今はまだ彼に対する情報が足りない。
 知らなければならなかった。この男のことを。
 そのためにも、まずは目指さなければならない。
 果たして、あのシャッターで閉ざされた売店にたどり着いた時、ルルーシュ・ランペルージはどう出るか。


 先ほど出会ったレイの後を、スバルがそれに続いて歩いていく。
 思い返すのは、やはりルルーシュのことばかりだ。
 果たして自分は本当に、これでよかったのだろうか。
 無理にでも彼の知る自分を演じた方が、彼にとってはよかったのではないのだろうか。
 後悔にも似た感情が、スバルの胸中を支配していく。
 自分を抱き締めた時、ルルーシュはあんなにも震えていたのだ。あんなにも心を痛めていたのだ。
 表向きには気にしていない様子だったが、実際はどうだったか分かったものではない。
 同じ顔、同じ声。それでも自分のことを知らない、そっくりなだけの他人。
 自分の存在は、今なおルルーシュの心を傷付けてしまっているのではないか。
 緑の瞳へと、沈痛な色が宿されていった。
「――スバル」
 と、声をかけられ、立ち止まる。
 自分を呼び止める低い声。ルルーシュの発する男の声。
 返事をする余裕もなく、不安げな表情と共に、振り返った。
「お前が俺のことを知っていなくとも、俺にとって問題ではない」
 お前はお前だと。
 自分が守りたいと願っていた、スバル・ナカジマであることに変わりはない、と。
「だからこそ、誓おう」
 左腕を構え、礼の姿勢を取る。
 さながら中世の騎士のごとく。
 主君への忠義を誓う、誇り高き黒衣の英雄のように。
 吸い込まれるかのような紫の瞳には、一点の曇りの色もなく。
「俺はお前の力となる。お前が望むというのならば、俺は牙とも盾ともなろう」
 迷いなきまっすぐな声が、デュエルアカデミアの廊下に響いていた。
「……この先何があろうとも、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアの名において、スバル・ナカジマを守り抜くと誓う」

 かくして、少年は再び刃を手に取った。
 魔王ではなく、騎士として。
 生涯最大の親友にして宿敵の、あの白き軍馬の駆り手がそうしたように。
 たった1人の姫君のために。
 たとえ彼女が、自分の知る者とは別人だとしても。
 そこに宿された魂までは、偽りなどではないのだから。

 ――ただ、守り抜くために。


【1日目 朝】
【現在地 G-7 デュエルアカデミア(保健室前廊下)】

【ルルーシュ・ランペルージ@コードギアス 反目のスバル】
【状況】左腕に裂傷、右腕欠損、疲労(大)
【装備】洞爺湖@なの魂、ブリタニア軍特派のインカム@コードギアス 反目のスバル、スバルのはちまき
【道具】支給品一式、小タル爆弾×2@魔法少女リリカルなのはSTS OF HUNTER、インテグラのライター@NANOSING、
    救急箱、医薬品一式、メス×3、医療用鋏、ガムテープ、紐、おにぎり×3、ペットボトルの水、火炎瓶×5
【思考】
 基本:守りたい者、守るべき者を全力で守り抜く
 1.スバルを守るために、たとえ汚れ役を買って出てでも、スバルにとって最善と判断した行動を取る
 2.ディエチやカレンの犠牲は、絶対に無駄してはならない
 3.皆は反対するだろうが、もしもの時は相手を殺すことも辞さない。それだけは譲れない
 4.シャーリー、C.C.、クアットロ、チンクと合流したい
 5.ゲーム終了時にはプレシアに報復する
 6.レイ、および左腕が刃の男(=ナイブズ)を警戒
【備考】
 ・ギアスに何らかの制限がかかっている可能性に気付きました。また、ギアスのオンオフは可能になっています。
 ・ギアスの発動には、左目の強烈な痛みと脱力感が伴います。
 ・プラント自立種にはギアスが効かないことが確認されました。
 ・シャーリーが父の死を聞いた直後から来ていることに気付いていません。
 ・ブリタニア軍特派のインカムはディエチからもらった物です。
 ・こなたの世界に関する情報を知りました。もっとも、この殺し合いにおいて有益と思われる情報はありません。
 ・「左腕が刃の男」が、既に死亡したナイブズであることに気付いていません。
 ・ここにいるスバルを、“本物のスバル・ナカジマ”であると認めました。

【スバル・ナカジマ@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
【状態】健康、若干の不安
【装備】レギオンのアサルトライフル(100/100)@アンリミテッド・エンドライン、バリアジャケット(はちまきなし)
【道具】支給品一式、スバルの指環@コードギアス 反目のスバル、SIG P220(9/9)@リリカル・パニック
【思考】
 基本 殺し合いを止める、できる限り相手を殺さない
 1.こなたを守る。こなたには絶対に戦闘をさせない
 2.ルルーシュ……
 3.アーカード(名前は知らない)を警戒
 4.六課のメンバーとの合流、かがみとつかさの保護、しかし自分やこなたの知る彼女達かどうかについては若干の疑問
【備考】
 ・こなたが高校生である事を知りました。
 ・質量兵器を使うことに不安を抱いています。
 ・パラレルワールドの可能性に行き当たり、自分は知らない自分を知る者達がいる事に気が付き、
  同時に自分が知る自分の知らない者達がいる可能性に気が付きました。
 ・参加者達が異なる時間軸から呼び出されている可能性に気付いていません。
 ・この場にいる2人のなのは、フェイト、はやての内片方、もしくは両方は並行世界の19歳(sts)のなのは達だと思っています。
  9歳(A's)のなのは達がいる可能性には気付いていません。
 ・自分の存在が、ルルーシュを心を傷付けているのではないかと思っています。

【泉こなた@なの☆すた】
【状態】健康、若干の不安
【装備】レヴァンティン
【道具】支給品一式、投げナイフ(9/10)@リリカル・パニック、バスターブレイダー@リリカル遊戯王GX、ランダム支給品0~1
【思考】
 基本 かがみん、つかさ、フェイトに会いたい
 1.アーカード(名前は知らない)を警戒
 2.かがみん達…あたしの事知ってるよね?
【備考】
 ・参加者に関するこなたのオタク知識が消されています。ただし何らかのきっかけで思い出すかもしれません。
 ・パラレルワールドの可能性に行き当たり、かがみ達が自分を知らない可能性に気が付きました。
 ・参加者達が異なる時間軸から呼び出されている可能性に気付いていません。
 ・ルルーシュの世界に関する情報を知りました。

【早乙女レイ@リリカル遊戯王GX】
【状態】健康
【装備】なし
【道具】支給品一式×2、『フリーズベント』@リリカル龍騎、『光の護封剣』@リリカル遊戯王GX、ランダム支給品0~1
【思考】
 基本:十代を守る。
 1.売店に向かい、カードを探す。
 2.各施設を回りカードとデュエルディスクを手に入れる。
 3.ルルーシュは使えるかもしれない。今後の動向を伺う。
 4.殺し合いに乗っている者を殺害する。
 5.スバル達と方針が合わなかった場合は離脱。ただし、逃げられるかどうか……?
 6.フェイト(StS)、万丈目を強く警戒。
【備考】
 ・リリカル遊戯王GX10話から参戦です。
 ・フェイト(A's)が過去から来たフェイトだと思っています。
 ・フェイト(StS)、万丈目がデュエルゾンビになっていると思っています。また、そのことをスバル達にはまだ話していません。
 ・ここではカードはデュエルディスクなしで効果が発動すると知りました。
 ・デュエルデュスクを使えばカードの効果をより引き出せると思っています。
 ・カードとデュエルディスクは支給品以外にも各施設に置かれていて、それを巡って殺し合いが起こると考えています。
 ・デュエルアカデミアの3分の2を調べました、どの場所を調べたかについては次の書き手さんにお任せします。
  但し、売店内部は調べていません。
 ・デュエルアカデミアの売店はシャッターによって施錠されている為、現状中には入れません。


【チーム:黒の騎士団】
【共通思考】
 基本:このゲームから脱出する。
 1.ゲームから脱出するための手がかりを探す。
 2.売店へと行き、デュエルモンスターズのカードを探す。
 3.それぞれの仲間と合流する。
【備考】
※それぞれが違う世界の出身であると気付きました。
※デュエルモンスターズのカードが武器として扱えることに気付きました。



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泉こなた Next:王の財宝 ~天地鳴動の力~
早乙女レイ Next:王の財宝 ~天地鳴動の力~






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