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Round ZERO ~ SAWS CUNNING(後編) ◆RsQVcxRr96




上り始めた太陽の光が屋上に緩やかな暖かさを齎してくれる。
だが一方で直に吹き付ける冷たい風が寒さを齎すのもまた事実だ。
暖と寒という相反する要素が織り交ざるこの屋上で一人の生者が一人の死者を思っていた。
サイドポニーの結んだ茶色の髪を風に靡かせている少女――生者の名前は高町なのはという。

「……うぅ……ぁあ……アリサ、ちゃん」

なのはの心をこれほどまでに揺るがせる相手――アリサ・バニングスという死者の存在だ。
つい先程行われた放送はなのはにとって耐え難いものだった。
名前を呼ばれた死者13人の内、約半数に当たる6人が知り合いの名前だったからだ。

エリオ・モンディアル――機動六課の新人フォワードの一人。若き騎士はこの場でどのような最期を遂げたのだろうか。
クロノ・ハラオウン――付き合いも長いフェイトの義兄。彼のような優秀な魔導師でさえあっさりと死んでしまった。
シグナム――機動六課の同僚にしてヴォルケンリッターのリーダー。たびたび模擬戦に誘われたが、案外そういう時間は楽しかった。
高町なのは――この地で出会う事が無かったもう一人の自分。いったい彼女は何を想って死んでいったのだろうか。
ティアナ・ランスター――機動六課の新人フォワードの一人。精神的にも成長して執務官を目指していた彼女も儚く散っていった。
ディエチ――戦闘機人更生組の一人。付き合いはそれほどでもないにしろ同じ砲撃手として感じる事はあった。

そして10年以上にも渡る交友関係にある親友アリサ・バニングスの二度目の死。

都合7人にも及ぶ死者の名前がなのはの胸に重くのしかかってくる。
もしも自分がもう少し上手く立ち回っていたら救えた命があったかもしれない。
そう思えば思うほど自分という存在がひどく小さく情けなく思う。
志を同じくする仲間は見つかったが、それで誰も救えなければ意味がない。

「……みんな……アリサちゃん」

平行世界から来た別の人という可能性があると金居は言ったが、それでも知り合いは知り合いだ。
理屈ではなく本能が悲しみを否応なく運んでくる。
それに出会っていない6人は分からないが、アリサだけは違う。
自分の目の前で殺された親友は紛れもなく自分の知っているアリサ・バニングスだった。
それは確信できる。

「……もう、会えないんだよね」

悲しみに耐えきれずに不意になのはは視線を下に落とす。
すると視界に入った自分の手に握られている物が目に入った。
それは何の飾り気もない白いヘアバンドだった。
放送を聞く前に調べていたデイパックに入っていた物だ。
つい勢いで持ってきてしまって手持無沙汰だからかずっと握ったままだった。
だが、そのヘアバンドは10年前から見慣れたなじみの代物だった。

月村すずか。
なのはにとってアリサ・バニングスと同じ月日を過ごしてきた親友だ。
アリサもすずかも魔法世界と関わりが深くなったなのはにとっては相も変わらぬ親友である。

「そういえば、私達の始まりも、このヘアバンドだったよね」

なのはは昔の事を思い出していた。
あれは小学1年生の頃だった。
あの頃のアリサは心が弱かったが故に我儘な自信家で、すずかは気が弱いが故にはっきりと物を言えない少女だった。
そんなある日の出来事だった。
アリサがすずかをからかって大事なヘアバンドを取ったのだ。
すずかは返してもらおうと訴えたが、アリサは調子に乗って返そうとはしなかった。
あの時自分が何を考えて動いたのかよくは覚えていない。
だけど何か思う事があって――自分はアリサの頬を力一杯叩いた。
でもその時言った言葉は今でも覚えている。

――痛い? でも大事なものを取られちゃった人の心は、もっともっと痛いんだよ。

それから二人で大喧嘩になって、すずかが止めに入って、それからだった。
3人でよく話すようになって、気づいたら親友と呼べる関係になっていた。
だが、もうその3人が揃う事はあり得ない。

「大事なものを取られちゃった人の心は、もっともっと痛いんだよ……か。ホント、胸が、痛いな」

なぜ今そのような事を思い出したか。
ヘアバンドの事もあるが、もう一つは今いる場所だ。
学校の屋上、ここは聖祥大付属小学校のそれと瓜二つだった。
校内の様子も所々違うものの似ている部分が多く見られた。
だからだろう。
ふと昔の事を思い出してしまう。
もう二度と見る事が出来ないからこそ、望む心は強くなる。

「でも、だから皆を生き返らせるっていうのは……違うよね。そんな事をしても誰も喜ばない」

死とは永遠の離別。
確かにもう一度会いたい、生きていてほしいという気持ちはある。
でも、だからと言って死んだ人を生き返らせる事は出来ない。
それは自分の手を血に染めるという事で、そんな事をしてまで生き返りたいとは彼らは望まないだろう。
だからこそ自分に出来る事はこうして立ち止まる事ではなく、前を向いて進む事だ。
それが悲しみに暮れていたなのはが出した結果だった。

「元の世界へ戻ったら、すずかちゃんとお話ししなきゃいけないな。アリサちゃんが急にいなくなって、きっと戸惑って――」

そこでなのはの言葉は途切れた。
途切れさせたのはなのは自身だ。
今なのはの様子を見れば、大抵の人は彼女が酷く落ち着きがないと思うだろう。

(そんな……そんな……でも、実際にアリサちゃんは連れて来られて……それにヘアバンドまでここにある……
 それに、私とフェイトちゃんとはやてちゃんとアリサちゃん! 4人もいて、すずかちゃんだけが無事なんて保障どこにもない!)

なのははいくつもの思いを巡らせる内にある可能性に気付いてしまった。
それは月村すずかもプレシアに連れて来られているのではという懸念だった。
最初はただのふとした考えだったが、考えれば考える程その可能性は真実に思えてきた。
そもそも高町なのは、フェイト・T・ハラオウン、八神はやて、アリサ・バニングス。
いつもの5人組の内の4人までがいて、残り一人いないなど不自然だ。
それにこのヘアバンド。
すずかちゃんがいつも付けていたトレードマークとでもいうべき物がなぜ支給品として配られているのか。
答えは自ずと一つに絞られる。
月村すずかもプレシアによって攫われているのだ。

(この会場にいないのは、たぶん私達に対する保険。それならアルフさんやリインがいなかった理由も説明がつく!)

プレシアにとって高町なのはや時空管理局は計画を阻んだ存在だ。
そんな実績のある自分達を警戒するのは当然だ。
もしも自分達が首輪を外してプレシアの元へ辿り着いた時、すずか達はその時のための保険だ。
この場にいないアルフやリンフォースⅡやもしかしたらこの場にいる全員分の知人が捕まっているとしたら……
プレシア側に人質がいればいくら首輪を外しても迂闊に手が出せない。

(でも、これはまだ可能性の話! まだ、そうだと決まった訳じゃ――)
「おい、もういいか」
「え!?」
「十分泣いたんだろ。もう行くぞ」

いつのまにか背後に来ていた金居になのはは虚を突かれる形となった。
とりあえず今まで考えた事はひとまず置いておくとして、普段通り振る舞う事にした。
確証もない考えをいつまでも考えていては疲れるばかりだ。
また落ち着いた時にでも改めて考え直せばいい。

「心配して、くれたんだ」
「こっちの都合だ。それより一つ気になる事がある」
「なにかな?」
「ペンウッド君の事だよ」

いきなり出された名前は共に行動する少し頼りなさそうな仲間の名前だった。
なのはから見てペンウッドは少しおどおどしているような気がするものの、大人としての分別を持っている男性だ。
特に気にかかる事なんて思い至らなかった。

「ペンウッドさんがどうしたんですか」
「銀色の奴が鬼かもって話になった時、真っ先にペンウッド君が反論しただろ」
「ええ、確かに。そのおかげで余計な誤解を生まずに――」
「それがおかしいんだよ」
「へぇ?」

なのはは金居が今から何を言おうとしているのか見当が付かなかった。
心のどこかで聞かない方がいいと警鐘が鳴るがもう遅い。

「あのペンウッド君にしては妙に積極的じゃなかったか?」
「え、で、でもそれは……」
「面識がある奴ならともかく、あの時点で銀色の奴の行動は怪しいという流れだったんだぞ。
 それを赤の他人のペンウッド君が必死になって諌める理由なんてないと思うけどな」
「ちょっと待って! 金居君だってペンウッドさんの意見に賛同したでしょう」

なのははすかさず止めに入った。
これではまるでペンウッドが悪人のような言い方だったからだ。

「ああ、あの時はそうだったな。でも、よく考えてみたら変じゃないか。
 俺達と一緒にいたペンウッド君があんなに積極的に発言したのって、あの時が初めてだ。
 常におどおどしていたペンウッド君が銀色の奴が悪人扱いされそうになった途端にそれを積極的に否定し始めた。
 なにかあると思って当然だろ」
「それは……ペンウッドさんがその銀色の人と知り合いだった――」
「それなら尚更あの時にその事を主張するはずだ。だが、そんな素振りなんて見せなかった。
 まるで銀色の奴が悪人扱いされる事は都合が悪いと言わんばかりにね」
「――金居君、何が言いたいのかな?」

なのはの口調は先程より鋭くなっていた。
仲間が疑われていれば、それは当然の反応だ。

「もしかしたら銀色の奴が本当は悪人で、ペンウッド君がそれを誤魔化しているんじゃないか……そんな考えが浮かんだんだよ」
「そんな! そんな事、ただの想像にすぎないよ。私は、私はペンウッドさんを信じている」
「……これは俺の考えの一つだ。どう考えるかは貴様の自由だ。だけど貴様も見ただろ」
「…………」
「ペンウッド君、死者が呼ばれている時に悲しむ素振りなんて一向に見せなかった」
「――!!」
「アリサ・バニングスが殺された時でさえね」
「……金居君は、ペンウッドさんを疑っているの?」
「誰も彼もが無条件に信頼できると思ったら間違いだ。人が集まればそれだけ諍いが生まれる。組織に入っていたら分かる事だろ」

確かに時空管理局という組織に籍を置く身としてなのはにとって組織間延いては人間同士の諍いは他人事ではない。
意思の疎通を図っても人は時として互いの関係が悪化する事は多々ある。
時空管理局にしても陸と海の関係は依然として良好とは言えない状態だ。

「でも、ただの憶測という意見も間違いではないかもしれない。だから、この話は他言無用にしておこうか」
「……うん。そうした方が私もいいと思うよ」
「うん。じゃあ戻ろうか。二人を待たせているからね。ああ、そうそう……」

まだあるのかとなのはは心中うんざりしつつも、一応聞こうと思い耳を傾けた。
だが、それを聞いた時なのはは聞いた事を後悔した。


   ▼   ▼   ▼


太陽を象徴する温かな光が教室に満ち溢れている。
高町なのはが教室に戻って最初に抱いた感想がそれだった。
そして次に気付いた事が――

「弁慶さん、着替えたんですね」
「ああ、やっぱりあの格好はちと目立つかと思ってな」

弁慶の服装が黄色のパイロットスーツから墨染めの衣に変わった事だ。
さすがに元僧侶だけあって様になっている……と言うより、完全に荒くれ坊主そのものだった。
対するなのはの容姿にも若干の変化があった。
茶色のサイドポニーに白いヘアバンドがオプションとして付け加わったのだ。
すずかだけは無事である事を祈って、そしてアリサのような犠牲を出さないために。
そんな願いと決意の下に付けたのだが、なのはの心は晴れなかった。
理由は屋上で金居と話した事だ。
特に最後に言われた事は整理するには時間が掛かりそうだった。
それに情報処理室で見つけたパソコンの事。
電源が付いた以上あれには何かあると思うのだが、今は何となく言い出しにくい。
それが無意識の内の不信感から来る事になのはは分からなかった。
だからなのはは気付かなかった――教室の空気がどことなく曇っている事に。

「さて、ここで一つ提案なんだが」

金居が声を発すると他の3人の視線は自然と金居に集まった。
いつのまにか金居はこの集団のリーダーみたいな位置に座っている事になのはは今頃気づいた。
その事に一抹の不安を抱きながらもなのははペンウッドや弁慶と同様に金居の言う事に注目した。

「この辺りで別行動を提案する」

つまりはこうだ。
最初の六時間で60人いた参加者の内13人が死んで、残りは47人。
もしもこのペースでデスゲームが進行するなら殺し合いは1日と少しで終了するだろう。
実際は徐々にペースが落ちる可能性もあるが、逆に今の放送で殺し合いに乗る参加者も出てくる可能性もある。
ただ確実に言える事はデスゲームが順調に進行しているという事だ。
そうなっている以上今までのように4人で行動を共にするよりも2人ずつに別れて行動する方が賢明だ。
二手に別れる事によって戦力は落ちるが、その分多くの人と出会う可能性は高まる。
金居はそちらの方がメリットは大きいと主張した。
その金居の提案に対して残りの3人は少し躊躇ったものの、結局は賛成した。
誰かを救うにしろ情報を集めるにしろ、まずは人に出会う事が絶対条件だ。
各々不安はあったが、まずはそれを優先したのだった。

「それでペアの決め方だが、今後の命運を占う意味でもこのトランプで決めようと思う」
「トランプ?」

どうやら金居の支給品にはトランプが入っていたようだ。
金居が見せた説明書きにも『賭けポーカーに使ったり、ジョーカーだけ使ったり、使い方は自由』と書かれているだけだった。
どこからどう見ても何の変哲もないトランプ、つまりは外れ支給品だ。

「どうやって決めるんですか?」
「一枚ずつ引いて同じマークが出た者同士で組もうか。必然的に一組決まったらもう一組もその時点で決定する」

トランプは切り札と云う意味を秘めているカードでもある。
今後の行く末を決めるのには妥当な選択肢かもしれない。
なによりどの組み合わせでも問題なさそうな状況で手っ取り早く決める事が優先される。
全員に特に異存はなかった。

「では、一枚ずつ引いてくれ」
「じゃあこれで……俺はスペードのJだ」
「私はこれを……へぇ、クラブのQか」
「そ、それじゃあ私はこれにしよう。え、えっと、クラブのJか。つまり――」
「決まったね。俺の引いたカードは無駄か」

なのはとペンウッドが同じのカードを引いた事でペアは1回で決める事ができた。
次いで今後の方針を決めておく事になった。
結果、なのは・ペンウッド組は当初の予定通り商店街を回って道中にある施設を回りつつ工場へ向かう事に決まった。
一方の金居・弁慶組は首輪を持ってどこへも寄らずに逸早く工場へ向かって首輪解析の準備を整える事になった。

「実現させようぜ……俺達の望んでいた脱出ってやつを」

金居はトランプを回収しつつ、今日二度目となるセリフを口にした。
その意味は新たな決意の表れだろうか。
だがその真意は誰にも分からないまま金居は最後に自分が引いたカードをトランプの束に戻した。
そのカードは偶然にもダイヤのK――金居自身を表すカードだった。


   ▼   ▼   ▼


(ペンウッドさん……私、信じていいんですよね)

ペンウッドを信じると言ったが、なのはの心から一抹の不安が消える事はなかった。
ふと屋上で金居が最後に言った事が頭をよぎる。

――ああ、そうそう。アリサ・バニングスの事だが。
――アリサちゃんが、なにか。
――見せしめのためだけに呼ばれたという話。あれはどうも本当らしい。
――え!?
――名簿を見てみろ。死者の名前をチェックしていて気付いたが、本来ならそこには一つ名前が足りない。
――それって……
――ああ、そうだ。アリサ・バニングスの名前が無いだろ。

頭文字を五十音順で並べた60人の参加者の名前。
相川始から始まるその名簿にはある人物の名前がなかった。
アリサ・バニングス。
本来なら参加者としてあるはずのアリサ・バニングスという名前はどこにもなかった。
つまりアリサは最初から参加者として呼ばれたのではない。
本当に見せしめのためだけに呼ばれたのだ。
そして今度は死者蘇生の実演のためだけに命を弄ばれた。

あの時、なのはは何もできずにただモニターを眺めている事しかできなかった。
モニターを介しての逆探知もまるで効果がなかった。
ただアリサが生き返って……そして死ぬ場面を見ているしかできなかった。

(私は、守れなかった。アリサちゃんを、アリサちゃんだけじゃなくて死んでいった13人も、守れなかった。
 私は……誰かを助けるために管理局に入ったのに……魔導師になったのに……
 もしも、そのために誰かが危険に侵されたとしたら……私は……いったい……)

若き魔導師は他者を気に掛ける気持ちが強いが故に迷いが深くなる。
本来なら尊ぶべきその高尚な精神が今は逆に彼女を迷わせていた。

そして、そんな彼女を見つめる人物がいた。


   ▼   ▼   ▼


(だいぶ参っているようだ。知り合いの死、それも目の前で見せ付けられては無理もないか。ここは私が支えるべきか)

暗い表情のなのはを見つめるのは彼女とペアとなったペンウッドだった。
ペンウッドは自分が4人の中で一番戦力として頼りない事ぐらい自覚していた。
だから、せめて足手纏いにだけはならないように、少しでも支えとなれるように行動する。
それが自分の使命だと無意識に任じていた。

(金居君も彼女を励ましてやれと言っていた。彼も何だかんだで気には掛けているんだろうな)

――ペンウッド君。ちょっといいかい。
――な、なにかな?
――彼女の事だ。しっかり頼んだよ。

ペンウッドは足を進めつつ金居の発言を思い返していた。
あの時の金居は心底仲間を気遣っている表情だと思えるものだった。

そして、もう一人金居から話を聞かされた人物がいた。


   ▼   ▼   ▼


(……隼人、お前はもう死んでしまったか)

弁慶の手には一丁の銃が握られている。
S&W M500――敷島と銘打たれたその銃の本来の持ち主の名前は神隼人。
弁慶が当初この会場のどこかにいると思い込んでいた人物だ。
だが、なのは達と情報を交換し合う中で結局隼人はここにはいないという結論に至った。
名簿に載っていないというのが最大の決め手となったのだが、あの教室での一件でそれもあやふやになってきた。
それは金居がペンウッドへの違和感と一緒に話した隼人についてのある可能性だった。

――確か弁慶君はゲッターロボに乗っている時に連れて来られたんだよね。
――ああ、そうだ。
――つまりゲッターロボごと連れて来られた可能性が高いな。つまりこの時点でプレシアが確保した参加者は4人だ。
――でも、結局隼人はいなかったし、それにスバルやティアナが俺の知っている奴らと決まった訳じゃ……
――いや、プレシアとしても参加者集めは早く済ませたいと思うだろ。つまりここにいるスバルやティアナは……
――俺の知っているスバルやティアナって事か。あ、でもそれなら隼人はなんでいないんだ?
――考えられる可能性は二つ。監禁されているか、もしくはもう死んでいるか。

それだけならただの戯言だと切り捨てただろうが、今自分の手元にある銃が皮肉にも金居の説の裏付けを手伝っている。
このS&W M500は隼人が護身用に所持していた銃だ。
それがここにある以上隼人は今この銃を持っていない事を意味する。
そして隼人は狂人と言われる程の人物だ。
尚且つ反骨精神が豊富で大人しく捕まっている性分ではなく、寧ろ積極的に脱走しようとするほどだ。

つまり神隼人は既に脱走を試みて殺されている可能性が非常に高いのだ。

(……隼人、お前までいなくなっちまったのか)

弁慶は隼人がもうこの世にはいないような気がして幾らか寂しさを覚えた。
竜馬に続いて隼人までいなくなったかと思うと、自然と思う事もあるものだ。

そして、今まで様々な可能性を振り撒いてきた金居にはある変化があった。


   ▼   ▼   ▼


きっかけは些細な疑問だった。
それはここに来たらまずは誰でも考えるような疑問だ。
その疑問とは『どうしてここにいるか?』というものだ。
そして大抵の者は『いつの間にかここにいた』という結論に至る。
中には死後から連れて来られた者もいるが、そのような事例は少数だ。
そして大半の者がこの疑問への興味をここで失う。
確かに今までの事を考えるより、これから生き延びる事を優先する事は当然だ。
だがそれでいいのかもしれない。

この先は所謂パンドラの箱。または食べる事を禁じられた知恵の実。
開けない方がいい、食べない方がいい、知らない方がいい、そんな領域だ。
もしここに到達した者が特に力を持たない者なら何もない。
だがもしも強大な力を持った者がここに到達した時、その者は何を思うのだろうか。

その先の疑問、それは『どうやってここに連れて来られたのか?』というものだ。
そして、金居はそこに至ってしまった。

金居がそれを疑問に思ったのは放送前に校内を調べていた時だった。
本来の実力は相当なものであるカテゴリーキングである自分がなぜここにいるのか改めて疑問に感じたからだ。
確かに一度見知らぬ怪物に敗北を喫したが、それがあったからこそあの時よりは十分警戒するようにしていた。
それなのに今こうして自分は知らない間にここにいる。
十分警戒していたはずの自分に一切悟らせる事なく拉致するという手腕。
それは自分の力を、いや統制者の力と同等とも言える力のように思える。。
つまりプレシアはそれだけの事が容易にできる人物なのだ。

そして先程行われた放送。
禁止エリアは関係ない場所で、死者の名前には興味を引かれるようなものはなかった。
問題なのは、その後に行われた死者蘇生の儀式の最後に発せられた言葉だ。

――別にすぐにとは言わないわ。でも殺し合いが進まないと困るから、しかるべき時には……

つまりプレシアは過度に殺し合いの邪魔をする者には首輪の爆破も辞さないと言っているのだ。
ここで金居はある事実に思い至った――首輪を外す事は下策であると。
首輪を外したら当然殺し合いなどしない者が現れる。
そうなればプレシアにとっては都合が悪く、つまり殺し合いを過度に邪魔する者に値する。
こうなると首輪解除の手掛かりを得たとしても肝心の解除の瞬間にプレシアが干渉してくる可能性が高い。
いや、寧ろ解除した瞬間に首輪が爆発という可能性もある。
首輪を付けているからこそのデスゲーム。
その根本が破壊される事をプレシアが黙って見過ごすとは到底思えない。

この時、金居は一瞬絶望を感じた。
進むに進めず退くに退けない状態だと思ったからだ。

こうなると金居も方針の転換を考えざるを得なくなってくる。
今のまま行動すれば遅かれ早かれプレシアに目を付けられて迂闊な行動が取れなくなる。

そして考え付いた方法が『プレシアの殺害』だ。

まずはプレシアとコンタクトを取る方法を模索する。
つまりプレシアと手を組んで、彼女の計画に協力を申し出るのだ。
周りに気づかれないように参加者を殺す事もしておいた方が話も付けやすいだろう。
そして話が付いてプレシアに隙が十分できるまで近づいたら殺す。
それで全てが終わる。
首尾よくプレシアを殺したら、あとは彼女の持っている力を使って元の世界へ帰ればいい。
これでもう自分がこのような馬鹿げた遊戯に巻き込まれる事はないだろう。
もちろん残った奴の事は知った事ではない。

とりあえずは基本的には今までと同じように集団内で行動する。
だが今までとは違って不和の種をいくつか作っておく。
もしもこの集団が順調にいったら最終的には殺し合いを否定する大集団となり、殺し合いをしている者はこの集団の餌食になる可能性がある。
そして行きつく先は首輪の解除、プレシアの打倒という筋書きを行くに違いない。
そうなればプレシアと接触するなど不可能になってしまう。
なぜならおそらくそうなる前にプレシアが何らかの手を打ってくるに違いないからだ。
具体的には首輪の爆破が適当だろう。
それを阻止するためにも集団はある程度の規模に留めて適度に誘導しつつ、機会があれば強力な参加者を減らす際の捨て駒とする。
最終的にはプレシアと接触できないままなら最後の一人になった時が最後の交渉のチャンスだ。
それも視野に入れておく必要がある。

(だが、これは慎重にやらなければならないな。同時に他の手がないか調べる事も重要だ)

斯くして金居の方針に変化が起きる。
そのための第一歩として支給品探りの時から既に細工はしておいた。
なのはに調べるように渡したデイパックからは龍騎のカードデッキの説明書をこっそり抜いておき、自分が調べたデイパックにあったUSBメモリの存在は秘匿しておいた。

前者は渡す前に素早く見て抜いたものだ。
説明の内容はどれも興味深かったが、特に「一定時間以内に生きた参加者をモンスターに生贄として差し出す」という内容だった。
当然持ち主のなのははこの事を知らない、そしてこれから知る事はないだろう。
なぜならもう既に説明書の内容は自分が覚えた後でトイレに流して処分したからだ。
これでなのはがカードデッキの制限を知る可能性はほぼなくなった。
唯一の懸念は他にも知っている人と会う事だが、そんな都合よく会う事はまずないだろう。
これでモンスターの暴走という最悪の事態のお膳立ては整った。

後者は情報の制限が目的だった。
USBメモリにどのような情報が入っているにしろ、情報を寡占する事にはメリットがある。
問題は手元にパソコンがない事だが、こればかりはどこかで調達するかありそうな施設を当たるしかないだろう。
余計な詮索を避けるためにペンウッドにそのUSBメモリを抜き取ったデイパックは渡しておいた。

そして現状不自然に思われない程度に3人に不和の種を植え付ける。
これからどのような結果になるにしても今の彼らの表情を見れば効果があった事は明白だ。

金居は確かな手応えを感じつつも気を抜く事なく、次の行動を模索し始めていた。
それはまるで闇の中で蠢くクワガタムシのようだった。

だが、金居は知らなかった。
今まで自分達がいた学校に情報処理室というパソコンが山ほど置かれている部屋があったという事に。
そして、彼が惑わせたためにその存在を知っている人物が皆に知らせる事を躊躇した事を。
金居は知らなかった。

めくるめく運命は壊れそうな何かに――


【1日目 朝】
【現在地 D-4 学校前】

【高町なのは@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
【状態】健康、プレシアに対する怒り、深い悲しみと迷い、軽い疑心暗鬼
【装備】グロック19(14/15+1発)@リリカル・パニック、すずかのヘアバンド@魔法少女リリカルなのは
【道具】支給品一式、カードデッキ(龍騎)@仮面ライダーリリカル龍騎
【思考】
 基本:誰の命も欠かす事無く、出来るだけたくさんの仲間を集めて脱出する。
 1.なんとしてもヴィヴィオを救出する。それは何よりも優先。
 2.商店街を経由して施設を巡りつつ工場へ向かい、首輪を解除する手がかりを探す。
 3.出来る限り全ての戦えない人を保護し、仲間を集める。
 4.情報処理室の事、言いそびれたな。
【備考】
※金居を警戒しています。また紫髪の女子高生(柊かがみ)を気に掛けています。
※カードデッキの説明書を読んでいません。
 カードデッキの特性について把握できている情報は、「契約モンスターを呼べる」事くらいです。
※金居の話『ペンウッドは銀色の奴と手を組んでいる可能性がある』は半信半疑です。
※クロノのデイパックを自分のデイパックにしました。


【シェルビー・M・ペンウッド@NANOSING】
【状態】健康、若干の不安
【装備】なし
【道具】支給品一式×3、RPG-7+各種弾頭(榴弾5/照明弾2/スモーク弾2)@ACE COMBAT04 THE OPERATION LYRICAL、トランシーバー×2@オリジナル、ケリュケイオン@魔法少女リリカルなのはSyrikerS、菓子セット@L change the world after story、おにぎり×10、ランダム支給品(未確認1~2)
【思考】
 基本:自らの仕事を果たす。
 1.商店街を経由して施設を巡りつつ工場へ向かい、首輪を解除する手がかりを探す。
 2.この龍は本当に大丈夫なんだろうか?
 3.アリサという少女の思いは無駄にしてはいけない。
【備考】
※なのはを支える事が今の自分の仕事だと無意識に思っています。


【金居@魔法少女リリカルなのはマスカレード】
【状態】健康
【装備】なし
【道具】支給品一式、カードデッキの複製(タイガ)@リリカル龍騎、トランプ@なの魂、USBメモリ@オリジナル、砂糖1kg×9、ランダム支給品(未確認0~2)
【思考】
 基本:プレシアの殺害。
 1.プレシアとの接触を試みる(その際に交渉して協力を申し出る。そして隙を作る)。
 2.基本的に集団内に潜んで参加者を利用or攪乱する。強力な参加者には集団をぶつけて消耗を図る。
 3.利用できるものは全て利用する。邪魔をする者には容赦しない。
 4.工場に向かい、首輪を解除する手がかりを探す振りをする。
 5.ジョーカーは出来ればこの戦いの中で倒してしまいたい。
 6.もしもラウズカード(スペードの10)か、時間停止に対抗出来る何らかの手段を手に入れた場合は容赦なくキングを殺す。
 7.USBメモリの中身を確認したい(パソコンのある施設を探す)
【備考】
※このデスゲームにおいてアンデッドの死亡=カードへの封印だと思っています。
※最終的な目的はアンデッド同士の戦いでの優勝なので、ジョーカーもキングも封印したいと思っています。
※カードデッキ(龍騎)の説明書をだいたい暗記しました。


【武蔵坊弁慶@ゲッターロボ昴】
【状態】健康、トカゲ達(=アグモンとギルモン)を殺した者に対する怒り
【装備】閻魔刀@魔法少女リリカルなのはStirkers May Cry、修行僧衣@ウルトラマンメビウス×魔法少女リリカルなのは
【道具】支給品一式、S&W M500(5/5)@ゲッターロボ昴、パイロットスーツ@ゲッターロボ昴
【思考】
 基本:殺し合いを止め、プレシアを打倒する(どうやって戦うかは考えていない)
 1.工場に向かい、首輪を解除する手がかりを探す。
 2.スバルと合流する。
 2.軍事基地か地上本部に行き、ネオゲッターロボの所在を確かめる。
【備考】
※自分とスバル、ティアナ、隼人の4人は、ネオゲッターロボごとここに送り込まれたのだと思い込んでいます。
※隼人はプレシアによって殺された可能性が高いと思っています。
※金居から『恐竜達を殺したのは銀色の奴の可能性がある』『ペンウッドは銀色の奴と手を組んでいる可能性がある』という話を聞きました。


【チーム:少し、頭冷やそうか】
【共通思考】
 基本:首輪を解体し、このゲームから脱出する。
 1.二手に別れて工場に向かい、首輪解除の手がかりを探す。
 2.戦えない者は保護していく。
【備考】
※それぞれが違う世界の出身であると気付きました。
※なのはの話から、プレシア・テスタロッサについて大体の情報を得ました。
※チーム内で、ある程度の共通見解が生まれました。
 敵対的:アーカード、アレクサンド・アンデルセン、相川始、キング
 友好的:機動六課組、インテグラ・ヘルシング、天道総司
 要注意:クアットロ、龍を倒した奴(=アーカード)
 また、アーカードについてはインテグラと合流出来れば従わせる事が可能だと判断しています。
※カードデッキの特性について把握できている情報は、「契約モンスターを呼べる」事くらいです。


【共通備考】
※アグモンとギルモンの死体は【D-4 学校】にシーツを被せた状態で安置されています。
※【D-4 学校】の情報処理室にはパソコンが設置されています。電源を付ければ動きます。
※【D-4 学校】の1階の一部の教室の壁は弁慶によって破壊されました。


【すずかのヘアバンド@魔法少女リリカルなのは】
文字通り月村すずかのトレードマークとでも言うべき白いヘアバンド。
なのは・アリサ・すずかの仲良し3人組ができるきっかけとも言うべき思い出の品。

【トランシーバー@オリジナル】
2機で1セット。受信範囲は同じエリア内のみ。

【菓子セット@L change the world after story】
Lが考え事をする時に重宝する物。甘い物が大量にある。

【USBメモリ@オリジナル】
中身不明の記録媒体。

【修行僧衣@ウルトラマンメビウス×魔法少女リリカルなのは】
第14話においてウルトラマンレオことおゝとりゲンが着ていた墨染めの衣。

【S&W M500(5/5)@ゲッターロボ昴】
「.454カスール弾を超える弾薬を撃つ事のできるリボルバー」を開発目的として作成された超大型回転式拳銃。
黒いフレームに敷島と銘打ってある。


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