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絶望の罪人~双翼~ ◆jiPkKgmerY




その時、フェイト・T・ハラオウンはH-4を通る大通りを歩いていた。
頭上から鳴り響く、十年前に虚数空間に消えた筈の母の声。
何故こんな事をするんですか?
こんな事をして何の得があるんですか?
今すぐにでも問い掛けたい。多分冷徹な微笑みに一蹴されるだろうが、それでも聞きたかった。

『――それじゃあ禁止エリアの発表よ、よく聞きなさい』

だがそんなフェイトの気持ちが届く訳もなく、放送は続けられる。
フェイトはそれらを地図に書き込んでいった。そして来て欲しくなかった瞬間がやってくる。

『では次にお待ちかねの死者の発表よ』

フェイトは小さく息を飲む。
どうか皆が呼ばれませんように。なのはが、はやてが、シグナムが、ヴィータが、エリオが、キャロが――。

だが現実は非情である。そんなフェイトを嘲笑うかのように「エリオ・モンディヤル」、「シグナム」、「高町なのは」の名前が呼ばれる。
フェイトは暫し呆然と、×印の着いた三人の名前を見詰めていた。その両眼からは涙が流れ出している。

「なのは……エリオ……シグナム……」

まるで非殺傷設定の砲撃魔法に直撃した後のように、身体に力が入らない。
思考がボウっとして何も考えられない。頭に浮かぶのは楽しそうに微笑み掛けてくる三人の顔だけだった。

「本当に、死んじゃったの……?」

自分を暗闇から光の溢れる世界に導いてくれたなのはも、最初に出会った時は戦場で何時しか好敵手と呼べる関係になっていたシグナムも、不幸な人生に苦しみ続け、だけど最後は自分の話を理解してくれたエリオも。
皆、死んだ? もうこの世には居ないの? 二度と話すことも遊ぶことも出来ないの?

「やだよ……いやだよ、シグナム……エリオ……なのは……!」

クローンだから、と割り切れる問題ではない。涙は、どうしても止まらない。
ただ子供のように涙を流し続ける事しかできなかった。





数分後、フェイトは空を走っていた。
目は僅かに充血し頬には涙が通った跡があり、その表情は痛ましい。
だがそれでも、その瞳は使命感に、信念に、燃えている。
しっかりと前を見据え、フェイトはあるの目的を達成するために前へと前へと進んでいた。

「すぐに行くから、つかさ……!」

放送が終わって、涙を流し続けてから数分後、フェイトは元来た道を戻るように、全力で空を飛んでいた。
フェイトが得意とする高速移動―――その速さたるや将に雷神。
本来のデバイスでない分、スピードに陰りが見えるが、それでも充分過ぎる程の速度。
眼下に建つ街並みが見る見る内に後方へと流れていく。
十数分まえに出発したデパートがフェイトの視界に入るまで、二分と掛からなかった。

何故、機動六課隊舎に向かっていた筈の彼女が再びH-6に戻るのか?
それは先の放送が原因であった。
十四人もの死者が告げられた放送。
それによりフェイトは知った。いや、考えを改めた。
この殺し合いは自分が想定していた物より遥かに恐ろしさものだと。
―――自分と同等の力を持つシグナムとなのはでさえも、僅か六時間も生き抜くことが出来なかった殺し合い。
抵抗する力を持たないただの無力な少年であるエリオでさえも命を落とした、血も涙もない無常な殺し合い。
こんな馬鹿げた殺し合いに乗る人なんて居ないと思っていた。
居るとしてもほんの一握りの人達だけかと思っていた。
―――でも現実は違う。なのはは死に、シグナムは死に、エリオも死んだ。

間違っていた。
この戦いは自分が考えていたような甘いものではない。
誰でも平等に死の可能性があり、運が悪かったり実力を持たない者から命を落としていく。
そんな異常で異質な、まるで悪夢のような殺し合い―――それがこのバトルロワイアルだ。
そしてその殺し合いの場の中、自分は無力な女子高生を一人、放置してきた。
バリケードを張り、その中に隠れる―――確かに良い判断だったかもしれない。
でも、なのはやシグナムを倒すような実力者にあんな小手先の籠城作戦が通じるのか?
それにバリケードがある、という事はその中に誰かが隠れていると言っているようなもの。
万が一、殺人鬼がデパートを調べたら?
万が一、殺人鬼がバリケードに気付いてしまったら?
万が一、バリケードに隠れるつかさに気付いてしまったら?
―――想像するだけで寒気が走る。

「そんなの許さない……絶対に……」

自分なら守ることが出来る。
外を出歩けば敵に見つかる可能性も高くなるが、それでも自分なら戦える。
並大抵の相手ならつかさを守りながらでも勝てる自信がある。
なのはやシグナムを倒した相手でも時間を稼ぐくらいは出来るはずだ。
つかさを逃がす時間くらいは―――。

気付けばフェイトは、簡易なアトラクションが設置されたデパートの屋上に辿り着いていた。
放送が終わって三分と経っていない。
フェイトは直ぐさま非常階段へ向かおうとし―――そして、動きを止めた。

「光……? それに銃声……?」

その現象はは川を隔てて東側に広がる市街地にて発生した。
太陽光と同じ色の、だがそれよりも強烈な光が、ほんの一瞬遥か彼方に見える建物から噴出。
続いて相当距離が離れた此処にまで届く、火薬が破裂したような特有の重低音が二回。
その建物にて誰かが戦闘を行っている事を、フェイトは瞬時に理解する。


ここでフェイトの中に迷いが浮かんだ。
対岸に見えるあの建物では確実に戦闘が発生している。
閃光弾のそれとはまた違った異常な発光に、此処まで銃声を届かせる相当な威力であろう拳銃。
非殺傷設定に護られた魔導師の戦闘とは違う、本物の殺し合いだ。
止めなくてはいけない。
だが、自分が戦闘している間に、つかさが何者かに襲われたら?
自分が戦闘を止める僅かな時間の間に、つかさが危機に陥るのではないか?
確率は低いが有り得ない話ではないその思考がフェイトを迷わせる。
―――今すぐ向こう岸へと向かい戦闘を止めるか、それともつかさの元へ急ぐか……。
数十秒に渡る思考の後、フェイトが顔を上げた。その顔に迷いはない。

「ごめん……すぐ戻るから……」

そう言い残し、フェイトの身体が再び宙に浮く。
そして加速。
空駆ける隼の如くフェイトは一直線に空を駆ける。
目指すは戦場。
これ以上の犠牲者を出さない為に、これ以上自分のような悲しむ者を出さない為に、フェイトは戦いへの道を選択した。


フェイトがその建物に辿り着いたのはそれから一分後のこと。
目の前に聳える、今にも倒壊しそうなボロボロの建物。
元からこうだったのか、戦闘によってこうなったのか。
フェイトは自然と紫と黒の入り混じった大剣を両手に握っていた。

(ひどい……)

中の様子に顔をしかめながら、フェイトは奥へ奥へと進んでいく。
歩く度にフェイトの足の下でパキパキという音を鳴らす瓦礫。
染み渡るような静寂の中、それらは異様に大きく聞こえた。
―――そしてフェイトはその男を発見する。
苦しそうに左肩を抑え、大きく息を乱した金髪の男。
向こうもこちらに気が付いたのか、顔を上げる。

「大丈夫ですか!」

明らかに男は異常を来していた。顔は血の気が引いており蒼白。
瞳は焦点があっておらず、口は何かをボソボソと告げている。
フェイトは男の直ぐ側に膝を付き身体の様子を観察する。

(外傷がない……?)

簡単に看た限り男の身体に異常は感じられない。五体満足だし外傷も見受けられない。
異変といえば途中、二回三回男の左腕がビクリと跳ねたことだけだ。

「…………ろ」

――不意に男が何かを呟いた。上手く聞き取れずフェイトは顔を男の口に近付ける。
視界の端で再び男の左腕が跳ねた。


「どうしたんで――「逃げろぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」


――視界が真っ白な何かに包まれた。






「逃げろぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」

―――キースレッドが橋へと続く大通りを歩いていると、大絶叫が聞こえた。
キースレッドは立ち止まると、目を見開きながら声のした方向に顔を向けた。




この日キースレッドがこの声を聞くのは二度目であった。
一度目は数分前――――放送が終わった直後のこと。

誰も居ない筈の病院から聞こえてきた謎の慟哭――――粗方知り合いの死体でも見付け、あまりのショックに叫んでいるのだろう。
まぁ良い、とキースレッドは再び病院に忍び込んだ。そして、見つけたのはナイブズの死体の前で膝を付く、やけに派手な頭髪をした赤コートの男。
アイツの知り合いか――――数瞬前の生死を賭けた攻防を思い出すが、直ぐに気を取り直し「武装錬金」という言葉と共にサンライトハート改を出現させる。
奴の知り合いという事はそれなりの実力者だろう、油断はしない方が良い―――そう判断し、攻撃には万全をつくした。
サンライトハートを使っての目眩まし、そして突撃。ナイブズにも通用した必倒の連技。
だが、驚いたことに男は致命傷を避けた。とはいえ、次の銃撃には反応できず真っ赤な血を咲かせたのだが。
結果、男はナイブズの上に倒れ、明らかに致命的な勢いで血液を流し始めた。
おそらく心臓を貫いたのだろう。
だからトドメを刺さず、あの場は立ち去った。
なのに、だ。

「まだ生きているのか……」

どんなトリックを使ったのか、奴は生きている。
それどころか意識さえ取り戻し、先程の絶叫を放てるほどに回復している。

「チッ……ならばトドメを刺すまでだ」

右手には武装錬金、左手には超重型の拳銃。全支給品の中でも最高レベルの武器を装備しキースレッドは踵を返し―――そして見た。
四階建ての病院を突き破り遥か上空に伸びる白色の歪な翼―――いや、あれは刃か。
東から差し込む日光に照らされ、百メートルはあろうかという巨大な刃が、青空に向かって翳されていた。

「アレは……!」

その刃を見て、まず思い出したのはミリオンズ・ナイブズ。
あの翼のような刃は、病院にて対峙した際に奴が発現した白刃と酷似している。
だがスケールがあまりに違う。奴の刃は精々数メートルの規模、あれは少なくとも百メートルを越えている。
制限というものが存在する、この箱庭に於いてあのスケールは異常でしかなかった。

「ッッ!! 何ィッ!」

―――ヒュン、という空気を切り裂く甲高い音が聞こえた。瞬間、キースレッドは反射的にサンライトハートを防御の形で構えていた。
サンライトハートの面に大質量の白色がぶち当たる。
ドガ、という音か鳴り響いたかと思いきやそのままキースレッド毎、後方へと弾き飛ばした。
キースレッドも飛ばされまいと、両脚に渾身の力を込めるが力量の桁が違う。
キースレッドは滑るように大通りを後退していった。

(これは……!)

サンライトハート越しにこちらへ飛来した物体の正体を見る。
それは鞭のようなしなりを持つ白色の刃。
ナイブズに突き付けられた物や今尚天に向かって延びている物と同種の白翼。
出所はあの刃と同じく病院から。
天に伸びる刃と比べればずっと小さい、だがそれでもキースレッドの身長と同等の大ささ。
勢いを弱める気配を見せない。

(このままでは……マズい……!)

現時点は遮蔽物が存在しない大通りの上を吹き飛ばされてるから良いが、僅かに進行する方向を変えられたらアウトだ。
その瞬間自分は、この勢いのままそびえるビル群に突っ込む。今の内にこの状況から抜け出ないと最悪で死、少なくとも重傷を負うこととなる。

「くそっ!」

サンライトハートから左手を離し刃状に変形させ、白刃へと伸ばす。
刃が触れ合った瞬間、この白刃が如何に驚異的な切れ味を持っているのかを理解する。
だが、この技に切れ味の差など関係ない。

「砕けろ!」

ヴヴ、という音が不可視の波となり周囲に伝わり、直後に白刃が弾けた。
巨大な刃の先端の僅か一部分。だがこの状況を打破するにはそれだけで十分。
圧迫する力が消えたサンライトハートを構え直し、穂先を斜め下の地面へと向ける。

「う、おおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!」

そして、直ぐさま力を解放。山吹色の煌めきと共に刃が展開され地面に突き刺さった。
だが力の解放は止めない。自身の内に眠る闘争本能全てをサンライトハートに集中させる。

キースレッドの闘争本能に従って光が噴出し続ける。しかし、穂先は地面に固定され動かない。
動くのは、空中に居るキースレッド。
キースレッドの思惑通り、凄まじい重圧と共に周りの景色が線となり前方に流れ出す。
獲物を逃すまいと白刃が追いすがるが、サンライトハートの伸びる速度の方が僅かに早い。
徐々に白刃は遠ざかっていき、遂には視界から消え去った。だがそれでも、キースレッドは息を付くことをしない。
病院にそびえる巨刃自体はまだ届くからだ。あの巨刃の射程圏外まで行かなくては安心など出来ない。
キースレッドはサンライトハートによる飛行を続けた。



キースレッドが地面に降り立った場所は、既にH-7に差し掛かっていた。

「くそっ……忌々しい……」

胸の奥に湧き上がる屈辱に顔を歪め、感情のままに地面を蹴る。
――何だあれは? あまりに突き抜けている。自分の全能力を解放しない限り、勝てる気がしない。
それほどに異常。奴だけ制限が抜け落ちているかのような規模の力であった。
そもそもあれはあの金髪の仕業なのか?
奴もナイブズと同種の化け物なのか?
何故あんな力が出せる?
制限の下にありながらまるでARMSの真の力を解放したかのような馬鹿げた力。
有り得ない。あまりに不公平過ぎる。

「畜生……何なのだ、奴らは!」

空の上遥か高みで見物しているであろう主催者へと、この空の下にいる筈の怪物へと、キースレッドは吼えずには居られなかった。
キースレッドの掌の中。核金状態になったサンライトハートが日に当てられ山吹色に光っていた。

【1日目 朝】
【現在地 H-7】
【キース・レッド@ARMSクロス『シルバー』】
【状態】疲労(小)、両腕に若干の痺れ
【装備】対化物戦闘用13mm拳銃ジャッカル(4/6)@NANOSING、.454カスール カスタムオートマチック(6/6)@NANOSING、核鉄「サンライトハート改」(待機状態)@なのは×錬金
    エボニー(10/10)@Devil never strikers
【道具】支給品一式×6、予備マガジン×1、ジャッカルの予備弾(18発)@NANOSING、レリック(刻印ナンバーⅦ)@魔法少女リリカルなのはStrikerS、
首輪×2(神崎優衣、高町なのは(A’s))、ヴァッシュのコート@リリカルTRIGUNA's、S2U@リリカルTRIGUNA's、ランダム支給品0~4(元なのは(A’s):0~2、元カレン:0~2)
【思考】
 基本:キース・シルバー(アレックス)と戦い、自分の方が高みにある事を証明する。
 0.なんだというのだ……!
 1.この場を離れる。
 2.シルバー(アレックス)及び『ベガルタ』『ガ・ボウ』の捜索。
 3.1を邪魔するものは容赦なく殲滅する。
 4.できるだけ早く首輪を外したい。
 5.とりあえずどこかで落ち着きたい。
【備考】
 ※第六話Aパート終了後からの参戦です。
 ※キース・シルバーとは「アレックス@ARMSクロス『シルバー』」の事だが、シルバーがアレックスという名前だとは知りません。
 ※神崎優衣の出身世界(仮面ライダーリリカル龍騎)について大まかな説明を聞きました。
 ※自身に掛けられた制限について把握しました。
 ※白刃の主をヴァッシュだと予想しています。






圧倒的な開放感の中、目の前に見知らぬ景色が映し出された。
目の前には見たことのない服を着た銀髪の男の人。
その人はピンク髪の女の子を庇うように自分と対峙している。いや、これは自分ではない。
ナイブズだ。ナイブズの記憶が流れ込んできているのだ。
瞬間、強烈な光が発生し男の姿が消える。
自分――――ナイブズは一笑すると、いつの間にか空を飛んでいた男に向けて左腕を構えた。
解放。
「何か」が空を駆け、男へと飛来する。だがそれは男に命中することはなく、途中で欠き消えた。
同時に異常な倦怠感が身体を包みナイブズは膝を付いた。



―――ブツリ、と暗幕が下りる。



次に見えたのは四人の人。
さっきの男の人と女の子、あと藍色の長髪の女性と褐色肌の女性がナイブズを見上げていた。
長髪の女性と褐色肌の女性がピンク髪の女の子を背負い何処かに走っていく。
後には銀髪の男だけが残された。
それから始まった激闘は凄まじいものだった。
明らかにナイブズが圧倒されている。
あの剣士さんやアンデルセンにも匹敵する、いやそれ以上かもしれない驚異的な近接戦闘力でナイブズを追い詰めていく。
だがナイブズも負けていない。右腕を犠牲に「何か」を発動、ビル毎男の人を押し潰した。
決着は付いたかと思ったが、男の人は立ち上がってきた。眼光は衰えていない。
ナイブズの心に歓喜が浮かぶ。
そしてナイブズは左腕を構える。相手の男も剣を構える。
衝突。
明らかにナイブズが押し負けていたが、結果的に立っていたのはナイブズの方だった。
ナイブズはその場に膝を付き、地面に倒れた。



―――ブツリ、と暗幕が下りる。



次は、上体を起こした状態でベッドに寝転がっている紅髪の少女がいた。
少女とナイブズは一言、二言、言葉を交わす。不遜なナイブズの態度に少女の顔には怒りが宿り始めていた。
だが少女は声を出すことは叶わない。怒りを驚愕に変化して横を見る。
そちらから、緑色の服を着た自分にも見覚えのある男が突入してくる。
瞬間、ナイブズが「何か」を出した。紅髪の少女を跡形もなく消滅させ、同時にまた「何か」を飛ばし男の両腕を跳ねる。
そのまま男の首に刃状にした左腕を突き付け、男と会話を始めた。
数秒後、ナイブズは男を解放する。男は敵意ある瞳でナイブズを睨み、外に出て行った。

次に現れたのは―――なのはだった。


クロノのデバイスを構え息を切らし部屋へと入ってきた。
キョロキョロと部屋を見回し安堵の息を吐くとナイブズに話し掛けてくる。
―――止めろ、逃げろ!
いくら叫んでも届かない。当たり前だ。これは既に終わった出来事。今更どうすることもできない。
でも叫ばずにはいられなかった。
少し経ってなのはは紅髪の少女が消えている事に気付いた。絶望を顔に滲ませ悲痛な叫び声を上げる。
そんななのはにナイブズは近付いていく。
何をするつもりかは目に見えていた。
―――止めろぉぉぉぉぉおおお!
ナイブズは止まらない。そして白刃が翻った。
なのはの首が落ち、血が、なのはの命が流れ落ちていった。



―――ブツリ、と暗幕が下りる。



ナイブズは僅かな朝日が差し込む病院を歩いていた。
ふと聞こえた水の流れる音に引かれるようにナイブズは近寄っていく。瞬間、目の前に紅蓮が迫っていた。
それと共に聞こえる勝ち誇った少年の笑い声。
ナイブズの感情が大きく振れた。
ナイブズは刃、そして手に持ったデバイスらしきカードで障壁を形成しその火炎を防ぐと、笑い声の方へと刃を飛ばし歩いていく。
少年は驚愕していた。確実に殺したと思っていたのだろう。
少しだけ声を上擦らせナイブズと対峙する。だが少年はナイブズを前に自身を取り戻した。
何故かその瞳が真紅に変化し、何かを紡ぐ―――が全てを言い切る前にナイブズの斬撃が駆けた。
少年の顔に再度驚愕が宿る。だが少年は諦めない。
再度目を光らせ口を開く。しかし、その度にナイブズは左腕を振るい、遂には少年の右腕を斬り落とす。
絶叫が響き渡った。
息も切れ切れに告げる問いにナイブズは激昂を返し、トドメを刺すべく近付いていく。
そこに現れるは一人の少女。
少女は連続射撃で刃とナイブズのデイバックを墜とし、少年に駆け寄る。
少年は右腕を抑え覚束ない足取りで、悔しげに唇を噛み、闇の中に消えていった。
そして栗色の髪を持った少女はナイブズのデイバックから巨大な砲身を取り出し、ナイブズに立ち塞がる。

再度激闘が始まった。

ナイブズは油断なく、自身の左腕から何十にも及ぶ刃を射出し少女を追い立てる。
だが少女はそれらを撃ち落とし、避け、回避していく。
精密射撃なら自分にも迫る、身体能力は自分よりも上、その気迫には命すら捨てる覚悟が見えた。
事前に用意してあった爆薬を利用しての煙幕。
少女はナイブズの位置を把握している。
これなら当たる。自分もそう思った―――が、ナイブズはそれすらも打ち砕く。
ナイブズの前方に現れた「何か」が煙幕を吸い込み、少女の姿を露わにする。
迫る複数の白刃。
少女は逃げなかった。全身を貫かれ、だがそれでも引き金を引いた。
放たれた光弾は銀髪の男により腐敗させられていたナイブズの右腕を蒸発させた。



―――ブツリ、と暗幕が下りる。



ナイブズは市街地を歩いていた。
目的地は放送を行ったアーカード。やはり、あの時ナイブズも向かっていたのだ。
おそらく視界に広がる街並みの更にその先に、自分が潜んでいるのだろう。
ナイブズは不意に視線を感じ取った。
肌を焦がすような視線――殺気だ。この殺気は一度感じたことがある。
どんな攻撃があっても良いようにナイブズは身構える。だが見えたのは日光のような光、これも自分は見覚えがあった。

「――――惑星は南を下とする」

頭の中に直接声が響いた。瞬間、衝撃。
唐突な重力変化と強烈な衝撃にナイブズは大勢を立て直せず南へ落下していった。
途中何個ものビルを貫き、ナイブズは先ほどまで居た病院に墜落する。
そして身動きを取れずにいるナイブズの前に現れる赤コートを着た男。
男――キース・レッドはトドメの弾丸を放ってその場から消えた。だがナイブズはまだ生きている。
もはや執念なんて言葉で片付けられる域を超えていた。
怨念とも言える信念でナイブズは「何か」を発動し―――だが発射するには到らず死んだ。
最期に何を思ったか、記憶を通し自分には届いていた。



―――ブツリ、と暗幕が下りる。



真っ暗な部屋の中、ナイブズは一人の男と向かい合っていた。
赤コートに金髪の男は銀色のリボルバーを片手にナイブズを睨んでいる。

―――これは、この記憶は。
金髪の男は一刀の元に斬り捨てられ、その場に倒れる。
ナイブズはその男を担ぎ地下へと続く階段を降りていった。

―――止めろ、止めてくれ。
様々な器具を用いられ、男の右腕が検査される。
横では一人しかいない研究者が冷や汗を滲ませナイブズに語り掛けていた。
「この門はお前すら超える」――と。

―――頼む、目を覚まさせてくれ。見たくない。これ以上は見たくない。
場面が転換し、先の部屋に戻る。ナイブズの左手が発光し、それに合わせるように男の右腕も発光していた。
苦悶の表情で必死に何かを耐える男に、ナイブズは一つ二つ質問を投げ掛ける。

―――止めろ、止めろ、止めろ!
男は駄々をこねる子供のようにその問いを受け入れない。遂に拳銃をナイブズに向けるが、引き金を引くことは出来ない。
ナイブズが男の右肩に左手を置く。
男の右腕が一層強く輝き数多の羽、そして光の球を中心に白色の砲身が現れた。
虚勢という殻を破り、男の内側から深淵が吹き出す。

―――頼む止めてくれ、頼む止めてくれ、頼む!
だが男はまだ抵抗を止めない。左腕を伸ばしナイブズの胸倉を掴む。
ナイブズの脳裏によぎる沢山の人の顔。
この期に及んでまだ諦めない―――ナイブズは激昂し、左手を男の顔に押し付ける。男は叫び声と共に白目を向き意識を失った。
トン、と何かが触れる。それは砲身と化した男の右腕。そして――



「止めろぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」




――右腕から「何か」が放たれた。







さっきまで異様な熱を持っていた左腕はもう冷めていた。
でもその代わりに右腕が熱い。さきの左腕の熱を遥かに越える灼熱が広がっている。


「おおおおおおおおおおおおおおおおおお…………」


―――百年近くその中で生きてきて、お前一度も人間に対して憎しみをもったことがなかったのか?
―――お前はこの場で一度殺された。お前が命を賭けて護り続けた人間という種に、だ。
―――お前は何もしていない。ただ仲間を殺された悲しみに暮れていただけ。なのに奴は問答無用で攻撃を開始した。
―――それだけじゃない。お前の身体に刻まれた傷跡が全てを物語っている。
―――俺が力を貸してやる。百年以上に渡る借りを奴らに清算させるんだ。その為の力を貸してやる。
―――思い出したんだろう? その右腕の本当の使い方を。感じただろう理性も常識も吹き飛ばす最高の開放感を。


さっきまでの単純な殺意や憤怒とは違う。囁くような甘い言葉。ヴァッシュは必死に首を振りそれらの言葉を拒絶する。
なのに右腕の灼熱は止まらない。輝きを増し徐々に形を変えていく。


―――楽になれ、ヴァッシュ……もう矛盾だらけの人生を歩むのは止めるんだ。
―――中にはレムのような変わり者が居るかもしれない。だが、現実は違う。人間共の大半はあのキースレッドのような奴等がばかりさ。
―――自分の為に他者を利用し、殺す……そんな奴等が殆どなんだよ。お前だって気付いているんだろ?


悪意が、侵食する。
クロノを失い、なのはを失い、ナイブズを失い、ナイブズの記憶を知り、固く閉ざした過去を思い出してしまったヴァッシュには、その悪意を跳ね退けることが出来ない。
頭に響く呪怨に抗えない。

―――右腕が、巨大な砲台に、変貌する。

ヴァッシュの力にナイブズの力が上乗せされ、満ち溢れていく力。それは光の筋となり殺戮の会場を直進。
途中に続く全てのビルを貫き消滅させ、何の偶然か三人の超人が死闘を繰り広げていたその上空で発動する。
世界を白色に覆い、全てを喰らい尽くさんとするその光景は、まさに大災害(カラミティ)。
二人のプラントの力が相乗し発動したその圧倒的な暴力は、付近にある物体全てを飲み込んだ。

消滅するまでの僅か十秒間、光球は全てを無に返した。






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