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渇いた叫び(後編) ◆7pf62HiyTE




   ★   ★   ★



「万丈目、戻ったわよ」

と、かがみが店内に戻ったが中の様子がおかしい。明らかに静かすぎるのだ。人がいる様な気配はない。

『どういうことだ……?』
「もしかして……万丈目の奴、私が殺そうって事に気付いたんじゃないの?」
『何だと……』

バクラは万丈目がその事に気付くかどうかについては正直信じられなかった。万丈目の性格等を考えるならばここでかがみが万丈目を襲うという考えには至らないはずだからだ。だが……

『だが、元・宿主サマがどうやって宿主サマと戦うって言うんだ?カードデッキもリングも武器も全部宿主サマが持っているんだぜ?』
「わからないわよ、店の中に何か武器があるかも知れないし」

かがみは何処かに万丈目が潜んでいると考えスーパー内の捜索を始める。見た所店内は既に誰かが調べた痕跡がある。そして中にはレトルト食品の類や工具類は無かった。恐らく他の参加者が先に持ち出したのだろう。
だが、今重要なのは万丈目である。何処かに潜んでいるであろう万丈目を探さなければならない。

「どこ行ったのよ万丈目の奴!」

かがみは今も虎視眈々と自分を狙う万丈目に対して苛立ちを感じていた。その一方、

『(おかしい……元・宿主サマの奴は何を考えている……?)』

バクラには万丈目が何を考えているのかがわからなかった。バクラが見たところ万丈目がかがみの命を狙う可能性は無い。
人殺しを促進させるカードデッキを手放そうと考えていた事からもそれは明らかであったし、そもそも命を狙うつもりであればカードデッキをかがみに渡すというのはあり得ないからだ。
更に万丈目が他に武器を持っていないのはわかっている、店内もいたって普通で何か武器が隠されているとは思えない。

『(何だ……何が目的だ……?)』
「そうよ!防犯カメラ!!」

バクラが万丈目の狙いを考えていると、かがみが声をあげる。

『カメラ?どういうことだ?』
「ここってお店でしょ、お店には大抵防犯カメラってものがあるのよ!」

スーパーやデパート等のお店には普通防犯カメラというものが存在している。この場に存在するスーパーやデパート等も例外ではなく、防犯カメラは備えられている。
かがみはそれに万丈目の姿が映っているとと考え、奥にあるカメラの映像が収められているであろう部屋に向かう。だが……

「何で映っていないのよ!」
『プレシアが使えない様に細工したんだろうな……』

結論から言えば、カメラはあったものの機能はしていなかった。当然、映像が収められている筈もない。

『ここを根城にされるのを避ける為って所だろうな……』
「もう、一体何処に行ったのよ万丈目の奴!」
『焦るなって宿主サマ、カードデッキも武器も俺様達が持っているんだぜ。俺達の優位には……』
「何言ってんのよ!早く万丈目を喰わせないと私達が喰われるのよ!」
『おいおい時間はまだ残って……ちょっと待て……そうか、そういうことかよ……』

かがみの言葉でバクラは万丈目の狙いに気が付いた。

「どういうことよ?」
『外だ……』

かがみはその言葉に従いスーパーの外へ出る。しかし、外には誰もいない。

「何よ……いないじゃないの……」
『当たり前だ……もう奴はこの近くにはいない……』
「どういうことよ?」
『つまりだな……奴は宿主サマにカードデッキを押しつけてそのまま逃げ出したってこったよ』
「それってつまり……」
『自分が助かりたい為に宿主サマを捨て石にしたってこった』
「うっ……」

バクラの言葉にショックを受けるかがみ。かがみの中に後悔の念がよぎる。カードデッキを受け取った後、すぐにでも万丈目を喰わせていれば何の問題も無かった。
だが、万丈目を喰わせる事に失敗した今、危機的状況に陥っているのはかがみだ。何故なら既にカードデッキの所有権は万丈目ではなくかがみが有しているのだから。
制限時間を迎えればモンスターがかがみを狙う事は明白だ。そして、その時は目前に迫っている。

「急いで追いかけないと!」
『無駄だ……宿主サマが着替えに向かったすぐ後にここを抜け出したとしたらもう奴は遠くまで行っている筈だ。宿主サマじゃ追いつけねえよ、方向だってわからねぇしな』
「そんな……どうして私ばっかり……」

かがみはまたしても自分を窮地に追い込んだ周囲をそして万丈目を恨んだ。つい先程まで自分が万丈目を殺そうと考えていた事など既に忘れている。

「バクラの言うとおりすぐに万丈目を殺せばよかったのよね……くっ……」

正直な所、精神的にある程度落ち着きを取り戻していたかがみにはまだ周囲を他人を信じたい気持ちはあったのかも知れない。だからこそ、バクラの言葉があってもすぐに万丈目を殺せなかったのだろう……。
だが、万丈目の行動はかがみの心を完全に奈落へと落とした。

「もう誰も信じない……みんな殺してやる……」

かがみは周囲全てを恨み、その全てを殺す事に決めたのだ……自分の意志で。今のかがみは自分を助けてくれたバクラ以外は誰も信用出来ない状態に陥っていた。その最中、

『(やってくれたな……元・宿主サマ……いや、万丈目!)』

バクラは万丈目の事を考えていた。

『(少なくとも俺様が宿主サマと話す前まではそんな事は考えていなかったはずだ……つまり、俺様が宿主様と話を付けている間にこの策を考えたってこった……
  迂闊だったぜ……まさかこんな手段に出るなんてな……)』

いつものバクラならば万丈目の浅知恵などすぐに見抜けていただろう。だが、バクラがそれに今まで気づけなかったのにはちゃんと理由がある。
まず、バクラは万丈目が絶対にかがみを犠牲にするとは考えつかないと思い込んでいた事だ。
何しろ、人を殺したくないという理由で強力な力を持つカードデッキを手放す人間が善良な一般人を犠牲にするとは考えないだろう。仮にそれを行うとしてもそれはタイムリミットを迎えた時だ。
次に、バクラは万丈目の実力を過小評価していたという事だ。
チンクとの戦いではバクラが乗っ取らなければあっさり死んでいただろうし、放送後の考察についてもバクラが主導で行っていた事から万丈目の実力は大したこと無いと考えたのだろう。
そして、万丈目がバクラを信用しているから、自分が万丈目を餌にしようと目論んでいる事に気付かないと判断した事だ。
これまで何度と無くバクラは万丈目を助けていたのだから、今回も大丈夫だと考えていたのだ。

つまり、早々に万丈目の人間性を決めつけてしまった事こそがバクラの最大の失敗だったのだ。勿論、バクラの見立てが間違っているわけではない。だが、バクラは見落としていたのだ。
確かに今でこそ万丈目の正義感は非常に強い。だが、昔からこういう人間だったというわけではない。かつては他者を見下す様な事をする悪人ともいえる人間だったのだ。勿論、バクラには遠く及ばないが。

2年ぐらい前、万丈目は自身がいたデュエルアカデミアの最上級クラスであるオベリスク・ブルーからラー・イエローに降格させられそうになった事がある。
降格をかけて当時のラー・イエローの優秀生徒(これが誰かは今は万丈目自身覚えていない為ここでは触れない)と決闘をする事になった。
その当時の万丈目は優秀な兄達からの期待による重圧もあり追いつめられていた。その万丈目が取った手段は……対戦相手の寮に忍び込みデッキを盗み出し海に捨てるというものだ。
勿論、その行為は決して許されない行為だ。だが、万丈目はその事について全く悪びれはしなかったのだ。
なお、決闘の方は万丈目の敗北、その後万丈目はデュエルアカデミアから逃げだし(本人的にはそんな風にやってはいなかったが)、
その後ノース校に渡り実力を付けデュエルアカデミアとの対校戦を経てデュエルアカデミアに戻ってきたのだった(但し、出席日数の関係上最下級のオシリス・レッドになってしまったが)。
ノース校での経験があった事もあり、万丈目は当時とは見違えるぐらいデュエリスト的にも人間的にも成長したのだ。

閑話休題、結局の所万丈目が他の参加者を犠牲にしてでも自身を守ろうとする可能性は十分に考えられる事であり、バクラはそれを読み切る事が出来なかったのだ。
更に実力に関しても同じ事が言える。確かに実際にバクラと万丈目が決闘したら高い確率でバクラが勝つだろう。
それでも万丈目はプロデュエリストも多数ひしめくジェネックス大会で優勝する程の実力の持ち主だ。決して軽く見て良い相手ではない。

つまり、万丈目の見極めを誤ってしまったという事だ。本当ならばカードデッキを受け取ったらすぐにでも喰わせなければならなかったはずだった。
だが、万丈目などすぐに喰わせられるという思いこみと油断と余裕が、かがみの決心を待つという誤った判断を取らせ今回の失敗を引き起こしたのだ。

『(認めてやるぜ……俺様の負けをな……だが、万丈目……気付いているかどうかは知らねえが……お前が決め手になったんだぜ……)』

そこには周囲全てに殺意をむける少女、柊かがみの姿があった。

『(お前のお陰で宿主サマは殺し合いに乗った……これで俺様はようやくデスゲームを楽しめる様になったわけだ……だが、礼は言わねぇぜ……)』

モンスターへの猶予時間は間近に迫っている……次の放送前には確実にタイムリミットを迎えるだろう。だが、その状況にも拘わらずバクラは笑っていた。予定とは違ったがこれでデスゲームを楽しむ事が出来るのだから……

『(ヒャーッハハハハハハ!!)』

【1日目 午前】
【現在地 D-2 スーパー入口】
【柊かがみ@なの☆すた】
【状態】疲労(中)、肋骨数本骨折、強い周りに対する敵意、万丈目に対する強い憎悪、バクラを少し信頼
【装備】ストラーダ(待機状態)@魔法少女リリカルなのはStrikerS、千年リング@キャロが千年リングを見つけたそうで、カードデッキ(ベルデ)@仮面ライダーリリカル龍騎、スーパーの制服
【道具】柊かがみの制服(ボロボロ)
【思考】
 基本:死にたくない。なにがなんでも生き残りたい。
 1.もう誰も信じない。バクラだけは少し信用。
 2.参加者を皆殺しにする。
 3.万丈目を見つけたら絶対に殺す。
【備考】
※デルタギアを装着した事により、電気を放つ能力を得ました。
※地図、デイパッグの中身は一切確認していません。名簿は確認しましたがこなたやつかさであっても信じられる相手とは思っていません。
※一部の参加者やそれに関する知識が消されています。ただし、何かのきっかけで思い出すかもしれません。
※「自分は間違っていない」という強い自己暗示のよって怪我の痛みや身体の疲労をある程度感じていません。
※周りのせいで自分が辛い目に遭っていると思っています。
※Lは相手を縛りあげて監禁する危険な人物だと認識しています。
※第一放送を聞き逃しました。
※万丈目の知り合いについて聞いてはいますが、どれぐらい頭に入っているかは不明です。
※千年リングを装備した事でバクラの人格が目覚めました。以下【バクラ@キャロが千年リングを見つけたそうです】の簡易状態表。
【思考】
 基本:このデスゲームを思いっきり楽しむ。
 1.かがみをサポート及び誘導する。
 2.大至急バイオグリーザーへの生贄を探し出して喰わせる。
 3.万丈目に対して……?(恨んではいない)
 4.こなたに興味。
 5.可能ならばキャロを探したいが、自分の知るキャロと同一人物かどうかは若干の疑問。自分の知らないキャロなら……
【備考】
※千年リングの制限について大まかに気付きましたが、再憑依に必要な正確な時間は分かっていません。
※キャロが自分の知るキャロと別人である可能性に気が付きました。
※千年リングは『キャロとバクラが勝ち逃げを考えているようです』以降からの参戦です
※かがみのいる世界が参加者に関係するものが大量に存在する世界だと考えています。
※並行世界の話を今の所かがみにするつもりはありません。
※かがみの悪い事を全て周りのせいにする考え方を気に入っていません。



   ★   ★   ★



ここで少し時間を戻そう。それはバクラがかがみに万丈目が悪人だと吹き込んでいる時の事である。朝食を終えた万丈目は今後の事について考えていた。
なお、この時の万丈目はバクラが自分をモンスターへの餌にしようと目論んでいる事にはまだ気が付いていない。

「南に行けばLがいるか……」

かがみの証言ではLは危険人物という話である。具体的な事はまだわかっていないものの危険人物ならば止めなければならない。
かがみと情報交換をした後で南に向かわなければならないだろうと考えていた。

だが、万丈目には考えなければならない問題がある。それはカードデッキのタイムリミットである。タイムリミットを迎えれば万丈目が喰われる事になるのは言うまでもない。
当然の事だが万丈目は他の参加者を喰わせるつもりは全くない。

それに対して万丈目が最初に考えた対策はカードデッキの持ち主もしくは詳しく知る者を探す事である。
確かに関係者であればカードデッキについての対策を考えている可能性は高いのでこの策自体は間違ってはいない。
だが、万丈目は気付いていないものの結論から言えばこの策は間違いなく失敗する。
カードデッキが存在する世界から連れて来られた参加者は八神はやて、浅倉威、神崎優衣の3名。だが、既にはやてと優衣は死亡済み。
そして生き残った浅倉は殺し合いに乗っている。カードデッキを渡した所で喰われてしまうのは明白だ。
さらに悪い事に万丈目が所持するベルデのカードデッキを元々所持していたのは並行世界のプレシア・テスタロッサである。つまり、持ち主に返すという策はまず不可能である。

閑話休題、策を考えたものの不幸な事に万丈目はチンク以外の参加者とは誰にも出会わなかった。
そしていたずらに時間が過ぎていき万丈目は追いつめられていった。その最中で万丈目が次に考えた対策はミラーモンスターを破壊する事である。
確かにそれならば、カードデッキの力は失うものの他の参加者を犠牲にする事は無くなる。
問題はその為には強力な力を持った仲間が必要という事だ。

「どうすればいい……南に行ってLと接触するか……それとも商店街で他の参加者を探すか……」

既にD-3は禁止エリアになっている。商店街に向かうには北上する必要がある。Lと接触する為には南下する必要がある為真逆な方向となる。

「まあいい、彼女……確か柊かがみ君だったか、彼女と話し合って決めれば良いだろう」

と、万丈目はかがみにカードデッキの説明をする事も考え改めてカードデッキの説明書を見る。もしかしたら何か見落としがある可能性も考えたというのもある。
とは言え、当然の事だが最初に見た時と同様目新しい事は全く書かれていない。

「『12時間に1人、契約モンスターに「生きた参加者」を喰わせないと所有者が襲われるようになる』……
 『参加者を1人喰わせると猶予が12時間に補充される。猶予は12時間より増えない』……
 全く、何てアイテムを支給させたんだ……」

毒付く万丈目だった。

「『変身や契約モンスターの命令を1分継続させる毎に10分の猶予を消費する』……
 『猶予を使い切ると変身や命令は解除され、契約モンスターに襲われるようになる』……
 『所有者が自らの意識でカードデッキを捨てると契約モンスターに襲われる。無意識、譲渡、強奪は適用外』……
 ……そんな事はわかっている、他に何か無いの……ちょっと待て!」

万丈目は説明書に書かれているある項目に目を引かれた。

「今何時だ?」

万丈目は時計を確認する。9時半より数分ほど前である。

「おい……もし、書かれている通りならば……」

万丈目が気にした項目は『変身や契約モンスターの命令を1分継続させる毎に10分の猶予を消費する』である。
通常、猶予時間は12時間となっている。但し、変身などモンスターの力を使えば1分で10分消費してしまう。
つまり、6分変身していれば1時間消費した事になり、12分モンスターを出していれば2時間消費してしまうということだ。
勿論、変身していた時間さえ把握していれば自ずとタイムリミットも把握出来るのは言うまでもない。だが、

「俺は……何分ぐらい変身していた?」

万丈目がチンクに対処する際に変身した時、バクラが万丈目の身体を乗っ取り、その間万丈目は気絶していた。つまり、万丈目は変身時間を把握していないのである。
勿論、バクラの話ではそう長い時間ではないらしいが正確な時間までは聞いていない。1分変われば10分も変わる以上それを把握していないのは致命的である。
さらに、万丈目には別の問題にも気が付いた。それは、最後に喰わせたのがいつなのかわかっていないのだ。
勿論、殺し合いの場に放り込まれる直前に喰わせたのならば何の問題も無いが、仮にそれよりも数時間前ならば当然タイムリミットが早まるのも明白だ。
現在までモンスターは動きを見せていない為、喰わせたのは殺し合いが始まる直前の可能性が高いだろう。だが、こちらも数分のずれが命取りになるのは言うまでもない。

まとめよう、既にタイムリミットまで時間が無い事を意味していたのだ。この状況下では他の参加者に出会える可能性は0では無いにしろ低いのは間違いない。

「落ち着け!かがみ君とバクラで何か手を考えれば……3人で力を合わせれば破壊……」

だが、万丈目は気付いてしまったのだ。バクラがこの状況でどう動くのかに……
バクラはデスゲームを楽しむ事を目的としていた。万丈目とは全く正反対の考えを持っており、極端な話参加者を殺す事には全く躊躇が無い。
実際、万丈目がカードデッキを破壊する案を出した時バクラはその考えに難色を示していた事は万丈目自身もわかっている。
それでも、その時の万丈目はバクラが自分を裏切る事は無いと考えていた。何故なら、万丈目が襲われるという事はそのままバクラの危機にも直結するからだ。

しかし、かがみと出会った事で状況は変わってしまった。バクラは混乱状態に陥っていたかがみを説得出来ると千年リングをかがみに渡す様万丈目に提案した。
その時の万丈目は正直半信半疑だったが、試してみるしかないとその提案を受け入れた。

だが、ここでバクラの視点で考えてみよう。バクラはデスゲームさえ楽しめればそれで良いと考えている。
しかしその為には人殺しを良しとしない万丈目が邪魔である。さらに放っておけばカードデッキの制限時間を迎えリングごと自分が喰われかねない。
とはいえ、下手に万丈目に刃向かえばリングそのものを捨てられかねないので万丈目に従うしかない。

さて、ここで新たにかがみが現れた。バクラはこの状況に対しどう動くだろうか?
考えるまでもない。かがみを新たな宿主とすればもやは万丈目に存在意義はない。餌にしてしまえば制限時間の問題もクリアされる。
適当な理由を付けて万丈目を殺す様し向ければ何の問題もない。かがみがバクラの口車に乗るかどうかは微妙だったが、乗らなくても最悪乗っ取りさえすれば何の問題もない。

「バクラ……」

この後、バクラはどう動くだろうか?
選択肢としてはかがみにカードデッキを渡させる様にし向けさせる可能性は高い。渡した後は隙を突いて喰わせればいいだけの話だ。
勿論、それを拒否する事も出来るし、もしかしたらし向けない可能性はある。だが、仮にそう来たとしてもバクラ側から見て何ら問題はない。
今現在、カードデッキの所有権は万丈目が所持している。このまま放置した場合はモンスターは万丈目を喰らうだろう。それを待つだけでいいのだ。

「どうすればいいんだ……かがみ君を餌にするしかないのか……いや、無理だ……」

万丈目自身も自分が死ぬつもりは全くない。その手段だけは選びたくなかったがかがみを餌にする事も考えた。だが、それもすぐに難しい事に気が付く。
簡単な話だ、実際に戦闘になった場合ほぼ確実に万丈目が負けるからだ。
一見すると簡単にかがみを餌にする事が出来る様だがそれは違う。今現在かがみは千年リングを所持している。つまり、かがみにはバクラが付いているという事だ。
バクラはカードデッキも仮面ライダーも把握している。そうそう簡単に喰う事の出来る相手ではない。
他にも問題はある。万丈目は気付いていたのだ、かがみの腕にエリオのデバイスであるストラーダがある事に。つまり、かがみは武器を持っているということだ。
勿論、見た目にもボロボロのかがみが万丈目と戦えるとは思えない。だが忘れてはならない、かがみにはバクラがいる。バクラが乗っ取りさえすればその状態でも戦闘は可能だ。
戦闘になった場合、万丈目は変身しなければ確実に負けるだろう。しかし変身するわけにはいかない。何故なら、変身すれば一気に残り時間を使い切ってしまうからだ。
現在の時刻から考えて変身可能時間はせいぜい数分、カードデッキを把握しているバクラがその時間逃げ切る事は難しい事ではない。
そう、戦闘になった時点で万丈目は終わりなのだ。

「八方塞がりか……俺がこいつを持っている限り喰われてしまうか……待てよ……」

万丈目は何かに気が付き、再度説明書を確認する。そして、この状況を打開出来る方法を考えついた。だが、万丈目の表情は重い。

「これしか無いというのか……」

万丈目はかがみが戻ってくる直前まで悩んだ……その方法が上手くいくならば助かる可能性はあるし今後の問題もクリア出来る。しかし、失敗する可能性は高い。
いや、それ以前に万丈目から見た場合その方法は普通にかがみを餌にするという方法よりもずっと残酷な方法だろう。


だが……


万丈目が立てた作戦は至極単純なものだ。
カードデッキを上手くかがみに渡し適当な理由を付けて別行動を行いその隙に全力でスーパーから離れるというものだ。
カードデッキをかがみに渡した時点でカードデッキの所有権はかがみに移る。
バクラ側から見ればカードデッキを手に入れる事が出来れば遠慮無く万丈目を喰うと考えるので譲渡として認められるはずだ。
そして、かがみが行動を起こす前に何かしらの理由で別行動を取り、その隙にスーパーから離れれば自身の身を守る事が出来、同時にカードデッキからも解放されるのである。

カードデッキを渡す事に関してはバクラが使いたがっていた事を考えるなら上手くいく可能性は高いと万丈目は判断していた。
そして幾らバクラでも、渡した直後に万丈目を喰わせるとは考えないと読んだのだ。万丈目だってその危険性はわかっているのだから。
別行動を取る理由に関してはかがみの服装がボロボロだった事を思い出した万丈目はそれを理由に着替えに向かわせればいいと考えた。
かがみが現れた時点で着替えている可能性もあったが、その場合は店内を調べるとでも提案して別行動をすれば何とかなるだろう。
そして別行動を取ったらすぐにスーパーを出て逃げると……ボロボロなかがみが万丈目を追う事は困難だ。
カードデッキの力を使おうにも逆にタイムリミットの危険性が出てくるのでそれは有効ではない。
つまり、この方法が上手くいけば万丈目は自身の身を守る事が出来るのだ。

しかし、先程も述べたがこの作戦は失敗する可能性が非常に高い。
そもそもカードデッキを渡した直後にバクラが万丈目を喰わないという可能性自体が微妙なのだ。
いくら警戒していても実際にモンスターを繰り出せば万丈目が不利なのは明白だ。とはいえ、これはバクラがそこに考えが至らない事を願うしか無かった。
仮にそれが上手くいったとしても万丈目の作戦が途中で見破られれば全てがご破算だ。バクラに見破られない様に何とかかがみを誘導しなければならない非常に難しい作戦だった。

結論から言えばそれは上手くいった。
幸運な事にかがみにもカードデッキが支給されていた為、カードデッキを渡す事については容易に上手くいった。
さらにかがみの様子を見る限りバクラが乗り移ってはおらず、いきなりモンスターに襲わせる事は無かった。
そして服もそのままだった為、着替えさせるという理由で一時的に別行動させる事についても上手くいった。
正直、バクラが作戦を見破るのではないかと内心では不安だったもののそれは杞憂に終わった。
そして、かがみが奥の部屋へ向かったすぐ後、万丈目は気付かれない様にスーパーを出たのである。



   ★   ★   ★



さて、ここで語る事は恐らく参加者の中ではカードデッキが存在する世界から連れて来られたはやて、浅倉、優衣以外は気づけない事だろう。それは、カードデッキに関する制限の話だ。
結論から言おうか、本来であればカードデッキの譲渡というのは認められないはずなのだ。
そもそも、その世界では仮面ライダーが願いを叶える為に最後の1人になるまで戦っていた。
ところで、仮にその仮面ライダーの願いが最後の1人になる前に叶ったとしたらどうなるだろうか?
既に戦う必要がないからカードデッキを返す……それは許されない話である。それを行えば自分がモンスターに喰われるという話である。

何が言いたいのか?つまり本来ならば譲渡は認められないので万丈目の作戦はそもそも上手くいかないはずなのである。
だが、ちょっと待って欲しい。説明書にはちゃんと『所有者が自らの意識でカードデッキを捨てると契約モンスターに襲われる。無意識、譲渡、強奪は適用外』とある。
つまり、説明書を信じるならば譲渡は許されるはずである。これは一体どういう事なのか?

ここでもう1つ思い出して欲しい事がある。説明書には『12時間に1人、契約モンスターに「生きた参加者」を喰わせないと所有者が襲われるようになる』とあった。
これを見て疑問を感じないだろうか?何故「生きた参加者」でなければならないのか?
どう考えてもおかしいだろう、モンスターに餌を与えるのであれば死体であっても構わないはずだ。何故「生きた参加者」なのだろうか?
そもそも元々の世界でもそういう制限だったのだろうか?

結論から言えば、元々の世界ではそんな事はない。餌にすべきなのはモンスターを倒した時に出るエネルギーの塊で良いのだ。生きた人間を餌にする必要は全くない(餌にしていた仮面ライダーはいたが)。
更に言えば確かに餌を食べさせなければ襲われる様にはなるが、12時間という短い時間という事は無い。個体差はあるだろうが数日程度は耐えられるはずだ。
もはやそれが叶う事はないが、はやて、優衣がカードデッキの説明書を見ればその矛盾点に気付いてくれただろう(浅倉は別に気にせず殺し合いをするから関係ない。)。

では何故この場ではシビアな制限がかけられたのだろうか?主催者としては殺し合いを促進させる為にその制限をかけたのだろう。
そして、本来は無効であるはずの譲渡等を有効にした理由は制限を掛けた際の副産物か、手数を増やして殺し合いの駆け引きを盛り上げる為かだろう。勿論、断言は出来ないが。

何にせよ、カードデッキの制限により万丈目は追いつめられてしまったが、同時にカードデッキの制限が万丈目を救ったという事である。



   ★   ★   ★



ただひたすらに万丈目は走っていた。出来るだけ速くそして遠くまで逃げなければバクラによる追撃が来る可能性が高いからだ。
恐らく、既に万丈目の策には気付かれている。後はどれだけ遠くまで逃げるかの問題だ。

だが、かがみが負傷している以上、そこまで遠くまで逃げる必然性は無い。しかし、万丈目の足は止まる事は無かった。

何故、万丈目はそこまでして走り続けているのだろうか?それはきっと、バクラの追撃から逃げる為だけではないのだろう。
万丈目の心には強い罪悪感が占めていた。きっと、今の万丈目はその罪から逃げる様に走り続けているのだろう。

この策が上手くいけば確かに万丈目の命は助かるしカードデッキからも解放される。更に言えば持て余していた千年リングとバクラからも解放される。全てが万丈目の思い通りだ。
だが、その代わりにそれら全てをかがみに押しつけてしまう事になった。

この後どうなるかなど考えるまでもない。カードデッキの時間制限が来てかがみ自身が喰われる可能性が非常に高い。
勿論制限時間で喰われてしまえばカードデッキだけがその場に残る為、誰かが拾わない限りは二度とカードデッキが使われる事は無くなる。
それでも、かがみを犠牲にしてしまう事実にはなんら変わりがない。
仮にかがみが助かったとしても、状況的に他の参加者を喰うしかそれは起こりえない。つまりかがみによって他の参加者が殺される事を意味している。
万丈目が考える様にカードデッキを破壊してくれる事を期待したいが、状況的にその可能性は非常に低いだろう。

つまり、万丈目の行動により誰かしら参加者を死なせてしまうという事だ。いや……もっとわかりやすい言葉で言おうか。
万丈目は自分が助かりたい為に人殺しをしたという事だ。

勿論、その事がわからない万丈目ではない。

「すまない……かがみ君……」

万丈目はかがみに謝罪をしながら走り続ける。恐らくかがみは自分を裏切った万丈目を恨んでいるだろう。
願わくば運良く助かる事を願いたかった……いや、それすらも罪からの逃避だと万丈目は思った。

「恐らくかがみ君は死ぬだろう……いや……俺がかがみ君を殺した……」

万丈目は自身の罪を認識していた。確かにこの手段に出たのは状況に追い込まれていたからである。だが、この手段を最後に選んだのは他でも無い万丈目だ。

「何でこんなに苦しいんだ……!」

万丈目は罪悪感に押し潰されそうだった。2年前の万丈目だったらこんな風に苦しんだりはしなかっただろう。万丈目は何故ここまで変わってしまったのだろうか?
そんな万丈目の脳裏に浮かぶのは想い人の天上院明日香……ではなく、赤い制服を来た少年遊城十代だった。

「何故だ……」

万丈目は浮かんだ十代の姿を振り払い走り続ける。しかし不思議な事に再び十代の姿が浮かんでくる。

「あの時もそうだったが……何故お前の姿が!!」

ノース校に流れ着いた時も、万丈目は何度と無く十代の幻を見てそして声も聞いた。万丈目はその時の事を思い出していた。

「五月蠅い!消えろ!!」

万丈目は十代の幻を振り払い走り続けた。万丈目は危険人物と思われるLのいる南へは向かわず、ただひたすらに北を目指して走っていた。目的地については考えていない。
もしかしたら近くに他の参加者がいて、その人物と遭遇する可能性はあっただろう。だが、幸か不幸か他の参加者に遭遇する事はなくそのまま走り続け既にC-2横断しB-2に差し掛かろうとしていた。
それでも万丈目は走り続ける。ただひたすらに北へと……少なくとも今この時だけは誰とも会いたくはないと万丈目は考えていた……

では、これから万丈目はどうするのだろうか……今の万丈目はそれについては考えられない状態だ。だが、誰にも出せない答えは既に万丈目の中にあるだろう。

「プレシアめ……今に見てろよ、このままじゃ終わらないからな……」

【1日目 午前】
【現在地 B-2とC-2の境界】
【万丈目準@リリカル遊戯王GX】
【状態】疲労(中)、かがみに対する強い罪悪感
【装備】なし
【道具】支給品一式、ルーテシアのカレー@魔法少女リリカルなのは 闇の王女、考察を書いたノート
【思考】
 基本:殺し合いには乗りたくない。仲間達と合流し、プレシアに報復する。
 1.北へと走り続ける。
 2.かがみ君……すまない……。
 3.今だけは誰とも会いたくない。
 4.十代……。
 5.余裕があればおじゃま達を探したい。
【備考】
※チンク(名前は知らない)を警戒しており、彼女には仲間がいると思っています。
※エリアの端と端が繋がっている事に気が付きました。
※デスベルトが無い事に疑問を感じています。
※パラレルワールドの可能性に気づきました。
※柊かがみはLという危険人物から逃げてきたと思っています。
※かがみとつかさは他人だと思っています。
※かがみが生き残る可能性は非常に低いと考えています。



   ★   ★   ★



万丈目もかがみも本来であれば誰かを犠牲にする様な人間ではない。
しかし、万丈目は自らの身を守る為かがみを犠牲にしようとしたし、かがみは自身の罪を一切認めず周囲への憎悪から殺し合いに乗った。
恐らくこの後も各所で悲劇は止まらないだろう。

だが……参加者達は諦めたりはしないだろう。彼等はきっと答えを出してくれる筈だ……誰にも出せない答えを……

人生は続いていく――



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投下順で読む Next:Knight of the Rose(前編)
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万丈目準 Next:Alive a life ~タイムリミット(前編)






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