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暇をもてあました神々の遊び ◆9L.gxDzakI




 ばちっ、と。
 光と共に鳴り響く烈音。
 木々の間より漏れる光は、さながら地上の太陽のごとく。
 否、それは太陽ではない。晴天に煌く恒星ではない。
 轟々と降りしきる雨空の中、暗闇の中で吼える雷光だ。
 揺らめく輝き。迸る電圧。1人の男が雷となり、その身をぐねぐねとよじらせている。
 ばちっと電流が地を駆けた。木の葉が煽られ宙に舞った。そのまま瞬時に消し炭と化した。
 どれほどそれが続いただろう。
 光と音は姿を消し、急速にその実態が露わとなっていく。
 屈強な筋肉を纏った上半身。背中に負うのは雷神の太鼓。顔から垂れる異様な耳朶。
「ウ~ム……」
 首をぐりぐりと回しながら、半裸の男――エネルが不満げに呟いた。
 あの漆黒の闘士・仮面ライダーカリスと戦う直前、北西へ向かうと決めたエネルが、何故こちらの北東側にいるのか。
 理由は簡単。今は北西へ行くとは言っていないから。
 そもそもそこから更に時間を進めていき、カリスを倒した直後を見てみると、彼は「北へ行く」と決断している。
 北西ではない。
 北なのだ。
 もはや北東でも北西でもどっちでもよかったのだ。
 戦いに集中するあまり、エネルの記憶の中からは、「西」という意識がすっぽりと抜け落ちていた。
 微妙に間が抜けているのは、彼らしいと言うか、何と言うか。
「やはりそう簡単には外れんか」
 首に巻かれた冷ややかな感触を、なぞる。
 先ほど彼が上半身を雷化させていたのは、この爆弾首輪の拘束を解こうとしていたからだ。
 自然(ロギア)系に分類される悪魔の実の能力は、能力発現に伴い変化した身体を、自在に動かすことができる。
 例えば、雷と化した両腕を伸ばし攻撃する、などといった具合だ。
 ふと、それを利用すれば、この忌々しい首輪を外せるのではないかと思ったのだが、どうにもそうはいかないらしい。
 雷化させた腕を滑り込ませて、内側から押し広げようとしても、隙間に入ることすらなかった。
 首を雷化させて縮めてみようかとも思ったが、どうやら手足以外は生身のままのようだ。
 絶対神たるこの自分が、こうした現状に甘んじるのは決して面白いことではない。
 そして今更この男が、何故そんなことにまで意識を向けているのかというと。
「いつになったら、次の獲物にありつけるのだ……」
 簡単なことだ。
 暇だったから。
 カリスを叩きのめしたエネルだったが、その後は他の参加者と、全く遭遇していない。
 心網にも一向に引っかかる気配もない。
 ここに来るまでにあった広大な平野ならば、誰かを見つけられてもいいようなものなのだが。
 先の戦いはそれなりに楽しめたが、その余韻も時が移れば薄れてくる。
 今あるのは不満と退屈の2つのみ。
 この先こうしたことが続かないとも思えない。何度も何度も同じ不快感を覚えていてはたまらない。
 このまま北へ行くにしても、こう苛立っていてはたまらない。
「……仕方がない」
 何かを決心したように、呟く。
 そして太鼓に重ねるようにして背負っていた、デイパックを地へと下ろした。
 ファスナーを開け、口を開く。
 エネルが探すものは地図。
 参加者の集まりやすい施設を探し、そこに向かって弱者を嬲る。その位置特定のための手段。
 神たるもの、あまりこうした便利アイテムには頼りたくなかったが、そうこう言っていても仕方がない。
 これだけ広いフィールドだ。
 殺し合いを円滑に進めるためにも、地図くらい配られていて然るべきだろう。そうした思考の元の判断。
 がさごそと鞄の中を漁ると、手のひらがある感触を訴える。
 薄い形状。紙の質感。
 やはりあった。これが地図だ。
 そう思い、それをさっと抜き出したのだが、
「何だ、これは」
 それは地図ではなかった。
 基本支給品という点では、同じなのだが。
 白地の紙に、びっしりと埋め尽くされた人名の数々。ぱっと見では何かの名簿のようだ。
 程なくして、自分の名前を見つける。
 エネルの名の頭文字はア行だ。五十音順では見つかるのも早い。
 自分の名が書かれていたことから、これはこのデスゲームの参加者名簿なのだと判断。
「……いらんな」
 途端に興味をなくしたように、そのまま鞄へと戻した。
 ここに書かれている者はみな獲物。どうせ皆殺しにする存在。
 そんな連中の名前など、いちいち知る必要もないだろう。
 そしてまた手を突っ込むと、名簿を避け、がさごそと中身を探り出す。
 鞄の中を漁ると、手のひらがまたある感触を訴えた。
 薄い形状。紙の質感。
 やはりあった。今度こそ地図だ。
 そう思い、それをさっと抜き出したのだが、
「何だ、これは」
 それも地図ではなかった。
 しかも今度は、基本支給品ですらない。全く見覚えのない代物だ。
 そこにあるのは、顔。
 紙一面の顔、顔、顔。
 きっかり60枚の顔写真が、びっしりと一面に貼り付けられている。
 先ほどの名簿のナンバリングが1から60までだったことを考えると、これは参加者の顔写真表なのだろうか。
 よくよく見ると、これまでに遭遇した青海人達の顔写真も貼ってある。
 1人だけ、それとはまた別の場所で見たような顔もあった。
 確か自分に刃向かってきた不届きな女のはずだが、どのタイミングで会ったかは覚えてない。
 神にとって、反逆者を屠ることなど日常茶飯事なのだから。
 だが、参加者の写真表にしては不親切な作りだ。
 ただ写真が貼ってあるだけで、それが誰なのかを示す名前がない。
 名を知らぬエネルにとっては知る由もないが、並ぶ順番も五十音順とは関係ない。名簿と照らし合わせても分からないということだ。
「……いちいちいらぬ物ばかり」
 そしてまたしても、興味なさげに鞄へと戻す。
 先ほど思ったばかりではないか。狩られる獲物の素性になど興味はない、と。
 故にこの写真表も、とりわけ何かに使うこともなく、そのままお蔵入りとした。
 もっとも、エネルはある事実に気付いていない。
 ただ無関心にぼんやりと眺めていたが故に、その事実に気付こうともしていない。
 茶髪のサイドポニーとショートヘア、それから金髪のロングヘアー――高町なのは、八神はやて、フェイト・T・ハラオウン。
 それら3人娘の顔と瓜二つの、それも10歳は年下の顔が、それぞれ1人ずつ載っていることに。
 彼女らを詳しく知る人間ならば気付くだろう。
 なのは達はそれぞれ、このフィールドに2人ずついると。
 10歳と19歳の彼女らが、同じ世界の同じ場所へと連れ込まれたのだ、と。
 だが、所詮は人間の事情。神にとってはどうでもいいことだった。
 そして三度バッグを漁り、今度こそ地図を見つけ出す。
 付属のコンパスと共に位置確認。川伝いにここまで来たことを考えると、現在地はC-7といったところか。
 現在地よりも北に位置する施設は4つ。
 温泉、墓地、神社、工場だ。
 工場に行けば首輪を外す機材も手に入るかもしれないが、これは諦めた方がいいだろう。
 自分は神だが全能ではない。
 機械弄りなどの細かい作業の知識はない。どうでもいい知識は持ち合わせていないのだ。
 その線を除外し、再度思考。さて、どこへ行くべきか。
「……神社……“神”の社か。よし、気に入った」
 悩むまでもなかった。
 即断し、エネルはデイパックを背負い直す。
 目指すは神社。川を越えたその先の施設。
 実際に神社を見たことはない。どんな場所かは分からない。人が集まるかどうかは分からない。
 されど名前が気に入った。その名の響きが気に入った。
 そこが神の社ならば、神である自分が行かぬ道理はない。
 こうなると残された問題は1つだ。
 視線を西に傾けると、そこには川が1つある。
「ふぅむ……」
 さて、これをどうやって乗り越えようか。
 ゴロゴロの身の能力で積乱雲を作り、それに乗って通るのが一番の良策。だがそれだけではつまらない。
 自分の身体能力に任せ、助走をつけて思いっきりジャンプ。だがそんな力技はただの馬鹿。
 先ほどのように電撃を行使し、川の水を蒸発させる。だが繰り返しでは芸がない。
 何せ今の自分は退屈しているのだ。
 普段なら無難な手段でも我慢しよう。だが、今は何かしらの遊び心が欲しい。
 何かないか。何かないか。
 何か面白いアイデアはないものか。
 そう思いながら、何の気なしに周囲を見渡す。
 と、その時。
「……そうだ」
 ばちっ、と。
 再び響き渡る音。
 再び煌く眩い光。
 視線の先に映ったものへと、エネルの雷が一直線に伸びる。
 どしん、と。
 続いて鳴り響くのは、鈍い音。
 何かが勢いよく倒壊する音。
 落ちてきたそれの元へ歩み寄り、軽々とキャッチ。
 そのまま悠然と歩いていき、川に向かって勢いよく下ろす。
 落ちてきたそれが、川の対岸へと届けば、
「ヤハハ、いい具合だ」
 ――即席丸木橋の出来上がり。
 足をかける。木の上へと立つ。
 自らが倒した大木の上を、のっしのっしと歩いていく。
 成る程、これはこれで面白い。何より自分でこの木を倒したという征服感。
 神の遊戯にはちょうどいい。
「ヤッハハハハハハハ……」
 随分とご満悦といった表情を浮かべながら、エネルは橋を渡っていった。


【1日目 午前】

【現在地 C-7 川の西側】
【エネル@小話メドレー】
【状態】疲労(中)、胸に大きな打撲痕
【装備】ジェネシスの剣@魔法少女リリカルなのはStrikerS 片翼の天使
【道具】支給品一式、顔写真一覧表@オリジナル、ランダム支給品0~2
【思考】
 基本:主催者も含めて皆殺し。この世界を支配する。
 1:神社に向かい、狩りを楽しむ
【備考】
 ※心網の策敵可能範囲がおよそ1エリア分であることに気付きました。
 ※漆黒の鎧を纏った戦士(カリス)及び相川始を殺したと思っています。
 ※ゴロゴロの実の能力を駆使しても首輪を外せないことに気付きました。
 ※制限に気付きました。
 ※なのは(StS)のことは覚えていますが、彼女と会ったのがいつどこでなのかは覚えていません。
 ※なのは・フェイト・はやての3人が、それぞれ2人ずついることに気付いていません。


 海鳴温泉。
 かのエース・オブ・エース――高町なのはの地元海鳴市の、郊外の山林に位置する温泉施設だ。
 つい先刻、1人のブリタニア人の少女が、1人の男を見つけた場所。
 そして今、その時と全く同じ男を、1人の少年が連れ込んでいる。
 がらっ、と。
 ガラス戸の開く音。
 ひた、ひた、ひた。床を打つのは、湿気を含んだ素足の音だ。
 わしゃわしゃとタオルが擦れる。濡れた茶髪を拭う音。温かな水分を吸い込んでいく布。
 スマートに引き締まった男性の裸体を、タオルが余すことなくなぞっていく。
 首筋を。胸板を。両腕を。腹を。腰周りを。太腿を。足の先まで。
 そうして全身の湿気を拭き取った後、己が衣服へと手を伸ばす。
 下着を身に着け、ズボンを穿き、黒いシャツの上に赤いジャケットを羽織り。
「……ふぅ、いいお湯だった」
 そう。この少年――キングは、今の今まで入浴中だった。
 殺し合いの最中に呑気なことを、とも思うかもしれないが、これが彼の地なのだから仕方がない。
 呑気な振る舞いは自信の証。アンデット最上位種・カテゴリーキングの矜持の印。
 もっともその割には、キングの言動にはいささか威厳がないようにも思えるが。
「キース・レッドのARMSは、高出力の振動兵器、っと……よし、これで全部」
 ぱちん、と。
 言いながら、手にしていた携帯電話を閉じる。
 呆れたことにこの男は、風呂の中でもそれを弄っていたようだ。防水加工も施されていないというのに、だ。
 だが、何も目的もなく操作していたわけではない。
 おかげで「CROSS-NANOHA」に登場する人物の特徴を、大体把握することができた。
 具体的には、性格と、大まかな戦闘スタイル。
 彼自身でたとえるならば、「飄々泰然としたアンデットで、剣と盾が武器」といったところ。
 そして、得られたものはそれだけではない。
(それにしても……まさかゼロの正体まで載ってるとはねぇ)
 にやり。
 邪悪に歪む少年の顔。
 つい先ほど出会った、オレンジ色の髪の少女――シャーリー・フェネットの言っていたテロリスト。
 ゼロとかいう男の正体が、このサイトには記載されていたのだ。
 その名はルルーシュ・ランペルージ。名簿の中でも、一番後ろに名前が載っていた男。
 なんと皮肉なことか。あの少女の憎むべき相手は、同じ学校の生徒だった。
 なんと滑稽なことか。あの少女の殺すべき相手は、生徒会の仲間だったのだ。
(これは何としても教えてあげなくちゃ)
 ああ、あの娘はどんな反応をするのだろう。
 仇敵の正体が友だと知った瞬間、彼女はどんな顔を見せてくれるのだろう。
 信じていた者の裏切り。無実の者を敵視し見捨てた罪悪。
 彼女の心はどんな音を立て、どんな形の破片をばら撒いて砕け散るのだろうか。
 考えるだけでもゾクゾクする。想像するだけでワクワクする。
 さぁ、そうと決まれば天道を叩き起こし、早くシャーリーを追いかけなければ。
 あの方角にはキャロがいるが、浅倉がいい具合に引き付けてくれているだろう。
 自分の楽しみ、そして同時に、天道の無実を証明するためにも、早いところ合流しなければならない。
 あいつには生きていてもらわなければ困るのだ。冤罪で殺されてはたまらない。
 そんなことを考えながら廊下を歩き、がちゃりと扉を1つ開け、同行者を寝かせていた部屋を覗き込んだ瞬間、
「……あれ?」
 いるべき人間がいないことに気がついた。
 あるべき姿がないことに気がついた。
 天道がいない。
 畳の上に無造作に寝かせ、適当にシーツをかけていたあいつが、その床に転がっていない。
 これは一体どういうことだ。
 あいつはどこに消えたんだ。
 一歩、部屋の中へと踏み込む。
「――お前か。俺をここに連れ戻したのは」
 と。
 声は、すぐ左から響いた。
 首を傾けると。
「何だ、もう起きてたのか」
 あの天然パーマの青年が、戸口の真横に立っていた。
 顔色は悪くない。キャロの治療は完璧なようだ。少なくとも、応急措置程度には。
 その手に握るのは刀の鞘。確か天道の支給品にあったものだ。どうやら警戒されているらしい。
「その通りだよ。……ほら、そんな怖い顔しない」
 肩を竦めながら、部屋の中へと踏み入る。
 机のところにあった座布団へと、どっかと胡坐をかいて座り込んだ。
 そしてキングは、視線で天道を向かいへと促す。机を挟んだ反対側に、彼も同じように腰を預けた。
「はじめまして、天道総司。僕の名前はキング」
「何故俺の名を知っている」
「首輪を見たのさ。自分では見えないけど、後ろの方に書いてあった」
 証拠として、後ろを向き、自分の首筋に刻まれた名前を見せた。
 これは天道をここへと運んだ時に気づいたことだが、どうやらこの首輪は名札としての役割も担っているらしい。
 その首輪をつけた人間の名前が、ナンバーと共に裏側に記載されているのだ。
 他人の名前を騙って好き放題する、いわゆるなりすましができないのは残念だったが、これは諦めるしかない。
「俺は何故ここにいる。一緒にいた、桃色の髪の子供はどうした」
「君が1人で倒れてたから、僕がバイクでここまで運んだんだよ。それっぽい子は見てないなぁ」
 これは嘘だ。
 実際、該当する少女とは、先刻濃密に関わっている。
 何せ他ならぬキング自身が、彼女の心を破壊してやったのだ。
 気弱なキャロ・ル・ルシエの心をへし折り、殺人鬼へと変貌させてやった。
 もちろん、それを馬鹿正直に語るわけにはいかない。それでは敵と見なされる。
 誰かにさらわれただの何だのといった、細かな嘘でだますのも駄目だ。
 余計な設定を付け加えようものなら、後々で矛盾が生じる可能性だってある。
「………」
 天道は特に何も応えない。
 自分はまだ疑われているのだろうか。まぁ、こうして会話することに支障がないのだから、そのあたりは目をつぶろう。
「……放送があったはずだが、誰か殺された奴はいるのか?」
 と、ややあって、次の問いがかけられる。
「ああ、いるよ。
 アグモンにエリオ・モンディアルにカレン・シュタットフェルト、神崎優衣、ギルモン、クロノ・ハラオウン。
 シグナムに殺生丸と、それから高町なのはにティアナ・ランスター、ディエチと、あとは、ミリオンズ・ナイブズと矢車想だったかな」
「13人か……あまりに多すぎる」
 これまで無表情だった天道の顔に、微かな揺らぎが生じていた。
 苛立ちと無念。
 つらいだろう。苦しいだろう。
 お前が眠っている間に、13人の人間が死んだのだ。正義漢には厳しい現実だろう。内心で、ひっそりとほくそ笑む。
 ここで教えておくべきことは、大体これくらいだろうか。
 さて、では用件を切り出そう。シャーリーを追いかけることを提案しよう。
 そうしようとした、その時。

 ――ごろごろ、ごろごろ。

 と。
「?」
 遠くより、音が響いた。
 奇妙な音が。遠雷のような轟音が。
「今の音は?」
 どうやらそれには天道も気づいたらしい。無論、その異常性にも。
 窓外を見れば、今この会場の天気が快晴であることは、誰でも理解することができる。
 無論、そんな天候で雷鳴が聞こえるはずがないのだ。それでも音が聞こえたのだ。
 普通の電撃とは違う、本当に雷のような音。誰かが攻撃でもしたのだろうか。
 記憶の中に、該当する人物は――
「……多分、エネルって奴だと思う」
 1人だけ、存在した。
 神(ゴッド)・エネル。
 数多の雷鳴を自在に操り、自ら神を名乗る傲慢な男。大体そんな感じの印象。
 電撃使いならばフェイト・T・ハラオウンもいたが、こちらは雷撃とはまた違うだろう。
「このゲームが始まった頃に会って、襲われたんだ。何とか逃げ切れたんだけど」
 これも嘘だ。
 そんな奴とは一度も会っていない。
 だが、こうでも言い訳しなければ、エネルを知っていることの理由づけができやしない。
 ならば最初から伏せておいた方がいいではないか。そう思うかもしれないが、生憎とそういうわけにはいかないのだ。
「物凄く危険な奴だから、係わり合いにならない方がいいと思うけど……」
 これは本当。
 そしてこれこそが、彼が嘘をついてまで、自称神の名を持ち出した理由。
 相手の正確な実力は分からない。だが確かなことが1つある。奴は無数の雷を操るような敵なのだ。
 悔しいが恐らく奴の実力は、コーカサスの姿を晒した自分以上。天変地異を支配する敵に、そうそう勝てるはずもない。
 武器に乏しく天道が生身の現状では、到底勝ち目があるとは思えない。
 故に、今は避けなければならないのだ。こいつを殺されるわけにも、もちろん自分が死ぬわけにもいかないから。
 だが、しかし。
 天道は、
「……いや、ここは攻めるべきだ」
 あっさりと。
 驚くほどに平然と。
 そう言ってのけた。
「はぁ!? 何でそうなるのさ!?」
 理解不能。意味不明。
 さっぱりわけが分からないといった様子で、素っ頓狂な声を上げる。
 普段のキングらしからぬ、余裕のかけらもない反応だ。
 だが、無理もない。普段のキングでいられるはずもない。返ってきた返事が普通でないから。
 今の流れなら、戦いは避けるべきだと分かるだろう。常識的に考えて。
「危険な奴なら、なおさら放っておくわけにはいかない。放逐すれば、大勢の命を奪うことにもなりかねん。
 それに、あの子供のこともある……位置や時間を考えれば、奴に襲われているのがアイツだとしても、おかしくはない」
 さらり、さらりと言ってのける天道。
 全く、こいつは自分が何を言っているのか、本当に分かっているのだろうか。
 要するにこういうことだ。
 これ以上犠牲を出すわけにはいかないから、危険な奴は今のうちに抑えておきます。
 今から雷を操る化け物に、刀を持っているだけの人間たった2人で挑みに行きます。
「……バカ? そんなの自殺行為じゃん」
 考えるまでもない。
 そんなこと、現実的にできるわけがない。
 正確には自分も化け物なのだが、丸腰の天道を守りきれるかどうかと問われると、正直微妙なところだ。
 リスクが大きすぎる。できるわけがない。
 それでも。
「俺が死ぬわけがない。天が俺に味方する限り、俺が天を信じる限り、俺は何者にも負けはしない」
 そうはっきりと言い切りながら、天道は席を立つのだった。
 そのまますたすたと畳を進み、戸口の外へと歩いていく。
 本当に、何なのだこいつは。
 ライダーのベルトも持っていないのに、何故こんなにも自信たっぷりでいられるのだ。
 ここまでくると、もはや妄信か何かじゃないんだろうか。
(……正直、ここまでわがままな奴だとは思ってなかったよ……)
 どうやら自分は、この天道総司という男を侮っていたようだ。
 中途半端なナルシストではない。こいつは本物の馬鹿だった。
 それこそ、救いようのないほどに。
「はぁ……」
 1つ、ため息をついた。


 ――死にすぎだ。
 エンジン音を耳にしながら、天道総司は思考する。
 自分が無様に眠っている間に、13人もの命が喪われてしまった。
 全体の参加者は60人。既に5分の1以上が死んでいる。いいや、更に見せしめになった娘も1人。
 死なせないつもりだった。奪わせないつもりだった。
 自分がここにいる限り、誰一人として喪わせず、守り抜こうと決意していた。
 だが、現実は無情極まりない。自分があのライダーの攻撃に倒れた結果、犠牲はゼロから12になった。
 矢車想はもういない。恐らく自分と同じ目的の下に動くであろう、同じ仮面ライダーの命はここにはない。
 高町なのはももういない。未来ある子供の命さえ、無惨に砕け散ってしまった。
 クロノ・ハラオウンももういない。子供に括るにはやや年上な印象ではあったが、散っていい命ではないはずだ。
 その他10人の命もまた、自分が不甲斐ないがために命を散らした。
 そもそも見せしめを含めれば、最初からゼロですらなかったではないか。
(これ以上は死なせない)
 強く、強く。
(総てこの俺が救い出す)
 決意を固める。
(俺は天道総司。天の道を往き、総てを司る男……)
 おばあちゃんが言っていた。
(俺にはその力がある)
 ならばこそ。
(力の責任は、俺が果たす)
 総てを司る男には、その総てを守る義務がある。
 微かな振動に揺られながら、揺ぎない信念をその胸に抱いた。
 さて、その天道だが、今はバイクの上に乗っている。
 彼の赤き鋼の愛馬・カブトエクステンダー。その体躯に身を預け、雷鳴の元へと移動している。
 正確には、乗っている場所は運転手の背後だ。
 今このバイクのハンドルを握っているのは、赤いジャケットを羽織ったキング。
 では何故、天道がそのハンドルを許したのか。
 当然カブトエクステンダーは彼の持ち物だ。他人が我が物顔で乗り回すなど、到底許せた話ではない。
 キングは「怪我人には任せておけない」と言ったが、普段の彼ならその程度では引き下がらない。
 だが、しかし。
 今回は話が別だった。
 そのキングに問題があったのだ。
(こいつは信用できん)
 案の定、天道はこの少年を未だ警戒している。
 確たる証拠があるわけではない。だが何となく、この少年の纏う気配が、こいつを信用してはいけないと訴えているのだ。
 強いて言うならば、その感性こそが最大の証拠。
 この俺が怪しいと言っているのだ。それが間違っているはずなどない。
 故に、こいつから目を離すわけにはいかなかった。
 あの場でごねていたのなら、キングはうんざりして別行動を提案するだろう。
 それを許すわけにはいかない。こいつも野放しにしていては危険だ。
 そう判断し、ここは折れることにした。それくらいの心の広さも、天の道を往く男には必要だ。
 と。
「うわ」
 きぃ、と音を立て、カブトエクステンダーが停止する。
 視界に移りこむのは川のせせらぎ。ブレーキの理由はそこにある物。
 大木だ。
 大きな木が根元から切り倒され、川に橋のようにして渡されている。
 切断面を見てみれば、真っ黒に焼け焦げた跡があった。先ほどの雷撃は、ここに命中していたのだろうか。
「野郎、この橋を渡ってったのか……」
 うんざりしたように、キングが呟く。
 これはさすがにバイクでは渡れない。
 円柱形の足場は不安定だ。気をつけていなければ、徒歩でも足を取られる。
 まして、それを乗り物で移動するならばなおさらだ。乗った途端に即落下。
 さてどうするか。このままバイクを降りて渡るか。だがバイクを失うのは惜しい。
 そう思っているのだろう。
「運転を代われ。俺が走る」
 問題外だ。
 この程度の障害物、やる前に諦めてなどいられない。
 こんな足場を渡るくらい、自分ならば造作もない。自分にはそれだけの力量がある。
「はぁ? 何言ってんのさ。こんな足場、物理的に渡れるわけが――」
「お前にはできない。俺にはできる。俺に不可能などありえない」
「……はいはい分かりました。どうなっても知らないよ、ったく……」
 きっぱりと言い切った天道を前に、キングもやれやれといった様子で了承した。














 十数秒後。

 向こう岸には。

 さながら平地を走るように、見事に丸木橋を渡りきった、真紅のバイクの姿があったそうな。

 これもまた、神々に愛された者にのみ許される遊戯……














 ……なの、だろうか?



「だから言っただろう。行くぞ。ぐずぐずしている暇はない」
(……もう嫌だ、コイツ……)


【1日目 午前】
【現在地 C-7 川の西側】

【天道総司@魔法少女リリカルなのは マスカレード】
【状態】右脇腹負傷(身体を動かすことはできるレベル)
【装備】カブトエクステンダー@魔法少女リリカルなのは マスカレード
【道具】支給品一式、爆砕牙@魔法妖怪リリカル殺生丸、ゼロの仮面@コードギアス 反目のスバル
【思考】
 基本:出来る限り全ての命を救い、帰還する。
 1.天の道を往く者として、ゲームに反発する参加者達の未来を切り拓く。
 2.エネルを捜し、他の参加者に危害を加える前に止める。
 3.カブトゼクターとハイパーゼクターを取り戻してみせる。
 4.俺が望みさえすれば、運命は絶えず俺に味方する。
 5.キングは信用できない。常に警戒し、見張っておく。
【備考】
 ※参戦時期はACT.10冒頭。クロックアップでフェイト達の前から立ち去った直後。
 ※なのは、フェイト、はやて、クロノは一応信用、矢車は保留、浅倉は警戒しています。
 ※身体がいつものように動かない事を知りました。
 ※首輪に名前が書かれていると知りました。
 ※キャロがエネルと共にいて、かつ危険な状態に置かれている可能性が高いと踏んでいます。
 ※既にエネルは、目視では確認できない位置まで移動しています。

【キング@魔法少女リリカルなのはマスカレード】
【状態】健康、うんざり
【装備】なし
【道具】キングの携帯電話@魔法少女リリカルなのは マスカレード
【思考】
 基本 この戦いを全て滅茶苦茶にする
 1.エネルを追いかける
 2.天道で遊ぶ
 3.こいつ、思った以上にやりづらい……
 4.浅倉とキャロに期待
 5.はやてとの合流は後ででも良いかな
 6.はやてとヴィータの決着が着いたら、残ったほうに真実を伝えて、その反応を楽しむ
 7.シャーリーに会ったらゼロがルルーシュだと教える
 8.とにかく面白いことを探す
【備考】
 ※制限が掛けられている事に気がつきました
 ※ゴジラにも少し興味を持っています
 ※携帯電話は没収漏れです。写メ・ムービー以外の全ての機能は停止しています。
 ※携帯には相川始がカリスに変身する瞬間の動画等が保存されています。
 ※キングの携帯に外部から連絡出来るのは主催側のみです。
 ※カブトの資格は持っていません
 ※キングの携帯のお気に入りフォルダに『CROSS-NANOHA』へのリンクが存在します。
 ※首輪に名前が書かれていると知りました。
 ※全ての参加者の性格と、おおまかな戦闘スタイルを把握しました。特に天道に関しては、念入りに調べてあります。
 ※ゼロの正体がルルーシュだと知りました。


【顔写真一覧表@オリジナル】
 参加者の顔写真が貼られた紙。順番はランダムであり、名前も書かれていない。



Back:三人の印象 時系列順で読む Next:不安 と 困惑
Back:王蛇のブランチ 投下順で読む Next:未知あるいは既知との遭遇
Back:タイムラグは30分(後編) エネル Next:未知あるいは既知との遭遇
Back:仮面ライダーらしく 天道総司 Next:Alive a life ~タイムリミット(前編)
Back:仮面ライダーらしく キング Next:Alive a life ~タイムリミット(前編)






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