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不安 と 困惑 ◆HlLdWe.oBM




デスゲームの開始から早い事で既に8時間以上が経過していた。
ここまで様々な感情がこの会場内に渦巻いてきた。

この忌まわしいデスゲームを打破する仲間と幸運にも巡り合えるという『喜』。
大切な者の命を目の前で又は与り知らぬ所で無残にも奪われるという『怒』。
自ら犯した過ちや誰かによって齎された悲劇に絶望するという『哀』。
混沌とした場において繰り広げられる破壊や誤解に愉悦を覚えるという『楽』。

各々抱く感情は千差万別であり、その数だけ数多の感情が紡がれていく。
そして生まれた感情は別の感情とぶつかり合い、そこでまた新たな感情が生まれる。
それはここに来るまで持っていたものであったり、ここに来てから持つようになったものであったり。

そして、今ここでも新たな感情が生まれようとしていた。

その場所とは、意外な事にどこにでもあるような商店街であった。


     ▼     ▼     ▼


若き魔導師が抱く感情は『不安』。

(……ブーストか。でもデバイスが手に入っただけ運が良かったのは確かだね)

高町なのは。
それが若き魔導師、時空管理局の空のエースの名前だ。
その横には仲間であるペンウッドの姿がある。
今なのはの手にはブーストデバイスであるケリュケイオンがあるが、これは元々ペンウッドが持っていた物だ。
曰く、学校で見つけたデイパックに入っていたと。
それがなぜなのはの元にあるかと言うと、理由は単純で、その方が有効的だから。
なのはは魔導師であり、魔導師はデバイスを使用する事で魔力を円滑に行使する事ができるからだ。

だが少し問題がある。
それはケリュケイオンがブーストデバイスという分類にある事だ。

なのはの相棒であるレイジングハート・エクセリオンはインテリジェントデバイスという分類になる。
インテリジェントデバイスとは魔法の発動の手助けとなる処理装置や状況判断を行える人工知能を有したデバイスだ。
デバイス自身が意志を持つため、その場の状況判断をして魔法を自動起動させたり、主の性質によって自らを調整したりする。
その代わり基本的に扱うのが難しいが、意思疎通が問題なく出来れば実用性を超えた高いパフォーマンスが期待できる。
それに対してブーストデバイスは魔力射出・射出魔力制御の補助に優れたデバイスだ。
その特性ゆえに能力強化のブースト魔法や自分以外の物体・生物を任意の場所に出現させる召喚魔法と相性が良い。

つまりなのはがいつも使用しているデバイスと勝手が違うのだ。
これが一般的に流布しているストレージデバイスなら違ったのだろうが、ブーストデバイスではそうもいかなかった。
つまり事前に慣れておかなければ、いざという時に不都合が生じる可能性が高い。
だからこうして定期的に周囲にエリアサーチを掛けつつデバイスのスペックの確認をしているのだ。
それも既にあらかた終わって今では問題なく使える程度にまでなっている。

(でもキャロにシューター系を教えておいて良かった。これならアクセルシューターに関してはだいぶ使えるはず)

元々ケリュケイオンが射撃制御に向いている事もあってシューター系の射撃魔法を教えていた事が思わぬ所で実を結んだ形となった。
こんな事になるとは訓練中には思ってもみなかったが、ケリュケイオンの事を把握するうちにキャロの努力の一端に触れる事ができた。
その事に仲間として戦技教導官として嬉しさを覚えつつも、一方で今キャロがどうしているかと不安にもなる。
キャロのデバイスがここにある以上キャロの力はこの制限が掛かっている状況ではいつものように発揮できない事は容易に想像できる。
それはキャロに限らず、なのはの知り合いのほとんどに共通する懸念であった。
だが、それでもなのはは信じていた。

(キャロ、そしてスバルもきっと無事でいるはず)

なぜならあのキツイ訓練に付いてきたのだから。
ずっと繰り返してきた基礎スキル。
磨きに磨いたそれぞれの得意技。
痛い思いをした防御練習。
全身筋肉痛になっても繰り返したフォーメーション。
いつもボロボロになるまで私達と繰り返した模擬戦。

守るべきものを守れる力、救うべきものを救える力、絶望的な状況に立ち向かっていける力。

必要な力がしっかりと身に付くようにキツイ訓練を課してきた。

だが現実はそう甘くなく、既にティアナとエリオの二人は帰らぬ人となってしまった。
それが例え別の世界の赤の他人だとしても二人がなのはの教え子である事に変わりはない。
だからこそなのはは願う。
残りの二人、スバルとキャロはせめて無事でいてほしいと。
そして同時になのはは信じている。
二人が今までの教えを糧にして行動していると。

(きっとフェイトちゃんやはやてちゃん、それに皆も……)

フェイトも、はやても、ユーノも、ヴィータも、シャマルも、ザフィーラも、ギンガもどこかでこのデスゲームを打ち破るべく行動しているはずだ。
確かに制限を受けている今の状態では満足な事は出来ないかもしれない。
だがここには自分達と同じくデスゲームを打倒する者もいる。
彼らと協力していけば光明も見えてくるに違いない。
現になのはの隣には志を同じくするペンウッドがいる。
金居の言葉を信じるなら疑わしい部分もあるが、それでもなのはにはどうしてもペンウッドが悪人とは思えなかった。
常にビクビク怯えているように見えるが、それでも卑怯な事をするような人には思えなかった。
学校を出てからずっと隣にいたから彼の雰囲気がどういうものかはある程度感じる事ができた。
それゆえの判断だった。

ヴィヴィオについては心配だが、少なくともここに連れて来られてすぐの時よりは安心できる。
それは何よりも先の放送で呼ばれなかった事が大きい。
当然ながらヴィヴィオには自分達のように自ら戦う力はない。
一応固有スキルの『聖王の鎧』が発動すれば身は安全だが、ここではそれすら制限の対象になっている可能性がある。
だから今のヴィヴィオは限りなく無力に近い子供であると思ったので、当初は一刻も早い保護を目指していた。
だがそれが果たされる事なく6時間毎に行われる最初の放送でヴィヴィオの名前は呼ばれず、無事である事が判明した。
この容赦ない会場の中でヴィヴィオがたった一人で6時間も生き延びたとは普通は考え難い。
ここは誰か頼りになる者と一緒にいると考えるのが自然であり、その状態が続けば少しは安心できる。

だが一方でどれも今の段階では希望的観測に過ぎないと言える。
もしかしたら今この瞬間にも仲間達の命は消えているのかもしれない。
そんな不安を抱えつつもなのはは心の底では皆の無事を信じていた。


     ▼     ▼     ▼


無能な海軍中将が抱く感情は『不安』。

(こ、このドラゴン、本当に大丈夫なんだろうか? 確かに一向に襲ってくる気配はないが……)

シェルビー・M・ペンウッド。
それが無能な海軍中将、大英帝国円卓会議の一員の名前だ。
その横には仲間である高町なのはの姿がある。
今ペンウッドの手には龍騎のカードデッキがあるが、これは元々なのはが持っていた物だ。
それがなぜペンウッドの元にあるかというと、ケリュケイオンを渡した代わりに渡されたのだ。
曰く、自分にはデバイスがあれば十分だからこれは護身用に持っていてくれと。

当初ペンウッドはベノスネーカーの時の経験からドラグレッダーが危険ではないかと危惧していた。
だが今ではいつまで経ってもドラグレッダーが襲う気配がない事からある程度安心するようになっていた。
それでも不安は消えないが、道すがらカードデッキの中身を確認するぐらいの余裕は持てるようになった。
デッキには数枚のカードが入っていて『ADVENT』『FINAL VENT』『GUARD VENT』『STRIKE VENT』『SWORD VENT』の5種類のカードが確認できた。
しかし何が書いているかは分かるが、これがどういう役に立つかは全く分からない。

余談だが元々龍騎のカードデッキには説明書が付いていたのだが、金居の暗躍によってそれは密かに処分されてしまっている。
だからペンウッドは勿論のこと、なのはも弁慶もこのカードデッキがモンスターとの繋がりを持たせるとしか認識していない。
当然特別に課せられた恐ろしい制限――『12時間に内に契約モンスターに「生きた参加者」を一人喰わせないと所有者が襲われるようになる』など知る由もない。

(そ、そういえば私に支給されていた虎のようなマークのカードデッキもこれの一種なんだろうか? あとで金居君に聞いてみるか)

ペンウッドがこの類のカードデッキを目にするのはここに来てから3度目に当たる。
1つ目は自身に支給されたタイガのカードデッキの複製、これは現在金居が持っている。
2つ目は紫髪のツインテールの少女が持っていた大蛇と犀のカードデッキ、これはおそらくあの少女が持っている。
そして3つ目が学校の校庭で見つけた龍のカードデッキ、それが今ペンウッドの手の中にある。

そんな事を考えつつ隣のなのはを横顔を見てみると、何やら深刻そうな表情を浮かべている。

(どうやらまた何か悩んでいるようだな。わ、私がしっかりと、さ、支えなければ……)

ペンウッドは自分が無能で臆病だと知っている。
どう評価してもお世辞にも有能な人物とは言い難いという事も。
だからこそ二度も殺されたアリサの勇敢な行動が眩しく見えた。
もしかしてそれは思慮に欠けた行動だったと言う者もいるかもしれない。
それでもペンウッドからしてみればアリサの行動は自分よりも勇気に溢れていたように思えた。
だからそんな彼女の代わりに少しでもなれればと心のどこかで思っている。
そう思うからこそ放送を聞いても必死に迫り来る悲しみや恐怖を表に出さないようにしたのだ。

だがその態度が金居によって利用されている事にペンウッドは気付いていなかった。


     ▼     ▼     ▼


不死身の魔女が抱く感情は『困惑』。

(やはりピザは熱い方が旨い――が、こうなると出来立てが食べたくなるな。これは、悩み所だな……)

C.C.。
それが不死身の魔女、素性不明の共犯者の名前だ。
今C.C.の目の前には最後の一切れとなったピザが箱の上に微かな湯気を立ち上らせながら置かれている。
その傍らには物欲しげにピザを見つめる白き龍フリードリヒの姿がある。

「なんだ、確か……フリードだったか? お前もピザが食べたいのか?」

そもそもフリードはC.C.の支給品である。
最初にデイパックを調べた時に中にいる事は知っていたが、外に出しても邪魔なだけだと思って今までデイパックの中に入れたままにしていたのだ。
しかも御丁寧に首輪まで付けられていて『参加者から50m以上離れたらこの龍の命は保障できないな』という紙まであった。
命の保障ができない云々が何を指しているかは知らないが、迂闊に外に出して本来の主を探して50m以上離れられたら厄介だ。
自分の支給品が勝手に無くなる事もあるが、もし死ぬような事になれば寝覚めが悪い。

それがなぜ今頃になって外に出されているかというと、理由は単純で、単に話し相手がいないからだ。
デスゲーム開始からずっと行動を共にしていたゼストは今ここにはいない。
だからと言って愛想を尽かされた訳でもなく、喧嘩別れした訳でもない。
ただ単に別行動中なだけだ。

C.C.が提示した黒の騎士団専用車両の有用性。
それを聞いたゼストはとりあえずC.C.と商店街に着いた後に一足早くそこへ向かって行ったのだ。
本来ならC.C.も共に行く方が良いのだが、あいにくC.C.はそれよりも先に朝食のアツアツのピザが食べたかった。
それにブリッツキャリバーを使えばC.C.は無理だがゼストだけなら大幅に移動時間を短縮できる。
だからゼストだけが誰かに先を越されないためにも黒の騎士団専用車両がある場所まで先行する事になったのだ。
そして商店街に残ったC.C.が入口付近にあった家電量販店に置いてあった電子レンジでピザを温めて今に至る。
温めたピザは冷めたピザよりも何倍も美味しく、あっという間に最後の一切れにまでなっている。
その最後の一切れも今まさに物欲しそうにしているフリードの目の前でC.C.の口の中へ消えていった。

(しばらくピザも食い納めか。もう少し味わって食べておくべきだったかな。
 そういえば学園祭の時の巨大ピザは実に残念だった、まさか土壇場であんなハプニングが起こるなんて……
 アッシュフォード学園……あいつにはああ言ったが、なぜスバルはあの学園に……)

ふと思い出すのは最近よくルルーシュと一緒にいるようになった青い短髪のボーイッシュな少女スバル・ナカジマ。
少し前にアッシュフォード学園に転入してきた少女で、事実ゼストにはそのように説明していた。
だがスバルに関してC.C.が知っている事はまだある。
それはスバルが「自分達の世界とは別の世界から来た」という事だ。
あとはショックイメージを見せる事は出来るが、ギアスは効かないという事ぐらいだ。
だからと言って別にゼストを騙したというつもりはなく、ただ提示する情報を絞っただけという気でいる。
ゼストにその事を伝えなかったのはギブアンドテイクでそこまで話すには至らないと考えたからだ。

(確か……時空管理がどうとかと言う所のスターズ分隊の陸士だったか? もしかして嚮団の手の者、の可能性はないな。
 さすがに私でも別世界の事はよく分からないからどうしようもないか。そういえばスバルの名を言った時のあいつの反応……)

数時間前にお互いの知り合いを教え合った時にC.C.がスバルの事を話した時のゼストの反応。
あれはどう見てもゼストもスバルを知っているかのようだった。
しかもおそらくあの驚きようからすると、ゼストの知るスバルは学生ではないのだろう。
そうなるとスバルはゼストと同じ世界の住人、そして何か理由があって学生をしている可能性が高い。

だがいくら考えても確かな事は分からない。
これ以上は寧ろゼストに直接聞いた方が早い。
とりあえずC.C.は少し詮索を中断して別の事に取りかかろうとした。

「さてと、あいつが帰ってくるまでもう少しこの辺りを調べておくか」
『キュクル~』
「なんだ、お前も手伝ってくれるのか?」
『キュックルー』
「そうか、そうか。ぜひ手伝わせて下さいと言うのか」
『キュックル~』
「ま、本当は何を言っているか全く分からないんだが……別にいいか。お前が私の支給品である事に変わりは――ん?」

ふと表の方から誰かの話し声が聞こえてきた。
おそらく誰かが商店街に来たのだろう。
念のためここの場所が特定されないために商店街にある全店舗の電気は到着してすぐに点けっぱなしにしておいた。
木を隠すなら森の中という事だ。
一応無灯火という選択肢もあったが、さすがに電気を点けないと日の光があるとはいえ若干薄暗く、なにより暗くてはピザが美味しくないという理由もあった。

「二人組か? あいつはまだ帰って来ないようだな」

C.C.は悩む。
心の中で「どう対応するか」という微かな『困惑』を抱いて。


【1日目 午前】
【現在地 C-3 商店街の家電量販店内】
【C.C.@コードギアス 反目のスバル】
【状況】健康、スバルへの疑念
【装備】スティンガー×10@魔法少女リリカルなのはStrikerS、フリードリヒ@魔法少女リリカルなのはStrikerS
【道具】支給品一式、ランダム支給品0~1(確認済み)
【思考】
 基本:向かってくる者は殺すが、役に立ちそうな物や人材はルルーシュに届ける。
 1.外の二人への対応を考える。
 2.商店街で役に立ちそうなものを探す。
 3.ピザの対価を払う方法を考える。
【備考】
※スバルが『StrikerS』から来た事を知りません。
※ゼストとの協力関係はギブアンドテイクという暗黙の了解の上に成り立っています。
※「ギアス提供」「精神干渉」「Cの世界との交信」が不可能となっている事に気付きました。
※再生能力も制限されている可能性があると考えています。
※このデスゲームの中では死ぬつもりはありません。
※プレシアのことは信用していません。
※ゼストにはルルーシュの駒になってもらおうと考えています。
※参戦時期は「STAGE9 ギ ア ス」(スバルを気絶させた後)からです。
※スバルとゼストは同じ世界の住人かもしれないと考えています。
※オリーブ抜きのピザ(10/12サイズ)は完食しました。


     ▼     ▼     ▼


「こ、ここが商店街……だが、なんで電気が全部点いて?」
「たぶん誰か先客がいたんでしょうね、もしくはまだいるのか」

なのはとペンウッドが商店街に着いて真っ先に目に付いたのがあちこちから漏れる光だった。
ここに来るまで見てきた建物はどれも電気は点いていなかったので普段は当然の光景でも奇妙に見えてしまう。
元からこうなのか、既にここに来た人の仕業か、それはまだ分からない。
しかもまだエリアサーチも掛けていないので今ここに参加者がいるのかも分からない。

なのはとペンウッドは悩む。
心の中で「誰かいるのか」という微かな『不安』を抱いて。


【1日目 午前】
【現在地 C-3 商店街入り口】

【高町なのは@魔法少女リリカルなのはStrikerS】
【状態】健康、プレシアに対する怒り、悲しみと迷い、軽い不安
【装備】グロック19(14/15+1発)@リリカル・パニック、すずかのヘアバンド@魔法少女リリカルなのは、ケリュケイオン@魔法少女リリカルなのはStrikerS
【道具】支給品一式
【思考】
 基本:誰の命も欠かす事無く、出来るだけたくさんの仲間を集めて脱出する。
 1.なんとしてもヴィヴィオを救出する。それは何よりも優先したい。
 2.商店街を経由して施設を巡りつつ工場へ向かい、首輪を解除する手がかりを探す。
 3.出来る限り全ての戦えない人を保護し、仲間を集める。
 4.情報処理室の事、言いそびれたな。
【備考】
※金居を警戒しています。また紫髪の女子高生(柊かがみ)を気に掛けています。
※カードデッキの説明書を読んでいないので、その特性について把握している情報は「契約モンスターを呼べる」事くらいです。
※金居の話=『ペンウッドは銀色の奴と手を組んでいる可能性がある』は半信半疑です。

【シェルビー・M・ペンウッド@NANOSING】
【状態】健康、若干の不安
【装備】カードデッキ(龍騎)@仮面ライダーリリカル龍騎
【道具】支給品一式×3、RPG-7+各種弾頭(榴弾5/照明弾2/スモーク弾2)@ACE COMBAT04 THE OPERATION LYRICAL、トランシーバー×2@オリジナル、菓子セット@L change the world after story、おにぎり×10、ランダム支給品(未確認1~2)
【思考】
 基本:自らの仕事を果たす。
 1.商店街を経由して施設を巡りつつ工場へ向かい、首輪を解除する手がかりを探す。
 2.この龍は本当に大丈夫なんだろうか?
 3.アリサという少女の思いは無駄にしてはいけない。
【備考】
※なのはを支える事が今の自分の仕事だと無意識に思っています。


     ▼     ▼     ▼


蘇った騎士が抱く感情は『困惑』。

(一足遅かった、ここはもぬけの殻か)

ゼスト・グランガイツ。
それが蘇った騎士、愛する者を取り返さんとする死者の名前だ。
今ゼストの目の前には空になった車庫があるだけだ。
本来ならここには黒の騎士団専用車両が設置されていたのだが、車両は既に数時間前にLとザフィーラが発見していた。
そしてそれに乗って南へと移動したのだが、さすがにゼストには車両がどの方角へ行ったかまでは分からなかった。
当初の予定が狂った事でゼストは現在少々困惑していた。

そして車両の件とは別にゼストには不可解に思う事があった。

(それにしても、なぜヴィータは名前を呼ばれなかったのだ?)

そもそもゼストはここに呼ばれる直前スカリエッティから一つの指令を受けていた。

聖王教会も加担しているベルカ解放戦線による時空管理局に対する反乱。
その一手であるシャッハ率いるベルカの騎士団及び傀儡兵によるミッドチルダへの侵攻。
それは聖王のゆりかごの出現と相まって動揺する管理局側が後手に回った事、さらに超大型傀儡兵<ヨツン>の投入によって半ば順調に進められた。
だが守護騎士や陸士部隊の奮闘、最大脅威であった<ヨツン>が抑え込まれた事、そして指揮官シャッハの戦死によって戦況は一変。
ベルカ解放戦線による反乱の第一波であるミッドチルダ侵攻はこうして失敗に終わった。

そしてゼストに与えられた指令とは、その<ヨツン>に組み込まれたロストロギア・ジュエルシードの奪回であった。
元々そのジュエルシードはスカリエッティが聖王教会に渡した物らしいが、ゼストにはそのような事はどうでもよかった。
ゼストにとって重要であったのは、その任務を遂行すればメガーヌ・アルピーノが解放されるという事だ。
それはゼストの目的、愛する女性を解放するという目的が果たされる事になる。
だからこそゼストは絶対なる覚悟と決意を以て槍を振るったのだ。

結果的にジュエルシードの奪回は無事に成功した。
あとはスカリエッティの元へ届ければ己の願いは叶うだけのはずだった。
そこでゼストの意識は途絶え、気づいた時にはこのデスゲームに巻き込まれていた。

ここで不可解な事がある――ヴィータだ。
ゼストはジュエルシード奪回の際にヴィータとシグナムの二人と刃を交えている。
そして交戦の末に両者に戦闘続行不可能な程の負傷を負わせている。
シグナムの方は左腕をほぼ寸断して満足に戦える状態になっている。
だから先の放送でシグナムの名前が呼ばれても別に驚きはしなかった。

問題はヴィータの方だ。
ヴィータが負った傷はシグナムの比ではない。
心臓部分を背中から正面に向けて完全に貫いていた。
あれでは戦闘続行どころか即急に本格的な治療を行わなければ死んで当然であったが、結局ヴィータの名前は呼ばれなかった。
それはつまり今もまだヴィータがこの会場内のどこかで生きているという事だ。
どう考えてもありえない。
あの状態で助かるとすれば運良く治療効果の高い道具が支給されたか、もしくはその類の道具を持っている参加者と出会ったか。
だが自分にC.C.の好物のピザが支給されていたとはいえ、どちらも都合が良すぎるし、わざわざ重傷者を連れて来る意味が分からない。
そうなると考えられる可能性は限られてくる。

(おそらくプレシアが何か手を出したか? あらかじめ傷を治した上でここに放り込めば……もしや治療を条件に何か約定を……)

そう考える方がまだ筋が通っている。
もちろんあの忠義に厚い守護騎士がプレシアの甘言に心動かされるとは思えないが、瀕死の重傷を治療してもらった恩義もあるのかもしれない。
あまり納得はいかないが、義に厚い騎士道を重んじるベルカの騎士であるならそのように考えても仕方ない面もある。

そしてもう一つ不可解な事は名簿に記された一人の名前――スバル・ナカジマだ。
ゼストが知るスバルは数年前の事件で死亡した自身の部下クイント・ナカジマの娘であり、今は記憶を改竄されて『スバル』としてスカリエッティの元にいるはずだ。
そのスカリエッティがクイント死亡の一因である辺り、何とも言えない心情ではある。
これらの事はスカリエッティが興に任せて話したり、アジトでナンバーズに混じっている所を見かけたり、そのような所から断片ながら知っている。
余談だが高町なのはやルーテシアに関する断片的な情報も主にスカリエッティ伝手の情報である。

ここで不可解な事は名簿に記された名前が『スバル』ではなく『スバル・ナカジマ』である事だ。
『クアットロ』『チンク』『ディエチ』とナンバーズが明記されている以上スバルも『スバル』もしくは『トレディード』と書かれて然るべきはずだ。
しかもこの表記では下手をすればスバルの記憶が蘇る可能性もある。
だがこの判明しているデスゲームの主催者はプレシア・テスタロッサであるからして、こういう事があっても不思議ではない。
しかしその一方でわざわざ記憶が戻るような一手を打つ意味も分からない。

「これ以上は考えても埒が明かん。一度戻って……また、愚痴を言われるだろうな」

わざわざ一人先んじて向かったにもかかわらず、件の車両は既に誰かが乗って行った後だった。
ゼストに非が無いとは言うものの、あのC.C.なら愚痴の一つや二つぐらい零すだろう。
予想される愚痴に少々僻遠しつつもゼストが周囲の様子を探るべく視線を巡らせた時、何か動くものが目に入った。

「あれは!」

ゼストの視界の端に映った者。
それは北の方角へと走って行く人影であった。
一瞬の事で定かではなかったが、黒いコートを羽織っていたようだ。
ゼストは知らないが、その人影の正体はスーパーでベルデのカードデッキをかがみに押しつけて逃げてきた万丈目準であった。
もちろんゼストは万丈目と面識はないし、第一に既にかなりの距離が離れている。
ブリッツキャリバーを使えば追いつけない距離ではないが、商店街に残したままのC.C.も気掛かりではある。

「…………」

ゼストは悩む。
心の中で「どう対応するか」という微かな『困惑』を抱いて。


【1日目 午前】
【現在地 C-2 黒の騎士団専用車両車庫前】
【ゼスト・グランガイツ@魔法少女リリカルなのは 闇の王女】
【状態】健康
【装備】ブリッツキャリバー(待機状態)@魔法妖怪リリカル殺生丸
【道具】支給品一式
【思考】
 基本:高町なのはの捜索・抹殺、プレシアの抹殺、ルーテシアの保護。
 1.北の人影を追うか、商店街に戻るか。
 2.商店街で役に立ちそうなものを探す。
 3.行動を共にする仲間を増やす(市街地は危険そうなので武装が整うまでは基本的に避けたい)。
 4.なのはと戦う事になればギア・エクセリオンの発動も辞さない――己の命を削ってでも。
【備考】
※なのはとルーテシアが『健全な』歴史(StrikerS)から来た事を知りません。
※C.C.との協力関係はギブアンドテイクという暗黙の了解の上に成り立っています。
※ギア・エクセリオンによる負担の程度は不明(ゼストは自分のデバイスのフルドライブ同様に命を削る可能性もあると推測)。
※プレシアにはスカリエッティと同等かそれ以上の技術があると思っていますが、プレシアを全く信用していません。
※幕間「修羅のように」(シグナムを倒した直後)からの参戦です。
※ヴィータとプレシアの間で何らかの約定があったかもしれないと考えています。
※スバルが『スバル・ナカジマ』の名前である事に疑問を抱きました。


     ▼     ▼     ▼


いくつも感情が入り乱れた果てに生まれる新たな感情とは、いったいどんなものであろうか。

そして、さらに一つの感情が商店街に渦巻いている。

『GYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA――――――――――』

来るべき時が迫っている事に勘付いて、それは人知れずに咆えていた。
無双龍ドラグレッダー。
彼の炎龍に課せられた忌まわしき制限の刻限まであと僅か。

猛き炎の龍が抱く感情は『  』。



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