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Round ZERO ~ JOKER DISTRESSED(後編) ◆HlLdWe.oBM




「インテグラ卿!!!」

ギンガの叫びが幾重にも重なった深い煙の中に虚しく響く。
どういう原理か知らないが校庭周辺に漂っている煙の量は半端ではない。
ガジェットに施されたランブルデトネイターによる爆発によって発生した爆煙。
広い校庭の細かな砂が爆発によって舞い上がった事で発生した土煙。
さらにガジェットが爆発した付近には体育倉庫があり、その中にはどこにでもあるようなラインパウダーが保管されていた。
それがガジェットの爆発に巻き込まれて周囲に拡散する始末となった。
つまり現在校庭付近に限定するなら3重もの煙幕が展開されて視界はほとんど防がれている状態。
この異常事態の確かな原因をギンガは知らないが、最悪の状況である事は確かだ。
インテグラはもちろん、膠着状態だった弁慶・カリス・ギンガ・ギラファの4人も爆発の影響で離れ離れになってしまった。
つまり現状誰がどこにいるのかさっぱり分からない状態なのだ。

「インテグ――ッ!」

ギンガはあらん限りの声を上げてインテグラを呼び掛けていたのだが、そこで唐突にある可能性に気付いた。
この状態では目に頼った捜索は困難を極める。
では目に頼らなければどうするか。
答えは耳。
周囲の音から物事を判断する事が自然と重要になってくる。
そしてそんな中で声を上げるという事は自分の居場所を相手に教えるという事に他ならない。
この場所にいる者がインテグラだけなら大して問題ではないが、実際は違う。
ここには始と戦っていたアンデッドと僧侶姿の大男がいた。
そんな危険人物のいる中で自らの居場所を教えるなど少々浅はかである。

(危なかった。あのままだったら、あとでインテグラ卿に怒られてい――)

そこでギンガの思考は途切れた。
深く立ち込めた灰色と白色が入り混じった煙の向こうに二つの人影を見つけたのだ。
一つは地面に伏していて、もう一つはその脇に立っている。
それを見た瞬間、ギンガは再び嫌な予感がした。
心の内にチラつく不安に後押しされてギンガは碌な確認もしないまま既に足をそちらに向けて知らず知らずの内に走っていた。
全力で走ってすぐさま現場に着くと、そこにいるのが誰なのか分かった。
地面に伏しているのはインテグラ、立っているのは金色の怪人――ギラファアンデッド。

そして地面にうつ伏せの状態で倒れているインテグラの背中には紅い槍が刺さっていた。

「貴様ァァァ!!!」

限りなく即死に近い状態だった。
槍が刺さっている場所は心臓付近。
そこを穿たれて平気な人間などいない。
しかもインテグラは数時間前に全身火傷を負って体力が消耗している
さらに手元に碌な治療用具がない以上適切な処置など不可能。
つまりインテグラの死は確定的だった。

「……見られたか、ならば!」

当の下手人であるギラファはギンガの姿を認めると、静かな殺気と共に襲いかかって来た。
ギラファが殺し合いに乗っている事は火を見るよりも明らかである。
そんな危険な者を、インテグラを殺した怪人を、ギンガはこのまま野放しにする気など毛頭なかった。
ギンガは悲しみを心の底に追いやり、猛然とギラファに向かっていった。

「ハ――ッ!!」
「――ッ!!」

幼い頃よりこの身に刻んできたシューティングアーツの技を惜しみなく繰り出していく。
その一手一手にはカード内に蓄積されていた魔力を順次開放させて上乗せしている。
本調子とまではいかなくても威力は申し分ないはず。
だが届かない。
拳も、蹴りも、魔法も、全て。

ナックルバンカー――魔力付与によって強化した拳は右手の剣で払われた。
ストームトゥース――防御破壊と直接打撃の左拳二連撃は最初の一撃を躱されて膝蹴りを喰らわされた。
リボルバーシュート――猛烈な衝撃波と共に放たれた魔力の弾丸はバリアによって阻まれた。

お互いの声が漏れるたびに拳と剣が交錯する。
戦況はギンガに圧倒的に不利な状態だ。
数手交わしただけでそれが嫌というほど分かった。
おそらく目の前の相手の力は殺生丸や金髪の男と同等だ。
しかもこちらにはデバイスがなく、魔導師としてそれは戦力の低下を意味している。
今までの数手で自分は持てる技を最大限に駆使したが、全く攻撃が届く気配がない。
まだ奥の手のリボルバーギムレットがあるが、あれはナックルスピナーがない状態では回転させる動作制御が不十分になる。
おそらく威力不足でバリアに阻まれて相手に届く事すら叶わないだろう。
いくらカードで魔力を付与してもデバイスがない以上リボルバーギムレットを出すのは難しい。

(ギムレットが無理なら、もう一つの方に賭けるしかな――って、迷う暇なんてないわね。もう今しかチャンスはない!)

今までの攻防でアンデッドはこちらの力量を掴んできたはず。
それはすなわち己との圧倒的な力の差。
そこには僅かだが余裕という名の隙ができる。
だが奥の手を使えばその差を覆せる可能性はある。
逆転の一手を仕掛けるなら今しかない。
決意すると後は行動するだけ。
ギンガは少し溜めを作り、一気に走りだした。
もちろん向かう先は金色の怪人ギラファアンデッド。

「これで終わりにしようか」

必死なギンガとは対照的にギラファは悠然と構えて言葉を放った。
ここまでの戦闘で彼我の差が明らかである以上それも当然だ。
だがそこに僅かながら隙がある。
そしてそれはギンガが狙っていた事。
徐々に距離を詰めていき後数歩という所で――

「な!?」

――ギラファの目の前に光の道が出現した。
今まで見せなかったギンガの先天固有魔法・ウイングロード。
突然目の前に紫の光の道ができた事でさすがのギラファも驚愕を隠せないでいた。
だから一拍遅れて迫ったギンガへの反応が遅れる事になった。

(……私は今まで何もできなかった)

最初は空港火災の時、二度目は地上本部の時。
どちらも自分の責任を貫き通す事が出来なかった。
ここに来てからも同じようなものだ。
最初は殺生丸さん、次に矢車さんとキャロ、そして今度はインテグラ卿。
だからせめて目の前の相手だけは倒す。
ここで放っておけば必ず皆に刃を向ける怪人を。
自分は今度こそ責任を貫かなければいけない。
だからここにいる人を、そしてスバルを――

(――私が守るって、決めたんだ!!! だからフェイトさん、殺生丸さん、あなた達の力、貸して下さい!!!)

刹那デイパックより一振りの傷だらけの刀が抜き出された。
その刀の名は殺生丸の形見となった童子切丸。
それを左手に持たせたままその手を腰だめにして構え、逆に右手は前に突き出す。
カードを全て使って魔力の補充は万全。
あとは撃ち出すのみ。

「プラズマアアァァァァァァァァスマッシャアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァァ――――――――ッ!!!」

至近距離から放たれた魔法は憧れの対象である恩人の技。
オリジナルのような電撃は付与できないが、全カードを使って補充した魔力で威力は十分だ。
ギンガの決意を秘めた左腕が限界まで込められた魔力と共に突き出される。

(この距離ならバリアも――)
(――甘いな!!)

ウイングロードで作り出した僅かな隙。
だが後一歩及ばず。
目の前にはあの全てを阻む透明の壁が。
それでもギンガは信じている。
煌めく銀河の雷光が必ずや敵を貫くと。

ここで二人が知らない事実がある。
それは童子切丸の特性である「人間の生き血を捧げれば、あらゆる防御術式を貫く事ができる」というもの。
もちろんギラファアンデッドも、ただ形見として拾っただけのギンガも、この特性を知る由もない。
今回ギンガがこの剣を取り出したのは殺生丸の力にあやかりたいという部分が大きい。
だがここで偶然にも奇跡的な事が起こった。
ここまでの戦闘でギンガは身体のあちこちに傷を負っていて、当然そこから血が流れ出ていた。
それが腕を伝って童子切丸に行き着いていたのだ。
正式な形はともかく童子切丸に「人間の生き血」が僅かばかりでも捧げられた事に変わりはない。
それによって妖刀童子切丸はその「あらゆる防御術式を貫く事ができる」という特性を発動させる事ができた。
当然ギラファのバリアも「あるゆる防御術式」にカテゴリ―されるものであり、童子切丸によって貫かれる事は明らかだ。
もちろんそんな事は知らないギラファはここでバリアを展開して攻撃を防いでから反撃に転ずるつもりだ。
しかしギンガの左拳にはその童子切丸が切っ先をギラファに向けた状態で握られている。
この瞬間バリアは無意味となった。

こうして二人の知らない事実の下で童子切丸は計り知れない力の奔流と共に生身の身体に叩きつけられた。

肉と骨を断った剣は役目を終えたかのように根元から折れて眠りに就いた。
限界まで高められた魔力の激流は出口を与えられた瞬間、目の前の敵に叩きつけられた。

そして全てが終わった。


     ▼     ▼     ▼


俺はもう誰も失いたくなかった。
だがこの傷でじゃ遅かれ早かれ死ぬだろう。
少し無茶をしたせいか、血を流し過ぎたかもしれない。
だから最期に俺はこの身を差し出してやる。
……和尚……寺のみんな……竜馬……隼人……そしてティアナ。
もう誰かが死ぬのは御免だ。
確かにお前は少し胡散臭いところもある。
だがお前のおかげで俺達はあの時無駄に対立する事を防げた。
お前が悪人ならあの時俺達が勝手に仲違して自滅する様を見ていれば良かったはずだ。

だから俺はお前を信じるぜ。

だから……あばよ、金居……


     ▼     ▼     ▼


ギンガは目の前の出来事が信じられなかった。

「え……あぁ……そ、そんな……」

ギンガのプラズマスマッシャーは確かに目の前の男に刃を突き立て魔力の奔流をその身にぶつけた。
もちろん童子切丸による出血とプラズマスマッシャーによる衝撃で既に息はない。
だがギンガの顔は青ざめていた。

なぜならギンガと戦っていたギラファはその男の背後に未だ無事な状態でいるからだ。

ギンガのプラズマスマッシャーを金居から庇った男は武蔵坊弁慶。
弁慶はあの爆発に巻き込まれて地面を転がり出血多量もあって気を失っていた。
そして気絶から回復した弁慶の目に飛び込んできたものは襲われているギラファアンデッド、金居の姿だった。
それを見た時もうこの傷ではそう長くないと悟っていた弁慶は自らの身を挺して金居の身代りになる事を選んだのだ。
しかも驚く事に弁慶は童子切丸でその身を貫かれプラズマスマッシャーでその身を焼かれてその命が尽きても倒れる事はしなかった。
まさに伝説で伝え聞く『弁慶の立ち往生』のようであった。

そんな悲劇としか言いようのない結末を目の当たりにしてギンガはただ呆然としていた。

「弁慶君、感謝するよ」
「……ガァッ――ッ!?」

そしてその隙をギラファアンデッドが逃すはずがなかった。
己のした『あやまち』に心ここに在らずの状態にあったギンガの身体にはインテグラと同様に紅い槍が突き刺さっていた。
しかし咄嗟に身体を捻ったおかげで槍が貫いた部分は左腹。
致命傷のインテグラとは違って適切な処置を施せばまだ助かる傷ではある。

「――え? そ、そんな……ぁ……」

だがギンガの身体は限界だった。
自らが犯した『あやまち』と命を奪う一撃。
その二つの衝撃で若い身体はボロボロになっていた。
もう立つ事すら覚束なくなり、すぐに重力に引かれて身体は支えを失って倒れた。
ギラファに握られたままの槍はそのまま身体から離れ、左の腹に紅い穴を形作っていた。
その穴から紅い生き血が止めどなく流れ出ている事にギンガは気付いたが、もうどうする事も出来なかった。

(私は、ここで……なにも、なにもできないまま……死ぬの……?)

少しの間を置いて地面に叩きつけられたギンガの身体が再び動く事はなかった。


     ▼     ▼     ▼


校庭を外界と遮っているコンクリート製の灰色の壁。
その内側に凭れかかった状態で相川始はいた。
その姿はハートのA「チェンジマンティス」の力を宿したカリスの姿ではない。
ハートの2「スピリット」の姿を宿した相川始のものだった。
あの爆発の衝撃でカリスの変身が解けたのが原因だった。
しかもその際に壁にぶつかった衝撃で今まで気を失っていたのだ。
とりあえず一緒に吹き飛ばされたらしいパーフェクトゼクターをデイパックに仕舞いつつ始は今の状況を確認していた。

(俺はどれくらい気を失っていたんだ? カテゴリーキングは? 弁慶は? そして、ギンガ……)

ふと思い出すのは先程の一件。
ギラファの斬撃から自分を守ってくれた少女ギンガ・ナカジマ。
ギンガは自分の正体を知った後でも変わらぬ態度で説得しようとした。
そして危険を顧みず自分の命を助けるために戦いの渦中に飛び込んできた。
そこまで自分に関わってくる理由は己の胸に引っ掛かっているあの言葉に関係あると容易に想像がつく。
だが今の自分はそれに応える事はできなかった。

(人間、か。だが俺は……アンデッド……人間な――! なんだ! この気配は!?)

その事が胸に引っ掛かりつつもカリスはまだ痛む身体を起こした。
未だ視界が定まらぬ煙の向こうから感じる禍々しい気配。
それが始に悠長に休息を取っている場合ではないと警告していた。
だが自分の感覚を信じるならばそこにいるのはアンデッドではない。
だがそれ以上の何かを感じさせる者がいる事は確かだった。
周囲一帯に立ち込める煙でほとんど何も見えないが、そんなものを感じさせない程にその存在は異常だった。
不意に一陣の風が校庭に吹いた。
それにより立ち込める煙は一掃されていき、三重の煙幕は徐々に晴れていった。

そしてカリスは見た。
紅い血で真っ赤に染まった地面に倒れ伏すギンガと、その脇に立っている赤いコートの男を。

「……貴様が殺ったのか」
「そうだと言ったら、どうする?」

その言葉を聞いた瞬間、相川始の中で何かが弾けた。
不意に頭の中が真っ白になり、何も考えられなくなるほどに身体の奥底から何かが沸々と湧き上がってきた。
それは言葉に出来ないほどの暗い衝動。
それが自分の本来あるべき姿を呼び覚まそうとしていた。
それは長らく封印してきた自分の真の姿。
それになるという事は真の意味で化け物になる事だ。
だが。
それでも。
湧き上がる衝動は抑えがたく。
ついに。

「――――――――――ァァアアアア――――――――――ッッッ!!!!!」

その暗い衝動に身を委ねた。

次の瞬間、そこに相川始はいなかった。

そこにいる者は『相川始』に非ず、彼の者の名――それは『ジョーカー』。


     ▼     ▼     ▼


アーカードの目の前には一つの死体があった。
見慣れた服装、見慣れた髪、そして確認するまでもなく見慣れた顔。
それは紛れもなくアーカードの主インテグラル・ファルブルケ・ウィンゲーツ・ヘルシングに相違なかった。
アーカードがここに来た理由はガジェットの爆発に気付いたからだ。
その爆発音が市街地を捜索していたアーカードまで届き、戦闘の気配を感じるままに赴いた次第だ。
そして一度は去った学校に再び戻った時、アーカードは主インテグラの気配を感じ取っていた。
先程死にかけの女を抱えて去って行った黒い化物を放っておいたのも近くで主の気配を感じたからだ。
それなのに当の主はアーカードを見るなり悠然と命令を与え終わると、それが最期の力かのように静かに逝ってしまった。

「それがお前の最後の命令(ラストオーダー)か、我が主インテグラ」

――見敵必殺(サーチアンドデストロイ)だ! 我々の邪魔をするあらゆる勢力は叩いて潰せ! そして、あのプレシアを……

その最期の言葉がヘルシング機関の鬼札<ジョーカー>の胸にいつまでも木霊していた。


【1日目 昼】
【現在地 D-4 学校の校庭】
【アーカード@NANOSING】
【状況】疲労(小)、昂ぶり、セフィロスへの対抗心
【装備】パニッシャー(砲弾残弾70%/ロケットランチャー残弾60%)@リリカルニコラス
【道具】支給品一式、拡声器@現実、首輪(アグモン)、ヘルメスドライブの説明書
【思考】
 基本:???
 1.主の命令(オーダー)は見敵必殺(サーチアンドデストロイ)か。
【備考】
※スバルやヴィータが自分の知る二人とは別人である事に気付きました。
※パニッシャーは憑神刀(マハ)を持ったセフィロスのような相当な強者にしか使用するつもりはありません。
※第1回放送を聞き逃しました。
※ヘルメスドライブに関する情報を把握しました。
※セフィロスを自分とほぼ同列の化物と認識しました。
※はやて(A's)が死亡した事に気付きました。
※インテグラの死体(背中に朱羅の片方@魔法少女リリカルBASARAStS ~その地に降り立つは戦国の鉄の城~が刺さった状態)の傍にデイパック(支給品一式)が落ちています。


     ▼     ▼     ▼


相川始は図書館にいた。
なぜ学校にいた始がエリアを隔てた図書館にいるのか。
それはジョーカーの姿に戻って学校から移動したからだ。
だが本来ならジョーカーとして覚醒すれば赤いコートの男に襲いかかったはず。
しかしジョーカーとなった始は戦わなかった。

「……ぅ……!」

読書用に設置されたソファーの上から微かな声が聞こえてくる。
そこには全身血まみれの少女が寝かされていた。
青紫のショートヘアも、茶色の陸士制服も、その身体を沈ませているソファーも自らの血で汚しつつもまだ少女は生きていた。
ギンガ・ナカジマ。
あの時ギンガがまだ生きていると気づいたから始はジョーカーでありつつも逃走を選んだ。
まだギンガを助ける事ができると信じて。
それは先程ギラファから助けてもらった借りを返そうとしたからかもしれない。
だが実のところはそのようなものがなくとも助けようとしたのかもしれない。
本当のところは始にも分かっていない。

「……始、さん」

ようやく気が付いたギンガの声は明らかに弱々しくなっていた。
当然だ。
左腹からの出血はもう手の施しようのないレベルに達していた。
応急措置をしようにもとっくに手遅れの状態だった。
もうギンガが助かる可能性はなかった。
そのギンガは最後の力を振り絞って何かを言おうとしていた。
始はそれを黙って聞いてやる事にした。

「は、始さん……」
「…………」
「わ、私のデイパックの、中の……録音機を、アーカードという人に……渡して……」
「…………………」
「お、お願い……し……」
「……ああ、分かったよ」

なぜか肯定の返事を返していた。
表情には出さなかったが、そんな事をしている自分に驚いていた。
だが不思議と断ろうという気持ちにはなれなかった。
そして始の承諾を得たギンガの顔は安らかなものだった。

「ありがとう……ござ、います。あと……なのはさんと、フェイトさん……はやて部隊長、それにスバルと……キャロに会ったら――」
「…………………………………」

その言葉の続きがギンガから話される事はなかった。


     ▼     ▼     ▼


いつのまにか私は始さんに背負われて、そして寝かされていた。
その時はっきりと相川始は人間だと確信できた。
誰かを助けようとする人が化け物であるはずがないと思ったから。
だから安心して録音機の事を頼めた。
あの中にはここへ来る途中でインテグラ卿がアーカードに対してメッセージを入れていた。
本来はインテグラ卿不在時にアーカードの遭遇した時の備えだったが、こんな事になるとは思っていなかった。
あと出来る事なら仲間の事も話しておきたかったが、どうやら時間切れのようだ。
もう既に意識が遠のき始めていた。

ああ、スバル。また守ってあげられなくてごめんね。

そして。

殺生丸さん、私は――


     ▼     ▼     ▼


紅に彩られたソファーに寝かせられたギンガはまるで安心しきったかのように眠っていた。
だがその眠りは永遠である。
もうギンガが目覚める事はない。
それを理解した時、始は胸に言葉に出来ない何かを感じていた。
それが何なのかなぜそのように思うのか自分でもよく分からない。

「何を考えているんだ、俺は……」

その不可解な感情がジョーカーの心を大きく揺さぶっていた。


【1日目 昼】
【現在地 E-4 図書館のロビー】
【相川始@魔法少女リリカルなのは マスカレード】
【状況】疲労(中)、全身に軽い切傷、左腕に強い痺れ、背中がギンガの血で濡れている、言葉に出来ない感情、カリスとジョーカーに1時間変身不可
【装備】ラウズカード(ハートのA~10)@魔法少女リリカルなのは マスカレード
【道具】支給品一式×2、パーフェクトゼクター@魔法少女リリカルなのは マスカレード、ゼクトバックル(ホッパー)@魔法少女リリカルなのは マスカレード、録音機@なのは×終わクロ
【思考】
 基本:栗原親子の元へ戻るために優勝を目指す。
 1.とりあえず身体を休める。
 2.見つけた参加者は全員殺す(アンデットもしくはそれと思しき者は優先的に殺す)。
 3.アーカードに録音機を渡す?
 4.あるのならハートのJ、Q、Kが欲しい。
 5.ギンガの言っていた人物(なのは、フェイト、はやて、スバル、キャロ)が少し気になる。
【備考】
※自身にかけられた制限にある程度気づきました。
※首輪を外す事は不可能だと考えています。
※「他のアンデットが封印されると、自分はバトルファイト勝者となるのではないか」という推論を立てました。
※相川始本人の特殊能力により、アンデットが怪人体で戦闘した場合、その位置をおおよそ察知できます。
※エネルという異質な参加者の存在から、このバトルファイトに少しだけ疑念を抱き始めました。
※ギンガを殺したのは赤いコートの男(=アーカード)だと思っています。
※カリスの方が先に変身制限は解除されます。


     ▼     ▼     ▼


学校で、図書館で、二人のジョーカーが想いを馳せている時、金居は一人東に向かっていた。
目的地は当初の予定通りB-8にある工場だ。

(いくつか誤算はあったが、まずまずの結果だ)

金居は今までの経緯を振り返っていた。

まずはジョーカー――カリスとの戦闘。
この時金居は本気で戦う事はしなかった。
だが一応それなりに戦っていたので精々ジョーカーが違和感を覚えた程度だろう。
このような事をしたのは当初の予定通り弁慶と潰し合わせて漁夫の利でカリスを仕留めようと考えていたからだ。
だからカリスの消耗を待って一気に片付ける気でいた。

あの作戦が破綻した時は少し予定が狂いかけたが、弁慶の捨て身の行動で絶好の機会に転じる事ができた。
ジョーカーの注意を逸らそうと雄叫びまで上げた事が功を奏したのかは知らない。
だがその機会は突然乱入してきたギンガ・ナカジマによって阻まれてしまった。
ここでしばらく膠着状態に陥った時はさすがに本気を出してギンガ諸共カリスを倒す事を優先しようかと考えた。

転機はその直後に起こった爆発だ。
爆発の理由は不明だが、その直前に到着した新たな人物。
その女性はギンガから「インテグラ」と呼ばれていた。
この地でそれに該当する者は「インテグラル・ファルブルケ・ウィンゲーツ・ヘルシング」に他ならない。
そしてインテグラはペンウッド曰く、アーカードの抑えられる唯一の存在らしい。
つまりインテグラを殺せばアーカードを止める者はいなくなり、結果デスゲームの進行に貢献する事に繋がる。
それは金居の望むところだった。

爆発の衝撃はバリアで防いだので即座に行動を再開する事ができた。
そしてすぐにあの煙の中で幸運にもまだ爆発の衝撃から回復していないインテグラを発見できた。
目的は一瞬で終わった。
一気に背後より近付き左手のスケルターで背部を強打。
こちらの姿を見ないまま倒れたところに落とした槍で心臓付近を一突き。
実に呆気ない最期だった。
凶器に槍を選んだのはもしものための保険だ。
ヘルターやスケルターではなく誰でも扱える槍なら下手人が判明する可能性は低くなる。
ついでにインテグラが所持していた銃器を拾えた事は幸運だった。

一番の誤算はその現場をギンガに見られた事だ。
煙で視界が悪いのですぐに済ませれば問題ないと思っていたが、ここは運が悪かった。
だが直後の戦闘でインテグラ同様に槍を刺して殺せたので大した問題にはならなかった。
少し意外だったのは弁慶が身を挺して守ってくれた事だ。
あそこまで仲間想いの奴だとは思っていなかったから少し驚いていた。
だがあそこで弁慶が庇ってくれなければ面倒な事になっていた可能性が高い以上弁慶には素直に礼を言っておいた。

そして直後に得体の知れない禍々しい気配が近づいてきたのを感じたので、その場は弁慶のデイパックだけ回収して立ち去った次第だ。
もし仮に誰かに見られたら不味い場面なのは確実だったので長居はしなかった。
心残りはジョーカーを仕留める事ができなかった事だが、あの様子ではすぐに動く事は難しいだろう。
もし運が良ければあの禍々しい気配と一戦構えてくれればと思うが、そう上手くいかないだろう。

「これが支給されたのは幸いだったな。このおかげですぐに動けるようになった」

金居の手には小さな袋が握られていた。
その中に入っている物こそ金居がこうして戦闘直後にも関わらず不自由なく行動出来ている理由だ。
この袋の中にある物は「いにしえの秘薬」と言って、服用すればどのような傷でも完全に癒し体力も回復してくれる万能薬だ。
これのおかげで本来なら幾らかの負傷と変身後の疲労ですぐには動けない金居が不自由なく動けるのだ。

全体的に今回は上手く立ち回る事ができた。
基本的に戦闘は避けていく方針だったが、止むを得ない時は仕方ない。
ジョーカーとの決着は避けては通れないから。

(とりあえず弁慶君は……ジョーカーに殺された事にしておこう。あながち嘘ではないからな)

ふと時計を確認すると次の放送までもう少しというところだった。
これからの具体的な行動方針は放送を聞いてからでも遅くはない。
そう考えを出した金居は落ち着いて放送を聞くために近くのビルに入る事にした。

クワガタムシの始祖たる不死の王の大顎はまだ牙を剥き始めたばかりだ。


【一日目 昼】
【現在地 D-5 西大通り沿いのビル】
【金居@魔法少女リリカルなのは マスカレード】
【状態】健康、ギラファアンデッドに1時間変身不可
【装備】なし
【道具】支給品一式×2、トランプ@なの魂、いにしえの秘薬(残り7割)@魔法少女リリカルなのはSTS OF HUNTER、砂糖1kg×9、カードデッキの複製(タイガ)@仮面ライダーリリカル龍騎、USBメモリ@オリジナル、S&W M500(5/5)@ゲッターロボ昴、コルト・ガバメント(6/7)@魔法少女リリカルなのは 闇の王女、ランダム支給品0~1
【思考】
 基本:プレシアの殺害。
 1.プレシアとの接触を試みる(その際に交渉して協力を申し出る。そして隙を作る)。
 2.基本的に集団内に潜んで参加者を利用or攪乱する、強力な参加者には集団をぶつけて消耗を図る(状況次第では自らも戦う)。
 3.利用できるものは全て利用する。邪魔をする者には容赦しない。
 4.工場に向かい、首輪を解除する手がかりを探す振りをする。
 5.もしもラウズカード(スペードの10)か、時間停止に対抗出来る何らかの手段を手に入れた場合は容赦なくキングを殺す。
 6.USBメモリの中身を確認したい(パソコンのある施設を探す)。
【備考】
※このデスゲームにおいてアンデッドの死亡=カードへの封印だと思っています。
※最終的な目的はアンデッド同士の戦いでの優勝なので、ジョーカーもキングも封印したいと思っています。
※カードデッキ(龍騎)の説明書をだいたい暗記しました。


     ▼     ▼     ▼


アンジール・ヒューレーは倒れていた。

目の前でチンクを失った事。
それが想像以上にアンジールを苛み、精神的に負担になっていた。
当初はクアットロを探そうと荷物をまとめようとしていたが、チンクの眼帯を見た瞬間何も考えられなくなった。
ディエチとは違ってチンクはすぐ傍にいた。
それなのに守る事ができなかった。
誰もいない大通り上でアンジールはいつまでも己のあやまちを責め続けた。
そして気づけばアンジールはチンクの眼帯を握ったまま当てもなく歩きだしていた。
だがそんな状態がいつまでも続くはずがなく、程なくしてアンジールは己を苛んだまま地面に倒れてしまった。
そして予想以上に精神的に堪えていたアンジールはそのまま意識を手放した。

だからアンジールは気付く事が出来なかった。
荷物をまとめる際にガジェットがどこかへ行ってしまった事を。
そしてそのガジェットが3人の参加者の命を奪う手助けをした事を。
その中にアンジールと同じように誰かを守ろうと必死になっていた者がいた事を。

全て知らないまま2回目の放送の時刻が近付いていた。


【1日目 昼】
【現在地 G-6】
【アンジール・ヒューレー@魔法少女リリカルなのはStrikerS 片翼の天使】
【状態】疲労(中)、全身にダメージ(小)、セフィロスへの殺意、深い悲しみと罪悪感、睡眠中
【装備】バスターソード@魔法少女リリカルなのはStrikerS 片翼の天使、アイボリー(6/10)@Devil never strikers、チンクの眼帯
【道具】支給品一式×2、レイジングハート・エクセリオン@魔法少女リリカルなのはStrikerS、グラーフアイゼン@魔法少女リリカルなのはStrikerS
【思考】
 基本:クアットロを守る。
 1.チンク……
 2.クアットロ以外の全てを殺す。特にセフィロスは最優先。
 3.ヴァッシュ、アンデルセンには必ず借りを返す。
 4.いざという時は協力するしかないのか……?
【備考】
※ナンバーズが違う世界から来ているとは思っていません。もし態度に不審な点があればプレシアによる記憶操作だと思っています。
※制限に気が付きました。
※ヴァッシュ達に騙されたと思っています。
※チンクが死んだと思っています。
※ガジェットが無くなった事に気付いていません。


【武蔵坊弁慶@ゲッターロボ昴  死亡確認】
【ギンガ・ナカジマ@魔法妖怪リリカル殺生丸  死亡確認】
【インテグラル・ファルブルケ・ウィンゲーツ・ヘルシング@NANOSING  死亡確認】

【全体の備考】
※以下の物がD-4の学校の校庭に放置されています。
  • 弁慶の死体(腹に童子切丸@ゲッターロボ昴の刀身が突き刺さり全身焼け焦げた状態、仁王立ち)、童子切丸の柄@ゲッターロボ昴、朱羅の片方@魔法少女リリカルBASARAStS ~その地に降り立つは戦国の鉄の城~
  • 閻魔刀@魔法少女リリカルなのはStirkers May Cry、パイロットスーツ(真っ二つにされた状態)@ゲッターロボ昴
※カード×48@魔法少女リリカルなのはA’sはギンガが全て消費しました。
※ガジェットドローン@魔法少女リリカルなのはStrikerSがD-4の学校まで移動して爆発しました。その際深い煙が発生しました。
※G-6の大通りにはバニースーツのうさぎ耳、炭化したチンクの右腕が落ちています。


【カード@魔法少女リリカルなのはA’s】
デバイス内での炸裂を必要としない簡易型のカートリッジシステムのような働きをする使い捨ての魔力蓄積装置。
仮面の戦士(リーゼ姉妹)が魔力行使の際に使っていた。普段は左太腿のカードホルダーに収納されている。

【録音機@なのは×終わクロ】
記録用のメモリ式携帯録音機(バッテリー式)。本来の持ち主は佐山御言。



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インテグラル・ファルブルケ・ウィンゲーツ・ヘルシング GAME OVER
ギンガ・ナカジマ GAME OVER
相川始 Next:The people with no name
金居 Next:MISSING KING
武蔵坊弁慶 GAME OVER
アンジール・ヒューレー Next:過去 から の 刺客(前編)






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