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Alive a life ~死闘(前編) ◆gFOqjEuBs6




燃え盛る烈火に包まれたこの場所で、無双の名を冠する龍は咆哮する。
雄々しき咆哮は、無双龍の誇りを体現しているかのようだった。
無双の名を持つ者の誇り。ミラーワールド最大級のモンスターとしての誇り。
その誇りを踏みにじった男を許すつもりはない。
あの男と再び戦えるなら。あの男にリベンジを果たす事が出来るのなら何度でも立ち上がってやる。
揺るぎの無い気高さを、心に抱く限り。無双龍の命が果てる事は無い。

無双龍が出会った少女は、かつて共に戦った男と何処か似ている気がした。
仮面の騎士として、龍の影を纏い戦った男。彼は、ライダー同士の殺し合いには絶対に乗らなかった。
そんな彼と共に戦っているうちに、いつの間にか愛着が沸いていたのかも知れない。
自分を敗北という闇の中から救い出してくれたこの少女もまた、殺し合いには乗らないというのなら。
無双龍――ドラグレッダーもまた、彼女に従うつもりだった。
共に戦い、生き残る。そして、自分をこんな閉鎖された空間に閉じ込めてくれた主催者達を、倒す。
それが無双龍ドラグレッダーの確かな自我だった。

だが、どういう訳だろうか。ドラグレッダーの感情を無視して湧き上がる本能。
人間と共に戦いたいという思いは、しかしその本能に押し殺されてしまう。
気付けばドラグレッダーの身体は何かに支配されたように、少女達に襲いかかっていた。
全てはあの忌々しい主催者達の仕業なのだろうということは容易に想像がつく。
願いはただ一つ。力を制御できなくなってしまった自分を止めてほしい。
そんなドラグレッダーの眼前に現れたのは、同じく咆哮する白銀の翼竜だった。
こいつならば、自分を止めてくれるだろうか。
――いや。目の前で咆哮する白銀の竜は何処か、自分に似ている気がした。




大通りを駆け抜ける真紅の影が一つ。
通常のバイクの速度を遥かに凌駕したそれは、疾風となって北へと走り抜ける。
やがて現れた大きな曲がり角。場所は地図で表す所の、C-4。

「ねぇ、もしかしてまだ僕の事疑ってる? ホントにあっちの方から大きい鳴き声が聞こえたんだって!」
「煩い。いいからお前は黙って道案内をしろ」
「何だよその態度!」

バイクに跨りながら、キングが声を張り上げた。
確かにキングは、まるで巨大なモンスターが叫ぶような泣き声を聞いた。
そう言って、天道に北へと進むように仕向けた。だが、このいけ好かない男は本当に自分の事を信じてくれてるのかどうか。
まず間違いなく不審に思っているのであろうが、如何せんこの男は本心が読めない。
それが、キングに苛立ちを感じさせていた。

「一つ聞かせて貰おうか。何故俺には聞こえない声がお前には聞こえる?」
「そんなの決まってんじゃん。僕がカテゴ――」

そういえば自分がまだアンデッドだと言っていなかったな、と思いだす。
別に隠すつもりは無いし、これ以上疑われるのもウザい。だからここでハッキリさせておこうとした。
僕はカテゴリーキング、スペードスートのキングに君臨する、最強のアンデッドだ、と。
しかし、キングの声は最後までは発せられず。

「何が決まってると言うんだ。」
「ちょ……あ、アレ……アレ見てよ!」
「アレでは伝わらん。ハッキリ言え」
「いや、違うってほら、停めて停めて! アレ見てってば!」
「何だ、騒がしい奴だな……」

言いながら、渋々ブレーキを握り締める。
キキっと音を鳴らしながら、真紅のバイクはアスファルトにタイヤの軌跡を残して停車。
キングが指さす方向を、天道も目を細めて見つめる。
差した指の先。ここから少し離れた空を飛びまわるのは、二匹の巨大な龍。

「何だ、あれは……」
「僕はあいつを知ってるよ……無双龍、ドラグレッダー!」
「無双龍だと……?」
「そう、仮面ライダー龍騎の契約モンスター。僕の世界の仮面ライダーだ!」
「ほう……」

それぞれが別々の世界から呼ばれているであろうと言う事は既に天道にも話している。
それ故に“僕の世界の仮面ライダー”という言葉にはあまり反応を示さなかった。
いや、それよりも天道が最も反応を示したのは、「仮面ライダー」という言葉についてだ。
この男にしてみればどこの世界の仮面ライダーであろうが関係はないのだろう。
それに、キングの世界の仮面ライダーという言葉にも語弊がある。
確かにキングの世界にも龍騎は居るが、目の前のドラグレッダーはキングの知る龍騎の契約モンスターでは無い。
勿論キング自身もその可能性には気付いているのだが、同じライダーならどちらにせよ同じ事だ。

「マスクドライダーか……面白い。行くぞ」

それだけ言うと、天道は再びアクセルを握り締めた。
突然の発進に慌てたキングは咄嗟に天道に捕まり、姿勢を立て直す。
これは面白い事になりそうだ、と。内心でほくそ笑みながら、二人は戦場へと向かうのであった。




「フリード! フリード!」

燃え上がる商店街で、なのはが呼びかける。
しかしフリードは、まるで意に介さないように、大空を舞い続ける。

『GUUUUUUUOOOOOOOOOOOOOOOAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!』

咆哮。
次いで、その大口から吐き出されるは灼熱の炎――ブラストレイ。
標的は真紅の無双龍――ドラグレッダー。細い体を巧に動かし、その機動性で灼熱を回避。
反撃と言わんばかりに、ドラグレッダーもまた空に舞い上がる。
フリードの眼前に飛び立つと同時。口から放つは、5000度の高熱――ドラグブレス。
当然、黙ってやられる飛龍ではない。その巨大な体躯に備わっているのは、尋常ならざる筋肉。
その怪力で以て翼を羽ばたかせる。巻き起こった疾風がドラグブレスを掻き消し、眼下の全てを吹き飛ばす。
彼らの決闘には最早、誰の声も届かない。生きるか死ぬか。倒すか倒されるか。
勝利か、敗北。その二色に分かれるまで、破壊の限りを尽くすつもりだろう。

「どうにかならないのか、あいつらは!」

C.C.が、その態度で苛立ちを表現する。怒声にも似た声が、なのはの耳朶を叩いた。
何も言い返せない。今の自分に、フリードを制御する事など不可能なのだから。
キャロを守るため、過去にもフリードが大暴れした事が幾度かあると。報告では聞いていた。
かと言って、あの状況下で他に打つ手など考えられただろうか。否、これしか無かった。
あの無双龍を鎮めるためには、今はフリードに頼るしかない。そう判断したからこそ、龍魂召喚を使ったのだ。
だが、結果はどうだ。フリードは暴走。ドラグレッダーは手が付けられない。
これでは何の解決にもなりはしない。

「フリード! お願い、言う事を聞いて!」

それでも、声を張り上げる。
フリードは、自分を守るために力を貸してくれた。そんなフリードだからこそ、なのはは呼びかける。
例え届かなくても、何度でも、何度でも。




なのはの声が、聞こえた気がした。
いや、実際聞こえている筈なのだ。フリードの心にも、眼下で叫ぶなのはの声は届いているのだから。
されど、今のフリードは自分を制御出来ない。
ただ目の前で暴れ回る“敵”を倒すまで、本能に身を任せるしか無かった。




ドラグレッダーがその身を翻す。眼前のフリードに、尻尾に備わった鋭利な刃を叩きつける。
その体に衝撃を受けたフリードは、痛みを堪え切れずに、大きく咆哮する。
目の前の敵の高度が下がる。さしずめ飛龍と言えど、突然の打撃には痛みを伴うのも無理はない。
無双龍はその一瞬の隙を逃しはしない。
痛みに怯んだフリードに、必殺のドラグブレスを浴びせかける。

『GUUUUUUUUUUUUUUUUUUOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOAAAAAAAAAAA――』
『GYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!』

炎に焼かれ、燃え落ちるフリード。
すかさずフリードに高度を合わせ、蛇をイメージさせる長い体をフリードの体躯に巻き付ける。
その巨大な翼は、ドラグレッダーから離れない限り、羽ばたく事も敵わない。
相手の動きを完全に封じた。力の限り締め付け、フリードから自由と、体力を奪う。
されど、それは同時にお互いの飛行手段を失った事になる。
推進力を失った二頭の身体は、重力に引かれて商店街へと落下するのみ。

『GUUUUUUUUUUUUUOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO――ッ』

響いたのは、轟音。
周囲に居る全ての人間の耳を劈かん勢いで、建物が倒壊する破壊音が響く。
ドラグレッダーは、建物に激突する瞬間、フリードの身体を離したのだ。
勢いよく突き放されたフリードの身体は、その体重で商店街のありとあらゆる建物を粉々に砕く。
その影響で、舞い上がるのは大量の塵。一時的に太陽の光さえも遮断してしまう程の塵がドラグレッダーの視界を奪った。
何処に居る。砂埃の中に飛び込み、周囲を探る。ドラグレッダーの背後に、真紅の眼光が煌めいた。

『GUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUUOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!』
『GYAAAAAAAAAAAAAA――!?』

一瞬の不覚。
塵を吹き飛ばす突風が巻き起こると同時、ドラグレッダーの背に鈍い痛みが走った。
慌てて背後を確認。痛みの正体は、フリードリヒによる強烈な頭突きだ。
その翼を力一杯羽ばたかせ、弾丸の如く速度で打ち出された頭突きは、ドラグレッダーを怯ませるには十分だった。
塵が晴れる。気づけば商店街の建物にのめり込む形になっていた事に気づく。
ドラグレッダーの視線の先に映るのは、仰向けに倒れた自分に跨るようにして吠える白銀の竜の姿。
危険を感じた時には既に遅い。距離にしてほんの数メートル。フリードの口内には灼熱の炎が渦巻いていた。
それをドラグレッダーに向かって放射する。

『GYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!?』

想像を絶する高熱に、叫ばずには居られなかった。
だが、それでも負けるわけには行かない。頭を振るい、熱を逃がしつつ細い体をうねらせた。
ドラグレッダーは尻尾の刃を、馬乗りになったフリードの背後から叩きつけた。
強い衝撃に、フリードの巨体が数十メートル前方へと吹っ飛ぶ。ドラグレッダーを焼く炎からも解放された。
その体を靡かせ、再び上空へと舞い上がる。対するフリードも、力を振り絞って起き上がる。

『GYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAッ!!』
『GUUUUUUUUUUUUUUUUUUUOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAッ!!』

咆哮する。
まだ戦える、掛って来い。そう言わんばかりの咆哮。
崩壊した商店街の空に、再び二頭のドラゴンが舞い上がった。
ドラグレッダーは下方に向かって加速。真逆、フリードは上空に向かって翼を羽ばたかせる。
クロスレンジの一瞬。がつん、と鈍い音が響いた。続いて聞こえるのは、消え入るような二頭の鳴き声。
頭突きだ。ドラグレッダーとフリードリヒは、お互いの頭をぶつけ合ったのだ。
脳が揺れ、一瞬の判断が鈍る。
それでもフリードは羽ばたき、ドラグレッダーと同じ高度を保とうとする。
上等だ、と。ドラグレッダーもまた、天を舞う竜神の如く優雅にその身を靡かせていた。




「こ、こりゃあ……凄いね……! 流石の僕もびっくりだよ!」
「そんな悠長な事を言っている場合か。まだ商店街に誰か居るかもしれん」

商店街の手前。停車させたカブトエクステンダーに跨ったまま、キングが楽しそうに笑っていた。
何が面白いんだ、と。キングに対し今日何度目か分からない苛立ちを覚えながら、天道は駆け出して行った。
あのドラゴンが暴れているという事は、何処かに仮面ライダー龍騎とやらが居る筈だ。
まずはそいつに会って状況を問いただす。
その為に、天道は既に商店街の原型を留めていない廃墟群の中を進んで行く。




崩壊していく商店街を凝視しながら、ゼストは傍らの少年にちらりと目をやった。
相当怯えているらしく、頭を抱えてしゃがみ込んでいる。
その言動からも、この少年があのモンスターと何らかの関わりを持っている事はまず間違いないと判断。
おい、と声をかけながら、肩を揺さぶる。しかし、無反応。
続けて少年の肩を揺さぶる。

「おい、しっかりしろ! あれは一体何なんだ!」
「見ての通り、モンスターだよ……! 奴等は人間を食うんだ!
 それで……それで俺はかがみさんを……!」
「かがみ……? 君の名前は?」
「万丈目……サンダー」

すぐにデイパックから名簿を取り出した。
今聞いた二つの名前を確認。それを見つけるのに、それほどの時間は必要としなかった。
柊かがみ。万丈目準。確かにこのデスゲームの名簿に記された名前だ。
サンダーの意味は良くわからなかったが、敢えてそこには触れないことにした。

「君はこのゲームに乗ったのか……?」
「冗談じゃない! 誰がこんなゲームになんか乗るものか!」
「なら、話してくれないか。一体君の身に何が起こったと言うんだ」

ゼストの問いかけに、万丈目は相変わらずの無言。
どうやら話したくはないらしい。いや、別に聞かなくても問題はないことなのだが。
しかし、この分ではこの男から情報を得ることは難しそうだ。
いっそ見捨ててC.C.を助けに行くか。そんな考えが浮かぶが、却下。
この男を見捨てることは出来ないし、何よりもこの男はあのモンスターについての情報を持っている。
何が起こるか分からないこの殺し合いにおいて、情報がどれだけ重要かと言う事はゼストにも良く解る。

「疑っているのなら安心してくれ、俺は君の味方だ。君をどうにかするつもりはない」
「もう放っておいてくれよ! 今は一人で居たいんだ!」
「そういう訳には行かない! 君を放っておく事は俺には出来ない!」

声を張り上げる。一瞬だが、万丈目の身体がびくんと震える。
だが、まだ話すつもりにはなってくれないらしい。どうしたものかと、思考する。
この少年から話を聞きだすのは、随分と骨が折れる事になりそうだ。


【1日目 昼】
【現在地 B-2 大通り】

【ゼスト・グランガイツ@魔法少女リリカルなのは 闇の王女】
【状態】健康
【装備】ブリッツキャリバー(待機状態)@魔法妖怪リリカル殺生丸
【道具】支給品一式
【思考】
 基本:高町なのはの捜索・抹殺、プレシアの抹殺、ルーテシアの保護。
 1.この少年をどうするか……
 2.1の後、商店街に戻ってC.C.と合流する。
 3.行動を共にする仲間を増やす(市街地は危険そうなので武装が整うまでは基本的に避けたい)。
 4.なのはと戦う事になればギア・エクセリオンの発動も辞さない――己の命を削ってでも。
【備考】
※なのはとルーテシアが『健全な』歴史(StrikerS)から来た事を知りません。
※C.C.との協力関係はギブアンドテイクという暗黙の了解の上に成り立っています。
※ギア・エクセリオンによる負担の程度は不明(ゼストは自分のデバイスのフルドライブ同様に命を削る可能性もあると推測)。
※プレシアにはスカリエッティと同等かそれ以上の技術があると思っていますが、プレシアを全く信用していません。
※幕間「修羅のように」(シグナムを倒した直後)からの参戦です。
※ヴィータとプレシアの間で何らかの約定があったかもしれないと考えています。
※スバルが『スバル・ナカジマ』の名前である事に疑問を抱きました。


【万丈目準@リリカル遊戯王GX】
【状態】疲労(中)、かがみに対する強い罪悪感
【装備】なし
【道具】支給品一式、ルーテシアのカレー@魔法少女リリカルなのは 闇の王女、考察を書いたノート
【思考】
 基本:殺し合いには乗りたくない。仲間達と合流し、プレシアに報復する。
 1.今はそっとしておいて欲しいが……
 2.かがみ君……すまない……。
 3.十代……。
 4.余裕があればおじゃま達を探したい。
【備考】
※チンク(名前は知らない)を警戒しており、彼女には仲間がいると思っています。
※エリアの端と端が繋がっている事に気が付きました。
※デスベルトが無い事に疑問を感じています。
※パラレルワールドの可能性に気づきました。
※柊かがみはLという危険人物から逃げてきたと思っています。
※かがみとつかさは他人だと思っています。
※かがみが生き残る可能性は非常に低いと考えています。




巨大なドラゴンが暴れまわる商店街で、一ヶ所だけ破壊を免れている場所が存在する。
桜色に輝く半透明の半球。その内部で外の様子を眺めているのが、なのはとペンウッド、それからC.C.の三人だ。
なのはは半球のバリア――サークルプロテクションを維持しながらも、フリードに呼びかける。
一方でC.C.とペンウッドの二人は、何も出来る事は無いが為になのはの後ろで座り込んでいた。

「や、やっぱり……こんなもの、持ってこない方が良かったんだ……」

ふと、ペンウッドがポケットから黒い箱――カードデッキを取り出した。
デッキの中心に描かれた金の紋章が、あの無双龍との繋がりを現している。
ペンウッドの呟きに気付いたC.C.が、デッキに視線を向けた。

「ペンウッド……その箱は一体何なんだ」
「わ、わからない……ただ、この箱を持っているとあのドラゴンも着いてきたんだ……」
「そうか……所で、お前はまだ金属音が聞こえるか?」
「え……き、聞こえるけど……それがどうかしたのか……?」

考える素振りを見せる。ややあって、少しの間を開けてから、C.C.が自分のデイパックを漁り始めた。
手を突っ込んだままごそごそと探す。暫しその作業を続けた後、C.C.が「あった」と呟いた。
デイパックから取り出したのは、ペンウッドが持つものと同じ――カードデッキ。
茶色の箱に、鹿のような紋章が描かれたデッキであった。

「実は私もそれを持っているんだが」
「…………えーーーーー!?」

一瞬の沈黙。
やがて、ペンウッドが唾を撒き散らしながら叫んだ。
C.C.は身を引き、ペンウッドから距離を取る。唾を飛ばされては敵わない。

「最初から鞄に入ってたんだから、仕方がないだろう」
「わ、悪い事は言わない! そんな物はすぐに捨てるんだ!」
「な……っ! 何をする、これは私のだ……!」

無理矢理茶色のデッキをひったくろうとするペンウッド。
C.C.もそうはさせるかとばかりに全力で以てそれを阻止する。
こんな頼りない中年男に自分の支給品を取られてたまるかと、心中で喚き散らしながら。
そうして揉めている間に、やってきたのはタイムリミット。
ゲーム開始以来、一度たりとも餌を与えらなかった。というよりも使われさえしなかったデッキのモンスター。
それらが、周囲のガラスの破片から一斉に飛び出した。

「……うわッ!?」
「ぐは……っ!」

一瞬の出来事に、何とかC.C.は回避に成功する。
というのも、引っ張り合っていたカードデッキから手を離した事で、後ろに倒れてしまっただけだが。
同時にペンウッドも、その勢いでC.C.とは真逆、反対方向へと倒れて込んでいた。
しかし、その手にカードデッキの姿は無く。

「「……あ」」

珍しく、今度はC.C.とペンウッドが同時に声を上げる。
二人の息が揃ったのは、ここに来てから初めての事だった。――勿論C.C.にとっては不服極まりないが。
視線を移し、足元をじっと見据える。二人の視線が交差する場所に転がっていたのは。
まるで割れた陶器のように、バラバラに砕け散った“カードデッキだったもの”であった。
カードデッキを破壊した原因は二つ。
一つ目の衝撃は、アスファルトへの落下。放り出されたデッキは固いアスファルトに叩きつけられる形となった。
二つ目の衝撃。決定打となったのは、落下したカードデッキを踏みつけて行った影だ。
突然ガラスの中から飛び出した茶色の影が、通りすがり様にデッキを踏みつけて行ったのだ。
――コレはまずい、と。二人は直感的にそう思った。

たった今二人が破壊してしまったのは、レイヨウ型のモンスターと契約したデッキ。
しかし、他のデッキと違って契約対象は一体では無い。
一枚のアドベントカードで、大量の数のモンスターと契約しているのだ。
それら全てを使いこなし、人海戦術を主な戦法として戦う仮面ライダー。
仮面ライダーインペラーに変身する為のカードデッキであった。
しかし、最早このデッキにその存在意義は皆無だ。理由は至って簡単。
デッキも破壊され、モンスターとの契約は破棄された。また、仮面ライダーへの変身も不可能となった。
つまり、このデッキ“だったもの”は、ただ大量のモンスターを呼び寄せるだけの餌となったも同然なのだ。




――私は、何処で間違ってしまったんだろう。

茶色の髪をサイドテールに束ねた少女は、アスファルトに膝を付き嘆いた。
目の前に横たわるのは、大切な仲間。
無能で、臆病者な。しかし、誰よりも勇気を持っていた筈の男だ。
その脇腹からは、周囲を漆黒に染める程の血液が流れ出ていた。




どうしたものか、と。海軍中将は戸惑っていた。
自分のミスの所為か、目の前に大量のモンスターが召喚されてしまった。
巨大な槍を携え、周囲を跳ねまわる茶色のモンスター――メガゼール。
二股に別れた刃物を構え、メガゼールと共に群れを成す紫のモンスター――ギガゼール。
それぞれが武器を構えて飛び回る。勿論自分には何の対抗手段も無い。
このままでは、自分達はドラゴンにやられる前に残らずこのモンスター共に殺されてしまう。
今はなのはが、魔法による誘導弾を使って最低限の対処をしてくれているが――いつまで持つか解らない。
デッキが破壊された事で、明確な攻撃対象が無くなったモンスターは最早、野生のモンスターと何ら変わりはない。
ただ人を襲い、その肉を食らう。自分達が生き残るために、餌となる人間を貪り食う。
そうなってしまっては、もう手が付けられない。少なくとも、何の力も持たない自分には。

――い、いや……本当にそうなのか?

ふと、ペンウッドの心に疑問符が浮かぶ。
本当に自分は何も出来ないのだろうか。このまま何も役に立たず、ただ殺されてしまうだけなのだろうか。
アリサという少女の思いを無駄にしないと誓ったのは、嘘だったのか。

――だけど、私には何も出来ない……

諦めの感情が、ペンウッドの心を包む。
どんなに願っても、その力が無ければ何も出来はしない。
出来る事なら、皆を守るだけの力が、自分にも欲しい。なのは一人だけに戦わせるのはもう嫌だ。
でも、今の自分にはどうにも出来はしない。この状況を打開する策も思いつかないのだから。

ふと、視界に入ったのは、眼前に飛び出したギガゼール。
ギガゼールがその槍の矛先を向けているのは。命を奪おうと狙っているのは。
紛れもない、私たちの為に戦ってくれている、高町なのはであった。
なのはは気付いていない。数十匹という数の大量のモンスターからC.C.と私を守るために必死だからだ。
もしもなのはが、自分の為だけに戦っていたらこんな事にはならなかったのだろう。
ペンウッドは思い出す。先ほど、自分が赤き龍から救われた時の事を。あの時自分を救ってくれたのも、紛れもない高町なのはその人なのだ。

――や、やらせてたまるか……!

瞬間、ペンウッドの表情が変わった。
心に浮かんだのは、絶対に死なせたくないという感情。自分が今すべき事は、なのはを救うこと。
そう判断した時には既に、ペンウッドは走り出していた。なのはが立っている方向へと向かって。
ペンウッドは気付かなかった。この時、自分のデイパックの中で、青い輝きを放つ支給品が存在していた事に。
自分が一度使い道が無いと判断した支給品が、今まさに眩いばかりに光輝いていた事に。



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