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かがみとバクラが堂々とホテルで休憩するそうです ◆gFOqjEuBs6




ホテル・アグスタ。
かつて美術品や骨董品のみによるオークションが行われたホテルは、本来ならば常に厳重な警備体制で管理されている筈だった。
しかし、現在のホテルアグスタに、警備などと言う物は存在しない。
勿論、本来この場所で働いている筈のホテルの従業員も。
常時ならばこの豪勢なホテルに宿泊している筈の金持ちも、誰ひとりとして存在しない。
普通に考えればそんな事はあり得ないのだが、ここはそんな非常識が起こり得る場所。
その理由は至極簡単。この場所にいる参加者ならば、その理由について考えるまでもない。
「この場所は殺し合いの場で、ホテルだけがフィールドに組み込まれているから」だ。
他の施設にも言える事だが、何故このホテルがこの会場に存在しているのか。
本当にこの施設は本物なのか、それとも精巧に造られたコピーに過ぎないのか。
また、一体どういった基準でこのホテルが会場に選定されたのか。
それらの真実は主催者側しか知る事は無い。
されど、今ここに立ち入ろうとしている参加者にとってはそんな事はどうでもいいのだ。
彼女らが今考えている事はただ一つ。
「如何にしてこのゲームを生き残るか」、ただそれだけだ。
何としても生き残る。その為にこの施設を探索、可能であれば参加者をその手にかける。
それらを行動方針に、彼女(と見えないけど彼)は、ホテルへと歩を進めた。


と言う事で……
『かがみとバクラが堂々とホテルで休憩するそうです』


周囲を森林に囲まれたホテルの内部は、普通の一般女子高生であるかがみでは考えられない程の豪勢さであった。
まず第一にかがみの目を引いたのが、ホテル内部の広さだ。
入口から入ったかがみが最初に見る景色は、当然のようにロビーという事になる。
されど、その造りは明らかにかがみが知る一般的なホテルを凌駕していた。
神々しいシャンデリアに、見るからに高級そうなテーブル。至る所に使用された金も相俟って、少女の目には余計に美しく見えた。

『どうした宿主サマ、こんな豪勢なホテル来た事も無くて臆しちまったか?』
「そんな訳ないでしょ、バカな事言わないで。ちょっと豪華過ぎて驚いただけよ」
『オレ様が言ったのとどう違うんだよ』
「くっ……色々違うのよ!」

軽口を叩きながら、ホテルの奥へと歩を進めていく。
傍から見れば、かがみがぶつぶつと独り言を言いながら歩いているようにしか見えなかった。
それこそ傍から見れば、精神的にヤバい人みたいに思われること請け合いだろう。
そういう点を考えれば、周囲に誰も居ないのは幸いだった。

『ところで宿主サマ……このホテルには誰か居ると思うか?』
「見た感じ誰かが荒らした形跡は無いけど……誰か居るとしてもこの規模じゃ探し切れないかも知れないわね」
『そうかい……まぁ、焦る事はないさ。まだデッキの猶予は十分にあるんだからよ』
「あのねぇバクラ? その余裕が後々命取りになるのよ」

バクラの言動一つ一つに突っ込みを入れずにはいられないのはやはり、かがみの元々の性格故だろう。
対するバクラはバクラで、かがみの背後で幽霊のような存在感を示しながらも、「んなこたぁ解ってんだよ」と、一言。
こうしたやり取りが出来るのも、かがみの精神が随分と落ち着いてきている証拠だ。
そう言う意味では、かがみの身体に寄生するバクラとしても安心していた。

「とりあえず、探索した後も出来るなら少し休みたいから、部屋の鍵を取りに行くわよ」

それだけ言うと、フロントに向かって歩き始める。
バクラはというと、かがみの背後に着いて行く以外に出来る事は無い故、黙ってそれに追随。
勿論かがみの案は悪くは無いし、寧ろ殺し合いに生き残る為に休息は必要不可欠と言ってもいい。
かがみのような本来何の力も持たない女子高生なら尚更の事だ。
寄生先の宿主に死なれてはバクラも困るし、同時に気分も良くない。
だからバクラがかがみを心配しているのも、あながち嘘では無いのだ。

フロントに侵入したかがみは、その棚から適当にカードを一枚引きぬいた。
数字に黒いラインだけが書かれたそのカードは、このホテルの部屋を使う為に必要なカードキー。
この殺し合いは恐らくまだまだ続く。それ故にこれを用いて、部屋で暫しの休息を摂るのが目的だ。

『で、そいつは何処の部屋のカギなんだ?』
「“0313”……三階の十三番目の部屋?」
『おいおい宿主サマ、普段じゃ来れないホテルなんだ。どうせタダで泊まるならもっと豪勢に行こうぜ!』
「あんたね……これは殺し合いなのよ? そんなこと言ってる場合じゃ……」
『だからこそさ。使えるモンは全部使うってくらいの精神じゃなきゃ生き残れないぜ?』
「あんたらしいっちゃらしい考えね……でもどれが一番いい部屋なのかなんてあんたに解るの?」
『そうだな……とりあえず最上階の鍵を選びな。こういうのは最上階が一番高いって相場は決まってんだよ』
「何でそんな事知ってんのよ……」

確かにバクラの考えにも一理あるな、とかがみは思考する。
言いながらも、先ほど引き当てたカードを元の場所に戻し、一番高い場所の棚からカードを一枚引き抜く。
一応言っておけば、この殺し合いは何が起こっても不思議では無い。
病院という大型施設を容易く破壊する参加者も居れば、街を一つ崩壊させる程の戦闘を繰り広げる参加者もいる。
そんな奴らが生き残りを賭けて戦うこの会場で、自ら逃げ場を塞ぐような場所に隠れるのは得策とは言えない。
だが、ゲーム開始から経過した12時間の間、このホテルに訪れた来客はただ一人。事実として、殆どの参加者がこの施設を探索してはいないのだ。
故にホテルは未だに手つかずの状態で残っている。そう考えれば、最上階で休息を摂るのも悪くはないのかも知れないが。

一つだけ、彼女らの考察に見落としがあるとすれば、それは過去にこの場所に訪れた来客――ブレンヒルトの存在だ。
実際にはブレンヒルトがこの場所に訪れた際に、カードキーを一つ持ち出しているのだ。
だがそれは、最初からろくに棚を見る事もせずにカードを引き抜いた二人の知るところでは無い。
しかし、奇しくもブレンヒルトが選んだカードキーと、かがみ達が適当に選んだカードキーには共通点が存在した。
そう。ブレンヒルトが持って行ったカードと、今かがみが所持しているカード。それらはどちらも同じ、最上階のスイートルーム。
勿論それを知る者は居ない。故に、もしかしたらブレンヒルトとかがみは、同じ部屋を選んだのかも知れないが――
やはりそれを知る者は、誰も居ないのであった。

カードキーを確保したかがみ達は次に、ホテル内の探索を開始した。
何処までも続いているかのように錯覚する廊下と、隣り合わせに無数に存在する部屋。
それら全てを見て回るのは流石に骨が折れるし、それを実行する手間を考えれば、まさに無駄な時間と言っても過言では無い。
だから、宿泊客の部屋を除いたあらゆる部屋を順番に見て回る事にした。

最初に二人が入った部屋は、巨大なホールだ。
数え切れないほどの観客席。そこに座れば、二人の視線が向かう先は巨大な舞台。
まるで舞台劇を見ているような感覚――なのだが、二人にとってそこはそれ以上の価値は見いだされなかった。

「なんか時間の無駄だったわね」
『次行くぞ、宿主サマ』

バクラの声に従い、すっくと立ちあがる。
かつて骨董品によるオークションが行われた会場も、かがみにとっては何の意味もない。
華やかな飾り付けも、ライトアップも存在しないホールは、ただのだだっ広い部屋以上の感想は抱かなかった。

次に二人がやって来たのは、つい先刻見渡したホールまでとは行かない物の、巨大な広間だ。
無数のテーブルが設置された広間は恐らく、パーティの会場等に使われていたのだろう。
かがみの高校の体育館よりも遥かに広い会場に驚きはしたものの、やはりここにも何も存在しない。
他の参加者が居るわけでもなく、ただテーブルが並べられているだけの部屋はやはりかがみの興味を引きはしなかった。
それどころか、こうも広いホテルを居るかどうかも解らない参加者を探して歩き回るのは、やはり無駄骨のような気がして来た。

「やっぱりもう部屋に行く?」
『待ちな、宿主サマ。そいつはまだ早いぜ』

かがみの考えている事は、彼女の精神に寄生しているバクラには手に取るように解る。
それ故に、こんなホールや広間ばかり見て回ってもどうせ誰も居やしないであろうという考えに至ったのだ。
バクラとしてもそれについては概ね同意だ。それ故に引きとめる理由は無い筈なのだが――

『宿主サマ、ここに来てから何か食べたか?』
「あ……」

バクラに問われると同時、空腹を思い出したかがみの腹部から、情けない音が響いた。
少し顔を赤面させるかがみを笑い飛ばしながら、バクラが告げる。

『二回目の放送前に、昼飯の時間にしようじゃねぇか』
「そ、そうね……こんな会場があるってことはさぞかし立派な厨房があるんだろうし」

返す言葉は、バクラへの肯定と、未だ聞こえる腹の虫。
取りあえず休むのなら昼食を摂る事も必要だ。こうして二人の行動方針は決まった。




チン、と。甲高い音が聞こえる。
同時に開いたドアから現れたのは、柊かがみ(と見えないけどバクラ)。
かがみが両手で押し進める台車に乗っているのは、大量のパスタとパン、その他調味料が多数。

『どうせならば最高の部屋で最高の料理を食おうぜ』

この一言が、かがみが現在料理を運んでいる理由の全てだ。
簡単に作れるパスタとパンを最高の料理と言ってしまうのはどうかと思うが、かがみはこれで十分だと判断した。
パスタならば消化も早く、すぐに体力を作る事が出来ると言う事はかがみも知っていたし、
何よりも無数にある食材からプロの料理人が作る料理と寸分違わぬ料理を作ることなど、かがみには不可能だった。
だからあまり面倒な事は考えなくて済むようにと、食材の中からパスタを引っ掴み、それを湯でて味付けした。
あとはパンと調味料があれば十分過ぎるくらいだ。それらを持って、エレベーターから最上階へと上がったのだ。

暫し歩いたかがみが、その足を止める。
目の前の部屋番を見れば、かがみが手に持つカードキーと同じ部屋番号だ。
それをリーダーに差し込む事で、部屋のロックは解除される。どうやらホテルの機能は生きているらしい。
部屋の中へと歩を進めたかがみ。その余りの豪勢さと美しさに、かがみは開いた口を閉じるのを忘れてしまった。

『ヒャッハァ~! こいつはすげぇ、まさしくスイートルームってかぁ?』
「す、凄いわね……これは確かに」

バクラに続くかがみの口元は、僅かに緩んでいるかのように見えた。
窓から見える景色は絶景。この殺し合いの会場全体を見渡せるほどの眺め。
所々で火災が発生していたり、街が崩壊している個所が見受けられるが、それに関しては目を瞑っておこう。
巨大なテーブルに、如何にも高そうな質感のソファ。それらを部屋の中心に置いても、部屋全体の広さを損なわない。
部屋の至る所に設置されたランプが、より高級そうな雰囲気を醸し出していたのはきっと気のせいでは無いのだろう。
かがみの家のリビングよりも遥かに広い部屋からは、まだ他の部屋へと続く扉が存在した。
キョロキョロと周囲を見渡しながらも、部屋の中心のソファに勢い良く飛び込む。
高級クッションが優しくかがみの身体を受け止め、かがみは今にも眠ってしまいそうな感覚に捉われた。

『おいおい宿主サマ、まだ寝るのは早いんじゃねぇか? とりあえず持ってきたパスタを、食っちまおうぜ』
「わ、わかってるわよ!」

かがみの傍らに影のように佇むバクラの言葉に、かがみは再び現実に引き戻された。
そうだ。ここへやって来たのは、殺し合いに生き残る為の休息と、体力を付けるため。
かがみはそれを念頭に置き、持ってきた食料をテーブルの上に並べた。

それからややあって、かがみは此処へ来て初めて、上機嫌と言える程の気分で昼食を摂っていた。
フォークに絡めたパスタをその小さな口に頬張りながら、かがみはバクラへと視線を向ける。

「ねぇバクラ、あんたは食べなくて大丈夫なの?」
『オレ様は食えねぇよ。ここじゃ宿主サマと入れ替わって食おうにも制限が掛ってるみたいだしな』
「制限? じゃああんたはいつでも意識を奪える訳じゃないのね?」
『アァ、さっきの戦闘からもうすぐ2時間か、残念な事にそれでもまだ無理みたいだ』
「ふぅん……ま、私も出来るだけあんたに頼らなくても戦えるように頑張るから、そう気を落とさないでよ」
『はん、さっきまでの宿主サマからは考えられない進歩だな』

薄ら笑みを浮かべたままの表情で、バクラが軽口を叩く。
確かに先程まで命の危機に晒され、精神的にもボロボロだったかがみからは考えられない程の変化だ。
そうさせるだけの出来事が続いたのだから、無理もないと言えば無理もないが。
それよりもバクラが懸念するのは、憑依時間の制限についてだ。
万丈目に憑依した際にもしばらく憑依が不可能となっていたが、それが果たしていつまで続くのかは未だに解らない。

『チッ……ヤロウに憑依した後、正確に時間を計っておくんだった』

舌打ちを一つ、自分のこれまでの行動について軽い愚痴を叩く。
ヤロウと言うのは言うまでもなく、元・宿主サマである万丈目準の事だ。
色々あって再憑依までに必要とする時間を測れなかったのだ。
仮面ライダーへの変身制限時間がだいたい1時間~1時間半。
そう考えれば、2時間もあれば制限は解除されても可笑しくは無いと考えたのだが。
どちらにせよ、自分の手札が把握し切れていないのは、バクラにとってもいい気持はしない。
これから小まめに再憑依時間を調べるか、と一人思考する。

そこまで考えて、一つの疑問が浮かぶ。
憑依しなくても使える能力――例えば、パラサイトマインドはどうなのだろう。
形あるものに自分の魂を寄生させる千年リングの能力。
これさえ使う事が出来れば、もしも千年リングに万が一の事があったとしても、自分は生存する事が出来る。
宿主であるかがみにパラサイトマインドで寄生してしまえば、
例え千年リングとかがみが離れ離れになってしまったとしても何も心配はなくなる。
現に、最初の宿主である獏良了にはその方法で規制していた為に何度千年リングを引き離されても宿主の元へ戻る事が出来た。

『(万が一の時の為に、宿主サマで確かめてみるか……?)』

バクラの鋭い眼光が、眼下のかがみを見据える。
このままかがみに完全に寄生してしまうのも有りか、と。
しかし、バクラの思考はかがみの声によって中断される。

「ふぅ……ご馳走さま」
『早いな、もう食っちまったのかよ。じゃあ次の施設に――』
「ちょっと待った!」

バクラの言葉は最後まで告げられる事無く、かがみによって遮られた。
何事かと顔をしかめるバクラに、かがみはそのままの姿勢で続ける。

「折角だし、このままシャワーを浴びてこようと思うんだけど。
 まだ時間もあるんだし、せめて放送まではここで休んでからでもいいでしょ?」
『けっ、そうやってあんまり余裕見せるのはどうかと思うけどなぁ』
「そう固い事言わないの、デッキの猶予だってまだ暫く時間あるんだし」
『あのなぁ宿主サマよぉ、そういう余裕が後々命取りになるんだぜ?』

ホテルにやってきて間もない頃のやり取りを繰り返す。今度は立場は逆だが。
といっても、事実として休めるのならば休んでおいた方がいいというのも一理ある。
故にバクラはそれ以上否定はせずに、せめて放送までは休息を摂る事にした。
と、そんな事を考えている間にすでに千年リングはかがみの身体から外されていたのだが。




一般的な家庭に備え付けられているものよりも大きめな浴槽に、眩しい日の光が差し込む。
ジャグジーが搭載された浴槽内で、日光を浴びながら思いっきり足を延ばす少女は、紫の髪を垂らしてくつろぐ柊かがみ。
先程まで見に纏っていたナンバーズスーツを脱ぎ捨て、髪を結んでいたリボンを外したかがみは、まさに一糸纏わぬ姿となっていた。
湯に浸かる美しい肌には、これまでの戦闘で出来た擦り傷や打撲の跡が見受けられた。
浴槽から吹き出る水流は、その傷を隠そうとしているようで、今のかがみには調度良かった。

「はぁ……殺し合い、なのよね……」

かがみは大きなため息を一つ落とし、今まで起こった出来事を思い起こす。
アリサと呼ばれた少女が殺された事。エリオが死んだ事。なのはに裏切られた事。
それらはどれも、彼女にとって心の傷にしか成り得ない。思い出せば思い出す程に、目頭が熱くなる。
その後戦った金色のクワガタ男。自分が殺してしまったシグナムという女性の事。
そして、Lという危険人物に拘束され、挙句モンスターに追いかけ回された事。
ようやく出会った万丈目にはまたしても裏切られ、その後戦ったメビウスには敗北を喫した。
これまでかがみが辿った経緯を知れば、きっと誰もがこう言うだろう。
短時間でどれだけハプニングに見舞われれば気が済むんだ、と。
実際にはメビウスはかがみを救ってくれたのだが、今のかがみにとってそんな事は関係ない。
最早バクラ以外の何者も信用出来はしないのだから。

(バクラ……あいつは何で私に協力してくれるんだろう)

その答えは至って簡単な事だ。
バクラ自身もこのゲームを楽しもうとしているし、何よりも宿主に死なれては困る。それだけの理由だろう。
しかし、極度の人間不信に陥ったかがみにとっては、バクラのみが精神的な救いとなっていた。
バクラは自分にしか見えない。それ故にきっと裏切ることはない。
独りぼっちで寂しかった自分と、バクラは一緒に居てくれる。
バクラだけが、自分を救ってくれる。

(アイツだけが、私の味方……)

何を考えているのか解らないし、話していても腹が立つ事はある。
だけど、事実としてバクラが居なければ自分は今こうして疲れを癒すことなど出来なかっただろう。
ふと、思い出したのはこの会場に一緒に飛ばされた、大切な人間達。
泉こなたに、柊つかさ。彼女らは、出会ったばかりのなのはとは違い、信用に足る人物だ。
しかし、今のかがみは素直にそう考える事は出来なくなっていた。

(どうせこなたやつかさに会っても……)

顔を横に振り、その考えを振り払う。
考えれば考えるほど鬱になって行くのは目に見えているからだ。
どちらにせよ、もうかがみは誰の事も信用はしない。なのはの時のように裏切られるのは御免だ。

ならば、もしも二人に出食わした場合は――?

かがみが戦う理由は、あくまで勝ち残って元の世界に帰して貰うためだ。
元の世界に帰れば、皆元通りになっているに違いない。こなたもつかさもなのはも、いつも通りの笑顔で自分を迎えてくれる筈だ。
だが、その為にはこの会場にいるこなたやつかさ達を殺さなければならない。
自分にあの二人を殺す事が出来るだろうか。もし目の前に現れても、この手で命を奪う事は出来るだろうか。
確かにかがみは誰の事も信用しないと決めたが、あの二人が死んでしまえば元も子もない。

ここでかがみは、自分の矛盾に気づいた。
この殺し合いにおける最終的な目的は、元の世界の平和な日常への回帰。
その為の手段として、自分の周囲の平和な日常に必要不可欠な人間たちを殺す。
二人が決して信用していない相手であるのならば、殺す事など造作もない筈だ。
気が可笑しくなっていたとはいえ、シグナムを殺す時だって躊躇いは無かったし、これからもそれを繰り返すつもりだ。
だけど、そうして帰った日常に、恐らくつかさとこなたは居ないだろう。
それは本当に平和な日常と言えるのだろうか。いつも傍に居てくれた筈の人間が居なくなってしまった世界に帰る事に、意味はあるのだろうか。

(私は――)

いくら考えても答えは出ない。
それは、かがみ自身も心の奥では「自分の行いは間違っている」という後ろめたさを感じているからだろう。
だが、生き残る為には戦うしかない。敵が襲い掛かってくるならそれを撃退し、最後の一人になるまで生き残るしかないのだ。
だから、これからもかがみは戦い続けるだろう。
――最後の一人になるまで。




ホテルの一室のテーブルに置かれているのは、金の装飾品。
輪の周囲にぶら下がっているのは、無数の錐。そして最も目を引くのが、輪の内側、三角の中心に施されたウジャト眼。
三千年の昔、クルエルナ村の命を溶かして生み出されたマジックアイテム――千年リング。
大邪神ゾーク・ネクロファデスの欠片にして、盗賊王であるバクラの魂が宿ったそれは、この殺し合いについて思考していた。
かがみが居ない間、バクラが考えるのは、バクラにとって相棒であるキャロ・ル・ルシエの事。
このゲームは恐らく、パラレルワールドからランダムに集められた参加者によって行われている。
そう考えるならば、キャロもバクラが知るキャロとは別人という可能性も十分にあるのだ。
バクラが思い出すのはあの日、最強の強敵と戦った時の言葉。

――相棒が欲するならオレ様は国だろうが、世界だろうが何でも盗んでみせるぜ!
  それが今、バクラが存在する意味だからなぁ!

どう考えたって、キャロはフェイトに保護された方が幸せに決まっていた。
そうすれば、もう段ボールにくるまって眠ったり、ハンバーガーショップで夜を明かす必要も無くなる。
勿論マフィアの仕事だってしなくていい。眩しいくらいの平和の中で、堂々とした人生を送れた筈なのだ。
だが、それでもキャロはフェイトの手を振り払った。
バクラと一緒に居たい。ただそれだけの理由の為に、綺麗なフェイトの手を弾いて、汚れたバクラの手を取ったのだ。
そこまでされて、バクラも黙っていられる訳が無かった。
だからバクラは、キャロの為に存在する。未来へのロードをキャロと共に進んで行く為に。

そう誓った相手が、この殺し合いに参加しているのなら、自分は何としてもキャロを救わなければならない。
今はかがみと行動を共にしているが、この殺し合いが終わる前に必ずキャロに会って、確かめなければならない。
この殺し合いに参加しているキャロが、本当に自分の知るキャロなのかを。

もしここにいる“キャロ”が“相棒”じゃ無かったなら――

その時はその時だ。迷う必要など何処にもない。
元の世界の相棒・キャロの元へと帰る為に、この殺し合いに参加しているキャロを殺す事も躊躇わない。
全ては相棒の為だ。この殺し合いに勝ち残り、元の世界の、相棒の元へと帰る。
相棒には自分が一緒に居なければならないのだ。きっとバクラを失った相棒は今頃一人で路頭に迷っている所であろう。
何せバクラの知る相棒は定職にもついていないのだから。

だからバクラは、何としてもかがみを優勝させるつもりだ。
かがみもバクラと同じように、元の世界への回帰を願っている。ならば、二人で協力して優勝を狙うのも悪くはない。
もしもそれでも元の世界に帰れなかったとしても、その時はその時だ。
プレシアと戦ってでもキャロの元へ帰らせてもらう。

『だからよぉ……それまでは、せいぜいこの殺し合いを楽しませて貰うぜ』

誰も居ないスイートルームで、バクラは一人告げる。
それは元々争い事が好きなバクラらしい考えだった。キャロと一緒に居ては味わえないスリル。
十分に殺し合いを楽しんだ後に、何としてもキャロの元へ帰らせて貰う。
そんな事を考えていると、不意に千年リングが掴まれた。

『やっと出てきたか。随分と長かったじゃねぇか、宿主サマ』
「だってこんな高級なホテルのお風呂滅多に入れないでしょ?」

少し機嫌良さ気に告げるかがみの肌は、入浴前よりも心なしか艶がある気がした。
紫の髪の毛も美しく煌めいており、上品なシャンプーの香りを振りまいていた。
くつろぎ過ぎだろうと突っ込みたくなる衝動を堪えて、バクラはかがみの背後に立つ。

『それで宿主サマ、精神的に何か進展でもあったかい?』
「別に……あんたに言うまでもないわよ。ちょっと考え事してただけ」

かがみの心に浮かぶのは、青髪の少女と、たった一人の双子の妹。
精神に寄生しているバクラには、それが手に取るように解った。
どうやら、一人になって考える事は、バクラもかがみも似たり寄ったりらしい。

『そうかい、奇遇だなぁ宿主サマ。オレ様もだ』
「はぁ? 何よそれ」

いつも通り、ニヒルな笑みを浮かべるバクラ。
かがみにしろバクラにしろ、まずはこの会場に居る“大切な人”が本当に自分が知る者なのかから調べなければならない。
かがみならこなたとつかさ、バクラならキャロ。
かがみの場合は少し違うかも知れないが、そういった面では、二人の思いは概ね一致していた。
だが、全てを把握しているのはバクラだけだ。心を読まれている等と気付かないかがみは、軽口を叩きながらソファに横たわる。
このまま少し休むつもりなのだろう。放送まではあと少し時間があるようだし、バクラも邪魔をするつもりはない。

ここで、一つだけ懸念事項が存在する。
バクラが知る限り、かがみはこの会場の参加者が、パラレルワールドから集められている事に気付いていない。
だからなのはにも未だに裏切られたのだと勘違いしているし、心配しているこなたやつかさに関しても、同様に裏切られないかと恐れているのだ。
パラレルワールドだと知れば、かがみはどんな反応をするだろうか。
なのはの件が誤解だと解れば、宿主サマはきっと考えを改めるだろう。
そうなってしまえば折角殺し合いに乗ったかがみの意思が揺らぐ可能性がある。
しかし、同時に別の可能性も存在する。
「どうせパラレルワールドならばと、知り合いだろうが何だろうが迷いなく殺害して行く」という可能性。
そうなれば都合がいいと言えば都合がいい。
だが、見境無しになってしまったかがみがもしもキャロと出会ってしまったら、どうだろう。
もしも相棒かどうかの確認もせずにキャロを殺してしまったら。
相棒で無かったのなら何の問題も無いが、もしも殺されたのが相棒であったなら――
バクラは一人、かがみにパラレルワールドの事実を伝えるべきか悩んでいた。

「じゃあ、私は放送まで少し休むから……デュエルアカデミアはお昼からでもいいわよね?」
『アァ、そうだな。殺し合いはまだまだ続くんだ。少し休んだ方がいいぜ、宿主サマ』

悩んでいる等とは思えない程、いつも通りの冷酷な笑みを浮かべて、バクラはそう告げた。
どちらにせよ、相棒と再会するまでは、かがみが自分の宿主サマである事に変わりはない。
バクラはただ、宿主であるかがみを優勝させる為に行動する。
その先に待つ、たった一人の相棒の元へと帰る為に。


【1日目 昼(放送直前)】
【現在地 F-9 ホテル・アグスタ】
【柊かがみ@なの☆すた】
【状態】健康、肋骨数本骨折 、4時間憑依不可(バクラ)、30分変身不可(ベルデ)
【装備】ストラーダ(待機状態)@魔法少女リリカルなのはStrikerS、千年リング@キャロが千年リングを見つけたそうです、Ex-st@なのは×終わクロ、
    カードデッキ(王蛇)@仮面ライダーリリカル龍騎、サバイブ“烈火”(王蛇のデッキに収納)@仮面ライダーリリカル龍騎、ナンバーズスーツ(クアットロ)
【道具】支給品一式×2、ランダム支給品(エリオ1~3)、カードデッキ(ベルデ・ブランク体)@仮面ライダーリリカル龍騎、柊かがみの制服(ボロボロ)、スーパーの制服
【思考】
 基本:死にたくない。なにがなんでも生き残りたい。
 1.バクラ以外の何者も信じない(こなたやつかさも)。
 2.映画館に向かってからデュエルアカデミアに向かう。
 3.参加者を皆殺しにするつもりだが、こなたやつかさに出会った場合は……
 4.万丈目に対する強い憎悪。万丈目を見つけたら絶対に殺す。
 5.同じミスは犯さないためにも、12時間という猶予時間の間に、積極的に参加者を餌にして行く。
 6.メビウス(ヒビノ・ミライ)を警戒。
【備考】
※デルタギアを装着した事により、電気を放つ能力を得ました。
※一部の参加者やそれに関する知識が消されています。ただし、何かのきっかけで思い出すかもしれません。
※「自分は間違っていない」という強い自己暗示のよって怪我の痛みや身体の疲労をある程度感じていません。
※周りのせいで自分が辛い目に遭っていると思っています。
※Lは相手を縛りあげて監禁する危険な人物だと認識しています。
※第一放送を聞き逃しました。
※万丈目の知り合いについて聞いてはいますが、どれぐらい頭に入っているかは不明です。
※Lはモンスターに食われて死んだと思っています。
※王蛇のカードデッキには、未契約カードがあと一枚入っています。
※ベルデのカードデッキには、未契約のカードと封印のカードが1枚ずつ入っています。
※「封印」のカードを持っている限り、ミラーモンスターはこの所有者を襲う事は出来ません。
※変身時間の制限にある程度気付きました(1時間~1時間30分程時間を空ける必要があることまで把握)
※エリアの端と端が繋がっている事に気が付きました。
※こなたとつかさの事は信用はしないつもりですが、この手で殺す自身はありません。
※千年リングを装備した事でバクラの人格が目覚めました。以下【バクラ@キャロが千年リングを見つけたそうです】の簡易状態表。
【思考】
 基本:このデスゲームを思いっきり楽しんだ上で、相棒の世界へ帰還する。
 1.かがみをサポート及び誘導し、優勝に導く。
 2.デュエルアカデミアに行ってカードを探したい。もっとも、過度な期待はしていない。
 3.万丈目に対して……?(恨んではいない)
 4.こなたに興味。
 5.可能ならばキャロを探したいが、自分の知るキャロと同一人物かどうかは若干の疑問。
 6.メビウス(ヒビノ・ミライ)は、万丈目と同じくこのデスゲームにおいては邪魔な存在。
 7.パラサイトマインドは使用できるのか? もしも出来るのならば……
【備考】
※千年リングの制限について大まかに気付きましたが、再憑依に必要な正確な時間は分かっていません。 (少なくとも2時間以上必要である事は把握)
※キャロが自分の知るキャロと別人である可能性に気が付きました。
※千年リングは『キャロとバクラが勝ち逃げを考えているようです』以降からの参戦です
※かがみのいる世界が参加者に関係するものが大量に存在する世界だと考えています。
※かがみの悪い事を全て周りのせいにする考え方を気に入っていません。
※もしもこの会場に居るのが自分の知らないキャロなら、殺す事に躊躇いはありません。



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