第二回放送 ◆9L.gxDzakI
12時間。
早いようで遅いようで、あれから既に12時間だ。
この81マスの箱庭にて、血と狂乱の殺戮劇が幕を開けてから、実に半日が経過しようとしていた。
表向きに言及することはなかったが、かの大魔導師が規定したタイムリミットは48時間。
要するに、間もなく4分の1もの時間が経過しようとしているということだ。
早いようで遅いようで、あれから既に12時間だ。
この81マスの箱庭にて、血と狂乱の殺戮劇が幕を開けてから、実に半日が経過しようとしていた。
表向きに言及することはなかったが、かの大魔導師が規定したタイムリミットは48時間。
要するに、間もなく4分の1もの時間が経過しようとしているということだ。
12時を迎える。
デスゲーム開幕の瞬間から、実に12時間ぶりに、時計の両針が頂点を指す。
12とはすなわち正午。
午前と午後を二分する、境界の時間が目前に迫っている。
12とはすなわち6プラス6。
6時間ごとに行われる定期放送の2回目が、間もなく始まろうとしている。
デスゲーム開幕の瞬間から、実に12時間ぶりに、時計の両針が頂点を指す。
12とはすなわち正午。
午前と午後を二分する、境界の時間が目前に迫っている。
12とはすなわち6プラス6。
6時間ごとに行われる定期放送の2回目が、間もなく始まろうとしている。
12時間。
分数にして720分。
秒数にして8640秒。
これから流れる放送は、その膨大な時間の振り返りだ。
黒髪の魔女が囁く時、彼らは果たして何を思う。
後悔/恐怖/歓喜/安堵/悲哀/希望/失望/絶望。
生き残った39人は、果たして何を抱くのか。
分数にして720分。
秒数にして8640秒。
これから流れる放送は、その膨大な時間の振り返りだ。
黒髪の魔女が囁く時、彼らは果たして何を思う。
後悔/恐怖/歓喜/安堵/悲哀/希望/失望/絶望。
生き残った39人は、果たして何を抱くのか。
かくて定期放送は始まる。
個人の感情などはお構いなしに。
ただ淡々と事実のみを語るため、2度目のメッセージが鳴り響く。
個人の感情などはお構いなしに。
ただ淡々と事実のみを語るため、2度目のメッセージが鳴り響く。
◆
6時間ぶりね。
みんな、ちゃんと聞いているかしら。
現在の時刻は12時ジャスト――第2回目の定期放送の時間よ。
今回も最初に禁止エリアを発表させてもらうわ。しっかりメモを取るようにね。
今のところはそんな事態になっていないけど、うっかり禁止エリアに入って、
そのまま自滅なんて死に方されたら、こちらもあまり張り合いがないのだから。
みんな、ちゃんと聞いているかしら。
現在の時刻は12時ジャスト――第2回目の定期放送の時間よ。
今回も最初に禁止エリアを発表させてもらうわ。しっかりメモを取るようにね。
今のところはそんな事態になっていないけど、うっかり禁止エリアに入って、
そのまま自滅なんて死に方されたら、こちらもあまり張り合いがないのだから。
13時からA-4
15時からA-9
17時からE-6
15時からA-9
17時からE-6
以上の3エリアよ。
ちゃんと記憶できたかしら?
二度目は言わないわよ。聞き逃したからもう一度、なんて甘えは聞きたくないわね。
一緒にいるお仲間にでも聞くか、他の参加者を脅して問い詰めるか、もしくは諦めて泣き寝入りでもしなさい。
ちゃんと記憶できたかしら?
二度目は言わないわよ。聞き逃したからもう一度、なんて甘えは聞きたくないわね。
一緒にいるお仲間にでも聞くか、他の参加者を脅して問い詰めるか、もしくは諦めて泣き寝入りでもしなさい。
……ああ、そうだったわね。
これまでに命を落とした脱落者の名前も読み上げていくわ。
これまでに命を落とした脱落者の名前も読み上げていくわ。
アレクサンド・アンデルセン
インテグラル・ファルブルケ・ウィンゲーツ・ヘルシング
ギンガ・ナカジマ
ザフィーラ
フェイト・T・ハラオウン
ブレンヒルト・シルト
武蔵坊弁慶
八神はやて
遊城十代
以上、9名よ。
前の6時間に比べて少しは減ったけど、まだまだ順調と言っていいペースね。
貴方達のしたたかさと残忍さには、本当に感心させられるわ。
果敢に戦って死んだ者、仲間を庇って命を落とした者、些細なミスが命取りになった者、ほとんど事故のような形で死んだ者……
……ふふ……全くもって貴方達は、私を楽しませてくれるわね。
開始からこれまでの12時間は、最高に面白いショーだったわ。
今後も私を飽きさせることのないよう、パフォーマンスの向上に努めることね。
えてして観客とは無責任でわがままなもの……私がこの催しに飽きた瞬間に、全員ドカン、なんてことも有り得るのだから。
インテグラル・ファルブルケ・ウィンゲーツ・ヘルシング
ギンガ・ナカジマ
ザフィーラ
フェイト・T・ハラオウン
ブレンヒルト・シルト
武蔵坊弁慶
八神はやて
遊城十代
以上、9名よ。
前の6時間に比べて少しは減ったけど、まだまだ順調と言っていいペースね。
貴方達のしたたかさと残忍さには、本当に感心させられるわ。
果敢に戦って死んだ者、仲間を庇って命を落とした者、些細なミスが命取りになった者、ほとんど事故のような形で死んだ者……
……ふふ……全くもって貴方達は、私を楽しませてくれるわね。
開始からこれまでの12時間は、最高に面白いショーだったわ。
今後も私を飽きさせることのないよう、パフォーマンスの向上に努めることね。
えてして観客とは無責任でわがままなもの……私がこの催しに飽きた瞬間に、全員ドカン、なんてことも有り得るのだから。
……そうね。せっかくだから、ついでにもう1つ話しておくわ。
6時間前にご褒美の話をしたけれど、どうやら今のところは、あまり意味をなさなかったようね。
この期に及んでこのゲームを止めようとする者が、まだまだ大勢いるみたいだわ。
残虐非道なデスゲームに、敢然と立ち向かう正義のヒーローという構図はなかなかに面白いし、
そうした連中が転落していくのも、見応えがないと言えば嘘になるのだけど……こうも数が多いと、少し鬱陶しいわね。
貴方達がこの演劇のスパイスになっているのは確かよ。でも、いい加減食傷気味になってきたわ。
もう一度言うわよ。
私はその気にさえなれば、貴方達を一瞬で全滅させることもできる。
最初に死んだ娘のことを覚えているでしょう? 彼女の末路を、改めて思い出しておくことね。
6時間前にご褒美の話をしたけれど、どうやら今のところは、あまり意味をなさなかったようね。
この期に及んでこのゲームを止めようとする者が、まだまだ大勢いるみたいだわ。
残虐非道なデスゲームに、敢然と立ち向かう正義のヒーローという構図はなかなかに面白いし、
そうした連中が転落していくのも、見応えがないと言えば嘘になるのだけど……こうも数が多いと、少し鬱陶しいわね。
貴方達がこの演劇のスパイスになっているのは確かよ。でも、いい加減食傷気味になってきたわ。
もう一度言うわよ。
私はその気にさえなれば、貴方達を一瞬で全滅させることもできる。
最初に死んだ娘のことを覚えているでしょう? 彼女の末路を、改めて思い出しておくことね。
ああ、それとも特典がお望み?
全部終わった後の優勝賞品だけでは、いまいちやる気が湧いてこなかった?
そうね、それもそうだったわね。
確かに優勝した後のご褒美だけなら、ひたすら身を隠してやり過ごすだけでも手に入ってしまうものね。
それはそれで面白いかもしれないわ。
貴方達の好きなビデオゲームでも、敵を倒せば経験値と資金という見返りがある……そういうボーナスも悪くないわね。
分かったわ。次の放送までに、何か考えておきましょう。
何人か参加者を殺したら、他の誰かの居場所を教える、だとか、支給品がもう1つもらえる、だとか……
改めて考えてみると、色々とアイデアは尽きないものね。この6時間で吟味してみることにするわ。
貴方達からも何か要望があったら、その間に言っておきなさい。
確実に採用されるわけではないけど、一応参考にはさせてもらうから。
全部終わった後の優勝賞品だけでは、いまいちやる気が湧いてこなかった?
そうね、それもそうだったわね。
確かに優勝した後のご褒美だけなら、ひたすら身を隠してやり過ごすだけでも手に入ってしまうものね。
それはそれで面白いかもしれないわ。
貴方達の好きなビデオゲームでも、敵を倒せば経験値と資金という見返りがある……そういうボーナスも悪くないわね。
分かったわ。次の放送までに、何か考えておきましょう。
何人か参加者を殺したら、他の誰かの居場所を教える、だとか、支給品がもう1つもらえる、だとか……
改めて考えてみると、色々とアイデアは尽きないものね。この6時間で吟味してみることにするわ。
貴方達からも何か要望があったら、その間に言っておきなさい。
確実に採用されるわけではないけど、一応参考にはさせてもらうから。
それから、最後にもう1つ。
まさかとは思うけれど……私が心変わりしてこのゲームを中止する、なんて可能性を考えてる人はいないわよね?
そういう温情は期待しない方がいいわ。
さっき読み上げた死者の中に、フェイト・T(テスタロッサ)・ハラオウンという娘がいたでしょう?
私のフルネームはプレシア・テスタロッサ……
……ふふ、そういうことよ。
実の娘が殺されても、黙って見てるような冷酷な人間に、最初から情なんて期待しないことね。
貴方達が殺し合って、最後の1人になること以外に、このゲームに終わりなんてないのだから――。
まさかとは思うけれど……私が心変わりしてこのゲームを中止する、なんて可能性を考えてる人はいないわよね?
そういう温情は期待しない方がいいわ。
さっき読み上げた死者の中に、フェイト・T(テスタロッサ)・ハラオウンという娘がいたでしょう?
私のフルネームはプレシア・テスタロッサ……
……ふふ、そういうことよ。
実の娘が殺されても、黙って見てるような冷酷な人間に、最初から情なんて期待しないことね。
貴方達が殺し合って、最後の1人になること以外に、このゲームに終わりなんてないのだから――。
◆
「……よく言いますね。フェイトのことなど、娘とも見なしていなかった貴方が」
魔女プレシア・テスタロッサの背に、投げかけられた声が1つ。
茶髪の頭に猫耳を生やした娘は、かの大魔導師の使い魔・リニスだ。
「いいじゃないの。使える物はいくらでも使うべきだわ。このゲームをより円滑に進めるためにはね」
くるり、と。
言いながら、プレシアが振り返る。
腰掛けていた椅子を180度反転させ、リニスの方へと向き直った。
その顔は暗い。
嘲笑気味の放送の割に、実際の表情は深刻なものだ。
「どうにも上手くいかないものね」
「ええ……数字だけは決して悪いものではないのですが、
うち3人は同じ戦闘で死亡したわけですから、実質死者が出たケースは7つになります」
「一応譲歩はしてみたけれど、すぐにでも適当な特典をつけるべきだったかしら」
そう。
現状は、決して上手くことが進んでいるわけではなかった。
余裕ぶって見せた態度も、ハッタリの要素がなかったといえば嘘になる。
第1回放送までの6時間で、死者の発生したケースは合計12。
一度の戦闘で複数死者が出たのは、アグモンとクロノ・ハラオウンの1回のみ。
カレン・シュタットフェルトと高町なのはは、ギリギリ別々のタイミングと考えていいだろう。
対して、今回は僅か7回。約半分の数字である。
ギンガ・ナカジマをはじめとした3人が同時に死亡したことで、現在の数字は稼げたわけだが、
言ってしまえばそれも運がよかっただけだ。
2人同時に死亡はともかくとして、3人以上ともなると、そう易々と期待できるものでもない。
そもそも彼女らが死ぬ直前までは、一瞬「もう駄目か」とも思ったほどである。
今はいい。結果として、今は9人もの死者を確保できた。
だがこのままのペースで減り続ければどうか。
万が一、半分また半分と、死者の発生するケースが半減し続けていったならば。
単なる不安材料かもしれない。杞憂に終わる可能性の方が高いかもしれない。
だが現実化でもしようものなら、よくて20人弱が余ったところで、停滞を招いてもおかしくない。
「万が一の時には、あの者達を会場に送り込むという手もありますが……」
「あくまでも最終手段ね。それに、今回のゲームの“目的”を考えれば、できうる限り取りたくない手でもあるわ」
ふぅ、と溜め息をつきながら、プレシアがリニスの言葉に答える。
「まぁ、今はこうして手を打ったことが、どう作用するかを見守るほかないのだけど」
「先ほどのボーナスの話ですか」
「そうね」
頼みの綱は、今のところそれだ。
何らかの形でこちらの実力を見せ付ける、という手もあったが、それを取るにはもう少し熟慮を重ねる必要がある。
下手なことをしてしまっては、ゲームバランスが狂うかもしれない。
飴と鞭という形で、次の放送の時に、ボーナスと一緒に突きつけておいた方が無難だろう。
「問題は、何を特典につけるか、ということだけど……」
故に、今はより制約の少ない、特典の方を先に考える。
果たして彼ら参加者が求めているものは何か。
一体どんな餌をばら撒けば、奴らは食いついてくるだろうか。
プレシア・テスタロッサは思考する。
このデスゲームをより円滑に進めるために。
その先にある“悲願”を成し遂げるために。
「……貴方ならどうする?」
魔女プレシア・テスタロッサの背に、投げかけられた声が1つ。
茶髪の頭に猫耳を生やした娘は、かの大魔導師の使い魔・リニスだ。
「いいじゃないの。使える物はいくらでも使うべきだわ。このゲームをより円滑に進めるためにはね」
くるり、と。
言いながら、プレシアが振り返る。
腰掛けていた椅子を180度反転させ、リニスの方へと向き直った。
その顔は暗い。
嘲笑気味の放送の割に、実際の表情は深刻なものだ。
「どうにも上手くいかないものね」
「ええ……数字だけは決して悪いものではないのですが、
うち3人は同じ戦闘で死亡したわけですから、実質死者が出たケースは7つになります」
「一応譲歩はしてみたけれど、すぐにでも適当な特典をつけるべきだったかしら」
そう。
現状は、決して上手くことが進んでいるわけではなかった。
余裕ぶって見せた態度も、ハッタリの要素がなかったといえば嘘になる。
第1回放送までの6時間で、死者の発生したケースは合計12。
一度の戦闘で複数死者が出たのは、アグモンとクロノ・ハラオウンの1回のみ。
カレン・シュタットフェルトと高町なのはは、ギリギリ別々のタイミングと考えていいだろう。
対して、今回は僅か7回。約半分の数字である。
ギンガ・ナカジマをはじめとした3人が同時に死亡したことで、現在の数字は稼げたわけだが、
言ってしまえばそれも運がよかっただけだ。
2人同時に死亡はともかくとして、3人以上ともなると、そう易々と期待できるものでもない。
そもそも彼女らが死ぬ直前までは、一瞬「もう駄目か」とも思ったほどである。
今はいい。結果として、今は9人もの死者を確保できた。
だがこのままのペースで減り続ければどうか。
万が一、半分また半分と、死者の発生するケースが半減し続けていったならば。
単なる不安材料かもしれない。杞憂に終わる可能性の方が高いかもしれない。
だが現実化でもしようものなら、よくて20人弱が余ったところで、停滞を招いてもおかしくない。
「万が一の時には、あの者達を会場に送り込むという手もありますが……」
「あくまでも最終手段ね。それに、今回のゲームの“目的”を考えれば、できうる限り取りたくない手でもあるわ」
ふぅ、と溜め息をつきながら、プレシアがリニスの言葉に答える。
「まぁ、今はこうして手を打ったことが、どう作用するかを見守るほかないのだけど」
「先ほどのボーナスの話ですか」
「そうね」
頼みの綱は、今のところそれだ。
何らかの形でこちらの実力を見せ付ける、という手もあったが、それを取るにはもう少し熟慮を重ねる必要がある。
下手なことをしてしまっては、ゲームバランスが狂うかもしれない。
飴と鞭という形で、次の放送の時に、ボーナスと一緒に突きつけておいた方が無難だろう。
「問題は、何を特典につけるか、ということだけど……」
故に、今はより制約の少ない、特典の方を先に考える。
果たして彼ら参加者が求めているものは何か。
一体どんな餌をばら撒けば、奴らは食いついてくるだろうか。
プレシア・テスタロッサは思考する。
このデスゲームをより円滑に進めるために。
その先にある“悲願”を成し遂げるために。
「……貴方ならどうする?」
◆
第2回目の放送は終わった。
デスゲームに臨む参加者達は、果たして何を思うのか。
デスゲームを進める主催者達が、次に打つ手は果たして何か。
運命は加速する。
時の流れは加速する。
個々の思いを流れに乗せて。
思いを集めて群れと成して。
デスゲームに臨む参加者達は、果たして何を思うのか。
デスゲームを進める主催者達が、次に打つ手は果たして何か。
運命は加速する。
時の流れは加速する。
個々の思いを流れに乗せて。
思いを集めて群れと成して。
次に動くのは、誰だ。
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