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[5RIDERS]◆7pf62HiyTE




 F-6―――そこにはレストランがあった。しかし、今はもうその面影を残すだけである。
 参加者の1人が他の参加者を誘き寄せる為にレストランを燃やしたのだ―――彼等と戦う為に。
 その参加者は彼の世界において『仮面ライダー』として戦っていた。
 その世界の『仮面ライダー』は各々の願いを叶える為に他の『仮面ライダー』12人との戦いを強いられていた―――もっとも、彼にとっては願いなど割とどうでも良く戦う事が出来れば良かったわけだが。
 彼の起こした炎と煙は思惑通り多くの参加者の眼に留まり、彼等の行動に大きな影響を与え、煙も収まろうとする中―――3人の『仮面ライダー』の力を持つ参加者がそこに集おうとしていた―――





 浅倉威はその瞬間を待っていた―――
 彼こそがレストランに炎を放った張本人―――彼に言わせれば祭の主催者(勿論この殺し合いの主催ではない)と言えよう。
 前述の通り、彼はその世界の仮面ライダーとしてはある種異質で叶えるべき願い事を持たず純粋に戦いそのものを求めていた(ある意味戦い自体が彼の願いと言えよう)。
 元来の彼はイライラしたという理由だけで無差別に暴行を加え数多くの殺人を犯していた。その彼にとって仮面ライダー同士の戦いは大きな悦びを与えた。
 だが、この場に来てからは仮面ライダーに変身する為のカードデッキは奪われ、マトモに使える武器があってもすぐさま失ってしまい、他の参加者を誘き寄せる囮でしかない女子供に付きまとわれと彼にとってはまさしくイライラすべき状況であった。
 しかし意外にも今の彼の心に苛立ちは無く、むしろ高ぶりを感じていた。
 確かな予感があったのだ、もうじき自分を満たす戦いが起こると―――
 既にこの場には自分以外に戦いを求める参加者が来ている。この後にも煙に引かれてやって来た参加者が来るだろう―――
 そいつが自分達を殺しに来た参加者であろうとも、殺し合いを止める為に自分達を止めようとする参加者であろうとも構わない、せいぜい自分を楽しませて欲しいと思っている。

 さて、先に書いた通り彼の手元には仮面ライダーに変身する為のカードデッキはなく、武器自体も無い事も無いが彼ににとっては正直不満な装備ではある。
 厳密に言えば(彼の世界の物とは違うが)仮面ライダーに変身する為のベルトはあるにはあるが、現状使える気配はない為無いのと同じと言っていいだろう。
 彼の目から見ても力を持った参加者―――例えば神と名乗り雷を操る様な奴を相手にするには心許なさ過ぎるだろう。言ってしまえば仮面ライダー及びそれに準ずる力を持った参加者と戦いになるとは正直思えない。
 が、彼にとってはそんな事など大した問題ではないだろう。確かにあまりにも分が悪い時は逃げる場合もある。しかし、この程度の不利などむしろ戦いを楽しむ為の要素の1つだと思っているだろう。
 仮にの話だが、彼が仮面ライダーの力を使う為に3体のモンスターと契約していて彼等に餌を与えなければならない状況にあったとする。そして、そこに都合良く餌に出来る3体のモンスターを見付けたとしよう。
 彼ならばその3体のモンスターを自身の持つ3体のモンスターの餌にしようと戦いに挑むだろう、例え自身のモンスターが自分を餌にしようと襲いかかったとしても、その辺の人間達を餌にした方が確実であったとしてもだ。
 彼にとって重要なのは戦いを楽しめるかどうかだと言える、故にこの場においても戦えない女子供等を襲ったりしなかったのである(囮扱いにはしたが)。

「……ん?」
 ふと浅倉が東の方を見ると遠くに浴衣を着た少女が北に向かって歩いているのが見えた。彼女は浅倉と共に行動していたシャーリー・フェネットである。
 さて、浅倉が『普通の参加者』であれば今の彼女の状態に違和感を覚えるであろう。
 浅倉はシャーリーの他に幼子であるヴィヴィオとも行動を共にしていた。その後、浅倉は2人の所から去っていったわけだが普通に考えれば2人はずっと一緒にいるはずである。つまり、彼女が単独で移動しているのが不自然という事である。
 が、浅倉は『普通の参加者』ではない。ヴィヴィオと一緒で無かった事など全く気にしていない―――いや、もしかしたらヴィヴィオがいない事にすら気付いていないかも知れない。
 真面目な話、戦えない普通の少女であるシャーリーなど浅倉にとってはどうでも良かった。むしろ浅倉は彼女自身ではなく別の物に興味を引かれた。
「……あんなに物あったか?」
 それは、遠目から見ても彼女が多くのデイパックを持っていた事である。正確な数はわからないが確実に4つ以上はあった。
 しかし、2人のものを合わせても2つにしかならない。一体彼女は何処から他のデイパックを手に入れたのであろうか?
 真っ先に考えられるのは彼女自身が他の参加者から奪った可能性だがその可能性は低いだろう。彼女が戦いを望んでいる様子は無かったし、それ以前に使える武器は2人の所を去る時に浅倉が持っていったはずだからだ。
 しかし、浅倉にとってはどうやって手に入れたかなどどうでもよかった。重要なのはこれから彼女を追ってデイパックを確保するべきかどうかである。武器が手に入るならば手に入れておきたい所ではあるが―――
「別にいいか……」
 浅倉は敢えて彼女を放置する事にした。
 ここで彼女を追い掛けている間に戦いが始まり、自分が戻った時には既に戦いが終わっているという可能性があったのだ。折角の祭に主催者がいないというのはあまりにもお粗末な話であろう。
 何より、今まで戦いに恵まれていない中、折角の戦いの機会を逃すなど浅倉には耐えられなかったのだ。
「待てよ……」
 浅倉はある事に気が付いた。シャーリーは何処に向かっているのだろうか? 確かあの方向には温泉があったはずだ。
 温泉にはある参加者が向かっていたはずである。それは最強の仮面ライダーらしい天道総司と彼を保護していたらしいキングの2名だ。2人と遭遇した時には断られたものの後で戦いたいとは考えていた。
「頃合いだな」
 既に出会ってから6時間以上、傷の手当ても済んで十分に戦える状態の筈だ。奴の所に向かって戦うという選択肢も良いと考えていた。仮に天道が戦えなくてもその時はキングと戦えば良いだろう。
「だが……」
 が、正直な所市街地の中にはまだまだ戦える参加者が数多くいる筈だ、わざわざそれに背を向けたくはないとも考えていた。
「今は良いか……」
 とはいえ今重要なのは目先に迫った戦いである。先の事など戦いが終わってから改めて考えれば良い話だ。

 気を取り直し、浅倉は周囲を見回す。こうしている間にも煙に引かれた参加者がやって来るかも知れないのだ。そして、ほんの一瞬だが人影らしきものが見えた。
「どうやら来た様だな」
 一瞬だった為、どういう人物かまではわからない。だが、そいつが何かの殺意を放っていたのを感じた。間違いなく自分と戦ってくれる奴だ。
 近くの建物に引き籠もった『奴』も時期に出てくるだろう。間もなく自分が待ちに望んだ祭が始まるのだ、高ぶりを抑えずにはいられない。そして浅倉は呟く―――

「イライラさせるなよ」






『なぁ、今アイツ宿主サマを見ていなかったか?』
「まさか、ちゃんと隠れていたわよ。大体、見られていたなら私達を追い掛けて来るはずでしょ」
『だと良いけどな』
 建物の影から柊かがみと彼女の持つ千年リングに宿るバクラが浅倉の様子を確認していた。
「それにしても……アイツが火を放ったみたいだけど……正気とは思えないわね……」
『そんだけ自信があるって事だろ、そんな事より早く探したらどうだ?』
「はいはい」
 かがみはブローニングM2重機関銃を配置できる場所を探す、この場に置いて最強クラスの火力を持つこの武器だが問題が1つあった。
 それはその重量(38.0kg)と大きさ(1560mm)故、手でもって使う事は不可能だという事である。
 厳密に言えば手に持って扱える参加者がいないではないが、一般人それも女子高校生が扱う事などまずありえない。自分の体重と同じぐらい(あくまでもかがみの実感)の物を扱えるわけがない。
 それ以前にこの機関銃は本来狙撃用の武器である。故にこの武器を配置すべきポイントを探しているのである。
 その最中、リングが妙にざわつくのを感じていた。
「ちょっとバクラ、何やってんのよ?」
『俺様じゃねぇよ……ん……』
 と、千年リングの中に映るモンスターベノスネーカーとメタルゲラスが蠢いていた。
「どういうこと? 餌だったらさっき食べさせたはずでしょ?」
 彼女の手には浅倉の世界に存在するカードデッキがあった。
 この場においては参加者ならば誰でもそれを使って仮面ライダーに変身する事が出来るが、カードデッキと契約しているモンスターに『生きた参加者』を食べさせなければ自分自身が襲われるという制限が説明書に明記されていた。
 しかし、かがみはつい1時間半前に参加者を食べさせている。少なくとも今餌が必要という事は無いはずである。
『もしやアイツがコイツらの相棒とか言うんじゃねぇんだろうな』
「そんな都合の良い話があるわけないでしょ……それよりどうしようかしら……」
 かがみとしては参加者を殺さないで無力化してからモンスターの餌にしたかった。説明書では『生きた参加者』と指定されていた為死んだ参加者では餌として認められない可能性があったからだ。
 機関銃の威力は絶大、しかし一撃で即死にしてしまう恐れすらある。
『その辺は宿主サマの判断に任せるぜ、運良く瀕死で済むかもしれねぇからな。それよりも問題はコイツが通じなかった場合の話だな』
 いかに強力な武器であっても当たらなければ無意味、幾ら300発付属しているとは言えその発射速度は毎分650発、連続で発射した場合30秒弱で撃ち尽くしてしまう。貴重な武器である事に変わりはない。
 通じなかった場合、発射場所を悟られ逆にこちらが危機に追い込まれてしまう。そうなれば残る手持ち武器で戦うしかない。
 だが、機関銃が通用しなかった相手に残る手持ち武器である拳銃やライディングボード(移動手段ではあるが砲撃装置でもある)等が何処まで通じるかはわからない。
「でもこれは使えないでしょ」
 かがみの手元にはストラーダ、そしてレヴァンティンといったデバイスがある。しかし魔力を扱う術のないかがみにとっては無用の長物でしかない。
『(……本当にそうか? いや、コイツらにはまだ何かあるはずだ……何か見落としているはずだ……? 何を見落としている……?)』
 バクラはデバイスを使う方法があるのではと考えていた。
 実は魔力のない者がデバイスを使う方法はある。それはデバイスの中に内蔵されているカートリッジの魔力を利用する事だ。これを行う事で限定的ではあるが魔法を使う事が出来る。
 勿論、使えた所で素人のかがみの力になるとは言い切れない。しかし、魔力の扱えるキャロ・ル・ルシエと行動を共にしていたバクラならばある程度サポート出来るし、最低限バリアジャケットの力を発揮する事が出来る。
 だが、2人はカートリッジシステムの存在には気付いていない。そもそもストラーダとレヴァンティンにカートリッジシステムがある事に気付いていない。
 それもそのはずレヴァンティンはこの場で初めて見たものだし、ストラーダの方は万丈目準の記憶で見ていたがカートリッジをロードする所は見ていなかったからだ。
 いや、それ以前にかがみはカートリッジシステムの存在を知らないし、バクラにしてもフェイトと戦った時にバルディッシュのカートリッジをロードしたのを見た程度の記憶しかなかったのだ。
「となると後は……」
 取り出したのは2つのカードデッキ、片方はかがみ自身に支給され一度は手放したものの再び戻ってきた王蛇のデッキ、もう片方は万丈目に押しつけられる形で入手したベルデのデッキだ。
 しかしこれらにも問題がある。それはこの場では変身解除後、ある程度時間をおかなければ変身出来ないからだ。王蛇の方は先程スバル・ナカジマと戦う際に使用しており、当面は使えそうにない。
 一方、ベルデのデッキの方は契約モンスターを失っておりせいぜいちょっと強い鎧程度の能力しかない。
「まだ変身出来ないのかしら……?」
『出来たとしてもまだ早いだろうがな……わかってると思うが変身すれば猶予時間は一気に減るぜ?』
 変身及びモンスターの力を行使した場合、猶予時間は1分につき10分消費する。残り猶予時間を有効に利用する為には変身時間は出来うる限り抑えておきたい所ではある。
「どれぐらい残っているかしら?」
『さぁな、まだ7,8時間ぐらいって所か?』
「……わかってないの?」
『宿主サマが時計見てねぇから正確な時間なんてわかるわけねぇだろ、俺様だって一々気にしていられねぇし』
 スバルとの戦いに要した時間、つまり変身時間を2人は正確に把握していない。変身した瞬間と変身を解いた時間を確認しておけば割り出せるがかがみは変身する時も解除した時も一切時計を見ていなかった。
 手痛いミスに思えるが戦いの前に一々時計を見ていられるわけもないし、変身を解いた時もすぐにでもスバルを喰わせられると思っていた為やはり時計は見ていなかった。
 真面目な話をすればチンクを喰わせてから変身及びモンスターを使役した時間は15~30分といった所だろう。つまり猶予時間としては2時間半~5時間消費した事になる。
 また、その後からここまでの時間を消費した事も忘れてはならない。
「まあいいわ、ここで餌にすれば何の問題も無いわ」
『上手くいけばいいがな……』
 その最中、
『(そういや、ここに来る途中誰とも会わなかったな……見たところここにも他に誰かが来た様子もねぇし……)』
 かがみ達はスバルとの戦いの後、ここに辿り着くまでに他の参加者を見てはいない。
 アカデミアを訪れた時にはそこにはスバルとチンク以外に少なくても2人の参加者がいたとバクラは見ている。1人はかがみの友人である泉こなた、スバルの話ではかがみの事は彼女から聞いたという話だったのでスバルが保護したと見て間違いない。
 さて、詳しい事は不明だがこなたはスバルと別行動を取っている様だった。バクラから見て、お人好しのスバルがこなたをたった1人で行動させるとは思えなかった。つまり、こなたの傍で彼女を守っている参加者がいるとバクラは見ているのだ。
 ではその2人はどうしたのであろうか? 戦いの起こったアカデミアに残るとは思えない。何処かへと避難したと考えて良いはずだ。
 さて、仮に彼女達がここの煙を確認したらどうするだろうか? 仲間に会えると考えて移動する、もしくは殺し合いに乗った参加者が集まると考えてそこを避けるかのどちらかだろう。
『(もしくは何処かに隠れたか……まぁいいさ、生きているならいずれ会える……ひょっこりここに現れるかも知れねぇしな……)』

 その一方、バクラは狙撃ポイントを探しているかがみを見ながら考えていた。
『(宿主サマがやる気になってくれたのは良いが……わかっているのか……宿主サマが思っている程俺様達は有利じゃねぇって事に……)』
 かがみは煙に引かれた参加者達などバクラや機関銃の力を借りれば簡単に仕留められると考えている様だった。真面目な話メビウスでも倒せると考えている。それはバクラへの信頼や強力な武器によるものと言えよう。
 勿論、バクラ自身もそれには同意している。しかし、
『(その圧倒的な状況で宿主サマはスバルを逃がしているんだがな)』
 バクラはかがみの実力について不安を感じていた。
 スバルとの戦いを思い出して欲しい。あの時、スバルは殆ど丸腰でかがみは持っている武器が殆ど使える状態であった。
 ちなみにその時点では拳銃と機関銃、及び武器としてのライディングボードは使わなかったが、機関銃はあの場で使える代物ではなかったし、ライディングボードはむしろ移動手段であった為、拳銃程度の違いしか無い為それ程問題ではない。
 普通に考えればスバルが負ける可能性が高い状況だったのだ。
 だが、結果はどうだろう? スバルを取り逃がしてしまい、かがみの方は無駄に戦力を浪費してしまった状態だ。それだけではなく、千年リングとバクラ自身の存在までバレてしまっている。
 それ以前にスバルは本気で戦ってはいないのが見てわかった。スバルはかがみの説得を優先していたわけなので当然の話ではある。勿論、これ自体はスバルの甘さで片付けて良いだろう。だが、重要なのは『スバルが本気を出していなかった』事だ。
『(奴が本気を出していたら……俺様達の方が負けていたかも知れねぇんだぜ)』
 バクラの推測は正しい。スバルがかがみもバクラも殺すつもりで向かってきたならば違う結果もあり得る。
 確かにスバルは丸腰だったが、バクラもかがみも知らない切り札があった。それはスバルの戦闘機人としてのIS振動破砕、それを発動したとすれば、かがみもバクラの宿る千年リングも只では済まない可能性が高かった。
 勿論、バクラはスバルが戦闘機人である事もそんな切り札を隠していた事も知らない。しかし、何度と無く自身が有利な状況から逆転された経験を持つバクラがその可能性を忘れるはずもない。
『(つまり、奴の甘さが俺様達を生かしたって事もあるって事だ……これから戦う奴がそんな甘い奴だとは考えるなよ……)』
 かがみはこれまでの経緯から他人を信用していない状態ではある。しかし、心の何処かで相手を甘く見てはいないだろうか? その甘い考えが自身を危機に追い込む可能性はある。
 特に、殺し合いに乗った参加者との戦いがかがみの思い通りにいくとは思えない。
『(……場合によっては考えた方が良いかも知れねぇな)』
 バクラの頭の中に、かがみを斬り捨て新しい宿主を探すという考えが生まれていた。真面目な話、かがみの精神状態はバクラの目的にとって都合が良いものであった。
 しかし、バクラ自身かがみの考え方には気に入らない部分はあったし、スバルとの戦いでの事から正直実力的にも不安がある。自由に乗っ取りが出来るならまだいいがそうではない為正直もどかしい所だ。
 真面目な話、バクラはかがみと心中するつもりは全く無い。状況次第だが新たな宿主を見付け、かがみをモンスターの餌にする事も視野に入れている。
『(けどそんな都合良い奴がいるとは限らねぇしなぁ)』
 とはいえ、簡単に宿主に出来る奴がいるとは思えない。かがみを見付ける事が出来たのは幸運が重なったからだ、それが今後も続くとは限らない。
『(この戦いでは俺様はまだ出られそうにねぇ……宿主サマ……アンタの実力をここで見極めさせて貰うぜ……)』
 バクラの思惑に気付く事無く、かがみは機関銃の狙撃ポイントを探していた。

 バクラさえいれば大丈夫だというすぐにでも砕けそうな硝子の絆を信じて―――





 レストランの近くの建物にて相川始は1人静かに10枚のラウズカードを眺めていた―――
 彼は浅倉とは違う世界においての『仮面ライダー』と言われる存在―――いや、それは恐らく正しくは無いし本人もそれを認めたりはしないだろう。
 その世界の『仮面ライダー』は人々を守る為に鎧を纏い、アンデッドを封印したり、怪物達を倒していく戦士達の事だ。
 始は自身の正体であるジョーカーの力で偽りの戦士カリスの姿を取っているに過ぎない。それ以前に人間相川始の姿ですら偽りのものでしかない。
 前述の通り彼の正体は最強にして最悪のアンデッドジョーカーだ。そんな自分が人間の姿をして人間の中で暮らしている事など滑稽極まりない話である。
 ジョーカーを知る者は彼を警戒し最悪の存在だと他の参加者に伝えている。実際、始は優勝を目指し何人かの参加者を襲撃していた。
 だが、彼の真意は少し違う―――それは栗原遥香と栗原天音の元に帰る為である。
 始自身は気が付いているかどうかは不明だがそれはジョーカーとしての思考と言うよりは人間相川始の思考に近いと言える。

 もっとも―――彼の真意はどうあれ、彼自身はこれまで優勝を目指して戦ってきた事に変わりはないし、色々思う事はあるものの現状これからも戦いを続ける事には変わりはない―――少なくとも彼はそう思っている。

 彼はカードを見つめながら感じていた。自分の中にある忌まわしき衝動が確かに強まっているのを―――
 ジョーカー―――自分自身の本能が戦えと叫んでいるのを感じていた。しかし始はそれを抑え込む。
 ジョーカーの力を使えば今よりもずっと簡単に優勝に近付くのはわかっている。抑え込むメリットなど殆ど無いと考えて良いはずだ。それでも始は自分の本能を拒絶する。
 何故彼は自分の本能を忌まわしいと考えていたのだろうか? それは何時からだったのだろうか? きっとそれはハートの2のアンデッド、ヒューマンアンデッドを封印した時からなのだろう。
 考えてみればそれからはあまりジョーカーの姿に戻ってはいない。まさか奴の影響を受けたとでも言うのだろうか?
 思い返せば奴と遭遇した時、大した抵抗もされずあっさりと封印する事が出来た。かつてのバトルファイトの勝者にしてはあまりにも呆気ない幕切れだと言えよう。
「馬鹿馬鹿しい……」
 例えこの心境が奴の影響であったとしてもそれが偽りの心だというのは自分自身がわかっている。所詮自分はヒューマンアンデッドではなくジョーカーでしかない、人間ではなく何者にもなれない怪物なのだ。
 真面目な話ヒューマンアンデッドを封印した後も始にとって人間などどうでも良い存在だった。では、今の始の目的となっている栗原母子についてはどうなのだろうか?
 正直な所始自身もよくわかっていない。そもそも彼女達の所に行く事となったのは自分達アンデッドの戦いに巻き込まれて死んだ栗原晋の行動によるものだ。
 彼は死の間際、始に家族の写真を渡しそこに写る遥香と天音の事を託したのだが、始には彼が何故その様な事をしたのか理解出来なかった―――その後、始は栗原母子の所に現れ、ハカランダに住む事になったのである。
 最初は興味を持ったからだったんだろう。だが、いつしか彼女達は始にとってかけがえのない存在となっていった。
 他の人間がどうなろうと知った事ではなかったが天音が怪物に襲われた時にはカリスとなって助けに行った事もある。また、そんな彼女達には自分の正体を知られたくは無かった。
 彼女達が自分の正体を知ったとしたらどうするであろうか―――自分を拒絶するだろうというのは想像に難くなく、始にはそれが耐えられなかった。
「俺は人間じゃないのにな」
 何故そう考えるのに至ったのかはわからない。それがヒューマンアンデッドの影響であれ栗原一家の影響であれ偽りの心だというのはわかっている。
 その一方で、その偽りの心を否定したくはない自分もいる。それがジョーカーとしての本能を拒絶しているのかも知れない。

 そんな始の脳裏には最期まで自分を更正しようとした馬鹿な少女の姿が浮かんだ。
「ギンガ……」
 ギンガ・ナカジマは殺そうと襲いかかってきた自分を助け、説得しようとし、自分の危機の時には戦いに乱入してその結果命を落とした。
 勿論、最初に助けた時には自分の正体を知らず、単純に傷ついた者を助けたかったからなのだろう。
 しかし、彼女は自分が怪物だと知っても、襲いかかってきた襲撃者だと知っても、これから先も人を襲うと宣言しても自分を説得しようとし助けようとし命を落としたのだ。本当に馬鹿だとしか言いようがない。
 仮に自分がジョーカーの姿で本能のままに殺戮を繰り返していてもきっと自分を助ける為に自分を止めようとする、そんな気がした。
「スバルか……」
 彼女が最期に気にしていたのは5人、その中でも特にスバルの事が気になった。
 勿論、天音の友人と同じ名前のフェイト達や自分が別れる切欠となったキャロが気にならないわけじゃない。だが、ギンガの弟か妹らしいスバルがどういう人物なのかがどうしても気になったのだ。
 考えてみれば晋が栗原母子の事を自分に託した時と状況が似ている気がする。会ってどうするかはわからないし会えるかどうかもわからないが、出来うるならば会いたいと考えていた。

「……行くか」
 十分に時間は過ぎた。浅倉が起こした火に引かれ自分同様参加者が集まる頃だろう。
 これから先の事などわからない、本当に優勝を目指すかどうかもわからない、このままジョーカーの本能に飲まれるかもわからない。だが、このまま燻っていても答えなど出ないだろう。

 偽りの英雄は静かに戦場へと向かう―――





 F-6に浅倉威、相川始、柊かがみの3人の参加者が集結した。いや、厳密にいえばかがみの傍にはリングに宿るバクラがいたし、始の中にはジョーカーの本能が蠢いていた。
 つまりこの場には計5人の意思が集結したという事になる(ジョーカーの本能をカウントして良いのかは微妙だが)。
 そして、更に2つの虫を模した小さな機械もこの戦場近くに潜んでいた。カブトムシを模したカブトゼクター、バッタを模したホッパーゼクターである。
 これらは始の世界においてラウズカードを使う仮面ライダーとはまた別系統の仮面ライダーに変身する為に必要な存在であり、浅倉と始が所持するそれぞれのベルトに対応している。
 だが、変身する為にはもう1つ必要なものがあった。それは変身する為に必要な資格を有しているかどうかである。
 各々のゼクターは彼等が資格を有するかどうかを見極めようとしているのであろう。仮に資格を有するのであれば彼等は遠慮無く力を貸すはずだ。

 ―――王蛇、ベルデ、カリス、カブト、ホッパー―――奇しくもこの地に5つの『仮面ライダー』が集結した。彼等の戦いの行方がどうなるのかはまだわからない。1つ確かなのは―――





 この戦いに『正義』は無いという事だ―――





【1日目 午後】
【現在地 F-6 レストラン跡前】
【浅倉威@仮面ライダーリリカル龍騎】
【状態】右手に火傷
【装備】ライダーベルト(カブト)@魔法少女リリカルなのは マスカレード、マシンガンブレード@仮面ライダーカブト
【道具】支給品一式、ヴィンデルシャフト@魔法少女リリカルなのはStrikerS、肉×10kg、魚×10kg、包丁×3、
    フライパン×2、食事用ナイフ×12、フォーク×12
【思考】
 基本:戦いを楽しむ。戦える奴は全員獲物。
 1.レストランの火災につられた参加者と戦う。
 2.今はまだ始とは戦わない。本気になった始に期待。
 3.レストランの戦いの後は天道達のいる温泉に向かうか? それとも市街地で他の参加者を捜すか?
 4.王蛇のカードデッキ、及びカブトのベルトに填める物(カブトゼクター)を探す。
 5.回復した天道と戦う時にはベルトを返した上で戦う。
 6.なのは(StS)と遭遇した時にはヴィヴィオの名前を出してでも戦ってもらう。
 7.キング、鎌を持った奴(キャロ)、なのは、フェイト、はやて、ヴィータ、シャマル、ザフィーラ、ユーノと戦う。
 8.首輪にイライラ、外したい。
 9.プレシアには「規定の人数を殺害した参加者には、望む人間の居場所を教える」という特典を採用してほしい。
【備考】
 ※プレシアは殺し合いを監視しており、参加者の動向を暗に放送で伝えていると考えています。
 ※ヴィンデルシャフトのカートリッジシステムに気付きました。
 ※カブトに変身できる資格があるかどうかは分かりません。
 ※なのは、フェイト、はやては自分の知る9歳の彼女達(A's)とヴィヴィオの言っていた大人の彼女達(StS)の2人がいると考えています。

【現在地 F-6 レストラン付近】
【柊かがみ@なの☆すた】
【状態】健康、肋骨数本骨折、万丈目に対する強い憎悪、バリアジャケット、1時間40分憑依不可(バクラ)
【装備】ホテルの従業員の制服、千年リング@キャロが千年リングを見つけたそうです、
    ストラーダ(待機状態)@魔法少女リリカルなのはStrikerS、ライディングボード@魔法少女リリカルなのはStrikerS、
    カードデッキ(王蛇)@仮面ライダーリリカル龍騎(10分変身不可)、サバイブ“烈火”(王蛇のデッキに収納)@仮面ライダーリリカル龍騎
【道具①】支給品一式、トカレフTT-33(8/8)@魔法少女リリカルなのはFINAL WARS、
     ブローニングM2重機関銃(300/300)@幻想殺し、レヴァンティン(待機状態)@魔法少女リリカルなのはStrikerS、
     カードデッキ(ベルデ・ブランク体)@仮面ライダーリリカル龍騎、なのは(StS)のデイパック(道具②)
【道具②】支給品一式、Ex-st(残弾なし)@なのは×終わクロ、柊かがみの制服(ボロボロ)、スーパーの制服、ナンバーズスーツ(クアットロ)
【思考】
 基本:死にたくない。なにがなんでも生き残りたい。
 1.バクラ以外は誰も信じない(こなたやつかさも)、バクラがいれば他に何もいらない。
 2.機関銃の設置ポイントを探す。
 3.レストランに集まった参加者を皆殺しにする。
 4.戦いの後で映画館に向かう。
 5.同じミスは犯さないためにも12時間という猶予時間の間に積極的に参加者を餌にして行く。
【備考】
※デルタギアを装着した事により電気を放つ能力を得ました。
※一部の参加者やそれに関する知識が消されています。ただし何かのきっかけで思い出すかもしれません。
※「自分は間違っていない」という強い自己暗示のよって怪我の痛みや身体の疲労をある程度感じていません。
※周りのせいで自分が辛い目に遭っていると思っています。
※Lは自分の命が第一で相手を縛りあげて監禁する危険な人物だと認識しています。
※万丈目の知り合いについて聞いたが、どれぐらい頭に入っているかは不明です。
※王蛇のカードデッキには未契約カードがあと一枚入っています。
※ベルデのカードデッキには未契約のカードと封印のカードが1枚ずつ入っています。
※「封印」のカードを持っている限り、ミラーモンスターはこの所有者を襲う事は出来ません。
※変身時間の制限にある程度気付きました(1時間~1時間30分程時間を空ける必要がある事まで把握)。
※エリアの端と端が繋がっている事に気が付きました。
※こなたとつかさの事は信用しないつもりですが、この手で殺す自信はありません(でもいざという時は……)。
※ベノスネーカーが疲弊しているため、回復するまではメタルゲラスを主軸として使っていくつもりです。
※バリアジャケットのデザインは、【●坂凛@某有名アダルトゲーム】の服装です。
※千年リングを装備した事でバクラの人格が目覚めました。以下【バクラ@キャロが千年リングを見つけたそうです】の簡易状態表。
【思考】
 基本:このデスゲームを思いっきり楽しんだ上で相棒の世界へ帰還する。
 1.当面はかがみをサポート及び誘導して優勝に導くが、場合によっては新しい宿主を捜す事も視野に入れる。この戦いが正念場か?
 2.仮に新しい宿主が見つかった場合はかがみはモンスターの餌にする。
 3.万丈目に対して……?(恨んではいない)
 4.こなたに興味。
 5.可能ならばキャロを探したいが、自分の世界のキャロと同一人物かどうかは若干の疑問。仮にかがみが自分の世界のキャロと出会った時殺しそうになったら時間を稼いで憑依してどうにかする。
 6.メビウス(ヒビノ・ミライ)は万丈目と同じくこのデスゲームにおいては邪魔な存在。
 7.パラサイトマインドは使用できるのか? もしも出来るのならば……。
【備考】
※千年リングの制限について大まかに気付きましたが、再憑依に必要な正確な時間は分かっていません(少なくとも2時間以上必要である事は把握)。
※キャロが自分の知るキャロと別人である可能性に気が付きました(もしも自分の知らないキャロなら殺す事に躊躇いはありません)。
※かがみのいる世界が参加者に関係するものが大量に存在する世界だと考えています。
※かがみの悪い事を全て周りのせいにする考え方を気に入っていません(別に訂正する気はないようです)。

【現在地 F-6 レストラン付近の建物入口】
【相川始@魔法少女リリカルなのは マスカレード】
【状況】健康、背中がギンガの血で濡れている、言葉に出来ない感情、浅倉に対する憤り
【装備】ラウズカード(ハートのA~10)@魔法少女リリカルなのは マスカレード
【道具】支給品一式×2、パーフェクトゼクター@魔法少女リリカルなのは マスカレード、
    ゼクトバックル(ホッパー)@魔法少女リリカルなのは マスカレード、録音機@なのは×終わクロ
【思考】
 基本:栗原親子の元へ戻るために優勝を目指す?
 1.レストランの火災につられた参加者を待つ
 2.その後アンデッドの反応があった場所、もしくは他の施設に向かう。
 3.アンデッド、エネル、赤いコートの男を優先的に殺す。
 4.見つけた参加者は全員殺す?
 5.アーカードに録音機を渡す?
 6.あるのならハートのJ、Q、Kが欲しい。
 7.ギンガの言っていたスバルが気になる。また他の4人(なのは、フェイト、はやて、キャロ)も少し気になる。彼女達に会ったら……?
 8.浅倉のことは気に食わないが、今は戦うつもりはない。気持ちを整理する時間が欲しい。
【備考】
※自身にかけられた制限にある程度気づきました。また、ジョーカー化の欲求が強まっている事を自覚しました。しかしジョーカーに戻るつもりは全くありません。
※首輪を外す事は不可能だと考えています。
※「他のアンデットが封印されると、自分はバトルファイト勝者となるのではないか」という推論を立てました。
※相川始本人の特殊能力により、アンデットが怪人体で戦闘した場合、その位置をおおよそ察知できます。
※エネルという異質な参加者の存在から、このバトルファイトに少しだけ疑念を抱き始めました。
※ギンガを殺したのは赤いコートの男(=アーカード)だと思っています。
※主要施設のメールアドレスを把握しました(図書館以外のアドレスがどの場所のものかは不明)。





 さて―――ここで1つ浅倉がシャーリーを見かけた時の事を思い出して欲しい。
 シャーリーは合計で5つのデイパックを所持していた事だ。彼女が何故それだけのデイパックを入手していたのかはここでは語らない。
 問題は入手した時点ではその中に『ある物』があったが、それは彼女が此処まで移動する途中で落としてしまった。
 その『ある物』は実は仮面ライダーの力を強化する為の道具であり、更に言えば状況的にこの場所に来る可能性はあった。
 しかしその『ある物』はこの場には来ていない。果たしてそれは何処で何をしているのだろうか?

 ここから先はある1人の少女の物語だ。
 それは浅倉が見かけたシャーリーの友人で、
 かがみがつい先程まで戦った相手で、
 始を最期まで説得しようとしたギンガの妹、
 そんな少女の物語である―――



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